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試し出勤が有効な場合と有効でない場合-疾患別・職種別の復職判断(AI作成)

第1 試し出勤の有効性は疾患名ではなく確認できる事実で決まる

1 結論

試し出勤が有効であるのは,復職可否を判断するために残っている具体的な不確実性を,安全な方法で減らせる場合である。
例えば,通勤を継続できるか,現実の職場で注意・集中を保てるか,作業後の疲労が翌日までに回復するか,勤務条件を調整すれば安定して働けるかが,診察や自宅生活だけでは分からない場合には,目的を絞った試し出勤が役立つ。

反対に,試し出勤をしても判断に必要な情報が増えない場合,実際の職務と異なる活動しか行わない場合又は試すこと自体に許容できない危険がある場合には,試し出勤の有効性は低い。
一度出勤できたことを完全復職の証明としたり,予定を一部こなせなかったことを復職不可の自動的な根拠としたりする運用も適切ではない。

本記事でいう「有効」とは,制度又は合意の法的な有効・無効ではなく,復職判断に必要な情報を得る方法として有用であるという意味である。
試し出勤中の給与,最低賃金,労災・通勤災害及び傷病手当金については,「休職中の試し出勤制度―給与・最低賃金,労災・通勤災害及び傷病手当金の取扱い(AI作成)」で扱っている。

2 本記事の対象と基準時

本記事は,民間企業における私傷病休職中の社員について,正式な復職決定の前に行う職場での試し出勤を中心に,模擬出勤及び通勤訓練も必要に応じて扱う。
令和8年9月2日現在の法令,公表資料及び医学文献に基づく整理であり,就業規則,労働契約,疾患の状態及び職務内容によって個別の結論は異なる。

3 五つの条件を満たす場合に有効性が高い

試し出勤の有効性が高いのは,①確認したい事項が具体的であること,②復職後に予定される職務又は職場環境と対応していること,③安全に中止又は変更できること,④必要な配慮を試して比較できること,⑤結果を一回の合否ではなく他の資料と合わせて評価することという五つの条件を満たす場合である。
この五条件は前記指針の文言をそのまま列挙したものではなく,本記事が公的資料及び医学研究を横断して整理した実務上の評価枠組みである。

厚生労働省の「治療と就業の両立支援指針」は,試し出勤制度を,長期休業者の勤務時間又は勤務日数を短縮して円滑な復帰を支援し,本人と職場の不安を解消して具体的な準備を行うための事業主の自主的な制度としている。
したがって,単に出勤日数を消化させるのではなく,何を確認し,どの条件を整えるための期間であるかを決める必要がある。

第2 疾患と職務を掛け合わせる判断方法

1 疾患名から一律の結論を出さない

同じ疾患でも,症状,治療内容,副作用,後遺症,回復経過及び日内・日間の変動は人によって異なる。
また,同じ「事務職」でも,定型入力を自分のペースで行う仕事と,締切の下で複数案件を判断しながら顧客対応をする仕事とでは,必要な能力及び失敗時の影響が異なる。

前記指針は,疾病を理由に安易に就業を禁止せず,主治医及び産業医等の意見を勘案して,可能な限り配置転換,作業時間の短縮その他の措置を検討する一方,就業による増悪,再発及び労働災害を防止することを就業の前提としている。
このため,診断名の一覧表ではなく,社員の現在の機能と具体的な職務負荷を照合する必要がある。

2 疾患側の四つの軸

疾患側では,①症状及び機能制限が現在どの程度安定しているか,②一日の中又は日ごとの変動があるか,③治療及び服薬による時間的制約又は副作用があるか,④負荷による増悪又は重大な事故の可能性があるかを確認する。

医学的な就業可否は主治医等が判断する事項であり,会社が試し出勤によって診断又は治療効果を判定するものではない。
会社が確認するのは,医学的意見で許容された範囲内で,具体的な職務及び配慮が継続可能かという職務適合の事実である。

3 職務側の四つの軸

職務側では,①身体的負荷,②認知的・心理的負荷,③勤務時間及び通勤を含む時間的負荷,④失敗が本人,同僚,顧客又は公衆に与える危険の大きさを確認する。

厚生労働省の「治療と就業の両立支援指針・解説及び疾病別留意事項」の様式例は,立位,重量物,暑熱・寒冷・屋外,振動工具,不特定多数との対面,病原体,呼吸用保護具,単独作業,高所,危険な機械操作,自動車運転,残業,出張及び夜勤を職務情報として主治医に伝える構造である。
職種名だけでなく,これらの負荷を具体化することが,疾患別・職種別分析の出発点となる。

4 変動性と危険性の四象限

症状の変動が小さく,失敗時の危険も小さい場合は,医学的情報と通常の面談で判断できることが多く,試し出勤の追加的な有効性は低い。

症状の変動が大きいが,失敗時の危険が小さい場合は,複数日又は治療周期をまたいで,勤務時間,作業量及び休憩を調整しながら観察する試し出勤が有効になりやすい。

症状の変動が小さくても,失敗時の危険が大きい場合は,単に一度できたかでは足りず,免許・法令上の制限,標準化された機能評価,医学的検査及び安全手順を優先する必要がある。

症状の変動が大きく,失敗時の危険も大きい場合は,元の危険業務を実地に試す方法は適さないことが多い。
低危険の模擬課題,監視下の評価,別業務又は勤務条件の変更によって確認し,危険業務への復帰は別に判断する必要がある。

第3 休職原因となった疾患ごとの分析

1 うつ病,適応障害,不安障害等のメンタルヘルス不調

メンタルヘルス不調では,自宅で落ち着いて過ごせることと,決まった時刻に通勤し,職場の刺激の中で注意・集中を保ち,対人関係及び締切に対応して,翌日までに回復できることが一致しない場合がある。
この差が復職判断上の未解決事項であれば,試し出勤は有効である。

厚生労働省の「主治医と産業医・職域間の連携好事例集・治療と仕事の両立支援ガイド」25頁は,正式な復職決定前の模擬出勤,通勤訓練及び試験出社が,不安の緩和とより的確な判断につながるとし,短時間勤務又は軽作業から段階的に業務量及び時間を増やす方法を示している。

試し出勤では,①睡眠覚醒リズム,②混雑時間帯の通勤,③注意・集中の持続,④複数の指示への対応,⑤報告・相談,⑥対人刺激への反応,⑦作業後及び翌朝の疲労を確認する。
復職後に行わない単純な課題だけを静かな別室で行っても,実際の職場適応を判断する資料としては弱い。

職場の配置,上司,業務量又は対人関係が発症若しくは増悪に関係した可能性がある場合,原因となった条件を変えないまま同じ環境への耐久試験として試し出勤を行うことは適切ではない。
前記資料25頁も,元の職場への復帰は原則にすぎず,以前の職場環境がストレスの原因であった場合又は同じ業務が困難な場合には,配置又は業務の変更を検討すべきことを示している。

急性の症状が残り,主治医が試し出勤を療養上不適切と判断している場合又は自傷他害,重大な判断障害その他の安全上の危険を管理できない場合は,職場で試して可否を確かめる段階ではない。
この場合は治療と医学的再評価を優先し,必要に応じて外部のリワーク,模擬課題又は通勤訓練から検討する。

精神疾患による休業者を対象とした系統的レビューでは,職場に関与する支援が復職を早める可能性が示されているが,証拠の確実性は低いと評価されている。
また,メンタルヘルス及び筋骨格系疾患の職場復帰介入に関するレビューでは,医療,関係者間の調整及び職務調整を複数組み合わせた介入が支持されており,試し出勤だけを単独で行えば足りるという知見ではない。

2 がん及びがん治療後

がんでは,疾患の部位及び進行度だけでなく,手術後の動作制限,薬物療法の副作用,放射線治療の通院及び倦怠感,感染への注意等が職務に影響する。
同じ社員でも治療周期によって体調が変わるため,体調の良い一日だけの試し出勤から通常勤務の継続性を判断することはできない。

前記の厚生労働省資料18頁~20頁は,薬物療法を1週間~2週間程度の周期で行う場合に副作用による周期的な体調変化があり得ること,放射線治療は平日に連日行われる場合が多いこと及び手術後の合併症・動作制限には個人差があることを示している。

治療周期をまたいだ疲労の変化,通院日と勤務日の組合せ,休憩及び在宅勤務の効果が不明であれば,これらを比較する短期間の試し出勤又は復職後の段階的勤務は有効である。
一方,手術後に禁止された動作又は感染上避けるべき環境を実地に試して安全性を確認することは適切ではなく,主治医の制限を前提に職務を変更する必要がある。

がん患者の職場復帰介入に関する系統的レビューでは,無作為化比較試験で明確な復職改善が確認されなかったものがあり,評価方法及び研究数の限界も指摘されている。
したがって,がんという診断名から試し出勤の効果を一般化せず,治療経過と具体的な職務上の不確実性に合わせて用いるべきである。

3 脳卒中,脳外傷及び高次脳機能障害

脳卒中等では,歩行又は日常生活が回復していても,注意,記憶,遂行機能,言語,視野,疲労又は自己認識に障害が残り,仕事で初めて問題が明確になることがある。
実際の文書,端末,指示系統及び時間制約に近い課題を安全に再現できる場合,試し出勤又は職場での作業練習は有効性が高い。

前記の厚生労働省資料21頁~25頁は,脳卒中後に目立ちにくい認知機能障害が残り得ること,障害に応じて作業転換等が必要となる場合があること及び復職後しばらくして精神面の問題が現れる場合があることを示している。

確認すべき事項は,①指示を保持して順序どおりに実行できるか,②割込み後に作業へ戻れるか,③誤りを自ら発見して修正できるか,④疲労によって成績が低下しないか,⑤必要な補助手段が機能するかである。
単純作業を短時間こなせたことだけでは,複雑な判断又は長時間の持続可能性は分からない。

後天性脳損傷の復職介入に関する系統的レビューは,個別化,本人及び使用者の関与,職場調整,職場での練習並びに技能訓練を組み合わせた介入を有力な構成要素としている。
ただし,運転,高所,危険機械,単独作業又は他人の安全に直結する判断については,実際の危険業務を試すのではなく,神経心理学的評価,シミュレーション,監視下の低危険課題及び専門職の評価を先行させる必要がある。

4 心疾患及び循環器疾患

心疾患では,病名だけでなく,心機能,治療内容,不整脈の危険,運動負荷,暑熱・寒冷,夜勤,長時間労働及び精神的緊張との関係を検討する。
前記の厚生労働省資料35頁~40頁は,重量物,温度変化,夜勤・不規則勤務,長時間労働及び精神的緊張を重要な職務負荷として挙げ,開胸手術後,心臓植込みデバイス装着後及び心不全では個別の就業上の注意が必要であるとしている。

医師が許容する負荷の範囲が明確で,その範囲内で休憩,移動距離,作業速度又は勤務時間の調整が機能するかが不明であれば,監視可能な低負荷の試し出勤は有効である。
もっとも,失神又は重篤な不整脈が運転若しくは危険作業中に生じる可能性,手術後の身体的制限又は医療機器と作業環境の干渉は,職場で一度試して問題がなかったことによって解消されない。

心疾患後の復職には本人の不安,使用者の支援,職務要求及び医療者との連携が関係することが系統的レビューで示されている。
試し出勤は,医学的な危険評価を代替する検査ではなく,許容された条件下で職場調整が機能するかを確かめる方法として位置付ける必要がある。

5 糖尿病

糖尿病は,適切な治療及び定期通院ができ,合併症がなく,職務中の低血糖等の危険が管理されていれば,通常は病名だけを理由に就業を制限する必要はない。
前記の厚生労働省資料41頁~46頁も,治療を継続できれば通常勤務を続けられる場合が多い一方,食事の遅れ又は運動量の増加による低血糖,注射場所,緊急時対応及び合併症への配慮を挙げている。

勤務が定時で危険作業がなく,本人が血糖管理に習熟している場合は,試し出勤を追加しても得られる情報が少ないことがある。
反対に,不規則な休憩,長距離運転,単独作業,夜勤,重量物作業又は食事時刻を確保しにくい職務では,主治医の意見を前提に,休憩及び緊急時対応が実際に機能するかを確認する試し出勤に意味がある。

一度低血糖が起きなかったことは,将来の危険がないことの証明ではない。
試し出勤では,血糖値そのものを会社が広く収集するのではなく,必要な休憩,本人の自己管理,周囲の緊急時対応及び安全上必要な範囲の情報共有を確認する。

6 肝疾患

肝疾患では,病状が安定し症状が乏しい場合,過度の安静又は一律の就業制限はかえって適切でないことがある。
前記の厚生労働省資料26頁~29頁は,定期治療を続けるために不規則勤務又は海外出張を避ける配慮が必要な場合がある一方,一般に過度の運動制限及び安静は必要でないことを示している。

倦怠感の日内変動,通院との両立又は夜勤・出張の影響が不明であれば,勤務条件を比較する試し出勤が有効になり得る。
もっとも,進行した肝疾患で記憶・判断の障害が疑われ,運転又は危険作業の安全に関わる場合は,職場での実地試験ではなく医学的評価と危険業務の制限を優先する。

7 難病その他の症状が変動する慢性疾患

難病その他の慢性疾患では,疲労,痛み,発熱,集中力低下,運動機能,視覚又は消化器症状等が外見から分かりにくく,日によって変動する場合がある。
前記の厚生労働省資料30頁~34頁は,作業環境又は作業内容の変更によって就業継続が可能となる場合,早めの休憩が必要な場合及び進行性疾患では長期的な職務・働き方の検討が必要な場合を示している。

変動が大きい場合,一日又は数時間の試し出勤は偶然の好調又は不調に左右される。
症状の変動周期を踏まえた複数日の観察,休憩,在宅勤務,温度,移動距離又は作業姿勢の比較を行い,途中で計画を見直せる設計であれば有効性が高まる。

進行が予想される疾患では,現在できるかだけでなく,どの時点で再評価し,どの職務又は勤務条件へ移行するかを計画する必要がある。
試し出勤を将来の長期就業を保証する検査として扱ってはならない。

8 腰痛,頸肩腕障害その他の筋骨格系疾患

筋骨格系疾患では,痛みの有無だけでなく,持ち上げる重量,回数,姿勢,反復動作,振動,作業台の高さ,座位又は立位の持続時間及び休憩による回復を具体化する。
実際の職務負荷に近い安全な課題を段階的に行い,道具,姿勢,作業速度又は分担を変更した効果を比較できる場合,試し出勤は有効である。

反対に,復職後には行わない軽作業だけを実施しても,元の職務への適合性は分からない。
また,痛みが出るまで負荷を増やす耐久試験は,症状を悪化させる可能性があり,試し出勤の目的として適切ではない。

筋骨格系疾患及びメンタルヘルス不調の職場復帰介入に関する系統的レビューでは,職務調整を医療及び関係者間の調整と組み合わせる介入が支持されている。
作業現場の人間工学的評価,補助具及び作業工程の変更で判断できる事項は,本人だけを試すより職場側の条件を直接評価する方が有効である。

9 疾患別分類に載っていない疾患

腎疾患,呼吸器疾患,感染症後の症状その他の疾患についても,診断名だけで試し出勤の要否を決めることはできない。
治療日程,体力,息切れ,認知機能,感染曝露,温度,保護具,通勤及び危険作業との関係を,前記の疾患側と職務側の各軸に当てはめて検討する。

疾病ごとの公表資料又は直接の研究が乏しい場合は,類似疾患の結果をそのまま当てはめず,主治医及び産業医等に具体的職務情報を渡して個別に判断する。
分からない事項が残る場合でも,それが安全に試せる不確実性か,試してはならない危険かを分ける必要がある。

第4 職種及び職務負荷ごとの分析

1 一般事務,経理,IT及び知識労働

座って行う仕事であっても,長時間の画面作業,注意・集中,記憶,優先順位付け,複数案件の切替え,締切及び誤りの影響が問題となる。
試し出勤では,復職後に現実に求められる課題のうち機密情報を除いた代表的な課題を用い,正確性,所要時間,割込みへの対応及び時間経過による変化を確認する。

単純な資料整理又は閲覧だけを行い,通常業務の複雑さを全く再現しない場合は,職場に滞在できること以上の判断には使いにくい。
他方,復職初期に定型業務へ一時的に変更する計画が現実に実施可能であれば,その変更後の職務への適合を確認する資料にはなる。

2 接客,電話,窓口,営業及び苦情対応

対人業務では,会話能力だけでなく,予測できない質問,感情的な相手,連続した対応,立位,騒音,休憩の取りにくさ及び感染曝露を含めて評価する。
精神症状,疲労,免疫低下又は発声・聴覚の問題がある場合,接客件数,時間帯,同席者及び退避手順を限定した試し出勤が有効になり得る。

静かな会議室で同僚と一度面談できたことは,混雑した窓口又は苦情対応を継続できることの証明にはならない。
反対に,最も困難な苦情対応を最初から行わせて限界を試すことも安全な段階的評価ではない。

3 介護,看護,製造,建設,運搬その他の身体負荷が高い仕事

身体負荷が高い仕事では,重量,姿勢,移動距離,反復回数,介助対象者の動き,暑熱・寒冷,振動,保護具及び休憩を数値又は具体的な作業単位で示す。
補助具,二人作業,作業転換又は時間短縮を現場で実際に運用できるかを確かめる試し出勤は有効である。

重量物を一度持ち上げられたことと,所定時間にわたり反復して安全に作業できることは同じではない。
また,本人の能力だけでなく,補助者を継続配置できるか,工程上休憩を取れるか及び他の社員への負担が持続可能かも確認する必要がある。

4 運転,高所,危険機械,医療安全その他の安全上重要な仕事

運転,高所,危険機械,火気,警備,医療行為その他の安全上重要な仕事では,一回の失敗が重大な結果を生じ得る。
このため,実際の危険を発生させて能力を試すことは避け,法令・免許上の制限,主治医及び産業医等の意見,標準化された検査,シミュレーター,監視下の低危険課題及び緊急時対応を組み合わせる。

試し出勤が有効なのは,危険業務そのものへの投入ではなく,危険から分離された環境で,手順理解,注意の持続,報告,補助具及び勤務条件を確認できる場合である。
安全を確保する条件が定まらない限り,「やってみて問題が起きなければ復帰可」という判断方法は用いるべきでない。

5 夜勤,交替制,不規則勤務,出張及び長時間労働

昼間の短時間勤務ができても,夜勤,交替制,不規則な食事,宿泊出張又は長時間労働を継続できるとは限らない。
睡眠,服薬,低血糖,心血管負荷,疲労及び治療日程に影響するため,通常勤務への復帰とこれらの負荷の再開時期を分けて判断する。

試し出勤は原則として安全な時間帯から始め,医師が許容する範囲で段階を設定する。
夜勤が当面禁止されているのに昼間勤務を試しても,夜勤可否の資料にはならないが,昼間限定の配置が現実に可能であれば,その配置への復職判断には役立つ。

6 在宅勤務及びハイブリッド勤務

在宅勤務は通勤負荷及び職場刺激を減らせる一方,自己管理,孤立,報告の遅れ,作業環境及び勤務時間の過長という別の問題がある。
復職後も在宅勤務を継続できる制度及び職務がある場合,在宅での試行はその働き方への適合を確認する資料になる。

復職後は出社が必要であるのに在宅だけで試行した場合,通勤,対面対応及び職場環境への適合は未確認のままである。
在宅で画面上の接続時間だけを確認するのではなく,成果,休憩,報告,疲労及び生活との境界を確認する必要がある。

7 管理職,専門職及び職種限定のある社員

管理職又は専門職では,単純作業ではなく,意思決定,部下への指示,顧客又は関係機関との調整,期限及び責任の範囲が職務の本質となる場合がある。
職種又は勤務地が契約上限定されているか,職務を一時的に減らせるか,別業務が現実に存在するかによって,同じ試し出勤結果の法的意味も異なる。

休職前の一つの担当業務だけを試して困難であったことから,雇用契約上予定された全ての業務が不可能であると直ちに判断することはできない。
反対に,会社に存在しない軽易な業務を仮定した試し出勤も,現実の復職可能性を示す資料にはならない。

第5 有効な試し出勤の設計

1 仮説,観察事項及び判断後の対応を先に決める

試し出勤前に,「午後になると注意が低下する可能性があるため,午前と午後で同種課題の正確性及び疲労を比較し,低下があれば勤務時間又は課題量を調整する」というように,仮説,観察事項及び結果に応じた対応を決める。
単に「様子を見る」とだけ定めると,後から都合のよい事実を選んで評価する危険がある。

確認事項は,①通勤,②職場滞在,③具体的作業,④対人対応,⑤安全行動,⑥疲労及び翌日の回復,⑦配慮の効果に分ける。
疾患名,性格又は意欲に関する印象ではなく,出退勤時刻,作業,誤り,休憩,本人の申告及び翌日の状態という事実を記録する。

2 実際の職務との一致を示す

試し出勤で行う課題ごとに,それが復職後のどの職務を代表するかを示す。
実際の職務と異なる場合は,何を確認でき,何を確認できないかを明記する。

厚生労働省の前記様式例52頁~55頁は,本人が職務内容及び職務負荷を記載し,医師が作業ごとの可否及び配慮を示し,事業主が両立支援プラン又は職場復帰支援プランを作成する流れを示している。
同資料55頁の勤務時間の段階例は一つの記載例であり,全ての疾患又は職種に同じ日程を当てはめるものではない。

3 中止基準を失敗扱いしない

症状の増悪,強い疲労,判断の混乱,低血糖の兆候,胸部症状,転倒又は危険行動等が現れた場合の中止・連絡・受診手順を定める。
合意した中止基準に従って止めることは,安全装置が機能した結果であり,それ自体を非協力又は失敗と評価すべきではない。

中止後は,どの負荷で何が起きたか,休息後及び翌日にどう回復したか,条件を変更すれば再実施できるか,医学的再評価が必要かを検討する。
再実施しても危険が変わらない場合又は別資料で判断できる場合は,試し出勤を繰り返す必要はない。

4 一回の結果を合否にしない

試し出勤の結果は,主治医の医学的情報,産業医等の職務適合意見,本人の希望及び自己評価,職場が把握する職務と調整可能性と合わせて評価する。
好調な一日だけで通常勤務可能とせず,不調な一日だけで復職不可ともせず,疾患の変動,観察期間,課題の代表性及び配慮後の変化を確認する。

試し出勤の拒否,中止,予定未達,代替資料及び休職期間満了の法的効果は,本記事の対象外である。

5 試し出勤を行わない方がよい場合

試し出勤を行わない方がよいのは,①主治医が療養上不適切と判断している場合,②危険を安全に分離できない場合,③既に必要な医学的・職務的情報がそろっている場合,④実際の職務と無関係な課題しか用意できない場合,⑤原因となった職場条件を放置したまま耐久試験として用いる場合,⑥法令又は医学的制限で禁止される業務を試そうとする場合である。

代替手段には,主治医への具体的な照会,産業医等の面談,通勤訓練,外部リワーク,神経心理学的評価,作業現場の人間工学的評価,シミュレーション,在宅勤務の試行及び正式復職後の短時間勤務がある。
どの方法も全ての事項を確認できるわけではないため,確認できる範囲と残る不確実性を記録する。

第6 法的な位置付けと裁判例

1 試し出勤は一律の法定義務ではない

労働施策総合推進法27条の3は,治療を受ける労働者について,事業主が相談対応体制の整備その他の必要な措置を講ずるよう努めることを定めている。
同条に基づく前記指針は試し出勤を自主的な勤務制度として挙げるが,全ての事業主に同じ試し出勤を実施させ,又は全ての社員に参加させる法定手順ではない。

労働契約法5条は,使用者が労働者の生命及び身体等の安全を確保しつつ労働できるよう必要な配慮をすることを定める。
試し出勤を行う場合も,安全配慮は通常勤務より後退せず,危険を明らかにするために危険へさらすという運用は許されない。

2 東京高裁平成28年9月12日判決

東京高裁平成28年9月12日判決・平成27年(ネ)第3505号は,頸肩腕症候群で長期休業していた労働者が,一日3時間~4時間,週1日~2日程度の部分的・リハビリ的就労を求めた事案である。
同判決は,その事案の経過,就業規則,従前の復職後の再休業及び当時の就労可能性を踏まえ,信義則から事情を問わず一律に部分就労をさせる法的義務が生じるものではないとした。

この判決は,試し出勤が医学的又は実務的に常に無意味であると判断したものではない。
試し出勤の有用性と,会社が特定の部分就労を法的に受け入れる義務を負うかは別問題であり,就業規則,労働契約,具体的職務及び安全性に即して検討する必要がある。

3 東京地裁八王子支部平成6年5月25日判決

東京地裁八王子支部平成6年5月25日判決・平成5年(ワ)第1819号は,頸肩腕障害の社員について,会社が症状再燃の可能性等を理由に休職を命じた事案である。
同判決は,社員が復職後約3か月間通常勤務を続け,その間に症状の悪化又は病気欠勤がなかったこと,医師の診断及び勤務状況等を踏まえ,休職事由を認めず,休職命令を無効とした。

これは試し出勤制度そのものの判決ではないが,現実の勤務状況が抽象的な再燃懸念より具体的な判断資料となり得ることを示す。
もっとも,危険性の高い職務で事故がなかったという一事だけから将来の安全を推定できるという意味ではない。

4 片山組事件最高裁判決

最高裁平成10年4月9日第一小法廷判決・平成7年(オ)第1230号・裁判集民事188号1頁は,職種又は業務内容を特定しない労働契約について,現に命じられた特定業務を十分に行えなくても,能力・経験・地位,企業の規模・業種及び配置・異動の実情等に照らして現実に配置可能な他の業務を行うことができ,その提供を申し出ている場合の労務提供を判断した。

試し出勤を休職前の担当作業だけで行う場合,その結果から労働契約上配置可能な他の業務まで否定できるかは別に検討する必要がある。
同時に,会社に現実に存在しない業務を仮定するのではなく,契約上の職種・勤務地の限定及び実際の配置可能性を確認しなければならない。

第7 医学研究から分かることと分からないこと

1 直接分かること

医学的知見に照らせば,メンタルヘルス不調,筋骨格系疾患,後天性脳損傷及び慢性疾患の職場復帰では,医療だけ又は職場だけで完結させず,本人,医療者及び使用者が連携し,具体的な職務調整を行う介入が重要である。
この知見は,試し出勤を行う場合にも,単なる出勤日数の達成ではなく,職務調整及び関係者間の連携を組み込む根拠となる。

2 直接分からないこと

疾患ごとに,日本企業の休職制度下で行う「試し出勤」単独の効果を比較した質の高い研究は限られている。
多くの研究は,職場調整,リハビリテーション,心理的支援,関係者間の調整及び段階的復職を組み合わせた介入を対象としており,その結果を試し出勤だけの効果として扱うことはできない。

また,復職率が上がることと,症状悪化,再休職,事故及び長期的な就業継続が改善することは同じではない。
試し出勤を制度として導入する場合は,復職決定だけでなく,復職後の就業継続,症状,再休職,安全及び本人の納得を含めて評価する必要がある。

第8 実務上の確認順序

1 実施前

実施前には,①就業規則及び制度上の位置付け,②本人の希望,③主治医が許容する範囲,④復職後に予定される具体的職務,⑤確認したい不確実性,⑥勤務時間・作業・休憩,⑦評価項目,⑧中止基準,⑨賃金・災害対応,⑩健康情報を扱う者を確認する。

私傷病休職の開始時の通知及び準備については,「私傷病休職の開始時に使用者が確認すべき事項」で整理している。

2 実施中

実施中は,観察者の印象ではなく,予定した条件,実際に行った作業,配慮,出退勤,休憩,誤り,本人の申告,中止理由及び翌日の回復を記録する。
症状が出た場合は安全を優先し,予定を完遂させること自体を目的にしない。

3 実施後

実施後は,①確認できた事項,②確認できなかった事項,③配慮によって改善した事項,④医学的再評価が必要な事項,⑤復職後の条件,⑥再評価時期を本人に説明する。
結果は復職可否の一資料として扱い,試し出勤の「合格」「不合格」という名称だけで結論を出さない。

第9 出典

1 法令

労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律27条の3
労働契約法3条4項及び5条

2 法令に基づく指針

厚生労働省「治療と就業の両立支援指針」(令和8年2月10日厚生労働省告示第28号,同年4月1日適用)

3 所管行政機関の解説・運用資料

厚生労働省「治療と就業の両立支援指針・解説及び疾病別留意事項」(令和8年3月5日掲載。一般部分5頁~6頁,がん14頁~20頁,脳卒中21頁~25頁,肝疾患26頁~29頁,難病30頁~34頁,心疾患35頁~40頁,糖尿病41頁~46頁及び様式例52頁~55頁)
厚生労働省「主治医と産業医・職域間の連携好事例集・治療と仕事の両立支援ガイド」(令和7年公表版24頁~27頁)
厚生労働省「心の健康問題により休業した労働者の職場復帰支援の手引き」(平成21年3月改訂版19頁~21頁)

4 裁判例

最高裁平成10年4月9日第一小法廷判決・平成7年(オ)第1230号・裁判集民事188号1頁
東京高裁平成28年9月12日判決・平成27年(ネ)第3505号
東京地裁八王子支部平成6年5月25日判決・平成5年(ワ)第1819号

5 医学文献

①Brämberg E, et al. Effects of work-directed interventions on return-to-work in people on sick-leave for common mental disorders: a systematic review. Int Arch Occup Environ Health. 2024;97:597-619. PMID 38710801. PubMed
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③Donker-Cools B, et al. Effective return-to-work interventions after acquired brain injury: A systematic review. Brain Inj. 2016;30:113-131. PMID 26645137. PubMed
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⑤Gragnano A, et al. Chronic Diseases and Employment: Which Interventions Support the Maintenance of Work and Return to Work among Workers with Chronic Illnesses? A Systematic Review. Int J Environ Res Public Health. 2019;16:1864. PMID 31137817. PubMed
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