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相続財産清算人と破産管財人の違い――地位,権限,弁済・配当,報酬及び免責の比較(AI作成)

第1 この記事が扱う対象

1 問題の所在

相続人のあることが明らかでない相続財産と,債務者一般の財産とは,いずれも財産の清算を担う機関を裁判所が選任するという点で共通する。前者は家庭裁判所が選任する相続財産清算人(民法951条及び952条)が担い,後者は地方裁判所が選任する破産管財人(破産法)が担う。両者は選任の根拠法が異なるだけでなく,法的地位,管理処分権限の範囲,債権確定・弁済の方法,報酬の決定手続及び免責制度の有無という点でも制度設計が大きく異なる。本記事は,民法及び破産法の条文並びに公表された裁判例を確認した上で,相続財産清算人と破産管財人の制度上の違いを整理するものである。生成AIを用いて条文の原典及び裁判例を照合して構成した。

相続財産に関する管理人には,相続財産清算人のほかにも,民法897条の2の相続財産管理人,不在者財産管理人,遺産分割中の財産管理者及び特別代理人という,似た名称の複数の制度が併存している。これらの選び方及び相互の違いについては,「相続財産清算人,相続財産管理人及び不在者財産管理人の違いと代位による相続登記」で整理しており,本記事では立ち入らない。本記事は,相続人のあることが明らかでない場合に選任される相続財産清算人(民法952条)を対象とし,これを破産管財人と比較する。

2 破産管財人の選任及び報酬の基本と,相続財産清算人が破産手続に移行する場面は別稿に譲ること

破産管財人の選任基準及び報酬の決定要素の詳細は,「破産管財人の選任基準と報酬の決まり方」で整理している。また,相続財産清算人が選任されている事件が相続財産の破産(破産法222条以下)に移行する場面,すなわち個人の破産事件の係属中に破産者が死亡した場合の取扱いについては,「破産者が死亡した場合の破産手続と免責手続」で詳細に整理している。本記事は,これらと重複する説明を避け,相続財産清算人と破産管財人という二つの制度そのものの違いに絞って記述する。

第2 両制度の基本的な位置付け

1 根拠規定と選任機関

相続財産清算人は,相続人のあることが明らかでないときに,利害関係人又は検察官の請求によって家庭裁判所が選任する(民法951条及び952条1項)。これに対し,破産管財人は,破産手続開始の決定があった場合に,裁判所が選任する(破産法2条12項及び78条1項)。破産事件の管轄は地方裁判所であるから(同法5条),破産管財人を選任するのは地方裁判所である。相続財産清算人は家庭裁判所,破産管財人は地方裁判所という選任機関の違いは,前者が相続法及び家事事件手続の枠組みに属し,後者が倒産法の枠組みに属することの帰結である。

2 法的地位の違い

相続人のあることが明らかでない場合,権利義務の帰属主体は,相続財産清算人個人ではなく,民法951条により法人とされた相続財産(相続財産法人)である。相続財産清算人は,この相続財産法人の代表者として管理・清算に当たる。これに対し,破産管財人は,破産財団に属する財産の管理及び処分をする権利そのものが専属する者である(破産法2条12項及び78条1項)。破産者自身は,破産手続開始の決定によってこの管理処分権を失う。

破産管財人の法的地位については,担保価値保存義務との関係で最高裁判所の判断が示されている。最高裁判所第一小法廷平成18年12月21日判決(平成17年(受)第276号,損害賠償請求事件,民集60巻10号3964頁)は,破産管財人が破産者の締結していた建物賃貸借契約を合意解除した際に賃貸人との間で開始決定後の未払賃料等に敷金を充当する旨の合意をし,質権の設定された敷金返還請求権の発生を阻害した事案について,当時破産財団に賃料等を支払うのに十分な銀行預金が存在しており現実に支払うことに支障がなかったなどの事情の下では,担保価値を維持すべき義務に違反すると判断した。この判断は,破産管財人が破産財団に属する財産の管理処分権者として,個別の担保権者との関係でも独自の注意義務を負う立場にあることを示している。相続財産清算人について,これに対応する義務の内容を正面から論じた公表裁判例は,本記事の調査の範囲では見当たらなかった。

第3 管理処分権限の範囲

1 相続財産清算人の権限

民法953条は,不在者の財産の管理人に関する民法27条から29条までの規定を,相続財産清算人について準用する。このうち28条は,「管理人は,第百三条に規定する権限を超える行為を必要とするときは,家庭裁判所の許可を得て,その行為をすることができる」と定める。同法103条は,権限の定めのない代理人がすることのできる行為を,保存行為並びに物又は権利の性質を変えない範囲内での利用又は改良を目的とする行為に限っている。したがって,相続財産清算人の権限は,保存行為及び利用・改良行為が原則であり,これを超える行為,例えば不動産の売却,訴えの提起又は権利の放棄をするには,家庭裁判所の許可(権限外行為許可)を得なければならない。この許可を得ずにした権限外の行為は,代理権の範囲を超えた行為として,民法113条1項の無権代理の規律に服することになる。

2 破産管財人の権限

これに対し,破産法78条1項は,破産財団に属する財産の管理及び処分をする権利が破産管財人に専属すると定める。相続財産清算人が個別の許可を得て初めて処分権限を持つ構成であるのに対し,破産管財人は当初から包括的な管理処分権を有している。もっとも,この権限にも一定の制約がある。同条2項は,不動産に関する物権の任意売却,営業又は事業の譲渡,訴えの提起,権利の放棄など15類型の行為について,裁判所の許可を要すると定める。このうち第七号から第十四号までの行為,すなわち動産の任意売却,債権又は有価証券の譲渡,双方未履行契約の履行請求,訴えの提起,和解,権利の放棄,財団債権等の承認及び別除権の目的財産の受戻しについては,最高裁判所規則で定める額以下の価額のものであれば許可を要しない(同条3項1号)。許可を得ないでした行為は無効であるが,善意の第三者に対しては対抗することができない(同条5項)。

3 権限外行為許可の基準となる金額の違い

権限外行為許可の要否を分ける金額の基準は,両制度で大きく異なる。破産管財人については,前記のとおり最高裁判所規則で定める額を基準とし,実務上は100万円が目安として扱われている。相続財産清算人については,このような全国一律の金額基準を定めた法令の規定はなく,各家庭裁判所の運用に委ねられている。したがって,相続財産清算人が権限外行為許可の要否に迷う場合には,選任した家庭裁判所に確認するのが確実である。破産管財人の権限については,前記「破産管財人の選任基準と報酬の決まり方」でも触れていないため,別稿を改めて整理する余地がある。

第4 破産手続に特有で相続財産清算手続に存在しない制度

破産法には,相続財産清算手続の根拠となる民法951条から959条まで及び953条が準用する27条から29条までには対応規定のない制度が複数置かれている。以下の3点は,いずれも相続財産清算人の権限を定める民法の規定には現れない。

1 双方未履行双務契約の処理

破産法53条1項は,破産者の相手方との間の双務契約について,破産者及び相手方の双方がまだ履行を終えていないときは,破産管財人が契約の解除をするか,破産者の債務を履行して相手方の債務の履行を請求するかを選択することができると定める。この選択権は,破産手続に特有の制度であり,相続財産清算人にはこれに相当する明文の権限は与えられていない。相続財産清算人が被相続人の締結した契約の帰趨を処理する場合には,個別の権限外行為許可の枠組みで対応することになる。

2 相殺の禁止

破産法71条及び72条は,一定の時期以後に生じた債務負担又は債権取得を理由とする相殺を禁止する。例えば,同法71条1項1号は,破産債権者が破産手続開始後に破産財団に対して債務を負担した場合の相殺を,善意悪意を問わず一律に禁止している。これは,破産手続開始後に生じた事情を利用して他の債権者に優先して満足を得ることを防ぐための強行規定である。相続財産清算手続には,これに相当する明文の相殺禁止規定はない。相続財産清算人が相続債権者からの相殺の主張に直面した場合,民法957条2項が準用する928条の弁済拒絶権によって対応することになるが,破産法71条及び72条のような包括的な禁止規定ではない。

3 否認権

破産法160条は,破産者が破産債権者を害することを知ってした行為を,破産手続開始後,破産財団のために否認することができると定める。同法162条は,支払不能になった後の既存債務についての担保の供与又は債務の消滅に関する行為についても,債権者の悪意を要件として否認の対象とする。相続財産清算手続には,これに対応する否認権の制度がない。相続財産清算人が清算の過程で不当に財産を減少させる行為をしても,清算手続そのものの枠内でこれを取り消す手段は用意されていない。

もっとも,相続財産清算人が管理する相続財産について破産法上の相続財産の破産(同法222条以下)が開始された場合には,話が別になる。同法234条は,「相続財産について破産手続開始の決定があった場合における第六章第二節の規定の適用については,被相続人,相続人,相続財産の管理人,相続財産の清算人又は遺言執行者が相続財産に関してした行為は,破産者がした行為とみなす」と定めており,相続財産清算人が管理処分権に基づいてした行為も,否認権の対象となり得る。この場面の詳細は,前記「破産者が死亡した場合の破産手続と免責手続」を参照されたい。

第5 債権の確定と弁済・配当の方法

1 相続財産清算手続における請求申出の催告と弁済

相続財産清算人が選任され,家庭裁判所が相続人捜索の公告をしたときは,清算人は,全ての相続債権者及び受遺者に対し,2箇月以上の期間を定めて,その期間内に請求の申出をすべき旨を公告しなければならない(民法957条1項)。この請求申出の期間は,家庭裁判所が定めた相続人捜索の公告期間内に満了するものでなければならない。同条2項は,民法927条2項から4項まで及び928条から935条までの規定を準用しており,清算人は,優先権を有する債権者に対する弁済を拒むことができない一方,一般の債権者に対しては,請求申出の期間が満了した後でなければ弁済をすることができない。

相続財産が全ての債務を弁済するに足りない場合,相続財産清算人は,各債権者の債権額の割合に応じて弁済(按分弁済)をすることになるが,破産手続のように裁判所の決定によって配当を実施する制度ではない。清算人が按分弁済を実施するに当たっては,個々の債権者との関係を整理し,実務上は債権者の同意を得た上で弁済を進める取扱いがされている。

2 破産手続における債権届出・調査・確定と配当

これに対し,破産手続には,破産債権の届出,調査及び確定という一連の手続が制度化されている。破産債権者は,裁判所が定めた期間内に債権を届け出て(破産法111条),破産管財人がこれを認めるか否かを判断する(同法117条以下)。異議のない債権は確定し,破産債権者表の記載は,破産者を含む関係者との間で確定判決と同一の効力を有する(同法124条3項)。異議のある債権については,破産債権査定の申立てという裁判所の関与する手続によって確定される(同法125条)。

配当は,この確定手続を経た破産債権について実施される。破産法194条1項は,配当の順位を,優先的破産債権,一般の破産債権,劣後的破産債権及び約定劣後破産債権の順に定め,同一順位の債権については債権額の割合に応じて配当をすると定める(同条2項)。この配当は,破産債権者の個別の同意を要件とせず,裁判所が定める手続に従って実施される。相続財産清算手続における按分弁済が実務上債権者の同意を前提として進められるのに対し,破産手続における配当は法定の順位及び手続に従って実施されるという点で,両者は異なる。

第6 報酬の決定方法の違い

1 相続財産清算人の報酬

民法953条が準用する29条2項は,「家庭裁判所は,管理人と不在者との関係その他の事情により,不在者の財産の中から,相当な報酬を管理人に与えることができる」と定める。相続財産清算人の報酬は,この規定に基づき,清算人からの申立てを受けて家庭裁判所が審判で定める。

2 破産管財人の報酬

破産法87条1項は,「破産管財人は,費用の前払及び裁判所が定める報酬を受けることができる」と定める。破産管財人の報酬についても,裁判所が審判類似の決定によって定める点は相続財産清算人と共通する。もっとも,同条2項は,「前項の規定による決定に対しては,即時抗告をすることができる」と明文で定めている。報酬額の決定要素及び地方裁判所ごとの運用の違いについては,前記「破産管財人の選任基準と報酬の決まり方」で整理している。

3 報酬決定に対する不服申立ての可否という違い

家事事件手続法85条1項は,「審判に対しては,特別の定めがある場合に限り,即時抗告をすることができる」と定める。破産法87条2項のように報酬決定に対する即時抗告を明文で認める規定は,相続財産清算人の報酬付与審判については見当たらない。したがって,家事事件手続法85条1項の原則に従う限り,相続財産清算人に対する報酬付与の審判については,即時抗告をすることができないと解される。破産管財人の報酬決定には明文で即時抗告が認められているのに対し,相続財産清算人の報酬付与審判にはこれに相当する規定が見当たらないという違いは,両制度の不服申立ての構造の違いを示している。

第7 免責制度の射程

1 破産法248条の「個人である債務者」

破産法248条1項は,免責許可の申立てをすることができる者を,「個人である債務者(破産手続開始の決定後にあっては,破産者。)」と定める。免責は,破産手続によって弁済されなかった破産債権について,破産者が引き続き負う責任を免れさせる制度であり,個人(自然人)の経済生活の再生を目的とする。したがって,法人が免責を受けることは制度上想定されていない。

2 相続財産清算手続に免責という概念がないこと

相続財産清算人が管理する相続財産法人は,自然人ではない。相続財産清算手続は,清算後に残余財産があれば特別縁故者への分与(民法958条の2)を経て,なお残った財産を国庫に帰属させる(同法959条)ことによって終了するのであり,「免責」という概念そのものが登場しない。相続財産清算人が相続財産の破産(破産法222条以下)を申し立てた場合についても,破産者と扱われるのは相続財産自体であって自然人ではないため,免責という制度の適用を観念する余地に乏しい。この場面における相続人の免責申立ての可否をめぐる議論及び高松高等裁判所平成8年5月15日決定の判断については,前記「破産者が死亡した場合の破産手続と免責手続」で詳細に扱っているため,本記事では立ち入らない。

第8 両制度の交わる場面――相続財産の破産

相続財産清算人と破産管財人は,別々の法律に根拠を持つ別個の制度であるが,破産法第10章「相続財産の破産等に関する特則」(222条から244条まで)によって,相続財産が債務超過である場合には両者が接続する場面が用意されている。

破産法224条1項は,相続財産についての破産手続開始の申立権者として,相続債権者及び受遺者のほか,「相続人,相続財産の管理人,相続財産の清算人又は遺言執行者」を挙げている。相続財産清算人自身が,管理する相続財産について破産手続開始の申立てをすることができる。破産手続開始の原因は,相続財産をもって相続債権者及び受遺者に対する債務を完済することができないと認めるとき(債務超過)であり(同法223条),支払不能は要件とされていない。

もっとも,相続財産清算人が選任されている事件が実際に相続財産の破産へ移行した場合の具体的な手続,相続財産清算人の任務がどのように扱われるか,及び相続人が固有財産で負う責任と熟慮期間との関係については,本記事では詳細に立ち入らない。これらの論点は,前記「破産者が死亡した場合の破産手続と免責手続」で,破産法226条及び227条の規定並びに関連する公表裁判例を含めて整理済みである。

第9 制度の沿革

1 令和3年改正による名称変更

相続財産清算人は,令和3年法律第24号による民法の改正前は「相続財産管理人」と呼ばれていた。この改正は令和5年4月1日に施行され,相続人捜索の公告手続が一本化されるなどの変更もされている。この改正によって,民法897条の2に基づく別の相続財産管理人(相続財産の保存を目的とする制度)も新設されたため,現行法上は「相続財産の管理人」(民法897条の2)と「相続財産の清算人」(同法952条以下,旧「相続財産管理人」)とが並存することになった。破産法224条1項,230条1項及び234条も,この改正に伴って「相続財産の清算人」を独立の類型として明記するよう改められている。

2 国会審議における言及の有無

国会会議録検索システムを用いて,前記の令和3年改正を審議した第204回国会の衆議院及び参議院の各法務委員会の会議録を確認したが,「相続財産管理人」から「相続財産清算人」への名称変更の理由,相続人捜索の公告手続を一本化した趣旨,又は相続財産清算人制度と破産管財人制度との役割分担について,これらを正面から述べた政府答弁又は委員の発言は見当たらなかった。国会審議では,同じ改正の一部である所有者不明土地管理制度の必要性を説明する文脈で,従来の相続財産管理人及び不在者財産管理人について,管理の対象となる財産の範囲が広く,申立人や管理人の調査の負担及び予納金が大きくなりやすいという問題点が指摘されている(参議院法務委員会第9号,令和3年4月20日,豊田俊郎委員及び小出邦夫法務省民事局長の各発言)。名称変更及び公告一本化そのものの立法趣旨は,国会審議の会議録の範囲では確認することができなかった。

出典・参考資料

1 法令

民法(明治29年法律第89号)27条・28条・29条・103条・113条・897条の2・927条・928条~935条・951条・952条・953条・957条・958条の2・959条(e-Gov法令検索)
破産法(平成16年法律第75号)2条・5条・53条・71条・72条・78条・87条・111条・117条・124条・125条・160条・162条・194条・222条・223条・224条・226条・227条・230条・234条・248条(e-Gov法令検索)
家事事件手続法(平成23年法律第52号)85条(e-Gov法令検索)

2 裁判例

最高裁判所第一小法廷平成18年12月21日判決(平成17年(受)第276号,損害賠償請求事件,民集60巻10号3964頁,裁判所ウェブサイト)

3 国会会議録

参議院法務委員会第9号(令和3年4月20日,国立国会図書館国会会議録検索システム)