(長期評価に基づく予見可能性を否定した,東電刑事裁判に関する東京地裁令和元年9月19日判決)
*7 東京地裁令和元年9月19日判決(担当裁判官は42期の永渕健一,53期の今井理及び68期の柏戸夏子)には例えば,以下の判示があるのであって,結論として,長期評価に基づく予見可能性を否定しました。 ① その際(山中注:平成23年3月7日に東京電力が原子力安全・保安院に対して津波対策等について報告した際)、保安院側から「長期評価」を踏まえた対策工事を直ちに実施すべきであり、その対策工事が終わるまでは本件発電所の運転を停止すべきであるというような指摘がされることはなかった。 ② 平成20年6月10日の被告人武藤への説明、平成21年4月ないし5月頃の被告人武黒への説明のいずれもがそうであったように、平成23年3月初旬までの時点においては、「長期評価」の見解は具体的な根拠が示されておらず信頼性に乏しいと評価されていたところ、そのような「長期評価」に対する評価は、相応の根拠のあるものであったというべきである。 ③ 他の原子力事業者、行政機関、地方公共団体のいずれにおいても、「長期評価」を全面的に取り入れることがなく、東京電力社内、他の原子力事業者、専門家、行政機関のどこからも、対策工事が完了するまでは本件発電所の運転を停止すべきである旨の指摘もなかったことに照らせば、これら関係者にとっても同様であったとみるべきであって、平成23年3月初旬までの時点における原子力安全対策の考え方からみて、被告人ら3名の対応が特異なものであったとはいい難く、逆に、このような状況の下で、被告人ら3名に、10m盤を超える津波の襲来を予見して、対策工事が完了するまでは本件発電所の運転を停止すべき法律上の義務があったと認めるのは困難というべきである。 ④ 確かに、被告人ら3名は、本件事故発生当時、東京電力の取締役等という責任を伴う立場にあったが、そのような立場にあったからといって、発生した事故について、上記のような法令上の規制等の枠組みを超えて、結果回避義務を課すに相応しい予見可能性の有無に関わらず、当然に刑事責任を負うということにはならない。
1 衆議院議員柚木道義君提出黒川前東京高検検事長の処分に関する質問に対する答弁書(令和2年6月5日付)には以下の記載があります。 ① 黒川弘務元東京高等検察庁検事長(以下「黒川氏」という。)の処分については、法務省において、同省における調査結果を踏まえ、同省の内規に基づく監督上の措置として訓告を行うことが相当であると判断し、検事総長に対し、当該調査結果とともに、同省としては訓告を行うことが相当と考える旨を伝えたところ、検事総長においても、訓告を行うことが相当であると判断し、その旨決定したところである。 ② 法務省における調査の結果、黒川氏については、令和二年五月一日頃及び同月十三日頃に、報道機関関係者三名と金銭を賭けた麻雀を行っていたことのほか、約三年前から一月に一回から二回程度の頻度で、金銭を賭けた麻雀を行っていたことが認められたものの、旧知の間柄の者との間で、必ずしも高額とまではいえない換金比率で行われたものであること、黒川氏が事実を認めて深く反省していたこと等の事情を総合的に考慮し、同省の内規に基づく監督上の措置として訓告としたものである。 このように、黒川氏の処分については、処分を決するに当たり必要な調査を行った上で判断したものであって、適正な処分を行ったものと認識しており、再調査の必要はないと考えている。 ③ お尋ねの「黒川氏の「退職金」の総額」及び「支給額はいくらで、いつ支給されたのか」については、個人のプライバシーに関わる事柄であり、お答えすることは差し控えたい。 一般論として、国家公務員が退職した場合に支給する退職手当については、国家公務員退職手当法(昭和二十八年法律第百八十二号)の規定に基づき算出された額について、原則として、職員が退職した日から起算して一月以内に支払われることとされている。 また、御指摘の「再調査を行う場合」に係る仮定の質問に対するお答えは差し控えたい。 ④ 御指摘の川原法務省刑事局長の答弁(山中注:令和二年五月二十二日の衆議院法務委員会で法務省の刑事局長は、黒川氏が参加した賭け麻雀のレートについて千点当たり百円を賭ける「テンピン」だったと示した上で「必ずしも高額とは言えない」として、最終的に安倍内閣は国家公務員法上の懲戒処分も行わず、退職金も支給する旨の答弁のこと。)は、国家公務員法第八十二条第一項に規定する懲戒処分又は法務省の内規に基づく監督上の措置の量定に当たっての事情について述べたものであり、犯罪の成否について述べたものではなく、他方、御指摘の答弁書(平成十八年十二月十九日内閣衆質一六五第二二五号)四及び五についてでお答えしたのは、あくまで刑法(明治四十年法律第四十五号)の賭博罪の成否についての一般論を述べたものである。 その上で、犯罪の成否については、捜査機関が収集した証拠に基づいて個々に判断されるべき事柄であることから、その余のお尋ねについて、政府としてお答えすることは差し控えたい。
3 参議院議員小西洋之君提出東京高等検察庁検事長の賭け麻雀等の非違行為の処分の検討経緯等に関する質問に対する答弁書(令和2年6月30日付)には以下の記載があります。 ① 黒川弘務元東京高等検察庁検事長(以下「黒川氏」という。)の処分については、法務省において、同省における調査結果を踏まえ、同省の内規に基づく監督上の措置として訓告を行うことが相当であると判断し、検事総長に対し、当該調査結果とともに、同省としては訓告を行うことが相当と考える旨を伝えたところ、検事総長においても、訓告を行うことが相当であると判断し、その旨決定したところであり、御指摘の「法務省が調査に着手し訓告相当の結論に至る以前」及び「政府が国会で答弁しているところの「協議」」において、内閣及び内閣官房と同省は処分内容について議論したことはなく、また、内閣及び内閣官房は同省に対し、調査や処分に関する指示や要請を行っていない。 ② お尋ねの「資料」の具体的な範囲が必ずしも明らかではないが、内閣及び内閣官房は、法務省から、同省及び検事総長が黒川氏の処分について訓告を行うことが相当であると判断するに当たり作成した資料を受け取っていない。 ③ 安倍内閣総理大臣及び菅内閣官房長官は、森法務大臣から、黒川氏の処分に関し、文書による報告及び説明を受けていない。
4 参議院議員小西洋之君提出黒川検事長の処分における「懲戒処分の加重要件」の違法な切り捨てに関する質問に対する答弁書(令和2年6月30日付)には以下の記載があります。 ① 御指摘の①から⑤までは、「懲戒処分の指針について」(平成十二年三月三十一日付け職職-六八人事院事務総長通知)の「第二 標準例」に掲げられた処分より重くすることが考えられる場合として記載されている例であって、国家公務員法(昭和二十二年法律第百二十号)第八十二条第一項に規定する懲戒処分(以下「懲戒処分」という。)を行うに当たってこれらへの該当性の有無についての検討が逐一求められるものではないところ、現時点で、黒川弘務元東京高等検察庁検事長(以下「黒川氏」という。)の非違行為についての御指摘の①の該当性の有無を検討することは考えておらず、お尋ねについてお答えすることは困難である。
→ 山中注:「ご指摘の①から⑤まで」というのは, 人事院の「懲戒処分の指針について」(平成十二年三月三十一日職職―68)においては、「標準例に掲げる処分の種類より重いものとすることが考えられる場合」として、「① 非違行為の動機若しくは態様が極めて悪質であるとき又は非違行為の結果が極めて重大であるとき」、「② 非違行為を行った職員が管理又は監督の地位にあるなどその職責が特に高いとき」、「③ 非違行為の公務内外に及ぼす影響が特に大きいとき」、「④ 過去に類似の非違行為を行ったことを理由として懲戒処分を受けたことがあるとき」、「⑤ 処分の対象となり得る複数の異なる非違行為を行っていたとき」がある、としている。 のことです(黒川検事長の処分における「懲戒処分の加重要件」の違法な切り捨てに関する質問主意書(令和2年6月17日付)の冒頭に書いてあります。)。 ② お尋ねの趣旨が必ずしも明らかではないが、御指摘の森法務大臣の答弁は、一般論として、「懲戒処分の指針について」において記載されている「非違行為の動機若しくは態様が極めて悪質であるとき又は非違行為の結果が極めて重大であるとき」について、いかなる行為がこれに該当するのかは、個別具体的な事案によることになるため、画一的にお答えすることは困難である旨を述べたものであり、御指摘の「個別の事案の処分の検討に際して」は、一、二及び十一についてで述べたとおり、これへの該当性の有無についての検討が逐一求められるものではない。 ③ お尋ねの趣旨が必ずしも明らかではないが、黒川氏の処分については、処分を決するに当たり必要な調査を行った上で、「懲戒処分の指針について」の記載内容等をも踏まえ、諸般の事情を総合的に考慮して法務省の内規に基づく監督上の措置として訓告を行うことが相当であると 判断したものであって、適正な処分を行ったものと認識しており、「国家公務員法の趣旨に反する違法なもの」との御指摘は当たらない。