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弁護士の登録・登録換えの進達拒絶事由と資格審査会(AIリライト)

第1 登録・登録換えと進達の仕組み

1 弁護士会を経由する登録制度

弁護士となるには,入会しようとする弁護士会を経て,日本弁護士連合会(以下「日弁連」という。)に弁護士名簿の登録を請求する必要がある(弁護士法9条)。

所属弁護士会を変更するときも,新たに入会しようとする弁護士会を経て,日弁連に登録換えを請求する(同法10条)。このため,いずれの請求にも,入会先の弁護士会が日弁連へ請求書類を送る「進達」という段階がある。

2 弁護士会の進達拒絶と日弁連の拒絶

弁護士会は,弁護士法12条1項又は2項の事由があると判断した場合,その資格審査会の議決に基づき,登録又は登録換えの請求を日弁連へ進達しないことができる。これが進達拒絶である。

これに対し,日弁連は,弁護士会から請求の進達を受けた後でも,同じ法定事由があり,登録又は登録換えを拒絶することが相当であるときは,日弁連資格審査会の議決に基づいて拒絶できる(同法15条1項)。日弁連に法定事由を離れた無限定の拒絶権があるわけではなく,弁護士会の進達拒絶と日弁連の登録拒絶とは,主体及び手続の異なる処分である。

第2 進達拒絶の四つの類型

1 弁護士会の秩序又は信用を害するおそれがある者

第1の類型は,弁護士会の秩序又は信用を害するおそれがある者である(弁護士法12条1項柱書き)。刑事処分又は懲戒処分の有無だけで機械的に決まる要件ではなく,過去の行為の内容,その後の経過,改善状況,弁護士会の指導監督に服する姿勢その他の具体的事情が,法定要件との関連で検討される。

令和7年6月1日の拘禁刑導入後,弁護士法7条1号は「拘禁刑以上の刑に処せられた者」を欠格事由とする。刑の執行猶予期間が満了するなどして欠格事由が消滅しても,犯罪事実が12条の審査で当然に考慮対象外となるわけではないが,犯罪歴があることだけで当然に進達拒絶となるものでもない。

登録を拒絶されれば弁護士として職務を行えないという重大な効果が生じる。したがって,強制加入制の下では,具体的事実に基づく客観的かつ公正な審査が必要であり,「あらゆる事情を考慮できる」という説明だけで拒絶範囲を広く捉えるべきではない。

2 心身に故障がある者

第2の類型は,心身に故障があるときに弁護士の職務を行わせることがその適正を欠くおそれがある者である(弁護士法12条1項1号)。現行法は,診断名,障害名又は成年後見制度の利用の有無だけで一律に判断せず,具体的な職務遂行能力と,利用できる補助又は支援を含む個別事情を審査する構造である。

成年被後見人又は被保佐人であることを一律の欠格事由とした規定は,令和元年法律第37号により削除された。「精神的又は身体的な機能の欠陥」といった抽象的な表現ではなく,法文の「心身に故障」と,現実の職務遂行可能性を分けて検討する必要がある。

3 懲戒処分等から3年を経過した後の請求

弁護士法7条3号は,除名,業務禁止,登録抹消,免職又は税理士業務禁止等の処分から3年を経過しない者を欠格とする。3年が経過して弁護士となる資格を回復した者についても,処分対象となった事実及びその後の事情から,なお弁護士の職務を行わせることがその適正を欠くおそれがある場合には,進達拒絶の対象となり得る(同法12条1項2号)。

もっとも,3年の経過後も当然に拒絶されるわけではない。処分の内容,時間の経過,反省・改善状況その他の現在的事情を踏まえ,適正を欠くおそれが具体的に判断される。

4 直前まで地域内で常勤公務員であった者

請求前1年以内に,入会を求める弁護士会の地域内で常時勤務を要する公務員であった者について,その地域内で弁護士の職務を行わせることが「特に」その適正を欠くおそれがあるときも,進達を拒絶できる(弁護士法12条2項)。

昭和24年5月12日の参議院法務委員会では,従前の職務上の影響力の不当利用を防ぎ,公務員在職中及び弁護士転身後の職務の公正を確保する趣旨が説明されている。公務員経験一般を対象とする規定ではなく,①請求前1年以内,②当該地域内,③常時勤務を要する公務員,④当該地域内で職務を行わせることが特に適正を欠くおそれ,という限定がある。

第3 登録請求と登録換え請求の違い

1 登録換えでは地域的・具体的な不適当性が問題となること

登録換えを請求する者は,既に他の弁護士会に所属し,弁護士として職務を行っている。したがって,転入先の弁護士会が弁護士資格一般を初めから再審査するような運用は,登録請求と登録換え請求の違いを失わせる。

東京高裁昭和50年1月30日判決(昭和48年(行ケ)第9号)は,登録換えの拒絶について,転入先の地域で職務を行わせることが特に不適当であるかを具体的に判断すべきであり,資格審査を実質的な懲戒の代替として用いてはならないという限定を示した。

2 現行の登録取扱規則に表れた違い

日弁連の現行登録取扱規則の様式では,初回登録の請求者に対し,弁護士法12条1項各号及び2項に関する申告書の提出を求める一方,登録換えについては同条2項に関する申告書を中心とする。この様式上の違いも,登録換えが弁護士資格一般の再審査ではないことを示している。

第4 進達拒絶後の審査請求と取消訴訟

1 理由の書面通知と3か月のみなし拒絶

弁護士会が進達を拒絶したときは,請求者に対し,速やかにその旨及び理由を書面で通知しなければならない(弁護士法12条3項)。また,登録又は登録換えの請求後3か月を経過しても弁護士会が日弁連に進達しないときは,請求者は進達を拒絶されたものとみなすことができる(同条4項)。

2 日弁連への審査請求

請求者は,進達拒絶について,行政不服審査法により日弁連へ審査請求できる。日弁連は,日弁連資格審査会の議決に基づいて裁決し,審査請求に理由があると認めるときは,弁護士会に進達を命じなければならない(弁護士法12条の2)。

もっとも,弁護士会の審査手続に瑕疵があるだけで,実体的に拒絶事由がないと直ちに判断できない場合にまで,常に進達命令が出るわけではない。行政不服審査法上の取消裁決を経て,弁護士会で改めて審査する場合がある。

3 東京高裁への取消訴訟

日弁連が進達拒絶に対する審査請求を却下又は棄却した場合,及び日弁連が登録又は登録換えを拒絶した場合,請求者は東京高裁に取消訴訟を提起できる(弁護士法16条1項)。日弁連が審査請求又は進達を受けてから3か月を経過しても裁決又は登録等をしない場合も,みなし棄却又はみなし拒絶により同訴訟を提起できる(同条2項)。

弁護士会の進達拒絶については,日弁連の裁決に対してのみ取消訴訟を提起できる(同条3項)。そのため,弁護士会の進達拒絶を受けて,直ちにその弁護士会を被告として取消訴訟を提起する制度ではない。

第5 資格審査会の組織と手続

1 資格審査会の位置付けと構成

各弁護士会及び日弁連には,法律上の必要的機関として資格審査会が置かれる。資格審査会は,その置かれた弁護士会又は日弁連の請求により,登録,登録換え及び登録取消しについて必要な審査を行う(弁護士法51条)。

会長には当該弁護士会又は日弁連の会長が充てられ,委員には弁護士,裁判官,検察官及び学識経験者が含まれる(同法52条)。日弁連資格審査会では,日弁連会長のほか,弁護士委員8人,裁判官委員1人,検察官委員1人及び学識経験者委員1人の計11人が置かれ,予備委員も置かれる(日弁連会則66条)。会長及び委員6人以上の出席を要し,出席委員の過半数で議決し,可否同数のときは会長が決する(同会則67条)。

2 審査手続の保障

資格審査会が進達拒絶又は登録拒絶につながる議決をするには,あらかじめ本人に通知し,弁明の機会を与えなければならない(弁護士法55条)。日弁連資格審査手続規程は,これを具体化し,①除斥・忌避・回避,②審査開始の通知,③非公開・書面審理の原則,④代理人の選任,⑤書証・証人・鑑定・検証等の証拠調べ,⑥審尋及び陳述,⑦調査部会,⑧議決・議事録・送達・記録閲覧,⑨日弁連での登録・登録換え審査,⑩進達拒絶に対する審査請求を定めている。

資格審査会は,単に委員の属性を整える機関ではない。登録拒絶が職業遂行に及ぼす重大な影響を踏まえ,本人の手続保障の下で事実と法定要件を審査する機関である。

3 委員選任の実際

弁護士法52条3項は,裁判官委員及び検察官委員の推薦手続を定め,その他の委員の委嘱には総会の決議を要する。委員の任期は2年であり,予備委員にも同様の仕組みが及ぶ(同条4項,53条)。

日弁連の総会議案及び理事会報告によれば,第76回定期総会(令和7年6月13日)には資格審査会委員及び予備委員の選任を理事会に一任する議案が掲げられ,令和7年9月18日・19日の理事会は委員及び予備委員の委嘱を承認している。他方,第77回定期総会(令和8年6月12日)の一任議案は綱紀委員会等を対象とし,資格審査会を含んでいないため,「毎年5月ころに選任を理事会等へ一任する」と一律に説明するのは正確でない。

第6 主要な裁判例

1 東京高裁昭和50年1月30日判決

東京高裁昭和50年1月30日判決(昭和48年(行ケ)第9号)は,東京の弁護士会に登録していた弁護士による大阪への登録換えが問題となった事案である。同判決は,登録換え審査の地域的・具体的性格を示し,日弁連の裁決を取り消した。

2 東京高裁昭和53年2月21日判決

東京高裁昭和53年2月21日判決(昭和48年(行ケ)第170号)は,過去の犯罪事実に加え,脳血管障害による失語・片麻痺等が問題とされた事案である。同判決は,判断能力が保たれ,補助者を用いて契約・助言等を行えることなどを考慮し,日弁連の拒絶裁決を取り消した。

この判決は,心身の状態を病名又は機能障害だけで抽象的に評価せず,利用可能な補助を含む現実の職務遂行可能性を個別に判断すべきことを示す。

3 東京高裁平成3年9月4日判決

東京高裁平成3年9月4日判決(平成2年(行ケ)第175号)は,弁護士会の秩序又は信用を害するおそれの判断では,登録請求者の経歴,行為,態度その他の事情を総合考慮し得るとした。

同時に,同判決は,弁護士会が強制加入団体であり,登録拒絶が弁護士としての職業遂行を妨げることから,資格審査会及び日弁連に客観的かつ公正な判断が求められることを前提としている。「その他あらゆる事由」という判示部分だけを切り離し,拒絶裁量が無限定であると読むべきではない。

4 進達拒絶と国家賠償法上の責任

京都地裁平成21年11月19日判決(判例タイムズ1339号94頁,判例時報2077号120頁)及び大阪高裁平成22年5月12日判決(判例タイムズ1339号90頁)は,弁護士名簿登録請求の進達拒絶に関与した弁護士会会長及び資格審査会会長の行為を,国家賠償法1条1項の公権力の行使に当たる公務員の職務行為と捉え,その職務行為について個人として不法行為責任を負わないとした。

両判決は,令和8年8月9日の裁判年月日及び関連語による検索では裁判所ホームページへの掲載を確認できなかった。したがって,裁判例が存在しないという意味ではなく,裁判所HP未掲載の裁判例として判例誌の掲載情報を示すのが正確である。

第7 最近の日弁連における運用

1 令和7年度の登録・登録換え件数

日弁連の2025年度(令和7年度)会務報告書によれば,同年度の弁護士名簿への登録は1755人,登録換えは543人,登録取消しは592人であった。同年度末の弁護士会員数は4万7400人である。

2 資格審査会の付議・議決件数

同年度の日弁連資格審査会は,8件の付議を受け,9回開催し,前年度からの繰越しを含む10件を議決した。内訳は,進達拒絶に対する審査請求1件を棄却し,登録請求9件を認容し,登録拒絶は0件である。

もっとも,当該年度の登録請求付議7件及び登録認容9件のうち各7件は,旧々弁護士法5条3号に基づく請求である。この統計から,犯罪歴,心身の故障その他の特定類型について,認容率又は拒絶率を導くことはできない。

3 通常案件の処理と担当主査理事への委任

令和7年度の常務理事会では,弁護士法4条に基づく登録請求204件及び同法5条又は6条に基づく登録請求15件が承認され,これらから資格審査会へ付議された案件は0件であった。他方,登録請求進達拒絶に関する審査請求は,報告事項として1件記録されている。

令和7年5月8日の第1回常務理事会は,修習終了後1年未満の者等の定型的な登録請求,登録換え及び登録取消し,進達拒絶に対する審査請求を資格審査会へ付議する事務等を担当主査理事へ委任した。ただし,担当主査理事が必要と認める案件は常務理事会へ付議する仕組みが残されている。通常案件の事務処理の委任と,資格審査会委員の選任に関する総会決議とは,別の問題である。

第8 関連記事

弁護士登録請求の方法及び必要書類

弁護士の登録番号と司法修習期との対応関係

裁判官及び検察官の弁護士職務経験制度

出典・参考資料

1 法令・会則・会規・規則

e-Gov法令検索・弁護士法(昭和24年法律第205号)7条,9条~16条,51条~55条
日弁連会則66条・67条
日弁連資格審査手続規程(会規第21号)
日弁連登録取扱規則(規則第52号)
日弁連・会則,会規,規則等

2 裁判例

東京高裁昭和50年1月30日判決(昭和48年(行ケ)第9号,裁判所ウェブサイト)
東京高裁昭和53年2月21日判決(昭和48年(行ケ)第170号,裁判所ウェブサイト)
東京高裁平成3年9月4日判決(平成2年(行ケ)第175号,裁判所ウェブサイト)
④京都地裁平成21年11月19日判決(判例タイムズ1339号94頁,判例時報2077号120頁。裁判所HP未掲載)
⑤大阪高裁平成22年5月12日判決(判例タイムズ1339号90頁。裁判所HP未掲載)

3 公的資料

第5回国会参議院法務委員会第13号・昭和24年5月12日(国立国会図書館国会会議録検索システム)
②日本弁護士連合会「2025年度(令和7年度)会務報告書」第1「登録」,第5「理事会」及び第7「法定委員会」
③日本弁護士連合会「第76回定期総会議案」(令和7年6月13日)及び「2025年度第6回理事会報告」(令和7年9月18日・19日)
大阪弁護士会・委員会紹介

4 文献

①日本弁護士連合会調査室編著『条解弁護士法〔第5版〕』(弘文堂,令和元年)110頁~138頁,425頁~439頁
②日弁連調査室『弁護士業務ハンドブック』(平成24年)10頁~13頁
③升田純『なぜ弁護士は訴えられるのか―判例からみた現代社会と弁護士の法的責任』(民事法研究会,平成28年)553頁~556頁
④現代民事判例研究会編『民事判例3 2011年前期』(日本評論社,平成23年)65頁
⑤岡田正則・榊原秀訓・本多滝夫編『判例から考える行政救済法〔第2版〕』(日本評論社,令和元年)222頁
⑥深見敏正『国家賠償訴訟 改訂版』(青林書院,令和3年)21頁
⑦西埜章『国家賠償法コンメンタール 第3版』(勁草書房,令和2年)87頁