その他役所関係

不公正な取引方法に関するメモ書き

目次
1 総論
2 法定5類型及び指定類型
3 一般指定及び特殊指定
4 関連記事その他

1 総論
(1) 事業者は不公正な取引方法を用いてはならない(独禁法19条)ところ,不公正な取引方法とは,独禁法2条9項のいずれかに該当する行為をいい,①同条項1号ないし5号に基づく法定5類型,及び②同条項6号に基づく指定類型があります。
(2) 不公正な取引方法がある場合,公正取引委員会は,事業者に対し,当該行為の差し止め,契約条項の削除その他当該行為を排除するために必要な措置を命ずることができます(独占禁止法20条1項)。

2 法定5類型及び指定類型
(1)ア 平成21年の独占禁止法改正以前につき,不公正な取引方法に関しては独禁法2条9項6号に相当する規定のみが置かれ,不公正な取引方法として禁止される行為類型はいずれも「公正な競争を阻害するおそれがあるもののうち、公正取引委員会が指定するもの」でした。
    しかし,平成21年の独占禁止法改正で不公正な取引方法の一部に課徴金制度を導入したことに伴い,一般指定の中から,課徴金対象となる5つの行為類型(①共同の供給拒絶,②差別対価,③不当廉売,④再販売価格拘束及び⑤優越的地位の濫用)を切り出して,独禁法2条9項1号ないし5号に基づく法定5類型として規定されました。
イ 公正取引委員会HPに「優越的地位の濫用に関する独占禁止法上の考え方」(平成29年6月16日改正)及び「優越的地位の濫用~知っておきたい取引ルール~」が載っています。
(2) 独禁法2条9項6号に基づく指定類型としての「不公正な取引方法」については,すべての事業者について適用される「一般指定」と,特定の事業分野についてだけ適用される「特殊指定」があります。

3 一般指定及び特殊指定
(1)ア 「一般指定」としての「不公正な取引方法」(昭和57年6月18日公正取引委員会告示第15号)では,15の行為類型(例えば,取引拒絶,排他条件付取引,拘束条件付取引,再販売価格維持行為,ぎまん的顧客誘引及び不当廉売)が,「公正な競争を阻害するおそれがあるもの」として指定されています。
イ 卸売業者等が小売業者に対して商品の販売に当たり顧客に商品の説明をすることを義務付けるなどの形態によって販売方法に関する制限を課することは,それが当該商品の販売のためのそれなりの合理的な理由に基づくものと認められ,かつ,他の取引先に対しても同等の制限が課せられている限り,拘束条件付取引に当たりません(最高裁平成10年12月18日判決)。
(2) 「特殊指定」としては以下のものがあります。
① 大規模小売業者が行う特定の不公正な取引方法(いわゆる「大規模小売業告示」です。)
② 特定荷主が行う特定の不公正な取引方法(いわゆる「物流特殊指定」です。)
③ 新聞業における特定の不公正な取引方法(いわゆる「新聞特殊指定」です。)

4 関連記事その他
(1)ア 不公正な取引方法を禁止する独禁法19条に違反した契約の私法上の効力については,その契約が公序良俗に反するとされるような場合は格別として,同条が強行法規であるからとの理由で直ちに無効であると解すべきではありません(最高裁昭和52年6月20日判決)。
イ ビジネスローヤーズに独禁法違反行為の私法上の効力を巡る裁判例と契約書起案・審査における留意点 – BUSINESS LAWYERSが載っています。
(2) 優越的地位の濫用を含む不公正な取引方法に基づく損害賠償請求(独占禁止法25条)をするためには,独占禁止法49条に規定する排除措置命令が確定した後でなければ裁判上主張することはできない(独占禁止法26条1項)ものの,民法上の不法行為を主張する余地はあります(弁護士鈴木悠太HP「優越的地位の濫用(独占禁止法)」参照)。
(3) 景品表示法及び下請法は独禁法の補完法となります。
(4) 以下の記事も参照してください。
・ 景品表示法に関するメモ書き
・ 下請法に関するメモ書き

景品表示法に関するメモ書き

目次
1 総論
2 景品規制
3 表示規制
4 公正競争規約
5 ステルスマーケティング
6 関連記事その他

1 総論
・ 景品表示法の正式名称は,不当景品類及び不当表示防止法(昭和37年5月15日法律第134号)です。
・ 景品表示法の所管省庁につき,平成21年8月31日までは公正取引委員会でしたが,平成21年9月1日以降は同日に設置された消費者庁です。
・ 措置命令について定める景表法7条2項は憲法21条1項及び22条1項に違反しません(最高裁令和4年3月8日判決)。
・ 消費者庁HPの「告示」不当景品類及び不当表示防止法第二条の規定により景品類及び表示を指定する件(昭和37年6月30日公正取引委員会告示第3号)のほか,景品関係及び表示関係の告示が載っています。

2 景品規制
・ 顧客誘引の手段として,取引に付随して提供する,経済上の利益が「景品類」に該当しますところ,値引き及びアフターサービス等は景品類に該当しません(消費者庁HPの「景品規制」参照)。

3 表示規制
・ 不当表示としては,①優良誤認表示(景品表示法5条1号)及び②有利誤認表示(景品表示法5条2号)があります(消費者庁HPの「表示規制の概要」参照)。
・ 消費者庁は,弁護士法人アディーレに対し,平成28年2月16日,貸金業者への過払い金返還請求の着手金無料キャンペーンを「1カ月限定」と宣伝しながら,同じサービスを5年近く続けたのは景品表示法違反(有利誤認)にあたるとして,再発防止を求める措置命令を出しました(日経新聞HPの「アディーレ法律事務所が不当表示 「1カ月限定」5年継続」参照)。
・ 医薬品等の広告は医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律(略称は「薬機法」であり,平成26年11月24日以前は「薬事法」でした。)66条ないし68条でも規制されています(厚生労働省HPの「医薬品等の広告規制について」参照)。


4 公正競争規約
・ 公正競争規約は,景品表示法31条に基づく協定又は規約のことです(消費者庁HPの「公正競争規約」参照)。
・ 不動産公正取引協議会連合会HP「公正競争規約の紹介」に,不動産の表示に関する公正競争規約が載っています。


5 ステルスマーケティング
(1) 消費者庁HPの「ステルスマーケティング研究会」ステルスマーケティングに関する研究会報告書(令和4年12月28日付)が載っています。
(2) ネクスパート法律事務所HP「ステマ規制「一般消費者が事業者の表示であることを判別することが困難である表示」」が載っています。


6 関連記事その他
(1) 景品表示法及び下請法は独禁法の補完法となります。
(2) 二弁フロンティア2022年7月号「表示法務の基礎と実践~前編~」が載っていて,二弁フロンティア2022年8月・9月合併号「表示法務の基礎と実践~後編~」が載っています。
(3) 不正競争防止法3条1項の規定に基づく不正競争による侵害の停止等の差止めを求める訴え及び差止請求権の不存在確認を求める訴えは,いずれも民訴法5条9号所定の訴えに該当します(最高裁平成16年4月8日決定)。
(4) 以下の記事も参照してください。
・ 不公正な取引方法に関するメモ書き
・ 下請法に関するメモ書き
・ 消費者契約法及び特定商取引法等に関するメモ書き
・ 弁護士法人アディーレ法律事務所に対する懲戒処分(平成29年10月11日付)

在日外国人への社会保障法令の適用

目次
1 昭和57年1月1日以降,在日外国人も国民年金に加入できるようになったこと
2 昭和56年の国民年金法改正当時の国会答弁
3 外国人と生活保護法
4 関連記事その他

1 昭和57年1月1日以降,在日外国人も国民年金に加入できるようになったこと
(1) 昭和36年4月1日にスタートした国民年金制度には当初,日本国民だけを対象とするという国籍条項(国民年金法7条1項)がありました(ただし,軍人を除く在日アメリカ人は日米友好通商航海条約(昭和28年4月2日署名)3条に基づき,例外的に国民年金制度に任意加入できました。)。
 しかし,難民条約(1951年7月28日署名。1951年1月1日以前の原因に基づく難民を対象とした条約。)及び難民議定書(1967年1月31日署名。難民条約の適用対象を1951年1月1日以後の原因に基づく難民に拡大したもの。)に日本国が加入するに際して,難民条約24条1項は,難民に対し,社会保障に関して自国民に与える待遇と同一の待遇を与えることを定めていましたから,国籍条項の維持は難民条約及び難民議定書に抵触することとなりました。
 そのため,日本政府は,①難民条約24条1項等について留保するか,②社会保障法令を難民についてだけ適用できるように改正するか,又は③社会保障法令を外国人全般に適用できるように改正するかといった選択が検討した結果,社会保障法令を外国人全般に適用できるように改正することとなりました。
  その結果,昭和57年1月1日以降,在日外国人も国民年金に加入できるようになったものの,無年金状態を解消するための経過措置等は定められませんでした。
(2) 難民の地位に関する条約等への加入に伴う出入国管理令その他関係法律の整備に関する法律(昭和56年6月12日法律第86合)2条ないし5条によって改正された社会保障法令は,国民年金法,児童扶養手当法,特別児童扶養手当法及び児童手当法です。
(3)ア 国民年金制度が開始した昭和34年11月1日以前に後遺障害の症状が固定した在日外国人に対して障害福祉年金(昭和61年4月1日以降の,20歳前の傷病による障害基礎年金に相当するもの)を支給しないことは憲法25条及び14条1項に違反しません(第一次塩見訴訟に関する最高裁平成元年3月2日判決)。
イ 難民条約及び難民議定書が日本国について発効した昭和57年1月1日以降も,昭和34年11月1日以前に後遺障害の症状が固定した在日外国人に対して障害福祉年金を支給しないことは憲法25条及び14条1項に違反しません(第二次塩見訴訟に関する最高裁平成13年3月13日判決(判例秘書に掲載))。

2 昭和56年の国民年金法改正当時の国会答弁
(1) 村山達雄厚生大臣は,昭和56年5月27日の法務委員会外務委員会社会労働委員会連合審査会において以下の答弁をしています(ナンバリング及び改行を追加しています。)。
① 今回の条約の加盟に伴う内外人平等、具体的には国籍要件の撤廃ということに伴ういま御指摘のような制度についての厚生行政の基本的な考え方でございますが、これはやはり、今度の加入に伴いまして外国人についても適用範囲を拡大するという考え方に立っているわけでございます。もう一つは、日本人と平等の取り扱いをする、こういう趣旨でございまして、まさにその限りにおきましては、今度の提案は十分なる条件を満たしておると私は考えております。
 ただ、おっしゃるように、制度創設当時、たとえば国民年金につきまして強制的な経過措置を設けたじゃないか、これは制度発足のときでございますから、二十五年間掛けなくちゃならぬという基本法がございます。二十五年掛けられない者はどうするんだ、こういう問題は基本的にあるわけでございますから、これはやむを得ざる措置といたしまして、それは経過年金を設けたわけでございます。これはいつの場合でも、制度をつくるときには、その基本的な要件、それからそれを満たされない人たちについて経過措置も設けることは当然であろうと思うのでございます。
 今度の場合は、内外国籍要件撤廃によって加入者がふえるということでございます。ですから、経過年金を設くべし、こういうようなことになりますれば、これは永久に続くわけでございます。どんどん入ってくる、これが一つの問題点でございましょう。
② それから、今度はもし外国に長くおった日本人がやってきた。これは日本人は適用にならないわけですね、御承知のように。
 そうなれば外国人だけ適用するのか。これはやはり内外の差別撤廃という趣旨から見るとおかしい。
③ それからまた、第三番目には、やはり保険会計でございますから、当然保険数理に立ちまして年金計算をしているわけでございます。通常でございますと、二十五年掛ける者を基本にいたしまして、保険数理に基づいて、そして負担と給付の関係が整合性を持っているわけでございます。
 したがって、そうでない者について年金を設けるということ、これは定額にいたしまして、やはり何といっても国庫の三分の一の補助という問題等がございまして、やはり保険数理の上からいって保険財政は相当苦しいものになるんじゃないか。
④ まあ、いろいろな点がございまして、私は、これは今度の措置によりまして、内外人を平等という原則のもとに適用範囲を拡大するんだ、また、それで難民条約で定めている趣旨は達成できる、かように考えているわけでございます。

(2) 大和田潔厚生省保険局長は,昭和56年5月27日の法務委員会外務委員会社会労働委員会連合審査会において以下の答弁をしています。
  国民健康保険でございますが、御承知のように、国民健康保険につきましては市町村が条例でもって外国人の適用を行う。その前に、日韓協定によりますところの永住許可を受けた者につきましても強制適用であるということは御承知のとおりでございますが、こういった市町村の条例、これは財政事情その他の問題もございます、まだ適用していないところもあるわけでございますが、これにつきましては行政指導を強化いたしまして、外国人にすべて適用できるような方向で強化をしてまいる、こういうふうに考えているわけでございます。

3 外国人と生活保護法
(1) 最高裁平成26年7月18日判決(判例秘書に掲載)は以下の判示をしています(ナンバリングを①,②,③に変えています。)。
① 前記2(2)アのとおり,旧生活保護法は,その適用の対象につき「国民」であるか否かを区別していなかったのに対し,現行の生活保護法は,1条及び2条において,その適用の対象につき「国民」と定めたものであり,このように同法の適用の対象につき定めた上記各条にいう「国民」とは日本国民を意味するものであって,外国人はこれに含まれないものと解される。
 そして,現行の生活保護法が制定された後,現在に至るまでの間,同法の適用を受ける者の範囲を一定の範囲の外国人に拡大するような法改正は行われておらず,同法上の保護に関する規定を一定の範囲の外国人に準用する旨の法令も存在しない。
 したがって,生活保護法を始めとする現行法令上,生活保護法が一定の範囲の外国人に適用され又は準用されると解すべき根拠は見当たらない。
② また,本件通知は行政庁の通達であり,それに基づく行政措置として一定範囲の外国人に対して生活保護が事実上実施されてきたとしても,そのことによって,生活保護法1条及び2条の規定の改正等の立法措置を経ることなく,生活保護法が一定の範囲の外国人に適用され又は準用されるものとなると解する余地はなく,前記2(3)の我が国が難民条約等に加入した際の経緯を勘案しても,本件通知を根拠として外国人が同法に基づく保護の対象となり得るものとは解されない。なお,本件通知は,その文言上も,生活に困窮する外国人に対し,生活保護法が適用されずその法律上の保護の対象とならないことを前提に,それとは別に事実上の保護を行う行政措置として,当分の間,日本国民に対する同法に基づく保護の決定実施と同様の手続により必要と認める保護を行うことを定めたものであることは明らかである。
③ 以上によれば,外国人は,行政庁の通達等に基づく行政措置により事実上の保護の対象となり得るにとどまり,生活保護法に基づく保護の対象となるものではなく,同法に基づく受給権を有しないものというべきである。
 そうすると,本件却下処分は,生活保護法に基づく受給権を有しない者による申請を却下するものであって,適法である。
(2) 最高裁平成26年7月18日判決(判例秘書に掲載)の「外国人に対する生活保護の措置」には,以下の記載が含まれています。
昭和29年5月8日,厚生省において,各都道府県知事に宛てて「生活に困窮する外国人に対する生活保護の措置について」と題する通知(昭和29年社発第382号厚生省社会局長通知。以下「本件通知」という。)が発出され,以後,本件通知に基づいて外国人に対する生活保護の措置が行われている。
 本件通知は,外国人は生活保護法の適用対象とはならないとしつつ,当分の間,生活に困窮する外国人に対しては日本国民に対する生活保護の決定実施の取扱いに準じて必要と認める保護を行うものとし,その手続については,当該外国人が要保護状態にあると認められる場合の保護実施機関から都道府県知事への報告,当該外国人がその属する国の代表部等から必要な保護等を受けることができないことの都道府県知事による確認等を除けば,日本国民と同様の手続によるものとしている。
 平成2年10月,厚生省において,本件通知に基づく生活保護の対象となる外国人の範囲について,本来最低生活保障と自立助長を趣旨とする生活保護が予定する対象者は自立可能な者でなければならないという見地からは外国人のうち永住的外国人のみが生活保護の措置の対象となるべきであるとして,出入国管理及び難民認定法別表第2記載の外国人(以下「永住的外国人」という。)に限定する旨の取扱いの方針が示された。
(3) 山下眞臣 厚生省社会局長は,昭和56年5月27日の法務委員会外務委員会社会労働委員会連合審査会において以下の答弁をしています。
① 生活保護につきましては、昭和二十五年の制度発足以来、実質的に内外人同じ取り扱いで生活保護を実施いたしてきているわけでございます。去る国際人権規約、今回の難民条約、これにつきましても行政措置、予算上内国民と同様の待遇をいたしてきておるということで、条約批准に全く支障がないというふうに考えておる次第でございます。
② 難民条約で、難民の方に対しましても日本国民と同じ待遇を与えるようにと書いてあるわけでございますが、それはその形がどうであれ、実質が同じ取り扱いをしておれば差し支えないという解釈であることは先ほど申し上げたとおりでございます。
 生活保護法につきまして今回なぜ法律改正を行わなかったかということでございますが、一つには、国民年金等につきましては給付するだけではございませんで、どうしても拠出を求めるとか、そういった法律上の拠出、徴収というようなことにどうしても法律が必要だろうと思うのでございますが、生活保護で行っております実質の行政は、やはり一方的給付でございまして、必ずしもそういう法律を要しないでやれる措置であるということが一つの内容になるわけでございます。
③ ただ、改正してもよろしいではないかという御議論もあろうかと思うのでございます。その辺につきましては十分検討いたさなければならぬと思うわけでございますが、いろいろむずかしい問題がございます。
 たとえば出入国管理令でございますか、今度は法で、出入国の拒否事由といたしまして貧困者等国、地方公共団体の負担になる者、これにつきましては入国を拒否することができるという規定があるわけでございまして、そういった規定との関連を、この生活保護を法律上のものとして改正する場合にどう調整していくかというような問題等もございます。あるいは生活保護につきましては国民無差別平等にやるわけでございますが、補足性の原理というのが強くあるわけでございますが、そういった外国人の方の親族扶養の問題等をどう解決していくか等々非常に詰めなければならぬ問題が多うございますので、今回は、とにかくこういった条約の批准には何ら支障がないし、実質的には同じ保護をいたしておるのであるからこれによって御了解をいただきたい、かように考えているわけでございます。
(4) 地方自治研究機構(RILG)HP「平成25年改正前の生活保護法第78条に基づく徴収額の算定に当たって基礎控除相当額を控除しないことが違法であるとはいえない」には以下の記載があります。
    外国人に対する生活保護は、「行政庁の通達等に基づく行政措置」として実施されているものであり、本来の意味での生活保護法の「準用」によって実施されているものではないのであるから、法第78条を準用する形で徴収額の決定を行ったとしても、本来の行政処分としての効力を有するものではないと言わざるを得ないことになる。


4 関連記事その他

(1) 大正15年(1926年)4月1日以前に生まれた人の場合,1986年4月1日時点で60歳を超えていましたし,カラ期間(合算対象期間)が認められませんでしたから,被用者年金の受給権がある人を除いて公的年金をもらえません。
 ただし,自治体によっては高齢者給付金を支給しているところがあります(例えば,大正15年4月1日以前に生まれた人を対象としている大阪市HPの「在日外国人高齢者給付金」参照)。
(2) 日韓法的地位協定4条(a)に基づき,日本国政府は,協定永住者となる在日韓国人に対する教育,生活保護及び国民健康保険に関する事項について妥当な考慮を払うものとされていましたが,同協定には,国民年金に関する定めはありませんでした。
(3)ア 出入国在留管理庁HPに「「難民該当性判断の手引」の策定について」(令和5年3月24日付の報道発表資料)が載っています。
イ 以下のHPが参考になります。
・ 国立社会保障・人口問題研究所(IPSS)HP「社会保障法判例」
・ 立木茂雄研究室HP「第三節 在日韓国・朝鮮人と公的年金制度」
・ 外国人HR Lab.「外国人の社会保険のまとめ」
(4)ア 以下の資料を掲載しています。
・ 外国人登録法の廃止に伴い回収された外国人登録原票に係る開示請求手続について(平成23年12月13日付の法務省入国管理局登録管理官の事務連絡)
・ 外国人登録法の廃止に伴い回収された外国人登録原票に係る開示請求手続について(平成24年3月21日付の日弁連事務総長の依頼)
・ 弁護士法23条の2の規定に基づく外国人登録原票の照会への対応について(平成24年7月30日付の法務省入国管理局出入国管理情報官付補佐官の事務連絡)
イ 以下の記事も参照してください。
・ 司法修習生の国籍条項に関する経緯

下請法に関する手形通達

目次
1 昭和41年3月の手形通達
2 平成28年12月の手形通達
3 令和3年3月の手形通達
4 令和6年に再び手形通達が改正される可能性があること
5 約束手形は廃止される予定であること
6 不渡異議申立預託金
7 全銀協の電子交換所(令和4年11月4日業務開始)
8 関連記事その他

1 昭和41年3月の手形通達
(1) 昭和40年6月10日法律法律第125号による下請法の改正により,「下請代金の支払につき、当該下請代金の支払期日までに一般の金融機関(預金又は貯金の受入れ及び資金の融通を業とする者をいう。)による割引を受けることが困難であると認められる手形を交付すること。」(割引困難な手形の交付)が親事業者の禁止事項となりました。
(2) 「下請代金の支払手形のサイト短縮について」 (繊維業以外の団体には同月11日付,繊維業の団体には同月31日付)において,親事業者は,下請代金の支払のために振り出す手形のサイトを原則として,繊維業については90日以内,その他の業種については 120 日以内とするとともに,下請法の趣旨を踏まえ,サイトを更に短縮するよう努力するものとされました。

2 平成28年12月の手形通達

(1) 「下請代金の支払手段について」(平成28年12月14日付の中小企業庁長官及び公正取引委員会事務総長の通達)は以下の要請をしています(1ないし3を①ないし③に変えています。)。
① 下請代金の支払は、できる限り現金によるものとすること。
② 手形等により下請代金を支払う場合には、その現金化にかかる割引料等のコストについて、下請事業者の負担とすることのないよう、これを勘案した下請代金の額を親事業者と下請事業者で十分協議して決定すること。
③ 下請代金の支払に係る手形等のサイトについては、繊維業90日以内、その他の業種120 日以内とすることは当然として、段階的に短縮に努めることとし将来的には60日以内とするよう努めること。
(2) 中小企業庁HPの「FAQ「下請代金の支払手段について」」には「◯「将来的に」の期間については、現在のところ5~6年程度を想定しています。」という記載がありました(「約束手形に関する論点について」(令和2年9月14日付の中小企業庁事務局の文書)参照)。

3 令和3年3月の手形通達
(1) 「下請代金の支払手段について」(令和3年3月31日付の中小企業庁長官及び公正取引委員会事務総長の通達)は以下の要請をしています(1ないし4を①ないし④に変えています。)。
① 下請代金の支払は、できる限り現金によるものとすること。
② 手形等により下請代金を支払う場合には、当該手形等の現金化にかかる割引料等のコストについて、下請事業者の負担とすることのないよう、これを勘案した下請代金の額を親事業者と下請事業者で十分協議して決定すること。当該協議を行う際、親事業者と下請事業者の双方が、手形等の現金化にかかる割引料等のコストについて具体的に検討できるように、親事業者は、支払期日に現金により支払う場合の下請代金の額並びに支払期日に手形等により支払う場合の下請代金の額及び当該手形等の現金化にかかる割引料等のコストを示すこと。
③ 下請代金の支払に係る手形等のサイトについては、60日以内とすること。
④ 前記①から③までの要請内容については、新型コロナウイルス感染症による現下の経済状況を踏まえつつ、おおむね3年以内を目途として、可能な限り速やかに実施すること。
(2) 中小企業庁HPの「研究会」に載ってある約束手形をはじめとする支払条件の改善に向けた検討会報告書(令和3年3月15日付)では,平成28年の手形通達の改正及び約束手形の利用の廃止が提言されていました(同報告書15頁及び16頁参照)。
(3) 中小企業庁HPの「FAQ「下請代金の支払手段について」」には以下の記載があります。
Q10:新通達の記中3において「繊維業90日以内、その他の業種120日以内とすることは当然として」、「将来的には」といった記載を削除した趣旨を教えてください。
旧通達では「繊維業90日以内、その他の業種120日以内とすることは当然として」とすることにより、従来の「割引を受けることが困難であると認められる手形」等の期間を緩めることがないのは当然のこととして、さらに、下請事業者が直面している現状を踏まえ、将来的に60日以内に短縮するよう努めることを要請したものです。
その一方で、令和元年度のフォローアップ調査によれば、下請代金を手形等で支払う場合の手形等のサイトについて、「90日超120日以内」(繊維業では「60日超90日以内」)と回答した割合が、多くの業種でおおむね過半数を占めており、60日以内と回答した割合も2割に留まっているなど、改善は道半ばとなっています。
このため、新通達では、「繊維業90日以内、その他の業種120日以内とすることは当然」、「将来的には」といった記載を削除することにより、手形等のサイトを60日以内に短縮することを強く求めるものです。
(4) 「弁護士植村幸也公式ブログ: みんなの独禁法。」「新手形通達(「下請代金の支払手段について」)について」(2021年4月17日付)には以下の記載があります。
「強く求める」という説明も意味がよくわかりませんが(行政指導にも、強い求めと、弱い求めがあるのでしょうか?)、この説明と、

「3 下請代金の支払に係る手形等のサイトについては、60日以内とすること。
4 前記・・・3・・・の要請内容については、・・・おおむね3年以内を目途として、可能な限り速やかに実施すること。」
の部分をあわせて読むならば、要は、3年以内に手形サイトを60日にすることを「強く求める」ということであって、少なくとも新手形通達では、3年後からは60日を超える手形が違法になると宣言しているわけでもない、とも読めます。

4 令和6年に再び手形通達が改正される可能性があること
(1) 公正取引委員会HPの「(令和4年2月16日)手形等のサイトの短縮について」には以下の記載があります。
 公正取引委員会は,中小事業者の取引条件の改善を図る観点から,下請法等の一層の運用強化に向けた取組を進めており,その取組の一環として,令和3年3月31日に,公正取引委員会と中小企業庁との連名で,関係事業者団体約1,400団体に対して,おおむね3年以内を目途として可能な限り速やかに手形等のサイトを60日以内とすることなど,下請代金の支払の適正化に関する要請を行いました。
 また,当該要請に伴い,令和6年を目途として,サイトが60日を超える手形等を下請法の割引困難な手形等に該当するおそれがあるものとして指導の対象とすることを前提に,下請法の運用の見直しを検討することとしています。
(2) 「弁護士植村幸也公式ブログ: みんなの独禁法。」「新手形通達(「下請代金の支払手段について」)について」(2021年4月17日付)には以下の記載があります。
下請法4条2項2号(割引困難な手形による決済の禁止)では、
「2 親事業者は,下請事業者に対し製造委託等をした場合は,次の各号(役務提供委託をした場合にあつては,第1号を除く。)に掲げる行為をすることによつて,下請事業者の利益を不当に害してはならない。
二 下請代金の支払につき,当該下請代金の支払期日までに一般の金融機関(預金又は貯金の受入れ及び資金の融通を業とする者をいう。)による割引を受けることが困難であると認められる手形を交付すること。」
と定められています。
つまり、だめなのは、
「一般の金融機関・・・による割引を受けることが困難であると認められる手形」
で支払うことです。

5 約束手形は廃止される予定であること
(1) 「取引適正化に向けた5つの取組について」(令和4年2月10日付けの中小企業庁の文書)には「2026年の手形交換所における約束手形の取扱い廃止の検討(2月中に金融業界に検討を依頼) 」と書いてあります。
(2)ア 下請中小企業振興法3条1項に基づく「振興基準」(令和4年7月29日施行)には,「約束手形は、できる限り利用しないよう努めるものとする。また、約束手形の利用を廃止するに当たっては、できる限り現金による支払いに切り替えるよう努めるものとする。」と書いてあります。
イ 弁護士植村幸也公式ブログ「下請中小企業振興法の振興基準の法的効力」には「多くの企業にとっては、振興基準は無意味、ということになります。」と書いてあります。
(3)ア 電子記録債権法は平成20年12月1日に施行されました。
イ 金融庁HPの「電子記録債権」と題するパンフレットには「 手形法は、ジュネーブ統一手形条約に基づいて制定されたものですから、手形の無券面化は、同条約を廃棄しない限り困難です。」と書いてあります。
ウ オレンジ法律事務所HPに「元銀行員の田村が解説「電子記録債権と手形債権の比較」」が載っています。
エ 全銀協HPに「手形・小切手機能の電子化状況に関する調査報告書(2022 年度) 」(2023年3月31日付)が載っています。
(4) OB360°の「約束手形廃止に向けて企業がとるべき対応とは?代替案「でんさい」の特徴や導入時の注意点も解説」には「「でんさい」対応システムが手形処理で発生する業務の自動化に対応できれば、その利便性や生産性向上の効果はすぐに体感できるはずです。」と書いてあります。

6 不渡異議申立預託金

(1) 最高裁昭和45年10月23日判決(判例秘書に掲載)は以下の判示をしています。
不渡異議申立提供金の預託金は、不渡手形の債務者が、銀行取引停止処分を免れるため、不渡異議申立とのそのための金員の提供とを依頼し、その費用として提供金に相当する金員を支払銀行に預託したものであつて、右提供金が必要とされる趣旨は、手形債務者に支払の資力があることを明らかにし、異議申立が濫用されることを防止するにあるのであつて、特定の手形債権の支払を担保するにあるのではない。したがって、手形債権者が当然に右預託金を取得しうる地位を有するものではなく、また、支払銀行にとつて預託金返還請求権が相殺の期待をもちえないものとすることもできず、支払銀行が自己の反対債権をもつて右返還請求権と相殺することが委任契約に違反するものとも解しがたい(最高裁判所昭和四三年(オ)第七七八号、同四五年六月一八日第一小法廷判決参照)
(2) 一般財団法人とうほう地域総合研究所HPに載ってある「手形異議申立預託金に対する差押」には「裁判等により手形所持人が手形債務者から手形金の支払を受ける権利のあることが確定したとしても、手形所持人は、当然に異議申立預託金から優先弁済を受けることができるわけではありません。」と書いてあります。
(3)ア 異議申立提供金は以下の場合に返還してもらえます(電子交換所規則46条)。
① 不渡事故が解消し、持出銀行から交換所に不渡事故解消届が提出された場合
② 別口の不渡により取引停止処分が行われた場合
③ 支払銀行から不渡報告への掲載または取引停止処分を受けることもやむを得ないものとして異議申立の取下げの請求があった場合
④ 異議申立をした日から起算して2年を経過した場合
⑤ 当該振出人等が死亡した場合
⑥ 当該手形の支払義務のないことが裁判(調停、裁判上の和解等確定判決と同一の効力を有するものを含む。)により確定した場合
⑦ 持出銀行から交換所に支払義務確定届または差押命令送達届が提出された場合
⑧ 支払銀行に預金保険法(昭和 46 年法律第 34 号)に定める保険事故が生じた場合
イ 電子交換所規則施行細則44条は「異議申立の手続の終了および異議申立預託金の返還許可」について定めています。

7 全銀協の電子交換所(令和4年11月4日業務開始)
(1) 全銀協HPの「電子交換所の交換決済開始のお知らせ」(2022年11月4日付)には以下の記載があります。
 一般社団法人全国銀行協会(会長:半沢淳一 三菱UFJ銀行頭取)が設置・運営する電子交換所は、本日から予定どおり交換決済を開始しましたので、お知らせいたします。
 これまで、各金融機関はお客さまから持ち込まれた手形等を各地の手形交換所に持ち寄り交換決済を行ってきましたが、本日以降は、手形等のイメージデータを金融機関間で相互に送受信することにより交換決済が完結することとなります。これにより、金融機関事務の効率化はもとより、自然災害等への耐久性向上や決済期間短縮による顧客利便性向上などさまざまなメリットが期待できます。
(2)ア 全銀協HPの「電子交換所の設立について」(2019年6月13日付)電子交換所イメージ図が載っていますし,「電子交換所」「電子交換所設立のご案内」と題するパンフレットが載っています。
イ 全銀協HPの「電子交換所規則・施行細則」「電子交換所規則」及び「電子交換所規則施行細則」が載っています。
(3) 全銀協HPの「手形・小切手機能の「全面的な電子化」に関する検討会」に,調査報告書,手形・小切手機能の全面的な電子化に向けた自主行動計画等が載っています。

 関連記事その他
(1) 下請代金支払遅延等防止法に関する運用基準(令和4年1月26日最終改正)には以下の記載があります。
法第4条第1項第2号で禁止されている支払遅延とは,「下請代金を支払期日の経過後なお支払わないこと」である。「支払期日」は法第2条の2により,下請代金の支払期日は,「給付を受領した日(役務提供委託の場合は,下請事業者がその委託を受けた役務の提供をした日。次項において同じ。)から起算して,60日の期間内において,かつ,できる限り短い期間内において,定められなければならない」とされている。「支払期日」を計算する場合の起算日は「給付を受領した日」であることから,納入以後に行われる検査や最終ユーザーへの提供等を基準として支払期日を定める制度を採っている場合には,制度上支払遅延が生じることのないよう,納入以後に要する期間を見込んだ支払制度とする必要がある。
(2)ア 下請法4条1項2号の「支払」には手形払による支払も含まれますから,下請事業者からすれば,支払期日(納品から60日以内)+手形サイトを経て,支払を受けられることになります(弁護士法人中央総合法律事務所HP「令和3年3月に出された下請代金の支払方法に関する通達について」参照)。
イ 親事業者としては,納品から60日以内に手形払すらしなかった場合,60日を経過した日から支払をする日までの期間について,年14.6%の遅延損害金を支払う必要があります(下請法4条の2・下請法4条の2の規定による遅延利息の率を定める規則参照)。
(3) 以下の記事も参照してください。
・ 下請法に関するメモ書き

反社会的勢力排除条項に関するメモ書き

目次
1 総論
2 従業員の採用と反社会的勢力排除
3 反社チェック
4 反社会的勢力が行う不当要求の類型
5 暴力団離脱者支援
6 警察は原則として,元暴力団員であるかどうかに関する情報を部外に提供していないこと
7 反社会的勢力排除条項の拡張は独占禁止法との関係で制限されると思われること
8 反社会的勢力排除条項がない場合,錯誤無効を主張できないこと
9 暴力団排除条項を確認する場合に気を付けるべき点
10 反社会的勢力に関する統一的な定義はないこと
11 相手方が元暴力団構成員であることを弁護士が準備書面に記載できるとは限らないこと
12 預貯金口座の凍結に関する警察庁の文書
13 関連記事その他

1 総論
(1) 反社会的勢力排除条項(略称は「反社条項」です。)は,契約を締結する際,反社会的勢力ではないことや,暴力的な要求行為等をしないことなどを相互に示して保証する条項であって,暴力団排除条項(略称は「暴排条項」です。)ともいいます(KEIYAKU-WATCHの「反社条項(暴排条項)とは? 契約書に定めるべき理由・条項の例文(ひな形)などを解説!」参照)。
(2) 大阪府暴力団排除条例5条(府民及び事業者の責務)2項は「事業者は、基本理念にのっとり、その事業に関し、暴力団との一切の関係を持たないよう努めるとともに、府が実施する暴力団の排除に関する施策に協力するものとする。」と定めています。
(3) 大阪府警察HPに「暴力団排除条項の記載例」が載っています。

2 従業員の採用と反社会的勢力排除
(1) 企業法務の扉HP「暴力団排除条例と暴力団排除条項」には「取引時の「誓約書」に倣い,従業員の採用時に従業員から暴排の「誓約書」の提出を求めるのも一計です。採用時の提出書類として、従業員から誓約書を提出してもらう事業者がほとんどですので、この誓約書に暴排の条項を入れることになるでしょう。」と書いてあります。
(2) 「就業規則で定める基準に達しない労働条件を定める労働契約は、その部分については、無効とする。この場合において、無効となった部分は、就業規則で定める基準による。」と定める労働契約法12条からすれば,就業規則にも暴力団排除条項を入れておく必要があると思います。
(3) Legal Expressに「従業員・労働者が反社会的勢力に該当する場合、会社がとるべき対策を弁護士が解説!」が載っています。

3 反社チェック
(1) 企業法務弁護士ナビ「反社チェック6つの方法|契約後に取引先が怪しいと感じたら?」には,取引開始前にすべき反社チェックの方法として,①会社情報の確認,②インターネットによる検索,③新聞記事・Webニュース記事(帝国データバンク及び日経テレコン等)の検索,④風評の調査及び⑤外部機関(警察及び暴力追放運動推進センター)への相談が挙げられています。
(2) 反社会的勢力と認定された人は銀行口座を持つことが非常に難しいことからすれば,反社チェックの方法の一つとして,採用面接の交通費の支払等の名目で求職者の銀行口座を確認した方がいい気がします。
(3) RoboRoboコラム「反社会的勢力の具体的な調査方法は?おすすめのツールや反社への対応方法も解説!」(2022年11月8日付)が載っています。
(4) 若手弁護士が解説する個人情報・プライバシー法律実務の最新動向ブログの「第14回:改正個人情報保護法下における反社対応の留意点」には「特定の個人が反社会的勢力に属しているという情報は、社会的身分に該当しない。また、犯罪の経歴や刑事事件に関する手続が行われたことには該当せず、要配慮個人情報には該当しないとされている(GL通則パブコメ143番、159番)。」と書いてあります。


4 反社会的勢力が行う不当要求の類型
・ 法務省HPの「企業が反社会的勢力による被害を防止するための指針について」(平成19年6月19日付の犯罪対策閣僚会議幹事会申合せ)には「不当要求の二つの類型 接近型と攻撃型」として以下の記載があります。
    反社会的勢力による不当要求の手口として、「接近型」と「攻撃型」の2種類があり、それぞれにおける対策は、次のとおりである。
① 接近型(反社会的勢力が、機関誌の購読要求、物品の購入要求、寄付金や賛助金の要求、下請け契約の要求を行うなど、「一方的なお願い」あるいは「勧誘」という形で近づいてくるもの)
→ 契約自由の原則に基づき、「当社としてはお断り申し上げます」「申し訳ありませんが、お断り申し上げます」等と理由を付けずに断ることが重要である。理由をつけることは、相手側に攻撃の口実を与えるのみであり、妥当ではない。
② 攻撃型(反社会的勢力が、企業のミスや役員のスキャンダルを攻撃材料として公開質問状を出したり、街宣車による街宣活動をしたりして金銭を要求する場合や、商品の欠陥や従業員の対応の悪さを材料としてクレームをつけ、金銭を要求する場合)
→ 反社会的勢力対応部署の要請を受けて、不祥事案を担当する部署が速やかに事実関係を調査する。仮に、反社会的勢力の指摘が虚偽であると判明した場合には、その旨を理由として不当要求を拒絶する。また、仮に真実であると判明した場合でも、不当要求自体は拒絶し、不祥事案の問題については、別途、当該事実関係の適切な開示や再発防止策の徹底等により対応する。

5 暴力団離脱者支援

(1) 公益財団法人大阪府暴力追放推進センターHP「暴追センター案内」には「暴力団離脱者受入協賛企業」として以下の記載があります。
    暴力団離脱者を、雇用してくださる企業を募集しています。
    暴力団対策法施行後、暴追センター等に暴力団員やその家族から「暴力団をやめて、まじめに働きたい。」等の相談が寄せられています。離脱した暴力団員が一般社会人として社会復帰をするためには、生活の基礎となる就労が是非とも必要です。真撃な気持ちで暴力団をやめ、社会復帰を望む人には、「大阪府暴力団離脱者支援対策連絡会」が手助けをしています。
(2)ア 警察庁HPに「暴力団離脱者の口座開設支援について」(令和4年2月1日付の警察庁刑事局組織犯罪対策部暴力団対策課長の文書)が載っています。
イ 日刊ゲンダイHPに「元暴力団員に聞いてわかった「辞めてから5年間の厳しすぎる現実」保険も入れず、保育園の入園拒否も…」(2019年1月24日付)が載っています。

6 警察は原則として,元暴力団員であるかどうかに関する情報を部外に提供していないこと

・ 暴力団排除等のための部外への情報提供について(平成31年3月20日付の警察庁刑事局組織犯罪対策部帳の通達)4頁には,元暴力団員に関する情報提供について以下の記載があります。
    現に自らの意思で反社会的団体である暴力団に所属している構成員の場合と異なり、元暴力団員については、暴力団との関係を断ち切って更生しようとしている者もいることから、過去に暴力団員であったことが法律上の欠格要件となっている場合や、現状が暴力団準構成員、共生者、暴力団員と社会的に非難されるべき関係にある者、総会屋及び社会運動等標ぼうゴロとみなすことができる場合は格別、過去に暴力団に所属していたという事実だけをもって情報提供しないこと。

7 
反社会的勢力排除条項の拡張は独占禁止法との関係で制限されると思われること
(1) 反社会的勢力排除条項の中には「暴力団員でなくなった時から5年を経過しない者」を従業員としている企業を反社会的勢力とした上で,「暴力団員でなくなった時から5年を経過しない者」を従業員としている企業についても下請業者,委託業者,外注先及び調達先(以下「下請業者等」といいます。)から排除するように求めている条項を見かけることがあります。
    しかし,職業安定法5条の5(求職者等の個人情報の取扱い)との関係で自社の従業員でも必ず調査することは難しいと思いますが,下請業者等の従業員が「暴力団員でなくなった時から5年を経過しない者」に該当するかどうかまで必ず調査することは不可能と思います。
    また,このような条項をそのまま適用した場合,暴力団離脱者受入協賛企業まで下請業者等から排除する必要がありますところ,警察及び暴力追放運動推進センターの活動を否定する側面があることをも考慮すれば,そのような行為は独占禁止法19条(不公正な取引方法の禁止)に違反して独占禁止法20条に基づく排除措置命令の対象となる可能性があると思います。
(2) 不公正な取引方法に関しては例えば,以下の条文があります(「不公正な取引方法」は独占禁止法2条9項6号に基づくものです。)。
① 独占禁止法2条9項5号
五 自己の取引上の地位が相手方に優越していることを利用して、正常な商慣習に照らして不当に、次のいずれかに該当する行為をすること。
(中略)
ハ 取引の相手方からの取引に係る商品の受領を拒み、取引の相手方から取引に係る商品を受領した後当該商品を当該取引の相手方に引き取らせ、取引の相手方に対して取引の対価の支払を遅らせ、若しくはその額を減じ、その他取引の相手方に不利益となるように取引の条件を設定し、若しくは変更し、又は取引を実施すること。
② 不公正な取引方法12項(拘束条件付取引)
    法第二条第九項第四号又は前項に該当する行為のほか、相手方とその取引の相手方との取引その他相手方の事業活動を不当に拘束する条件をつけて、当該相手方と取引すること
(3) 内閣官房のビジネスと人権に関する行動計画の実施に係る関係府省庁施策推進・連絡会議HPに載ってある「責任あるサプライチェーン等における人権尊重のためのガイドライン」(令和4年9月の,ビジネスと人権に関する行動計画の実施に係る関係府省庁施策推進・連絡会議の文書)12頁及び13頁には以下の記載があります。
    企業が、製品やサービスを発注するに当たり、その契約上の立場を利用して取引先に対し一方的に過大な負担を負わせる形で人権尊重の取組を要求した場合、下請法や独占禁止法に抵触する可能性がある。人権尊重の取組を取引先に要請する企業は、個別具体的な事情を踏まえながらも、取引先と十分な情報・意見交換を行い、その理解や納得を得られるように努める必要がある。
(4)ア 独占禁止法に違反する事実があると思うときは,だれでも,公正取引委員会にその事実を報告し,適当な措置を採るよう求めることができます(独占禁止法45条1項)。
    また,独占禁止法に違反する事実があるという報告が報告者の氏名又は名称及び住所が記載された書面で行われ,具体的な事実を示しているものである場合,公正取引委員会は,その報告に係る事件についてどのような措置を採ったか,又は措置を採らなかったかを報告者に通知することになっています(独占禁止法45条3項のほか,公正取引委員会HPの「申告」参照)。
イ 公正取引委員会HPに「相談・届出・申告の窓口」が載っていますところ,大阪府の事業所の場合,近畿中国四国事務所が窓口となります。

8 反社会的勢力排除条項がない場合,錯誤無効を主張できないこと

・ 信用保証協会と金融機関との間で保証契約が締結され融資が実行された後に主債務者が反社会的勢力であることが判明した場合において,信用保証協会の保証契約の意思表示に要素の錯誤がないと判示した最高裁平成28年1月12日判決からすれば,仮に下請業者等が反社会的勢力に該当したとしても反社会的排除条項を含む契約書を作成していない限り,下請け業者等との取引について錯誤無効(令和2年4月1日以降は「錯誤取消し」)を主張することはできません。
    そのため,反社会的勢力排除条項がない限り,反社会的勢力排除に該当する下請先等との取引を当然に打ち切ることはできないと思います。

9 暴力団排除条項を確認する場合に気を付けるべき点

    暴力団排除条項を確認する場合,以下の事項を受け入れるかどうかについては特に気をつけた方がいいと思います。
① 「暴力団員でなくなった時から5年を経過しない者」を排除の対象に含めること。
・ 反社5年ルール(「暴力団員でなくなつた日から5年を経過しない者」まで反社会的勢力とするルール)はよく見かけるものの,元暴力団員であるかどうかを調査することは容易ではありません。
・ 役員に元暴力団員がいる企業であってもハローワークに求人の申込みを提出できます(職業安定法5条の6第1項5号)。
② 従業員を排除の対象に含めること。
・ 厚生労働省の「公正な採用選考の基本」からすれば,
家族に関すること,生活環境・家庭環境に関すること,人生観・生活信条に関することを聞いてはいけませんし,身元調査などの実施は禁止されているわけですから,採用時点で暴力団員であるかどうかが分かるとは限りません。
・ 採用した従業員が暴力団員であることが判明した場合において,当該従業員の日頃の業務遂行状況に特段の問題がないのであれば,重要な経歴の詐称を理由に解雇することは非常に難しいと思いますし,元暴力団員にすぎない場合についてはなおさら解雇することは難しいです。
・ 役員に暴力団員がいる企業はハローワークに求人の申込みを提出できない(職業安定法5条の6第1項5号)ものの,従業員に暴力団員がいるに過ぎない企業はハローワークに求人の申込みを提出できます。
③ 下請業者等を排除の対象に含めること。
・ 反社会的勢力排除条項を入れた契約書を交わしていない限り,反社会的勢力排除に該当するというだけの理由で取引を打ち切ることはできないと思います(最高裁平成28年1月12日判決参照)。

10
 反社会的勢力に関する統一的な定義はないこと
・ 参議院議員熊谷裕人君提出反社会的勢力の定義に関する質問に対する答弁書(令和元年12月13日付)には以下の記載があります。
    政府としては、「反社会的勢力」については、その形態が多様であり、また、その時々の社会情勢に応じて変化し得るものであることから、あらかじめ限定的、かつ、統一的に定義することは困難であると考えている。

11 相手方が元暴力団構成員であることを弁護士が準備書面に記載できるとは限らないこと
・ 令和4年11月11日発効の東京弁護士会の懲戒処分(戒告)の「処分の理由の要旨」は以下のとおりです(自由と正義2023年3月号86頁)から,相手方が元暴力団構成員であることを弁護士が準備書面に記載できるとは限りません。
    被懲戒者は、2018年10月16日、懲戒請求者がAを被告として提起した貸金返還請求訴訟の口頭弁論期日において、訴訟行為との関係性や訴訟追行上の必要性及び主張方法等の相当性の観点から正当な訴訟活動とは認められないにもかかわらず、Aの訴訟代理人として、懲戒請求者が過去に暴力団の構成員であったことを記載した答弁書及び準備書面を陳述し、証拠説明書を提出した。
    被懲戒者の上記行為は、弁護士法第56条第1項に定める弁護士としての品位を失うべき非行に該当する。

12 預貯金口座の凍結に関する警察庁の文書
・ 預貯金口座の凍結に関する警察庁の以下の文書につき,①は総論であり,②凍結及び凍結解除並びに③凍結解除の報告は「特殊詐欺」に関するものであり,④凍結及び凍結解除並びに⑤凍結解除の報告は「利殖勧誘事犯」及び「ヤミ金融事犯」に関するものです。
① 生活安全事犯に利用される預金口座等対策の推進について(平成29年4月7日付の警察庁生活安全局生活経済対策管理官の通達)
② 特殊詐欺に係る凍結口座名義人リスト及び凍結口座名義法人リストの運用について(令和2年3月31日付の警察庁刑事局捜査第二課長等の文書)
③ 特殊詐欺に係る凍結口座名義人リスト及び凍結口座名義法人リストの削除にかかる報告要領等について(令和2年3月31日付の警察庁刑事局捜査第二課長の文書)
④ 利殖勧誘事犯又はヤミ金融事犯に係る凍結口座名義人リスト及び凍結口座名義法人リストの運用について(令和2年3月31日付の警察庁生活安全局生活経済対策管理官の通達)
⑤ 特殊詐欺に係る凍結口座名義人リスト及び凍結口座名義法人リストの削除にかかる報告要領等について(令和2年3月31日付の警察庁刑事局捜査第二課長の文書)


13 関連記事その他
(1) 反社5年ルールを定めた業法の例としては,建設業法,宅建業法,貸金業法,廃棄物処理法及び労働者派遣法があります(RoboRoboコラムの「反社排除の5年条項があれば大丈夫? 反社チェックの必要性を解説」参照)。
(2) 平成23年6月2日付で改正された銀行取引約定書の参考例において,反社5年ルールが記載されるようになりました(全銀協HPの「融資取引および当座勘定取引における暴力団排除条項参考例の一部改正について」(平成23年6月2日付)参照)。
(3) 令和2年4月1日以降につき,暴力団員でなくなつた日から5年を経過しない者は不動産の買受の申出をすることはできません(民事執行法65条の2第1号)。
(4) 取締役等の役員が暴力団員となっている法人は,ハローワークに求人を出すことはできません(職業安定法5条の6第1項5号ロ)。
(5)ア 暴力団対策法11条2項及び46条1号は憲法14条1項に違反しません(最高裁令和5年1月23日判決)。
イ 暴力団対策法11条2項は「公安委員会は、指定暴力団員が暴力的要求行為をした場合において、当該指定暴力団員が更に反復して当該暴力的要求行為と類似の暴力的要求行為をするおそれがあると認めるときは、当該指定暴力団員に対し、一年を超えない範囲内で期間を定めて、暴力的要求行為が行われることを防止するために必要な事項を命ずることができる。」というものです。
(6) 以下の記事も参照してください。
・ 個人事業主の税金,労働保険及び社会保険に関するメモ書き
・ 労働保険に関するメモ書き

消費者契約法及び特定商取引法等に関するメモ書き

目次
第1 消費者契約法に関するメモ書き
第2 特定商取引法に関するメモ書き
1 訪問販売等におけるクーリング・オフ
2 通信販売に関する取扱い
3 特定商取引法の申出制度
4 その他
第3 割賦販売法に関するメモ書き
1 総論
2 令和3年4月1日施行の改正割賦販売法の概要
3 割賦販売法に関する最高裁判例
第4 個人情報保護法に関するメモ書き
1 総論
2 個人情報保護法の適用範囲の拡大
3 その他
第5 マイナンバー法に関するメモ書き
第6 関連記事その他

第1 消費者契約法に関するメモ書き
1 消費者契約法は平成13年4月1日に施行されました。
2 平成19年6月に開始した消費者団体訴訟制度は,平成20年の法改正により景表法及び特定商取引法を対象とするようになり,平成25年の法改正により食品表示法も対象とするようになりました。
3 平成28年,平成30年及び令和4年には,①取り消しうる不当な勧誘行為の追加,②無効となる不当な契約条項の追加等の民事ルールの改正が行われました。
4 消費者庁HPに「逐条解説(平成31年2月)」が載っています。
5 「消費者契約法に関する最高裁判例」も参照してください。

第2 特定商取引法に関するメモ書き
1 総論
・ 特定商取引法は,事業者による違法・悪質な勧誘行為等を防止し,消費者の利益を守ることを目的とする法律であり, 具体的には,訪問販売や通信販売等の消費者トラブルを生じやすい取引類型を対象に,事業者が守るべきルールと,クーリング・オフ等の消費者を守るルール等を定めています(特定商取引ガイドHP「特定商取引とは」参照)。 
2 訪問販売等におけるクーリング・オフ

(1) 訪問販売(キャッチセールス,アポイントメントセールス等を含む。),電話勧誘販売,特定継続的役務提供及び訪問購入の場合,申込み書面等の受領日から8日以内であればクーリング・オフができます。
(2) 連鎖販売取引及び業務提供誘引販売取引(内職商法,モニター商法等)の場合,申込み書面等の受領日から20日以内であればクーリング・オフができます。
(3) クレジット契約をしている場合にクーリングオフをするときは,販売会社及びクレジット会社の両方にクーリング・オフの通知をする必要があります(国民生活センターHPの「クーリング・オフ」参照)。
3 通信販売の取扱い
(1) 通信販売(例えば,ネットショッピング及びテレビショッピング)の場合,クーリング・オフはできないものの,返品に関する特約がない場合,商品を受け取った日を含めて8日以内であれば,消費者が送料を負担して返品することができます(特定商取引法15条の3)。
(2) Amazon.co.jp及びAmazonマーケットプレイスの大半の出品者は,原則として商品到着から30日以内の返品・交換に応じています(アマゾンHPの「返品・交換の条件」参照)。
4 特定商取引法の申出制度
・ 特定商取引法に規定される7つの取引類型(訪問販売・通信販売・電話勧誘販売・連鎖販売取引・特定継続的役務提供・業務提供誘引販売取引・訪問購入)において、取引の公正や消費者の利益が害されるおそれがある場合に、消費者庁長官若しくは経済産業局長又は都道府県知事にその内容を申し出て、事業者等に対して適切な措置を採るよう求めることができるものの,申出に対する見解,調査経過,調査結果等の問い合わせに答えてもらうことはできません(消費者庁HPの「特定商取引法の申出制度」参照)。
5 その他
・ 令和3年の特定商取引法改正では,通販の「詐欺的な定期購入商法」対策,送り付け商法対策,クーリング・オフの通知の電子化対応,事業者が交付すべき契約書面等の電子化対応などが定められました(KEIYAKU-WATCH HP「【2022年6月1日等施行】特定商取引法(特商法)
改正とは? 改正点を分かりやすく解説!」参照)。


第3 割賦販売法に関するメモ書き
1 総論

・ 割賦販売法は,「①割賦販売等に係る取引の公正の確保、②購入者等が受けることのある損害の防止及び③クレジットカード番号等の適切な管理等に必要な措置を講ずることにより、割賦販売等に係る取引の健全な発達を図るとともに、購入者等の利益を保護し、あわせて商品等の流通及び役務の提供を円滑にし、もつて国民経済の発展に寄与することを目的とする」法律です(割賦販売法1条1項)。
・ 経済産業省HPの「割賦販売法」には,過去の法令改正関係資料(主な改正は平成20年12月施行分,平成28年12月施行分及び令和3年4月1日施行分です。)等が載っています。
・ 経済産業省HPの「割賦販売法(後払信用)の概要」(令和3年6月の経済産業省商務・サービスグループ商取引監督課の文書)5頁に,昭和36年の制定から令和2年改正までの経緯が書いてあります。
2 令和3年4月1日施行の改正割賦販売法の概要
・ 令和3年4月1日施行の改正割賦販売法の概要は以下のとおりです(経済産業省HPの「割賦販売法の一部を改正する法律について(令和2年法律第64号)」(令和3年3月の経済産業省商務・サービスグループ商取引監督課の文書)参照)。
① 「認定包括信用購入あつせん業者」の創設
    従来の包括支払可能見込額調査に代わる与信審査手法によることを許容。
② 「登録少額包括信用購入あつせん業者」の創設極度額
    10万円以下の包括信用購入あつせん業を営む事業者の新たな登録制度による規制合理化。
③ クレジットカード番号等の適切管理の義務主体の拡充
    新たなクレジットカード番号等の保持主体を適切管理義務の主体に追加。
④ 書面交付の電子化利用者の事前の承諾を要することなく、電子による利用明細等の提供を行うことを許容等。
⑤ 業務停止命令の導入
3 割賦販売法に関する最高裁判例
・  最高裁平成13年11月22日判決は,預託金会員制ゴルフクラブに入会するために支払うべき預託金についてされた申込者とクレジット会社との間のクレジット契約においてゴルフ場の開場遅延が同契約に規定する支払拒絶の事由に該当しないとされた事例です。
・ 最高裁平成23年10月25日判決は,個品割賦購入あっせんにおいて,購入者と販売業者との間の売買契約が公序良俗に反し無効であることにより,購入者とあっせん業者との間の立替払契約が無効となる余地はないと判示した事例です。
・ 最高裁平成29年2月21日判決は, 個別信用購入あっせんにおいて,購入者が名義上の購入者となることを承諾してあっせん業者との間で立替払契約を締結した場合に,販売業者が上記購入者に対してした告知の内容が,割賦販売法35条の3の13第1項6号にいう「購入者の判断に影響を及ぼすこととなる重要なもの」に当たるとされた事例です。


第4 個人情報保護法に関するメモ書き
1 総論

・ 個人情報保護委員会HPの「個人情報保護法の過去・現在・未来」には昭和55年のOECDプライバシー8原則から平成27年の個人情報保護法改正までの経緯が載っています。
2 個人情報保護法の適用範囲の拡大
(1)ア 令和4年4月1日,個人情報保護法,行政機関個人情報保護法及び独立行政法人等個人情報保護法が個人情報保護法に一本化されました。
イ 令和5年4月1日,地方公共団体にも個人情報保護法が適用される予定です(神奈川県HPの「個人情報保護制度の見直しについて」参照)。
(2)ア 経済産業省HPに「個人情報保護法 令和2年改正及び令和3年改正案について」(令和3年5月7日付)が載っています。
イ BUSINESS LAWYERS「令和3年個人情報保護法改正とは?改正項目の全体像と施行スケジュールを解説(新旧対照表つき)」に,令和2年改正と令和3年改正による個人情報保護法の条番号の変更をまとめた一覧表が載っています。
3 その他
(1) 個人情報保護委員会HPに「マンガで学ぶ個人情報保護法」が載っています。
(2) 日本医事新報社HPの「Vol.3 閉院時のカルテの処分」には「カルテの【法定保存期間は5年】、しかし【損害賠償請求権は10年】を考慮した対応をお薦めします。また、保管場所・処分方法共に、個人情報保護の観点から細心の注意が求められます。」と書いてあります。

第5 マイナンバー法に関するメモ書き
1 マイナンバーは,住民票が日本にあるすべての住民に対して一人に一つずつ付与される12桁の個人番号です。
2 マイナンバーカードは,マイナンバーや個人情報が記載された顔写真付きのカードです。
3 個人番号通知書は,住民の一人ひとりにマイナンバーを通知するものであって,同通知書には「氏名」,「生年月日」,「マイナンバー」等が記載されています。
4 地方公共団体情報システム機構は,マイナンバーカード総合サイトを運営しています。


第6 関連記事その他
1 消費者契約法,特定商取引法及び景品表示法の所管省庁は消費者庁であり,割賦販売法の所管省庁は経済産業省であり,個人情報保護法の所管省庁は個人情報保護委員会であり,マイナンバー法の所管省庁は総務省です。
2 以下の記事も参照してください。
・ 個人事業主の税金,労働保険及び社会保険に関するメモ書き
・ 弁護士法人アディーレ法律事務所に対する懲戒処分(平成29年10月11日付)

下請法に関するメモ書き

目次
1 下請法が適用される資本金区分
2 親事業者の義務
3 親事業者の禁止事項
4 返品及びやり直しの期間制限
5 トンネル会社規制
6 中小企業庁作成の,下請適正取引等推進のためのガイドライン
7 弁護士の意見書作成業務に下請法の適用はないこと
8 建設業と下請法
9 下請振興法
10 フリーランス
11 関連記事その他

1 下請法が適用される資本金区分
(1) 製造委託及び修理委託の場合,資本金3億円超の法人事業者が資本金3億円以下の法人事業者に外注したり,資本金1000万円超3億円以下の法人事業者が資本金1000万円以下の法人事業者又は個人事業者に外注したりする場合に下請法が適用されます(下請法2条7項1号及び2号)。
(2) 情報成果物作成委託及び役務提供委託の場合,資本金5000万円超の法人事業者が資本金5000万円以下の法人事業者に外注したり,資本金1000万円超5000万円以下の法人事業者が資本金1000万円以下の法人事業者又は個人事業者に外注したりする場合に下請法が適用されます(下請法2条7項3号及び4号)。

2 親事業者の義務
(1) 親事業者は,書面の交付義務(下請法3条),書類の作成・保存義務(下請法5条),下請代金の支払期日を定める義務(下請法2条の2)及び遅延利息の支払義務(下請法4条の2)を負っています(公取HPの「親事業者の義務」参照)ところ,公取HPに「下請代金支払遅延等防止法第3条に規定する書面に係る参考例」が載っています(公取HPの「下請取引適正化推進講習動画について」に載ってある下請取引適正化講習会テキスト93頁ないし112頁からの抜粋と思います。)。
(2) 業務委託契約書の達人HPに以下の記事が載っています。
① 下請法の三条書面とは?業務委託契約書と兼ねるための12の記載事項は?
② 下請法の五条書類・五条書面とは?業務委託契約書と兼ねるための17の必須事項とは?

3 親事業者の禁止事項

(1) 親事業者の禁止事項は以下のとおりです(下請法4条)。
ア 受領拒否(1項1号)
イ 下請代金の支払遅延(1項2号)
ウ 下請代金の減額(1項3号)
エ 返品(1項4号)
オ 買いたたき(1項5号)
カ 購入・利用強制(1項6号)
キ 報復措置(1項7号)
ク 有償支給原材料等の対価の早期決済(2項1号)
ケ 割引困難な手形の交付(2項2号)
コ 不当な経済上の利益の提供要請(2項3号)
サ 不当な給付内容の変更・やり直し(2項4号)
(2)  公取HPに「親事業者の禁止行為」が載っています。

4 
返品及びやり直しの期間制限 
(1) 公取HPの「法令・ガイドライン等(下請法)」に載ってある,下請代金支払遅延等防止法に関する運用基準(平成15年12月11日全部改正の公正取引委員会事務総長通達)には「第4 親事業者の禁止行為」として以下の記載があります。
4 返品
(中略)
エ 委託内容と異なること又は瑕疵等のあることを直ちに発見することができない給付であっても,受領後6か月(下請事業者の給付を使用した親事業者の製品について一般消費者に対し6か月を超える保証期間を定めている場合においては,それに応じて最長1年)を経過した場合
8 不当な給付内容の変更及び不当なやり直し
(中略)
エ 委託内容と異なること又は瑕疵等のあることを直ちに発見することができない給付について,受領後1年を経過した場合(ただし,親事業者の瑕疵担保期間が1年を超える場合において,親事業者と下請事業者がそれに応じた瑕疵担保期間を定めている場合を除く。)
(2)ア 優越的地位濫用規制と下請法の解説と分析[第3版]177頁には以下の記載があります。
下請法規制において、直ちに発見することのできない暇疵のある目的物のやり直しは、原則として、遅くとも当該給付の受領後1年以内に求められなければならないものとされる。これは、豊富な資金を有せず機動的な金融を行う環境にもない下請事業肴が、取引から長期間経過した後に不測の負担を強いられることがないよう、取引の効果を早期に安定させることを目的としたものである。直ちに発見できない暇疵のある給付について、返品の場合は原則として受領後6か月以内に行わなければならないものとされているが、やり直しの場合には、返品と比べて下請事業者に不利益を与える程度が低いため、期間制限を長く設定されたものと考えられる。
イ 公正取引委員会HPに「優越的地位の濫用に関する独占禁止法上の考え方」(平成29年6月16日改正)が載っています。
(3) 下請法上禁止されているのは受領後1年以上経過したやり直しですから,受領後1年以上経過したからといって損害賠償請求までできなくなるわけではないみたいです(弁護士植村幸也公式ブログ「納入後長期間経過後の瑕疵発見とやり直しに関する下請法の規制」参照)。

5 トンネル会社規制
(1) 以下の場合,子会社Cと事業者Bの取引について下請法が適用されます(下請法2条9項)。
① 事業者A(親会社)が事業者Bに直接製造委託等をすれば下請法の適用を受ける関係等にあること
② 子会社Cが事業者A(親会社)から役員の任免,業務の執行又は存立について支配を受けていること
→ 例えば,親会社の議決権が過半数の場合,常勤役員の過半数が親会社の関係者である場合又は実質的に役員の任免が親会社に支配されている場合です。
③ 子会社Cが事業者A(親会社)からの下請取引の全部又は相当部分について,事業者Bに再委託すること
→ 例えば,親会社から受けた委託の額又は量の50%以上を再委託(複数の他の事業者に業務を委託している場合は,その総計)している場合です。
(2) 下請取引適正化推進講習会テキスト(令和3年11月)16頁ないし19頁に詳しい説明が載っています。

6 中小企業庁作成の,下請適正取引等推進のためのガイドライン
(1) 中小企業庁HPの「下請適正取引等推進のためのガイドライン」には以下の記載があるとともに,19種類のガイドラインが掲載されています。
    2021年12月末時点で、(1)素形材、(2)自動車、(3)産業機械・航空機等、(4)繊維、(5)情報通信機器、(6)情報サービス・ソフトウェア、(7)広告、(8)建設業、(9)建材・住宅設備産業、(10)トラック運送業、(11)放送コンテンツ、(12)金属、(13)化学、(14)紙・加工品、(15)印刷、(16)アニメーション制作業、(17)食品製造業、(18)水産物・水産加工品、(19)養殖業の19業種で策定しています。
(2)ア 例えば,素形材産業取引ガイドライン(素形材産業における適正取引等の推進のためのガイドライン)(令和4年10月改定)は,中小企業の多い素形材企業と取引先企業との適正な取引を確保し,我が国素形材企業の健全な発展と競争力の強化を目指すため,素形材業界の代表,ユーザー業界(自動車業界,自動車部品業界,産業機械業界,電機機器業界)の代表,有識者等の審議を経て,経済産業省(事務局:製造産業局素形材産業室)が策定した指針です(リンク先末尾1頁)。 
イ 素形材業界の代表として,一般社団法人日本鋳造協会一般社団法人日本鍛造協会一般社団法人日本金属プレス工業協会一般社団法人日本金型工業会一般社団法人日本金属熱処理工業会一般社団法人日本ダイカスト協会一般社団法人日本鋳鍛鋼会及び日本粉末冶金工業会の各会長が参加しています。
ウ ぷんたむの悟りの書ブログ「鋳造、ダイカスト(ダイキャスト)、粉末冶金(焼結)、切削の違い」が載っています。


7 建設業と下請法
(1) ひまわりほっとダイヤルHPの「下請法」には以下の記載があります。
    たしかに下請法では、建設業者に対して建設工事の発注を行う場合には適用されませんが、建設業法に下請法と同様の規制がありますので、規制を受けないわけではありません。なお、建設業者が建設以外の業務(建築資材の製造や設計業務)を他の事業者に委託するときは、「下請取引」として下請法の規制を受けることがあります。
(2) 建設業法における下請け業者の保護としては,下請代金の早期支払,不当に低い下請代金の禁止,指値発注の制限,赤伝処理の制限,一括下請負の禁止,請負契約締結後の資材購入の強制禁止,やり直し工事の強制禁止があります(弁護士法人グレイスHPの「建設業法と下請業者の保護」参照)。
(3) 国土交通省HPの「建設業法令遵守ガイドライン」には,「元請負人と下請負人間における建設業法令遵守ガイドライン」(第8版),及び「発注者・受注者間における建設業法令遵守ガイドライン」(第4版)が載っています。

8 弁護士の意見書作成業務に下請法の適用はないこと

(1) 公正取引委員会HPの「よくある質問コーナー(下請法)」に以下の記載があります。
 (専門家と顧問契約等)
Q12 一般に,企業と弁護士,公認会計士,産業医との契約も,本法の対象となるか。
A. これらは,一般に企業(委託者)が自ら用いる役務であり,他者に業として提供する役務でないので,役務提供委託に該当せず,本法の対象とはならない。
(2) 知財弁護士の本棚ブログ「弁護士業務に下請法の適用はあるか」(2017年3月8日付)には「先日、公正取引協会の下請法のセミナーに参加したところ、「弁護士の意見書作成業務に下請法の適用はない」と言われて、軽くショックでした(笑)。」と書いてあります。


9 下請振興法
(1) 中小企業庁HPの「下請中小企業振興法」には「同じく下請事業者との取引の適正化を図ることを目的とする下請代金法が規制法規であるのに対し、下請振興法は、下請中小企業を育成・振興する支援法としての性格を有する法律である。」と書いてあります。
(2)ア 中小企業庁HPの「振興基準」には「振興基準は、下請中小企業の振興を図るため、下請事業者及び親事業者のよるべき一般的な基準として下請中小企業振興法第3条第1項の規定に基づき、定められたものです。」と書いてあります。
イ 厚労省HPの「下請振興法の「振興基準」とは?」には「下請法とは異なり、資本金が自己より小さい中小企業者に対して製造委託等を行う幅広い取引が対象となります。」と書いてあります。


10 フリーランス
(1)ア 経済産業省HPに「「フリーランスとして安心して働ける環境を整備するためのガイドライン」(案)に対するパブリックコメントの結果及び同ガイドラインを取りまとめました」(令和3年3月26日付)が載っています。
イ マネジメントオフィスいまむらHP「ISO9001:2015 8.4.2~8.4.3 調達先や外注先の管理のために不可欠なこととは?」が載っています。
(2)ア JIPA HP「【法律・契約】業務委託(契約)の仕組み」に,労働者としての「雇用」と,「業務委託」契約の違い等が書いてあります。
イ ヤフーニュースに「実態は「労働者」なのに……「名ばかり事業主」の苦しみとは 」(平成31年4月9日配信)が載っています。
(3) 特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律は令和5年4月28日に参議院本会議で可決・成立しましたところ,厚生労働省HPに「特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律案(フリーランス・事業者間取引適正化等法案)の概要 (新規)」が載っています。
(4) LISKUL HPに「【2022年最新版】オンラインアシスタントサービス48選を徹底比較!」が載っています。
(5)ア 二弁フロンティア2023年11月号フリーランス新法の成立と今後の展望が載っています。
イ フリーランス新法に関する内閣法制局説明資料(令和5年1月)を載せています。
ウ ビジネスローヤーズに「フリーランス新法は11月1日施行!実務対応のポイントを解説 」が載っています。
(6) 令和5年9月11日,特定受託事業者の就業環境の整備に関する検討会の初会合が開催され,5月22日に報告書が公表されました(厚生労働省HPの「「特定受託事業者の就業環境の整備に関する検討会」の報告書を公表します」参照)。


11 関連記事その他 
(1)ア 公正取引委員会が行う「下請法に関する調査・手続」としては,①「定期調査(親事業者向け)」(下請事業者との取引に関する調査),及び②「定期調査(下請事業者向け)」(親事業者との取引に関する調査)があります。
イ 景品表示法及び下請法は独禁法の補完法となります。
(2) 公正取引委員会HPには例えば,以下の資料が載っています。
・ 労務費の適切な転嫁のための価格交渉に関する指針(令和5年11月29日付)
 (令和4年5月31日)令和3年度における下請法の運用状況及び中小事業者等の取引公正化に向けた取組
(3)ア 中小企業庁HPには例えば,以下の資料が載っています。
・ 下請取引適正化推進講習会 下請代金支払遅延等防止法について」(令和3年11月の中小企業庁事業環境部取引課の文書)
イ 中小企業庁HPの「下請かけこみ寺」「マンガで読む!価格交渉サポート事業個別相談事例集」等が載っています。
(4) 日本書籍出版協会HPに載ってある出版社における改正下請法の取扱い(2004年3月)についてには以下の記載があります。
出版物の内容である著作物は、特定の出版社の出版物への掲載以外にも広く利用される等汎用性が高く、かつ、作成を委託する際に出版社が定める仕様に基づいて作成を委託している訳ではないものもあり、このような著作物は情報成果物の作成委託に該当せず、下請取引の対象外として取扱われます。
(5) 以下の記事も参照してください。
・ 下請法に関する手形通達
・ 個人事業主の税金,労働保険及び社会保険に関するメモ書き

国民年金保険料及び国民健康保険料の減免等に関するメモ書き

目次
第1 国民年金保険料の免除及び納付猶予申請
1 総論
2 国民年金保険料の免除申請
3 国民年金保険料の納付猶予申請
4 国民年金保険料の追納制度
第2 国民健康保険料に関するメモ書き
1 国民健康保険料の軽減及び減免の申請
2 国民健康保険料の計算サイト
第3 関連記事その他

第1 国民年金保険料の免除及び納付猶予申請
1 総論
(1) 国民年金保険料の免除及び納付猶予申請については,日本年金機構HPの「国民年金保険料の免除制度・納付猶予制度」に一通りの説明が書いてあります。
(2) 住民登録をしている市区役所・町村役場の国民年金担当窓口で申請をする必要があります。
(3)ア 必要書類は以下のとおりです。
① 必ず必要なもの
・ 年金手帳又は基礎年金番号通知書
② 場合によって必要なもの
・ 前年(又は前々年)所得を証明する書類
→ 7月以降に申請をする場合は前年の,6月以前に申請する場合は前々年の書類が必要です。
・ 所得の申立書
→ 所得についての税の申告を行っていない場合に必要となります。
イ 平成26年10月以降,前年(又は前々年)の所得額が57万円以下であることの申立てを免除等申請書の「前年所得」欄に記入することにより,所得の状況を明らかにすることができる書類の添付を省略できるようになりました。
(4) 平成26年4月以降,保険料の納付期限から2年を経過していない期間(申請時点から2年1ヵ月前までの期間)について,さかのぼって免除又は納付猶予を申請できるようになりました(日本年金機構HPの「国民年金保険料の免除等の申請が可能な期間」参照)。
(5) 平成31年4月以降,次世代育成支援の観点から,国民年金第1号被保険者が出産を行った場合,住民登録をしている市区役所・町村役場の国民年金担当窓口に届書を提出することにより,出産前後の一定期間の国民年金保険料が免除されるようになりました(日本年金機構HPの「国民年金保険料の産前産後期間の免除制度」参照)。
2 国民年金保険料の免除申請
(1) 本人,世帯主及び配偶者の前年所得が一定額以下の場合,国民年金保険料の免除制度に基づき,申請をすることにより全額又は一部を免除してもらえます。
(2) 国民年金保険料の免除制度は,同居している親に一定額以上の所得がある場合は利用できません。
(3) 国民年金保険料の免除を受けた場合,免除期間が老齢基礎年金の額に反映されますし,年金の受給資格期間に反映されます。
3 国民年金保険料の納付猶予申請
(1) 本人及び配偶者の前年所得が一定額以下であり,本人が50歳未満である場合,国民年金保険料の納付猶予制度に基づき,申請をすることにより全部の納付を猶予してもらえます。
(2) 国民年保険料の納付猶予を受けた場合,猶予期間は老齢基礎年金の額に反映されないものの,年金の受給資格期間に反映されます。
4 国民年金保険料の追納制度
(1) 国民年金保険料について免除又は納付猶予を受けた場合であっても,過去10年分の国民年金保険料を追納することができます(日本年金機構HPの「国民年金保険料の追納制度」参照)。
(2) 過去2年分の国民年金保険料を追納する場合,追納加算額がありません。

第2 国民健康保険料に関するメモ書き
1 国民健康保険料の軽減及び減免の申請

(1) 厚生労働省HPの「国民健康保険の保険料・保険税について」には以下の記載があります。
① 各法令の規定に基づき、具体的な国民健康保険料(税)の算定方法や徴収期限・方法などについて、各市町村の条例(国民健康保険組合の場合は規約)などで定められています。国民健康保険料(税)は、世帯単位で算定し、世帯の被保険者ごとに応益分・応能分の各種類を計算し、それらを合計したものとなります。
② 国民健康保険料(税)の額を算定する際、法令により定められた所得基準を下回る世帯については、被保険者応益割(均等割・平等割)額の7割、5割又は2割を減額する制度があります。
③ 災害、その他特別の事情により国民健康保険料(税)を納めることが困難な場合、国民健康保険料(税)の減免や納付猶予を受けられる場合があります。
(2) 大阪市の場合の取扱いは以下のとおりです。
① 国民健康保険料の7割軽減,5割軽減又は2割軽減を受けるためには,世帯全員の所得が判明している必要があります。
② 倒産・解雇などの理由で離職した65歳未満の人は,非自発的失業者にかかる軽減の届出書を提出すれば,離職年月日の翌日が属する月から翌年度末までの間,国民健康保険料の軽減を受けることができます。
③ 当年中の見込所得(年度途中の退職等の場合は、当該状況が発生した月以降の見込所得)が、前年比10分の7以下となる世帯 (退職・倒産・廃業・休業や営業不振等のため、見込所得が大幅に減少する世帯)は,減免申請書を提出すれば,国民健康保険料の減免を受けることができます。
2 国民健康保険料の計算サイト
・ 税金・社会保障教育HP「国民健康保険料シミュレーション」を使えば,主な市区町村の国民健康保険料を計算することができます。


第3 関連記事その他
1 東京都新宿区HPに「令和3年度 国民健康保険料 概算早見表(給与・年金)」が載っています。
2 大阪市の場合,年に6回,国民健康保険加入の世帯主に宛てて,国民健康保険医療費のお知らせを送っています(大阪市HPの「「国民健康保険医療費のお知らせ」をお届けしています」参照)。
3 以下の記事も参照してください。
・ 個人事業主の税金,労働保険及び社会保険に関するメモ書き
・ 司法修習生と国民年金保険料の免除制度及び納付猶予制度

社会保険に関するメモ書き

目次
1 総論
2 新規適用の手続
3 社会保険に関する書類の提出先
4 社員採用時等の取扱い
5 定時決定及び随時決定
6 従業員の社会保険料の天引き
7 退職者の社会保険料の天引き
8 健康保険に関するメモ書き
9 厚生年金保険に関するメモ書き
10 介護保険に関するメモ書き
11 令和4年10月1日の,士業への社会保険の適用拡大
12 社会保険料の計算サイト
13 国民年金法30条の4に基づく20歳前障害者に対する障害基礎年金
14 関連記事その他

1 総論
(1) 広義の社会保険には厚生年金保険,健康保険及び介護保険のほか,労災保険及び雇用保険も含まれますところ,本ブログ記事における「社会保険」という用語は,厚生年金保険,健康保険及び介護保険の総称として使っています。
(2) カオナビ人事用語集HP「社会保険とは?【わかりやすく】種類、国保・雇用保険との違い」が載っています。

2 新規適用の手続
・ 以下の事業所は,事実発生から5日以内に,年金事務所に対し,健康保険・厚生年金保険 新規適用届を提出する必要があります(日本年金機構HPの「新規適用の手続き」参照)。
① 常時従業員(事業主のみの場合を含む)を使用する法人事業所
② 常時5人以上の従業員が働いている事業所,工場,商店等の個人事業所

3 社会保険に関する書類の提出先
・ 協会けんぽHPに「年金と健康保険に関する書類の提出先」が載っていますところ,例えば,事業所,採用,給与・賞与,育児休業及び退職・死亡に関する書類の提出先は年金事務所となっています。

4 社員採用時等の取扱い
(1) 社員を採用した場合,5日以内に健康保険・厚生年金保険の資格取得手続を年金事務所でする必要があります。
(2) 社員が退職した場合,5日以内に健康保険・厚生年金保険の資格喪失手続を年金事務所でする必要があります。
(3) 社員に賞与を支給した場合,5日以内に年金事務所に賞与支払届を提出する必要があります。
(4) 給料を改定した場合,改定月より3ヶ月間で条件を満たしたときは随時改定の必要がありますから,年金事務所に月額変更届を提出する必要があります。

 定時決定及び随時改定
(1) 定時決定及び随時改定は,社員の給与から控除する社会保険(厚生年金保険及び健康保険)に関係する手続です。
(2)ア 定時決定は,毎年7月1日時点で雇用している社員すべてが対象になり,4月ないし6月に支払った給与が基になり,毎年9月から翌年8月までの,1年間の社会保険料を決めるために行います。
 定時決定の手続に使用する書類が「被保険者報酬月額算定基礎届」(提出期間は毎年7月1日から同月10日まで)であるため,定時決定を「算定基礎届の手続」という場合があります。
イ マネーフォワードクラウド給与HP「社会保険料の変更に伴う手続きを解説!随時改定の意味など」には以下の記載があります。
 給与から天引きできる社会保険料は、給与を支払った月の前月分です。たとえば9月分の社会保険料は10月分の給与から天引きすることになります。標準報酬月額の変更により社会保険料が変更されるのは9月ですが、実務的には10月分の給与から変更後の社会保険料を控除することを覚えておきましょう。
(3)ア 随時改定は,定時決定の対象期間(4月・5月・6月の3ヶ月)以外で,給与に大きな昇降があったり,給与の雇用形態の変更で固定的な給与の額が著しく変動したときに行います。
 随時改定に使用する書類が「被保険者報酬月額変更届」であるため,随時改定を「月額変更届の手続」という場合があります。
イ マネーフォワードクラウド給与HP「社会保険料の変更に伴う手続きを解説!随時改定の意味など」には以下の記載があります。
 随時改定を行わない場合、正しい額の社会保険料を納めない時期が発生します。過払い・不足の状況となり、精算が必要です不足分の社会保険料については、延滞料が課される可能性もあります。また、虚偽の随時改定を行った場合、6か月以下の懲役または50万円以下の罰金が課される恐れがあるので注意しましょう。
(4) 日本年金機構HPに「定時決定(算定基礎届)」及び「随時改定(月額変更届)」が載っています。

6 従業員の社会保険料の天引き
(1) 健康保険・厚生年金保険の保険料の徴収は,日本年金機構(年金事務所)が行うこととされており,事業主は毎月の給料及び賞与から被保険者負担分の保険料を差し引いて,事業主負担分の保険料とあわせて,納付対象月の翌月末日までに納めることになっています(例えば,4月分保険料の納付期限は5月末日です。)(日本年金機構HPの「厚生年金保険料等の納付」参照)。
(2) 健康保険・厚生年金保険では,被保険者が事業主から受ける毎月の給料などの報酬の月額を区切りのよい幅で区分した標準報酬月額と税引前の賞与総額から千円未満を切り捨てた標準賞与額(健康保険は年度の累計額573万円,厚生年金保険は1ヶ月あたり150万円が上限)を設定し,保険料の額や保険給付の額を計算します(協会けんぽHPの「標準報酬月額・標準賞与額とは?」参照)。
(3) 賞与に対する社会保険料の天引きが開始したのは平成15年4月からです(M’sHR社会保険労務士法人HP「賞与にかかる社会保険料、確認していますか?」参照)。
(4)ア 全国健康保険協会(協会けんぽ)HP「都道府県ごとの保険料額表」には,平成21年度以降の健康保険及び厚生年金保険の保険料額表が載っています。
イ 協会けんぽの健康保険料の保険料率は都道府県ごとに異なりますところ,大阪府の令和4年3月分以降の場合,健康保険料は10.22%(介護保険第2号被保険者ではない40歳未満の場合)又は11.86%(介護保険第2号被保険者である40歳以上の場合)です(厚生年金保険料は全国一律18.3%です。)。



7 退職者の社会保険料の天引き

(1) 日本年金機構HPの「退職した従業員の保険料の徴収」には以下の記載があります。
 従業員が負担する保険料は、被保険者資格を取得した日の属する月から喪失した日(退職日の翌日)の属する月の前月まで発生し、事業主は、毎月の給与から前月分保険料を控除することができます。
 従業員の方が月の途中で退職した場合は、退職月の前月分の保険料を退職月の給与から控除し、月末に退職した場合は、退職月の前月と退職月の2か月分の保険料を退職月の給与から控除することができます。
 賞与に対する保険料は、支給する賞与から控除することができます。退職月に支給する賞与は、月末に退職する場合を除き、保険料控除の対象となりません。
(2) 日本年金機構HPの「月の途中で入社したときや、退職したときは、厚生年金保険の保険料はどのようになりますか。」には以下の記載があります。
月の途中から入社した場合
 入社日にて厚生年金の被保険者資格を取得することとなります。保険料は月単位で計算しますので、資格取得した月の保険料から支払う必要があります。
保険料は、会社が被保険者に支払う給与から保険料相当額の被保険者負担分を直接控除し、会社負担分と合わせて翌月末までに国に納めますので、個人で納める必要はありません。
月の途中で退職した場合
 退職した日の翌日に厚生年金の被保険者資格を喪失することとなります。保険料は、資格喪失日が属する月の前月分まで納める必要があります。
 なお、月の「末日」に退職した場合は、翌月1日が資格喪失日となりますので、退職した月分までの保険料を納める必要があります。この場合は、給与計算の締切日によって、退職時の給与から前月分と当月分の社会保険料が控除される場合があります。

 健康保険に関するメモ書き
(1) 高額療養費,傷病手当金,出産手当金,出産育児育児一時金,埋葬料といった健康保険給付を受ける権利の消滅時効は2年であります(健康保険法193条1項)ところ,協会けんぽHPに「健康保険の給付金の申請もれはありますか?健康保険給付の申請期限について」が載っています。
(2) 厚生労働省HPの「令和4年1月1日から健康保険の傷病手当金の支給期間が通算化されます」には以下の記載があります。
傷病手当金の支給期間が、支給開始日から「通算して1年6か月」になります。
 同一のケガや病気に関する傷病手当金の支給期間が、支給開始日から通算して1年6か月に達する日まで対象となります。
 支給期間中に途中で就労するなど、傷病手当金が支給されない期間がある場合には、支給開始日から起算して1年6か月を超えても、繰り越して支給可能になります。
(3) 社員が75歳に達した時点で,健康保険について被保険者資格喪失届を提出する必要があります。
(4)ア 平成20年4月1日に開始した高齢者医療制度は,①高齢者の心身の特性や生活実態を踏まえて,65歳から74歳までを対象とする「前期高齢者医療制度」,並びに②75歳以上の人及び65歳以上で寝たきり等一定の障害があると認定を受けた人を対象とする「後期高齢者医療制度」の二つの制度で構成されています(大王製紙健康保険組合HP「高齢者医療制度」参照)。
イ 協会けんぽHPの「高齢受給者証」には以下の記載があります。
 75歳になると後期高齢者医療制度の対象となりますが、それまでの間、後期高齢者医療制度に加入しない70歳以上の方には協会けんぽから「健康保険高齢受給者証」が交付されます。これは医療機関等の窓口において一部負担金の割合を示す証明書で、医療機関等で受診される時は、健康保険証と合せて高齢受給者証を提示する必要があります。
(5) 最高裁平成24年3月6日判決(判例体系に掲載)は以下の判示をした上で,短期給付と通勤災害との間で重複支給が発生した場合,行政不服審査法57条1項所定の不服申立てについての教示をせず,行政手続法所定の手続も執ることなく,給付の決定を撤回し,贈与契約を解除できると判示しました(改行を追加しています。)。
 地公共済法上、療養費及び高額療養費が同法53条に基づく短期給付と、入院附加金が同法54条に基づく短期給付(附加給付)と位置付けられており、それぞれ同法43条1項所定の給付の決定によりその受給権が発生するものと解されるのに対して、本件一部負担金払戻金及び本件見舞金については、地公共済法上、これらを同法に基づく給付と位置付ける規定はなく、これらは、専ら本件定款又は本件要綱が定めるところにより支給されるものと解される。
 したがって、本件一部負担金払戻金及び本件見舞金の支給は、本件定款又は本件要綱で定められたところに従って成立する贈与契約に基づくものというべきである。
(6) 健康保険組合が被保険者に対して行うその親族等が被扶養者に該当しない旨の通知は,健康保険法189条1項所定の被保険者の資格に関する処分に該当します(最高裁令和4年12月13日判決)。


9 厚生年金保険に関するメモ書き
(1) 厚生年金保険の保険料率は,年金制度改正に基づき平成16年から段階的に引き上げられてきましたが,平成29年9月を最後に引上げが終了し,厚生年金保険料率は18.3%で固定されています(日本年金機構HPの「厚生年金保険料額表」参照)。
(2) 日本年金機構HPの「年金の給付に関するもの」に,老齢年金関係,障害年金関係,遺族年金関係等に関するパンフレットが載っています。
(3)ア 社員が70歳に達した時点で,「健康保険・厚生年金保険被保険者資格喪失届/厚生年金保険70歳以上被用者不該当届」を提出し,従業員が厚生年金保険の被保険者資格を喪失する関係で,厚生年金保険料の徴収を終了する必要があります。
イ 日本年金機構HPの「年金額を増やすために、70歳を過ぎても厚生年金保険に加入できますか。」には以下の記載があります。
 会社に勤めていても70歳になれば、厚生年金保険に加入する資格を失います。
 ただし、老齢の年金を受けられる加入期間がなく、70歳を過ぎても会社に勤める場合は、老齢の年金を受けられる加入期間を満たすまで任意に厚生年金に加入することができます。これを高齢任意加入被保険者といいます。
 ただし、既に老齢または退職を事由とする年金を受け取る権利がある場合は、高齢任意加入被保険者になることはできず、70歳を過ぎて厚生年金保険に加入できません。

10 介護保険に関するメモ書き

(1) 介護保険制度は,介護が必要な高齢者を社会全体で支える仕組みであり,公費(税金)や高齢者の介護保険料のほか,40歳から64歳までの健康保険の加入者(介護保険第2被保険者)の介護保険料(労使折半)等により支えられています(協会けんぽHPの「介護保険制度と介護保険料について」参照)。
(2) 社員が40歳に到達した時点で介護保険料の徴収を開始し,社員が65歳に達した時点で介護保険料の徴収を終了する必要があります。
(3) 介護のほんねHP「介護保険制度の歴史について2000~2021年までの流れを教えてください!」が載っています。

11 令和4年10月1日の,士業への社会保険の適用拡大

(1) 令和4年10月1日以降,常時5人以上の従業員(勤務弁護士が従業員に含まれるかどうかは勤務実態によります。)を使用している個人経営の法律事務所についても社会保険が適用される結果,事業主たるボス弁等を除き,日本弁護士国民年金基金を脱退することとなります(令和2年改正後の厚生年金保険法6条1項1号)。
(2) 東京都弁護士国民健康保険組合HP「令和4年10月からの士業の適用拡大に係る届出書類等について」には以下の記載があります。
令和4年10月1日から、使用関係が常用的な勤務弁護士・従業員(被用者)あわせて5人以上の個人の法律事務所は、健康保険(協会けんぽ)と厚生年金保険の強制適用事業所に該当します。
弁護士国保加入者は、健康保険の適用除外承認を受けることで、協会けんぽに加入せず、弁護士国保に残ることができますので、ご検討ください(弁護士法人に所属され、すでに健康保険被保険者適用除外承認を受けている方はお手続きは不要です。また、被用者5人未満の個人の法律事務所は強制適用の対象ではありません(協会けんぽと厚生年金保険の任意適用事業所は除く))。
(3)ア 日本年金機構HPに「令和4年10月から5人以上の従業員を雇用している士業の個人事業所は社会保険への加入が必要です。」及び「令和4年10月からの短時間労働者に対する健康保険・厚生年金保険の適用の拡大」が載っています。
イ 社会保険労務士法人開東社会保険労務事務所HP「法律事務所・弁護士法人の社会保険」,及び「令和4年10月1日から新たに社会保険の適用となる事業とは」が載っています。


12 社会保険料の計算サイト
・ 生活や実務に役立つ計算サイトkeisan「厚生年金保険料の計算」及び「健康保険料の計算」が載っています。

13 国民年金法30条の4に基づく20歳前障害者に対する障害基礎年金
(1) 最高裁平成19年9月28日判決は以下の判示をしています。
    法30条の4(昭和60年改正前の法57条)は,傷病の初診日において20歳未満であった者が,障害認定日以後の20歳に達した日において所定の障害の状態にあるとき等には,その者(以下「20歳前障害者」という。)に対し,障害の状態の程度に応じて,いわゆる無拠出制の障害基礎年金(昭和60年改正前は障害福祉年金。以下,上記の障害基礎年金と障害福祉年金を「20歳前障害者に対する障害基礎年金等」という。)を支給する旨を定めている。
    国民年金の被保険者資格を取得する年齢である20歳に達する前に疾病にかかり又は負傷し,これによって重い障害の状態にあることとなった者については,その後の稼得能力の回復がほとんど期待できず,所得保障の必要性が高いが,保険原則の下では,このような者は,原則として,給付を受けることができない。20歳前障害者に対する障害基礎年金等は,このような者にも一定の範囲で国民年金制度の保障する利益を享受させるべく,同制度が基本とする拠出制の年金を補完する趣旨で設けられた無拠出制の年金給付である。
(2) 大分地裁令和6年3月1日判決は以下の判示をしています。
    同法(山中注:国民年金法)は、同法30条の4第1項に基づく障害基礎年金について、刑事施設等に拘禁されている場合の支給停止(同法36条の2第1項)や所得制限による支給停止(同法36条の3第1項)等の支給停止事由を定めているところ、これらの支給停止事由は、同法30条1項に基づく障害基礎年金については定められていない。
    そうすると、同法30条の4第1項に基づく障害基礎年金は、拠出した保険料とのけん連関係があるものとはいえず、社会保障的性格が強いものであるというべきであり、同法30条1項に基づく障害基礎年金とは直ちには同列には解し難い。
    したがって、e が同法30条の4第1項に基づく障害基礎年金を受給していた蓋然性があったと認められたとしても、同年金が e の逸失利益であると認めるのは困難であるというほかないから、原告の前記主張は採用し難いものといわざるを得ない。

14 関連記事その他
(1)ア 厚生労働省HPの「社会保障全般」には,毎年3月下旬及び9月下旬に「厚生労働省関係の主な制度変更について」が掲載されています。
イ 弁護士の確定申告HP「弁護士開業にまつわる社会保険の手続」が載っています。
(2) 厚生労働省HPの「労働保険関係各種様式」に年度更新申告書計算支援ツール(エクセルファイル)が載っています。
(3)ア ①昭和35年10月から昭和49年10月までに発行された国民年金手帳(厚生省発行)は茶色,水色又は薄橙色であり,②昭和49年11月から平成8年12月までに発行された年金手帳(社会保険庁発行。国民年金と厚生年金とで同じでした。)はオレンジ色であり,③平成9年1月から平成21年12月までに発行された年金手帳(社会保険庁発行)は青色であり,④平成22年1月から令和4年3月までに発行された年金手帳(日本年金機構発行)は青色であり,⑤令和4年4月に年金手帳の制度が廃止され,基礎年金番号通知書が発行されるようになりました(取手市HPの「あなたの年金手帳は何色?色が違う理由は?(くろまめ)」参照)。
イ 厚生年金については,昭和29年5月から昭和49年10月までの間,保険証が交付されていました(マネーフォワードクラウド給与の「2022年4月に年金手帳が廃止 – 厚生年金と国民年金で変わること」参照)。
(4) 以下の記事も参照してください。
・ 個人事業主の税金,労働保険及び社会保険に関するメモ書き
・ 労働保険に関するメモ書き


衆参両院の議院運営委員会に提示した国会同意人事案

目次
1 衆参両院の議院運営委員会に提示した国会同意人事案
2 国会同意人事案件の審査手続
3 国会同意人事案の事前漏洩
4 関連記事その他

1 衆参両院の議院運営委員会に提示した国会同意人事案
(令和時代)
令和5年:1月23日2月14日5月12日10月25日
令和4年:1月20日3月1日10月6日
令和3年:1月21日3月9日12月7日
令和2年:1月28日3月17日10月29日
令和元年:5月15日11月13日
(平成時代)
平成4年平成5年平成6年平成7年
平成8年平成9年平成10年平成11年
平成12年平成13年平成14年平成15年
平成16年平成17年平成18年平成19年
平成20年平成21年平成22年平成23年
平成24年平成25年平成26年平成27年
平成28年平成29年平成30年平成31年
*1 ①令和元年5月15日提示から令和4年10月6日提示までの分及び②平成4年4月1日から平成31年4月30日までの提示分をまとめて掲載しています。
*2 令和時代に関しては,「衆参両院の議院運営委員会に提示した国会同意人事案(令和◯年◯月◯日提示)」といったファイル名で掲載しています。

2 国会同意人事案の審査手続
(1)  吉川さおり参議院議員(全国比例)コラム「国会同意人事とは」には以下の記載があります。
国会同意人事とは、衆参両院の同意が必要な人事案件で、日本銀行総裁や日本放送協会経営委員、公正取引委員会委員長など、約40機関の250人以上が対象となるものです。
流れとしては、内閣が衆参両院の議院運営委員会理事会に人事案を提示後、10日程度を経て議決するのが慣例となっています。ただ、最近は、各会派の賛否の議論が出揃うタイミングや議事日程との関係等により、内示後10日程度より後の議決が多くなっています。
(2) 参議院HPの「国会キーワード76 同意人事案件」には以下の記載があります。
    同意人事案件とは、一定の独立性、中立性が求められる機関の構成員の任命について、各機関の根拠法に基づき、内閣が両議院の事前の同意又は事後の承認を求めるものです。現在、その対象は人事官(3名)や検査官(3名)等36機関253名に上ります。
    その審査手続について、法規上の規定はありませんが、先例上「内閣から同意又は承認を求められたときは、まず議院運営委員会において内閣から説明を聴取し、同委員会の決定があった後、議院の会議において議決するのを例とする」とされているほか、衆参の議運委員長申合せに沿って審査されています。具体的には、①内閣官房副長官が各院の議運理事会に内示(衆参同時)、②各会派で賛否を検討、③議運委員会で関係副大臣等から説明聴取の後、採決、④本会議で採決、⑤両院で同意の後、内閣において任命、の順に行われます。なお、人事官、検査官、公正取引委員会委員長、原子力規制委員会委員長、日本銀行総裁・副総裁については、各院の議運委員会で所信聴取・質疑を行います。


3 国会同意人事案の事前漏洩
(1) 衆議院議員鈴木宗男君提出国会同意人事を巡る政府の対応に関する再質問に対する答弁書(平成20年6月20日付)は,下記1等の質問に対し,下記2の回答をしています。

記1

一 衆参両院の同意が必要で、今国会中の処理が求められており、当初衆参の議院運営委員長らで構成される議院運営委員会両院合同代表者会議に一括して提示される予定だった九機関二十四人分の国会同意人事のうち、日銀政策委員会審議委員と預金保険機構理事長の二件(以下、「二件」という。)が本年五月二十七日付の新聞朝刊で報道されたことを受け、野党側が強く反発し、「二件」の国会同意を得るのが一時困難になった旨報じられたことにつき、前回質問主意書で、「二件」の人事案件が事前に報道機関に報じられたのはなぜか、政府において「二件」の人事案件を報道機関に漏らしたのは誰かと問うたところ、「前回答弁書」では「御指摘の二件の人事案件について、政府案を議院運営委員会両院合同代表者会議に提示する前にその内容が報道された経緯等については承知していない」との答弁がなされているが、「二件」を漏らしたのは町村信孝内閣官房長官ではないのか。

記2

先の答弁書(平成二十年六月六日内閣衆質一六九第四四三号)の一、二、四及び五についてで述べたとおり、御指摘の二件の人事案件について、政府案を議院運営委員会両院合同代表者会議に提示する前にその内容が報道された経緯等については承知していないが、今後かかる事態が生じないよう、政府としては十分情報管理に注意してまいる所存であり、お尋ねに対して適切に答弁しているものと認識している。
(2) ヤフージャパンニュースの「雨宮副総裁の名前が報道された次期日銀総裁人事案の「背景」」(2023年2月8日付)には以下の記載があります。
日経新聞が雨宮副総裁の名を掲載
飯田)6日に日経新聞が「黒田総裁の後任として雨宮副総裁に就任を打診した」と書いて、ハレーションが起きました。
高橋)昔は国会に関係なくリークすることもありました。民主党時代だったでしょうか。そのときから国会同意人事については絶対にリークさせないように動いていた。
飯田)衆参がねじれていたころに、総裁人事がリークされて新聞に載ったら、「リークされた人事は承服できない」と言って……。
高橋)そう言っていたのが懐かしいくらい、とても古いタイプの人事ですね。そのあとの安倍政権では漏れていません。
(3) 黒田東彦日銀総裁(令和5年4月8日任期満了)の後任となる日銀総裁の人事案は令和5年2月14日に衆参両院の議院運営委員会に提示される予定でしたが,同月10日に報道されました(NHK NEWS WEBの「首相が日銀総裁起用意向の植田氏“現状は金融緩和継続が重要”」(2023年2月10日付)参照)。


4 関連記事その他
(1) 最高裁判所裁判官及び高等裁判所長官の人事は,国会同意人事案の対象にはなっていません。
(2) 参議院本会議は,平成20年3月12日,武藤敏郎(元大蔵事務次官及び財務事務次官。日銀副総裁)を日銀総裁とし,伊藤隆敏(東京大学大学院経済学研究科教授)を日銀副総裁とする人事案を否決し,同月19日,田波耕治(元大蔵事務次官)を日銀総裁とする人事案を否決し,同年4月9日,渡辺博史(元財務官)を日銀副総裁とする人事案を否決しました。
(3) 以下の記事も参照してください。
・ 高等裁判所長官を退官した後の政府機関ポストの実例
・ 各府省幹部職員の任免に関する閣議承認の閣議書
・ 最高裁判所長官任命の閣議書
・ 最高裁判所判事任命の閣議書
・ 高等裁判所長官任命の閣議書
・ 検事総長,次長検事及び検事長任命の閣議書
・ 内閣法制局長官任命の閣議書

故安倍晋三国葬儀

目次
第1 安倍元首相の葬儀を国葬儀の形式で行う理由等
第2 閣議決定を根拠として国葬儀を行える理由
第3 安倍元首相の叙位叙勲
第4 故安倍晋三国葬儀の準備状況
第5 故安倍晋三国葬儀の費用
第6 故安倍晋三国葬儀の実施概要及び流れ
第7 故安倍晋三国葬儀の一般献花
第8 故安倍晋三国葬儀当日における弔意表明
第9 故安倍晋三国葬儀に伴う飛行制限区域の設定
第10 故安倍晋三国葬儀に伴う交通規制その他の影響
第11 関連記事その他

* 令和4年10月8日,「国葬儀」から本記事を分離しました。



第1 安倍元首相の葬儀を国葬儀の形式で行う理由等
1 岸田首相は,令和4年7月14日の内閣総理大臣記者会見の冒頭発言において,安倍元首相の葬儀を国葬儀の形式で行う理由として以下のとおり発言しています。
 安倍元総理におかれては、憲政史上最長の8年8か月にわたり、卓越したリーダーシップと実行力をもって、厳しい内外情勢に直面する我が国のために内閣総理大臣の重責を担ったこと、東日本大震災からの復興、日本経済の再生、日米関係を基軸とした外交の展開等の大きな実績を様々な分野で残されたことなど、その御功績は誠にすばらしいものであります。
 外国首脳を含む国際社会から極めて高い評価を受けており、また、民主主義の根幹たる選挙が行われている中、突然の蛮行により逝去されたものであり、国の内外から幅広い哀悼、追悼の意が寄せられています。
 こうした点を勘案し、この秋に国葬儀の形式で安倍元総理の葬儀を行うことといたします。国葬儀を執り行うことで、安倍元総理を追悼するとともに、我が国は、暴力に屈せず民主主義を断固として守り抜くという決意を示してまいります。あわせて、活力にあふれた日本を受け継ぎ、未来を切り拓いていくという気持ちを世界に示していきたいと考えています。


2(1) 参議院議員辻元清美君提出安倍晋三元総理の国葬儀等についての基準に関する質問に対する答弁書(令和4年8月15日付)には以下の記載があります。
 元内閣総理大臣の葬儀の在り方については、これまでも、その時々の内閣において、様々な事情を総合的に勘案し、その都度ふさわしい形を判断してきたところであり、現時点においても、これまでと同様の取扱いを踏襲することは可能であると考えていることから、お尋ねの「基準」については検討しておらず、存在しない。
(2) 衆議院議員中谷一馬君提出安倍晋三元内閣総理大臣の国葬儀に関する質問に対する答弁書(令和4年8月15日付)には以下の記載があります。
 元内閣総理大臣の葬儀の在り方については、これまでも、その時々の内閣において、様々な事情を総合的に勘案し、その都度ふさわしい形を判断してきたところであり、御指摘の「功績」等の特定の観点から、個別の元内閣総理大臣と比較して、「国葬に値する」、「功績を超える」等と評価して判断すべき性質のものではないと考えている。
3 令和4年8月31日の岸田内閣総理大臣記者会見には以下の記載があります。
 次に、9月27日に予定しております安倍元総理の国葬儀について申し上げます。
 選挙遊説中の安倍元総理に対する凶行を受けて、私は国葬儀を実施するとの決断をいたしました。民主主義の根幹たる国政選挙を6回にわたり勝ち抜き、国民の信任を得て、憲政史上最長の8年8か月にわたり重責を務められたこと。第2に、東日本大震災からの復興や、日本経済の再生、日米関係を基軸とした戦略的な外交を主導し、平和秩序に貢献するなど、様々な分野で歴史に残る業績を残されたこと。第3に、諸外国における議会の追悼決議や服喪の決定、公共施設のライトアップを始め、各国で様々な形で国全体を巻き込んでの敬意と弔意が示されていること。第4に、民主主義の根幹である選挙活動中の非業の死であり、こうした暴力には屈しないという国としての毅然(きぜん)たる姿勢を示すこと。国葬儀を執り行うとの判断に至った理由をこのように説明してきました。
 諸外国からは、各国王族、大統領など、国家元首・首脳レベルを含め、多数の参列希望が寄せられております。こうした各国からの敬意と弔意に対し、日本国として礼節を持ってお応えすることが必要だとの思いを強くしております。
 もとより、今回の国葬儀の開催は、国民に弔意を強制するものではありませんが、様々な御意見とともに、説明が不十分との御批判を頂いております。国葬儀の実施を判断した総理大臣として、そういった御意見、御批判を真摯に受け止め、正面からお答えする責任があります。政権の初心に帰って、丁寧な説明に全力を尽くしてまいります。
 そのため、国会の場で、閉会中審査の形で、私自身が出席をし、テレビ入りで国葬儀に関する私の決断について質疑にお答えするという機会を頂きたいと考えております。一日でも早くこうした場をつくるべく、与党幹事長、国対委員長に必要な調整を行っていただくよう、先ほどお願いいたしました。野党の皆様にも御協力を賜れれば幸いです。
4(1) 東京新聞HPの「国葬、当初は「国民葬」軸に検討…首相が慎重論退ける」(2022年7月15日付)には「政府内には国葬を行うことに法的根拠の面などから慎重論もあったが、首相の強い思いで(山中注:国葬(国葬儀)が)実現することになった。」と書いてあります。
(2) 衆議院議員江田憲司君提出安倍元首相の「国葬儀」に関する質問に対する答弁書(令和4年8月15日付)には「お尋ね(山中注:岸田首相は、国葬儀決定にあたり、「国葬という高い評価をすることで派遣される要人のレベルも高くなり、『弔問外交』にもつながる。合同葬だったらそうはいかない」と周囲に説明したと報道(朝日新聞七月二十三日付)されているが、事実か。)については、個別の報道の内容に関するものであり、政府としてお答えすることは差し控えたい。」と書いてあります。


第2 閣議決定を根拠として国葬儀を行える理由
1 岸田首相は,令和4年7月14日の内閣総理大臣記者会見の質疑応答において,閣議決定を根拠として国葬儀を行える理由として以下のとおり発言しています(改行を追加しています。)。
 国葬儀、いわゆる国葬についてですが、これは、費用負担については国の儀式として実施するものであり、その全額が国費による支弁となるものであると考えています。
 そして、国会の審議等が必要なのかという質問につきましては、国の儀式を内閣が行うことについては、平成13年1月6日施行の内閣府設置法において、内閣府の所掌事務として、国の儀式に関する事務に関すること、これが明記されています。
 よって、国の儀式として行う国葬儀については、閣議決定を根拠として、行政が国を代表して行い得るものであると考えます。
 これにつきましては、内閣法制局ともしっかり調整をした上で判断しているところです。
 こうした形で、閣議決定を根拠として国葬儀を行うことができると政府としては判断をしております。
2(1) 「国の儀式として行う総理大臣経験者の国葬儀を閣議決定で行うことについて」(令和4年7月14日付の内閣官房及び内閣府の文書)には以下の記載があります。
(1) 過去、国葬儀の形式で実施された昭和42年10月の吉田元総理の葬儀については、閣議決定を根拠として行われた。
(2) この点については、
① 国の儀式を内閣が行うことについては、行政権の作用に含まれること
② 国家の賓客として、国の費用で接待(皇居での歓迎行事や宮中晩餐等を実施)される国賓の招致決定についても、行政権に属する者として、閣議決定により行われていること
③ また、現行の内閣府設置法においては、「国の儀式に関する事務に関すること」が明記されており(4条3項33号)、国葬儀を含む「国の儀式」の執行は、行政権に属することが法律上明確となっていること
④ 国費をもって国の事務として行う葬儀を、将来にわたって一定の条件に該当する人について、必ず行うこととするものではないこと
から、閣議決定を根拠に国の儀式である国葬儀を実施することは可能であると考えられる。
(2) 衆議院議員江田憲司君提出安倍元首相の「国葬儀」に関する質問に対する答弁書(令和4年8月15日付)には以下の記載があります。
 内閣法制局においては、内閣官房及び内閣府から、閣議決定を根拠として国の儀式である国葬儀を行うことは、国の儀式を内閣が行うことは行政権の作用に含まれること、内閣府設置法(平成十一年法律第八十九号)第四条第三項第三十三号において内閣府の所掌事務として国の儀式に関する事務に関することが明記されており、国葬儀を含む国の儀式を行うことが行政権の作用に含まれることが法律上明確となっていること等から、可能であるとする見解について、意見を求められたことから、これに対し、所要の検討を行った上、意見はない旨の回答をしたところである。
3(1) 「国賓及び公賓並びに公式実務訪問賓客の接遇について」(昭和59年3月16日付の閣議決定)には「外国の元首又はこれに準ずる者を招へいする場合には、これを国賓として接遇することができるものとし国賓として接遇することについては、外務大臣が宮内庁長官と連絡の上、その請議により閣議において決定する。 」と書いてあります。
(2) 国葬儀の対象者や実施方法を定めた法律又は政令は存在しないのであって,内閣府設置法4条3項33号は,「国の儀式」に関する事務は内閣府の所掌事務であると定めているに過ぎません。
4(1) 真実を整えるブログ「国葬儀の「法的根拠」と唯一の立法機関・法律の留保・内閣府設置法:安倍晋三元内閣総理大臣の国葬は違法なのか」が載っています。
(2) 論座HP「安倍元首相「国葬儀」が抱える重大リスクに、岸田首相は堪え得るか さらなる社会の「分断」「二極化」と莫大な葬儀コスト」が載っています。
(3) 内閣法制局の令和4年答弁案関係資料(その他)のうち、「参議院議員浜田聡君提出国葬、国葬儀、合同葬儀の違い等に関する質問に対する答弁書」(内閣府から内閣法制局に提出された参考資料を除く。)を掲載しています。


第3 安倍元首相の叙位叙勲
1 安倍元首相は,令和4年7月11日付の閣議決定により,従一位に叙され,かつ,大勲位菊花章頸飾及び菊花大綬章を授与されました(首相官邸HPの「元内閣総理大臣安倍晋三氏を従一位に叙すること並びに大勲位菊花章頸飾及び菊花大綬章の授与について」,及び「令和4年7月11日付の閣議書(令和4年7月8日付で,衆議院議員安倍晋三に対し,従一位に叙するとともに,大勲位菊花大綬章並びに頚飾を授ける。)」参照)。
2 日本国憲法施行後の首相経験者として従一位に叙せられ,かつ,大勲位菊花章頸飾を授けられたのは,吉田茂,佐藤栄作,中曽根康弘及び安倍晋三の4人です。


第4 故安倍晋三国葬儀の準備状況
1(1) 令和4年9月14日,同年秋に国葬儀を実施することを岸田文雄首相が内閣総理大臣記者会見で表明し,同月22日付の閣議決定により,同年9月27日に日本武道館で実施することが閣議決定で決まりました。
(2) 故安倍晋三の葬儀の執行について(令和4年7月22日付の閣議決定)は以下のとおりです。
1 葬儀は、国において行い、故安倍晋三国葬儀と称する。
2 葬儀に関する事務をつかさどらせるため、葬儀委員長、同副委員長及び同委員を置く。葬儀委員長は内閣総理大臣とし、同副委員長及び同委員は内閣総理大臣が委嘱する。
3 葬儀は、令和4年9月27日(火)、日本武道館において行う。
4 葬儀のため必要な経費は、国費で支弁する。
2(1) 令和4年7月22日,森昌文(もりまさふみ)内閣総理大臣補佐官の指揮の下,国葬儀に関する事務を実施する故安倍晋三国葬儀事務局を内閣府に立ち上がりました(首相官邸HPの「令和4年7月22日午前の内閣官房長官記者会見」参照)。
(2) 令和4年7月22日,海外からの国葬儀への出席者に対する接遇等を遺漏なく行うための「故安倍晋三国葬儀準備事務局」(事務局長:石月英雄 外務省アジア大洋州局参事官)が30人規模で外務省内に設置されました(外務省HPの「「故安倍晋三国葬儀準備事務局」の設置について」及び「林外務大臣会見記録(令和4年7月22日(金曜日)10時52分 於:本省会見室)」参照)。
3 衆議院議員緒方林太郎君提出国葬に関する質問に対する答弁書(令和4年8月15日付)には「お尋ねの「宗教的な行為」の意味するところが明らかではなく、お答えすることは困難であるが、いずれにせよ、故安倍晋三国葬儀は、無宗教形式で行うこととしている。」と書いてあります。
4 「故安倍晋三国葬儀 葬儀実行幹事会」は以下の日程で開催されています(内閣府HPの「故安倍晋三国葬儀について」参照)。
第1回:令和4年7月28日
第2回:令和4年8月31日
第3回:令和4年9月21日


第5 故安倍晋三国葬儀の費用
1 令和4年8月26日午前の内閣官房長官記者会見には以下の記載があります。
故安倍晋三国葬義に必要な経費について
 次に、本日の閣議において、故安倍晋三国葬儀に必要な経費について、令和4年度一般会計予備費の使用を決定をしました。国葬儀については、その実施内容を検討しているところであります。今般の国葬儀においては、安倍元総理を追悼したいという気持ちをお持ちの方々のために、日本武道館とは別の場所に献花台を設け、一般献花を実施すること、海外から元首・首脳級の方を含む多数の要人の参列が見込まれることから、参列に当たって必要となる同時通訳等に万全を期す必要があること、会場となる日本武道館には複数の出入口があり、それぞれに警備員や金属探知機を配置するなど、昨今の状況を踏まえて、万全の警備体制を敷く必要があること、さらに参列者として最大で6,000人程度の規模が見込まれることから、その人数に応じたバスの手配やしおりの準備等が必要となること、こうしたことから、予備費の使用額は、令和2年に行われた中曽根元総理の内閣・自由民主党合同葬から約5,700万円増の約2億4,900万円となります。
2  令和4年9月6日午前の内閣官房長官記者会見には以下の記載があります。
故安倍晋三国葬儀について
 本日、故安倍晋三国葬儀に関し、お手元に配付のとおり、国葬儀の流れを葬儀委員長決定しました。また、国葬儀に際し、自衛隊による儀礼の実施について、葬儀委員長から防衛大臣に対する協力を依頼することとしました。さらに、国葬儀後、迎賓館において、葬儀委員長である岸田総理ほかが、海外から来られた要人から個別に弔意を受け、挨拶する機会を設ける予定であります。そして、国葬儀に要する経費の見込みについて申し上げます。これまで予備費で賄うこととした式典関係の経費2.49億円以外に、警備費や海外要人の接遇に要する経費などが必要となる見込みであること、しかしながら、警護・接遇を要する要人の数等が不確定であるため、経費についても確たることを申し上げるのは困難であること、を申し上げてまいりました。また、これまでも国が関与した葬儀に関して、既定経費で支出する警備・接遇に要する経費を切り出してお示しをしたことはありません。一方で、先日、総理からもお話があったように、丁寧な説明を尽くすという観点に加え、これまでの各国からの連絡状況を踏まえ、海外から190以上の代表団が参列し、その中で特別の接遇を要する首脳級等の代表団の数が50程度と見込まれることから、これを仮定するとともに、そうした要人が多数集まる行事に対する警備体制を一定の規模で仮定すること等により、あえて現時点での経費の見込みをお示しをしたいと思います。以下申し上げる警備・接遇等の経費については、過去の合同葬と同様に、既に成立をしている今年度予算の中で対応するものであります。まず、警備に関するものでございますが、具体的には、まず警備に要する経費としては8億円程度と見込まれます。その内訳は、道府県警察からの派遣のための旅費などの部隊活動や超過勤務手当に関わる経費が5億円程度、車両等の装備資機材や待機所の借上げの装備費が3億円程度であります。次に、海外要人の接遇に要する経費については6億円程度と見込まれます。その内訳は、海外要人の本邦滞在中の車両の手配や空港での受入体制の構築等の庁費が5億円程度。接遇要員として一時帰国させる在外公館職員の出張のための旅費が1億円程度であります。このほか、自衛隊の儀じょう隊等の車両借上費等が0.1億円程度と見込まれております。これも既定予算で対応することとしております。私(官房長官)からは以上です。
3 令和4年10月14日午前の内閣官房長官記者会見には以下の記載があります。
故安倍晋三国葬儀に要した経費の速報値について
 次に、故安倍晋三国葬儀に関し、要した経費についての速報値を取りまとめましたので、申し上げます。なお、この速報値については、国葬儀の経費の全体像を示すため、取り急ぎまとめたものであり、正規の決算手続を経たものではなく、今後の精査により計数の異動があり得るものであります。
 まず、式典等に要した経費の速報値については、2.4億円となります。その内訳は、企画・演出及び警備費等の経費1.9億円、日本武道館の借上経費等0.5億円であります。警備に要した経費につきましては、4.8億円となります。その内訳は、都道府県警察からの派遣のための旅費等の部隊活動や超過勤務手当に係る経費2.6億円、車両等の装備資機材や待機所の借上げ等の装備費2.2億円であります。さらに、接遇に要した経費の速報値については、5.1億円となります。その内訳は、海外要人の本邦滞在中の車両の手配や、空港での受入体制の構築等の庁費4.5億円、接遇要員となる在外の外務省職員を往復させるための旅費0.6億円であります。このほか、自衛隊の儀じょう隊等の車両借上費等に要した経費の速報値については、0.1億円となります。これらの経費を合計すると12億円台半ばとなります。
 次に、国葬儀における案内状発送数、参列者数について申し上げます。案内状は、国内の6,175人の方に御送付をし、外国からの参列者734人を含め、合計4,170人の方に御参列いただきました。改めて、多くの方に御参列いただきましたことに感謝申し上げたいと思います。
 次に、警備について申し上げます。警視庁では、最大時約20,000人、うち特別派遣部隊約2,500人で警備を実施しました。
 次に、今回の国葬儀の検証について申し上げます。故安倍晋三国葬儀について、政府がどのような根拠や考え方で執り行ったのか、また、国民の間でどのような議論があったか等を記録して残すこととします。このため、憲法、行政法、外交等、幅広い分野の有識者約20名から30名に対し、個別にヒアリングを実施し、「意見」を収集して、「論点」を整理し、できる限り早期に公表します。その上で、総理が国会でお答えしたとおり、国葬儀の実施について国民各層の幅広い御理解を得る観点から、国会との関係など、どのような手順を経るべきなのか、一定のルールを設けることを目指します。私(官房長官)からは以上です。



第6 故安倍晋三国葬儀の実施概要及び流れ
1 令和4年9月27日午後2時に開始する予定の「故安倍晋三国葬儀」実施概要(令和4年8月31日の故安倍晋三国葬儀葬儀実行幹事会決定)は以下のとおりです。
1.日時・場所
・ 令和4年9月27日(火)午後2時開式
・ 日本武道館
2.参列者 ・現・元三権の長、現・元国会議員、海外の要人、立法・行政・司法関係者、地方公共団体代表、各界代表 等
・ 最大で約6000人程度
・ 案内状については9月初から順次発送する。
3.一般献花
・ 9月27日午前10時から午後4時までの間、日本武道館外に設ける献花台において、一般献花を実施する。
・ 献花用の花は各自で用意いただく。
4.葬儀当日の会場周辺の立ち入り制限
・ 国葬儀当日は、日本武道館周辺について参列者以外の立ち入りを制限する。
2 令和4年9月27日午後2時に開始する予定の故安倍晋三国葬儀の流れは以下のとおりです。
一 御遺骨式場到着
一 開式の辞 葬儀副委員長(内閣官房長官)
一 国歌演奏
一 黙とう
一 生前のお姿の映写
一 追悼の辞 葬儀委員長(内閣総理大臣) 岸田 文雄
      衆議院議長 細田 博之
      参議院議長 尾辻 秀久
      最高裁判所長官 戸倉 三郎
      友人代表 菅 義偉
一 勅使・皇后宮使御拝礼
一 上皇使・上皇后宮使御拝礼
一 御供花 皇族各殿下
一 献花
      葬儀委員長
      喪主
      御遺族
      衆議院議長
      参議院議長
      最高裁判所長官
      友人代表
      海外の要人 等
一 御遺骨お見送り
引き続き参列者による献花
3 参議院議員浜田聡君提出国葬儀における選曲に関する質問に対する答弁書(令和4年10月14日付)には以下の記載があります。
① 故安倍晋三国葬儀において演奏した楽曲については、広く国民に親しまれている楽曲や、演奏を行う自衛隊の音楽隊が過去に式典等において演奏した実績のある楽曲等を参考に、御指摘の「アメイジンググレイス」を含む二十七曲を選定したものである。
② 故安倍晋三国葬儀は、無宗教形式で行うこととしたものであるため、その実施に当たり、政府として、お尋ねの「安倍元総理の宗派」は把握していない。
③ 故安倍晋三国葬儀において演奏した楽曲については、御指摘の「アメイジンググレイス」を含め幅広く二十七曲を選定したものであり、また、「アメイジンググレイス」が広く国民に親しまれている楽曲であること等から、宗教との関わり合いが我が国の社会的・文化的諸条件に照らし相当とされる限度を超えるものではなく、「政教分離原則(日本国憲法第二十条第一項後段、同条第三項、第八十九条)に違反する」との御指摘は当たらないと考えている。


第7 故安倍晋三国葬儀の一般献花
1 令和4年9月21日(水)午後の内閣官房長官記者会見には以下の記載があります。
故安倍晋三国葬儀葬儀実行幹事会の開催について
本日、故安倍晋三国葬儀に関し、葬儀実行幹事会を開催し、お手元に配付のとおり、一般献花の実施要領を幹事会決定しました。一般献花は、国葬儀当日の午前10時から午後4時まで、千代田区九段坂公園において実施します。内堀通り墓苑(ぼえん)入口交差点側の、千鳥ヶ淵(ちどりがふち)緑道が献花会場への入口となります。このため、九段下駅ではなく、半蔵門駅が最寄り駅ですので、御注意をお願いいたします。献花用の花は各自で御用意いただき、献花台には花のみを献じてください。立入制限の時間、来場方法、注意事項など、一般献花の実施については、内閣府ホームページでもお知らせいたします。皆様に静謐(せいひつ)な環境下で、献花を行っていただくため、国民の皆様の御協力をお願いをいたします。私(官房長官)からは以上です。
2 「故安倍晋三国葬儀 一般献花」実施要領 (令和4年9月21日故安倍晋三国葬儀葬儀実行委員会幹事会決定)は以下のとおりです。
1.日時・場所
・令和4年9月27日(火)午前10時から午後4時まで
・千代田区九段坂公園(千代田区九段南2-2-18)
2.実施内容 ・九段坂公園に献花台を2台(1台で同時に10人が献花可能)設置する。
・献花台には花のみを献ずることができることとし、献花用の花は各自で用意いただく。
・献花前に手荷物検査を実施する(手荷物検査場は千鳥ヶ淵緑道ボート乗り場付近)。
3.会場周辺の立入制限と来場方法
・当日は、九段坂公園及び千鳥ヶ淵緑道周辺について、献花者以外の立入りを制限する。
・献花者は、墓苑入口交差点から千鳥ヶ淵緑道に入り、手荷物検査を受けた後、献花台に向かうこととする。
4.荒天の場合の措置
・台風、雷雨等の場合には、一般献花を中止することがある。
5.一般献花に係る周知
・立入制限の時間、来場方法、注意事項など、一般献花の実施について、ホームページ等で周知する。
3 「故安倍晋三国葬儀 一般献花」に関する「お知らせ」は以下のとおりです。
一般献花される際には以下の留意事項についてご協力をお願いします。
【日時】令和4年9月27日(火)10:00から16:00まで
【場所】千代田区九段坂公園(千代田区九段南2-2-18)
※内堀通り墓苑入口交差点側の千鳥ヶ淵緑道が献花場所(九段坂公園)への入口となります。係員の誘導に従いお進みください。

【地図】末頁をご参照ください。
【留意事項】
1.9月27日(火)は、九段坂公園及び千鳥ヶ淵緑道(特別区道千第231号線。車道及び歩道)は内閣府国葬儀事務局が占有することとしております。そのため、国葬儀関係者及び一般献花者以外終日入場できません。また、一般献花者であっても献花開始時間前の入場はできませんのでご協力をお願いします。
2.献花会場周辺は交通規制が行われていることから、公共交通機関でのご来場をお願い します。(東京メトロ半蔵門線「半蔵門駅」5番出口よりお越しください。九段下駅から は交通規制でかなり迂回していただくことになります。)
3.献花用の花はご自身でご用意いただきますようお願いします。 献花される際にお持ちいただけるものは、お花のみとさせていただきます。 (飲み物やぬいぐるみなど、花以外のものは献花台に置くことができません。)
4.記帳所は設けておりません。
5.警備上の観点から、献花前に手荷物検査(必要に応じて金属探知機を用いたボディチェック等)を実施しますのでご協力をお願いします。
6.熱中症の予防対策をお願いします。
7.新型コロナウイルス感染拡大防止の観点から、混雑時の会話はお控えください。
8.次の該当者は献花をご遠慮ください。
・咳や発熱など風邪の症状、息苦しさや強いだるさなどがある方。
・マスクの着用をされていない方。(人との距離(2mを目安)が確保できている 場合は、マスクを着用いただく必要はありません。)
・厚生労働省が定める入国後の自宅等待機期間が終了していない方。 (厚生労働省HP) https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000121431_00209.html
9.皆様に静謐な環境下で献花を行っていただくため、九段坂公園及び千鳥ヶ淵緑道(特別区道千第231号線。車道及び歩道)において次の留意事項についてご協力をお願いします。
①九段坂公園及び千鳥ヶ淵緑道は弔意を表し、献花される方のために内閣府国葬儀事務局が占有するスペースです。献花目的以外の方はお並びできません。また、第三者がこのスペースの占用又は使用にわたる行為をすることはできません。
②献花台にはお花のみ置くことができます。
③次のような行為はお控えください。
・ビラ類を貼紙したり、配布したり、散布したりすること
・横幕、のぼり、看板、プラカード、メガホン、ドローン、ラジコン等を持ち込むこと
・献花の進行を著しく遅延させること
・献花場所及び緑道での写真・動画撮影、大声をあげること等他の方の迷惑になるよ うなこと
④新型コロナウイルス感染拡大防止の観点から、混雑時の会話をお控えください。
⑤係員の整理誘導に従ってください。混雑緩和のため、献花後は進行方向にお進みください。
⑥係員の指示に従わない場合は、献花をお断りし、お帰りいただくことがあります。


第8 故安倍晋三国葬儀当日における弔意表明
1 参議院議員浜田聡君提出国葬、国葬儀、合同葬儀の違い等に関する質問に対する答弁書(令和4年8月15日付)には以下の記載があります。
① 故安倍晋三国葬儀の当日における弔意表明の在り方については、現在検討しているところであり、現時点でお尋ねについて明確にお答えすることは困難であるが、例えば、お尋ねの「半日休むようにというようなこと」及び「歌舞音曲を慎んだらどうですかということ」について求めることは現時点では考えていない。
② 故安倍晋三国葬儀は、北の丸公園内に所在する日本武道館において行うこととしているところ、故安倍晋三国葬儀の具体的内容は現在検討中であり、現時点でお尋ねについてお答えすることは困難である。
2 故安倍晋三国葬儀の当日における弔意表明について(令和4年8月31日付の故安倍晋三国葬儀葬儀委員長決定)は以下のとおりです。
故安倍晋三国葬儀の当日には、哀悼の意を表するため、各府省においては、弔旗を掲揚するとともに、葬儀中の一定時刻に黙とうすることとする。
3 参議院議員小西洋之君提出安倍元総理の国葬儀と国民、国会、裁判所との関係等に関する質問に対する答弁書(令和4年10月14日付)には以下の記載があります。
① 故安倍晋三国葬儀の当日における弔意表明の在り方については、令和四年九月八日の衆議院議院運営委員会及び参議院議院運営委員会において、松野内閣官房長官が「国民一人一人に弔意の表明を強制的に求めるものであるとの誤解を招くことがないよう、吉田元総理の国葬儀の際に実施した、弔意表明を行う閣議了解や、地方自治体や教育委員会等の関係機関に対する弔意表明の協力方の要望は行わないこととしました」と述べたとおりであり、これは個別の「官公庁、自治体、学校等において黙とうなどの弔意表明が求められた場合」に関する「政府の見解や方針」を述べたものではなく、また、御指摘の「弔意表明を行う必要はなく求めるべきでないことについての通知」も行っていない。
② 各府省において「葬儀委員長の決定」の内容を周知することは、国家公務員法(昭和二十二年法律第百二十号)第九十八条第一項等に規定する職務上の命令には該当しないと考えており、職員が弔意表明を行わない場合でも、これに対して同法第八十二条等に規定する懲戒処分を課すことはできないと考えている。また、御指摘の「自治体、教育委員会、学校において弔意表明が求められ、職員や教職員や児童生徒がこれを拒んだ場合」については、個別具体的な状況が明らかではないため、お尋ねの「不利益(懲戒や処分)や指導等を課すことは法的に可能であるのか」について一概にお答えすることは困難であるが、一般に、合理的な理由なく不利益処分を課すことはできないと考えている。
 また、「葬儀委員長の決定」は、各府省の職員に対して黙とうの機会を設けるという趣旨であり、職員一人一人に対して黙とうすることを求めているものではなく、実際に各府省の職員が黙とうを行ったかどうかについては把握していない。

 


第9 故安倍晋三国葬儀に伴う飛行制限区域の設定
1 国土交通省は,令和4年8月25日,国葬儀に伴い9月26日から9月28日までの間,日本武道館を中心とする半径25海里(約46km)の円内において,航空法80条に基づき飛行制限区域を設定しましたところ,飛行制限を適用しない航空機は以下のとおりです(国土交通省HPの「国葬儀に伴う飛行制限区域の設定」参照)。
① 警備等を任務とする航空機(警察等)
② 管制機関から飛行を認められた航空機(定期便(東京国際空港他)等)
③ 航空法第80条但し書きによる許可を受けた航空機(報道機等)
④ 航空法第81条の2に基づく捜索又は救助のための航行を行う航空機(消防・防災ヘリ等)
2(1) 航空法の関係条文は以下のとおりです。
80条(飛行の禁止区域)
航空機は、国土交通省令で定める航空機の飛行に関し危険を生ずるおそれがある区域の上空を飛行してはならない。但し、国土交通大臣の許可を受けた場合は、この限りでない。
81条の2(捜索又は救助のための特例)
前三条の規定は、国土交通省令で定める航空機が航空機の事故、海難その他の事故に際し捜索又は救助のために行なう航行については、適用しない。
(2) 航空法施行規則の関係条文は以下のとおりです。
173条(飛行の禁止区域)
法第八十条の規定により航空機の飛行を禁止する区域は、飛行禁止区域(その上空における航空機の飛行を全面的に禁止する区域)及び飛行制限区域(その上空における航空機の飛行を一定の条件の下に禁止する区域)の別に告示で定める。ただし、緊急に航空機の飛行を禁止する区域を定める必要があるため、告示により当該区域を定めるいとまがないときは、国土交通大臣は、その必要な限度において、告示をしないで、飛行禁止区域又は飛行制限区域を定めることができる。


第10 故安倍晋三国葬儀に伴う交通規制その他の影響
1 故安倍晋三国葬儀に伴う交通規制
・ 警視庁HPの「国葬儀等に伴う交通規制のお知らせ(9月26日から9月28日)」によれば,以下のとおりです。
令和4年9月27日(火曜)
日本武道館における国葬儀及びその後の迎賓館における行事に伴い、昼前から夜にかけて、都内の首都高速道路において、車両通行止めの交通規制が実施されます。
このほか、一般道路においても、必要な交通規制が実施されます。
令和4年9月26日(月曜)から令和4年9月28日(水曜)
外国要人の来日・離日の際の移動などに伴い、首都高速道路や一般道路において、一時的な交通規制が実施される見込みです。


2 故安倍晋三国葬儀に伴うバス運行への影響
(1) 東急バスHPの「国葬儀等に伴う交通規制の影響によるバスの運行について 2022年9月26日~2022年9月28日▼大幅な遅延が発生する場合があります▼」には以下の記載があります。
日頃より東急バス・東急トランセをご利用いただきまして誠にありがとうございます。
2022年9月26日(月)~28日(水)の期間、日本武道館における国葬儀及びその後の迎賓館における行事・要人の来日に伴いまして、車両通行止めを中心とした大規模な交通規制が実施される予定です。
この交通規制は首都高速道路を中心に実施される事から、一般路線バス、空港連絡バス及び高速バスの運行に大幅な遅延が発生する場合がございます。
また、交通規制となる時間や路線の詳細は、警備の都合上、事前に周知されません。
ご利用予定のお客さまにおかれましては、お時間には十分に余裕を持ってご利用くださいますようお願い申し上げます。
尚、バス運行の遅延等による損害については、運行会社ではその責を一切負いかねますので予めご了承ください。
(2) 東京都交通局HPの「「国葬儀」に伴う交通規制時の運行について」にはバス路線の運行形態の変更のことが書いてあります。
3 故安倍晋三国葬儀に伴う郵便物等への影響
(1) 日本郵便HPの「国葬儀等に伴う郵便物・ゆうパックなどのお届け遅延に関するお知らせ」には令和4年9月26日(月)から9月28日(水)までを対象期間として,「国葬儀等に伴い首都高速道路や都心部の一般道路等において実施される交通規制、警備強化等の影響により、郵便物・ゆうパックなど(以下「郵便物等」といいます。)の一部のお届けに遅れが生じることが見込まれます。」と書いてあります。
(2) ヤマト運輸HPの「国葬に伴う交通規制によるお荷物のお届けについて」には以下の記載があります。
9月27日(火)に日本武道館(東京都千代田区)で執り行われる「国葬」に伴い、9月26日(月)~9月28日(水)までの間、都内の首都高速道路や都心部の一般道路において、交通規制が実施されます。
その影響により、東京都の一部地域において、お荷物のお届けに遅れが生じる可能性があります。
■対象期間
2022年9月26日(月)~9月28日(水)の3日間
■対象地域
東京都千代田区、港区、新宿区、渋谷区
※交通規制の影響により、上記地域以外でも一部遅れが生じる可能性があります。


4 故安倍晋三国葬儀に伴うその他の影響
・ ホテルニューオータニHPの「「故安倍晋三元首相国葬儀」に伴うお知らせ」には以下の記載があります。
9月27日(火)に日本武道館にて行われる故安倍晋三元首相国葬儀に伴い、国内外からたくさんの方々が国葬儀に参列されるため、日本武道館周辺および東京都内は交通規制による混雑が予想されます。
また、国葬儀前後期間は、ホテル周辺、および館内でも、非常に厳しい警備態勢がしかれることが予想されますので、お時間に余裕を持ってお越しください。お客さまには大変ご不便をおかけいたしますが、ご理解ご協力のほどお願い申し上げます。



第11 関連記事その他
1 安倍元首相の家族葬は,令和4年7月12日午後,東京都港区芝公園にある増上寺で行われました(産経新聞HPの「安倍元首相の功績しのぶ 増上寺で葬儀、世界から弔意1700件」参照)。
2 外務省HPの「故安倍晋三国葬儀への各国・地域・国際機関等からの参列」(令和4年9月22日付)には「参列の内訳は、海外から代表が参列する国・地域・国際機関等が117、海外からは参列しないが駐日大使・駐日国際機関代表等が代表として参列する国・地域・国際機関等が101です。」と書いてあります。
3(1) Wikipediaに「安倍晋三銃撃事件」及び「安倍晋三の国葬」が載っています。
(2) NHK政治マガジンに「55年ぶり「国葬」実施する意味は?
割れる世論 法的根拠の課題」(2022年9月22日付)が載っています。
4 東京地裁令和4年9月9日判決(裁判長は47期の岡田幸人)は,「元内閣総理大臣の国葬儀の実施及びこれに伴う国費の支出は,抗告訴訟の対象となる「処分」に当たらない」と判示しました。
5(1) 以下の資料を掲載しています。
・ 故安倍晋三国葬儀(令和4年9月27日実施)に関して最高裁判所が作成し,又は取得した文書
(2) 以下の記事も参照してください。
・ 国葬儀
・ 平成の代替わりに伴う大嘗祭等に関する裁判例
・ 最高裁判所裁判官及び事務総局の各局課長は襲撃の対象となるおそれが高いこと等
・ 叙位の対象となった裁判官(平成31年1月以降の分)
・ 裁判官の死亡退官
・ 裁判所関係者及び弁護士に対する叙勲の相場
 勲章受章者名簿(裁判官,簡裁判事,一般職,弁護士及び調停委員)


貨物軽自動車運送事業(軽貨物運送業)

目次
第1 総論
第2 バイクを利用した軽貨物運送業(バイク便)
1 軽二輪及び小型二輪
2 原付一種及び原付二種
3 特定信書便におけるバイク便の利用
4 その他
第3 バイクの排気量ごとの取扱いの違い
1 高速道路,車検及び大型二輪免許
2 道路交通法及び道路運送車両法でいうところのバイク
3 標識交付証明書,軽自動車届出済証及び車検証
4 自賠責保険
5 バイクの免許
第4 軽トラックを利用した軽貨物運送業(軽トラック便)
第5 車検証に関するメモ書き
第6 ナンバープレートに関するメモ書き
1 登録自動車のナンバープレート
2 軽自動車のナンバープレート
3 トラック緑ナンバー
4 1ナンバー,3ナンバー,4ナンバー及び5ナンバー
第7 バイクの名義変更
第8 自動車の廃車が確認できる書類
第9 貨物自動車の逸失利益に関する最高裁判例
第10 バイク事故特有の過失割合が書いてある書籍

第11 関連記事その他

第1 総論
1 「貨物自動車運送事業」としては,①一般貨物自動車運送事業(許可制),②特定貨物自動車運送事業(許可制)及び③貨物軽自動車運送事業(届出制)をいう。
2 貨物軽自動車運送事業とは,他人の需要に応じ,有償で,自動車(三輪以上の軽自動車及び二輪の自動車に限る。)を使用して貨物を運送する事業をいい(貨物自動車運送事業法2条4号),運輸支局への届出が必要になります(貨物自動車運送事業法36条)。
3 略称は軽貨物運送業でありますところ,開業タイプとしては,個人開業型及びフランチャイズ型があります(J-Net21の「軽貨物運送」参照)。

第2 バイクを利用した軽貨物運送業(バイク便)
1 軽二輪及び小型二輪の場合
・ 排気量125ccを超えるバイク(道路運送車両法でいうところの軽二輪及び小型二輪)を利用する場合,必ず貨物軽自動車運送事業の届出をして緑ナンバーを取得する必要があるのであって,届出をしない限りバイク便をすることはできません。
    そのため,真っ白ナンバー・緑字(126ccないし250cc)又は緑枠の白ナンバー・緑字(251cc以上)でバイク便をすることはできません。
2 原付一種及び原付二種
・ 道路運送車両法2条2項の「自動車」ではない排気量125cc以下のバイク(道路運送車両法2条3項の「原動機付自転車」(原付一種及び原付二種)となります。)を利用する場合,届出は不要です(貨物自動車運送事業法2条5項参照)
    そのため,真っ白ナンバー・紺地(50cc以下),黄ナンバー・紺字(51ccないし90cc)又はピンクナンバー・紺字(91ccないし125cc)でバイク便をすることができます。
3 特定信書便におけるバイク便の利用
・ 民間事業者による信書の送達に関する法律(略称は「信書便法」です。)2条7項に基づく特定信書便サービス(1号が大型,2号が高速,3号が高価です。)としては,①公文書集配,②企業グループ内便,③地域内急送便,④電報類似サービス,⑤広域急送便及び⑥高セキュリティ便があります(総務省HPの「信書便事業の現状について」(平成28年10月27日付)参照)ところ,例えば,③地域内急送便についてはバイク便が利用されています。
4 その他
・ トラサポHPに「緑ナンバーバイク便の始め方と8色のプレートを行政書士が解説」が載っています。


第3 バイクの排気量ごとの取扱いの違い
1 高速道路,車検及び大型二輪免許
(1) 普通二輪免許が必要となる排気量125ccを超えるバイク(道路運送車両法でいうところの軽二輪及び小型二輪)であれば,高速道路を走行できます(JAFの「[Q]エンジン形式や排気量による違い」参照)。
(2) 排気量250ccを超えるバイク(道路運送車両法でいうところの小型二輪)の場合,2年ごとに車検を受ける必要があります。
(3) 排気量400ccを超えるバイク(道路交通法でいうところの大型二輪ですが,道路運送車両法でいうところの小型二輪です。)の場合,大型二輪免許が必要となります。
2 道路交通法及び道路運送車両法でいうところのバイク
(1) 道路交通法でいうところのバイクは,原付(50cc以下),普通二輪(51ccないし400cc)及び大型二輪(401cc以上)です。
(2) 道路運送車両法でいうところのバイクは,原付一種(50cc以下),原付二種(51ccないし125cc),軽二輪(二輪の軽自動車。126ccないし250cc)及び小型二輪(二輪の小型自動車。251cc以上)です(東京都自動車整備振興会HPの「お知らせ詳細」参照)。
3 標識交付証明書,軽自動車届出済証及び車検証
(1) 標識交付証明書
・ 排気量125cc以下のバイクの場合,道路運送車両法の「自動車」ではありませんから,税務上の書類としての,標識交付証明書が交付されますところ,そこには標識番号(ナンバープレートの番号)及び車台番号が記載されています。
    ただし,自治体によっては,「軽自動車税申告書兼標識交付申請書」に受付印を捺印した書類で代用していることがあります。
(2) 軽自動車届出済証
ア 排気量126ccないし250ccのバイク(軽二輪)の場合,軽自動車届出済証(道路運送車両法施行規則63条の2及び63条の4参照)が管轄の運輸支局から交付されますところ,そこには車両番号(ナンバープレートの番号)及び車台番号が記載されています。
イ 令和元年7月1日,軽自動車届出済の取扱主体が軽自動車検査協会から運輸支局に変更になるとともに,軽自動車届出済証のサイズがB5サイズからA4サイズになりました(バイク買取おすすめブログ「バイクの軽自動車届出済証とは?携帯義務ってあるの?」(2022年12月2日付)参照)。
(3) 車検証
・ 排気量251cc以上のバイク(小型二輪)の場合,自動車検査証(いわゆる「車検証」です。)が運輸監理部又は運輸支局から交付されますところ,そこには車両番号(ナンバープレートの番号)及び車台番号が記載されています。
(4) 自動車登録番号及び車両番号
・ 登録自動車のナンバープレートの番号は自動車登録番号であり,軽自動車及び二輪車のナンバープレートの番号は車両番号です。
4 自賠責保険
・ ヤフーニュースの「ご存知ですか?バイクの自賠責保険が期限切れの場合どうなる?罰則や、再加入費用まとめ」には,「車検が必要な小型二輪車(250cc超)の場合は、車検時に自賠責保険の加入・更新を行いますが、車検制度の適用がない原付(125cc以下)や軽二輪(125cc超250cc以下)の場合は、保有者自身が、バイク販売店や損害保険会社、もしくはコンビニ等で更新手続きをする必要があります。」と書いてあります。
5 バイクの免許
(1) バイクの免許は以下のとおり7種類あり,大きく4つに分類できます。
① 原動機付自転車免許(50cc以下)
・ 他の免許と異なり,一般道での法定速度は時速30kmです。
・ 他の免許と異なり,二人乗りができません。
② 小型二輪免許・AT小型限定二輪免許(125cc以下)
・ 高速道路での走行ができません。
③ 普通二輪免許・AT限定普通二輪免許(400cc以下)
・ 「中型免許」といわれることがあります。
④ 大型二輪免許・AT限定大型二輪免許(排気量の制限なし)
・ 他の免許と異なり18歳から取得できます。
(2) ヤマハHPの「あのバイクに乗るには、どの免許が必要?バイク免許の種類と取得方法について」が参考になります。


第4 軽トラックを利用した軽貨物運送業(軽トラック便)
1 軽トラック(排気量は660cc以下です。)を利用する場合,必ず貨物軽自動車運送事業の届出をして黒ナンバーを取得する必要があります。
2 軽貨物運送業は軽トラック1台で開始することができます。
3 赤帽は,軽貨物運送業を行う個人事業主の集まりである全国赤帽軽自動車運送協同組合連合会のことです。
4 プロが教える!引越し段取り術HPの「第三章 引越しを自分でする」には,「これ(山中注:軽トラック便)は、近距離の場合にかなり有効です」と書いてあります。
5 黄ナンバーは白ナンバーの軽自動車バージョンであり,黒ナンバーは緑ナンバーの軽自動車バージョンです。


第5 車検証に関するメモ書き
1(1) 登録自動車の場合,自動車登録番号(白ナンバー又は緑ナンバーの番号)を自動車登録ファイルに登録する新規登録(道路運送車両法9条)が終わった後に車検証を交付されます(道路運送車両法60条2項)。
(2) 令和5年1月4日より自動車検査証を電子化し,必要最小限の記載事項を除き自動車検査証情報はICタグに記録しますところ,ICタグの情報は汎用のICカードリーダが接続されたPCや読み取り機能付きスマートフォンで参照可能です(国土交通省電子車検証特設サイト「電子車検証について」参照)。
2 検査対象軽自動車の場合,自動車登録制度(道路運送車両法4条)の適用がないため,車検証交付時に車両番号(黄ナンバー又は黒ナンバー)が指定されます(道路運送車両法60条1項)。



第6 ナンバープレートに関するメモ書き

1 登録自動車のナンバープレート
(1)ア 登録自動車のナンバープレート(自動車登録番号)について定める自動車登録規則13条1項は以下のとおりです。
自動車登録番号は、次に掲げる文字をその順序により組み合わせて定めるものとする。
一 自動車の使用の本拠の位置を管轄する運輸監理部又は運輸支局(使用の本拠の位置が自動車検査登録事務所の管轄区域に属する場合にあつては、当該自動車検査登録事務所。次項において同じ。)を表示する文字(別表第一)
二 自動車の種別及び用途による分類番号を表示する二字以下のアラビア数字又は最初の字がアラビア数字であつて、その他の字がアラビア数字若しくはローマ字若しくはこれらの組合せである三字(別表第二)
三 自動車運送事業の用に供するかどうかの別等を表示する平仮名又はローマ字(別表第三)
四 四けた以下のアラビア数字
イ 1号が使用の本拠地であり,2号が分類番号であり,3号が事業用判別文字であり,4号は一連指定番号です。
(2) CARDAYSの「ナンバープレートの種類と色の違いとは?数字の意味も徹底解説!」が参考になります。

2 軽自動車のナンバープレート
(1) 軽自動車のナンバープレート(車両番号標)について定める道路運送車両法施行規則36条の17第1項及び第2項は以下のとおりです。
① 検査対象軽自動車の車両番号は、次に掲げる文字をその順序により組み合わせて定めるものとする。
一 検査対象軽自動車の使用の本拠の位置を管轄する運輸監理部又は運輸支局(使用の本拠の位置が自動車検査登録事務所の管轄区域に属する場合にあつては、当該自動車検査登録事務所。以下この条、次条及び第六十三条の四において同じ。)を表示する文字
二 検査対象軽自動車の用途による分類番号を表示する二字のアラビア数字又は最初の字がアラビア数字であつて、その他の字がアラビア数字若しくはローマ字若しくはこれらの組合せである三字(別表第二の四)
三 自家用又は事業用の別等を表示する平仮名又はローマ字(別表第二の五)
四 四けた以下のアラビア数字
② 前項第一号の運輸監理部又は運輸支局を表示する文字については、自動車登録規則(昭和四十五年運輸省令第七号。以下「規則」という。)の別表第一に定めるところによる。
(2) 軽自動車検査協会HPに「軽自動車のナンバー」が載っていますところ,事業用の軽自動車の場合,事業用判別文字は「り」又は「れ」です。
(3) 山梨県軽自動車協会HPの「ナンバープレートの秘密?」には,ナンバープレートの大きさとか,皇室用又は外交団用等特殊ナンバーとかに関する説明が載っています。
3 トラック緑ナンバー
(1) 小型トラック(排気量は661ccないし2000cc)又はトラック(排気量は2001cc以上)を利用する貨物自動車運送事業の許可を受けるためには営業所ごとに車両を5台以上揃える必要があるのであって,ほとんどの地域において,一般廃棄物運送限定を除き,1台のトラックで緑ナンバーを付ける方法はありません(トラサポHPの「【本当の正解】緑ナンバーの取得には、5台のトラックがないと絶対に無理でしょうか?」参照)。
(2) トラサポHPに「トラック緑ナンバー名義貸しってダメなの?専門行政書士が解説します。」が載っています。
(3) 緑ナンバーの事業用判別文字は「あいうえかきくけこを」です(自動車登録規則13条3号及び別表第三)。
4 1ナンバー,3ナンバー,4ナンバー及び5ナンバー
(1) 1ナンバー
・ 大型トラックに代表される普通貨物自動車につき,ナンバープレートの地名の横の1桁目の数字は「1」ですから,1ナンバーといわれます(おとなの自動車保険HPの「1ナンバーとは?分類の条件や3ナンバーとの維持費(税金・車検・保険等)の違い」参照)。
(2) 3ナンバーと5ナンバー
・ 以下の基準をすべて満たした小型乗用自動車は5ナンバーとなり,以下の基準を1つでも超えた自動車は3ナンバーになります(チューリッヒHPの「3ナンバーと5ナンバー車の違いとは。税金・サイズ・車種(ミニバン・セダン・SUV)の違いは?」参照)。
排気量:2000cc以下,全長:4700mm以下
全幅:1700mm以下,全高:2000mm以下
(3) 4ナンバー
・ 小型貨物自動車(排気量660cc超)及び軽トラック(排気量660cc以下)につき,ナンバープレートの地名の横の1桁目の数字は「4」ですから,4ナンバーといわれます(チューリッヒHPの「車の4ナンバーとは。車検や税金(自動車税・重量税)・保険などの維持費。軽自動車はある?」参照)。

第7 バイクの名義変更
1 バイクの窓口HPの「原付バイクの名義変更の手続きと必要書類」には「名義変更の一連の手続きは住民登録をしている市役所や町役場などで行います。自動車とは管轄が異なるため注意しましょう。」と書いてあります。
2 バイサポHPの「250ccまでの軽二輪バイクの名義変更を自分でするのに必要な書類と手続き」には「排気量125cc超~250ccバイクは新しい所有者の自宅住所を管轄している運輸支局(陸運局)または、自動車検査登録事務所で、名義変更できます。」とか,「以前は市役所で名義変更ができましたが、2019年7月1日から250ccバイクの名義変更は400ccバイクの名義変更と同様に運輸支局(陸運局)に変更なりました。」と書いてあります。

第8 自動車の廃車が確認できる書類
1 自動車の廃車が確認できる書類として,例えば,①登録自動車については登録事項等証明書及び自動車重量税還付申請書付表1があり,②小型二輪及び検査対象軽自動車については検査記録事項等証明書及び自動車検査証返納証明書があり,③軽二輪については軽自動車届出済証返納証明書及び軽自動車届出済証返納済確認書があり,④原付については軽自動車税(種別割)廃車申告受付書があります(損保ジャパンHPの「自動車の廃車が確認できる書類」参照)。
2(1) 軽自動車届出済証返納証明書交付請求書は,軽二輪を廃車にする際の書類であり,複写式6枚つづりになっています(バイク買取.comの「軽自動車届出済証返納証明書交付請求書の書き方」参照)。
(2) 軽自動車返納済証返納済確認書はオレンジ色の紙です(e-バイク廃車.comの「軽自動車届出済証返納届の書き方や詳細をチェック!」参照)。

第9 貨物自動車の逸失利益に関する最高裁判例
・ 貸物自動車が,電車運転手の過失に基く衝突によって破損し,それがため休車した場合において,右自動車の所有者が,休車によりその期間中,これを使用して得べかりし1日金2000円の割合による利益を喪失した旨の主張に対し,特段の事由を示すことなく,右損害は,すべて特別の事情によつて生じた損害であつて,通常生ずべき損害でないとした判断は,経験則違反,審理不尽,理由不備のそしりを免れません(最高裁昭和33年7月17日判決)。

第10 バイク事故特有の過失割合が書いてある書籍
1 自動二輪車交通事故訴訟の実務(2023年2月24日付)には「自動二輪車と四輪車との交通事故における過失割合の評価」として以下の記載があります。
① 四輪車同士の事故についてのみ類型が設けられている場合の検討
→ (a)判タ38号で基本過失割合に差が設けられていない場合,及び(b)判タ38号で基本過失割合に差が設けられている場合について説明されています。
② 判タ38号に類型の設けられていない典型事故の過失評価
→ (a)路外左折四輪車と後方直進自動車との事故,(b)右折四輪車と後続直進自動二輪車との事故及び(c)狭路における対向車間の事故について説明されています。
③ 自動二輪車事故について考慮すべき特有の事情
→ (a)自動二輪車の転倒(自動二輪車の転倒の評価,転倒しやすい路面状況の場合の評価,接触・転倒に至らない回避行動),(b)自動二輪車のすり抜け走行についての評価(一般道でのすり抜けの場合,高速道路でのすり抜け事故),(c)ヘルメットの不着用・あごひもの不着用によるヘルメットの脱落,(d)昼間時のヘッドライト消灯及び(e)二人乗り規制の違反について説明されています。
④ 原動機付自転車の二段階右折についての違反
2 自動二輪車交通事故訴訟の実務(2023年2月24日付)76頁には「自動二輪車のすり抜け走行は、道路交通法上、直ちに何らかの法条に違反するものではない。」と書いてあります。

第11 関連記事その他
1 12桁の運転免許証番号のうち,1~2桁目は最初に免許を取得した各都道府県公安委員会の番号であり(京都府は61,大阪府は62,兵庫県は63です。),3~4桁目は最初に免許を取得した「取得年」の西暦の下2桁であり,5~11桁目は各都道府県公安委員会が運転免許証を管理するための番号であり,12桁目は紛失・盗難・破損などによって運転免許証を再発行した回数(再発行したことがない場合は「0」です。)です(車査定マニアHP「運転免許証の見方や数字の意味の総まとめ」参照)。
2 自転車の交通違反に関しては,令和4年10月下旬以降につき,①信号無視,②一時不停止,③右側通行及び④徐行せずに歩道を通行という4項目のうち悪質な違反については,これまで「警告」にとどめていたケースでも交通切符を交付して検挙されることとなります(NHK HPの「自転車の交通違反 取り締まり強化へ「警告」から「赤切符」も」参照)。
3(1) アマゾン委託ドライバー「アマゾンフレックス(Amazon Flex)」とは,大手通販会社アマゾンの荷物を配達する業務の委託を請け負う働き方のことをいいます(ケイエスケイロジスティクスHP「アマゾンの委託ドライバーの契約内容や単価、口コミを紹介」参照)。
(2) 従来からピザ店や寿司店が独自に注文を受け付け,自店スタッフが直接配達する出前サービス(自社注文宅配型)は存在していたものの,近年の新しい宅配事業(デリバリーサービス)のシステムとしては,マーケットプライス型及びデリバリープラットフォーム型があります(ここからアプリHPの「飲食店・顧客・配達員をつなぐ宅配システム(フードデリバリー)」参照)。
(3) テンニミッツTV「宅配便ドライバーに聞く「嫌われる客」の特徴」が載っています。
4(1) 国土交通省は高速道路のETC専用化を推進している旨を発表しており,遅くとも令和12年までには一般レーンを廃止する予定となっています(お金ステーションHP「ETCカードおすすめランキング【最新比較】年会費無料で高速道路やガソリン代がお得になる」,及び国土交通省HPの「ETC専用化等による料金所のキャッシュレス化・タッチレス化について ~都市部は5年、地方部は10年程度での概成に向けたロードマップの策定~」(令和2年12月17日付)参照)。
(2) 近畿運輸局HPに「運行管理者の仕事(タクシー編)」が載っています。
5 東京地裁令和4年11月30日判決(判例タイムズ1505号181頁以下)は,デイサービス施設の利用者が当該施設の停車中の送迎車から降車しようとして地面に転落して頭部を打ち付けた事故が,当該送迎車に係る自動車保険契約の自動車保険約款にいう「車の所有,使用または管理に起因して生じた」事故とされた事例です。
6(1) スマートドライブHP「行動監視だけではない!社用車をGPSで管理することの価値」が載っています。
(2) 困ったら読め!ブログ「宅配便の受け取りを拒否するやり方!!」が載っています。
7 貨物自動車運送事業法63条の2(荷主の責務)は「荷主は、貨物自動車運送事業者がこの法律又はこの法律に基づく命令を遵守して事業を遂行することができるよう、必要な配慮をしなければならない。」と定めています。
8 以下の記事も参照してください。
・ 私道に関するメモ書き
・ 労災保険の特別加入
・ 労災保険の給付内容
・ 労災保険に関する書類の開示請求方法

国葬儀

目次
第1 総論
第2 安倍元首相の国葬儀及び叙位叙勲
1 故安倍晋三国葬儀当日における弔意表明
2 安倍元首相の叙位叙勲
3 故安倍晋三国葬儀の費用
4 その他
* 詳細につき,「故安倍晋三国葬儀」を参照してください。
第3 吉田元首相の国葬儀及び叙位叙勲
1 故吉田茂国葬儀当日における弔意表明
2 吉田元首相の叙位叙勲
3 故吉田茂国葬儀の費用
4 その他
第4 佐藤栄作元首相の国民葬,及びセキュリティポリスの設置
1 総論
2 故佐藤栄作国民葬儀当日における弔意表明
3 三木首相殴打事件
4 セキュリティポリスの設置
第5 戦前の国葬
1 国葬儀と国葬の違い
2 国葬令
3 昭和元年以降の国葬令に基づく国葬の実施例
4 戦前の国葬に関する国会答弁等
5 昭和22年12月31日に国葬令が失効したこと
第6 大喪の礼
1 総論
2 大喪の礼と政教分離
3 大喪の礼における弔意表明
第7 皇太后の葬儀
1 貞明皇后の葬儀
2 香淳皇后の葬儀
第8 内閣・自由民主党合同葬
1 過去の実施例
2 「故中曽根康弘」内閣・自由民主党合同葬儀
第9 戦後,内閣が関与して行われた元内閣総理大臣の葬儀に要した費用
第10 関連記事その他

第1 総論
1 国葬儀とは,国の儀式として全額国費負担で行われる葬儀をいい,その点では戦前の国葬と同じであるものの,一般の国民が喪に服する必要はない点で戦前の国葬と大きく異なります。
2(1) 昭和42年10月20日に病死した吉田茂元首相の場合,同月31日に日本武道館で国葬儀が実施されました。
(2) 令和4年7月8日に暗殺された安倍晋三元首相の場合,同年9月27日に日本武道館で国葬儀が実施される予定です。


第2 安倍元首相の国葬儀及び叙位叙勲
1 故安倍晋三国葬儀当日における弔意表明
(1) 参議院議員浜田聡君提出国葬、国葬儀、合同葬儀の違い等に関する質問に対する答弁書(令和4年8月15日付)には以下の記載があります。
① 故安倍晋三国葬儀の当日における弔意表明の在り方については、現在検討しているところであり、現時点でお尋ねについて明確にお答えすることは困難であるが、例えば、お尋ねの「半日休むようにというようなこと」及び「歌舞音曲を慎んだらどうですかということ」について求めることは現時点では考えていない。
② 故安倍晋三国葬儀は、北の丸公園内に所在する日本武道館において行うこととしているところ、故安倍晋三国葬儀の具体的内容は現在検討中であり、現時点でお尋ねについてお答えすることは困難である。
(2) 故安倍晋三国葬儀の当日における弔意表明について(令和4年8月31日付の故安倍晋三国葬儀葬儀委員長決定)は以下のとおりです。
故安倍晋三国葬儀の当日には、哀悼の意を表するため、各府省においては、弔旗を掲揚するとともに、葬儀中の一定時刻に黙とうすることとする。

2 安倍元首相の叙位叙勲
(1) 安倍元首相は,令和4年7月11日付の閣議決定により,従一位に叙され,かつ,大勲位菊花章頸飾及び菊花大綬章を授与されました(首相官邸HPの「元内閣総理大臣安倍晋三氏を従一位に叙すること並びに大勲位菊花章頸飾及び菊花大綬章の授与について」,及び「令和4年7月11日付の閣議書(令和4年7月8日付で,衆議院議員安倍晋三に対し,従一位に叙するとともに,大勲位菊花大綬章並びに頚飾を授ける。)」参照)。
(2) 日本国憲法施行後の首相経験者として従一位に叙せられ,かつ,大勲位菊花章頸飾を授けられたのは,吉田茂,佐藤栄作,中曽根康弘及び安倍晋三の4人です。


3 故安倍晋三国葬儀の費用
(1) 令和4年8月26日午前の内閣官房長官記者会見には以下の記載があります。
故安倍晋三国葬義に必要な経費について
 次に、本日の閣議において、故安倍晋三国葬儀に必要な経費について、令和4年度一般会計予備費の使用を決定をしました。国葬儀については、その実施内容を検討しているところであります。今般の国葬儀においては、安倍元総理を追悼したいという気持ちをお持ちの方々のために、日本武道館とは別の場所に献花台を設け、一般献花を実施すること、海外から元首・首脳級の方を含む多数の要人の参列が見込まれることから、参列に当たって必要となる同時通訳等に万全を期す必要があること、会場となる日本武道館には複数の出入口があり、それぞれに警備員や金属探知機を配置するなど、昨今の状況を踏まえて、万全の警備体制を敷く必要があること、さらに参列者として最大で6,000人程度の規模が見込まれることから、その人数に応じたバスの手配やしおりの準備等が必要となること、こうしたことから、予備費の使用額は、令和2年に行われた中曽根元総理の内閣・自由民主党合同葬から約5,700万円増の約2億4,900万円となります。
(2)  令和4年9月6日午前の内閣官房長官記者会見には以下の記載があります。
故安倍晋三国葬儀について
 本日、故安倍晋三国葬儀に関し、お手元に配付のとおり、国葬儀の流れを葬儀委員長決定しました。また、国葬儀に際し、自衛隊による儀礼の実施について、葬儀委員長から防衛大臣に対する協力を依頼することとしました。さらに、国葬儀後、迎賓館において、葬儀委員長である岸田総理ほかが、海外から来られた要人から個別に弔意を受け、挨拶する機会を設ける予定であります。そして、国葬儀に要する経費の見込みについて申し上げます。これまで予備費で賄うこととした式典関係の経費2.49億円以外に、警備費や海外要人の接遇に要する経費などが必要となる見込みであること、しかしながら、警護・接遇を要する要人の数等が不確定であるため、経費についても確たることを申し上げるのは困難であること、を申し上げてまいりました。また、これまでも国が関与した葬儀に関して、既定経費で支出する警備・接遇に要する経費を切り出してお示しをしたことはありません。一方で、先日、総理からもお話があったように、丁寧な説明を尽くすという観点に加え、これまでの各国からの連絡状況を踏まえ、海外から190以上の代表団が参列し、その中で特別の接遇を要する首脳級等の代表団の数が50程度と見込まれることから、これを仮定するとともに、そうした要人が多数集まる行事に対する警備体制を一定の規模で仮定すること等により、あえて現時点での経費の見込みをお示しをしたいと思います。以下申し上げる警備・接遇等の経費については、過去の合同葬と同様に、既に成立をしている今年度予算の中で対応するものであります。まず、警備に関するものでございますが、具体的には、まず警備に要する経費としては8億円程度と見込まれます。その内訳は、道府県警察からの派遣のための旅費などの部隊活動や超過勤務手当に関わる経費が5億円程度、車両等の装備資機材や待機所の借上げの装備費が3億円程度であります。次に、海外要人の接遇に要する経費については6億円程度と見込まれます。その内訳は、海外要人の本邦滞在中の車両の手配や空港での受入体制の構築等の庁費が5億円程度。接遇要員として一時帰国させる在外公館職員の出張のための旅費が1億円程度であります。このほか、自衛隊の儀じょう隊等の車両借上費等が0.1億円程度と見込まれております。これも既定予算で対応することとしております。私(官房長官)からは以上です。


4 その他
(1) 安倍元首相の家族葬は,令和4年7月12日午後,東京都港区芝公園にある増上寺で行われました(産経新聞HPの「安倍元首相の功績しのぶ 増上寺で葬儀、世界から弔意1700件」参照)。
(2) 外務省HPの「故安倍晋三国葬儀への各国・地域・国際機関等からの参列」(令和4年9月22日付)には「参列の内訳は、海外から代表が参列する国・地域・国際機関等が117、海外からは参列しないが駐日大使・駐日国際機関代表等が代表として参列する国・地域・国際機関等が101です。」と書いてあります。
(3) Wikipediaに「安倍晋三銃撃事件」及び「安倍晋三の国葬」が載っています。

第3 吉田元首相の国葬儀
1 故吉田茂国葬儀当日における弔意表明
(1) 昭和42年10月28日(土)の官報には,「故吉田茂国葬儀当日における弔意表明について」として以下の記事が載っています。 
 故吉田茂国葬儀当日(10月31日)哀悼の意を表するため,次のとおり措置するものとする。
1. 各省庁においては,
(1) 弔旗を掲揚すること。
(2) 葬儀中の一定時刻に黙とうすること。
(3) 各省庁の長は当日午後は公務に支障のない範囲内において職員が勤務しないことを認めることができること。
(4) 公の行事,儀式その他歌舞音曲を伴う行事はさしひかえること。
2.以上の各項については,各公署,学校,会社その他一般においても同様の方法により哀悼の意を表するよう協力方を要望すること。
(2) 故安倍晋三国葬儀の場合,「各省庁の長は、公務に支障のない範囲内において職員が勤務しないことを認めること」等は考えられていません(衆議院議員中谷一馬君提出「故安倍晋三国葬儀」における職員が勤務しないこと等に関する質問に対する答弁書(令和4年8月15日付)参照)。

2 故吉田茂国葬儀の費用
・ 相沢英之大蔵省主計局次長は,昭和43年5月9日の衆議院決算委員会において,故吉田茂国葬儀の費用として以下の答弁をしています。
 総額千八百九万六千円のうち、国葬儀準備等に必要な経費が四百五十九万八千円。その内訳を申しますと、これは送迎用のバス等の借り上げ費が百九十四万円、案内状等の印刷及び送料等通信費が百三十八万五千円、準備会議費、救護班謝礼その他が百二十七万三千円。次に武道館の借り上げに必要な経費が三百九十四万二千円。それから第三番目に、国葬儀場飾りつけ等に必要な経費として九百五十五万六千円でございますが、そのうちおもなものは、生花の飾り二百七十万円、献花百五十万円等でございます。


3 吉田元首相の叙位叙勲
(1) 吉田元首相は,駐イタリア大使をしていた昭和6年1月21日に勲二等瑞宝章を授けられ,同年10月31日に勲二等旭日重光章を授けられ,生存者叙勲の再開に伴い,昭和39年4月29日に大勲位菊花大綬章を授けられました。
(2) 吉田元首相は,昭和42年10月20日付で従一位に叙せられ,かつ,大勲位菊花章頸飾を追贈されました。


4 その他
(1) 吉田元首相の家族葬は,昭和42年10月23日に東京カテドラルでカトリック葬として行われました。
(2) 清水汪内閣官房内閣審議室長兼内閣総理大臣官房審議室長は,昭和54年4月13日の衆議院内閣委員会において以下の答弁をしています(改行を追加しています。)。
 国葬でございますが、旧国葬令失効後はこれにかわる法律はございません。
 しかしながら、やはり国の立場におきましてそれに相当すべき場合に葬儀を営むという考え方はとれるのではないかという認識を持ったわけでございまして、具体的な例といたしましては、故吉田茂氏の葬儀の場合に、昭和四十二年十月二十三日の閣議決定によりまして国葬を行っております。
(3)ア ダイヤモンド・オンラインの「吉田茂氏の国葬は「大不評」だったのに…安倍氏国葬をゴリ押しする政府の過ち」には「テレビの大騒ぎも今と同じだ。国葬当日は「宰相吉田茂」(NHK)、「人間吉田茂」(フジテレビ)など朝から晩まで全チャンネルで追悼番組を放送。神奈川県大磯の自宅から武道館へと遺骨が運ばれるまでは、民放全局共同で中継をした。」と書いてあります。
イ データベース「世界と日本」(代表:田中明彦)「故吉田茂国葬儀における佐藤内閣総理大臣の追悼の辞」(昭和42年10月31日付)が載っています。
(4) 令和4年7月現在,日比谷花壇のお別れナビ「会社概要」には,「日比谷花壇のお葬式」として以下の記載があります。
1967年日本で初めての生花祭壇と呼ばれる吉田茂首相の国葬を手掛けるところからはじまり、2004年には葬儀全般を執り行う「日比谷花壇のお葬式」がスタート。
相談実績は累計20,000件以上、年間約800件の葬儀を施行しています。
(5) 日経新聞HPに「吉田茂氏と賀川豊彦氏、ノーベル平和賞の最終候補だった ノーベル研究所の開示資料で明らかに」が載っています。
(6)ア 衆議院議員山岸一生君提出国葬儀に関する質問に対する答弁書(令和4年8月15日付)には以下の記載があります。
 昭和四十二年十二月一日の衆議院議院運営委員会における安宅常彦委員の質問において、故吉田茂国葬儀に関し、「この間吉田さんの葬式がございましたが、そのときに院のほうで全然知らない間に、佐藤総理から衆議院、参議院の副議長が吉田さんの葬式の実行副委員長というのに任命されておった。それではけしからぬではないかということで、これは表面に出ないままに私どもはそれは断わるべきだ、そういうことで断わったいきさつがあるわけです。」との発言があったことは承知していたが、お尋ねの「当初は衆参両院の副議長を葬儀副委員長に委嘱する案であったが、のちに断念したとされる。このように両院の参画を模索した経緯」については承知していない。
イ 参議院議員浜田聡君提出国葬、国葬儀、合同葬儀の違い等に関する質問に対する答弁書(令和4年8月15日付)には「お尋ねの「宮内庁法規定儀式(山中注:宮内庁法2条8号に規定する儀式のこと。)及び憲法規定儀式(憲法7条10号に規定する儀式のこと。)を除いた国の儀式」の例は、昭和四十二年十月三十一日に行われた故吉田茂国葬儀のみである。」と書いてあります。


第4 佐藤栄作元首相の国民葬,及びセキュリティポリスの設置
1 総論
(1) 昭和50年5月19日の夕方,築地の料亭「新喜楽」において脳出血で倒れて昏睡状態となり,5日後に病院に搬送され,同年6月3日に死亡した佐藤栄作元首相の場合,同月16日に日本武道館で国民葬が行われました。
(2) 国民葬の前例は大正11年1月17日に日比谷公園で実施された大隈重信(大正11年1月10日死亡)の国民葬だけでしたところ,Wikipediaの「大隈重信」には「前宮内大臣の波多野敬直を委員長とした葬儀委員会が、一定の儀式が定められており、一般人の参列ができない国葬ではなく、面識のないものでも参加できる「国民葬」の演出とその成功をねらった準備活動を進めた。」と書いてあります。
(3) よりそうお葬式HPに「国葬とは?国民葬との違いや流れについて」が載っています。

2 故佐藤栄作国民葬儀当日における弔意表明
(1) 昭和50年6月14日(土)の官報には,「故佐藤榮作国民葬儀当日における弔意表明について」として以下の記事が載っています。
 故佐藤榮作国民葬儀当日(6月16日)哀悼の意を表するため、次のとおり措置するものとする。
1.各省庁においては、
(1) 弔旗を掲揚すること。
(2) 葬儀中の一定時刻に黙とうすること。
2.各公署等においても前項と同様の方法により哀悼の意を表するよう協力方を要望すること。
(2) 故吉田茂国葬儀当日における弔意表明の場合と異なり,以下の事項はありませんでした。
・ 各省庁の長は当日午後は公務に支障のない範囲内において職員が勤務しないことを認めることができること。
・ 公の行事,儀式その他歌舞音曲を伴う行事はさしひかえること。

3 三木首相殴打事件
・ 昭和50年6月16日の故佐藤榮作国民葬で発生した三木首相殴打事件について,浅沼清太郎警察庁長官は,昭和50年6月18日の衆議院地方行政委員会において以下の答弁をしています(ナンバリングを追加しています。)。
① 故佐藤榮作元内閣総理大臣の国民葬儀という厳粛な行事に際して、一国の総理が暴漢に襲われるという事件を防止できなかったということは、総理はもとより、一般国民に対してもまことに申しわけない、かように考えている次第でございます。
 どうしてそういうような事件が起きたかということにつきましては現在検討中ではございますけれども、まず事案の概要とその経過を説明いたしまして、いままで把握しているところを御説明申し上げたいと思います。
② まず、事案の概要でございますけれども、十六日の一時五十三分ごろに、三木総理が佐藤元総理の御遺骨到着を出迎えるために、日本武道館内から正面玄関の歩道近くに歩み寄ったところ、被疑者の筆保(山中注:筆保泰禎(ふでやすひろよし)のこと。)が報道陣の後方から「核防条約批准反対」(山中注;「核防条約」というのは「核拡散防止条約」のことです。)と叫びながら飛び込んできたわけであります。
 総理の背後から正面に回りまして、右手で総理の顔面を二回殴打しまして、総理はその場に倒れたという状況でございます。
 筆保は、三木総理は屈辱的不平等の核防条約批准を強行せんとする国家、民族の敵だ、即時自殺することを勧告するというような自殺勧告書と、それに刃渡り十四・五センチの登山ナイフをセロテープで取りつけたものを所持しておりまして、警戒陣は暴行直後、現場で公務執行妨害と銃砲刀剣類所持等取締法違反で現行犯逮捕した次第でございます。

③ 取り調べました結果、自供によりますと、筆保は当日六時ごろに文京区大塚の愛国党本部を出まして、荻窪――池袋の間を地下鉄で往復しながら時間待ちをしておった。
 そして、東京駅の大丸デパート便所に入りまして、黒ダブル上下、黒ネクタイに着がえ、喪服姿になりまして、タクシーで午後一時ごろ武道館に到着したわけであります。到着しまして正面玄関わきの報道陣の中に紛れ込んでおりまして、同玄関前に赴く総理をそのときに発見して、核防条約反対と叫んで飛び出してきた。
 そして勧告状を渡そうとした際に、とっさに暴行を加えたというような供述をしているわけであります。
④ 犯行の動機、目的につきましては、先ほど申し上げましたように、核防条約が批准されたならば日本の将来は絶望的だというように考えて、総理に批准反対を訴え、聞き届けられなければ自殺を勧告するつもりであったというように述べておるわけであります。
 また、同人は単独で計画を実行したと述べておりますけれども、警視庁といたしましては、党本部と筆保の居室二カ所につきまして捜索を実施するなど、引き続き事件の究明を進めているという状況であります。
⑤ 特に、どうしてそういうことになったかという、問題になります警護と右翼の視察体制でありますけれども、国民葬に伴う警護、警備のために、当日警視庁は武道館の直近に第一方面警備本部を設置しまして、約千四百名の警察官を配置して警戒に当たっていたわけであります。
 事件当時、総理の身辺及び正面玄関前の御遺骨到着場所周辺には、身辺、行き先地警護員五人を含めまして、制私服二十三人が配置について警護、警備に従事しておったという状況になっております。
⑥ また、右翼の視察につきましては、右翼が当面最も強い関心を持っております核防条約が今国会で批准される可能性が強まったために、大日本愛国党を含む右翼虞犯者の視察を警視庁としては強化していたわけであります。
 筆保は、朝の八時、愛国党事務所並びに同党が実施した核防条約批准反対の街宣活動視察の過程で所在不明であることがわかったわけでありまして、そこで直ちに警視庁の公安三課は、右翼担当課でございますけれども、担当者を増強いたすなど所要の措置をとったわけでありますけれども、先ほど説明いたしましたように、他の弔問者と同様のかっこうで報道陣の中に紛れ込んでおったということや、玄関前には相当数の一般弔問者もいたというようなことで、右翼視察員も、警護、警戒に当たっておった者も事前に、同人を発見することができなかったというのが、このまことに申しわけない事件になったわけでございます。
⑦ 以上のような状況でございます。
(2)ア Wikipediaの大日本愛国党には,「浅沼稲次郎暗殺事件を起こした山口二矢、嶋中事件で知られる小森一孝はいずれも大日本愛国党に所属していたが、それぞれ事件直前に脱党している。」とか,「三木には警視庁の警察官が護衛として配置されていたが、やや離れた場所にいた上に三木の進行方向ばかりに気を取られ、犯行への対応が遅れた。」と書いてあります。
イ 浅沼清太郎警察庁長官は,昭和53年3月26日発生の成田空港管制塔占拠事件の責任を取って,同年6月1日に辞職しました。

4 セキュリティポリスの設置
(1) 三木首相殴打事件をきっかけとして,昭和50年9月13日,警視庁警備部警護課に,要人警護任務に専従するセキュリティポリス(略称はSPです。)が設置されました。
(2) 渡辺善門 警察庁警備局公安第二課長は,昭和53年4月7日の衆議院法務委員会において以下の答弁をしています。
 現在、要人警護につきましては先生のおっしゃいましたとおりで、内閣総理大臣、衆参両院の議長、最高裁判所長官、政党幹部等につきまして行っておるわけでございますけれども、この警護員の教養につきまして、警察庁といたしましては、年一回でございますけれども、中核たる警護専従員を中心に専科教養を実施しております。そのほかに都道府県警察単位に随時教養を実施する、とりわけ身辺警護の衝に当たる警護専従員につきましては、できるだけ回数を多く警護教養をやるように指導をしておるところでございます。



第5 戦前の国葬
1 国葬儀と国葬の違い
(1)ア 戦前の国葬の場合,国葬令に基づいて実施され,国民全体が喪に服することになっていました。
イ 戦後の国葬儀の場合,閣議決定に基づいて実施され,一般国民は哀悼の意を表するように協力を要望されるに過ぎません。

2 国葬令
・ 昭和22年12月31日限りで失効した国葬令(大正15年10月21日勅令第324号)は以下のとおりであって(国葬令2条ただし書の「殤」(しょう)は「若死に」という意味です。),国葬令に基づく国葬の場合,国葬令4条後段に基づき,国民全体が喪に服することになっていました。
第一條 大喪儀ハ國葬トス
第二條 皇太子皇太子妃皇太孫皇太孫妃及攝政タル親王内親王王女王ノ喪儀ハ國葬トス但シ皇太子皇太孫七歳未満ノ殤ナルトキハ此ノ限ニ在ラス
第三條 國家ニ偉功アル者薨去又ハ死亡シタルトキハ特旨ニ依リ國葬ヲ賜フコトアルヘシ
前項ノ特旨ハ勅書ヲ以テシ内閣總理大臣之ヲ公告ス
第四條 皇族ニ非サル者國葬ノ場合ニ於テハ喪儀ヲ行フ当日廢朝シ國民喪ヲ服ス
第五條 皇族ニ非サル者國葬ノ場合ニ於テハ喪儀ノ式ハ内閣總理大臣勅裁ヲ経テ之ヲ定ム

3 昭和元年以降の国葬令に基づく国葬の実施例
(1) 昭和元年以降の国葬令に基づく国葬の実施例は以下のとおりです。
① 大正15年12月25日崩御の大正天皇(昭和2年2月7日の大喪儀)
② 昭和 9年 5月30日死亡の東郷平八郎元帥海軍大将(昭和9年6月5日実施)
③ 昭和15年11月24日死亡の西園寺公望元首相(昭和15年12月5日実施)
④ 昭和18年 4月18日戦死の山本五十六元帥海軍大将(昭和18年6月5日実施)
⑤ 昭和20年 5月20日死亡の閑院宮載仁親王(かんいんのみやことひとしんのう)・元帥陸軍大将(昭和20年6月18日実施)
(2) 西園寺公望及び山本五十六の国葬については,以下のとおりユーチューブに鮮明な動画が載っています。

4 戦前の国葬に関する国会答弁等
(1) 田中龍夫総理府総務長官は,昭和43年5月9日の衆議院決算委員会において以下の答弁をしています。
 ただいま御指摘のように、今後これ(山中注:国葬)に対する何らかの根拠法的なものはつくらないかという御趣旨でありますが、これ(山中注:国葬儀)は行政措置といたしまして、従来ありましたような国民全体が喪に服するといったようなものはむしろつくるべきではないので、国民全体が納得するような姿において、ほんとうに国家に対して偉勲を立てた方々に対する国民全体の盛り上がるその気持ちをくみまして、そのときに行政措置として国葬儀を行なうということが私は適当ではないかと存じます。
(2) 床次徳二(とこなみとくじ)総理府総務長官は,昭和44年7月1日の参議院内閣委員会において以下の答弁をしています。
ただいま御引用になりました吉田元総理の葬儀につきましても、国葬儀として取り扱うということになって、儀という字が入っておる。国葬そのものではないところに、その当時いろいろ検討いたしました結果、ああいう取り扱いになったと承っておるのでありまして、御意見もありますが、しかしこの点は十分検討いたしたいと思います。
(3) 国の儀式として行う総理大臣経験者の国葬儀を閣議決定で行うことについて(令和4年7月14日付の内閣官房及び内閣府の文書)には以下の記載があります。
1 国葬令に基づく葬儀(戦前)
(1) 一般に国葬とは、国が国家の儀式として、国費で行う葬儀のことをいうこととされている(小学館日本大百科全書(村上重良) ) 。
大正15年に制定された国葬令(大正15年勅令第324号)においては、天皇、太皇太后、皇太后、皇后の大喪の儀、皇太子、同妃、皇太孫、同妃、摂政たる親王、内親王、王、女王の葬儀のほか、国家に偉功ある者(皇族含む。)が莞去又は死去した場合における特旨による国葬が定められていた(特旨は勅害をもってし、内閣総理大臣が公告) 。
※ 岩倉具視、島津久光、伊藤博文、大山巌、山県有朋、松方正義、東郷平八郎、西園寺公望、山本五十六など、皇族8名・一般人12名について、特旨により国葬を実施。
(2) 国葬令第4条において、葬儀を行う当日は、「国民喪ヲ服ス」こととされており、これに基づき、官庁・学校は休みとなり、歌舞音曲は停止又は遠慮、全国民は喪に服し、国葬を厳粛に送ることとされていた。
(3) 国葬令は、法律を以て規定すべき事項を規定するものであったことから、日本国憲法施行の際現に効力を有する命令の規定の効力等に関する法律(昭和22年法律第72号)第1条の規定によりご昭和22年末に失効した。
(4) 参議院議員田島麻衣子君提出故安倍晋三元総理の国葬儀に関する質問に対する答弁書(令和4年8月15日付)には以下の記載があります。
 過去、国葬として実施されたものについては、様々なものがあると承知しており、お尋ねの「国葬の定義」について一概にお答えすることは困難であるが、例えば、国葬令(大正十五年勅令第三百二十四号)の規定により国葬として行われた葬儀がある。同令で規定されていた大喪儀とは、皇室喪儀令(大正十五年皇室令第十一号)に規定され、国葬令の規定により国葬として行われた葬儀である。国葬儀とは、国の儀式として行う葬儀である。

 昭和22年12月31日に国葬令が失効したこと
(1) 瓜生順良宮内庁次長は,昭和38年3月29日の衆議院内閣委員会において以下の答弁をしています(改行を追加しています。)。
 皇室典範の大喪の礼、これはどういうふうなやり方でなされるかということはきまっていないわけです。
 国葬令の大喪の礼と同じかといいますと、国葬令は現在は有効ではないと思うのであります。

 従って、その国葬令にありますやり方も参照して、もしそういう必要ができた場合には、十分新しく考えて、適当な方法で行なわれるということかと思います。
(2) 高辻正巳内閣法制次長は,昭和38年3月29日の衆議院内閣委員会において以下の答弁をしています(ナンバリング及び改行を追加しています。)。
① ただいま御指摘の勅令三百二十四号、いわゆる国葬令でございますが、御承知の通りに、国葬令自身を廃止した法令というものはございません。
 ございませんが、実はもうすでに御承知だと思いますが、昭和二十二年法律第七十二号という法律がございまして、「日本国憲法施行の際現に効力を有する命令の規定で、法律を以って規定すべき事項を規定するものは、昭和二十二年十二月三十一日まで、法律と同一の効力を有するものとする。」という立法がございます。
 その立法によりまして、法律事項を規定しておるものは現在効力はない。二十二年の十二月末日まではありましたけれども、その後はないということに相なっております。
② そこで、この国葬令が事実的に廃止されておりませんので、どうかという問題はございますが、この国葬令をながめて見ますと、「勅裁ヲ經テ之ヲ定ム」とか「特旨ニ依リ国葬ヲ賜フコトアルヘシ」とかいうような規定があります関係からいたしまして、ただいま瓜生次長が御指摘になりましたように、現在は効力がないというのが相当であろうと思います。

第6 大喪の礼
1 総論

(1)ア 「大喪の礼」は天皇又は上皇の国葬であり(皇室典範25条・天皇の退位等に関する皇室典範特例法3条3項),皇室の私的な儀式としての「大喪儀」とあわせて,「御大葬」といいます。
イ 明治憲法下では,皇室喪儀令1条ないし11条に基づく大喪儀(天皇,皇后,皇太后及び太皇太后が死亡した場合に行われる葬儀でした。)が国葬とされていました(国葬令1条)。
(2)ア 国の儀式として昭和天皇の大喪の礼を平成元年2月24日に新宿御苑で行うことについては,同年1月8日の官報特別号外で告示されました。
イ 昭和天皇の大喪の礼の場合,昭和天皇の大喪の礼の行われる日を休日とする法律(平成元年2月17日法律第4号)に基づき,大喪の礼が実施された平成元年2月24日は休日となりました。
2 大喪の礼と政教分離
(1) 小渕恵三内閣官房長官は,平成元年2月14日の参議院内閣委員会において以下の答弁をしています(ナンバリングを追加しています。)。
① 大喪の礼は、国の儀式として憲法の趣旨に沿い皇室の伝統等を尊重して行われ、葬場殿の儀は、皇室の行事として原則として皇室の伝統的方式に従い旧制を参酌して行われるので、両儀は法的に明確に区分されるわけでございます。
 しかし、いずれにいたしましても、両儀が一連の流れの中で厳粛のうちにスムーズに執行されることが望ましいと考えておりますので、政府といたしましては、この両儀が一連のものとして流れる姿の中で行いたい、このように考えておるところでございます。
② 国民の間にいろんな御意見のあることも政府としては承知をしなければならない立場でございますので、種々検討いたしました結果、大喪の礼の御式は国の儀式として行われ、葬場殿の儀は皇室の行事として行われるもので、両儀は法的に明確に区別されるのみならず、実際上も大喪の礼御式においては開式を告げること、祭官は退席すること、鳥居は撤去すること、大真榊は撤去すること等とされており、両儀ははっきり区別をされた形で行われるということで大喪の礼委員会で決定いたした次第でございます。
(2) 1期の味村治内閣法制局長官は,平成元年2月14日の参議院内閣委員会において以下の答弁をしています(ナンバリング及び改行を追加しています。)。
① 国事行為として行われます大喪の礼は、ただいま官房長官が申されましたとおり、皇室行事であります葬場殿の儀とははっきり区別をされているわけでございます。
② 国事行為たる大喪の礼は、祭官は退席し、鳥居を撤去し、大真榊は撤去されておりまして宗教色はないわけでございまして、国事行為たる大喪の礼が宗教儀式に該当ししたがって憲法二十条第三項によって国またはその機関が行うことを禁止されている宗教的活動に該当するという疑いは全くございません。まずそのことを申し上げておきます。

③ その前に葬場殿の儀が行われるわけでございまして、これは皇室の行事として行われるわけでございます。これにつきましてはいろいろ宗教的な色彩があるということは否定ができないわけでございます。
 しかしながら、そこに総理が総理たる資格で御出席になりましても、それは先ほど飯田委員との論議の中で申し上げたのと似たようなことになるわけでございますが、日本国の象徴であり日本国民統合の象徴であられます亡き昭和天皇に対する哀悼の意を表し、また、御遺族と申し上げるのは失礼かと思うんですが、御遺族であられます現天皇に対してお悔やみの意をあらわす、こういう意味でそういういろんな儀礼を尽くすというような意味で出席されるわけでございまして、特定の宗教を助長するとか援助するとかそういうようなことで出席されるわけでないということは、これは明らかなわけでございますから、したがって、内閣総理大臣が総理大臣としての資格で皇室行事たる葬場殿の儀に御出席になってもそれは憲法二十条三項の禁止する宗教的活動には該当しない、このように理解をしているわけでございます。
(3) 法の番人として生きる 大森政輔 元内閣法制局長官回顧録157頁には以下の記載があります。
 片や葬場殿の儀(山中注:「そうじょうでんのぎ」)のほうには鳥居が立って、真榊(山中注:「まさかき」)が立っている。これは宗教施設そのものではないかということで、当時の法制局長官が大喪の礼の手続に入ってからは、葬場殿の前にある鳥居と真榊を撤去するよう主張しました。それでずいぶん官邸のほうと対立しまして、感情的なしこりが残ったようです。当時は味村長官ですが、味村さんもさすがに頑張って、「鳥居を立てて、真榊を立てると、その中は神域になる。だから宗教施設そのものだ。だからそれを含めた大喪の礼をやると宗教儀式そのものだ」と言ったのです。それは一理あるので、渋々官房副長官も撤去することに応じて、政教分離については問題がないような形で行われました。
3 大喪の礼における弔意表明
(1) 結城章夫文部科学省大臣官房長は,平成15年7月16日の衆議院内閣委員会において以下の答弁をしています。
 昭和天皇の大喪の礼当日の弔意奉表につきましては、平成元年二月十五日付の文部事務次官通知が出されております。これは、それに先立ちます二月十四日の閣議決定におきまして、学校などに対して、国と同様の方法により哀悼の意を表するよう協力方を要望することとされたことを踏まえまして、文部省管下の機関あるいは各都道府県の教育委員会等に通知を発出したものでございます。
(2) 大阪教育法研究会HPに「天皇陛下崩御に際しての弔意奉表について」(昭和64年1月7日付の文部事務次官通知)が載っています。


第7 皇太后の葬儀

1 貞明皇后の葬儀
(1) 昭和26年5月17日に崩御した貞明皇后(昭和天皇の母親であり,崩御当時は皇太后)の場合,GHQ占領下であったことから,国葬の有無を明確にしないまま,同年6月22日に大喪儀(国葬令1条参照)が行われました。
(2) 林修三法制局長官は,昭和37年2月26日の衆議院予算委員会第一分科会において以下の答弁をしています。
 現状のことで申しますれば、結局、国葬令というものは形式的には失効している。先ほどちょっとお答え申しました通りに、実は貞明皇后の御喪儀については、国葬令の考え方を踏襲して、同時にいわゆる行政府限りにおいて行ない得る範囲のこと、つまり予算措置等の裏づけがあればその範囲において、国葬令の内容と大体同じ考え方で貞明皇后の御喪儀については取り扱ったわけでございます。
2 香淳皇后の葬儀
・ 平成12年6月16日に崩御した香淳皇后(昭和天皇の皇后であり,崩御当時は皇太后)の場合,同年7月25日に斂葬の儀(れんそうのぎ)(大喪儀に相当するもの)が行われました。

第8 内閣・自由民主党合同葬
1 過去の実施例
(1) 内閣・自由民主党合同葬の実施例は以下のとおりです(対象者は元首相だけです。)。
・ 昭和55年 6月12日死亡の大平正芳(昭和55年7月9日実施)
・ 昭和62年 8月 7日死亡の岸信介(昭和62年9月17日実施)
・ 昭和63年11月14日死亡の三木武夫(昭和63年12月5日実施)
・ 平成 7年 7月 5日死亡の福田赳夫(平成7年9月6日実施)
・ 平成12年 5月14日死亡の小渕恵三(平成12年6月8日実施)
・ 平成16年 7月19日死亡の鈴木善幸(平成16年8月26日実施)
・ 平成18年 7月 1日死亡の橋本龍太郎(平成18年8月8日実施)
・ 平成19年 6月28日死亡の宮澤喜一(平成19年8月28日実施)
・ 令和 元年11月29日死亡の中曽根康弘(令和2年10月17日実施)
(2) 以下の元首相については内閣・自由民主党合同葬は実施されませんでした。
・ 平成 5年12月16日死亡の田中角栄
・ 平成10年 5月19日死亡の宇野宗佑
・ 平成12年 6月19日死亡の竹下登
・ 平成29年 8月28日死亡の羽田孜
・ 令和 4年 1月 9日死亡の海部俊樹
(3) 衆議院議員山岸一生君提出国葬儀に関する質問に対する答弁書(令和4年8月15日付)には「御指摘の「『故岸信介』内閣・自由民主党合同葬儀記録」において、御指摘のような記載(山中注:「昭和六十三年三月三十日内閣総理大臣官房発行「『故岸信介』内閣・自由民主党合同葬儀記録」によると、政府は、これに先立つ佐藤元首相の国民葬について、長期政権、沖縄返還などの実績、ノーベル平和賞受賞の三点を挙げて、岸・佐藤両氏の葬儀形式の違いを説明している」という記載)があることは承知していたが、元内閣総理大臣の葬儀の在り方については、これまでも、その時々の内閣において、様々な事情を総合的に勘案し、その都度ふさわしい形を判断してきた」と書いてあります。
2 「故中曽根康弘」内閣・自由民主党合同葬儀
(1) 最高位の勲章である大勲位菊花章頸飾を受賞した首相経験者(いずれも没後叙勲です。)は吉田茂,佐藤栄作,中曽根康弘及び安倍晋三でありますところ,佐藤栄作については昭和50年6月16日に国民葬が実施され,中曽根康弘については令和2年10月17日に内閣・自由民主党合同葬が実施されました。
(2) 「故中曽根康弘」内閣・自由民主党合同葬儀は当初,令和2年3月15日にグランドプリンスホテル新高輪国際館パミールで実施される予定でした(「故中曽根康弘」内閣・自由民主党合同葬儀の執行について(令和2年1月10日付の内閣総理大臣通知)参照)が,新型コロナウイルス感染症の感染拡大により同年10月17日に延期されました(「故中曽根康弘」内閣・自由民主党合同葬儀の執行の延期について(令和2年3月4日付の内閣総理大臣通知)参照)。
(3)ア グランドプリンスホテル新高輪国際館パミールで令和2年10月17日に実施された「故中曽根康弘」内閣・自由民主党合同葬儀への裁判所からの出席者は,最高裁判所長官,認証官(15人以内)及び事務総長,並びに元最高裁判所長官だけとなりました(「故中曽根康弘」内閣・自由民主党合同葬儀参列者推薦範囲の変更について(令和2年9月10日付の内閣府大臣官房人事課長の文書)参照)。
イ 裁判所の認証官は最高裁判所判事14人及び高裁長官8人の合計22人です。
(4)ア 「故中曽根康弘」内閣・自由民主党合同葬儀の当日における弔意表明について (令和2年10月2日付の閣議了解)の本文は以下のとおりです。
 「故中曽根康弘」内閣・自由民主党合同葬儀の当日 (10月17日)には、哀悼の意を表するため、次のとおり措置するものとする。
1 各府省においては、弔旗を掲揚するとともに、葬儀中の一定時刻(午後2時10分)に黙とうすること。
2 各府省は、前項と同様の方法により、哀悼の意を表するよう、各公署に対し協力方を要望すること。
イ 弔意表明のレベルとしては,故佐藤榮作国民葬儀当日におけるものと同じでした。
(5) FNNプライムオンラインの「次世代へ受け継がれる中曽根家と皇室の縁…宮内庁記者が見た中曽根康弘元首相の合同葬」(2020年10月21日付)には「今回、合同葬に参列された皇族は、秋篠宮ご夫妻、秋篠宮家の長女・眞子さま、次女・佳子さま、常陸宮さま、寬仁親王妃信子さま、高円宮妃久子さま、高円宮家の長女・承子さまの8方です。慣例により、天皇皇后両陛下や上皇ご夫妻は出席せず、お使いを差し向けられています。」と書いてあります。
(6)ア 首相官邸HPに「「故中曽根康弘」内閣・自由民主党合同葬儀」が載っています。
イ 「故中曽根康弘」内閣・自由民主党合同葬儀(令和2年10月17日実施)に関して最高裁判所が作成し,又は取得した文書を掲載しています。
(7) 国の儀式として行う総理大臣経験者の国葬儀を閣議決定で行うことについて(令和4年7月14日付の内閣官房及び内閣府の文書)には以下の記載があります。
2 戦後における内閣総理大臣経験者の葬儀
(1) 戦後の内閣総理大臣経験者の葬儀に関する内閣(国)の関与については、当該者の功績、大方の国民の心情や御遺族のお気持ち等々を総合的に勘案して、個々のケース毎に相応しい方法がとられている。
(2) 具体的には、内閣(国)が関与した葬儀の形式としては、
①国の儀式として行う国葬儀
②内閣の行う儀式として行う内閣葬
がある。
(3)その執行者について、過去の実施実績を見ると、国葬儀は国が単独の執行者となっているのに対し、内閣葬については、内閣に加えて、自由民主党、衆議院等と合同で行われている。費用負担については、自由民主党と合同で行われる場合(内閣葬)には、自由民主党と概ね折半している。
※ なお、御遺族が公費での葬儀を固く辞退され、葬儀の実施に内閣(国)が関与しなかったこともある(海部元総理)。
(8) 参議院議員浜田聡君提出国葬、国葬儀、合同葬儀の違い等に関する質問に対する答弁書(令和4年8月15日付)には以下の記載があります。
① 故中曽根康弘内閣・自由民主党合同葬儀は、内閣府設置法第四条第三項第三十三号に規定する内閣の行う儀式として行われた葬儀である。
② お尋ねの「前回合同葬儀において、秋篠宮皇嗣同妃両殿下は公的行為を行った」の意味するところが必ずしも明らかではないが、秋篠宮皇嗣同妃両殿下は、故中曽根康弘内閣・自由民主党合同葬儀に参列されたところであり、当該御参列は、故中曽根康弘内閣・自由民主党合同葬儀委員長である内閣総理大臣安倍晋三(当時)から参列の願い出を受け、公的な立場で行われたものであり、公的行為に該当するものと考えている。


第9 戦後,内閣が関与して行われた元内閣総理大臣の葬儀に要した費用
・ 参議院議員辻元清美君提出安倍晋三元総理の国葬儀等についての基準に関する質問に対する答弁書(令和4年8月15日付)には以下の記載があります。
 戦後、内閣が関与して行われた元内閣総理大臣の葬儀に要した費用について、①予算額に占める国費の割合及び②執行額をお示しすると、それぞれ次のとおりである。
 吉田茂元内閣総理大臣 ①十割 ②約千八百四万円
 佐藤榮作元内閣総理大臣 ①約五割 ②約千九百九十六万円
 大平正芳元内閣総理大臣 ①約五割 ②約三千六百四十三万円
 岸信介元内閣総理大臣 ①約五割 ②約四千五百十万円
 三木武夫元内閣総理大臣 ①十割 ②約一億千八百七十一万円
 福田赳夫元内閣総理大臣 ①約五割 ②約七千三百三十四万円
 小渕恵三元内閣総理大臣 ①約五割 ②約七千五百五十五万円
 鈴木善幸元内閣総理大臣 ①約五割 ②約五千四百四十九万円
 橋本龍太郎元内閣総理大臣 ①約五割 ②約七千七百三万円
 宮澤喜一元内閣総理大臣 ①約五割 ②約七千五百八十五万円
 中曽根康弘元内閣総理大臣 ①約五割 ②約八千二百九十五万円

第10 関連記事その他

1 日本武道館(にっぽんぶどうかん)は,昭和39年の東京オリンピックの柔道競技会場として建設され,同年10月3日に開館しました。
2 Trend Laboに「【国葬された日本人一覧】費用(国費・税金)はいくら?休みになる?」が載っています。
3 首相官邸HPに「天皇陛下の御退位及び皇太子殿下の御即位に伴う国の儀式等」が載っています。
4 令和4年10月3日に国会に提出された国葬儀法案(第210回国会衆法第2号)2条(国葬儀の実施)は以下のとおりです。
① 多年にわたり国政において重要な地位を占め、国家としての存立に関わる国難を乗り越えて我が国の主権と独立を守り、その発展の基礎を築く等の特別の功労のあった者が死亡したときに限り、内閣は、その者について、国葬儀を行うことができる。
② 内閣は、国葬儀を行おうとするときは、あらかじめ、その国葬儀に係る者が前項に規定する特別の功労のあった者に該当すると判断した理由及びその国葬儀に要する費用の見込みその他その行おうとする国葬儀の概要を明らかにして、国会の承認を得なければならない。
5 以下の記事も参照してください。
・ 故安倍晋三国葬儀
・ 平成の代替わりに伴う大嘗祭等に関する裁判例
・ 最高裁判所裁判官及び事務総局の各局課長は襲撃の対象となるおそれが高いこと等
・ 叙位の対象となった裁判官(平成31年1月以降の分)
・ 裁判官の死亡退官
・ 裁判所関係者及び弁護士に対する叙勲の相場
 勲章受章者名簿(裁判官,簡裁判事,一般職,弁護士及び調停委員)

内閣法制局に関するメモ書き

目次
1 内閣法制局の主な業務
2 質問主意書に対する答弁書に関する内閣法制局の審査
3 資料誤り等の再発防止
4 内閣法制局の執務資料
5 内閣法制局のその他の資料
6 臨時会の召集要求に関する国会答弁
7 改め文の必要性に関する国会答弁
8 関連記事その他

1 内閣法制局の主な業務
(1) 内閣法制局の主な業務は以下の二つであり,第一部は意見事務を担当し,第二部ないし第四部は審査事務を担当しています。
① 意見事務:法律問題に関し内閣並びに内閣総理大臣及び各省大臣に対し意見を述べるという事務(内閣法制局設置法3条3号)
② 審査事務:閣議に付される法律案、政令案及び条約案を審査するという事務(内閣法制局設置法3条1号)
(2) 裁判官の出向先となっている第二部の担当省庁は,内閣(内閣官房内閣人事局及び内閣府を除く。),内閣府(公正取引委員会及び金融庁を除く。),法務省,文部科学省,国土交通省及び防衛省です(内閣法制局設置法施行令2条)。
(3) 参議院議員小西洋之君提出内閣法制局長官と法の支配に関する質問に対する答弁書(平成26年11月28日付)には以下の記載があります。
    内閣法制局は、内閣法制局設置法(昭和二十七年法律第二百五十二号)に基づき、「閣議に附される法律案、政令案及び条約案を審査し、これに意見を附し、及び所要の修正を加えて、内閣に上申すること」、「法律問題に関し内閣並びに内閣総理大臣及び各省大臣に対し意見を述べること」等を所掌事務として内閣に置かれた機関であり、行政府による行政権の行使について、憲法を始めとする法令の解釈の一貫性や論理的整合性を保つとともに、法律による行政を確保する観点から、内閣等に対し意見を述べるなどしてきたものである。
(4) 「「法の番人」内閣法制局の矜持」(著者は阪田雅裕 元内閣法制局長官)44頁には以下の記載があります。
    一般の法律については所管する各省がその責任のもとに解釈・運用・適用する。けれども憲法は内閣が自ら一元的に解釈し、運用せざるをえない。内閣は言うまでもなく総理を代表とする合議体です。内閣という組織は同一のものとしてあるとしても、それを構成する人は始終変わるわけです。ですから当然、憲法解釈のようなことについて、内閣自体が常に専門的な知見をもっているわけではない。だから法的な視点で内閣を支える組織というものが必要であり、それが法制局であるということです。

2 質問主意書に対する答弁書に関する内閣法制局の審査
・ 法務省が取りまとめ省庁である場合の記載として,質問主意書関係事務の手引き~はじめて主意書を担当する方へ~7頁には以下の記載があります。
    内閣法制局審査の際に用意する資料は,答弁書案,主意書,参考資料,参照条文である(最低3セット)。
    なお,従来作成していた「配布案件理由」(「配布案件」として閣議に付す場合(詳細は後述(3)を参照)に作成していたもの。)については,内閣総務官室の指示により,第192回国会から作成不要となった(今後の運用変更により,再度作成必要となる可能性あり。)。
    答弁書は内閣法制局第一部の参事官補→参事官→部長(重要な案件等は長官まで)の順序で審査を受けることとなっているところ,省内決裁,本府内総配字審査との関係(流れ)はおおむね次のとおりである。
① 部局内決裁【法務省】
② 内閣法制局参事官補審査
③ 内閣法制局参事官審査
④ 本府内総配字審査
⑤ 秘書課付決裁【法務省】
⑥ 秘書課長決裁【法務省】
⑦ 官房長決裁【法務省】
⑧ 事務次官決裁【法務省】
⑨ 内閣法制局第一部長審査(重要な案件は長官まで)
⑩ 本府内総配字審査

⑪ 政務三役決裁【法務省】(副大臣,政務官については,⑨と同時並行の場合もある。)
    重要な案件については,内閣法制局審査前に政務三役の了解を得たり,官邸と協議する場合もあり,上記の流れが変則的になることもある。
    原則,閣議請議前日までに⑪まで了となるようにする。

3 資料誤り等の再発防止

(1) 内閣官房HPの「再発防止チーム」に,デジタル改革関連法案における資料誤り等の当面の再発防止策 (令和3年3月29日付)が載っています。
(2) 衆議院議員丸山穂高君提出法改正時のミスにより既存の条項と罰則が対応しない状態等が生じていることに関する質問に対する答弁書(令和3年5月14日付)には以下の記載があります。
    内閣が第二百四回国会に提出した法律案(第二百三回国会において継続審査とされたものを含む。)及び条約について、条文及び参考資料(要綱、新旧対照表及び参照条文)等に相次いで誤りが判明したことから、まずは各府省庁において、今回の誤りが起きた原因の徹底究明と再発防止策の検討を実施している。その上で、内閣官房副長官、内閣官房副長官補、内閣官房内閣審議官二名、内閣法制次長、内閣法制局総務主幹、総務省行政管理局長、法務省大臣官房司法法制部長、各府省庁等大臣官房長及び国立印刷局理事長の計二十七名をメンバーとする「法案誤り等再発防止プロジェクトチーム」においては、再発防止に向けて、各府省庁共通の課題を抽出し、府省庁横断的に解決することを目的として、実際に法令の立案作業や文書審査業務を行う実務担当者などの現場の視点を踏まえるとともに、特にデジタル技術及びICTを積極的に活用する形で業務の進め方を見直していくとの観点に立って、実効性のある再発防止策を議論している。
(3) 厚生労働省四国地方厚生局HPに載ってある「ダブルチェックの有効性を再考する」によれば,「よく見たら分かるのに・・・」的間違いについては,指差確認だけで十分であって,ダブルチェックを実施した場合,単純に気づくエラーなのに2人とも手抜きしてどちらも見落とすとか,2人目の時間を奪う結果,別の作業を手抜きしたり,超過勤務につながったり,疲れて余計に間違えたりすることがあるとのことです。

4 内閣法制局の執務資料
・ 法令審査事務提要(改定)
・ 法令案における誤りの防止について(手引き)(増補版)
・ 内閣法制局の法令審査支援システム操作マニュアル
・ 憲法関係答弁例集(第9条・憲法解釈関係)(平成28年9月)
・ 
内閣法制局第一部の執務参考資料集8(憲法76条ないし81条関係)
・ 内閣法制局の国会用資料(平成30年分)
・ 内閣法制局の国会答弁抄(司法・法務)
・ 大嘗祭の合憲性に関する内閣法制局の国会用資料等

5 内閣法制局のその他の資料
(例規)
・ 内閣法制局組織細則(昭和31年9月1日法制局訓令第1号)
・ 内閣法制局行政文書取扱規則(平成31年4月25日最終改正)
(法律案審議録)
・ 裁判所法の一部を改正する法律(平成10年5月6日法律第50号)に関する,内閣法制局の法律案審議録
・ 裁判所法の一部を改正する法律(平成16年12月10日法律第163号)に関する,内閣法制局の法律案審議録
・ 裁判所法の一部を改正する法律(平成29年4月26日法律第23号)に関する,内閣法制局の法律案審議録(法務省提出分は除く。)
(答弁書の審査資料)
・ 衆議院議員鈴木貴子君提出日本共産党と「破壊活動防止法」に関する質問主意書に対する答弁書(平成28年3月22日付)に関する,内閣法制局の審査資料
・ 東京オリンピック・パラリンピック大会組織委員会の森喜朗会長の日本オリンピック委員会評議員会での女性に関する発言に関する質問に対する答弁書(令和3年2月16日付)に関する,内閣法制局の審査資料
・ 参議院議員浜田聡君提出衆議院本会議前夜午後十一時に質問通告が出ていなかった旨のSNS上の書き込みの審議に関する質問に対する答弁書(令和3年2月19日付)に関する,内閣法制局の審査資料
・ 参議院議員安達澄君提出西村康稔大臣の組織マネジメント等に関する質問に対する答弁書(令和3年3月5日付)に関する,内閣法制局の審査資料
・ 参議院議員浜田聡君提出皇室経済法第六条に規定されている一時金不支給に関する質問に対する答弁書(令和3年11月19日付)に関する,内閣法制局の審査資料
・ 参議院議員浜田聡君提出国会議員の依頼によって官僚が作成するあいさつ文や講演資料に関する質問に対する答弁書(令和3年12月17日付)に関する,内閣法制局の審査資料
・ 参議院議員浜田聡君提出天皇及び皇族が御結婚される際に例外的な対応を行う場合の処理等に関する質問に対する答弁書(令和3年12月21日付)に関する,内閣法制局の審査資料
・ 参議院議員浜田聡君提出国葬、国葬儀、合同葬儀の違い等に関する質問に対する答弁書(令和4年8月15日付)に関する,内閣法制局の審査資料
(その他)
・ 平成24年法令整備会議の資料
・ 関係主要用語集
→ 取り上げられている用語は以下のとおりです。
A級戦犯思いやり予算閣議決定・閣議了解・閣議報告間接侵略艦・船・艇軍事大国公開の原則(原子力)攻撃的兵器と防御的兵器公式参拝・私的参拝・正式参拝国会決議の効力国是三権分立日米防衛協力のための指針日米防衛協力のための指針(平成9年改定)首都侵略戦争政府統一見解・政府見解専守防衛遷都・分都・展都防衛計画の大綱(昭和52年度以降に係るもの)防衛計画の大綱(平成8年度以降に係るもの)大東亜戦争中立東京裁判当然の法理内政干渉白書・青書非核三原則秘密(国家公務員法100条)平和の目的予算と法律有事領海侵犯領空侵犯教育勅語


6 臨時会の召集要求に関する国会答弁
(1)ア 横畠裕介内閣法制局長官は,平成30年2月14日の衆議院予算委員会において以下の答弁をしています(ナンバリングを追加しています。)。
① (山中注:臨時国会の召集要求があった場合,)臨時会で審議すべき事項等をも勘案して、召集のために必要な合理的な期間を超えない期間内に臨時会の召集を行うことを決定しなければならないということでございまして、合理的な期間と申しますのは、召集に当たって整理すべき諸課題によって変わるものであるため、一概に申し上げることはできないと考えております。
② 憲法の規定の理解、解釈については先ほどお答えしたとおりでございまして、私どもの所掌といたしまして、憲法の解釈について申し上げるということはございますけれども、具体にどのような事情によってそのような期間になったのかということについてお答えする立場にはございません。
イ  憲法53条後段の規定により国会の臨時会の召集を決定することの要求をした国会議員は,内閣による上記の決定の遅滞を理由として,国家賠償法の規定に基づく損害賠償請求をすることはできません(最高裁令和5年9月12日判決)。
(2) 平成29年6月22日,野党議員は,安倍内閣に対し,衆参両院それぞれ総議員の4分の1以上の連名で臨時国会の召集を要求したものの,実際に臨時国会が召集されたのは同年9月28日でしたし,召集日に衆議院が解散されました。
(3) 憲法53条は以下のとおりです。
    内閣は、国会の臨時会の召集を決定することができる。いづれかの議院の総議員の四分の一以上の要求があれば、内閣は、その召集を決定しなければならない。


7 改め文の必要性に関する国会答弁
・ 横畠裕介内閣法制局総務主幹は,平成14年12月13日の衆議院総務委員会において以下の答弁をしています(ナンバリング及び改行を追加しています。)。
① 内閣法制局におきましては、法令の正確性はもとより、これが国民にとってわかりやすいものとなるよう平素から意を用いているところでございます。
    また、法令案の作成事務の簡素合理化につきましても努力をしているところでございます。
    御指摘のいわゆる改め文と言われる逐語的改正方式は、改正点が明確であり、かつ簡素に表現できるというメリットがあることから、それなりの改善、工夫の努力を経て、我が国における法改正の方法として定着しているものと考えております。
② 一方、新旧対照表は、現在、改正内容の理解を助けるための参考資料として作成しているものでございますが、逐語的改正方式をやめて、これを改正法案の本体とすることにつきましては、まず、一般的に新旧対照表は改め文よりも相当に大部となるということが避けられず、その全体について正確性を期すための事務にこれまで以上に多大の時間と労力を要すると考えられるということが一つございます。
    また、条項の移動など、新旧対照表ではその改正の内容が十分に表現できないということもあると考えられます。このようなことから、実際上困難があるものと考えております。
③ ちなみに一例を申し上げますと、平成十一年でございますが、中央省庁等改革関係法施行法という法律がございました。
    改め文による法案本体は全体で九百四十ページという大部のものでございましたけれども、その新旧対照表は、縮小印刷をさせていただきまして、四千七百六十五ページに達しております。
    これを改め文と同じ一ページ当たりの文字数で換算いたしますと、二万一千三百五ページということになりまして、実に改め文の二十二倍を超える膨大な量となってしまう、こういう現実がございます。


8 関連記事その他
1 内閣法制局HPに「法律ができるまで」が載っています。
2 若手組織内弁護士研究ノート「①渡部友一郎「内閣法制局資料への敬意」JILA : 日本組織内弁護士協会会報誌第14号(2022)②同「新しい部会作りマニュアル」JILA : 日本組織内弁護士協会会報誌第14号(2022)」が載っています。
3(1) 法務省刑事局作成の以下の資料を掲載しています。
・ 若手検察官のための法令基礎知識→検察月報678号(平成25年9月)からの抜粋
・ 罰則の定めのある条例審査について(執筆者は東京高検検事)
・ 罰則の定めのある条例審査のQ&A(法務省刑事局刑事法制課の調査解説)
・ 罰則の定めのある条例の審査について→検察月報640号(平成22年7月)からの抜粋
・ いわゆる暴力団排除条例の審査について→検察月報645号(平成22年12月)からの抜粋
・ 環境関連条例の審査について→検察月報651号(平成23年6月)からの抜粋
・ 屋外広告物条例の審査について→検察月報654号(平成23年9月)からの抜粋
(2) 以下の記事も参照して下さい。
・ 内閣法制局長官任命の閣議書
・ 内閣法制局参事官経験のある裁判官
・ 外務省国際法局長経験のある最高裁判所判事
・ 行政機関等への出向裁判官
・ 平成16年4月1日創設の,弁護士資格認定制度
 弁護士資格認定制度に基づく認定者数の推移

最高裁判所の概算要求書(説明資料)

目次
第1 最高裁判所の概算要求書(説明資料)
第2 概算要求から政府予算案の成立まで
第3 裁判所をめぐる諸情勢について
第4 検索システムに関する令和4年度概算要求及び請負契約書
1 検索システムに関する概算要求書説明資料の記載
2 検索システムの単価及び請負契約書
第5 最高裁判所の国会答弁資料
第6 関連記事その他

第1 最高裁判所の概算要求書(説明資料)
1 裁判所HPの「裁判所の予算・決算・財務書類」に,①毎年度の一般会計歳出予算各目明細書及び②一般会計歳出概算要求書が掲載されています。
    そして,③最高裁判所の概算要求書(説明資料)は,②の説明資料です。
2 最高裁判所の概算要求書(説明資料)のバックナンバーは以下のとおりです。
(令和時代)
令和2年度1/22/2令和3年度令和4年度令和5年度令和6年度
(平成時代)
平成29年度1/32/33/3
3 令和4年度予算の場合,人件費が2698億円(84%),施設費が146億円(4%),物件費が384億円(12%)であり,合計で3228億円です。


第2 概算要求から政府予算案の成立まで
1 毎年7月下旬に決定される,概算要求にあたっての基本的な対処方針について(閣議了解)が財務省HPの「予算」に掲載されます。
2(1) 概算要求とは,各省各庁が毎年8月末日までに財務省に対して行う次年度の予算要求をいい(財政法17条),毎年9月上旬に「各省各庁の概算要求」が財務省HPの「予算」に掲載されます。
(2) 財政法17条1項は「衆議院議長、参議院議長、最高裁判所長官及び会計検査院長は、毎会計年度、その所掌に係る歳入、歳出、継続費、繰越明許費及び国庫債務負担行為の見積に関する書類を作製し、これを内閣における予算の統合調整に供するため、内閣に送付しなければならない。」と定めています。
3 毎年12月下旬に政府予算案が閣議決定されて(財政法18条1項),翌年1月に政府予算案が国会に提出され(財政法27条),翌年3月下旬に政府予算案が国会で成立します。


第3 裁判所をめぐる諸情勢について
    「裁判所をめぐる諸情勢について」を以下のとおり掲載しています。
(令和時代)
令和元年6月令和2年8月令和3年6月
令和4年7月
令和5年8月
(平成時代)
平成23年7月




第4 検索システムに関する令和4年度概算要求及び請負契約書
1 検索システムに関する概算要求書説明資料の記載

・ 【裁判所所管】令和4年度概算要求書説明資料160頁及び161頁には以下の記載があります。
(3) 法令・判例等検索システム
<要求要旨>
    法令・判例等検索システムは,法令,判例及び文献情報を検索閲覧するシステムである。
    本システムは,裁判官や書記官各自の端末パソコンからアクセスすることにより,裁判執務に必要な法規,判例及び法律判例文献の著者名,雑誌名等を容易かつ瞬時に入手することができるものであり,適正迅速かつ効率的な裁判事務処理に極めて有効なものであり,令和4年度も引き続きその利用に必要なライセンス料を要求する。
    なお,本件は,複数年度にわたる契約を締結する必要があるため,併せて5箇年の国庫債務負担行為によることを要求しており,令和4年度はその3年目である。
(4) 法律雑誌等検索システム
<要求要旨>
    法律雑誌等検索システムは,判例や法律雑誌に掲載された論文,評釈及び解説等の膨大な情報を収録しているデータベースシステムである。本システムは,法律雑誌の収録件数が豊富であり,主要法律雑誌に掲載された判例評釈及び解説のすべてを,原本性を保持したPDFデータとして収録し,判例と関連づけて検索閲覧することが可能である。
    これは, 法令・判例等検索システムにはない機能であり,その都度膨大な数の雑誌から,事件処理に必要な記事を探し出す作業の必要がなくなり,効率的な裁判事務処理,特に,日々第一線で訴訟等の案件を処理している裁判官の事務処理の負担軽減に多大な貢献をもたらすものである。
    法律雑誌等検索システムと法令・判例等検索システムは,それぞれのシステムの特長から,相互に補完して利用することにより,より一層裁判事務の効率化に寄与するものであり,令和4年度も引き続きその利用に必要なライセンス料を要求する。
    なお,本件は,複数年度にわたる契約を締結する必要があるため,併せて5箇年の国庫債務負担行為によることを要求しており,令和4年度はその3年目である。 
(5) Web版図書情報システム
<要求要旨>
    Web版図書情報システムは,下級裁判所の資料室及び裁判官室等で管理している図書資料(約230万冊)の情報を,インターネット回線を利用して,運営会社の提供する蔵書検索サービスにデータをアップロードし,職員が同サービスにインターネット回線を利用してアクセスすることにより,図書資料の有無や配架場所を検索できるものである。
    Web版図書情報システムは,書籍名や著者名等のキーワードを入力することにより,関連する蔵書の有無や配架場所を瞬時に検索することが可能であり,適正迅速かつ効率的な事務処理に有効であることから,令和4年度も引き続きその利用に必要なライセンス等を要求する。
    なお,本件は,複数年度にわたる契約を締結する必要があるため,併せて5箇年の国庫債務負担行為によることを要求しており,令和4年度はその3年目である。
2 検索システムの単価及び請負契約書
(1) 法令・判例等検索システム
ア 【裁判所所管】令和4年度概算要求書説明資料167頁によれば,法令・判例等検索システムの令和4年度の単価は4018万4125円であり,知財高裁用法令・判例等検索システムの令和4年度の単価は7万5875円であり,合計額は4026万円です。
イ 法令・判例等検索システムの利用に関する請負契約書(令和2年4月1日付。受注者は第一法規株式会社によれば,5年間の利用料金は2億130万円であり,1年度当たりの料金は4026万円であり,クライアント端末数は2万6000台までであり(仮に2万6000台を利用した場合,1台当たりの年間利用料は1548円となります。),サーバへの同時アクセス数は500台までです。
(2) 法律雑誌等検索システムの単価及び請負契約書
ア 【裁判所所管】令和4年度概算要求書説明資料167頁によれば,法律雑誌等検索システムの令和4年度の単価は2934万4899円であり,知財高裁用法律雑誌等検索システムの令和4年度の単価は8万101円であり,合計額は2942万5000円です。
イ 法律雑誌等検索システムの利用に関する請負契約書(令和2年4月1日付。受注者は株式会社エル・アイ・シーによれば,5年間の利用料金は1億4712万5000円であり,1年度当たりの料金は2942万5000円であり,クライアント端末数は1万8000台までであり(仮に1万8000台を利用した場合,1台当たりの年間利用料は1635円となります。),サーバへの同時アクセス数は500台までです。
(3) WEB版図書情報システムの単価及び請負契約書
ア 【裁判所所管】令和4年度概算要求書説明資料167頁によれば,WEB版図書情報システムの令和4年度の単価は105万6000円です。
イ WEB版図書情報システムの利用に関する請負契約書(令和2年4月1日付。受注者は株式会社OPACによれば,5年間の利用料金は706万2000円です。

第5 最高裁判所の国会答弁資料
1(1) 最高裁判所の国会答弁資料を以下のとおり掲載しています。
・ 第210回国会(令和4年10月3日から同年12月10日までの会期)の,最高裁の国会答弁資料
→ 衆議院法務委員会等での使用分,及び参議院法務委員会等での使用分があります。
・ 第208回国会(令和4年1月17日から同年6月15日までの会期)の,最高裁の国会答弁資料
→ 衆議院法務委員会等での使用分,及び参議院法務委員会等での使用分があります。
(2) 衆議院HPに「国会会期一覧」が載っています。
2 令和元年度(最情)答申第53号(令和元年10月18日答申)には以下の記載があります(本件開示申出文書は「平成30年11月22日の参議院法務委員会における国会答弁資料のうち,裁判所の所持品検査に関するもの」です。)。
    苦情申出人は,特定日の参議院法務委員会における国会答弁の内容及び参議院インターネット審議中継の動画からすれば,最高裁判所において本件開示申出文書を保有している旨主張する(山中注:令和元年5月7日付の意見書に記載した主張です。)。しかし,当委員会において上記法務委員会の会議録を閲読し,出席者である長官代理者がした説明の内容を確認したところ,その内容を踏まえて検討すれば,議員の質問事項について,裁判所の基本的な見解を概括的に述べたものであり,上記法務委員会に係る国会答弁においては司法行政文書として長官代理者の説明案を作成していないという最高裁判所事務総長の上記説明の内容が不合理とはいえない。そのほか,最高裁判所において,本件開示申出文書に該当する文書を保有していることをうかがわせる事情は認められない。
    したがって,最高裁判所において本件開示申出文書を保有していないと認められる。


第6 関連記事その他
1(1) 昭和22年度以降の予算書及び決算書が,財務省HPの「予算書・決算書データベース」に載っています。
(2) 平成11年度以降の予算に関する,概算要求,政府案及び補正予算が 財務省HPの「予算」に載っています。
(3) 特例公債法案及び対応する予算の議決日等が,「戦後初となった大規模な予算の執行抑制」(立法と調査2012年12月号)に載っています。
2 関東弁護士会連合会は,平成28年3月16日,「司法予算の大幅増額を求める理事長声明」を出しています。
3(1) 日弁連委員会ニュース2022年1月号15頁の「もっと知ってください、裁判所予算」には裁判所予算に関する概括的な説明が載っていて,日弁連委員会ニュース2022年12月号16頁の「もっと知ってください、裁判所予算(その2)」には,最高裁判所の概算要求に関する説明が載っています。
(2) 「もっと知ってください、裁判所予算」の執筆者は56期の志摩恭臣弁護士(徳島)です。
4(1) 以下の資料を掲載しています。
・ 令和4年度歳出概算要求の作成手順が書いてある文書(財務省の開示文書)
・ 令和4年度機構・定員及び級別定数設定・改定の要求について(令和3年7月7日付の内閣官房内閣参事官(内閣人事局),人事院給与局給与第二課長及び財務省主計局給与共済課長の文書)
・ 最高裁判所の令和3年度概算要求書729頁「職員諸手当」の積算根拠が書いてある文書
(2) 以下の記事も参照してください。
・ 裁判所職員の予算定員の推移
・ 級別定数の改定に関する文書
・ 令和4年度概算要求書における,民事訴訟手続のIT化に関する最高裁判所の財務省に対する説明内容
・ 新任の地家裁所長等を対象とした実務協議会の資料
 毎年6月開催の長官所長会同
 高等裁判所事務局長事務打合せ
 司法行政を担う裁判官会議,最高裁判所事務総長及び下級裁判所事務局長
・ 下級裁判所事務局の係の事務分掌
 東京高裁及び大阪高裁事務局,並びに東京地裁,大阪地裁及び大阪家裁事務局に設置されている係
・ 裁判所書記官,家裁調査官及び下級裁判所事務局に関する規則,規程及び通達