第1 松江修習の全体像
1 本記事の対象
本記事は,第79期司法修習生が松江を実務修習地とする場合を中心として,修習日程,配属人数,住居,生活情報,希望倍率及び実務修習の内容を,公表された原資料に基づいて整理するものである。
第79期について未公表の事項は,第77期又は第78期の資料で補う。ただし,過去の班編成,希望状況又は体験談を第79期にも当てはまるものとして扱わない。
2 最初に押さえる事項
第79期の導入修習は令和8年3月19日から同年4月10日まで,分野別実務修習は同月14日から同年11月20日までである。松江はB班に属するため,分野別実務修習の後に選択型実務修習,集合修習の順で進み,修習予定の終期は令和9年2月25日である。
松江への配属人数は,第77期が9人,第78期が7人であった。第79期の配属人数を示す配属現員表は,公表資料から確認できない。
第69期の松江について公表された「倍率A」は0.25,「倍率B」は0.38であった。ただし,これは競争倍率ではなく,配属人数を分母として第1希望者数又は第1・第2希望者数を割った旧資料上の比率である。現在の希望状況又は配属可能性を示す数値ではない。
第2 第79期の修習日程
1 全体日程
第79期の全体日程は,次のとおりである。
| 段階 | 期間 | 松江修習との関係 |
|---|---|---|
| 導入修習 | 令和8年3月19日から同年4月10日まで | 司法研修所で行われる導入段階である。 |
| 分野別実務修習 | 令和8年4月14日から同年11月20日まで | 松江の裁判所,検察庁及び弁護士会で4分野を修習する。 |
| 選択型実務修習 | 令和8年11月24日から令和9年1月8日まで | B班は分野別実務修習地を拠点として行う。 |
| 集合修習 | 令和9年1月13日から同年2月25日まで | B班は選択型実務修習の後に司法研修所で行う。 |
2 分野別実務修習の4クール
第79期の分野別実務修習は,次の4クールで構成される。各班がどのクールに民事裁判,刑事裁判,検察及び弁護のいずれを履修するかという松江固有の班別順序は,公表資料から確認できない。
| クール | 期間 |
|---|---|
| 第1クール | 令和8年4月14日から同年6月9日まで |
| 第2クール | 令和8年6月10日から同年8月2日まで |
| 第3クール | 令和8年8月3日から同年9月28日まで |
| 第4クール | 令和8年9月29日から同年11月20日まで |
3 松江はB班である
第79期司法修習生採用選考申込みの手引は,東京,立川,横浜,さいたま,千葉,大阪,京都,神戸,奈良,大津及び和歌山以外の実務修習地をB班としているため,松江はB班である。
(1) 選択型実務修習
選択型実務修習は,司法修習生が自らの進路又は関心に応じてプログラムを選ぶ段階である。B班の第79期は,令和8年11月24日から令和9年1月8日までである。
松江で提供される第79期の具体的なプログラム名,定員及び実施場所は,公表資料から確認できない。住居の契約期間を決める際は,少なくとも選択型実務修習の終了まで松江を生活拠点とする可能性を前提に,個別の契約条件と配属後の案内を照合する必要がある。
(2) 集合修習
B班の集合修習は,令和9年1月13日から同年2月25日までである。松江での分野別実務修習及び選択型実務修習を終えた後,司法研修所で民事裁判,刑事裁判,検察,民事弁護及び刑事弁護の各科目を学ぶ段階である。
第3 松江の配属人数
1 直近2期の配属人数
配属現員表の原資料によれば,松江の配属人数は次のとおりである。
| 期 | 松江 | 全国合計 | 表の基準日 |
|---|---|---|---|
| 第77期 | 9人 | 1830人 | 令和6年3月21日現在 |
| 第78期 | 7人 | 1556人 | 令和7年3月19日現在 |
したがって,直近2期の公表値では一桁の少人数配属である。ただし,2期分の数値だけから今後の定員又は配属人数を予測することはできない。
2 過去の配属人数
第63期から第73期までについて公表資料を集計したページに掲げられた松江の人数は,次のとおりである。
| 期 | 63期 | 64期 | 65期 | 66期 | 67期 | 68期 | 69期 | 70期 | 71期 | 72期 | 73期 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 人数 | 12 | 12 | 10 | 9 | 8 | 6 | 8 | 7 | 6 | 6 | 6 |
この推移は,松江が従来から少人数の実務修習地であったことを示す歴史資料である。各期の司法修習生総数及び配属政策が異なるため,単純な時系列比較には限界がある。
3 第79期の配属人数
第79期については,松江の人数を確認できる配属現員表を確認できない。このため,第78期の7人を第79期の人数として転用せず,【要確認】とする。
人数は,実際の班分け,指導担当者との組合せ及び行事運営に影響する。第79期の正確な人数は,配属現員表又は配属後に示される松江の公式資料で確認すべきである。
第4 松江修習の希望倍率
1 公表表における倍率の意味
旧期の「司法修習の場所ごとの倍率等の一覧表」では,倍率Aを「第1希望者数÷配属人数」,倍率Bを「第1希望者数と第2希望者数の合計÷配属人数」としていた。
したがって,この倍率は,通常の入学試験又は採用試験のような応募者数と合格者数との比率ではない。各人が第1希望から第6希望までを記載する制度の下での希望分布を,配属人数と比較するための指標である。
2 第69期及びそれ以前の数値
第69期松江の原資料では,配属人数8人に対し,第1希望2人,第2希望1人,第3希望2人,第4希望1人,第5希望13人,第6希望23人であった。倍率Aは2÷8=0.25,倍率Bは3÷8=0.375を小数第2位まで表示した0.38である。
| 期 | 63期 | 64期 | 65期 | 66期 | 67期 | 68期 | 69期 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 倍率A | 0.25 | 0.42 | 0.20 | 0.22 | 0.63 | 0.50 | 0.25 |
| 倍率B | 0.42 | 0.50 | 0.30 | 0.22 | 0.75 | 0.67 | 0.38 |
3 旧数値から現在の配属可能性は分からない
第70期以降について,同じ定義で松江の希望者数を示す一覧表は確認できない。したがって,第69期までの数値から「現在も希望者が少ない」,「松江を第1希望にすれば配属されやすい」又は「倍率0.25である」と結論付けることはできない。
任地決定では,希望順位だけでなく,各修習地の受入人数及び個別事情が関係し得る。公表された旧倍率は希望を書く際の歴史的参考資料にとどめ,第79期の配属確率として利用すべきではない。
第5 実務修習の内容
1 4分野の内容
分野別実務修習は,民事裁判,刑事裁判,検察及び弁護の4分野を,各約2か月ずつ修習するものである。
(1) 民事裁判修習
民事裁判修習では,民事事件の記録を検討し,争点整理,事実認定,法的判断及び判決書作成の過程を学ぶ。口頭弁論,弁論準備手続,和解その他の期日を傍聴し,裁判官との討議及び起案を通じて,記録上の証拠から結論を形成する方法を修得する。
(2) 刑事裁判修習
刑事裁判修習では,刑事事件の記録を検討し,公判を傍聴し,証拠評価,事実認定,量刑及び判決書作成の過程を学ぶ。第78期松江では,刑事裁判修習中に5日間の家庭裁判所修習が組み込まれていた。
(3) 検察修習
検察修習では,被疑者及び参考人の取調べ,証拠の収集及び評価,事件処理並びに公判活動を学ぶ。指導担当検察官の下で実際の事件を素材とするが,具体的な担当範囲は事件の性質及び指導体制により異なる。
(4) 弁護修習
弁護修習では,法律事務所に配属され,依頼者との面談,事件記録の検討,法律調査,書面作成,裁判期日への同行及び事件処理方針の検討などを学ぶ。民事,刑事及び家事のどの事件を経験するかは,配属先事務所及び当時の受任事件によって異なる。
2 第78期松江修習の班別順序
第78期松江は2班であり,班別順序は次のとおりであった。これは第78期の原資料に基づくものであり,第79期の順序ではない。
| 班 | 第1クール | 第2クール | 第3クール | 第4クール |
|---|---|---|---|---|
| 1班 | 刑事裁判 | 弁護士会 | 検察庁 | 民事裁判 |
| 2班 | 検察庁 | 民事裁判 | 弁護士会 | 刑事裁判 |
3 第77期民事裁判修習の具体的日程
第77期松江の民事裁判修習予定表では,第1クールは令和6年4月16日に始まり,同日午前10時から三庁会合同開講式が予定されていた。期間中には,口頭弁論等の傍聴,複数回の起案及び講評,面談,入札期日の傍聴,債権者集会の傍聴,裁判長及び書記官による講義,DVD講義などが配置され,最終日の同年6月10日に座談会が予定されていた。
事実認定起案は同年4月26日及び5月21日に予定されていた。この予定表からは,民事裁判修習が単なる法廷傍聴ではなく,記録検討,起案,講評,執行・倒産手続の見学及び裁判所職員による講義を組み合わせたものであったことが分かる。
もっとも,これは第77期第1クールの予定表である。第79期の実施日,起案回数及び行事内容は,配属後の予定表によって確認する必要がある。
4 少人数修習についての過去の体験記
第71期に松江で修習した司法修習生の体験記では,修習生6人を3人ずつの2班に分け,民事裁判修習では裁判官3人と修習生3人が1対1の関係となったこと,期日前の協議及び期日後の議論を経験したことが記されている。また,通常部で行政,労働,医療,執行,保全,非訟及び倒産関係の事件にも接したとされる。
この体験記は,少人数庁における密接な指導の一例を示す。当時の人数,裁判官配置及び事件構成に基づく個人の経験であり,第79期にも同じ指導比率又は事件経験が保障されるものではない。
第6 住居と修習給付金
1 住居は各自で確保する
第79期司法修習生採用選考申込みの手引は,実務修習地における住居を各自で確保するものとしている。松江に司法研修所の寮が用意されることを前提にしてはならない。
賃貸借契約では,①入居可能日,②契約期間,③短期解約違約金,④家具及び家電の有無,⑤インターネット環境,⑥駐車場,⑦退去予告期間,⑧集合修習への移動時期を確認する必要がある。
2 住居を探す際の地理的な基準
分野別実務修習の中心となる3機関は,いずれも松江市母衣町に所在する。
| 機関 | 所在地 | 公表された交通案内 |
|---|---|---|
| 松江地方裁判所 | 松江市母衣町68 | JR松江駅から約1.5キロメートル,バス停「県民会館前」から徒歩約6分又は「裁判所前」利用 |
| 松江地方検察庁 | 松江市母衣町50 松江法務総合庁舎 | 松江地方検察庁公式サイトの所在地案内参照 |
| 島根県弁護士会 | 松江市母衣町55番地4 松江商工会議所ビル7階 | JR松江駅からバス又はタクシーで約10分 |
この位置関係から,住居を選ぶ際は,母衣町への徒歩,自転車又はバスによる所要時間が一つの基準となる。ただし,弁護修習の配属先事務所,選択型実務修習の実施場所及び裁判所支部等への移動が母衣町だけで完結するとは限らない。
現在の募集物件及び賃料相場は変動するため,本記事では特定の物件,家賃又は推奨地区を断定しない。配属決定後に,修習期間,勤務先及び給付要件を確認した上で契約すべきである。
3 修習給付金
(1) 基本給付金
第79期の基本給付金は,一給付期間につき13万5000円である。給付期間の途中で給付資格を取得し,又は失った場合は,所定の方法により日割り計算される。
(2) 住居給付金
第79期の住居給付金は,一給付期間につき3万5000円である。賃貸住宅に居住して家賃を負担することなどの要件を満たし,所定の届出及び資料提出をした場合に支給される。
住居を借りれば当然に支給されるものではない。届出期限を過ぎた場合は住居給付金を受けられないことがあるため,採用時及び住居変更時の案内を直ちに確認する必要がある。
(3) 移転給付金
修習に伴い住所又は居所を移転する必要がある場合は,要件を満たし,所定の届出をすることにより,旧居住地から新居住地までの経路等に応じた移転給付金が支給される。
実際の支給額は一律ではない。移転の必要性,経路及び届出内容により決まるため,契約又は転居の前後に「司法修習生の修習給付金について」の該当箇所を確認すべきである。
4 給付金の課税関係と裁判例
第79期向けの公式案内は,基本給付金及び住居給付金を雑所得として所得税及び住民税の課税対象とし,移転給付金を課税対象外としている。また,基本給付金及び住居給付金から源泉徴収はされず,修習に必要な書籍費,交通費等を必要経費として控除することはできないとしている。
東京地方裁判所令和4年12月22日判決(令和3年(行ウ)第48号・所得税更正処分取消請求事件)は,司法修習生の基本給付金が所得税法上の非課税所得に当たらず,雑所得に当たるとして,修習生側の請求を棄却した。現行の公式案内も,基本給付金及び住居給付金を雑所得として取り扱っている。
裁判所ウェブサイトの裁判例検索及び関連する公表資料を確認した範囲では,松江修習の配属,住居,班分け又は希望倍率を直接の争点とした裁判例は確認できなかった。裁判所ウェブサイトで検索できない裁判例の不存在まで意味するものではない。
第7 松江での生活情報
1 市内交通
松江市の公式観光情報は,市内交通として松江市営バス,一畑バス,JR山陰本線,一畑電車,タクシー,レンタカー及びレンタサイクルを案内している。
松江地方裁判所はJR松江駅から約1.5キロメートルであり,裁判所,検察庁及び弁護士会が母衣町に集中している。日常の通勤方法は,住居の場所,天候,荷物及び配属先に応じて,徒歩,自転車又はバスを組み合わせるのが現実的である。
2 自動車の要否
3機関の所在地だけを見れば,自動車がなければ通勤できない配置ではない。他方で,法律事務所,裁判所支部,現地調査又は選択型実務修習の場所によっては,自動車による移動が便利な場合がある。
したがって,配属決定直後に自動車が必須又は不要と断定せず,①住居,②弁護修習先,③選択型実務修習の内容,④公共交通の時刻,⑤駐車場費用を確認して判断すべきである。
3 気候と服装
気象庁の松江平年値は,1991年から2020年までの観測値に基づく。主な数値は次のとおりであり,特定年の予報ではない。
| 項目 | 平年値 |
|---|---|
| 年降水量 | 1791.9ミリメートル |
| 7月降水量 | 234.1ミリメートル |
| 9月降水量 | 204.1ミリメートル |
| 1月平均気温 | 4.6度 |
| 8月平均気温 | 27.1度 |
| 年降雪量合計 | 68センチメートル |
| 年最深積雪 | 20センチメートル |
第79期の松江での分野別実務修習は4月から11月までであり,梅雨期及び夏の暑さへの準備が必要となる。B班の選択型実務修習は翌年1月8日まで続くため,松江に残るプログラムの場合は,冬用の衣類,防水性のある履物及び降雪時の交通への備えも必要となる。
第8 公表資料から確認できない事項
1 未確認事項の一覧
本記事の調査で公表資料から確認できなかった重要事項は,次のとおりである。
①第79期松江の配属人数
②第79期松江の班数及び4分野の班別順序
③第70期以降の松江の希望順位別人数及び旧資料と同じ定義による倍率
④第79期に松江で実施される選択型実務修習のプログラム,定員及び実施場所
⑤第79期民事裁判,刑事裁判,検察及び弁護修習の詳細な日別予定
⑥特定時点の松江市内の空室,賃料相場及び司法修習生向け物件の有無
これらについては,旧期の人数,予定表又は体験談から補完したように見せず,【要確認】事項として扱う必要がある。
2 配属前に確認すべき資料
配属前後には,①司法研修所からの採用及び配属通知,②第79期配属現員表,③松江における班別実務修習日程,④島根県弁護士会等からの住居及び弁護修習案内,⑤選択型実務修習のプログラム,⑥修習給付金の届出期限を順に確認すべきである。
とりわけ,住居給付金及び移転給付金は届出の遅れが不支給につながり得るため,住居契約と給付手続を別々に考えないことが重要である。
第9 出典・参考資料
1 法令及び司法修習制度
①e-Gov法令検索「裁判所法」66条,67条,67条の2及び68条
②最高裁判所「司法修習の概要」
③最高裁判所「司法修習生」
④司法研修所「第79期司法修習生採用選考申込みの手引」PDF2頁(文書1頁)
⑤最高裁判所「司法修習生の修習給付金について(第79期)」PDF4頁~5頁(文書1頁~2頁),PDF21頁(文書18頁)
2 日程,人数,希望倍率及び実務修習
①「第79期司法修習日程」掲載の司法研修所日程表画像
②「第77期司法修習生配属現員表(令和6年3月21日現在)」1頁
③「第78期司法修習生配属現員表(令和7年3月19日現在)」1頁
⑤「実務修習地の選び方(修習地ごとの人数,希望倍率等の基礎データを含む。)」
⑥司法研修所事務局長令和7年2月4日付け事務連絡「令和6年度(第78期)司法修習生の修習開始等について」PDF10頁~11頁
⑦松江地方裁判所令和6年4月2日付け「第77期松江修習の実務修習日程」PDF1頁~2頁
3 住居及び生活情報
①松江地方裁判所「松江地方裁判所・松江家庭裁判所・松江簡易裁判所」所在地及び交通案内
②松江地方検察庁「松江地方検察庁・松江区検察庁」所在地案内
③島根県弁護士会「お問い合わせ」所在地及び交通案内
④松江観光協会「松江市内の移動」
⑤気象庁「松江(島根県)平年値(年・月ごとの値・主な要素)」統計期間1991年~2020年
4 裁判例及び体験記
①東京地方裁判所令和4年12月22日判決(令和3年(行ウ)第48号・所得税更正処分取消請求事件)「判決全文」
②稲門法曹会メールマガジン第65号「司法修習地便り―松江―」(第71期司法修習生による体験記)