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コーポレートガバナンス・コードとは|2026年版の4つの基本原則・適用対象・法的拘束力(AI作成)

第1 コーポレートガバナンス・コードとは

1 コードが対象とするコーポレートガバナンス

東京証券取引所のコーポレートガバナンス・コード(2026年7月版)は,「コーポレートガバナンス」を,上場会社が株主をはじめ顧客・従業員・地域社会等の立場を踏まえた上で,透明・公正かつ迅速・果断な意思決定を行うための仕組みと説明している。
コードは,この仕組みを実効的なものとする主要な原則を示し,各社の持続的な成長と中長期的な企業価値の向上を促すものである。

コードは,不祥事の防止や経営者の監視だけを目的とするものではない。
意思決定の透明性・公正性を確保しながら,経営陣による迅速・果断な意思決定と適切なリスクテイクを支える「攻めのガバナンス」も目的としている。

2 会社法とは異なる上場制度上の原則

コーポレートガバナンス・コードは,会社法の条文ではなく,東京証券取引所が定める上場制度上の原則である。
会社法が株式会社の機関,取締役の権限・義務,株主総会その他の法的な仕組みを定めるのに対し,コードは,上場会社がそれぞれの状況に応じて実効的なガバナンスを実現するための考え方を示す。

したがって,会社法上の義務とコード上の原則は,同じものとして扱うことができない。
会社法の制定後の改正については,会社法(平成17年法律第86号)の改正経緯参照。

第2 プリンシプルベースとコンプライ・オア・エクスプレイン

1 細則ではなく原則を示すプリンシプルベース

コードは,会社が取るべき行動を細部まで一律に定めるルールベースではなく,大づかみな原則の趣旨・精神に照らして各社が自らの対応を判断するプリンシプルベース・アプローチを採用している。
同じ原則でも,業種,規模,事業特性,機関設計及び会社を取り巻く環境によって,適切な実施方法は異なり得る。

このため,コードを読むときは,文言を形式的に満たしているかだけでなく,その会社の具体的な取組みが原則の目的に適合しているかを見る必要がある。
コードは,各社に同じ組織図や手続を採用させるための仕様書ではない。

2 実施又は説明を求める仕組み

コンプライ・オア・エクスプレインとは,各原則を実施するか,実施しない場合にはその理由を説明するという手法である。
コード序文5項は,各原則自体には法的拘束力がなく,個別事情に照らして実施することが適切でない原則があれば,十分な説明により一部を実施しないことを想定している。

したがって,全原則を形式的に実施することだけが正解ではない。
会社の置かれた状況によってはエクスプレインを積極的に選ぶことも考えられるが,その説明は,株主等が理解できるよう,原則の趣旨・精神に照らして工夫された丁寧なものであることが求められる。

第3 2026年版コードの構造

1 4つの基本原則と26の原則

2026年版コードは,4つの基本原則と26の原則から構成される。
2021年版に存在した補充原則は廃止され,コンプライ・オア・エクスプレインの対象となる原則は,会社が特に注力すべき概念的な内容へ絞り込まれた。

4つの基本原則はコード全体の骨格であり,26の原則が具体的なテーマを示す。
26の原則は,第1章に4原則,第2章に4原則,第3章に3原則,第4章に15原則という構成である。

2 解釈指針の役割

2026年版では,全ての基本原則と一部の原則に解釈指針が付された。
解釈指針には,原則の背景となる考え方,目的,最良又は優れた実務と考えられる具体例が記載されており,各社が原則への実効的な対応を検討する際に参照することが期待されている。

解釈指針は,それ自体がコンプライ・オア・エクスプレインの対象となる原則ではない。
もっとも,対象外であることは軽視してよいという意味ではなく,原則をどのように実施し,又は実施しないと判断するかを検討するための補助線として位置付ける必要がある。

第4 2026年版の4つの基本原則

1 4つの基本原則の一覧

基本原則正式な見出し主な対象
基本原則1株主の権利・平等性の確保,株主との対話株主の権利行使環境,株主間の平等,建設的な対話
基本原則2株主以外のステークホルダーとの適切な協働従業員,顧客,取引先,債権者,地域社会等との協働
基本原則3適切な情報開示と透明性の確保法令に基づく開示,任意開示,情報の正確性・分かりやすさ
基本原則4取締役会等の責務戦略の方向付け,リスクテイクの環境整備,実効的な監督

2 基本原則1―株主の権利・平等性の確保,株主との対話

基本原則1は,株主の権利を実質的に確保し,株主が権利を適切に行使できる環境を整備するとともに,株主の実質的な平等性を確保することを求める。
少数株主や外国人株主について,権利行使や平等性に課題が生じやすいことを踏まえ,十分な配慮も求めている。

2026年版では,株主総会の場に限らず,持続的な成長と中長期的な企業価値の向上に資する建設的な対話を株主との間で行うことが,基本原則1に統合された。
株主の権利確保と対話は別々の作業ではなく,株主が情報を得て判断し,会社がその意見を経営へつなげる一連の関係として理解することになる。

3 基本原則2―株主以外のステークホルダーとの適切な協働

基本原則2は,会社の持続的な成長と中長期的な企業価値の創出が,従業員,顧客,取引先,債権者及び地域社会をはじめとする多様なステークホルダーによる資源の提供や貢献の結果であることを十分に認識し,適切な協働に努めることを求める。
取締役会・経営陣には,これらのステークホルダーの権利・立場と健全な事業倫理を尊重する企業文化の醸成へ向け,リーダーシップを発揮することが求められる。
株主利益だけを短期的に最大化する発想ではなく,事業を支える関係者との協働を企業価値創出の基盤として捉える原則である。

4 基本原則3―適切な情報開示と透明性の確保

基本原則3は,財務情報及び非財務情報について,法令に基づく開示を適切に行うとともに,法令に基づく開示以外の情報提供にも主体的に取り組むことを求める。
取締役会には,開示される情報が正確で,利用者にとって分かりやすく,情報として有用なものとなるようにする責務がある。
適切な情報開示は,投資判断の材料であるだけでなく,株主との建設的な対話を成立させる前提でもある。

5 基本原則4―取締役会等の責務

基本原則4は,取締役会が株主に対する受託者責任・説明責任を踏まえ,会社の持続的成長と中長期的な企業価値の向上を促し,収益力・資本効率等の改善を図ることを求める。
その中核は,①企業戦略等の大きな方向性を示すこと,②経営陣による適切なリスクテイクを支える環境を整えること,③独立した客観的な立場から経営陣・取締役を実効的に監督することである。
監査役会設置会社,監査等委員会設置会社及び指名委員会等設置会社のいずれを採用する場合も,それぞれの機関設計に応じた読替えを行い,これらの役割・責務を果たすことが想定されている。

第5 コードの適用対象

1 市場区分ごとに異なる説明対象

東京証券取引所の企業行動規範に関するFAQ及び2026年7月版の報告書記載要領によれば,上場内国会社が実施又は不実施理由を説明する範囲は,市場区分ごとに異なる。

市場区分コンプライ・オア・エクスプレインの対象留意点
プライム市場の上場内国会社基本原則及び原則原則中のプライム市場向け内容を含む
スタンダード市場の上場内国会社基本原則及び原則原則中のプライム市場向け内容は対象外
グロース市場の上場内国会社基本原則原則について任意に説明することは可能

東証のコード紹介ページがプライム市場・スタンダード市場について「全原則」と要約しているのに対し,報告書記載要領は,スタンダード市場では原則中のプライム市場向け内容を対象外としている。
市場区分別の具体的な報告書作業では,この詳細な区分を確認する必要がある。

2 未上場会社と上場外国会社

上場規程436条の3に基づくコンプライ・オア・エクスプレインの直接の名宛人は,上場内国会社である。
未上場会社には同条に基づく説明義務はなく,コードを参考に自社のガバナンスを検討することと,上場制度上の義務として対応することは区別しなければならない。

また,上場外国会社を含む上場会社については,上場規程445条の3により,コードの趣旨・精神を尊重してガバナンスの充実に取り組むよう努めることとされている。
上場外国会社の扱いを上場内国会社の報告義務と同一視することはできない。

第6 コードの法的拘束力

1 各原則自体には法的拘束力がない

コード序文5項は,コードの各原則が法的拘束力を有する規範ではないことを明記している。
したがって,ある原則を実施していないという事実だけで,直ちに法令違反となるものではない。

これは,コードが任意の参考資料にすぎないという意味でもない。
上場会社には上場規程445条の3による趣旨・精神の尊重が求められ,上場内国会社には上場規程436条の3による実施又は不実施理由の説明が求められる。

2 説明は上場規程上の義務である

コードの原則を実施するかどうかと,実施しない場合に説明するかどうかは別の問題である。
個別事情から原則を実施しない選択はコードが予定しているが,説明対象となる原則を実施しない上場内国会社が理由を説明しないことは,上場規程436条の3が求める対応を満たさない。

したがって,法的な位置付けは,①コードの各原則自体は法的拘束力を有しないこと,②上場規程がコードの尊重を求めていること,③上場内国会社には市場区分に応じたコンプライ・オア・エクスプレインが義務付けられていることの3層に分けて理解する必要がある。

第7 制定・改訂の経緯と2026年版への移行

1 2015年の施行から2026年改訂まで

東京証券取引所の公表履歴によれば,コードは2015年6月1日に施行され,2018年6月1日及び2021年6月11日に改訂された後,2026年7月21日に3回目の改訂が行われた。

2026年改訂では,基本原則が従来の5つから4つとなり,補充原則が廃止され,解釈指針が新設された。
これは,対応コストの削減だけを目的とするものではなく,形式的な実施確認から,企業価値向上に向けた実質的な取組みと説明へ重点を移すためのプリンシプル化・スリム化である。

2 コーポレート・ガバナンス報告書の更新

2026年版コードに基づく報告書への移行には経過的な取扱いが設けられている。
更新期限,2021年版に基づいて更新する場合の明示方法及び2027年7月末までの作業については,2026年改訂コーポレートガバナンス・コードの変更点・適用日・報告書対応参照。

第8 出典・参考資料

1 法令・取引所規則・コード

① 会社法(平成17年法律第86号)(e-Gov法令検索,2026年8月28日確認)
② 東京証券取引所「コーポレートガバナンス・コード(2026年7月版)」(2026年7月21日,PDF1頁~26頁。本文のPDF頁は表紙を除く印刷頁と1頁ずれる。)
③ 東京証券取引所「コーポレートガバナンス・コード」(現行版及び2015年・2018年・2021年の制定・改訂履歴)
④ 東京証券取引所「企業行動規範―遵守すべき事項」(上場規程436条の3,市場区分別のコンプライ・オア・エクスプレイン)
⑤ 東京証券取引所「企業行動規範―望まれる事項」(上場規程445条の3,コードの趣旨・精神の尊重)

2 金融庁・東京証券取引所の公表・運用資料

① 金融庁・東京証券取引所「コーポレートガバナンス・コード(2026年改訂版)の確定について」(2026年7月21日公表,2026年8月3日更新)
② 金融庁・東京証券取引所「成長投資の促進に向けたコーポレートガバナンス・コードの改訂について」(2026年7月21日,1頁~4頁)
③ 東京証券取引所「コーポレート・ガバナンスに関する報告書」及び「コーポレート・ガバナンスに関する報告書 記載要領(2026年7月版)」