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米国チャプター11と知的財産ライセンス――ライセンサー・ライセンシー別の§365対応(AI作成)

第1 結論

米国のチャプター11で知的財産ライセンスを検討するときは,債務者がライセンサーであるのか,ライセンシーであるのかを最初に分ける必要がある。
その上で,①破産申立て時に未履行契約であったか,②対象が「知的財産」の法定定義に入るか,③契約と適用される非破産法がどの権利を残すか,④事件がどの巡回区で係属するかを確認することになる。

債務者の立場中心となる条文第一の確認事項
ライセンサー11 U.S.C. §365(a),(g),(n)拒絶後にライセンシーが使用権を維持できるか
ライセンシー11 U.S.C. §365(b),(c),(f)契約の引受け又は譲渡にライセンサーの同意が必要か

債務者がライセンサーである場合,特許,著作権,営業秘密等のライセンシーは,拒絶による契約違反を理由に終了を選ぶか,所定の支払と権利放棄を伴って破産申立て直前の契約上の権利を維持するかを§365(n)に基づき選択できる。
ただし,§365(n)は継続的な開発,保守,クラウド運用又はデータ移行を一般的に保証する制度ではない。

商標は11 U.S.C. §101(35A)の「知的財産」に列挙されていないため,§365(n)の法定保護にそのまま入るとはいえない。
もっとも,連邦最高裁のMission Product Holdings, Inc. v. Tempnology, LLC,587 U.S. 370 (2019)は,拒絶の効果を破産外の契約違反と同様に扱い,拒絶だけで既に付与された商標使用権を消滅させることはできないとした。

債務者がライセンシーである場合,契約の引受けにはデフォルトの治癒,金銭損失の補償及び将来の履行に関する十分な保証が問題となる。
さらに,適用される非破産法が第三者への履行又は第三者からの履行の受領を相手方に強いることを許さず,相手方が同意しないときは,§365(c)(1)が引受け又は譲渡を制限する。

第2 §365の基本構造

1 未履行契約であること

11 U.S.C. §365(a)の引受け又は拒絶の対象は「executory contract」である。
連邦破産法典に一般定義はないが,Mission Product判決は,当事者双方に少なくとも一定の履行が残っている契約と説明している。

ライセンスという名称だけで未履行性が決まるわけではない。
In re Exide Technologies,607 F.3d 957 (3d Cir. 2010)とIn re Interstate Bakeries Corp.,751 F.3d 955 (8th Cir. 2014) (en banc)は,資産譲渡取引に組み込まれた永久的・ロイヤルティ無料の独占的商標ライセンスにつき,統合された取引全体と残存する重要な義務を検討し,未履行契約ではないと判断した。

2 引受け,拒絶及び譲渡

管財人は,裁判所の承認を条件として未履行契約を引き受け,又は拒絶できる。
チャプター11で債務者が占有を継続する場合,債務者自身が通常は管財人に相当する権限を行使する。

デフォルトがある契約を引き受けるには,原則として,①治癒又は速やかな治癒の十分な保証,②実際の金銭損失の補償又は速やかな補償の十分な保証,③将来の履行に関する十分な保証が必要である。
譲渡には,原則として先に契約を引き受け,譲受人による将来の履行に関する十分な保証を示すことが必要である。

破産申立て,支払不能等のみを理由に契約を終了又は変更する倒産解除条項は,§365(e)(1)により原則として効力を制限される。
したがって,契約書に「チャプター11申立てで即時終了する」と書いてあるだけでは,相手方の権利が当然に消滅するわけではない。

第3 債務者がライセンサーである場合

1 §365(n)の対象

11 U.S.C. §101(35A)は,§365(n)の対象となる知的財産として,①営業秘密,②連邦特許法で保護される発明,方法,意匠又は植物,③特許出願,④植物新品種,⑤連邦著作権法で保護される著作物及び⑥マスクワークを列挙している。
ソフトウェアは通常,そのコード等が著作物又は営業秘密として保護される限りでこの問題に入るが,「ソフトウェア契約」という名称のみで§365(n)の適用範囲が決まるわけではない。

2 ライセンシーの選択

債務者たるライセンサーが未履行の知的財産ライセンスを拒絶したとき,ライセンシーは,その拒絶が契約,適用される非破産法等の下で終了権を発生させる違反に当たる場合に契約を終了扱いとするか,又は契約上の知的財産に関する権利を維持するかを選択できる。
維持できるのは,原則として破産申立ての直前に存在した権利であり,存続期間は契約期間及び権利として行使できる延長期間である。

権利維持を選択したライセンシーは,契約期間中,ロイヤルティの支払を続けなければならない。
また,相殺権を放棄し,契約の履行から生ずる§503(b)の管理費用請求権を放棄したものとみなされる。

ライセンシーが書面で請求したときは,契約又は補充合意に規定がある範囲で,管財人は保有する知的財産及びその具体化物を提供し,第三者から取得する契約上の権利を含め,その権利行使を妨げてはならない。
拒絶前に書面請求がある場合,管財人は,契約又は補充合意の規定範囲で契約を履行するか,知的財産及びその具体化物を提供する必要がある。

3 商標ライセンスとMission Product判決

1985年の第4巡回区連邦控訴裁判所のLubrizol Enterprises, Inc. v. Richmond Metal Finishers, Inc.,756 F.2d 1043,No. 84-1539 (4th Cir. Mar. 15, 1985)は,技術ライセンスの拒絶後にライセンシーが技術使用の特定履行を求め続けることを否定した。
連邦議会は1988年に§365(n)を新設し,同判決がもたらした所定の知的財産ライセンスに対する結果を修正した。

連邦最高裁は,Mission Product Holdings, Inc. v. Tempnology, LLC,587 U.S. 370,No. 17-1657 (May 20, 2019)において,§365(g)の文言に従い,破産法上の拒絶は契約の取消し又は権利設定の遡及的消滅ではなく,破産外の違反と同じ効果を生じると判断した。
そのため,債務者たる商標権者がライセンス契約を拒絶しても,拒絶のみによってライセンシーの使用権は消滅しない。

ただし,同判決は,全ての商標ライセンシーが常に無制限に使用を続けられると判断したものではない。
破産外の契約違反の場合に適用法上どの権利が残るか,契約にどの条件が定められているかを別途確認する必要がある。

4 SaaS及びソフトウェアの限界

本記事では,ソースコード,オブジェクトコード,仕様書等へのライセンス上の権利と,サーバー運用,保守,更新,サポート及びデータ出力というサービスを区別する。
§365(n)は知的財産に関する権利を中心とする規定であり,将来の開発,常時のホスティング又は継続的なサポートの特定履行を当然に確保する文言ではない。

したがって,SaaSの利用者は,①ライセンス対象とサービス対象の切分け,②ソースコード等の寄託と更新頻度,③取出条件,④自社又は第三者による運用・保守権限,⑤データの定期的なエクスポート及び移行支援を契約締結時に確認する必要がある。
これらは§365(n)が自動的に与える保護ではなく,同条の限界を前提とした契約上の対応である。

第4 債務者がライセンシーである場合

1 §365(c)(1)の制限

§365(f)は,未履行契約の譲渡を禁止又は制限する契約条項があっても,原則として譲渡を認める。
もっとも,§365(c)(1)はその例外の一つであり,適用される非破産法が債務者以外の者に対する履行又はその者からの履行の受領を相手方に強いることを許さず,相手方が同意しないときは,契約の引受け又は譲渡を禁止する。

ここで問題となる「applicable law」は,単なる契約上の譲渡禁止条項と同義ではない。
非独占的特許ライセンス又は非独占的著作権ライセンスでは,連邦法上,ライセンサーの同意なく第三者に移転できないとして,§365(c)(1)の問題となることがある。

2 仮想テストと実際テスト

第4巡回区と第9巡回区の本記事で確認した裁判例は,§365(c)(1)の「引受け又は譲渡」という文言を重視する仮想テストを採用している。
この考え方では,適用法上第三者への譲渡が許されないならば,債務者が現実に譲渡を予定していなくても,同意のない引受けが禁止され得る。

これに対し,第1巡回区は,非債務者側が実際に当初の契約相手方以外の者との取引を強いられるかを検討する実際テストを採用している。
したがって,同じ文言のライセンスでも,事件の係属地によって引受けの可否が異なる可能性がある。

第9巡回区のIn re Catapult Entertainment, Inc.,165 F.3d 747,No. 97-16707 (9th Cir. Jan. 28, 1999)は,非独占的特許ライセンスにつき仮想テストを適用し,実際の譲渡予定がない場合でも,ライセンサーの同意なく債務者がライセンスを引き受けることを認めなかった。
なお,同判決は独占的特許ライセンスの譲渡可能性については判断していない。

第4巡回区のIn re Sunterra Corp.,361 F.3d 257,No. 03-1193 (4th Cir. Mar. 18, 2004)も,非独占的な著作権付ソフトウェアライセンスにつき仮想テストを適用し,債務者による引受けを認めた下級審判断を覆した。
同判決は,一般的な譲渡条項が破産文脈の引受けへの同意まで当然に含むわけではないとしており,同意条項の文言を具体的に確認する必要がある。

第1巡回区のInstitut Pasteur v. Cambridge Biotech Corp.,104 F.3d 489,No. 96-2028 (1st Cir. Jan. 17, 1997)は,実際テストを適用し,債務者の法人格が維持される株式譲渡につき,相手方が当初の契約相手方以外の者との履行関係を強いられることは立証されていないとして,再建計画の確定を維持した。
この判決も,株式譲渡であれば常に引受けが許されるという一般則を示したものではなく,契約文言と実際の履行主体の確認を要する。

第5 契約当事者別の実務対応

1 ライセンシーの対応

ライセンサーの信用不安を把握したライセンシーは,①契約及び補充合意の全文,②対象IPの種類と権利者,③独占性,地域,期間,延長及びサブライセンスの範囲,④ロイヤルティとサービス料の切分け,⑤ソースコード等の保有者と取得経路を固定すべきである。
申立て後は,ドケット上の契約引受け・拒絶動議,譲渡又は資産売却動議,計画と契約一覧,異議期限及びヒアリング日を継続的に確認する必要がある。

§365(n)の権利維持を選ぶ場合には,書面通知の時期,ロイヤルティの継続支払,相殺及び管理費用請求権の放棄,知的財産の具体化物の引渡しを確認する必要がある。
具体的な手続は個別事件の日程と契約文言に左右されるため,米国専門家と早期に整理すべきである。

2 ライセンサーの対応

ライセンシーの信用不安を把握したライセンサーは,①未払額とデフォルト,②義務不履行の金銭影響,③将来履行の能力,④契約と適用法上の譲渡可能性,⑤破産時の引受け又は譲渡への同意の有無及び範囲を整理すべきである。
一般的な譲渡同意,合併,株主変更又はチェンジ・オブ・コントロール条項が,破産法上の引受け及び譲渡の同意をどこまで含むかは文言と適用法の問題である。

申立て後は,契約を一方的に終了する前に,自動停止及び§365(e)の影響を確認する必要がある。
引受け又は譲渡の動議に対しては,§365(b)の治癒・補償・将来履行の十分な保証と,§365(c)(1)の適用法及び同意を区別して主張・立証することになる。

3 契約締結時の共通チェック

契約締結時には,①権利設定とサービス義務の分離,②知的財産の種類ごとの権利の特定,③ロイヤルティとその他の料金の配分,④破産時の引受け・譲渡・株主変更に対する同意の範囲,⑤具体化物の提供義務及び第三者からの取得権,⑥寄託・移行・自助手段の実行可能性を検討すべきである。
ただし,破産申立てだけを契約終了事由としても§365(e)により効力が制限され得るため,契約条項だけに依存してはならない。

第6 主要裁判例

以下の表は,本記事で本文を確認した主要裁判例を,未履行性,拒絶の効果又は引受け・譲渡のいずれに関係するかで整理したものである。
裁判例の射程は各行の事案と争点に限定され,表の結論を全てのライセンス契約へ一般化することはできない。

裁判例事件番号・裁判年月日本記事との関係
Lubrizol Enterprises, Inc. v. Richmond Metal Finishers, Inc.,756 F.2d 1043 (4th Cir. 1985)No. 84-1539,1985年3月15日技術ライセンス拒絶の厳しい結果を示し,§365(n)新設の契機となった。
Mission Product Holdings, Inc. v. Tempnology, LLC,587 U.S. 370 (2019)No. 17-1657,2019年5月20日拒絶は違反であり,商標使用権を拒絶のみで消滅させないとした。
Institut Pasteur v. Cambridge Biotech Corp.,104 F.3d 489 (1st Cir. 1997)No. 96-2028,1997年1月17日実際テストを適用し,同一法人の株主変更後の引受けを認めた。
In re Catapult Entertainment, Inc.,165 F.3d 747 (9th Cir. 1999)No. 97-16707,1999年1月28日非独占的特許ライセンスに仮想テストを適用した。
In re Sunterra Corp.,361 F.3d 257 (4th Cir. 2004)No. 03-1193,2004年3月18日非独占的ソフトウェアライセンスに仮想テストを適用した。
In re Exide Technologies,607 F.3d 957 (3d Cir. 2010)No. 08-1872,2010年6月1日統合された取引の重要な残存義務がなく,未履行契約ではないとした。
In re Interstate Bakeries Corp.,751 F.3d 955 (8th Cir. 2014) (en banc)No. 11-1850,2014年6月6日資産譲渡とライセンスの統合性を考慮し,未履行契約ではないとした。

第7 本記事の範囲と限界

本記事は,2026年9月6日を基準日とし,米国連邦法上の一般的な枠組みを説明するものである。
米国下院法律改訂審議官室の§365暫定統合本文は2026年9月4日までに制定された法律を反映しており,本記事はその本文を確認した。

個別事件の結論は,契約の準拠法,契約文言,知的財産の種類,独占性,残存義務,係属裁判所,動議及び計画の内容により変わる。
個別の契約又はチャプター11事件に対応する場合は,米国破産法及び知的財産法の専門家による最新の裁判例調査と契約審査が必要である。

第8 出典

1 法令

①米国下院法律改訂審議官室「11 U.S.C. §101」(§101(35A),2026年9月6日確認)。
②米国下院法律改訂審議官室「11 U.S.C. §365」(§365(a),(b)(1),(c)(1),(e)(1),(f)(1)・(2),(g),(n)(1)~(4),2026年9月6日確認)。

2 裁判例

①米国連邦最高裁判所2019年5月20日判決・No. 17-1657・Mission Product Holdings, Inc. v. Tempnology, LLC,587 U.S. 370 (2019),公式判決PDF373頁~389頁。
②第4巡回区連邦控訴裁判所1985年3月15日判決・No. 84-1539・Lubrizol Enterprises, Inc. v. Richmond Metal Finishers, Inc.,756 F.2d 1043 (4th Cir. 1985),Justia公開判決データベース1045頁~1048頁。
③第1巡回区連邦控訴裁判所1997年1月17日判決・No. 96-2028・Institut Pasteur v. Cambridge Biotech Corp.,104 F.3d 489 (1st Cir. 1997),Justia公開判決データベース492頁~495頁。
④第9巡回区連邦控訴裁判所1999年1月28日判決・No. 97-16707・In re Catapult Entertainment, Inc.,165 F.3d 747 (9th Cir. 1999),Justia公開判決データベース749頁~753頁。
⑤第4巡回区連邦控訴裁判所2004年3月18日判決・No. 03-1193・In re Sunterra Corp.,361 F.3d 257 (4th Cir. 2004),Justia公開判決データベース262頁~271頁。
⑥第3巡回区連邦控訴裁判所2010年6月1日判決・No. 08-1872・In re Exide Technologies,607 F.3d 957 (3d Cir. 2010),Justia公開判決データベース960頁~967頁。
⑦第8巡回区連邦控訴裁判所大法廷2014年6月6日判決・No. 11-1850・In re Interstate Bakeries Corp.,751 F.3d 955 (8th Cir. 2014) (en banc),公式判決PDF955頁~964頁。

3 実務解説・関連資料

①辻田俊幸「米国倒産手続⑤―ライセンス契約(知的財産権)」(弁護士法人大江橋法律事務所,2025年8月5日,1頁~7頁)。
②Mayer Brown「Protecting Against Licensor Bankruptcy in Service and License Agreements: Utilizing Section 365(n)」(2021年12月8日。料金配分,更新権及びソースコード寄託に関する実務解説)。
③関連記事「米国のチャプター11と日本の民事再生手続の徹底比較(AI作成)」(山中弁護士ブログ,2026年8月31日)。