第1 この記事で確認できること
函館修習については,修習日程,クラス分け,配属人数及び希望状況が同じ期の一つの資料にまとまっているわけではない。
そこで,本記事は,第79期の日程,第78期の配属人数,第69期の希望地調査及び配属人数を,それぞれ確認できる最新又は最後の資料として区別して整理する。
第79期の函館に実際に何人が配属されるか,第79期の希望者が何人であるかは,確認した公表資料からは分からない。
また,住居費の平均額のように,調査時点,対象物件及び集計方法が示されていない数字は掲載しない。
第2 第79期の日程と班・クラス
1 第79期の修習日程
司法研修所事務局長の令和7年4月30日付文書「第79期司法修習生の修習日程」によれば,函館修習の日程は次のとおりである。
| 課程 | 期間 | 実日数 |
|---|---|---|
| 導入修習 | 令和8年3月19日~4月10日 | 16日 |
| 分野別実務修習・第1クール | 令和8年4月14日~6月9日 | 37日 |
| 分野別実務修習・第2クール | 令和8年6月10日~8月2日 | 37日 |
| 分野別実務修習・第3クール | 令和8年8月3日~9月28日 | 37日 |
| 分野別実務修習・第4クール | 令和8年9月29日~11月20日 | 37日 |
| 選択型実務修習 | 令和8年11月24日~令和9年1月8日 | 30日 |
| 移動期間 | 令和9年1月9日~1月12日 | ― |
| 集合修習 | 令和9年1月13日~2月25日 | 30日 |
| 自由研究日 | 令和9年2月26日 | ― |
函館は,第79期の日程上はB班であり,分野別実務修習の後に,選択型実務修習,移動期間,集合修習の順となる。
なお,第78期司法修習の日程とは各クールの区切りが異なるため,第78期の日付を第79期に流用してはならない。
2 「班」及び「クラス」が指す三つの区分
函館修習で用いられる区分には,少なくとも次の三つがあり,混同しない方がよい。
① 第79期の「B班」は,選択型実務修習と集合修習のどちらを先に行うかを示す日程上の区分である。
② 第78期の教官担当表では,札幌,函館,旭川及び釧路が「B班1組」にまとめられ,4修習地の合計は64人であった。これは集合修習等の教官担当上のクラスであり,函館だけの人数ではない。
③ 第78期の函館に関する実務修習順序表には「1班」と「2班」がある。これは函館に配属された修習生が四つの分野を回る順序を分ける区分である。
第79期の教官担当上の組及び函館内部の班分けは,別途その期の資料で確認する必要がある。
第3 配属人数といわゆる希望倍率
1 確認できる最新の配属人数
令和7年3月19日現在の「第78期司法修習生配属現員表」によれば,第78期の配属現員は全国1556人,札幌46人,函館6人,旭川6人,釧路6人であった。
| 修習地 | 第78期配属現員 |
|---|---|
| 札幌 | 46人 |
| 函館 | 6人 |
| 旭川 | 6人 |
| 釧路 | 6人 |
したがって,「函館の配属人数は6人」という数字は第78期についての確定値であり,第79期の人数ではない。
2 数字を計算できる最後の希望地調査
確認できた「実務修習希望地調査表」のうち,函館について希望順位別人数と配属現員の双方を突き合わせられる最後の期は第69期である。
| 希望順位 | 函館を記載した人数 |
|---|---|
| 第1希望 | 2人 |
| 第2希望 | 4人 |
| 第3希望 | 7人 |
| 第4希望 | 4人 |
| 第5希望 | 37人 |
| 第6希望 | 30人 |
第69期の函館配属現員は7人であったから,第1希望者数を配属現員で除した参考比は,2人÷7人=約0.29である。
第1希望者と第2希望者の合計を配属現員で除した参考比は,6人÷7人=約0.86である。
もっとも,これらは一般にいう入試倍率や当選確率ではない。希望順位の異なる人数を単純に合算して「倍率」と表示することにも合理的な根拠はないため,本記事では計算式を明示した参考比にとどめる。
3 最新の希望倍率を示せない理由
最高裁判所情報公開・個人情報保護審査委員会の平成29年度(最情)答申第1号は,第69期以前は希望地調査表を作成していたが,第70期については事務の合理化のため同表を作成しなかったとする。また,配属は希望を基本としつつ,個別事情を考慮して決め,全体的な希望傾向を考慮することもあると説明している(PDF2頁~3頁)。
さらに,第79期司法修習予定者の実務修習希望地調査表については,最高裁判所事務総長令和8年3月18日付不開示通知書(最高裁秘書第782号)が,対象文書を作成又は取得していないとしている。
そのため,第79期の函館について,現在の希望者数,倍率又は配属可能性を示す公的な数字は確認できない。「第5希望でも函館になった」という個人の体験は存在するが,それを配属確率へ一般化することはできない。
第4 裁判所・検察庁・弁護士会の位置
分野別実務修習の主な三つの機関は,いずれも函館市上新川町にある。
| 機関 | 所在地 | 公表されている交通案内 |
|---|---|---|
| 函館地方・家庭裁判所 | 函館市上新川町1番8号 | 市電「千歳町」又は「昭和橋」から徒歩約5分 |
| 函館地方検察庁 | 函館市上新川町1番13号 | 市電「千歳町」又は「昭和橋」から徒歩約5分 |
| 函館弁護士会 | 函館市上新川町1番3号 | 市電「千歳町」から徒歩約3分,バス「昭和通り」から徒歩約1分 |
三機関が近接していることは,住居の候補区域を考える際の重要な基礎情報である。ただし,弁護修習では個別指導弁護士の事務所その他の場所へ移動することがあるため,上新川町への近さだけで住居を決めるのではなく,市電,バス及び徒歩の経路も確認した方がよい。
第5 住居と修習給付金
1 函館の住居は自ら確保する
第79期司法修習生採用選考申込みの手引は,実務修習地における住居を修習生が各自で確保するとしている(PDF2頁〔資料上の2頁〕)。
確認した最高裁判所,函館地方裁判所,函館地方検察庁及び函館弁護士会の公表ページでは,函館修習生専用寮又は公式のあっせん物件一覧を確認できなかった。これは,非公表の案内又は期ごとの連絡がないことまで意味しない。
2 基本給付金と住居給付金
第79期司法修習生修習給付金案内によれば,基本給付金は一給付期間につき13万5000円である(PDF8頁〔資料上の4頁〕)。
住居給付金は,賃貸住宅に居住するなどの要件を満たす場合,一給付期間につき3万5000円である(PDF6頁〔資料上の2頁〕)。具体的な届出,提出書類及び期限は,司法修習に関する事務便覧(令和7年3月)とは―第78期の日程・届出・給付金(AIリライト)も参照されたい。
もっとも,導入修習又は集合修習で司法研修所寮に居住する期間は,実務修習地の賃貸借契約を維持していても,その期間の住居給付金は原則として支給されない(第79期案内PDF16頁〔資料上の12頁〕)。函館の賃貸借契約をいつまで維持するかを考える際には,この取扱いを家賃総額と併せて検討する必要がある。
3 契約前に確認したい事項
函館の特定地区の平均家賃を示す公的統計は確認できなかったため,物件ごとの賃料,管理費,敷金等を比較する必要がある。
冬季をまたぐ第79期の日程を前提とすれば,少なくとも,暖房方式及び燃料費,断熱及び窓の仕様,水道凍結時の水抜き方法,除雪の分担,冬季の徒歩経路,家具・家電の有無,短期解約条項並びに退去予告期間を契約前に確認した方がよい。
第6 冬,市電及び生活情報
1 気温と雪
気象庁の函館観測所の平年値(1991年~2020年)では,1月の平均気温はマイナス2.4度,日最高気温の平均は0.9度,日最低気温の平均はマイナス6.0度,降雪の深さの月合計は91センチメートルである。
| 項目 | 12月 | 1月 | 年間 |
|---|---|---|---|
| 平均気温 | マイナス0.1度 | マイナス2.4度 | ― |
| 降雪の深さの合計 | 79センチメートル | 91センチメートル | 306センチメートル |
これらは平年値であって,特定年の積雪量又は通勤路の状態を保証する数字ではない。函館市は,水道の凍結にご注意を及び除雪に関する情報を公表している。
2 市電と日常生活
函館市電の大人運賃は,令和7年12月1日以降,乗車距離に応じて250円,270円,290円又は300円であり,交通系ICカードを利用できる。運賃及び利用方法は,函館市「乗車料金(函館市電)」で確認できる。
転入後の届出,ごみの分別,医療,防災及び交通の入口としては,函館市の在住外国人のための函館生活ガイドブック2026が利用できる。
第7 分野別実務修習と選択型実務修習
1 四つの分野で行う修習
最高裁判所の「司法修習の概要」によれば,分野別実務修習は,民事裁判,刑事裁判,検察及び弁護の四分野について,それぞれ約2か月ずつ行われる。
裁判修習では,法廷傍聴,係属記録及び法廷でのやり取りの検討,裁判官との意見交換並びに問題点を検討した文書の作成及び講評などが行われる。
検察修習では,証拠収集,被疑者及び参考人の取調べなどの捜査を学び,起訴又は不起訴の処分について意見を述べ,公判立会を傍聴する。
弁護修習では,個別指導弁護士の下で,法律相談及び法廷などへの立会い,法律文書の起案及び講評並びに弁護士会活動の体験などを行う。
2 第78期函館の修習順序
第78期の函館について公表された修習順序は,次のとおりであった。
| 函館内部の区分 | 第1クール | 第2クール | 第3クール | 第4クール |
|---|---|---|---|---|
| 1班 | 検察 | 民事裁判 | 弁護 | 刑事裁判 |
| 2班 | 刑事裁判 | 検察 | 弁護 | 民事裁判 |
家庭裁判所修習は,刑事裁判修習中に行うものとされていた。公表資料には1班及び2班の人数が書かれていないため,6人が3人ずつであったとは断定できない。また,第79期も同じ順序になるとは限らない。
3 体験記から分かることと限界
第78期の函館修習生1人の体験記では,検察修習では取調べが中心であったこと,一般民事で倒産法に触れる機会が多かったこと,通常の分野別実務修習では渉外事件又は英語を使う機会がなかったため,全国プログラムの渉外事務所修習を選んだことが述べられている。
これは1人の体験であり,函館修習全体の標準的内容を示す統計ではない。しかし,分野別実務修習で経験しにくい領域を,選択型実務修習で補完するという制度の使い方を具体的に示している。選択型実務修習に関する資料も参照されたい。
また,第63期の函館修習を回顧した東京弁護士会会報の記事によれば,平成21年当時の配属は12人で,地元出身者はいなかったとされる。同記事は,裁判所側と弁護士側の双方から同じ事件を見る経験,少人数の実務家から近い距離で指導を受けた経験,新聞社及び警察の見学並びに地域行事への参加を紹介している(『LIBRA』令和6年7・8月合併号40頁,PDF37頁)。
もっとも,これは約15年前の回顧であり,現在の配属人数,指導体制又は行事の実施を示す資料ではない。
4 選択型実務修習
最高裁判所によれば,選択型実務修習は,進路,興味及び関心に応じて修習生が主体的に選択又は設計し,分野別実務修習の成果を深め,補い,又は分野別実務修習では体験できない領域を学ぶ課程である。
各修習地の裁判所,検察庁及び弁護士会が提供するプログラムのほか,全国プログラム及び自己開拓プログラムがある。第79期の函館はB班であるため,令和8年11月24日から令和9年1月8日までが選択型実務修習の期間である。
第8 確認できたことと確認できないこと
確認できた重要な数字は,第79期の日程,第78期函館の配属現員6人,第69期の希望順位別人数及び配属現員7人,第79期の基本給付金13万5000円並びに住居給付金3万5000円である。
これに対し,第79期函館の配属人数,希望者数,希望倍率,教官担当上の組,函館内部の班分け,公式の住宅あっせん及び代表性のある平均家賃は,確認した公表資料からは分からない。
したがって,函館修習を希望する際は,過去の少人数配属という傾向を参考にしつつも,最新の配属可能性を数値化できるとは考えない方がよい。住居については,三機関の所在地,冬季の条件及び集合修習時の住居給付金の取扱いを併せて検討する必要がある。
第9 出典・参考資料
1 最高裁判所及び司法研修所資料
① 司法研修所事務局長令和7年4月30日付「第79期司法修習生の修習日程」2頁
② 司法研修所「第79期司法修習生採用選考申込みの手引」PDF2頁(資料上の2頁)
③ 司法研修所「第79期司法修習生修習給付金案内」PDF6頁,PDF8頁及びPDF16頁(資料上の2頁,4頁及び12頁)
④ 最高裁判所「司法修習の概要」
⑤ 最高裁判所情報公開・個人情報保護審査委員会平成29年度(最情)答申第1号「実務修習希望地調査表の不開示判断(不存在)に関する答申」PDF2頁~3頁
⑥ 最高裁判所事務総長令和8年3月18日付不開示通知書(最高裁秘書第782号)
⑦ 司法研修所「実務修習希望地調査表(第69期)」,司法研修所「司法修習生配属現員表(第69期及び第78期)」,司法研修所「第78期教官担当表」及び司法研修所「令和6年度(第78期)司法修習生の修習開始等について」
2 函館の公的情報
① 函館地方裁判所「函館地方裁判所・函館家庭裁判所の所在地」
② 函館地方検察庁「所在地・交通案内」
③ 函館弁護士会「アクセス」
④ 気象庁「函館の平年値(年・月ごとの値)」
⑤ 函館市「水道の凍結にご注意を」,「除雪に関する情報」,「乗車料金(函館市電)」及び「在住外国人のための函館生活ガイドブック2026」
3 文献及びウェブ資料
① 安齋瑠美「わたしの修習時代 東海の小島の磯でたはむれた日々」東京弁護士会『LIBRA』令和6年7・8月合併号40頁(PDF37頁)
② C&Rリーガル・エージェンシー社「78期Tさん 修習体験レポート~修習地選択と修習生活編(函館)~」