在日外国人への社会保障法令の適用


目次
1 昭和57年1月1日以降,在日外国人も国民年金に加入できるようになったこと
2 昭和56年の国民年金法改正当時の国会答弁
3 外国人と生活保護法
4 関連記事その他

1 昭和57年1月1日以降,在日外国人も国民年金に加入できるようになったこと
(1) 昭和36年4月1日にスタートした国民年金制度には当初,日本国民だけを対象とするという国籍条項(国民年金法7条1項)がありました(ただし,軍人を除く在日アメリカ人は日米友好通商航海条約(昭和28年4月2日署名)3条に基づき,例外的に国民年金制度に任意加入できました。)。
 しかし,難民条約(1951年7月28日署名。1951年1月1日以前の原因に基づく難民を対象とした条約。)及び難民議定書(1967年1月31日署名。難民条約の適用対象を1951年1月1日以後の原因に基づく難民に拡大したもの。)に日本国が加入するに際して,難民条約24条1項は,難民に対し,社会保障に関して自国民に与える待遇と同一の待遇を与えることを定めていましたから,国籍条項の維持は難民条約及び難民議定書に抵触することとなりました。
 そのため,日本政府は,①難民条約24条1項等について留保するか,②社会保障法令を難民についてだけ適用できるように改正するか,又は③社会保障法令を外国人全般に適用できるように改正するかといった選択が検討した結果,社会保障法令を外国人全般に適用できるように改正することとなりました。
  その結果,昭和57年1月1日以降,在日外国人も国民年金に加入できるようになったものの,無年金状態を解消するための経過措置等は定められませんでした。
(2) 難民の地位に関する条約等への加入に伴う出入国管理令その他関係法律の整備に関する法律(昭和56年6月12日法律第86合)2条ないし5条によって改正された社会保障法令は,国民年金法,児童扶養手当法,特別児童扶養手当法及び児童手当法です。
(3)ア 国民年金制度が開始した昭和34年11月1日以前に後遺障害の症状が固定した在日外国人に対して障害福祉年金(昭和61年4月1日以降の,20歳前の傷病による障害基礎年金に相当するもの)を支給しないことは憲法25条及び14条1項に違反しません(第一次塩見訴訟に関する最高裁平成元年3月2日判決)。
イ 難民条約及び難民議定書が日本国について発効した昭和57年1月1日以降も,昭和34年11月1日以前に後遺障害の症状が固定した在日外国人に対して障害福祉年金を支給しないことは憲法25条及び14条1項に違反しません(第二次塩見訴訟に関する最高裁平成13年3月13日判決(判例秘書に掲載))。

2 昭和56年の国民年金法改正当時の国会答弁
(1) 村山達雄厚生大臣は,昭和56年5月27日の法務委員会外務委員会社会労働委員会連合審査会において以下の答弁をしています(ナンバリング及び改行を追加しています。)。
① 今回の条約の加盟に伴う内外人平等、具体的には国籍要件の撤廃ということに伴ういま御指摘のような制度についての厚生行政の基本的な考え方でございますが、これはやはり、今度の加入に伴いまして外国人についても適用範囲を拡大するという考え方に立っているわけでございます。もう一つは、日本人と平等の取り扱いをする、こういう趣旨でございまして、まさにその限りにおきましては、今度の提案は十分なる条件を満たしておると私は考えております。
 ただ、おっしゃるように、制度創設当時、たとえば国民年金につきまして強制的な経過措置を設けたじゃないか、これは制度発足のときでございますから、二十五年間掛けなくちゃならぬという基本法がございます。二十五年掛けられない者はどうするんだ、こういう問題は基本的にあるわけでございますから、これはやむを得ざる措置といたしまして、それは経過年金を設けたわけでございます。これはいつの場合でも、制度をつくるときには、その基本的な要件、それからそれを満たされない人たちについて経過措置も設けることは当然であろうと思うのでございます。
 今度の場合は、内外国籍要件撤廃によって加入者がふえるということでございます。ですから、経過年金を設くべし、こういうようなことになりますれば、これは永久に続くわけでございます。どんどん入ってくる、これが一つの問題点でございましょう。
② それから、今度はもし外国に長くおった日本人がやってきた。これは日本人は適用にならないわけですね、御承知のように。
 そうなれば外国人だけ適用するのか。これはやはり内外の差別撤廃という趣旨から見るとおかしい。
③ それからまた、第三番目には、やはり保険会計でございますから、当然保険数理に立ちまして年金計算をしているわけでございます。通常でございますと、二十五年掛ける者を基本にいたしまして、保険数理に基づいて、そして負担と給付の関係が整合性を持っているわけでございます。
 したがって、そうでない者について年金を設けるということ、これは定額にいたしまして、やはり何といっても国庫の三分の一の補助という問題等がございまして、やはり保険数理の上からいって保険財政は相当苦しいものになるんじゃないか。
④ まあ、いろいろな点がございまして、私は、これは今度の措置によりまして、内外人を平等という原則のもとに適用範囲を拡大するんだ、また、それで難民条約で定めている趣旨は達成できる、かように考えているわけでございます。

(2) 大和田潔厚生省保険局長は,昭和56年5月27日の法務委員会外務委員会社会労働委員会連合審査会において以下の答弁をしています。
  国民健康保険でございますが、御承知のように、国民健康保険につきましては市町村が条例でもって外国人の適用を行う。その前に、日韓協定によりますところの永住許可を受けた者につきましても強制適用であるということは御承知のとおりでございますが、こういった市町村の条例、これは財政事情その他の問題もございます、まだ適用していないところもあるわけでございますが、これにつきましては行政指導を強化いたしまして、外国人にすべて適用できるような方向で強化をしてまいる、こういうふうに考えているわけでございます。

3 外国人と生活保護法
(1) 最高裁平成26年7月18日判決(判例秘書に掲載)は以下の判示をしています(ナンバリングを①,②,③に変えています。)。
① 前記2(2)アのとおり,旧生活保護法は,その適用の対象につき「国民」であるか否かを区別していなかったのに対し,現行の生活保護法は,1条及び2条において,その適用の対象につき「国民」と定めたものであり,このように同法の適用の対象につき定めた上記各条にいう「国民」とは日本国民を意味するものであって,外国人はこれに含まれないものと解される。
 そして,現行の生活保護法が制定された後,現在に至るまでの間,同法の適用を受ける者の範囲を一定の範囲の外国人に拡大するような法改正は行われておらず,同法上の保護に関する規定を一定の範囲の外国人に準用する旨の法令も存在しない。
 したがって,生活保護法を始めとする現行法令上,生活保護法が一定の範囲の外国人に適用され又は準用されると解すべき根拠は見当たらない。
② また,本件通知は行政庁の通達であり,それに基づく行政措置として一定範囲の外国人に対して生活保護が事実上実施されてきたとしても,そのことによって,生活保護法1条及び2条の規定の改正等の立法措置を経ることなく,生活保護法が一定の範囲の外国人に適用され又は準用されるものとなると解する余地はなく,前記2(3)の我が国が難民条約等に加入した際の経緯を勘案しても,本件通知を根拠として外国人が同法に基づく保護の対象となり得るものとは解されない。なお,本件通知は,その文言上も,生活に困窮する外国人に対し,生活保護法が適用されずその法律上の保護の対象とならないことを前提に,それとは別に事実上の保護を行う行政措置として,当分の間,日本国民に対する同法に基づく保護の決定実施と同様の手続により必要と認める保護を行うことを定めたものであることは明らかである。
③ 以上によれば,外国人は,行政庁の通達等に基づく行政措置により事実上の保護の対象となり得るにとどまり,生活保護法に基づく保護の対象となるものではなく,同法に基づく受給権を有しないものというべきである。
 そうすると,本件却下処分は,生活保護法に基づく受給権を有しない者による申請を却下するものであって,適法である。
(2) 最高裁平成26年7月18日判決(判例秘書に掲載)の「外国人に対する生活保護の措置」には,以下の記載が含まれています。
 昭和29年5月8日,厚生省において,各都道府県知事に宛てて「生活に困窮する外国人に対する生活保護の措置について」と題する通知(昭和29年社発第382号厚生省社会局長通知。以下「本件通知」という。)が発出され,以後,本件通知に基づいて外国人に対する生活保護の措置が行われている。
 本件通知は,外国人は生活保護法の適用対象とはならないとしつつ,当分の間,生活に困窮する外国人に対しては日本国民に対する生活保護の決定実施の取扱いに準じて必要と認める保護を行うものとし,その手続については,当該外国人が要保護状態にあると認められる場合の保護実施機関から都道府県知事への報告,当該外国人がその属する国の代表部等から必要な保護等を受けることができないことの都道府県知事による確認等を除けば,日本国民と同様の手続によるものとしている。
 平成2年10月,厚生省において,本件通知に基づく生活保護の対象となる外国人の範囲について,本来最低生活保障と自立助長を趣旨とする生活保護が予定する対象者は自立可能な者でなければならないという見地からは外国人のうち永住的外国人のみが生活保護の措置の対象となるべきであるとして,出入国管理及び難民認定法別表第2記載の外国人(以下「永住的外国人」という。)に限定する旨の取扱いの方針が示された。
(3) 山下眞臣 厚生省社会局長は,昭和56年5月27日の法務委員会外務委員会社会労働委員会連合審査会において以下の答弁をしています。
① 生活保護につきましては、昭和二十五年の制度発足以来、実質的に内外人同じ取り扱いで生活保護を実施いたしてきているわけでございます。去る国際人権規約、今回の難民条約、これにつきましても行政措置、予算上内国民と同様の待遇をいたしてきておるということで、条約批准に全く支障がないというふうに考えておる次第でございます。
② 難民条約で、難民の方に対しましても日本国民と同じ待遇を与えるようにと書いてあるわけでございますが、それはその形がどうであれ、実質が同じ取り扱いをしておれば差し支えないという解釈であることは先ほど申し上げたとおりでございます。
 生活保護法につきまして今回なぜ法律改正を行わなかったかということでございますが、一つには、国民年金等につきましては給付するだけではございませんで、どうしても拠出を求めるとか、そういった法律上の拠出、徴収というようなことにどうしても法律が必要だろうと思うのでございますが、生活保護で行っております実質の行政は、やはり一方的給付でございまして、必ずしもそういう法律を要しないでやれる措置であるということが一つの内容になるわけでございます。
③ ただ、改正してもよろしいではないかという御議論もあろうかと思うのでございます。その辺につきましては十分検討いたさなければならぬと思うわけでございますが、いろいろむずかしい問題がございます。
 たとえば出入国管理令でございますか、今度は法で、出入国の拒否事由といたしまして貧困者等国、地方公共団体の負担になる者、これにつきましては入国を拒否することができるという規定があるわけでございまして、そういった規定との関連を、この生活保護を法律上のものとして改正する場合にどう調整していくかというような問題等もございます。あるいは生活保護につきましては国民無差別平等にやるわけでございますが、補足性の原理というのが強くあるわけでございますが、そういった外国人の方の親族扶養の問題等をどう解決していくか等々非常に詰めなければならぬ問題が多うございますので、今回は、とにかくこういった条約の批准には何ら支障がないし、実質的には同じ保護をいたしておるのであるからこれによって御了解をいただきたい、かように考えているわけでございます。


4 関連記事その他

(1) 大正15年(1926年)4月1日以前に生まれた人の場合,1986年4月1日時点で60歳を超えていましたし,カラ期間(合算対象期間)が認められませんでしたから,被用者年金の受給権がある人を除いて公的年金をもらえません。
 ただし,自治体によっては高齢者給付金を支給しているところがあります(大阪市HPの「在日外国人高齢者給付金」参照)。
(2) 日韓法的地位協定4条(a)に基づき,日本国政府は,協定永住者となる在日韓国人に対する教育,生活保護及び国民健康保険に関する事項について妥当な考慮を払うものとされていましたが,同協定には,国民年金に関する定めはありませんでした。
(3)ア 出入国在留管理庁HPに「「難民該当性判断の手引」の策定について」(令和5年3月24日付の報道発表資料)が載っています。
イ 以下のHPが参考になります。
・ 国立社会保障・人口問題研究所(IPSS)HP「社会保障法判例」
・ 立木茂雄研究室HP「第三節 在日韓国・朝鮮人と公的年金制度」
・ 外国人HR Lab.「外国人の社会保険のまとめ」
(4)ア 以下の資料を掲載しています。
・ 外国人登録法の廃止に伴い回収された外国人登録原票に係る開示請求手続について(平成23年12月13日付の法務省入国管理局登録管理官の事務連絡)
・ 外国人登録法の廃止に伴い回収された外国人登録原票に係る開示請求手続について(平成24年3月21日付の日弁連事務総長の依頼)
・ 弁護士法23条の2の規定に基づく外国人登録原票の照会への対応について(平成24年7月30日付の法務省入国管理局出入国管理情報官付補佐官の事務連絡)
イ 以下の記事も参照してください。
・ 司法修習生の国籍条項に関する経緯


広告
スポンサーリンク