目次
1 税務における前期損益修正
2 会計における前期損益修正損
3 制限超過利息の受領に関して過年度の会計処理を遡及訂正できないこと
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1 税務における前期損益修正
(1)ア 法人税基本通達2-2-16(前期損益修正)は以下のとおりです。
当該事業年度前の各事業年度(その事業年度が連結事業年度に該当する場合には、当該連結事業年度)においてその収益の額を益金の額に算入した資産の販売又は譲渡、役務の提供その他の取引について当該事業年度において契約の解除又は取消し、返品等の事実が生じた場合でも、これらの事実に基づいて生じた損失の額は、当該事業年度の損金の額に算入するのであるから留意する。
イ 弁護士法人三宅法律事務所HPの「前期損益修正と一般に公正妥当と認められる会計処理の基準」に,法人税基本通達2-2-16を踏まえた解説が載っています。
(2) 事業所得として課税の対象とされた金銭債権が後日貸倒れ等により回収不能となったときは,その回収不能による損失額を,当該回収不能の事実が発生した年分の事業所得の金額の計算上,必要経費に算入すべきものとされ,これによつて納税者は実質的に先の課税について救済を受けることができます(旧所得税法に関する最高裁昭和53年3月16日判決参照)。
(2) 国税不服審判所昭和63年4月8日裁決には「法人の各事業年度の所得金額は、一般に公正妥当と認められる会計処理の基準に従って計算するものとされているが、この会計処理の基準によれば、所得の金額の計算の基礎となった事実について、その事業年度経過後にその事実を変更する事由が生じた場合には、その事由が生じた事業年度の損益として認識し、既往の事業年度にさかのぼって所得の金額を修正すべきでないとされている。」と書いてあります。
2 会計における前期損益修正損
(1) 税理士法人杉山会計事務所HPの「前期損益修正の取扱い 会計と税務の違い」には,「会計も税務も、いわゆる「継続企業の原則」に基づき、このような後発的な事由によって生じた損失については、過去の事業年度に遡って修正することはしないで、原則、その解除や取消し等の事実が生じた事業年度に「前期損益修正損」として計上し、税務も当該修正損は損金の額に算入されます。」と書いてあります。
(2) 平成23年以降につき,「中小企業の会計に関する指針」等に従い会計処理をする中小企業については「前期損益修正損」を使えるのに対し,「会計上の変更及び誤謬の訂正に関する会計基準」(令和3年3月以降については,「会計方針の開示、会計上の変更及び誤謬の訂正に関する会計基準」です。)に従い会計処理をする企業については「前期損益修正損」を使えなくなりました(マネーフォワードの「特別損益とは?特別損失と特別利益として計上される具体例とともに解説」参照)。
3 制限超過利息の受領に関して過年度の会計処理を遡及訂正できないこと
(1) 利息制限法による制限超過の利息・損害金のうち,現実に収受されたものは貸主の所得として課税の対象となるのに対し,その約定の履行期が到来しても,なお未収であるものは課税の対象となるべき所得を構成しません(最高裁昭和46年11月9日判決)。
(2) 法人が受領した制限超過利息等を益金の額に算入して法人税の申告をし,その後の事業年度に当該制限超過利息等についての不当利得返還請求権に係る破産債権が破産手続により確定した場合において,当該制限超過利息等の受領の日が属する事業年度の益金の額を減額する計算をすることは,一般に公正妥当と認められる会計処理の基準に従ったものとはいえません(クラヴィスに関する最高裁令和2年7月2日判決。なお,TFK(旧武富士)に関する東京高裁平成26年4月23日判決も同趣旨の判示をしています。)。
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