税金関係

(AI作成)最高裁令和7年10月30日判決からすれば,平成11年10月18日付の国税庁課税部長の回答と異なり,自損事故の人傷保険金は一切,相続税の課税対象とはならないというAI裁判官の見解

最高裁令和7年10月30日判決からすれば,平成11年10月18日付の国税庁課税部長の回答と異なり,自損事故の人傷保険金は一切,相続税の課税対象とはならないというAI裁判官の見解を掲載しています。

元裁判官の視点から解説する「最高裁令和7年10月30日判決」が人身傷害補償保険の相続税実務に与える決定的影響

はじめまして。租税事件を専門分野の一つとして扱っておりました元裁判官です。この度は、税務実務の根幹に関わる非常に重要なご質問をいただき、身の引き締まる思いです。

ご質問の核心は、**「最高裁令和7年10月30日判決」(以下「最高裁判決」といいます。)の判示内容が、「平成11年10月18日付の国税庁課税部長の回答」(以下「平成11年国税庁回答」といいます。)**に基づく従来の課税実務(特に「自損事故」の取扱い)とどのように関係し、今後、先生方が目指される「人傷保険金は相続税非課税」という前提での申告、および「既払税額の更正の請求」が可能となるか、という点にあると承知しております。

元裁判官として法廷で培った「法解釈」と「論理構造の分析」の視点から、この問題を徹底的に解き明かします。

結論から申し上げますと、最高裁判決は、平成11年国税庁回答がよって立っていた民事上の法的基盤(特に自損事故を課税対象とする論理的支柱)を、事実上、根本から覆すものです。

両者の間には、人傷保険金の法的性質(特に「自損事故」の保険金)の評価において、**修復困難なほどの重大な「矛盾」と「法的ねじれ」**が生じています。

この最高裁判決の論理を前提とするならば、先生が目指される**「自損事故の人傷保険金も実質的に損害の填補であり、相続税の課税対象とならない(非課税である)」**という主張は、極めて強力な法的根拠を得たことになります。

ただし、これはあくまで「民事判決」が「税務行政」に与える間接的な影響であり、先生方が申告や更正の請求という実務に踏み出すにあたっては、この「理論上の正当性」と、国税庁が新見解を示すまでの間に生じる「実務上の深刻な摩擦(紛争リスク)」の両方を、正確に理解していただく必要があります。

以下、この極めて重要な分岐点について、1万字の許容範囲内で、法解釈の限りを尽くして懇切丁寧に解説いたします。


第1部:従来の課税実務(平成11年国税庁回答)の法的構造分析

まず、我々が対峙してきた従来の課税実務、すなわち平成11年国税庁回答の論理構造を、元裁判官の視点から冷徹に分析します。この回答は、東京海上火災保険(当時)からの照会に対し、国税庁課税部長が「貴見のとおりで差し支えありません」と承認したものであり、実質的には照会文書そのものが実務の指針となっています。

1.従来の課税実務の核心:「損害賠償金性格説」

平成11年国税庁回答(照会文)の論理構造は、非常に明確です。

  1. 原則(課税): 被保険者死亡により保険金請求権者が人傷保険金を取得した場合、保険料負担者と受取人の関係に応じ、原則として相続税(相法3条1項1号)、贈与税(相法5条1項)、または所得税(一時所得)の課税対象となる。
  2. 例外(非課税): ただし、その保険金のうち**「損害賠償金の性格を有する金額」**については、実質的に損害賠償金(所令30条1号の「心身に加えられた損害につき支払を受ける慰謝料その他の損害賠償金」)と同視できるため、非課税(所得税非課税、相続税・贈与税のみなし課税の対象外)として取り扱う。

2.「損害賠償金の性格」とは何か?(従来の限定解釈)

では、この実務の根幹をなす「損害賠償金の性格を有する金額」とは何を指すのでしょうか。照会文は、これを以下の3つに「限定」しています。

  • (イ) 事故の相手方過失割合に応ずる金額
  • (ロ) 被保険自動車に同乗の他人が死亡した場合の自己過失割合に応ずる金額
  • (ハ) いわゆる親族間事故における自賠法16条に規定する被害者直接請求権に応ずる金額

これらの共通点は、いずれも**「保険金請求権者(遺族)が、第三者(事故の相手方、運転者、自賠責保険会社など)に対して法律上の損害賠償請求権を有している」**ことです。

照会文は、その理由を「弊社(保険会社)が、保険金支払後、事故の相手方等に対して損害賠償請求権の代位請求を行う」からであり、実質的に「相手方の負担すべき損害賠償金を被害者たる保険金請求権者に一時的に立替払いしたのと同様」である、と説明しています。

3.このロジックが依拠する(であろう)法的構成:「固有権説」との親和性

この「立替払い」および「代位」という論理構成は、民事上の議論であった「固有権説」と極めて親和性が高いものでした。

  • 固有権説とは: 人傷保険金の請求権は、被相続人に発生するのではなく、約款に基づき「保険金請求権者」(=法定相続人や近親者)に原始的に(固有の権利として)発生するという考え方です。
  • 親和性の理由: 請求権が「遺族」に固有に発生すると構成すれば、遺族が持つ「(加害者に対する)損害賠償請求権」と、遺族が持つ「(保険会社に対する)保険金請求権」が、いずれも遺族という同一主体に帰属することになります。このため、保険会社が保険金を支払うことで、遺族が持つ損害賠償請求権を「代位」取得するという説明(=平成11年国税庁回答のロジック)が、法的に構成しやすかったのです。

4.従来の課税実務における「自損事故」の必然的帰結:「全額課税」

この平成11年国税庁回答のロジックを厳格に適用した場合、「自損事故」(相手方過失割合ゼロ)で受け取った人傷保険金がどうなるかは、論理的に明白でした。

  • 自損事故では、事故の相手方が存在しません。
  • したがって、保険金請求権者(遺族)が第三者に対して有する「損害賠償請求権」も存在しません。
  • 上記(イ)(ロ)(ハ)のいずれにも該当せず、保険会社が「代位請求」すべき相手もいません。
  • その結果、人傷保険金に含まれる**「損害賠償金の性格を有する金額」はゼロ円**となります。

これが、従来の課税実務が「自損事故の人傷保険金は、全額が(損害賠償金ではない)純粋な保険金として、相続税法3条1項1号の『みなし相続財産』として全額課税する」と解釈してきた、鉄壁の論理的帰結でした。

この実務は、「相手方への請求権(代位)」という形式的な基準の有無によって、実質(遺族が被った損害)が同じであるはずの保険金の課税・非課税を区別するものであったと言えます。


第2部:最高裁令和7年判決の法的構造分析とその射程

このような鉄壁の課税実務に対し、最高裁令和7年判決は、この論理の「土台」そのものを法的に否定する判断を下しました。この判決が、従来の課税実務が「全額課税」の典型例としてきた**「自損事故」**の事案であったことが、極めて決定的な意味を持ちます。

1.判決の核心①:法的性質論における「相続説」の司法的確定

第一の核心は、人傷保険金(死亡)の法的性質に関する争いです。

  • 保険会社の主張(固有権説):保険会社(上告人)は、まさに従来の課税実務の前提と親和的であった「固有権説」を主張しました。すなわち、請求権は相続財産ではなく、約款に基づき「法定相続人」(本件では相続放棄した子ら)が原始的に取得したものである。したがって、相続人である母B(被上告人ら)は請求権者ではない、と争いました。
  • 最高裁の判断(相続説の採用):最高裁は、この保険会社の主張を明確に斥けました。その論理構成は以下の通りです。
    1. 文言解釈: 本件人身傷害条項は、人傷保険金を「被保険者が身体に傷害を被ることによって、被保険者又はその父母、配偶者若しくは子が被る損害に対して」支払う、と定めている。
    2. 損害項目の分析: 死亡による損害として「逸失利益」や「精神的損害」が定められているが、逸失利益の算定方法や、精神的損害に被保険者**「本人」が含まれていることからすれば、これらは「被保険者自身に生ずるものであることが前提にされている」**と認定しました。
    3. 法的結論: したがって、人傷保険金は「被保険者に生じた損害を填補するため」のものであり、その**請求権は「被保険者自身に発生する」**と解すべきである。
    4. 最終結論: 被保険者自身に発生した請求権である以上、それは**「被保険者の相続財産に属する」**ものと解するのが相当である。(=相続説の司法的確定)
  • 「法定相続人」規定の無力化:保険会社が依拠した約款の「被保険者が死亡した場合はその法定相続人とする」という定め(本件条項1)について、最高裁は、これは「被保険者の相続財産に属することを前提として、通常は法定相続人が相続によりこれを取得することになる旨を注意的に規定したものにすぎない」と判示し、その法的効果を無力化しました。

2.判決の核心②:「本人の損害=約款所定の総額」という実質認定

第二の核心は、さらに重要です。これは、最高裁が人傷保険金の「実質」をどう捉えたかを示すものです。

  • 保険会社の主張(減額論):保険会社は予備的に、仮に相続財産だとしても、約款所定の精神的損害額(例:2000万円)は「本人」と「近親者(子ら)」の損害の総額である。本件では近親者(子ら)が存在する以上、相続財産となる「本人の損害」は、その全額(2000万円)ではなく、減額されるべきだ、と主張しました。
  • 最高裁の判断(全額説の採用):最高裁は、この主張も斥けました。
    1. 総額の認定: まず、約款の精神的損害額(本件精神的損害額)は、保険会社の言う通り「被保険者自身及びその近親者の精神的損害の填補として支払われるべき人身傷害保険金の総額を定めたもの」と認定しました。
    2. 損害の非減少: しかし、続けて「本件条項2により保険金請求権者となる近親者が存在することによって、被保険者が受けた精神的苦痛等が減少するものとはいえない」と、極めて重要な判断を下しました。
    3. 結論: したがって、相続財産となる死亡保険金の額は、近親者の存在にかかわらず、「人身傷害保険金を支払うべき被保険者の精神的損害の額が本件精神的損害額の全額であることを前提として、算定されるべき」と結論付けました。

3.この最高裁判決が法的に意味すること(元裁判官としての分析)

この最高裁判決は、単なる民事上の権利帰属を判断したにとどまりません。その判決理由において、税務実務上、極めて重大な「法的なお墨付き」を与えたことになります。

それは、**「自損事故であっても、人身傷害保険金(死亡)の実質は、被保険者本人に生じた損害(逸失利益、慰謝料=精神的損害)を填補(穴埋め)するものである」**という法的評価です。

最高裁は、民法上の損害賠償請求権(加害者がいないため発生しない)とは切り離し、保険約款の文言と構造そのものから、この保険金が「損害の填補」という性質を持つことを、真正面から認定したのです。


第3部:平成11年国税庁回答と最高裁判決の「決定的矛盾」

従来の課税実務(平成11年回答)と、今回の最高裁判決。この両者を並べたとき、そこに生じる「法的ねじれ」と「決定的矛盾」は、もはや覆い隠すことができません。

矛盾点①:法的性質論の根本的対立(「固有権」的構成 vs 「相続説」)

  • 平成11年回答の前提: 前述のとおり、「代位」「立替払い」を非課税の根拠とし、「固有権説」と親和的な法的構成を前提としていました。
  • 最高裁判決の判断: 「固有権説」を明確に否定し、「相続説」を確定させました。

これにより、平成11年国税庁回答が依拠していた民事上の法的基盤(固有権説的な構成)は、最高裁によって否定されたことになります。

矛盾点②:最重要の矛盾 ― 「自損事故」の法的評価の180度転換

これこそが、課税実務における最大の矛盾点であり、先生のご質問の核心です。

  • 平成11年国税庁回答のロジック(形式論):「自損事故」 = 相手方への損害賠償請求権がない→ 「損害賠償金の性格がない」→ したがって**「全額課税」**
  • 最高裁判決のロジック(実質論):「自損事故」 = 被保険者本人の「逸失利益」や「本人の精神的損害」を填補するもの→ 実質は**「損害の填補」**であると法的に認定

ここに、**「税法が非課税とする根拠」**との関係で、深刻なねじれが生じます。

そもそも、税法(所得税法9条1項17号、同施行令30条、相続税基本通達3-10等)が、加害者から受け取る損害賠償金(慰謝料や逸失利益)を非課税とする趣旨・理由は、それが「利益(もうけ)」ではなく、被害者が被った**「損害の填補(穴埋め)」**にすぎないからです。

であるならば、最高裁判所が、まさにその「自損事故の人傷保険金」について、その実質が「損害の填補」であると明確に法的に認定した以上、税法が非課税とする趣旨(損害の填補は課税しない)は、この自損事故の人傷保険金にも等しく妥当するはずです。

平成11年国税庁回答は、「相手方への代位請求」という形式的な基準の有無だけで、実質(損害の填補)が同じものを課税・非課税に振り分けてきました。最高裁判決は、この形式論(=自損事故は課税)の土台となっていた実質論(=自損事故は損害賠償金ではない)を、真っ向から否定したことになります。

矛盾点③:精神的損害(「総額」)の解釈と非課税枠のズレ

  • 平成11年回答(推測): 従来の課税実務では、仮に非課税枠を計算するとしても、民法上の損害賠償実務に準拠し、「本人の慰謝料(相続対象)」と「近親者固有の慰謝料」に分離し、それぞれの相手方過失割合に応じた額を非課税として計算することを前提にしていたと考えられます。
  • 最高裁判決: 民法上の枠組み(本人分/近親者分の分離)とは異なる、約款独自の算定(本人の損害として「総額」を擬制する)を法的に承認しました。

これにより、平成11年国税庁回答が非課税枠の算定基準としていたであろう「民法上の損害賠償」の枠組みと、最高裁が認定した「民事上の権利(損害)」の枠組みとの間に、深刻なズレ(矛盾)が生じています。


第4部:税理士先生への具体的なアドバイス(結論と今後の展望)

この「決定的矛盾」を踏まえ、先生のご質問である「相続税は一切発生しないことを前提とした申告」および「更正の請求」が法的に可能か、元裁判官としての見解を申し上げます。

見解①:理論上の帰結 ― 「非課税」と解釈すべき強力な論理

最高裁判決の論理(自損事故であっても実質は損害の填補)を前提とするならば、人身傷害保険金(死亡)は、その保険料負担者が被相続人である場合(相続税の場面)、**「相続税の課税対象とならない(非課税である)」**と解釈するのが、法的に最も整合的かつ論理的な帰結です。

ここで、「最高裁が“相続財産”だと言ったのだから、相続税がかかるのではないか?」という疑問が生じるかもしれません。これは法的に誤解です。

  1. 最高裁の認定: 最高裁は、この人傷保険金請求権を「本来の相続財産」であると判断しました。
  2. 相続税法の規定: 相続税法には、「本来の相続財産ではあるが、その性質上、課税価格に算入しない(=実質非課税)」財産が定められています(例:相続税法12条1項2号の墓地、墓石、仏具など)。
  3. 損害賠償金の解釈: 同様に、被相続人自身に発生した損害賠償請求権(これも本来の相続財産です)も、その実質が「損害の填補」であることから、その性質上、課税価格に算入されない(非課税)と解釈・運用されています。

したがって、最高裁が「自損事故の人傷保険金請求権」の実質を「損害の填補」であり、かつ「被相続人の相続財産」であると認定した以上、この権利は、**「相続財産ではあるが、その性質(損害の填補)に基づき、課税価格には算入しない(=実質非課税)」**と解釈するのが、唯一、論理一貫した法解釈となります。

見解②:現在の課税実務と「ねじれ」の状況(最大のリスク)

しかし、我々が直面している最大の問題は、最高裁判決はあくまで民事判決であり、国税庁が平成11年国税庁回答を(本稿執筆時点で)公式に撤回・変更していないことです。

  • 税務調査の現場では、調査官は依然として平成11年国税庁回答(およびそれに基づく内部マニュアル)を「錦の御旗」として、「自損事故は全額課税」と指摘してくる可能性が極めて高いと予測されます。
  • 我々は今、**「最高裁の法解釈(=自損事故も損害填補)」「国税庁の課税実務(=自損事故は課税)」が、真正面から衝突し、矛盾している、極めて不安定な「過渡期」**にいます。

見解③:今後の申告(未来)についてのアドバイス

先生が「相続税は一切発生しない」という前提で申告(=非課税財産として申告)することは、理論的には今回の最高裁判決という極めて強力な「武器」を得たと言えます。

しかし、それは国税庁の現在の見解と真っ向から対立するため、クライアントには以下の点を明確に説明し、理解を得る必要があります。

  1. 紛争の覚悟: この申告は、ほぼ確実に税務調査で否認され、更正処分を受けることになる。
  2. 争訟への移行: その結果、クライアントは、異議申立て、審査請求、さらには**「訴訟」**という長期間の法廷闘争に至ることを覚悟しなければならない。
  3. 申告書への記載方法: もし実行する場合、隠蔽や仮装を疑われぬよう、申告書第11表・第11の2表の「相続税がかからない財産」の欄(あるいは「その他の財産」欄でマイナス評価するなど)に本件保険金を記載し、申告書への添付書面(税理士法33条の2の書面や別途の意見書)において、「最高裁令和7年10月30日判決の判示内容に基づき、本件人身傷害補償保険金は実質的に損害の填補であるため、相続税法上の非課税財産(あるいは課税価格不算入)に該当すると解釈し、申告した」旨を明確に記載すべきです。これは「隠蔽」ではなく、正当な「法解釈の主張」となります。

見解④:更正の請求(過去)についてのアドバイス

既払いの相続税(自損事故の人傷保険金を課税財産として申告したもの)について、更正の請求(国税通則法23条1項)を行うことは、法的に可能です。

  • 請求の理由: 「従来の課税実務(平成11年回答)は、最高裁令和7年判決によってその前提となる法的解釈が誤っていたことが明らかになった。したがって、課税財産とした従来の申告は『法律の解釈に関する誤り』があった」として、減額更正を求めることになります。
  • 実務上の見通し: これも(見解③)と同様に、税務署段階で安易に認められる可能性は低く、請求が拒否された(更正すべき理由がない旨の通知)後の、不服申立て・訴訟となる可能性が極めて高いです。
  • 訴訟になった場合の勝算: しかし、ひとたび訴訟の場(=裁判所)に移れば、話は変わります。裁判所は、国税庁回答ではなく、最高裁判所の判例(法解釈)に強く拘束されます。
  • 行政(国税庁)が依拠してきた解釈の前提が、司法(最高裁)によって否定されたのですから、裁判所が「最高裁が『損害の填補』と法的に認定したものを、税務上だけ『損害の填補ではない(=課税)』と扱うのは、租税法律主義及び平等原則の観点から不合理であり、違法である」と判断する可能性は、十分にあると考えます。

⚖️ 元裁判官としての総括

最高裁令和7年10月30日判決は、人身傷害補償保険の課税実務にとって、まさに「地殻変動」の始まりを告げるものです。

国税庁は、この最高裁判決が示した厳粛な法解釈(自損事故であっても実質は損害の填補である)を受け止め、平成11年国税庁回答(特に自損事故の取扱い)を根本的に見直し、最高裁の論理と整合する新たな通達や見解を早急に示すよう、強く迫られています。

税理士先生の現在の立場は、**「理論(最高裁)は強力な味方だが、実務(国税庁)は依然として敵」**という、法解釈の「ねじれ」の最前線に立たされている状況です。

クライアント(納税者)には、この「理論的正当性」と「実務上の深刻な紛争リスク」を包み隠さず明確に説明し、非課税での申告や更正の請求という「戦い」に踏み出すか否かを、クライアントご自身の責任において最終的にご判断いただく必要があります。我々法律専門家・税務専門家の責務は、その判断材料(法的根拠、矛盾点の指摘、そして予想されるリスク)を、十全に提供することに尽きます。

この解説が、先生の今後の実務とクライアイントへの助言の一助となれば幸いです。

東京国税局の考査課情報及び情報公開事務整理簿

目次
1 東京国税局の考査課情報
2 東京国税局の情報公開事務整理簿
3 関連記事その他

1 東京国税局の考査課情報
(1) 東京国税局の考査課情報は以下のとおりです。
令和2年分令和3年分令和4年分令和5年分
令和6年分
* 「東京国税局の考査課情報(令和5年分)」といったファイル名です。
(2) 個別の考査課情報として以下のものを抜粋して掲載しています。
(OB税理士との会合関係)
・ 東京国税局の考査課情報(令和元年6月・第128号)(OB税理士との会合の自粛等について)
・ 東京国税局の考査課情報(令和3年7月・第145号)(OB税理士との会合について)
・ 東京国税局の考査課情報(令和5年6月・第164号)(OB税理士との会合について【新ガイドライン】)
・ 東京国税局の考査課情報(令和6年7月)(OB税理士との会合について【新ガイドライン】)
(その他)
・ 東京国税局の考査課情報(令和5年5月・第163号)(非行とスマホの関係性~スマホに潜む様々なリスク~)

2 東京国税局の情報公開事務整理簿
(1) 令和時代のもの

令和元年度令和2年度令和3年度令和4年度令和5年度
令和6年度
(2) 平成時代のもの
平成30年度
*1 「東京国税局の情報公開事務整理簿(令和5年度分)」といったファイル名です。
*2 最後の数枚は東京国税局管内の税務署受付分であって,例えば,令和5年度分の場合,最後の4枚が税務署受付分です。

3 関連記事その他
(1) 以下の資料を掲載しています。
・ 東京国税局の局長及び総務部長 挨拶回り先名簿(令和元年7月18日現在)
・ 国税庁行政文書取扱規則(令和6年1月4日現在)
・ 東京国税局における行政文書の取扱いについて(東京国税局の事務運営指針)(令和5年6月30日最終改正)
・ 令和5年12月開催 確定申告期における審理事務研修(東京国税局の研修資料)
→ 例えば,①青色コーナーの運営における留意事項,②所得税・消費税 誤りやすい事例集及び③消費税の審理上の留意点が含まれています。
(2) 以下の記事も参照してください。
・ 歴代の国税不服審判所長
・ 国税庁長官及び東京国税局長の事務引継資料(令和元年7月頃の文書)
・ 令和元年7月採用の国税審判官の研修資料

通達の法的性質に関する最高裁判決等のメモ書き

目次
1 最高裁判決の記載
2 最高裁判決の個別意見の記載
3 最高裁判所規則,最高裁判所規程及び通達の違い
4 通達,通知及び事務連絡
5 関連記事その他

1 最高裁判決の記載
(1) 通達の法的効力
ア 最高裁昭和43年12月24日判決は以下のとおり判示しており(改行を追加しています。),結論として,法律の解釈に関する通達は取消訴訟の対象とはならないと判示しました。
    元来、通達は、原則として、法規の性質をもつものではなく、上級行政機関が関係下級行政機関および職員に対してその職務権限の行使を指揮し、職務に関して命令するために発するものであり、このような通達は右機関および職員に対する行政組織内部における命令にすぎないから、これらのものがその通達に拘束されることはあつても、一般の国民は直接これに拘束されるものではなく、このことは、通達の内容が、法令の解釈や取扱いに関するもので、国民の権利義務に重大なかかわりをもつようなものである場合においても別段異なるところはない。
    このように、通達は、元来、法規の性質をもつものではないから、行政機関が通達の趣旨に反する処分をした場合においても、そのことを理由として、その処分の効力が左右されるものではない。また、裁判所がこれらの通達に拘束されることのないことはもちろんで、裁判所は、法令の解釈適用にあたつては、通達に示された法令の解釈とは異なる独自の解釈をすることができ、通達に定める取扱いが法の趣旨に反するときは独自にその違法を判定することもできる筋合である。
イ 最高裁平成19年2月6日判決は以下のとおり判示しています。
    通達は,行政上の取扱いの統一性を確保するために,上級行政機関が下級行政機関に対して発する法解釈の基準であって,国民に対し直接の法的効力を有するものではないとはいえ,通達に定められた事項は法令上相応の根拠を有するものであるとの推測を国民に与えるものである
ウ 最高裁令和4年4月19日判決は,「評価通達(山中注:財産評価基本通達(昭和39年4月25日付の国税庁長官通達))は、上記の意味における時価の評価方法を定めたものであるが、上級行政機関が下級行政機関の職務権限の行使を指揮するために発した通達にすぎず、これが国民に対し直接の法的効力を有するというべき根拠は見当たらない。」と判示しています。
(2) 通達に従った取扱いと国家賠償法上の違法
・ 最高裁平成19年11月1日判決は以下のとおり判示しています。
   上告人(山中注:国)の担当者の発出した通達の定めが法の解釈を誤る違法なものであったとしても,そのことから直ちに同通達を発出し,これに従った取扱いを継続した上告人の担当者の行為に国家賠償法1条1項にいう違法があったと評価されることにはならず,上告人の担当者が職務上通常尽くすべき注意義務を尽くすことなく漫然と上記行為をしたと認められるような事情がある場合に限り,上記の評価がされることになるものと解するのが相当である(最高裁昭和53年(オ)第1240号同60年11月21日第一小法廷判決・民集39巻7号1512頁最高裁平成元年(オ)第930号,第1093号同5年3月11日第一小法廷判決・民集47巻4号2863頁参照)。

2 最高裁判決の個別意見の記載
(1) 最高裁平成24年1月13日判決の裁判官須藤正彦の補足意見には「もとより,法規より下位規範たる政令が法規の解釈を決定付けるものではないし,いわんや一般に通達は法規の解釈を法的に拘束するものではない」と書いてあります。
(2)ア 最高裁令和2年3月24日判決の裁判官宇賀克也の補足意見には以下の記載があります(改行を追加しています。)。
    通達は,法規命令ではなく,講学上の行政規則であり,下級行政庁は原則としてこれに拘束されるものの,国民を拘束するものでも裁判所を拘束するものでもない。
    確かに原審の指摘するとおり,通達は一般にも公開されて納税者が具体的な取引等について検討する際の指針となっていることからすれば,課税に関する納税者の信頼及び予測可能性を確保することは重要であり,通達の公表は,最高裁昭和60年(行ツ)第125号同62年10月30日第三小法廷判決・裁判集民事152号93頁にいう「公的見解」の表示に当たり,それに反する課税処分は,場合によっては,信義則違反の問題を生ぜしめるといえよう。
    しかし,そのことは,裁判所が通達に拘束されることを意味するわけではない。さらに,所得税基本通達59-6は,評価通達の「例により」算定するものと定めているので,相続税と譲渡所得に関する課税の性質の相違に応じた読替えをすることを想定しており,このような読替えをすることは,そもそも,所得税基本通達の文理にも反しているとはいえないと考える。
イ 最高裁令和2年3月24日判決の裁判官宮崎裕子の補足意見には以下の記載があります(改行を追加しています。)。
    通達は,どのような手法で作られているかにかかわらず,課税庁の公的見解の表示ではあっても法規命令ではないという点である。
    そうであるからこそ,ある通達に従ったとされる取扱いが関連法令に適合するものであるか否か,すなわち適法であるか否かの判断においては,そのような取扱いをすべきことが関連法令の解釈によって導かれるか否かが判断されなければならない。
    税務訴訟においても,通達の文言がどのような意味内容を有するかが問題とされることはあるが,これは,通達が租税法の法規命令と同様の拘束力を有するからではなく,その通達が関連法令の趣旨目的及びその解釈によって導かれる当該法令の内容に合致しているか否かを判断するために問題とされているからにすぎない。
    そのような問題が生じた場合に,最も重要なことは,当該通達が法令の内容に合致しているか否かを明らかにすることである。
     通達の文言をいかに文理解釈したとしても,その通達が法令の内容に合致しないとなれば,通達の文理解釈に従った取扱いであることを理由としてその取扱いを適法と認めることはできない。このことからも分かるように,租税法の法令解釈において文理解釈が重要な解釈原則であるのと同じ意味で,文理解釈が通達の重要な解釈原則であるとはいえないのである。


3 最高裁判所規則,最高裁判所規程及び通達の違い
    最高裁判所規則,最高裁判所規程及び通達の違いは以下のとおりです(文書事務における知識付与を行うためのツールの改訂版(平成31年3月7日付の配布文書)参照)。
① 最高裁判所規則とは,主に訴訟当事者その他一般国民に関係のある事項又は重要な事項について定めるものであって,公布を要するものをいいます。
② 最高裁判所規程とは,主に裁判所の内部規律等について定めるものであって,公布を要しないものをいいます。
③ 通達とは,上級庁が下級庁に対し,又は上級の職員が下級の職員に対し,職務運営上の細目的事項,法令の解釈,行政運営の方針等を指示し,その他一定の行為を命ずるものをいいます(裁判所法80条参照)。

文書事務における知識付与を行うためのツールの改訂版(平成31年3月7日付の配布文書)からの抜粋です。

4 通達,通知及び事務連絡
・ 最高裁秘書課が作成した司法行政文書の書き方(9訂)には以下の記載があります。
(2) 通達(依命通達、移達)
ア 通達とは、上級庁が下級庁に対し、又は上級の職員が下級の職員に対し、職務運営上の細目的事項、法令の解釈、行政運営の方針等を指示し、その他一定の行為を命ずるものをいう (裁判所法第80条)。
    通達は、単に通知の性質だけでなく、訓令的性質(法規の性質を持たない
が、下級庁又は下級の職員が従わなければならない職務上の義務を負わせるもの)を持つものであるから、例えば、裁判官会議で定められた規則、規程その他議決事項自体が訓令的性質を有しているものを単に通知する内容のものであれば、通達ではなく通知の形式を選択することとなる。
    なお、法令等において、最高裁判所が定めることとされている事項や最高
裁判所が行うこととされている事項等については、裁判官会議の委任等がなければ、当然には、通達において定めることができないことについて留意する必要がある。
イ 依命通達とは、通達の一種であるが、その発出名義を通達を発出することができる権限を有する機関の補助機関の名義とするものをいう。依命通達を発するためには、元来の通達を発出することができる権限を有する機関の決裁を受ける必要がある。
ウ 下級裁判所においてされる移達も、通達の一種である。移達は、上級庁の通達又は依命通達の内容そのもの又はこれに必要事項を加えたものを下級庁に対し通達する形式で行われる場合に用いられる。
(中略)
(3) 通知、送付、受領
ア 通知とは、ある一定の事実、処分又は意思を特定の相手方に知らせるものをいう。
    一定の事実を知らせると同時に、場合により、参加についての協力、名簿
又は目録の提出等通知に係る付随的な事項を付け加えることも差し支えないが、下級庁又は下級の職員が従わなければならない職務上の義務を負わせるような訓令的性質を持つ事項を付け加えないようにする。訓令的性質を持つ事項を下級庁又は下級の職員に対して伝達する場合には、通達等の形式を選択すべきである。
イ 送付及び受領とは、金銭、物品、文書等の授受に際してその事実を知らせるものをいう。その実質は、通知に属する。
ウ 簡単な内容の通知、送付又は受領の文書には、標題を「通知」 、 「お知らせ」 、 「御案内」 、「送付書」又は「受領書」 と端的に記載して差し支えない。
エ 通知しようとする主な事項をまず記載し、その他の事項は後に記載する。
    通知事項が多い場合には、箇条書にする。
(中略)
(4) 事務連絡
ア 事務連絡とは、 事務担当者間における連絡事項を書面化したものであり、その内容は軽易なものであることが多い。例えば、報告すべき場合が通達等をもって定められている場合において、その具体的な報告方法を連絡するときに事務連絡の形式が用いられることがある。
イ 事務連絡は、飽くまでも事務担当者間における連絡事項を書面化した文書であって、訓令的性質を持つものではないから、指示を記載しても実質的には依頼である。下級庁又は下級の職員が従わなければならない職務上の義務を負わせる必要のある事項を内容とする場合には、訓令的性質を持つ通達等の形式を選択する必要がある。
ウ 事務連絡の形式は、、適宜の形式で差し支えない。
エ 標題は「事務連絡」や「○○○について(事務連絡) 」などが多く用いられる。

5 関連記事その他
(1) 法律は,国権の最高機関であって国の唯一の立法機関である国会が制定するものですから,法律の規定は憲法に適合しているとの推測を強く国民に与えるものです(最高裁大法廷令和6年7月3日判決)。
(2)ア 国家行政組織法14条2項は「各省大臣、各委員会及び各庁の長官は、その機関の所掌事務について、命令又は示達をするため、所管の諸機関及び職員に対し、訓令又は通達を発することができる。」と定めています。
イ みずほ中央法律事務所HPの「【通達の意味・種類・法的性質(国民・企業・裁判所への法的拘束力)】」によれば,通達は命令的であり,通知は助言的であり,事務連絡は簡略的であるとのことです。
(3) 以下の記事も参照してください。
・ 裁判所の情報公開に関する通達等
・ 裁判文書の文書管理に関する規程及び通達
・ 最高裁判所事務総局の組織に関する法令・通達
・ 裁判所書記官,家裁調査官及び下級裁判所事務局に関する規則,規程及び通達
・ 平成29年7月1日施行の裁判所会計事務規程及び関連通達
・ 国税庁の法令解釈通達及び事務運営指針,並びに国税庁の文書回答事例及び質疑応答事例
・ 下請法に関する手形通達
・ 法務省の定員に関する訓令及び通達

個人事業税に関するメモ書き

目次
1 総論
2 所得税の確定申告をしている場合,個人事業税の申告は不要であること
3 個人事業税の計算サイト
4 その他

1 総論
(1) 個人事業税は,都道府県内に事務所等を設けて,地方税法72条の2で定める第一種事業,第二種事業又は第三種事業を営んでいる個人が納める都道府県税です。
(2)ア 弁護士業は第三種事業ですから,事業所得の金額から事業主控除額290万円等を控除した金額の5%を事業税として納付する必要があります。
イ 所得税の青色申告特別控除額は個人事業税では適用がありませんから,青色控除前の事業所得が290万円を超えた場合,個人事業税が発生することとなります。
(3) 大阪府HPに「個人事業税」が載っています。

2 所得税の確定申告をしている場合,個人事業税の申告は不要であること
・ 東京都主税局HPの「個人事業税」には以下の記載があります。
 個人で事業を営んでいる方は、毎年3月15日までに前年中の事業の所得などを、都税事務所(都税支所)・支庁に申告することになっています。ただし、所得税の確定申告や住民税の申告をした方は個人の事業税の申告をする必要はありません。この場合には、それぞれの申告書の「事業税に関する事項」欄に必要事項を記入してください。
 なお、上記に関わらず年の中途で事業を廃止した場合は、所得税の確定申告や住民税の申告とは別に、廃止の日から1か月以内(死亡による廃止の場合は4か月以内)に個人の事業税の申告をしなければなりません。

3 個人事業税の計算サイト
・ 自動計算HP「事業税の計算」を使えば,課税所得から個人事業税を計算できます。

4 その他
・ マネーフォワードクラウド確定申告HP「個人事業税とは?計算方法や仕訳、勘定科目、控除まで解説」が載っています。

開業届,所得税の青色申告承認申請書及び青色事業専従者給与に関する届出書に関するメモ書き

目次
1 開業届
2 所得税の青色申告承認申請書
3 青色事業専従者給与に関する届出書
4 個人事業主が開業時に行う税務署への届出

1 開業届
(1) 開業届の正式名称は個人事業の開業・廃業等届出書です。
(2) 国税庁HPの「[手続名]個人事業の開業届出・廃業届出等手続」に書式が載っています。手続根拠は所得税法229条です。
(3) メモラビ ブログ「出す?出さない?「開業届」を提出することの本当の意味とは。」が載っています。

2 所得税の青色申告承認申請書
(1)ア 所得税の青色申告承認申請書は,原則として,青色申告書による申告をしようとする年の3月15日までに提出する必要があります(国税庁HPの「[手続名]所得税の青色申告承認申請手続」参照)。
    そのため,例えば,令和4年分の所得税について青色申告をする場合,同年3月15日までに所得税の青色申告承認申請書を提出する必要があります。
イ 手続根拠は所得税法144条及び166条です。
(2)ア 個人事業主メモHP「青色申告とは」によれば,青色申告のメリット・デメリットは以下のとおりです。
① 青色申告のメリット
・ 青色申告特別控除(10万円,55万円又は65万円)
・ 3年間の赤字繰越
・ 専従者給与として,家族従業員への給与を経費にできる
・ 少額減価償却資産の特例として,30万円未満のものを一括でその年の経費にできる(合計限度額は300万円です。)。
② 青色申告のデメリット
・ 白色申告に比べて面倒くさい。
イ マネーフォワードクラウド確定申告HP「少額減価償却資産の特例が個人事業主にもたらす恩恵は?」が載っています。

3 青色事業専従者給与に関する届出書
(1) freeeの「「青色事業専従者給与に関する届出書」の書き方は?」には以下の記載があります。
「青色事業専従者給与に関する届出書」とは、青色申告で確定申告をしている事業者が、配偶者や親族に対して支払った給与を経費として計上するために必要な書類のことです。
青色申告事業者が事業を手伝う配偶者や親族に支払った給与は、そのままでは経費として計上できません。経費に計上するためには、事前に税務署に「青色事業専従者給与に関する届出書」を提出する必要があるのです。
(中略)
青色事業専従者給与に関する届出書の提出期限は、青色事業専従者への給与を経費にしようとする年の3月15日までです。

(2) 国税庁HPに「[手続名]青色事業専従者給与に関する届出手続」が載っています。

4 個人事業主が開業時に行う税務署への届出
・ freeeの「個人事業主って何?個人事業主のことを徹底解説!」によれば,個人事業主が開業時に行う税務署への届出は以下のとおりです。
① 開業届
② 青色申告承認申請書(青色申告をする場合)
③ 給与支払事務所等の開設・移転・廃止届出書
④ 源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書
⑤ 青色事業専従者給与に関する届出・変更届出書

福利厚生費に関するメモ書き

目次
1 総論
2 福利厚生費と交際費
3 福利厚生費が否認された場合の取扱い

1 総論
・ 一定の条件のもとで非課税となる福利厚生費としては,宴会費用,慶弔見舞金,永年勤続者の記念品,創業記念品等,自社商品の値引き後価額,食事代,健康診断費用,社員旅行等,資格取得費等,学資,制服・作業服等があります(リード総合法律会計事務所HPの「7.現物支給をうまく利用して福利厚生を充実させよう」参照)。

2 福利厚生費と交際費
(1) 租税特別措置法関係通達61の4(1)-1(交際費等の意義)は以下のとおりです。
措置法第61条の4第6項に規定する「交際費等」とは、交際費、接待費、機密費、その他の費用で法人がその得意先、仕入先その他事業に関係ある者等に対する接待、供応、慰安、贈答その他これらに類する行為のために支出するものをいうのであるが、主として次に掲げるような性質を有するものは交際費等には含まれないものとする。
① 寄附金
② 値引き及び割戻し
③ 広告宣伝費
④ 福利厚生費
⑤ 給与等
(2)ア 租税特別措置法関係通達61の4(1)-10(福利厚生費と交際費等との区分)は以下のとおりです。
社内の行事に際して支出される金額等で次のようなものは交際費等に含まれないものとする。
① 創立記念日、国民祝日、新社屋落成式等に際し従業員等におおむね一律に社内において供与される通常の飲食に要する費用
② 従業員等(従業員等であった者を含む。)又はその親族等の慶弔、禍福に際し一定の基準に従って支給される金品に要する費用
イ 租税特別措置法関係通達61の4(1)-18(下請け企業の従業員等のために支出する費用)からすれば,下請け企業のほか,派遣社員に対する支出についても福利厚生費に該当する場合があると思います(総務の森HPの「派遣社員等を含めての懇親会費用」参照)。
(3) AD Laboratoryに「「社員旅行」はすでに死語!?コロナ禍の職場でのレクリエーション事情とは」が載っています。

3 福利厚生費が否認された場合の取扱い
(1) 国税不服審判所平成10年6月30日裁決には以下の記載があります。
所得税法第36条第1項によれば、金銭以外の物又は権利その他の経済的利益の価額は収入金額に算入すべき旨規定されており、現物で支給されるものや経済的利益の供与など、現金で支給されず、役員又は使用人が自由に管理支配できないような形式によるものであっても、使用者が役員又は使用人に対し、又はそれらの者のために支出する金品で、それらの者に帰属することが明らかであるものは、原則として給与所得に係る収入金額とされると解される。
(2) 福利厚生費が否認されて従業員の給与所得(賞与)と判断された場合,事業主としては,源泉所得税等を追加で支払う必要が出てきますところ,この場合,賞与として源泉徴収する必要があると思います(国税不服審判所平成22年12月17日裁決参照)。

税務調査その他国税に関するメモ書き

目次
第1 税務調査に関するメモ書き
第2 予定納税に関するメモ書き
第3 国税の支払方法に関するメモ書き
第4 電子帳簿保存に関するメモ書き
第5 記帳代行及び給与計算に関するメモ書き
第6 関連記事その他

第1 税務調査に関するメモ書き
1  税務署又は国税局の職員が質問検査権に基づいて行う検査を税務調査といいますところ,質問検査権の中身は以下のとおりです(国税通則法74条の2)。
① 質問をする。
② 事業に関する帳簿書類その他の物件を検査する。
③ 事業に関する帳簿書類その他の物件の提示又は提出を求める。
2 納税者権利憲章を作る会HPに載ってある「もっと正しく知りたい質問応答記録書作成の手引~税務調査のときに質問応答記録書と向き合う作法」には以下の記載があります。
① 税務署の調査担当者(調査官)が納税者の事業所や自宅、取引先を訪ねて行う税務調査を「臨場調査」、「臨宅調査」、あるいは「実地調査」といいます 。こうした調査で、税務署の調査担当者(調査官)が納税者に質問をして聴き取った回答(答述//申述/陳述)を書面(文書)にした「質問応答記録」にサインしてハンコを押すように(署名
押印を求められるケースが急激に増えています。
② 質問応答記録書は、「犯罪捜査の際に警察官や検察官が作成する『供述調書』『自白調書』のようだ」との声もあります。まさに、質問応答記録書の作り方は、供述調書、自白調書とほぼ同じなのです。ただ、質問する公務員が、税務調査官か、そうでないかの違いだけです。しっかり向き合わないと、記録書が「ねつ造」され、「えん罪」に巻き込まれることにつながりかねません。
③ 質問応答記録書は、納税者に、追徴税額(追加本税/増差額)とペナルティ(加算税)をかけ、それが争いになったときに税務署側に有利な証拠を確保することがねらいです。
④ 質問応答記録書は、任意の行政調査/行政手続で、納税者(回答者)は、法律ではなく、国税庁の職員向けのマニュアル(手引書)を基に作成・協力を求められているのです。しかも、後で詳しく説明しますが、国税庁のマニュアル(手引書)は、非公開(秘密)なのです。ですから、納税者(回答者)は、質問応答記録書に署名・押印する法律上の義務はない!ということです。また、回答者(納税者)は、署名・押印に応じないことで罰則を科されることもありません。
⑤ 自分の質問応答記録書の内容を書面でしっかり確認したい。でないと、税務署長や国税不服審判所に不服申立てを行い反論できない、あるいは正確な修正申告書を書けないとします。こうした場合の手立てがあります。それは、行政機関個人情報保護法を使って、あなたが自分の質問応答記録書のコピーを入手することです。

3 調査の手続の違法が課税処分の取消事由となるのは,課税処分の基礎となる調査を全く欠く場合のほか,課税処分の基礎となる証拠資料の収集手続(証拠収集手続)に重大な違法があって調査を全く欠くのに等しいとの評価を受ける場合に限られ,他方,証拠収集手続に影響を及ぼさない他の手続の違法は課税処分の取消事由とはならないものと解されています(国税不服審判所平成27年5月26日裁決)。
4 税務調査に関する以下の資料を掲載しています。
① 調査における法律的知識(わかりやすくマンガで解説!!)(平成27年6月の東京国税局課税第二部法人課税課の文書)
→ 「納税者の見解」は黒塗りになっています。
② 質問応答記録書作成の手引(平成29年6月の国税庁課税総括課作成の文書)
→ 黒塗りが多いです。
③ 税務官署から事件記録等の閲覧謄写の要請があった場合の取扱いについて(平成3年10月31日付の最高裁判所総務局長の事務連絡)


第2 予定納税に関するメモ書き
1 総論
・ 予定納税とは,その年の5月15日現在において確定している前年分の所得金額や税額などを基に計算した金額(予定納税基準額)が15万円以上である場合,その年の所得税及び復興特別所得税の一部をあらかじめ納付するという制度をいいます(所得税法104条ないし114条)。
2 予定納税基準額及び予定納税額
(1) 予定納税基準額は,原則として,5月15日現在で確定している前年分の所得税等の申告納税額と同じ金額になります。
(2) 予定納税額は,予定納税基準額の3分の1の金額を,第1期分及び第2期分として2回納付することになります。
3 予定納税の減額申請
・ 第1期分及び第2期分の予定納税の減額申請はその年の7月1日から同月15日までに行う必要があり,第2期分のみの減額申請はその年の11月1日から同月15日までに行う必要があります(国税庁HPの「[手続名]所得税及び復興特別所得税の予定納税額の減額申請手続」参照)。
4 翌年の確定申告時の取扱い
・ 例えば,令和4年分の確定申告の際には,令和4年分の予定納税額の通知書に記載された予定納税額を記載する必要があります。
5 その他
(1) 予定納税額の通知書は,予定納税が必要な対象者に対し,毎年6月中旬頃に税務署から送付されます。
(2) ARUHIマガジン「【6月は予定納税額の確認を!】予定納税額の通知書とは? 届いたらチェックすべき3つポイントを解説」が載っています。

第3 国税の支払方法に関するメモ書き
1 国税の支払方法の種類

(1) 国税の支払方法としては以下のものがあります(国税庁HPの「[手続名]国税の納付手続(納期限・振替日・納付方法)」参照)。
① ダイレクト納付
・  e-Taxによる操作で預貯金口座からの振替により納付する方法です。
② インターネットバンキング
・ インターネットバンキングから納付する方法です。
③ クレジットカード納付
・ 「国税クレジットカードお支払サイト」を運営する納付受託者(民間業者)に納付を委託する方法です。
④ コンビニ納付(QRコード又はバーコード
・  コンビニエンスストアの窓口で納付する方法です。
⑤ 振替納税
・  預貯金口座からの振替により納付する方法です。
⑥ 窓口納付
・ 金融機関又は所轄の税務署の窓口で納付する方法です。
(2) ダイレクト納付及びインターネットバンキングは電子納税となります。
2 その他
(1) freeeに「確定申告後の納税方法6つ! メリット・デメリットの比較とおすすめの方法」が載っています。
(2) 経理通信HP「ペイジーを活用してインターネットバンキングやATMで税金を納付する方法」が載っています。


第4 電子帳簿保存に関するメモ書き
1 国税庁HPに「電子帳簿等保存制度特設サイト」には,電子取引電子帳簿・電子書類及びスキャナ保存に関する説明があります。
2 Trinity HPの「もうタイムスタンプは不要。2022年1月施行の電子帳簿保存法に対応するには。」(2022年5月6日付)には以下の記載があります。
 税務上の処理についてはタイムスタンプの付与をはじめとするいくつかのハードルが高く、税務に関わる書類については実運用としては紙にプリントアウトした上で保存することを余儀なくされていました。
 それが、電子帳簿保存法が抜本的に改訂され、2022年1月に施行された内容からすると、私たちのような中小企業においても簡単に、かつ当社においては追加投資をせずに励行することが励行することが可能となりました。
3(1) 全力経理部HP「電子帳簿保存法に対応!Amazonの領収書を保存する最良の方法とは」が載っていますところ,アマゾンの取引履歴を連携できて,義務化の電子帳簿保存法に対応していれば,電子帳簿保存法に従ってアマゾンの領収書を電子保存したこととなります。
(2) Manage labo「【マネーフォワードクラウド会計の使い方】アマゾンの購入データで自動経理する方法」が載っています。
4(1) 加藤博己税理士事務所HPに「電子帳簿保存法:Amazonでの備品購入時の領収書等をどのように保存すればいいのか具体的に考えてみる」が載っています。
(2) 大分の税理士・経営指導員「こて」のブログ「ネットショッピングなどの
電子取引が要注意!【電子帳簿保存法】令和4年1月~」
が載っています。



第5 記帳代行及び給与計算に関するメモ書き
1 記帳代行に関するメモ書き

(1) 記帳代行を依頼した場合に代行してもらえる業務としては,会計ソフトの入力,レシート及び領収書の整理並びに各帳簿の作成があり,記帳代行の依頼先としては,オンラインアシスタントサービス,税理士事務所及び代行業者があります(吉村知子税理士ブログ「おすすめの記帳代行業者5選!業者の選び方や注意点も解説!」参照)。
(2) 「起票」とは,領収書や預金通帳から会計伝票や預金出納帳等に記入することをいい,「記帳」とは,この会計伝票や預金出納帳等から仕訳帳,総勘定元帳,試算表等を作成することをいいます(久野事務所HP「起票と記帳代行について」参照)。
2 給与計算に関するメモ書き
(1) ITトレンドHP「給与計算は税理士・社労士どちらに任せるべきか?選び方を解説!」には,数人規模なら税理士に,数十人から数百人規模なら社労士に,千人規模以上なら給与計算アウトソーシング会社に給与計算を依頼すればいいと書いてあります。
(2) WorkVision HPに「証憑とは?証憑書類の4つの種類と証憑書類の保存期間|証憑の使い方も紹介」が載っています。


第6 関連記事その他
1 資本金は1000万円と1億円というラインで税務上の扱いが異なりますところ,資本金1億円以下の法人の場合,中小法人となりますから,法人住民税の均等割の金額が変わったり,年800万円以下の所得金額の税率が変わったり,年間800万円までの交際費を損金にできたり,少額減価償却資産の損金算入があったり,欠損金の繰戻還付があったりします(経理COMPASS「資本金とは?|意味・目的・税金から資本金額の決め方を徹底検証」参照)。
2(1) 二弁フロンティア2015年12月号「弁護士の税務申告」が載っています。
(2) 全国法律関連労組連絡協議会HP「全法労協だより119号」(2021年要求と実態調査アンケート集計結果が載ってあるもの。)が載っています。
3 中小企業向け賃上げ促進税制が個人事業主について適用されるのは令和5年及び令和6年でありますところ,中小企業庁HPに「中小企業向け「賃上げ促進税制」※旧、中小企業向け「所得拡大促進税制」」が載っています。
4 Knock HPに「BPOとは?メリットやアウトソーシングとの違い、導入のポイントを解説」が載っています。
5 ツギノジダイHP「Googleマイビジネスの登録方法 初心者向けに手順やコツを紹介」が載っています。
6 増額更正処分後に国税通則法23条1項の規定による更正の請求をし,更正をすべき理由がない旨の通知処分を受けた者は,当該通知処分の取消しを求める訴えの利益を有します(最高裁令和5年11月6日判決)。
7 以下の記事も参照してください。
・ 個人事業主の税金,労働保険及び社会保険に関するメモ書き

eLTAX(エルタックス)に関するメモ書き

目次
1 総論
2 個人住民税に関してeLTAXで作成できるデータ
3 給与支払報告書等のeLTAXによる提出義務化
4 その他

1 総論
(1) eLTAX(エルタックス)とは,地方税ポータルシステムの呼称で,地方税における手続をインターネットを利用して電子的に行うシステムです(地方税共同機構が運営しています。)。
(2) eLTAXを使えば,電子申告,共通納税及び電子申請・届出をインターネットで行なえます。

2 個人住民税に関してeLTAXで作成できるデータ
・ 個人住民税に関してeLTAXで作成できるデータは以下のとおりです(eLTAXの「eLTAXで利用可能な手続き」参照)。
① 給与支払報告
② 給与支払報告・特別徴収に関わる給与所得者異動届出
③ 普通徴収から特別徴収への切替申請
④ 退職所得に関わる納入申告及び特別徴収票
⑤ 公的年金等支払報告など

3 給与支払報告書等のeLTAXによる提出義務化 
(1)ア 枚方市HPの「給与支払報告書等のeLTAX(エルタックス)または光ディスク等による提出の義務化について」には以下の記載があります。
 平成24年度税制改正により、国税において電子申告または光ディスク等による源泉徴収票の提出が義務づけられた特別徴収義務者(前々年の所得税の源泉徴収票の提出枚数が1,000枚以上である特別徴収義務者)は、市・府民税においても、平成26年1月1日以降に市区町村に提出する給与支払報告書については、eLTAXまたは光ディスク等により提出することが義務づけられました。
 また、平成30年度の税制改正において、給与支払報告書及び公的年金等支払報告書のeLTAX又は光ディスク等による提出義務の判定基準(基準年(前々年)に提出すべきであった給与所得の源泉徴収票等の枚数)が、「1,000枚以上」から「100枚以上」に引き下げられました。この改正は、令和3年1月1日以後に提出すべき給与支払報告書及び公的年金等支払報告書について適用されます。このため、令和元(平成31)年に提出された給与所得の源泉徴収票等の枚数が100枚以上であった場合、令和3年に提出する給与支払報告書等はeLTAX又は光ディスク等により提出する必要があります。
イ 光ディスク等というのは,光ディスク(CD・DVD)又は磁気ディスク(MO・FD)のことです(MOは光磁気ディスクであり,FDはフロッピーディスクです。)。
(2) 地方税共同機構HPに「給与支払報告書等のeLTAX又は光ディスク等による提出義務基準が引き下げられました!」が載っています。

4 その他
(1) eLTAXの始まりは,平成17年1月の6府県での電子システム稼働(法人住民税・法人事業税、固定資産税(償却資産)の申告受付開始)です(eLTAXの「eLTAXの概要」参照)。
(2) 平成29年1月以降につき,eLTAXを利用して,市町村に提出する給与や公的年金等の支払報告書の電子申告用のデータを作成する際,税務署に提出が必要な源泉徴収票の電子申告(e-Tax)用のデータも同時に作成することができるようになりました(国税庁HPの「給与・公的年金等の支払報告書及び源泉徴収票のeLTAXでの一括作成・提出(電子的提出の一元化)について」参照)。
(3)ア 地方税共通納税システムを利用した場合,「個人住民税(給与特徴で税額通知が電子的に送付されていない場合)※延滞金など含む。」についても電子納税をすることができます(eLTAX HPの「共通納税とは」参照)。
イ 給与特徴というのは,給与からの特別徴収のことです。

人身傷害補償保険の保険金と税金

目次
1 人身傷害補償保険の死亡保険金と税金
2 人身傷害補償保険の後遺障害保険金及び医療保険金と税金
3 関連記事その他

1 人身傷害補償保険の死亡保険金と税金
(1)ア 日本損害保険協会HPの「保険金と税金」によれば,人身傷害補償保険の死亡保険金のうち被保険者自身の過失部分だけが課税対象となります(平成11年10月18日付の国税庁法令解釈通達「人身傷害補償保険金に係る所得税、相続税及び贈与税の取扱い等について」参照)。
    そして,被相続人が保険料を負担している場合は相続税となり,保険金受取人が保険料を負担している場合は所得税(一時所得)となり,第三者が保険料を負担している場合(例えば,父親が保険料を負担し,被保険者としての母親が死亡した場合において,子どもが保険金受取人となる場合)は贈与税となります。
イ リンク先の説明と異なり,搭乗者傷害保険の死亡保険金は定額の保険金給付であって損害をてん補する性質を有しません(最高裁平成7年1月30日判決)から,傷害保険の死亡保険金と同様にその全額が所得税(一時所得),相続税又は贈与税の課税対象になると思います。
(2) 死亡保険金の受取人が相続人(相続を放棄した人や相続権を失った人は含まれません。)である場合、全ての相続人が受け取った保険金の合計額が次の算式によって計算した非課税限度額を超えるとき、その超える部分が相続税の課税対象になります(国税庁タックスアンサーの「No.4114 相続税の課税対象になる死亡保険金」参照)。
500万円 × 法定相続人の数 = 非課税限度額

2 人身傷害補償保険の後遺障害保険金及び医療保険金と税金
    心身に加えられた損害に起因して取得する保険金・共済金及び損害賠償金は非課税所得です(所得税法9条1項18号(令和3年度税制改正前の所得税法9条1項17号)及び所得税法施行令30条1号)。
    そのため,人身傷害補償保険の後遺障害保険金及び医療保険金は,被保険者自身の過失部分についても非課税となります。

3 関連記事その他
(1)ア 最高裁令和4年3月24日判決は,被害者を被保険者とする人身傷害条項のある自動車保険契約を締結していた保険会社が,被害者との間でいわゆる人傷一括払合意をし,上記条項の適用対象となる事故によって生じた損害について被害者に対して金員を支払った後に自動車損害賠償責任保険から損害賠償額の支払を受けた場合において,被害者の加害者に対する損害賠償請求権の額から上記損害賠償額の支払金相当額を全額控除することはできないとされた事例です。
イ 最高裁令和5年10月16日判決は,人身傷害保険の保険会社が被害者の遺族に対して人身傷害保険金額に相当する額を支払った場合において,上記遺族の加害者に対する損害賠償請求権の額から上記の支払額を全額控除することはできないとされた事例です。
(2) 吐物(とぶつ)の誤嚥(ごえん)は,傷害保険普通保険約款において保険金の支払事由として定められた「外来の事故」に該当します(最高裁平成25年4月16日判決)。
(3)ア  生命保険契約に付加された災害割増特約における災害死亡保険金の支払事由を不慮の事故による死亡とする約款に基づき,保険者に対して災害死亡保険金の支払を請求する者は,発生した事故が偶発的な事故であることについて主張,立証すべき責任を負います(最高裁平成13年4月20日判決)。
イ  普通傷害保険契約における死亡保険金の支払事由を急激かつ偶然な外来の事故による死亡とする約款に基づき,保険者に対して死亡保険金の支払を請求する者は,発生した事故が偶然な事故であることについて主張,立証すべき責任を負います(最高裁平成13年4月20日判決)。
(4) 以下の記事も参照してください。
・ 車両保険
・ 相続事件に関するメモ書き

国税庁の法令解釈通達及び事務運営指針,並びに国税庁の文書回答事例及び質疑応答事例

目次
第1 国税庁の法令解釈通達及び事務運営指針
第2 国税庁の文書回答事例及び質疑応答事例
第3 関連記事その他

第1 国税庁の法令解釈通達及び事務運営指針
1 国税庁の法令解釈通達は,課税庁が法令解釈を行うにあたって守るべき統一的な解釈を示したものであり,事務運営指針は,課税庁が内部事務を行うにあたって守るべき統一的なルールを示したものでありますところ,レックスアドバイザーズHPの「お役人に取材していると、よく出てくる言葉に「通達(つうたつ)」「事務運営指針(じむうんえいししん)」があります。」には以下の記載があります。
通達も事務運営指針も、役所内部の「内規」みたいなものなので、納税者を拘束するものではありません。しかし、課税庁の職員は、これを絶対守らなければならないのです。
「国家公務員法第98条」(法令及び上司の命令に従う義務並びに争議行為等の禁止) 職員は、その職務を遂行するについて、法令に従い、且つ、上司の職務上の命令に忠実に従わなければならない。
2(1) 最高裁昭和43年12月24日判決は「裁判所は、法令の解釈適用にあたつては、通達に示された法令の解釈とは異なる独自の解釈をすることができ、通達に定める取扱いが法の趣旨に反するときは独自にその違法を判定することもできる」と判示しています。
(2) 最高裁平成24年1月13日判決の裁判官須藤正彦の補足意見には「もとより,法規より下位規範たる政令が法規の解釈を決定付けるものではないし,いわんや一般に通達は法規の解釈を法的に拘束するものではない」と書いてあります。
(3) 最高裁令和4年4月19日判決は,「評価通達(山中注:財産評価基本通達(昭和39年4月25日付の国税庁長官通達))は、上記の意味における時価の評価方法を定めたものであるが、上級行政機関が下級行政機関の職務権限の行使を指揮するために発した通達にすぎず、これが国民に対し直接の法的効力を有するというべき根拠は見当たらない。」と判示しています。

第2 国税庁の文書回答事例及び質疑応答事例
1(1) 国税局では,納税者の皆様から,申告期限前(源泉徴収等の場合は納期限前)に「具体的な取引等に係る税務上の取扱い」に関して,文書による回答を求める旨の申出(事前照会)があった場合に,一定の要件の下に,文書により回答するとともに,他の納税者の皆様の予測可能性の向上に役立てていただくために,その照会及び回答の内容等を公表するという納税者サービスを行っております(国税庁HPの「税務上の取扱いに関する事前照会に対する文書回答について」参照)。
(2) 国税庁HPの「事前照会に対する文書回答手続」には,事前照会に対する文書回答手続(事務運営指針)及び同業者団体等からの照会に対する文書回答手続(事務運営指針)が載っています。
2 国税庁HPの「文書回答事例」には以下の記載があります。
 事前照会に対する文書回答手続に基づいて回答した事例(過去に個別通達として発遣されたもの等の一部も含みます。)を税目別に掲載しています。キーワードで検索することもできます。
 なお、この文書回答事例は、照会において前提とされた事実関係や照会当時に施行されていた法令に基づいて回答を行ったものですから、照会と事実関係などが異なる場合はもちろん、類似の事例であっても取扱いが異なる場合があることにご留意ください。
3 文書回答事例は,文書回答手続を利用した照会に対する文書による回答であり,質疑応答事例は,過去に納税者から寄せられた照会等につき,その照会事項及び回答を,ポイントが分かりやすいよう要旨のみを掲載したものです(国税庁HPの「質疑応答事例」参照)。

第3 関連記事その他
1 「昭和28年に団体の著作名義をもって公表された独創性を有する映画の著作物は,平成16年1月1日から施行された著作権法の一部を改正する法律(平成15年法律第85号)による保護期間の延長措置の対象となる同法附則2条所定の「この法律の施行の際現に改正前の著作権法による著作権が存する映画の著作物」に当たらず,その著作権は平成15年12月31日の終了をもって存続期間が満了した。」と判示した最高裁平成19年12月18日判決(シェーン著作権侵害事件判決)は,映画の著作物に関する1953年問題に関する文化庁著作権課の法解釈を否定しました。
2(1) 以下の資料を掲載しています。
・ 納税表彰の実施について(平成12年4月27日付の国税庁長官の事務運営指針)
→ 令和4年4月20日改正後のものです。
・ 税務相談事務に係る基本的な対応について(平成20年9月24日付の大阪国税局の事務運営指針)
・ 優良申告法人に対する表敬について(平成26年6月30日付の国税庁長官の事務運営指針)
・ 税務相談官事務の概要(令和元年7月の国税庁長官の引継資料)
・ 納税表彰候補者の選考等について(令和6年3月11日付の国税庁管理運営課企画専門官の連絡)
(2) 以下の記事も参照してください。
・ 個人事業主の税金,労働保険及び社会保険に関するメモ書き
・ 令和元年7月採用の国税審判官の研修資料
 歴代の国税不服審判所長
 国税庁長官及び東京国税局長の事務引継資料(令和元年7月頃の文書)

前期損益修正に関するメモ書き

目次 
1 税務における前期損益修正
2 会計における前期損益修正損
3 制限超過利息の受領に関して過年度の会計処理を遡及訂正できないこと
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1 税務における前期損益修正
(1)ア 法人税基本通達2-2-16(前期損益修正)は以下のとおりです。
  当該事業年度前の各事業年度(その事業年度が連結事業年度に該当する場合には、当該連結事業年度)においてその収益の額を益金の額に算入した資産の販売又は譲渡、役務の提供その他の取引について当該事業年度において契約の解除又は取消し、返品等の事実が生じた場合でも、これらの事実に基づいて生じた損失の額は、当該事業年度の損金の額に算入するのであるから留意する。
イ 弁護士法人三宅法律事務所HP「前期損益修正と一般に公正妥当と認められる会計処理の基準」に,法人税基本通達2-2-16を踏まえた解説が載っています。
(2) 事業所得として課税の対象とされた金銭債権が後日貸倒れ等により回収不能となったときは,その回収不能による損失額を,当該回収不能の事実が発生した年分の事業所得の金額の計算上,必要経費に算入すべきものとされ,これによつて納税者は実質的に先の課税について救済を受けることができます(旧所得税法に関する最高裁昭和53年3月16日判決参照)。
(2) 国税不服審判所昭和63年4月8日裁決には「法人の各事業年度の所得金額は、一般に公正妥当と認められる会計処理の基準に従って計算するものとされているが、この会計処理の基準によれば、所得の金額の計算の基礎となった事実について、その事業年度経過後にその事実を変更する事由が生じた場合には、その事由が生じた事業年度の損益として認識し、既往の事業年度にさかのぼって所得の金額を修正すべきでないとされている。」と書いてあります。

2 会計における前期損益修正損
(1) 税理士法人杉山会計事務所HP「前期損益修正の取扱い 会計と税務の違い」には,「会計も税務も、いわゆる「継続企業の原則」に基づき、このような後発的な事由によって生じた損失については、過去の事業年度に遡って修正することはしないで、原則、その解除や取消し等の事実が生じた事業年度に「前期損益修正損」として計上し、税務も当該修正損は損金の額に算入されます。」と書いてあります。
(2) 平成23年以降につき,「中小企業の会計に関する指針」等に従い会計処理をする中小企業については「前期損益修正損」を使えるのに対し,「会計上の変更及び誤謬の訂正に関する会計基準」(令和3年3月以降については,「会計方針の開示、会計上の変更及び誤謬の訂正に関する会計基準」です。)に従い会計処理をする企業については「前期損益修正損」を使えなくなりました(マネーフォワードの「特別損益とは?特別損失と特別利益として計上される具体例とともに解説」参照)。

3 制限超過利息の受領に関して過年度の会計処理を遡及訂正できないこと
(1) 利息制限法による制限超過の利息・損害金のうち,現実に収受されたものは貸主の所得として課税の対象となるのに対し,その約定の履行期が到来しても,なお未収であるものは課税の対象となるべき所得を構成しません(最高裁昭和46年11月9日判決)。
(2)  法人が受領した制限超過利息等を益金の額に算入して法人税の申告をし,その後の事業年度に当該制限超過利息等についての不当利得返還請求権に係る破産債権が破産手続により確定した場合において,当該制限超過利息等の受領の日が属する事業年度の益金の額を減額する計算をすることは,一般に公正妥当と認められる会計処理の基準に従ったものとはいえません(クラヴィスに関する最高裁令和2年7月2日判決。なお,TFK(旧武富士)に関する東京高裁平成26年4月23日判決も同趣旨の判示をしています。)。

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・ 個人事業主の税金,労働保険及び社会保険に関するメモ書き

源泉徴収票,法定調書合計表及び給与支払報告書に関するメモ書き

目次
1 年末調整に際して給与所得の源泉徴収票を作成する場合
2 従業員が年の途中に退職した場合
3 源泉徴収票等の作成と提出の手引
4 法定調書合計表
5 給与支払報告書及び源泉徴収票の電子的提出の一元化
6 給与支払報告書の訂正
7 給与所得及び退職所得の源泉徴収票の計算サイト
8 関連記事その他

1 年末調整に際して給与所得の源泉徴収票を作成する場合
(1)ア 従業員に給与等を支払った場合,①給与所得の源泉徴収票を,②給与所得の源泉徴収票等の法定調書合計表と一緒に,翌年1月31日までに支払者の所轄税務署に提出する必要があります。
イ 給与所得の源泉徴収票は,従業員に対し,1月31日までに交付する必要があります(所得税法226条1項)。
ウ 国税庁HPに「タックスアンサーNo.7411 「給与所得の源泉徴収票」の提出範囲と提出枚数等」が載っています。
(2)ア 市区町村に対しては,③給与支払報告書(総括表)1枚及び④給与支払報告書(個人別明細書)2枚を,翌年1月31日までに提出する必要があります。
イ ビズ研HP「【令和4年版】源泉徴収票・給与支払報告書テンプレート(無料・登録不要)」が載っています。

2 従業員が年の途中に退職した場合
(1) 「給与所得者の扶養控除等申告書」を提出した従業員が年の途中に退職した場合,退職後1か月以内に年末調整をせずに①源泉徴収票をその従業員に交付するとともに,市区町村に②「給与支払報告・特別徴収に係る給与所得者異動届出書」を提出する必要があります(所得税法226条1項)。
(2) 翌年1月31日までに③給与支払報告書(個人別明細書)2枚及び④給与支払報告書(総括表)1枚を元従業員の退職日現在の市区町村に提出する必要があります。

3 源泉徴収票等の作成と提出の手引
(1) 国税庁HPの「令和4年分 給与所得の源泉徴収票等の法定調書の作成と提出の手引」に,「第2 給与所得の源泉徴収票(給与支払報告書)」等が含まれています。
(2) 国税庁HPに「[手続名]給与所得の源泉徴収票(同合計表)」及び「[手続名]退職所得の源泉徴収票(同合計表)」が載っています。


4 法定調書合計表 
(1) 法定調書とは,「所得税法」,「相続税法」,「租税特別措置法」及び「内国税の適正な課税の確保を図るための国外送金等に係る調書の提出等に関する法律」の規定により税務署への提出が義務づけられている資料をいいます(国税庁HPの「タックスアンサーNo.7400 法定調書の提出義務者」参照)。
(2)ア 給与所得の源泉徴収票等の法定調書合計表を作成するときに取りまとめる法定調書は以下の6種類です(OBC360°の「法定調書合計表の書き方と提出期限・提出先」参照)。
① 給与所得の源泉徴収票
② 退職所得の源泉徴収票
③ 報酬、料金、契約金及び賞金の支払調書
④ 不動産の使用料等の支払調書
⑤ 不動産等の譲受けの対価の支払調書
⑥ 不動産等の売買又は貸付けのあっせん手数料の支払調書
イ 不動産の使用料等の支払調書の提出義務者は法人及び不動産業者である個人でありますし,法人に対して家賃や賃借料だけを支払っている場合,支払調書を提出する必要はありません(フリーウエイ給与計算HP「不動産の使用料等の支払調書とは~記載事項、提出期限、提出の省略について~」参照)。
(3) 給与所得の源泉徴収票等の法定調書合計表はe-Tax(WEB版)でも作成できます(e-Taxの「法定調書の作成・提出について」参照)。
(4)ア Vectorに「給与所得の源泉徴収票等の法定調書合計表EXCELシート」が載っています。
イ マイナンバー制度が平成28年1月1日に開始した関係で,法定調書合計表の様式は平成28年分から変更されています。
(5) 国税庁HPの「給与所得の源泉徴収票等の法定調書合計表」には,「記載要領」として以下の記載があります。
    「○A 俸給、給与、賞与等の総額」欄には、給与所得の源泉徴収票の提出省略限度額以下のため給与所得の源泉徴収票の提出を省略するものを含めたすべての給与等について記載する。
    なお、年の中途で就職した者が就職前に他の支払者から支払を受けた給与等の金額及び徴収された源泉所得税額並びに災害により被害を受けたため、給与所得に対する源泉所得税の徴収を猶予された税額は、「支払金額」又は「源泉徴収税額」に含めないで記載する。

5 給与支払報告書及び源泉徴収票の電子的提出の一元化
・ eLTAXの「給与支払報告書、公的年金等支払報告書及び源泉徴収票の電子的提出の一元化について」には「1 概要」として以下の記載がありますし,給与所得の源泉徴収票等の法定調書合計表(平成28年分以降用)も一元化の対象になっています。
 給与や公的年金等の支払をする事業者の方は、一定額以上の支払に係るものについて、受給者の方がお住まいの市区町村に支払報告書を提出するほか、記載内容がほぼ同一の源泉徴収票を事業者の方の所轄税務署にも提出する必要があります。
 地方税における手続を電子的に行うシステムである地方税ポータルシステム(eLTAX)を利用して、市区町村に提出する給与や公的年金等の支払報告書の電子申告用のデータを作成する際、税務署に提出が必要な源泉徴収票の電子申告(e-Tax)用のデータも同時に作成することができます。
 同時に作成したデータは、eLTAXに一括して送信することで支払報告書は各市区町村に、源泉徴収票についてはe-Taxで事業者の方の所轄税務署にそれぞれ提出されます(以下「一元化」といいます。)。
※PCdesk及び一元化対応税務ソフトに限ります。


6 給与支払報告書の訂正
(1) さいたま市HPの「提出した給与支払報告書に誤りがあった」には以下の記載があります。
 給与支払報告書(個人別明細書)の摘要欄に朱書きで「訂正」と記載し、給与支払報告書(総括表)と併せて提出してください。
提出書類
・ 給与支払報告書(総括表)
・ 普通徴収切替理由書(普通徴収の該当者がいない場合は提出不要)
・ 給与支払報告書(個人別明細書)
・ 事業主本人のマイナンバーカード又は通知カード及び本人確認書類の写し(個人事業主の方のみ)
※本人確認でき次第、書類は廃棄処分いたします。
(補足)給与支払報告書(個人別明細書)は税務署で配布しています。
(2) 私の経験では,確定申告をしていない従業員の過去の給料が間違っていた場合,給与支払報告書(訂正)を提出することで,過年度に遡及して所得証明書を訂正してもらうとともに,住民税を還付してもらうことができました。


7 給与所得及び退職所得の源泉徴収票の計算サイト
(1) 生活や実務に役立つ計算サイトKeisan「源泉徴収票(給与所得)」を使えば,給与所得の源泉徴収票を作成するのに必要な計算ができます。
(2) 第一生命HPの「生命保険料控除額計算サポートツール」を使えば,生命保険料控除額を計算できます。
(3) 「退職金の税金」を使えば退職所得の源泉徴収票・特別徴収票を作成するのに必要な計算ができます。


8 関連記事その他
(1) 平成28年分以降の給与所得の源泉徴収票にはマイナンバーを記載する必要があります。
(2) 個人事業主メモHP「個人事業主の源泉徴収 – 給与や報酬を支払う側の情報」が載っています。
(3)ア 就職前に他の支払者から受けた給与等を通算して年末調整を行った受給者の場合,「(摘要)」欄に以下の事項を記載します。
・ 他の支払者の所在地,名称等
・ 他の支払者のもとを退職した年月日
・ 他の支払者が支払った給与等の金額,徴収した所得税及び復興特別所得税の合計額,給与等から控除した社会保険料の金額
イ 源泉徴収票の「控除対象配偶者」及び「控除対象扶養親族」の「区分」欄につき,非居住者である場合は「◯」印を付けますが,居住者である場合は何も記載しません。
ウ 末松会計グループHPに「【対処法】年末調整に源泉徴収票が間に合わない|前職会社への対応も」が載っています。
(4) 年末調整では,その年の1月1日から12月31日の間に支払った給与を取り扱うのであって,翌年1月支払予定の今年の12月分給与は,今年の年末調整の対象外です(末松会計グループHPの「【簡単解説】年末調整の対象期間|12月分1月支払の給与は?」参照)。
(5) 以下の記事も参照してください。
・ 個人事業主の税金,労働保険及び社会保険に関するメモ書き

従業員から特別徴収した住民税に関するメモ書き

目次
1 総論
2 特別徴収税額の通知及び納入
3 特別徴収税額の納期の特例
4 従業員が退職等をした場合
5 給与所得等以外に係る住民税の納付方法の選択
6 関連記事その他

1 総論
(1) 大阪市HPの「個人市・府民税の給与からの特別徴収について」には以下の記載があります。
 従業員等(納税義務者)が毎年4月1日現在に在職する会社等(給与支払者)において、従業員等の前年中の給与(前勤務先など他の給与支払者から支払いを受けた給与を含む)に対する個人市・府民税を特別徴収していただく必要がありますので、給与支払報告書についても、適切に特別徴収として提出してください。
 なお、4月1日以後に、新たに雇用した従業員等の個人市・府民税(納期限が過ぎていない普通徴収(本人納付)税額)についても、 特別徴収切替届出(依頼)書を提出いただくことにより、年度途中でも特別徴収に切り替えることができます。
(2) 4月1日以後に採用した従業員については,特別徴収切替届出(依頼)書を提出しない限り,翌年5月までの間,住民税の特別徴収をする必要はありません。
(3) 大阪市HPの「個人市・府民税の通知書類について」に,①市民税・府民税 納税通知書兼税額決定(充当)通知書,及び②給与所得等に係る市民税・府民税 特別徴収税額の決定・変更通知書(納税義務者用)の説明が載っています。
(4) 住民税の特別徴収の根拠は地方税法321条の4です。

2 特別徴収税額の通知及び納入
・ 大阪市HPの「特別徴収税額の通知および納入について」には以下の記載があります。
特別徴収税額の通知および納税義務者への配付について
 個人市・府民税を特別徴収の方法によって徴収する場合は、給与支払者を特別徴収義務者として指定し、特別徴収の方法により市・府民税を徴収する旨を、特別徴収義務者(給与支払者)および納税義務者(従業員等)に通知しなければならないとされています。 
 毎年5月31日までに、特別徴収義務者(給与支払者)に「給与所得等に係る市民税・府民税 特別徴収税額の決定・変更通知書」をお送りしますので、「特別徴収税額の決定・変更通知書(納税義務者用)」については、個人情報保護のためのシールを剥がさずに、速やかに納税義務者(従業員等)に配付してください。
 なお、給与所得等に係る特別徴収税額がない従業員等の方についても、通知書を作成しておりますので、納税義務者(従業員等)に配付してください。

3 特別徴収税額の納期の特例
(1) 東京都主税局HPの「特別徴収Q&A」には以下の記載があります。
納期の特例を利用すれば、毎月の給与から住民税を差し引きしなくてもよいのですか?
「納期の特例」は、特別徴収した住民税を半年分まとめて納入することができる制度ですので、毎月の給与からの差し引きは通常どおり行っていただく必要があります。給与から差し引きをした住民税を預かっていただき、年2回に分け納付してください。
(2) 大阪市HPの「給与所得等に係る市民税・府民税特別徴収税額の納期の特例に関する承認申請書」には以下の記載があります。
給与の支払を受ける従業員等が常時10人未満の特別徴収義務者(給与支払者)に限り、申請書を提出し、承認を受けた場合には、納期を年12回(毎月)から年2回(6月分から11月分を12月10日まで、12月分から翌年5月分を翌年6月10日まで)とすることができます。
(3) 池田市HPの「特別徴収税額の納期の特例に関する承認申請書」には,「各月の期間中に申請する場合、申請書を受付けた月以降の希望する月から期間の最後の月までが納期特例の対象になります。」と書いてあります。
(4) 給与所得に係る特別徴収税額の納期の特例の根拠は地方税法321条の5の2です。

4 従業員が退職等をした場合
(1) 従業員が退職等をした場合,翌月10日までに従業員の住所地の市区町村に給与所得者異動届出書を提出する必要があります。
(2) SaaS辞典HP「給与所得者異動届出書の書き方のポイントとは?転職者の住民税処理をマスターしよう」には以下の記載があります。
転職してきた労働者の特別徴収を行う場合
 転職してきた労働者の前職の会社から転職後の会社に給与所得者異動届出書が送られてくることがあります。それは、転職してきた労働者が前職で一括徴収を希望せず、転職先での特別徴収の継続を希望した場合です。そのような場合、途中まで記入がされている状態だと思います。こちら側(転職先)で残りの部分を記入し、市区町村へ提出しましょう。
(3) 大阪市HPの「給与支払報告・特別徴収に係る給与所得者異動届出書」には以下の記載があります。
 従業員(納税義務者)が転勤、退職、休職、死亡等により、給与の支払を受けなくなった場合は、異動した月の翌月10日までに、特別徴収ができなくなった旨を、給与支払者(特別徴収義務者)から「給与所得者異動届出書」の提出により、届け出てください。
 なお、「給与所得者異動届出書」の提出がない場合は、特別徴収義務が継続したままとなり、督促状等が送付されることがありますので、必ず提出してください。

5 給与所得等以外に係る住民税の納付方法の選択
・ 豊田市HPの「確定申告書の「住民税・事業税に関する事項」の記載について」には以下の記載があります。
(5)給与、公的年金等以外の所得に係る住民税の徴収方法
 給与所得者の方が、給与所得及び公的年金等に係る所得(申告年の4月1日において65歳未満の方は給与所得)以外の所得(例:事業所得や譲渡所得等)がある場合、給与所得及び公的年金等に係る所得以外の所得に対する所得割額の徴収方法を選択することができます。
(地方税法第321条の3第2項、同条第4項、豊田市税条例第42条第2項、同条第4項)
 給与所得及び公的年金等に係る所得以外の所得に係る所得割額を、特別徴収によって徴収すべき給与所得に係る所得割額及び均等割額の合算額に加算して特別徴収とする場合は、「特別徴収」にチェックを付ける、又は「特別徴収」・「自分で納付」どちらにもチェックを付けずにおきます。給与所得及び公的年金等に係る所得以外の所得に係る所得割額を、普通徴収とする場合は、「自分で納付」にチェックを付けます。
(地方税法施行規則第2条の3第2項第2号)


6 関連記事その他
(1) 大阪府は,平成30年度から,大阪府内全43市町村において,原則として法定要件に該当するすべての事業主を特別徴収義務者に指定し,個人住民税の給与からの特別徴収(給与からの差し引き)を徹底しています(大阪府HPの「個人住民税の特別徴収について」参照)。
(2) 以下の記事も参照してください。
・ 個人事業主の税金,労働保険及び社会保険に関するメモ書き
・ 個人事業主本人の住民税に関するメモ書き

個人事業主本人の住民税に関するメモ書き

目次
1 総論
2 所得割及び均等割
3 令和3年度以降の住民税
4 住民税等の計算サイト
5 関連記事その他

1 総論
・ 住民税とは、1月1日に住所がある都道府県、市町村に納める税金のことを指し,「道府県民税」(東京都は都民税)と「市町村民税」(東京23区は特別区民税)の2つが含まれます(マネーフォワードクラウド給与HPの「住民税が非課税になる条件と受けられる恩恵のポイントまとめ」参照)。

2 所得割及び均等割
・ 総務省HPの「個人住民税」には以下の記載があります。
 個人住民税には、所得に応じた負担を求める「所得割」と、所得にかかわらず定額の負担を求める「均等割」があります。所得とは、企業から受け取る給与や、事業による利益をいいます。
 所得割の税率は、所得に対して一律10%とされており、前年の1月1日から12月31日までの所得で算定されます。
 均等割は、個人住民税は「地域社会の会費」的なものであるとして負担を求める個人住民税の性格を反映したもので、通常5,000円(市町村民税3,500円、道府県民税1,500円)と定められています。

3 令和3年度以降の住民税
(1) 令和3年度(令和2年分)以降の住民税については,令和2年度(令和元年分)以前の住民税と比べて以下の点が異なります(大阪府箕面市(みのおし)HPの「令和3年度からの個人住民税(市・府民税)の主な改正点」参照)。
① 基礎控除が33万円から38万円になりました。
② 給与所得控除が63万円から53万円になりました。
③ 寡婦控除(特別の寡婦)につき,父子家庭も対象に加えてひとり親控除になりました(控除額は30万円)。
(2) 令和2年分以降の所得税につき,基礎控除は48万円であり,給与所得控除は58万円であり,ひとり親控除は35万円です(国税庁HPの「ひとり親控除」等参照)。

4 住民税等の計算サイト
(1) 所得税・住民税簡易計算機HP「税金計算機(生命保険料控除、医療費控除、扶養控除、ふるさと納税対応)」が載っています。
(2) ふるさとチョイスHP「¥控除限度額シミュレーション」が載っています。

5 所得証明書
(1) suumo所得証明書とは?課税証明書との違いや必要な場面、取り方を紹介」には,「所得証明書」と「課税証明書」の違いとして以下の記載があります。
 所得証明書は、市区町村が発行する『所得額』が記載された書類のこと。所得額とは、各年(1月1日~12月31日)の収入(年収)から必要経費(会社員の場合は給与書等控除額)を差し引いた金額で、市区町村などが住民税(市区町村税・県民税等)を計算する際の基準となります。このため所得証明書は、収入を証明する公的な書類(収入証明書)の一つとして、住宅ローンや賃貸住宅の申し込みなどの際に提出を求められることがあります。
 一方、「課税証明書」は、市区町村が発行する『住民税の課税額』を証明する書類のこと。課税額の計算基準となる『所得額』も掲載されているため、「課税証明書」は「所得証明書」として利用できます。実際のところ、「所得証明書」の代わりに「課税証明書」を発行する市区町村も少なくありません。
(2) 大阪市の場合,課税(所得)証明書として発行され(大阪市HPの「市税に関する証明書を請求される方へ」参照),堺市の場合,市民税・府民税(所得・課税)証明書として発行されます(堺市HPの「市税の証明をとるには」参照)。

6 関連記事その他
(1) 大阪市の場合,市民税・府民税納税通知書は6月上旬に郵便により届きます(大阪市HPの「令和4年度 個人市・府民税納税通知書の送付について」参照)。
(2) 財務省HPに「住民税について教えてください。所得税とはどう違うのですか?そもそも国税と地方税の違いはなんですか?」が載っています。
(3) 以下の記事も参照してください。
・ 個人事業主の税金,労働保険及び社会保険に関するメモ書き
・ 従業員から特別徴収した住民税に関するメモ書き



年末調整に関するメモ書き

目次
0 総論
1 扶養控除等申告書
2の1 基礎控除申告書
2の2 配偶者控除等申告書
2の3 所得金額調整控除申告書
3 保険料控除申告書
4 住宅借入金等特別控除申告書
5 ふるさと納税及びワンストップ特例制度
6 年末調整の計算サイト
7 年末調整で過納額が出た場合の取扱い
8 関連記事その他

0 総論
(1) 国税庁HPの「給与所得者(従業員)の方へ(令和4年分)」には,「年末調整を行う理由」として以下の記載があります。
 年末調整とは、源泉徴収された税額の年間の合計額と、年税額を一致させる精算の手続です。
 年末調整の対象となっているのは、原則として、勤務先に「扶養控除等申告書」を提出している人ですが、給与の収入金額が2,000万円を超える人など、一定の人は年末調整の対象とはなりません。
 この精算の手続をするためには、「扶養控除等申告書」のほか、「基礎控除申告書」、「配偶者控除等申告書」、「所得金額調整控除申告書」、「保険料控除申告書」又は「住宅借入金等特別控除申告書」を勤務先に提出する必要があります。
(2) 年末調整の場合,以下の書類を従業員に提出してもらうこととなります。
① 扶養控除等申告書
② 基礎控除申告書 兼 所得金額調整控除申告書 兼 配偶者控除等申告書
③ 保険料控除申告書
④ 住宅借入金等特別控除申告書
(3) オフィスステーションHP「年末調整で必要な提出書類には、どのようなものがある?」には以下の記載があります。
 年末調整では、さまざまな 書類を集めたり、作成したりする必要があります。年末調整の計算に使った給与所得者の扶養控除等(異動)申告書などの書類は、税務署に提出する必要がありません。
 しかし、給与所得の源泉徴収票等の法定調書合計表や源泉徴収票、支払調書、給与支払報告書は、税務署や市区町村などに提出する必要があります。

1 扶養控除等申告書
(1) 国税庁HPに扶養控除等申告書の記載例が載っています。
(2) 国税庁HPの「給与所得者(従業員)の方へ(令和4年分)」には以下の記載があります。
 従業員の方は「扶養控除等申告書」を、その年の最初の給与の支払を受ける日の前日までに勤務先(2か所以上から給与の支払を受けている人は、主たる給与の支払を受けている勤務先。)に提出することになっています。
 この申告書は、扶養親族や源泉控除対象配偶者などがいない人でも提出しなければならないこととされており、この申告書の提出のない人が支払を受ける給与に対する源泉徴収税額は、税額表の「乙」欄が適用されることになります(この申告書を提出した場合よりも高い税率が適用されます。)。
 また、年末調整においては、勤務先はこの申告書の情報から、扶養控除等の額(扶養控除、障害者控除、寡婦控除、ひとり親控除、勤労学生控除)を確認することとなります。
 そのため、まだ申告書を提出していない場合や、控除対象扶養親族等に異動があって「異動申告書」(注)の提出をしていない場合は、早急に提出をしましょう。
(注) 控除対象扶養親族であった人の就職、結婚などにより控除対象扶養親族の数が減少した場合など、年の中途で「扶養控除等申告書」の記載内容に変更があった場合には、その都度、「異動申告書」を提出することになっています。
(3) 非居住者である親族に係る扶養控除又は障害者控除の適用を受ける場合,その年最後に給与の支払を受ける日の前日までに,その親族と生計を一にする事実を記載した上で提出すれば足ります(国税庁HPの「[手続名]給与所得者の扶養控除等の(異動)申告」参照)。

2の1 基礎控除申告書

(1) 基礎控除申告書は令和2年分から新しく設けられた申告書であり,国税庁HPに基礎控除申告書の記載例が載っています。
(2) 令和元年分までは,合計所得金額に関わらず一律38万円の控除を受けることができましたが,令和2年分以降は,年末調整において基礎控除(最大48万円の控除)の適用を受けるときは,従業員が勤務先に基礎控除申告書を提出する必要があります。
(3)ア 芦屋会計事務所HP「【年末調整】給与所得者の基礎控除申請書の書き方は?収入金額や独身など」には以下の記載があります。
 独身者で「扶養親族等がいない」「特別障害者ではない」のであれば、記入項目は基本情報と給与所得者の基礎控除申請書だけとなります。
イ タウンワークマガジンHP「副業がバレない方法はないの?バレる理由は?バレるとどうなる?」には以下の記載があります。
 年末調整の際に、「給与所得者の基礎控除申告書兼給与所得者の配偶者控除等申告書兼所得金額調整控除申告書」を提出します。その中の「給与所得者の基礎控除申告書」には、「給与所得」記載欄があり、これは副業分も含めて合算で記載する必要があります。また、副業が給与所得でない場合でも、「給与所得以外の所得の合計額」欄に額を記載する仕組みとなっています。

2の2 配偶者控除等申告書
(1) 国税庁HPに配偶者控除等申告書の記載例が載っています。
(2) 国税庁HPの「給与所得者(従業員)の方へ(令和4年分)」には以下の記載があります。
 「配偶者控除」とは、従業員の方の合計所得金額が1,000万円以下で、その従業員の方と生計を一にする配偶者の合計所得金額が48万円以下である場合に受けられる控除で従業員の方の合計所得金額に応じて38万円を限度として控除されます(配偶者が70歳以上の場合は、48万円を限度として控除されます。)。
 「配偶者特別控除」とは、従業員の方の合計所得金額が1,000万円以下で、その従業員の方と生計を一にする配偶者の合計所得金額が48万円を超え133万円以下である場合に受けられる控除です。従業員の方の合計所得金額と配偶者の合計所得金額に応じて38万円を限度として控除されます。
 年末調整において「配偶者控除」又は「配偶者特別控除」を適用するためには、勤務先に「配偶者控除等申告書」を必ず提出する必要があります。

2の3 所得金額調整控除申告書

(1) 国税庁HPに所得金額調整控除申告書の記載例が載っています。
(2) 「所得金額調整控除」とは,年末調整の対象となる給与の収入金額が850万円を超える人が次のいずれかの要件を満たす場合に適用される控除です。
① 23歳未満の扶養親族を有する場合
② 従業員ご本人が特別障害者である場合
③ 従業員の扶養親族や同一生計配偶者が特別障害者である場合
(3) 年末調整において「所得金額調整控除」を適用するためには,勤務先に「所得金額調整控除申告書」を必ず提出する必要があります。

3 保険料控除申告書

(1) 国税庁HPに保険料控除申告書の記載例が載っています。
(2) 生命保険料や地震保険料については「保険料控除申告書」に基づいて控除の適用を受けます。

4 住宅借入金等特別控除申告書
(1) 国税庁HPに住宅借入金等特別控除申告書の記載例が載っています。
(2) 国税庁HPの「給与所得者(従業員)の方へ(令和4年分)」には以下の記載があります。
 「住宅借入金等特別控除」とは、住宅借入金等の年末残高に応じて、一定額を税額から直接差し引くことができる控除です。
 最初の年分は確定申告により適用を受ける必要がありますが、2年目以降は年末調整の際に適用を受けることができますので、年末調整の時までに「住宅借入金等特別控除申告書」を給与の支払者へ提出してください。
 なお、「住宅借入金等特別控除申告書」は、控除を受けることとなる各年分のものを一括して税務署から従業員ご本人に送付しています。
(3) 金融広報中央委員会HPに「7.住宅借入金等特別控除制度の仕組み」が載っています。

5 ふるさと納税及びワンストップ特例制度
(1) ふるさと納税の控除は年末調整ではできません(ふるさとチョイス「年末調整のとき、会社員はふるさと納税の証明は必要?理由とともに解説」参照)。
(2) ふるさと納税の謝礼として供与された返礼品に係る経済的利益は一時所得に該当します(国税庁HPの「ふるさと納税の返礼品の収入計上時期」参照)。
(3)ア ワンストップ特例制度は,ふるさと納税をした後に確定申告をしなくても寄付金控除が受けられる便利な仕組みでありますところ,ワンストップ特例制度を利用するためには,申請書と必要書類は寄付をした翌年の1月10日必着で寄付先の自治体に送る必要があります(ふるさとチョイスの「ワンストップ特例制度」参照)。
イ さとふるHPの「確定申告を行った場合とワンストップ特例制度を申請した場合、受ける控除は異なりますか?」には以下の記載があります。
 確定申告を行うと、ふるさと納税を行った年の所得税からの控除(還付)と、翌年の住民税から控除されます。
一方、ワンストップ特例制度の場合は、所得税の還付は無く、住民税の減税のみの控除となります。
 多くの方の場合はどちらで控除を受けられても控除額は同等となりますが、ご自身について正確な確認を行いたい場合は、最寄りの税務署や税理士等へお問い合わせいただきますようお願いいたします。


6 年末調整の計算サイト
(1) 最強の税務情報提供サイトMyKomon TAX「年末調整用 給与所得金額計算」が載っています。
(2) 生活や実務に役立つ計算サイト「源泉徴収票(給与所得)」が載っています。

7 年末調整で過納額が出た場合の取扱い
(1) Bizerの「年末調整で還付があった場合の納付書(給与所得等の所得税徴収高計算書)の書き方」には「摘要」欄の記載に関して以下の記載があります。
相談者:年末調整で還付される金額が「172,174円」でも、「年末調整による超課税額」欄は「134,282円」と記入して、「172,174円」ではないのですね。
村田税理士:はい、ここの欄は、今回の納付所得税額から控除する金額を記載するので、本税が0円になる金額の「134,282円」を記載します。
相談者:記載例の吹き出しを見ると、税金0円の場合でも税務署への提出は必要なのですね。忘れないように注意します。
(2)ア 源泉所得税の納期特例を利用している給与等の支払者が年末調整により生じた過納額を給与等の受給者に還付する場合,3月1日までに過納額の還付を受けることはできませんから,所得税法191条及び所得税法施行令313条に基づき,源泉所得税及び復興特別所得税の年末調整過納額の還付請求をすることができます(国税庁HPの「[手続名]源泉所得税及び復興特別所得税の年末調整過納額の還付請求」参照)。
イ 年末調整過納額の還付請求をする場合,年末調整により過納額が生じた給与等の受給者各人ごとの給与所得の源泉徴収簿(過納額が生じた年分と過納額を還付する年との2年分)の写し1部が必要となります。
(3)ア 年末調整過納額の還付請求は,所得税法施行令313条及び所得税基本通達191-2(過納額が著しく過大である場合の還付の特例)に基づく取扱いですから,当該請求をしない場合,所得税法施行令312条及び所得税基本通達191-1(過納額の計算上控除された未徴収の税額)に基き,翌年7月の源泉所得税から年末調整還付金を控除できると思います。
イ 所得税基本通達191-1(過納額の計算上控除された未徴収の税額)は以下のとおりです。
法第191条に規定する過納額の計算上同条かっこ内の規定により超過額から控除されたまだ徴収されていない部分の金額に相当する税額は、その後においてはその徴収を要しないものとする。この場合において、当該税額をその後において徴収したときは、その徴収の時に当該徴収した金額に相当する当該過納額が生じたものとする。
ウ 総務の森HPの「納期の特例による源泉所得税の納め過ぎについて」が参考になります。

8 関連記事その他

(1) 国税庁HPの「年末調整計算シート」に,給与所得者に対する源泉徴収簿(PDF)及び年末調整計算シート(エクセル)が載っています。
(2) 税務研究ノート(栗原洋介税理士事務所)「ペーパーレスで年末調整するなら、10月末までに申請しておこう」が載っています。
(3) ウェルスハックHP「【早見表付】年収200万円~1億円の手取り|計算式と簡易計算方法も解説」が載っています。
(4) 「税理士又は税理士法人が行う付随業務の範囲に関する確認書」(平成14年6月6日付)には「年末調整に関する事務は、税理士法第2条第1項に規定する業務に該当し、社会保険労務士が当該業務を行うことは税理士法第52条(税理士業務の制限)に違反する。」と書いてあります。
(5) 以下の記事も参照してください。
・ 個人事業主の税金,労働保険及び社会保険に関するメモ書き