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71期以降の司法修習生に対する戒告及び修習の停止(AIリライト)

第71期以降の司法修習生には,従来からある罷免に加え,修習の停止及び戒告という法的処分が設けられている。本記事では,その適用対象,処分事由,報告手続,修習停止の効果,戒告の取扱い,制度導入の経緯及び公開資料から分かる処分実績の限界を整理する。

第1 第71期以降が対象となる理由及び処分の種類

1 第71期以降が対象となる理由

裁判所法の一部を改正する法律(平成29年法律第23号)は,裁判所法68条を改正し,司法修習生に対する修習の停止及び戒告を新設した。同法は平成29年11月1日に施行され,附則4条により,改正後の68条は施行日後に採用された司法修習生に適用されるため,最初の対象期は第71期である。

施行日前に採用された司法修習生については,なお従前の例による。したがって,「第71期以降」という区分は単なる便宜的な期別区分ではなく,平成29年法律第23号附則4条に根拠がある。

2 司法修習生の法的地位

最高裁判所の司法修習生に関する公式案内は,司法修習生は国家公務員ではないが,これに準じた身分にあるものとして扱われ,兼業・兼職の禁止,修習専念義務及び守秘義務等を負うと説明している。戒告及び修習の停止は,この司法修習生としての特別な法的地位を前提に,裁判所法及び最高裁判所規則によって定められた処分である。

3 罷免・修習の停止・戒告の区別

裁判所法68条は,成績不良等を理由とする罷免と,非違行為を理由とする罷免・修習の停止・戒告を分けて規定している。非違行為に対する3種類の処分は,次のように区別される。

処分根拠主な法的効果
罷免裁判所法68条2項,司法修習生に関する規則17条2項司法修習生の身分を失う。
修習の停止裁判所法68条2項,司法修習生に関する規則18条1日以上20日以下,身分は保有するが修習はできない。
戒告裁判所法68条2項法的処分として非違行為を戒める。

これらは,修習実施庁又は弁護士会による日常的な注意・指導とは異なり,最高裁判所が行う法的処分である。もっとも,裁判所法及び規則は,個々の非違行為と処分の種類を一対一で対応させる量定表を置いていない。

第2 処分事由及び最高裁判所への報告手続

1 非違行為に対する処分事由

裁判所法68条2項は,司法修習生に,品位を辱める行状その他の司法修習生たるに適しない非行に当たる事由として最高裁判所の定める事由があると認めるとき,最高裁判所が罷免,修習の停止又は戒告をすることができると定める。司法修習生に関する規則17条2項及び18条は,その事由を「品位を辱める行状,修習の態度の著しい不良その他これらに準ずる事由」と定めている。

成績不良,心身の故障その他の修習を継続することが困難な事由による罷免は,同規則17条1項の問題である。非違行為に対する同条2項の処分とは要件が異なるため,両者を混同してはならない。

2 報告経路

同規則19条1項は,司法研修所長が,規則17条所定の事由の有無を最高裁判所に報告することを定める。司法修習生に関する規則19条2項により,高等裁判所長官,地方裁判所長,検事長,検事正及び弁護士会長は,それぞれの庁又は弁護士会で修習する司法修習生について,司法研修所長を経由して最高裁判所に報告する。

修習実施庁及び弁護士会は,非違行為の有無を報告する立場にあるが,戒告又は修習の停止を決定する主体ではない。法令上の処分権者は最高裁判所である。

3 対象となる司法修習生への説明の機会

最高裁判所の令和3年度(最情)答申第26号が特定した司法研修所の運用資料には,規則19条の報告に際し,対象となる司法修習生に事実関係等を説明する機会を与える取扱いが記載されている。司法研修所長自身が報告する場合についても,同様の取扱いが示されている。

これは,公開された司法研修所の運用資料から確認できる手続保障である。ただし,行政手続法上の聴聞又は弁明の機会の付与と同一であるとまでは,この答申から断定できない。

4 処分選択の基準

平成29年の国会審議では,人事院の「懲戒処分の指針」も参考にしつつ,司法修習生の特殊な身分を考慮し,事案ごとに処分を判断する旨が説明された。その一方で,令和3年度(最情)答申第19号によれば,修習停止の開始時期を一般的に定めた文書は存在せず,事案に応じて判断される。

また,令和3年度(最情)答申第32号によれば,司法修習生相談窓口から非違行為を報告する場合の具体的基準を定めた文書も存在しない。したがって,公開資料から整理できるのは考慮要素の概略までであり,行為類型ごとの確定的な処分量定表が公表されているわけではない。

第3 修習の停止の期間及び効果

1 1日以上20日以下の暦日

司法修習生に関する規則18条1項は,修習の停止の期間を1日以上20日以下と定める。停止期間中も司法修習生の身分は保有するが,修習をすることはできず,停止日は修習を欠席したものとして扱われる。

第33回司法修習委員会議事録によれば,この期間は暦日で計算される。上限を20日としたのは,それを超える長期の停止により修習の継続が事実上困難となり,罷免と同様の結果が生じることを避ける制度設計である。

2 修習給付金への影響

同規則18条2項は,停止期間中は裁判所法67条の2第1項の修習給付金を受けることができないと定める。もっとも,司法修習生の修習給付金の給付に関する規則及び最高裁判所の現行案内によれば,基本給付金及び住居給付金は,停止期間を含む給付期間について,停止日数を除外して日割計算される。

したがって,「修習停止のある給付期間の給付金が全部支給されない」という意味ではない。また,移転給付金は住所又は居所の移転に伴う給付であり,基本給付金及び住居給付金と同じ日額給付として一括して説明するのは正確でない。

旧給費制の下で支給されていた給与と,現在の修習給付金とは法的に別の制度である。旧給費制の取扱いを沿革として参照する場合でも,現行制度における停止時の給付効果は,現行の裁判所法及び給付規則に基づいて説明する必要がある。

第4 戒告の位置付け及び注意・指導との区別

1 戒告は最高裁判所による法的処分であること

戒告は,裁判所法68条2項に明記された最高裁判所による法的処分である。第33回司法修習委員会では,最高裁判所事務総局の事務局が,戒告は法的な懲戒処分であるため,履歴書の「賞罰」欄に記載すべきものとの見解を示した。

これに対し,委員からは,将来にわたり不利益な影響が残り続けることへの懸念も示された。この議論は制度制定時の運用上の見解であり,戒告歴の記載期間又は保存期間を直接定める法令上の効果として扱うべきではない。

2 注意・指導との区別

制度導入前から,司法研修所及び実務修習地では,非違行為に対して法的処分ではない注意・指導が行われていた。戒告は,このような日常的な注意・指導と,司法修習生の身分を失わせる罷免との間に置かれた法的処分である。

現在の第79期司法修習生採用選考申込みの手引8頁は,最高裁判所の許可を得ない兼職,兼業又は兼学が,罷免,修習の停止,戒告又は注意の対象となることがあると明記する。これは現在の司法修習生に事前に示された注意事項であり,実際にその行為について処分が行われた事例を公表するものではない。

3 不服申立てとの関係

裁判所法及び司法修習生に関する規則には,戒告又は修習の停止に固有の不服申立手続は置かれていない。一般の司法審査による救済の可否は,処分性,出訴期間,停止期間の経過後における訴えの利益その他の事情に左右されるため,本記事では一律の結論を示さない。

罷免通知に記載された出訴期間の教示については,司法修習生の罷免に対する不服申立方法で紹介している。もっとも,罷免と戒告又は修習の停止とでは処分の効果が異なるため,罷免に関する教示をそのまま後二者に当てはめることはできない。

第5 戒告及び修習の停止が新設された経緯

1 改正前の制度

平成29年改正前の裁判所法は,非違行為に対する法的処分として罷免だけを定めていた。罷免に至らない非違行為については,法的処分ではない注意・指導によって対応していたため,両者の間を埋める処分が存在しなかった。

2 制度導入前に国会で示された件数

参議院法務委員会平成29年4月18日会議録によれば,最高裁判所は,非違行為を理由とする司法修習生の罷免が当時までに4件あったと説明した。また,直前5年間には,法的処分ではない注意等を行った事案が65件あり,その例として,模擬裁判記録の紛失,速度超過その他の交通法規違反等が示された。

この4件及び65件は,修習の停止及び戒告が導入される前の実績である。第71期以降の戒告又は修習停止の件数として引用してはならない。

3 制度導入の目的

衆議院法務委員会平成29年3月21日会議録では,修習給付金制度の創設に伴い,国費の支給を受ける司法修習生に修習専念義務を履行させるための制度を整える必要があると説明された。同時に,罷免と注意・指導との間に修習の停止及び戒告を設けることにより,非違行為の内容に応じた柔軟かつ実効的な対応を可能にすることが制度趣旨とされた。

政府は,従来から注意・指導の対象となっていた行為を新制度によって法的に明確化する趣旨であり,司法修習生の自主的な活動を制約又は萎縮させる意図はないとも答弁した。処分制度の導入理由と修習給付金制度の創設は,同じ平成29年改正の中で結び付けて説明されていた。

4 制度評価をめぐる当時の議論

青年法律家協会弁護士学者合同部会の平成29年4月5日声明は,過去の司法修習生罷免事件等を背景に,最高裁判所による司法修習生への統制が強まるとの懸念を示して改正に反対した。これは制度導入に反対する団体の評価であり,現行法の処分要件又は実際の運用実績そのものを示す資料ではない。

これに対する政府答弁は,自主的活動を萎縮させる意図を否定し,従来の注意・指導の対象を法的に明確化するものと説明した。制度の沿革を理解する際は,改正の公式な目的と,当時表明された統制強化への懸念とを区別して読む必要がある。

第6 第71期以降の処分件数について公開資料から分かること

1 第71期の件数文書は不存在とされたこと

最高裁判所の令和元年度(最情)答申第35号によれば,第71期司法修習生に対する戒告及び修習の停止の各件数が分かる文書は,作成又は取得されていないとされた。この答申から分かるのは,請求対象となった「件数が分かる文書」を最高裁判所が保有していなかったということである。

文書不存在は,戒告又は修習停止が0件であったことを意味しない。不開示通知又は答申を処分実績のゼロ証明として扱うことはできない。

2 処分事由に関する報告文書は存在したこと

同じく最高裁判所の令和元年度(最情)答申第57号によれば,第71期司法修習生について,裁判所,検察庁又は弁護士会から,罷免,修習の停止又は戒告の事由の有無に関して報告された文書は存在した。しかし,司法修習生の氏名,具体的行為及び調査内容等に関わるとして,文書名,様式及び頁数を含めて全部不開示とされた。

この答申は,非違行為の有無に関する報告文書が存在したことを示すが,報告を受けて最終的に戒告,修習停止又は罷免が行われたことまでは示さない。「報告があったこと」と「最終処分があったこと」は別の事実である。

3 理由の公表が限定される背景

令和元年度(最情)答申第60号では,司法修習生の罷免理由等は本人の社会的評価に直結する機微な情報であり,一般的な公表制度がなく,公表により関係者からの事情聴取等に支障が生じる可能性があるとの説明が示された。この説明は,個別の非違行為及び処分理由に関する公開情報が限られる背景を理解する資料となる。

もっとも,秘密性が高いことから直ちに処分件数まで非公表でなければならないという結論が導かれるわけではない。本記事で確認した公表資料の範囲では,第71期以降の期別の最終処分件数を一括して確認できる資料は見当たらなかった,という範囲にとどめるのが正確である。

4 第72期に関する不開示通知

第72期についても,戒告件数に関する最高裁判所の不開示通知書及び修習停止件数に関する最高裁判所の不開示通知書がある。従前の記事はこれらを第71期の資料として紹介していたが,リンク先の通知書はいずれも第72期に関する資料である。

これらの不開示通知についても,文書を保有していないことと処分が0件であることを区別する必要がある。期別件数を記載する場合は,公表された集計資料の有無と,個別の処分実績の有無とを分けて示すべきである。

第7 関連記事

1 制度・規則・罷免に関する記事

制度が追加された立法上の理由については,司法修習生に対する戒告及び修習の停止が追加された理由で資料を紹介している。また,改正前の規則については,平成23年8月18日までの司法修習生に関する規則15条及び16条を参照されたい。

罷免の人数に関する公開資料は,司法修習生の罷免人数で整理している。罷免は戒告及び修習の停止と法的効果が異なるため,制度の比較に当たっては区別が必要である。

第8 出典・参考資料

1 現行法令及び最高裁判所資料

① e-Gov法令検索「裁判所法」。裁判所法66条から68条までの現行条文を確認した。

② 最高裁判所「司法修習生に関する規則及び司法修習生の修習資金の貸与等に関する規則」。司法修習生に関する規則17条から19条までを確認した。

③ 最高裁判所「第33回司法修習委員会議事録」5頁~12頁。修習停止の期間・効果,戒告の取扱い及び制度設計に関する審議を確認した。

④ 最高裁判所「司法修習生の修習給付金の給付に関する規則」及び「司法修習生の修習給付金について」。修習停止期間を含む給付期間の日割計算を確認した。

⑤ 最高裁判所「第79期司法修習生採用選考申込みの手引」8頁。許可を得ない兼職,兼業又は兼学に関する現在の注意事項を確認した。

2 改正法及び国会会議録

① 衆議院「裁判所法の一部を改正する法律(平成29年法律第23号)」。施行日及び附則4条の適用関係を確認した。

② 衆議院法務委員会平成29年3月21日会議録及び参議院法務委員会平成29年4月18日会議録。制度趣旨,従前の対応件数及び処分選択の考え方を確認した。

③ 法務省「裁判所法の一部を改正する法律について」。修習給付金制度と同時に行われた改正の概要を確認した。

3 情報公開答申及び制度評価資料

① 最高裁判所の令和元年度(最情)答申第35号第57号及び第60号。第71期の件数文書,非違行為に関する報告文書及び処分理由の非公表に関する判断を確認した。

② 最高裁判所の令和3年度(最情)答申第19号第26号及び第32号。修習停止の開始時期,対象者への説明の機会及び相談窓口からの報告基準を確認した。

③ 青年法律家協会弁護士学者合同部会「修習給付金制度の創設と同時に司法修習生に対する統制を強化する裁判所法改正に反対する声明」。制度導入に対して当時表明された反対意見として参照した。