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消費者契約法に関する最高裁判例(AIリライト)

第1 この記事の対象と要点

1 対象と基準日

本記事は,消費者契約法又は同法の差止請求制度に関し,最高裁判所が法的判断を示した主な裁判例を,令和8年9月22日現在で整理するものである。
最高裁判所ウェブサイトに掲載された判例情報及び判決全文を基準とし,判決時の条文と現行法の条文番号が異なる場合はその対応も示す。

2 要点

最高裁判例は,同じ条文を扱っていても,契約の種類,条項の文言,解除の時期,対価関係及び事業者の運用等の具体的事情を前提としている。
したがって,「解約金条項は無効である」,「更新料条項は有効である」といった抽象的な結論だけを切り出すことはできず,自己の契約と判決の事実関係を対比する必要がある。

既存の最高裁判例のうち,特に注意すべきものは,最高裁令和7年12月23日判決がLPガス供給契約の残存費用条項を旧9条1号により全部無効としたこと,最高裁令和4年12月12日判決が家賃債務保証業者の無催告解除条項及び明渡し擬制条項を10条により無効としたことである。

第2 消費者契約法9条に関する最高裁判例

1 学納金不返還特約

大学等の入学辞退に伴う学納金の返還をめぐり,最高裁は,入学金と授業料等を区別し,解除の時期,推薦入試における専願の約束,入学式の無断欠席に関する記載,大学職員の説明及び定員補充の可能性等を考慮している。

裁判例主な判断
最高裁平成18年11月27日第二小法廷判決(平成17年(受)第1158号・民集60巻9号3437頁)在学契約,入学金及び学納金不返還特約の性質を示した基本判例である。原則として,3月31日までに在学契約が解除された場合,大学に生ずべき平均的な損害は存しないとした。
最高裁平成18年11月27日第二小法廷判決(平成17年(受)第1437号・民集60巻9号3597頁)入学式の無断欠席を入学辞退とみなす旨等が入学手続要項に書かれている場合,無断欠席は原則として黙示の解除の意思表示に当たり,入学式の日までに解除された場合の授業料等不返還特約を全部無効とした。
最高裁平成18年11月27日第二小法廷判決(平成18年(受)第1130号・集民222号511頁)大学職員が,入学式に出席しなければ入学辞退として扱う旨を告げたため,欠席による解除が4月になったという事情の下で,大学が不返還特約の有効を主張することは信義則上許されないとした。
最高裁平成18年11月27日第二小法廷判決(平成16年(受)第2117号・民集60巻9号3732頁)私立医科大学につき,入学辞退による欠員及び多額の損失の可能性等の事情の下で,授業料等不返還特約を有効とした。
最高裁平成18年12月22日第二小法廷判決(平成17年(受)第1762号・集民222号721頁)鍼灸学校の入学年度開始前の解除につき,大学と格段に異なる入試事情等は認め難いとして,授業料等不返還特約を全部無効とした。
最高裁平成22年3月30日第三小法廷判決(平成21年(受)第1232号・集民233号353頁)専願でない推薦入試の合格者が入学年度開始後の4月5日に解除した場合,その後も補欠合格者を決定することがあったなどの事情があっても,授業料等は平均的な損害を超えないとして,不返還特約を有効とした。

また,最高裁平成18年11月27日第二小法廷判決(平成17年(オ)第886号・集民222号275頁)は,旧9条1号が憲法29条に違反しないと判断している。

2 LPガス供給契約の残存費用条項

最高裁令和7年12月23日第三小法廷判決(令和6年(受)第204号・民集79巻8号2869頁)は,戸建て住宅のLPガス供給契約を供給開始から10年未満で終了する場合に,配管等の設置費用に関する所定額を消費者が支払う旨の条項を,旧9条1号の「解除に伴う損害賠償の額を予定し,又は違約金を定める条項」に当たるとした。
同判決は,設置費用とガス料金との関係が明確でないこと,事業者がガス料金を自由に設定し,未回収リスクを見越して契約者全体の料金を設定できること等を考慮し,同種の契約の解除に伴う平均的な損害に当たり得るものは見当たらないとして,該当条項を全部無効とした。

ただし,同判決は,設置費用とガス料金との関係が不明確であったこと等を前提とする事例判断である。
設備費用をガス料金から区分して明示する契約にどこまで及ぶかは,条項の文言及び料金体系を確認した上で別途検討する必要がある。

3 現行法と主張立証責任

前記の各判決がいう旧9条1号は,令和4年法律第59号による改正後の現行9条1項1号に対応する。
同号は,消費者契約の解除に伴う損害賠償額の予定又は違約金につき,同種の契約の解除に伴い事業者に生ずべき平均的な損害を超える部分を無効とする。

最高裁平成18年11月27日第二小法廷判決(平成17年(受)第1158号)は,平均的な損害及びこれを超える部分について,基本的には特約の無効を主張する消費者側が主張立証責任を負うと判断した。
もっとも,現行9条2項は,事業者が違約金等の条項に基づいて支払を請求する場合に,消費者から説明を求められたときは,算定の根拠の概要を説明するよう努めることを定めている。

第3 消費者契約法10条に関する最高裁判例

消費者契約法10条は,任意規定の適用による場合と比べて消費者の権利を制限し,又は義務を加重する条項であることと,その条項が信義則に反して消費者の利益を一方的に害することを要件とする。
第1の要件を満たすだけで無効となるわけではなく,契約締結の経緯,条項の明確性,対価関係及び消費者に与える不利益の程度等が問題となる。

1 敷引特約

最高裁平成23年3月24日第一小法廷判決(平成21年(受)第1679号・民集65巻2号903頁)は,居住用建物賃貸借契約の敷引特約につき,通常損耗等の補修費用として通常想定される額,賃料,礼金等の一時金及びその額等に照らし,敷引金が高額に過ぎると評価される場合は,特段の事情のない限り,10条により無効となるとした。

最高裁平成23年7月12日第三小法廷判決(平成22年(受)第676号・集民237号215頁)は,敷引金が賃料月額の3.5倍程度にとどまり,近傍同種の契約の敷引金の相場と比べて大幅に高額とはうかがわれないなどの事情の下で,敷引特約を無効とはいえないとした。
同判決には補足意見及び反対意見がある。

2 更新料条項

最高裁平成23年7月15日第二小法廷判決(平成22年(オ)第863号・民集65巻5号2269頁)は,賃貸借契約書に一義的かつ具体的に記載された更新料条項は,更新料の額が賃料の額や契約更新期間等に照らして高額に過ぎるなどの特段の事情がない限り,10条により無効とはならないとした。
同判決は,10条が憲法29条1項に違反しないとも判断している。

3 家賃債務保証業者の無催告解除条項等

最高裁令和4年12月12日第一小法廷判決(令和3年(受)第987号・民集76巻7号1696頁)は,適格消費者団体が家賃債務保証業者に対して条項使用の差止め等を求めた事件である。
問題となったのは,①賃料等の不払額が賃料3か月分以上に達したときに保証業者が賃貸借契約を無催告で解除できる旨の条項と,②所定の不払,連絡不能,不使用及び再度占有使用しない意思等の要件の下で,保証業者が賃貸住宅の明渡しがあったものとみなすことができる旨の条項である。

同判決は,①につき,賃借人の賃料支払義務が保証業者の代位弁済により消滅した場合にも制限なく適用され,賃貸借契約の当事者でない保証業者の一存で契約を終了させるおそれがあること等から,10条の二つの要件をいずれも満たすとした。
②についても,賃貸借契約が終了していない場合にも適用され,法律に定める手続によらず賃借人の占有を失わせる自力救済に類する状態を生じさせること等から,10条により無効とした。
その上で,各条項を含む意思表示の差止め及び契約書用紙の廃棄等を命じた。

この判決は,差止請求の場面で,条項の文言に書かれていない限定を解釈で補い,限定的に解釈される限りで条項を適法とすることに否定的な判断を示した点でも重要である。

4 生命保険の無催告失効条項

最高裁平成24年3月16日第二小法廷判決(平成22年(受)第332号・民集66巻5号2216頁)は,保険料不払により履行の催告なしに保険契約が失効する旨の条項につき,①払込期限後の1か月の猶予期間,②解約返戻金の範囲内での保険料自動貸付け,③失効前の督促を確実に行う運用といった契約者保護の仕組みがあるときは,10条にいう消費者の利益を一方的に害するものに当たらないとした。
この判断は,約款の文言だけでなく,消費者保護のための実際の運用が確実に行われているかも判断事情となることを示すものである。

第4 消費者契約法12条に関する最高裁判例

最高裁平成29年1月24日第三小法廷判決(平成28年(受)第1050号・民集71巻1号1頁)は,事業者等の働きかけが不特定多数の消費者に向けられたものであっても,そのことだけから直ちに12条1項及び2項の「勧誘」に当たらないとはいえないと判断した。
この事件では,クロレラによる病気予防等の効果を謳った新聞折込チラシの配布が問題となった。

もっとも,同判決は,今後も同様のチラシを配布するおそれがあるとは認められないとして,差止請求を認めなかった原判決の結論を維持し,上告を棄却した。
「不特定多数向けであっても勧誘に当たり得る」という法解釈と,将来の差止めの必要性が否定された請求の結論とを区別して読む必要がある。

第5 その他の関連最高裁判例

最高裁平成22年3月30日第三小法廷判決(平成20年(受)第909号・集民233号311頁)は,金の商品先物取引の委託契約において,将来の金の価格は,当時の消費者契約法4条2項本文の「重要事項」に当たらないと判断した。

最高裁令和6年3月12日第三小法廷判決(令和4年(受)第1041号・民集78巻1号1頁)は,特定適格消費者団体による共通義務確認訴訟に関し,過失相殺及び因果関係の審理判断を理由に,簡易確定手続で対象債権を適切かつ迅速に判断することが困難であるとした原審の判断に違法があるとして,原判決を破棄して東京地方裁判所に差し戻した。
この判決は消費者被害の集団的な回復手続に関するものであり,消費者契約法の条文の解釈を直接示した判例ではない。

第6 実務上の留意点

消費者契約法9条の検討では,①問題の支払が解除に伴う損害賠償額の予定又は違約金に実質的に当たるか,②同種の契約をどの範囲で捉えるか,③解除の理由及び時期ごとに事業者に一般的・客観的に生ずる損害は何か,④消費者の支払額のうち平均的な損害を超える部分はいくらか,を分けて検討する必要がある。

消費者契約法10条の検討では,①法律上の原則と比較して消費者の権利が制限され,又は義務が加重されているか,②条項が一義的かつ明確か,③不利益に対応する対価や保護措置があるか,④契約書上の定めだけでなく運用が確実に行われているか,⑤訴訟手続によらず消費者の権利を制限する自力救済的な内容になっていないか,を確認する必要がある。

個別の消費者が支払済みの金員の返還等を求めることと,適格消費者団体が将来の不当勧誘又は不当条項の使用の差止めを求めることも区別する必要がある。
差止請求では,将来も同様の行為が行われるおそれの有無や,不当条項が書かれた契約書用紙等の廃棄の必要性が別途問題となる。

第7 関連記事

①「消費者契約法・特定商取引法・割賦販売法等の違いと主な制度(AIリライト)」
https://yamanaka-bengoshi.jp/2023/01/01/shouhisha-keiyakuhou-tokushouhou-chigai/

②「無断キャンセル(ノーショー)のキャンセル料はいくらまで請求できるか――消費者契約法9条の『平均的な損害』と裁判例(AI作成)」
https://yamanaka-bengoshi.jp/2026/09/13/mudan-cancel-ryou-heikinteki-songai/

③「消費者契約法はどう変わろうとしているのか-令和8年9月中間取りまとめの要点(AI作成)」
https://yamanaka-bengoshi.jp/2026/09/15/shohisha-keiyakuho-kentokai-chukan-torimatome/

④「保険約款の文言の解釈方法(AI作成)」
https://yamanaka-bengoshi.jp/2026/07/17/hoken-yakkan-kaishaku/

第8 出典

①e-Gov法令検索「消費者契約法(平成12年法律第61号)」
https://laws.e-gov.go.jp/law/412AC0000000061

②消費者庁「消費者契約法」
https://www.caa.go.jp/policies/policy/consumer_system/consumer_contract_act/

③最高裁判所「裁判例検索」
https://www.courts.go.jp/hanrei/search1/index.html

④最高裁令和7年12月23日第三小法廷判決(令和6年(受)第204号)
https://www.courts.go.jp/hanrei/95265/detail2/index.html

⑤最高裁令和4年12月12日第一小法廷判決(令和3年(受)第987号)
https://www.courts.go.jp/hanrei/91599/detail2/index.html

⑥最高裁平成29年1月24日第三小法廷判決(平成28年(受)第1050号)
https://www.courts.go.jp/hanrei/86454/detail2/index.html

⑦最高裁令和6年3月12日第三小法廷判決(令和4年(受)第1041号)
https://www.courts.go.jp/hanrei/92808/detail2/index.html

⑧消費者庁消費者制度課編『逐条解説 消費者契約法』第3版(商事法務,2018年)244頁~270頁,304頁~312頁