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「在留資格の取消し」制度――入管法22条の4の要件・手続と企業のリスク(AI作成)

第1 この記事が扱う対象

在留資格の取消しとは,出入国管理及び難民認定法(以下「入管法」という。)第22条の4に基づき,法務大臣が,本邦に在留する外国人が現に有する在留資格を,在留期間の満了を待たずに消滅させる処分をいう。取消しの対象は外国人本人の在留資格であるが,虚偽の雇用契約書や在籍証明を提出した受入れ機関の側にも,本人の在留資格を失わせる原因を作出したことになり得るという構造があり,かつ雇用主自身が入管法上の刑事責任を問われる場面もある。この記事は,令和8年8月時点の現行法及び出入国在留管理庁が令和8年4月に開示した内部審査基準(入国・在留審査要領第10編の2)を基に,取消事由と手続の全体像を整理した上で,外国人を雇用する企業が負い得るリスクを検討する。あわせて,令和6年改正により永住者を対象として新設され令和9年4月1日に施行が予定されている取消事由についても,施行前の制度として現状を整理する。

第2 在留資格の取消しとは何か――入管法22条の4の位置づけ

入管法22条の4第1項は,「別表第一又は別表第二の上欄の在留資格をもつて本邦に在留する外国人」について,同項各号に掲げる事実のいずれかが判明したときは,法務大臣が当該外国人の現に有する在留資格を取り消すことができると定める。取消しの対象となるのは,難民の認定又は補完的保護対象者の認定を受けている者を除く,在留資格をもって在留する外国人全般であり,取消権者は法務大臣であるが,平成31年4月1日以降は永住者を含めて地方出入国在留管理局長への権限委任が可能となっている。取消しの効果は将来に向かって生じるものであり,取消しの時点で在留資格が消滅するにとどまり,既往に遡って上陸や在留が違法であったことになるものではない。なお,仮上陸許可,特例上陸の許可,仮滞在許可及び特別永住許可は,在留資格の決定を伴わない処分であるため,本条による取消しの対象とはならない。

第3 取消事由10通りの内容(入管法22条の4第1項)

入管法22条の4第1項は,取消事由を第1号から第10号まで定めている。条文の性質から大きく4つに分類することができる。

1 上陸許可等の取得過程における不正(第1号~第4号)

①第1号は,偽りその他不正の手段により,上陸拒否事由に該当しないものとして上陸許可の証印等を受けたことを取消事由とする。②第2号は,第1号以外の場合で,偽りその他不正の手段により,在留資格の決定を伴う上陸許可の証印等を受けたことを取消事由とする。本邦で単純労働を行う者が「技術・人文知識・国際業務」に該当すると申告して上陸許可を受けた場合や,婚姻を偽装して「日本人の配偶者等」への変更許可を受けた場合が典型例である。③第3号は,不実の記載のある文書又は図画(電磁的記録を含む。)の提出又は提示により上陸許可の証印等を受けたことを取消事由とする。第1号・第2号と異なり,申請人本人が虚偽記載であることを認識している必要はない。受入れ機関が虚偽の書類を提出して在留資格認定証明書の交付を受け,申請人本人がそのことを知らずに上陸許可を受けた場合も本号に該当し得る。この構造については第7で改めて取り上げる。④第4号は,偽りその他不正の手段により在留特別許可又は仮滞在許可に係る在留資格取得許可を受けたことを取消事由とする。

2 許可された活動を行っていないこと(第5号・第6号)

第5号は,別表第一の在留資格をもって在留する者が,当該在留資格に応じた活動を行っておらず,かつ,正当な理由なく他の活動を行い又は行おうとして在留していることを取消事由とする。この号は平成28年入管法改正により追加された規定であり,実習先から失踪した技能実習生が別の事業場で就労している事実を発見しても,失踪から3か月を経過していなければ従来の第6号では取消しができず,その間に本人が所在不明になってしまう事態への対応として新設された経緯がある。第6号は,別表第一の在留資格に応じた活動を継続して3か月(高度専門職2号は6か月)以上行わないで在留していることを取消事由とする。いずれも「正当な理由がある場合」は取消事由から除外されており,出入国在留管理庁の内部審査基準は,本来の活動からの離脱の程度と,本邦での生活に占める他の活動の位置付けを総合的に考慮して判断するとしている。

3 配偶者としての活動を行っていないこと(第7号)

第7号は,「日本人の配偶者等」又は「永住者の配偶者等」の在留資格をもって在留する者が,配偶者の身分を有する者としての活動を継続して6か月以上行わないで在留していることを取消事由とする。法務大臣は,本号に該当する事実が判明したことにより取消しをしようとする場合には,入管法22条の5により,在留資格の変更又は永住許可の申請の機会を与えるよう配慮しなければならない。出入国在留管理庁は,正当な理由がある場合の例として,配偶者からの暴力(いわゆるDV)を理由とする避難又は保護の必要,子の養育等やむを得ない事情による別居(生計を一にしている場合),本国の親族の傷病等による長期出国,離婚調停又は離婚訴訟中であることの4類型を公表している。

4 住居地届出義務違反(第8号~第10号)

第8号から第10号までは,中長期在留者の住居地届出義務違反を取消事由とする。第8号は上陸許可等を受けて新たに中長期在留者となった者が90日以内に住居地の届出をしないこと,第9号は届け出た住居地から退去した日から90日以内に新住居地の届出をしないこと,第10号は虚偽の住居地を届け出たことをそれぞれ取消事由とする。これらの号は,第8号又は第9号に該当する事案として取消手続を開始した後であっても,意見聴取通知書の送達又は通知の前に住居地の届出を行った場合には,取消手続そのものを終止する取扱いになっている。

第4 公表統計からみる取消事由の実際の分布

出入国在留管理庁が公表した統計によれば,令和7年(2025年)の在留資格取消件数は1,446件で,前年比22.1%増となり過去最多を更新した。在留資格別では技能実習が973件(67.3%),留学が343件(23.7%),技術・人文知識・国際業務が63件(4.4%)を占め,国籍・地域別ではベトナムが947件(65.5%)と突出している。取消事由別の内訳が示されているのは第6号,第5号及び第2号の3類型で,第6号(活動不履行3か月以上)が999件(69.1%),第5号(他の活動を行い又は行おうとしていること)が350件(24.2%),第2号(偽りその他不正の手段)が48件(3.3%)であった。令和6年(2024年)分は総件数1,184件(令和5年の1,240件から4.5%減),技能実習710件(60.0%),留学312件(26.4%),技術・人文知識・国際業務69件(5.8%),第6号761件(64.3%),第5号303件(25.6%),第2号72件(6.1%)となっている。

この分布からは,実際に取り消されている事案の大半が,技能実習生や留学生が本来の活動を継続して行わなくなったこと(第5号・第6号)を理由とするものであり,虚偽の手段による取得(第2号・第3号)を理由とする取消しは件数としては少数にとどまることが読み取れる。もっとも,件数の多寡は取消事由としての重大性や,個々の企業が負うリスクの大小をそのまま意味するものではない。

第5 取消しの手続――意見聴取から通知まで

法務大臣は,在留資格の取消しをしようとするときは,その指定する入国審査官に当該外国人の意見を聴取させなければならない。意見の聴取に先立ち,意見の聴取の期日及び場所並びに取消しの原因となる事実を記載した意見聴取通知書を送達するのが原則であり,出入国在留管理庁の内部審査基準は,送達の日から2週間後を意見聴取の期日として指定するのを原則としている。当該外国人又はその代理人は,意見聴取の期日に出頭して意見を述べ,証拠を提出することができるほか,入管法施行規則25条の12により,意見聴取の終結までの間,取消しの原因となる事実を証する資料の閲覧を求めることができる。他方,正当な理由なく意見の聴取に応じないときは,法務大臣は意見の聴取を行わないまま取消しをすることができる。

出入国在留管理庁の内部審査基準は,非弁護士が業として被聴取者の代理人となり意見聴取に参加することは弁護士法72条に抵触するおそれが高いため適当でないと明記しており,代理人選任を検討する場合はこの点に留意する必要がある。取消しの当否は,入国審査官による意見聴取調書及び意見聴取報告書を踏まえて法務大臣(委任を受けた地方局長を含む。)が判断するが,取消事由に該当すると認められる場合であっても,在留状況や家族状況その他の事情に照らし,引き続き在留を認めることが相当であれば取り消さない運用が予定されている。

第6 取消し後の効果――出国準備期間と退去強制事由への接続

在留資格を取り消す場合,法務大臣は在留資格取消通知書を送達して取消しを実行する。入管法22条の4第7項は,第1号及び第2号を除く事由により取消しをする場合には,30日を超えない範囲内で外国人が出国するために必要な期間を指定するものとすると定めている。ただし,第5号による取消しで,当該外国人が逃亡すると疑うに足りる相当の理由がある場合には,この期間指定は行われない。第1号又は第2号に該当することを理由とする取消しは,そもそも出国準備期間の指定という枠組みの外に置かれており,入管法24条2号の2により,取消しと同時に退去強制事由に該当する。第5号による取消しで期間の指定を受けなかった者も,入管法24条2号の3により退去強制事由に該当する。期間の指定を受けた者がその期間を徒過して残留した場合は,入管法24条2号の4の退去強制事由に該当するほか,入管法70条1項3号の3により刑事罰(3年以下の拘禁刑若しくは300万円以下の罰金又はその併科)の対象ともなる。取消しに伴い,中長期在留者が所持する在留カードは入管法19条の14第1号により失効し,返納義務が生じる。取消しの決定に不服がある場合は取消訴訟を提起することができ,出入国在留管理庁の内部審査基準は,取消通知書の送達に際して取消訴訟の提起に関する事項を教示する取扱いとしている。

第7 企業(雇用主・受入れ機関)に生じ得るリスク

在留資格の取消しは外国人本人に対する処分であるが,受入れ機関である企業の側にも見過ごせないリスクが生じる場面がある。

1 虚偽書類の提出が従業員本人の在留資格を失わせる構造(第3号)

第3の1で述べたとおり,入管法22条の4第1項第3号による取消しは,申請人本人が虚偽記載であることを認識している必要がない。出入国在留管理庁の内部審査基準は,受入れ機関が虚偽の書類を提出して在留資格認定証明書の交付を受け,申請人がそのことを知らずに上陸許可を受けた場合や,雇用主・受入れ機関が虚偽の内容の文書を作成し,申請人がそのことを知らずに当該文書を提出して上陸許可の証印等を受けた場合を,本号に該当する例として明示的に挙げている。すなわち,企業が提出する雇用契約書,決算書,出席証明書等に不実の記載があれば,本人には何らの落ち度がなくても在留資格が取り消される構造になっている。同審査要領は,利害関係人として雇用主・受入れ機関・招へい機関の職員等を明示的に想定しており,こうした事案では雇用主自身が意見聴取の手続に利害関係人として参加を求められる可能性もある。

2 不法就労助長罪(入管法73条の2)は過失でも成立する

入管法73条の2第1項は,事業活動に関し外国人に不法就労活動をさせた者,これを自己の支配下に置いた者,業として不法就労活動をあっせんした者について,3年以下の拘禁刑若しくは300万円以下の罰金に処し,又はこれを併科すると定める。同条第2項は,当該外国人の活動が在留資格に応じた活動に属しないこと等を知らないことを理由として処罰を免れることはできず,過失がないときに限り免責されると定めており,出入国在留管理庁が事業主向けに配布しているリーフレットも,「外国人を雇用しようとする際に,当該外国人が不法就労者であることを知らなかったとしても,在留カードを確認していない等の過失がある場合には,処罰を免れません」と明記している。したがって,採用時に在留カードの提示を求めず,又は提示された在留カードの真正性や就労制限の有無を確認しなかった場合には,結果として不法就労者を雇用していたときに過失責任を問われる余地がある。

3 営利目的等不正取得助長罪(入管法74条の6)との異同

入管法74条の6は,営利の目的で,不法入国等(入管法70条1項1号・2号)又は偽りその他不正の手段による上陸許可等の取得(同項2号の2)の実行を容易にした者について,73条の2と同じ3年以下の拘禁刑若しくは300万円以下の罰金に処し,又はこれを併科すると定める。この罪は営利の目的で実行を容易にしたことを要件とする幇助類型の犯罪であり,73条の2第2項のような明文の過失犯規定は置かれていない。したがって,企業が虚偽の在籍証明等を提出した場合に74条の6が直ちに成立するかどうかは,営利の目的の有無及び実行を容易にしたという故意の内容次第であって,一律に論じることはできない。もっとも,第7の1で述べたとおり,故意の有無にかかわらず,虚偽の書類提出という事実自体が従業員本人の在留資格を失わせる第3号の取消事由となり得る点は,74条の6の刑事責任の成否とは別の問題として企業が認識しておくべきである。

4 採用時・雇用中に確認すべき事項

以上を踏まえると,企業が実務上確認すべき事項は次のとおり整理できる。①採用時に在留カードの原本を提示させ,就労制限の有無欄及び資格外活動許可欄を確認すること。②雇用契約書その他の提出書類の記載内容が事実と一致していることを確認し,実態と異なる業務内容を記載しないこと。③在留資格に応じた活動と実際の業務内容が一致しているかを雇用開始後も確認すること。④技能実習生については,実習先からの無断離脱(失踪)を把握した場合,当該実習生を継続して雇用し続けることが不法就労助長罪に該当し得ることを認識すること。⑤入管法19条の2に基づく就労資格証明書は,外国人本人からの申請により交付される任意の制度であり,取得は義務ではないが,雇用主が対象者の就労可能な活動範囲を確認する手段として利用できる。なお,同証明書の提示又は提出がないことを理由に不利益な取扱いをしてはならないとされている点にも留意する必要がある。

第8 裁判例の現況

裁判所ウェブサイトの裁判例検索を用いて,入管法22条の4に基づく在留資格の取消処分そのものの適法性が争われた訴訟(取消訴訟,無効確認訴訟又は執行停止申立事件)を網羅的に検索したが,該当する裁判例は裁判所ウェブサイト上には見当たらなかった。在留資格取消制度は平成16年入管法改正により新設された比較的新しい制度であり,取消し後は速やかな出国又は退去強制手続に直結する事案が多いと推測されることも,訴訟提起の少なさの背景にあり得る。もっとも,裁判所ウェブサイトに掲載されていないことは,当該制度に関する訴訟が存在しないことを意味しない。なお,在留資格の取消し(入管法22条の4)とは条文上別個の処分である「上陸許可の取消し」(入管法22条)については,裁判所ウェブサイト上に複数の裁判例が確認できる。例えば東京地方裁判所平成18年3月28日判決(平成17年(行ウ)第79号,「上陸許可取消処分取消等」)は,不法上陸につき本人に帰責性がない少年について在留特別許可を付与しなかった判断を違法とした事例であり,大阪地方裁判所平成17年11月18日判決(平成14年(行ウ)第161号,「退去強制令書発付処分取消等請求事件」)は,虚偽の身分関係を作出して「定住者」の在留資格を取得して不法上陸した者について上陸許可が取り消された後の異議申出棄却裁決及び退去強制令書発付処分がいずれも取り消された事例である。両者とも在留資格の取消し(22条の4)ではなく上陸許可の取消し(22条)に関する事案である点には注意を要する。

第9 令和6年改正――永住者に対する取消事由の新設(施行前)

1 新設される取消事由の内容

令和6年(2024年)6月14日に成立し同月21日に公布された入管法等改正法により,永住者を対象とする新たな在留資格取消事由が設けられ,令和9年(2027年)4月1日に施行が予定されている。出入国在留管理庁が公表している「永住許可制度の適正化Q&A」によれば,新設される取消事由は,①支払義務があることを認識しているにもかかわらず,あえて公租公課の支払をしないこと(故意の不払い),②窃盗,詐欺,恐喝,殺人罪や自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律の危険運転致死傷罪など,一定の重大な故意犯により拘禁刑に処せられたことの2類型であり,過失運転致死傷罪や道路交通法違反,罰金刑にとどまる場合は対象外とされている。同Q&Aは,病気や失業など本人に帰責性のないやむを得ない事情で支払えない場合は取消しの対象として想定していないとし,配偶者や子の在留資格には直接の影響が及ばないと説明している。現行の入管法22条の4は第10号までの取消事由を定めるにとどまり,令和8年8月時点でこの新設事由はまだ施行されていない。

2 入管庁の説明と弁護士会・国連人種差別撤廃委員会の異論

これに対し,関東弁護士会連合会は令和7年(2025年)5月29日付けの理事長声明で,条文上は在留カードの常時携帯義務違反等の入管法上の義務違反についても故意・過失を問わず,かつ初回の違反であっても取消事由となり得ること,公租公課の不払いについても支払能力の有無にかかわらず取消事由となり得ると条文上は読めること,比較的軽微な犯罪であっても執行猶予が付された拘禁刑であれば取消事由となり得ることを指摘し,出入国在留管理庁が「一部の悪質な者を対象とする」と説明する運用上の限定が,条文の文言そのものには反映されていないと批判している。同声明は,永住資格取消事由の拡大規定を削除する内容での再改正を求めるとともに,再改正がなされない場合には取消事由の範囲の明確化とガイドライン作成過程への当事者・支援団体・弁護士の参画を求めている。

同声明はまた,国連人種差別撤廃委員会が2024年6月25日付けの書簡で,改正法が永住者の人権に及ぼし得る不均衡な影響への懸念を伝え,日本政府に見直し又は廃止の措置について回答を求めたことにも言及している。施行まで一定の期間があるため,具体的な運用基準(ガイドライン)の策定状況を含め,今後の動向を注視する必要がある。

第10 出典・参考資料

1 法令

  • 出入国管理及び難民認定法(昭和26年政令第319号)22条の4,22条の5,19条の14,24条,70条,73条の2,74条の6(e-Gov法令検索
  • 出入国管理及び難民認定法施行規則(昭和56年法務省令第54号)25条の4~25条の12(e-Gov法令検索

2 裁判例

  • 東京地方裁判所平成18年3月28日判決 平成17年(行ウ)第79号「上陸許可取消処分取消等」(裁判所ウェブサイト
  • 大阪地方裁判所平成17年11月18日判決 平成14年(行ウ)第161号「退去強制令書発付処分取消等請求事件」(裁判所ウェブサイト

3 公的資料