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共有持分買取業者の目的とトラブル対応―共有物分割と建物買取請求権(AI作成)

第1 業者からの要求は内容ごとに分けて判断する

他の共有者が持分を業者に売却しても,残った共有者が直ちに自分の持分を売り,又は業者の持分を買い取る義務を負うわけではない。
ただし,持分を取得した業者も共有者としての権利を持つため,使用の対価や共有物分割の請求まで一括して拒めるわけではない。
届いた書面が,任意の売買の提案なのか,使用料の請求なのか,裁判所からの訴状なのかを分けて確認する必要がある。

本記事は,令和8年8月31日現在の法令及び公表裁判例に基づき,不動産の持分を取得した業者への対応と,持分売却前の確認事項を扱う。
借地上建物については,最高裁令和8年8月28日第二小法廷判決(令和6年(受)第2169号)が,建物の持分に借地借家法14条の建物買取請求権は成立しないと判断したため,第4でその範囲を説明する。

第2 共有持分買取業者の目的と取得できる権利

1 持分だけの売却と業者の回収方法

共有持分とは,不動産全体の所有権に対する割合であり,建物の特定の部屋や土地の特定の区画そのものではない。
共有者は,原則として他の共有者の同意を得ずに自己の持分を売却できるが,他の共有者の持分まで自分の意思だけで移転することはできない(民法176条・206条,工藤寛太ほか共編『共有不動産をめぐるトラブル対応の手引』146頁~148頁)。

持分を取得した業者が資金を回収する方法としては,他の共有者への持分売却,残りの持分の取得後の一括売却,共有者全員による一括売却への合意,共有物分割による清算などが考えられる。
どの方法を予定しているかは業者ごとに異なるため,「持分を買った」という事実だけから特定の目的や違法性を決め付けることはできない。

もっとも,借地上建物の売買に伴う土地賃借権の譲渡には,民法612条等による別の検討が必要となる。
建物の持分を取得することと,土地所有者との土地利用関係を確保することは同じではない。

また,マンションの共用部分の持分や敷地利用権には,区分所有法15条・22条の分離処分に関する規律がある。
専有部分自体の共有持分を売る場合と,専有部分から共用部分の持分等を切り離して売る場合とを区別しなければならない。

2 使用と管理を自由に決められるか

民法249条1項は,各共有者が持分に応じて共有物の全部を使用できると定めている。
そのため,業者が持分を取得しただけで,居住する他の共有者の使用権限が当然に消滅するわけではない。

他方,同条2項は,別段の合意がある場合を除き,自己の持分を超える使用の対価を他の共有者に償還する義務を定めている。
使用料を請求された場合は,従前の無償使用の合意,使用の範囲,請求期間及び金額の算定根拠を確認することになり,これらによって請求の当否や金額が変わり得る。

共有物の形状又は効用を著しく変える変更は原則として他の共有者の同意を要し,管理に関する事項は持分の価格の過半数で決する(民法251条1項・252条1項)。
2分の1の持分だけでは過半数に達せず,過半数を有していても,共有者間の決定に基づいて使用する共有者に特別の影響を及ぼす決定には,その者の承諾が必要である(同条3項)。

第3 共有物分割請求を受けた場合の選択肢

1 現物分割,価格賠償及び競売

民法256条1項は,各共有者に原則としていつでも分割を請求できる権利を認める一方,5年を超えない期間の不分割合意を認めている。
協議が調わず,又は協議ができないときは,同法258条1項により裁判所へ分割を請求できるため,業者からの連絡を拒むだけでは共有関係は解消しない。

裁判による分割方法は,民法258条2項・3項により,次のように整理できる。

分割方法内容確認する点
現物分割土地等を現物で分ける分割の物理的・経済的な実現可能性
価格賠償による分割共有者に金銭債務を負担させ,他の共有者の持分を取得させる取得の相当性,評価額,支払能力等
競売による分割競売して代金を分ける前二者による分割ができないか,分割で価格が著しく減少するおそれがあるか

現行条文は,現物分割と価格賠償による分割の間に一律の先後関係を定めていない。
競売は補充的な方法であるが,「売却提案を断れば必ず競売になる」とも,「住んでいれば競売にはならない」ともいえない。

2 住み続けるための価格と支払能力

最高裁平成8年10月31日第一小法廷判決(平成3年(オ)第1380号,民集50巻9号2563頁)は,特定の共有者が全部を取得し,他の共有者に持分価格を賠償する方法を認めた。
その判断では,取得させることの相当性,適正な価格評価,取得者の支払能力及び共有者間の実質的公平が問題となる(判決本文3頁~4頁)。

同判決は,具体的な事件については支払能力の審理が不十分であるとして,原判決の共有物分割に関する部分を破棄し,差し戻した。
したがって,居住の必要性を説明するだけでなく,自己資金や融資の可能性を具体化することが,価格賠償による取得を求める上での課題となる。

業者が持分を取得した際の代金と,裁判で適正と評価される賠償額は同じ問題ではない。
任意交渉の提示額も含め,不動産全体の評価,持分割合,利用・権利関係及び取引条件を分けて検討し,「業者の仕入額に一定額を足せば買い戻せる」といった計算を前提にしないことが適切である。

3 相続した不動産では手続を分ける

相続財産の共有を解消する場合は,通常の共有物分割と遺産分割を区別する必要がある。
民法258条の2は,共同相続人間で遺産分割をすべき部分を共有物分割から原則として除外し,持分が相続財産に属する場合について,相続開始から10年経過後の特則を定めている。

この特則には,遺産分割の請求があり,相続人が異議を申し出た場合の例外があり,分割請求を受けた相続人の異議申出は,裁判所から請求があった旨の通知を受けた日から2か月以内とされる(同条2項・3項)。
相続を原因とする共有について訴状等が届いた場合は,放置せず,対象が特定不動産の持分か相続分そのものかも含めて確認し,手続の詳論は遺産相続における共有状態の解消方法を参照されたい。

第4 令和8年8月28日最高裁判決と借地上建物の持分

1 建物持分に14条の買取請求権は成立しない

最高裁令和8年8月28日第二小法廷判決(令和6年(受)第2169号,建物買取代金請求事件)は,借地上の区分所有建物の専有部分について,相続人4名のうち3名から合計4分の3の持分を買い受けた者による請求を扱った。
買主は,土地所有者が賃借権持分の譲渡を承諾しないとして,借地借家法14条に基づき,取得した建物持分を時価で買い取るよう求めた。

最高裁は,賃借権の目的である土地上の建物の持分には,同条の建物買取請求権は成立せず,区分所有建物の専有部分の持分でも同じであるとして,上告を棄却した(判決本文1頁~3頁)。
公表判決には買主の業種の記載がないため,この事件の買主を共有持分買取業者であったと断定することはできないが,示された建物持分についての解釈は,業者が取得する取引を検討する際にも問題となる。

2 土地所有者の不利益と共有物分割

判決は,建物全部の場合と異なり,持分だけの買取りを認めると,土地所有者は自ら望まない代金負担を強いられた上で建物の共有関係に入り,自由に処分できないという不利益を被るおそれがあると説明した。
また,持分取得者は共有物分割によって投下資本の回収を図り得るため,建物全部の取得者に比べて,買取請求権を認める必要性が乏しいとした(判決本文2頁~3頁)。

この判決が否定したのは,持分取得者が14条により土地所有者へ買取りを強制する方法である。
当事者間の任意の持分売買や共有物分割を一律に禁止したものではなく,期間満了時の同法13条の建物買取請求権について,すべて同じ結論を示したものでもない。

3 補足意見が示した射程

尾島明裁判官の補足意見は,借地借家法19条の承諾に代わる許可と,同法14条によって土地所有者の意思にかかわらず売買契約を成立させる場合とでは,場面も効果も異なると説明する。
19条で建物持分を扱うことと,14条の買取請求権を建物持分に認めないことは,矛盾しないという趣旨である(判決本文3頁)。

さらに補足意見は,土地所有者が建物の残りの持分を有し,買取りによって建物全部を取得するという,本件とは異なる仮定の場合も検討した。
その場合でも,一方的な代金負担は土地所有者だけに生じるのに対し,双方には価格賠償を含む共有物分割という調整方法があるとして,建物持分について一般的に14条の買取請求権を認めないとする考えを示している(判決本文4頁)。

第5 借地上建物を売買する前の承諾確認

1 通常売買は譲渡前の手続を検討する

借地借家法19条1項は,借地権者が建物を第三者へ譲渡しようとする場面で,土地所有者が賃借権の譲渡等を承諾しない場合の裁判所の許可を定める。
第三者が賃借権を取得しても土地所有者に不利となるおそれがないこと等が要件であり,申立人は借地権者であって,通常の売買を終えた買主がいつでも事後的に利用できる制度として扱ってはならない。

裁判所は,借地権の残存期間や従前の経過等を考慮し,条件変更や財産上の給付を伴う許可をすることができる(同条1項・2項)。
また,土地所有者が裁判所の定める期間内に自ら譲渡等を受ける旨を申し立てる同条3項の仕組みは,買主が14条による買取りを求める場合とは別である。

借地上建物の売買では,契約締結前に,土地契約の種類・設定時期・更新履歴,承諾の有無,許可申立ての要否及び承諾が得られない場合の売買契約の扱いを確認したい。
地代や借地権評価と借地非訟の入口については,借地権の地代・権利金・評価方法―相場,税務及び借地非訟も参照されたい。

2 競売・公売には別の申立期限がある

借地借家法20条は,競売又は公売によって借地上建物を取得した第三者について,賃借権の譲渡承諾に代わる許可を申し立てる制度を定めている。
同条3項の申立期限は,建物の代金を支払った後2か月以内であり,通常売買の買主に一般的な2か月の猶予を与える規定ではない。

建物持分を取得する計画でも,地主の承諾が得られなければ14条で投下資本を回収できると見込むことは,前記最高裁判決に反する。
競売等の取得経路,取得対象及び承諾手続を,代金支払前から区別して検討することになる。

第6 強引な勧誘と売買・訴訟の違法性

1 勧誘規制とクーリング・オフ

宅地建物取引業者による威迫や,契約を締結しない意思を示した後の継続的な勧誘,迷惑な時間の電話・訪問等には,宅地建物取引業法47条・47条の2及び同法施行規則16条の11による規制がある。
ただし,契約勧誘と,既に取得した権利に基づく通知・請求・訴訟は区別する必要があり,どの契約を勧誘する連絡かを特定して評価することになる。

宅地建物取引業法37条の2のクーリング・オフは,宅建業者が売主となる売買等を対象とする規定であり,自分の不動産持分を業者に売る場面では利用できない。
国民生活センターも,自宅の売却トラブルに関する注意喚起で,消費者が売主となる場合にクーリング・オフができないことを説明している。

クーリング・オフができないことと,契約の効力を一切争えないことは同じではない。
例えば,詐欺又は強迫による意思表示の取消しは民法96条の問題となるため,既に署名した場合は,契約書と勧誘・説明の記録を保存し,適用要件と期間を速やかに確認する必要がある。

2 弁護士法73条と権利の実行

弁護士法73条は,他人の権利を譲り受け,訴訟,調停,和解その他の手段によってその権利の実行をすることを業とする行為を規制している。
もっとも,利益を得るために権利を取得し,その権利について訴訟を起こしたというだけで,直ちに同条違反となるわけではない。

最高裁平成14年1月22日第三小法廷判決(平成12年(受)第828号,民集56巻1号123頁)は,ゴルフ会員権に関する預託金返還請求事件で,紛議を助長する等の弊害のおそれがなく,社会的経済的に正当な業務の範囲内にある場合は,同条に違反しないとした。
その上で,権利の譲受けと実行の方法・態様,業務の内容や実態等をさらに審理させるため,原判決を破棄し,差し戻している(判決本文4頁~5頁)。

この判決は共有持分買取業者の行為を直接判断したものではなく,業者一般を適法又は違法と決める根拠にはならない。
弁護士法上の問題を検討する場合は,具体的な取得経緯と権利実行の実態を確認する必要があり,悪質という評価語や安い取得価格だけで結論を出すことは避けるべきである。

第7 通知を受けた共有者と売却予定者の初動

1 まず手元の書面と登記を照合する

通知を受けた共有者は,まず差出人,対象不動産,持分割合,請求内容及び回答期限を,登記事項証明書と手元の契約書に照らして確認する。
裁判所からの書類が含まれる場合は,業者が交渉上示した期限と混同せず,答弁書の提出期限や期日を先に確認する。

居住・使用料が争点なら,使用開始の経緯や共有者間の合意が分かる書面・メール等を,借地なら当初契約と更新・承諾の資料を探すことが先になる。
書面が見つからない場合は,当時のやり取りや支払記録で補える点を整理し,存在しない書類が作成・保存されていることを前提にしない。

売却予定者は,自分が売る対象と代金,支払時期,解除条件,費用負担を契約案で確認し,内容を理解できないまま署名や決済を進めないことが適切である。
不明な条件があるときは,相手方に説明と修正案を求めるところから始めることができる。

残る共有者の側では,業者と元の共有者との売買契約書や業者の資金資料を当然に取得できるわけではないため,まず公開の登記情報と任意に示された資料を使い,追加資料の必要性を絞ることになる。
入手できない場合は,その資料が結論に必要なのか,登記や相手方の通知で代替できるのかを先に検討する。

2 価格調査と専門家への相談を絞る

持分を買い取って利用を続けたい場合は,手元の資金資料と取引条件を確認し,必要に応じて金融機関に融資の可否・条件を照会する。
査定や取引事例を比較しても評価差が解決を左右する場合に不動産鑑定を検討し,当初から費用の高い調査を一律に行う必要はない。

勧誘の態様が問題となる場合は,日時,担当者,発言及び拒絶の意思を伝えた経過を記録し,メール,書面及び既存の録音を保存する。
国民生活センターのFAQは,明確に勧誘を断ることや,悪質な業者について免許行政庁へ情報提供することを案内している。

自宅売却の不安やトラブルについては,国民生活センターの注意喚起が消費生活センター等への相談を勧めている。
訴状への対応,取消し又は借地の期限が問題となる場合は,それぞれの手続を扱う弁護士へ資料を示して相談することが適切である。

第8 出典

1 法令

民法176条,206条,249条,251条,252条,256条,258条,258条の2,612条及び96条(e-Gov法令検索)。
借地借家法13条,14条,19条及び20条(e-Gov法令検索)。
建物の区分所有等に関する法律15条及び22条(e-Gov法令検索)。
宅地建物取引業法37条の2,47条及び47条の2(e-Gov法令検索)。
宅地建物取引業法施行規則16条の11(e-Gov法令検索)。
弁護士法73条(e-Gov法令検索)。

2 裁判例

最高裁令和8年8月28日第二小法廷判決(令和6年(受)第2169号,建物買取代金請求事件,裁判所ウェブサイト),判決本文1頁~4頁。
最高裁平成8年10月31日第一小法廷判決(平成3年(オ)第1380号,民集50巻9号2563頁,裁判所ウェブサイト),判決本文3頁~5頁。
最高裁平成14年1月22日第三小法廷判決(平成12年(受)第828号,民集56巻1号123頁,裁判所ウェブサイト),判決本文4頁~5頁。

3 公的機関の資料

①国民生活センター「高齢者の自宅の売却トラブルに注意」(令和3年6月24日公表)。
②国民生活センター「【しつこい不動産勧誘】繰り返し自宅の売却を勧誘してくる。勧誘をやめさせたい。」(FAQ番号418,令和8年1月15日更新)。

4 文献

①工藤寛太・横山和之・岸本紀子共編『共有不動産をめぐるトラブル対応の手引―取得・管理・処分のポイント―』(新日本法規出版,2024年)146頁~148頁。