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暗号資産に関する令和8年金融商品取引法改正の内容と施行時期(AI作成)

第1 令和8年改正の現在地

1 令和8年法律第64号の成立と未施行部分

「金融商品取引法及び資金決済に関する法律の一部を改正する法律」は,令和8年4月10日に第221回国会へ提出され,同年7月15日に成立し,同月23日に令和8年法律第64号として公布された。暗号資産に関する本体部分の施行日は,公布の日から1年以内の政令で定める日であり,令和8年8月20日現在,その政令は公布されていない。

したがって,暗号資産交換業の登録,監督及び利用者財産の管理に関する現行の中心法令は,なお資金決済に関する法律である。同法2条14項から16項までが暗号資産,暗号資産交換業及び暗号資産交換業者を定義し,同法63条の2が内閣総理大臣の登録を要求している。改正法が成立したことと,暗号資産取引業の新制度が施行されたことは区別しなければならない。

2 改正の中心と記事の射程

改正の中心は,暗号資産を有価証券とは異なる金融商品として金融商品取引法に位置付け,①暗号資産に関する情報公表,②暗号資産取引等の業規制,③無登録業者への対応,④インサイダー取引を含む不公正取引規制を一つの法体系に置くことである。本記事は,生成AIを条文索引及び資料間の照合に利用した上で,令和8年8月20日までに公表された法令,金融庁資料及び国会資料によって確定できる内容と,今後の政令・内閣府令等に委ねられた内容を分けて説明する。

金融審議会の報告によれば,国内の暗号資産口座は令和7年10月時点で1300万口座を超え,利用者預託金残高は5兆円を超えていた。その後に作成された金融庁の法案説明資料は口座数を1400万超としている。利用の拡大,投資目的での保有,詐欺的勧誘,情報の非対称性及び市場の公正性が,資金決済法中心の制度を見直す背景となった。

第2 資金決済法から金融商品取引法への移行

1 改正の経過

制度改正は,金融審議会「暗号資産制度に関するワーキング・グループ」が令和7年12月10日に公表した報告を基礎とする。政府は令和8年4月10日に法律案を提出し,衆議院は同年6月11日,参議院は同年7月15日に可決した。同月23日の公布後,無登録営業の罰則強化等の一部だけが同年8月12日に先行施行されている。

年月日出来事法的な位置付け
令和7年12月10日暗号資産制度に関するワーキング・グループ報告の公表制度設計の基礎資料
令和8年4月10日法律案を第221回国会へ提出内閣提出第57号
令和8年7月15日参議院本会議で可決・成立法律として成立
令和8年7月23日令和8年法律第64号の公布本体施行日は別途政令で指定
令和8年8月12日一部規定の先行施行無登録営業の罰則強化及び証券取引等監視委員会の犯則調査範囲の拡大等

2 暗号資産は有価証券そのものになるわけではない

改正後の金融商品取引法2条49項は暗号資産を定義し,同条50項から55項までに特定暗号資産,暗号資産の発行者,募集・売出し,暗号資産管理関連業務及びその届出業者等の定義を置く。もっとも,暗号資産を金商法へ移すことは,暗号資産を同法2条1項又は2項の有価証券に変えることを意味しない。情報公表及び業規制には有価証券規制との共通点があるが,暗号資産の性質に応じた独立の規定である。

他方,トークンが集団投資スキーム持分その他の有価証券に該当するときは,従来どおり有価証券規制の問題となる。名称が暗号資産又はトークンであることだけで適用法令は決まらない。また,法定通貨建ての価値の安定を図る電子決済手段は,暗号資産とは別に資金決済法の規律に残る。NFTも一律に対象外となるのではなく,利用目的,流通性その他の事情から暗号資産の定義を満たすかによって決まる。

第3 暗号資産に関する情報公表制度

1 発行者と取引業者の役割分担

改正法は,有価証券届出書と同一の仕組みを暗号資産へそのまま当てはめるのではなく,発行者と暗号資産取引業者のどちらが情報を保有し,資金調達を行うかによって公表主体を分ける。発行者による資金調達型では,発行者が募集又は売出しの前に暗号資産及び発行者に関する情報を公表する。発行者が存在しない,又は取引業者が独立して取り扱う暗号資産では,取引業者が取扱開始前に暗号資産の内容,リスクその他の情報を公表する。

無償配布やマイニング報酬まで一律に募集・売出しとする制度ではなく,少人数又は適格機関投資家等を相手方とする場合の除外も設けられる。もっとも,対象人数,公表様式及び公表方法の細部は政令・内閣府令等によって具体化されるため,現段階で有価証券の私募要件をそのまま当てはめることはできない。

2 継続公表と発行者が特定しにくい暗号資産

発行者には,原則として事業年度ごとの情報及び重要な事象が生じた場合の情報を継続して公表する義務が課される。改正後の金融商品取引法27条の50及び27条の51がその中心となる。発行後に開発主体が消滅した場合や,分散型の仕組みのため継続公表を担う発行者を実質的に特定できない場合には,所定の手続を経て発行者の継続公表を免除し,取引業者による情報公表へ移す仕組みが用意されている。

公表制度の実効性を確保するため,虚偽情報について民事責任,課徴金及び刑事罰が設けられる。他方,公表情報に対する監査の範囲,技術説明の粒度,重要事実の公表時期等は,下位法令及び自主規制規則の整備を待つ必要がある。

3 未監査の発行者による販売上限は未確定である

改正後の金融商品取引法27条の59は,特定暗号資産発行者が公表する財務計算に関する情報について,原則として利害関係のない公認会計士又は監査法人の監査証明を求める一方,払込額が少額であるものとして政令で定める場合に例外を設ける。金融庁の法案説明資料は,この例外により監査を受けない発行者の暗号資産について,投資者一人当たりの取得額を制限する案を示している。資料に掲げられた案は,取得額が50万円を超える場合に年収又は純資産の5%以下とし,年間200万円を上限とする一方,特定投資家には上限を設けないというものである。

しかし,これらの金額及び割合は法律本文に確定値として書かれたものではなく,内閣府令等で定める予定の内容である。施行前に「50万円,5%,200万円」を確定した現行要件として用いることはできない。

第4 暗号資産取引等の業規制

1 交換業から暗号資産取引業への再編

暗号資産の売買,交換,その媒介・取次ぎ・代理及び顧客資産の管理を業として行う者は,金融商品取引法上の暗号資産取引業者として登録を受ける制度へ移る。暗号資産の運用及び投資助言も,投資運用業又は投資助言・代理業の規律へ組み込まれる。暗号資産の貸借取引は金融商品取引業の対象に加えられ,暗号資産の売買等の媒介は金融商品仲介業の対象にもなる。

これは単なる所管法令名の変更ではない。広告・勧誘,契約締結前の説明,適合性,取引審査,利益相反管理及び不公正取引の防止を,金融商品取引法の投資者保護体系の中で一体的に扱う再編である。

2 取扱暗号資産と利用者保護

改正後の金融商品取引法43条の7は,必要な基準を満たさない暗号資産の取扱いを禁止する。金融庁資料は,流動性,法令遵守,移転記録その他の観点を下位法令等で定める方針を示している。また,同法35条の3を中心として,取扱暗号資産の審査,顧客の知識・経験・財産状況に応じた勧誘,取引審査その他の業務管理体制が求められる。

顧客資産の管理については,インターネットから遮断した方法による管理や,流出時の履行保証暗号資産の保有等,現行制度の安全管理を引き継ぐ。さらに,外部委託先に対する指示及びサービス品質管理に関する規律,顧客資産管理に用いる一定の情報システム等を継続提供する暗号資産管理関係業務提供者の事前届出及び安全管理,顧客被害を補償する責任準備金の積立てが加わる。ただし,責任準備金の額や届出対象となる管理関係業務の範囲は,下位法令で定められる。

3 無登録業者と海外事業者への対応

改正法は,無登録営業に対する法定刑を引き上げ,証券取引等監視委員会による裁判所への緊急差止命令の申立て,無登録業者の表示禁止及び一定の取引に関する民事上の効果を整備する。海外でライセンスを持つことだけでは,日本の居住者へ暗号資産取引業を提供するための登録に代わらない。

令和8年8月12日に先行施行されたのは,金融商品取引法上の無登録営業に関する罰則強化及び証券取引等監視委員会の犯則調査対象の拡大等である。暗号資産取引業の新登録制度,暗号資産固有の情報公表及びインサイダー取引規制まで同日に施行されたわけではない。

第5 暗号資産の不公正取引規制

1 インサイダー取引規制の新設

改正後の金融商品取引法171条の7から171条の10までは,国内の暗号資産取引業者が取り扱う暗号資産について,未公表の重要事実を知った一定の関係者による売買等を禁止する。対象者には,発行者,取引業者その他の関係者に加え,その者から重要事実の伝達を受けた第一次情報受領者が含まれる。自己の取引だけでなく,他人に利益を得させ,又は損失を回避させる目的で情報を伝達し,取引を推奨する行為も規制される。

重要事実は,①発行者に関する事実,②取扱いを行う暗号資産取引業者に関する事実,③大量の売買等に関する事実等に分けて法定される。大量売買の数値基準について,金融庁資料は発行済数量等の20%を案として示すが,この割合は下位法令で確定する事項である。

違反行為には,5年以下の拘禁刑若しくは500万円以下の罰金又はその併科,課徴金及び証券取引等監視委員会の調査が予定されている。暗号資産に投資商品としての規制を及ぼす一方で,国が価値又は安全性を保証する制度ではないことは,衆議院の附帯決議でも明記されている。

2 相場操縦,風説の流布及び有償の推奨

暗号資産については,インサイダー取引だけでなく,風説の流布,偽計,相場操縦等に対する規制及び課徴金制度も整備される。また,暗号資産について対価を受けて意見を表明する者には,その対価を受けた事実等の公表が求められる。広告であることを隠した推奨を市場の公正性の問題として扱う規定である。

インサイダー取引規制は,対象となる暗号資産であれば,登録業者の取引所内だけに限定されない制度として設計されている。ただし,DEXの運営主体をどのように特定し,登録又は監督を及ぼすかについては技術的・法的課題が残る。DEX上のすべての取引を直ちに国内業規制の対象と断定することはできない。

第6 施行日と既存事業者の経過措置

1 三つの施行時期を区別する必要がある

改正法の施行時期は一つではない。暗号資産制度を理解するためには,次の三層を分ける必要がある。

①令和8年8月12日には,無登録営業の罰則強化及び証券取引等監視委員会の犯則調査範囲の拡大等が先行施行された。

②暗号資産に関する情報公表,業規制及び不公正取引規制の本体は,令和8年7月23日の公布から1年以内の政令で定める日に施行される。令和8年8月20日現在,日は確定していない。

③同じ改正法に含まれるサステナビリティ情報開示等の一部には令和9年4月1日施行の規定があるが,この日付を暗号資産制度本体の施行日とみることはできない。

2 既存事業者に認められる期間

施行時に現に業務を行う事業者には,改正法附則5条から10条までに経過措置が設けられている。もっとも,すべての事業者が自由に2年間営業できる制度ではなく,現に行っている業務,既存顧客又は既存資産の範囲,期限内の申請及び行政庁の処分時期によって範囲が異なる。

対象原則的な猶予期限内に申請した場合追加手続
既存の暗号資産交換業者本体施行日から6か月登録又は変更登録の処分まで継続できるが,本体施行日から最長2年本体施行後2週間以内の届出,既存取扱暗号資産の情報を3か月以内に公表
新たに投資運用業又は投資助言・代理業等の対象となる既存事業者本体施行日から6か月期限内申請により処分まで継続できるが,本体施行日から最長2年本体施行後2週間以内の届出等。既存顧客・既存資産等の範囲に制限

既存の暗号資産交換業者が既に金融商品取引業者であるかによって,必要となる手続は新規登録又は変更登録に分かれる。経過措置を利用する事業者は,施行日が定まってから準備を始めるのではなく,取扱暗号資産,顧客類型,資産管理,外部委託,広告・勧誘,情報公表及び不公正取引管理を現行業務と対応付けておく必要がある。

第7 分離課税と暗号資産ETFとの関係

1 分離課税は別の税制改正で成立している

暗号資産の税制改正は,令和8年法律第64号そのものではなく,令和8年3月31日に成立・公布された所得税法等の一部を改正する法律によって措置された。一定の暗号資産を暗号資産取引業者に対して譲渡等した場合,所得税15%及び個人住民税5%の合計20%(復興特別所得税を除く。)の申告分離課税とし,一定の損失について翌年以後3年間の繰越控除を認める。一定の暗号資産デリバティブ取引も分離課税の対象となる。

ただし,対象は暗号資産取引の全部ではない。税制上の対象は,金融商品取引業者登録簿に名称が登録された暗号資産等を,暗号資産取引業者に対して譲渡等する場合等に限定される。適用開始も令和8年ではなく,令和8年法律第64号の暗号資産本体部分の施行日が属する年の翌年1月1日以後である。本体の施行日が未確定である以上,分離課税の適用開始年も令和8年8月20日現在は確定していない。

2 二つの「特定暗号資産」は意味が異なる

改正後の金融商品取引法2条50項は,発行権限を特定の者だけが有する暗号資産等を「特定暗号資産」と定義する。他方,租税特別措置法上の申告分離課税に関する「特定暗号資産」は,金融商品取引業者登録簿に名称が登録された暗号資産等を指す。同じ用語であっても,発行構造を示す金商法上の定義と,分離課税の対象範囲を示す税法上の定義は一致しない。

3 本改正だけで暗号資産ETFは解禁されない

令和8年度税制改正は,暗号資産を投資対象とする一定のETFについて,投資信託及び投資法人に関する法律施行令が改正されることを前提に税制上の受皿を設けた。しかし,令和8年法律第64号は,暗号資産ETFの組成又は上場を個別に承認する法律ではない。

令和8年8月20日現在,必要な投信法施行令の最終的な改正及び個別商品の承認を確認できないため,「暗号資産ETFが本改正により解禁済み」とは整理できない。金商法上の投資者保護,税制上の取扱い,投信法上の組入資産及び取引所の上場審査は,それぞれ別に確認する必要がある。

第8 施行までに確定を待つ事項

1 政令・内閣府令・自主規制規則に残された事項

法律の骨格は成立したが,実務を確定するには,①本体施行日,②情報公表の様式・方法・監査,③少人数又は特定投資家向け取引の範囲,④未監査発行者の販売上限,⑤取扱暗号資産の基準,⑥適合性及び取引審査の方法,⑦重要な暗号資産管理関連業務の範囲,⑧責任準備金の額,⑨インサイダー取引の大量売買基準及び公表方法,⑩自主規制機関の規則を確認しなければならない。

そのため,事業者の準備では,法律上確定した登録区分,情報公表主体,禁止行為及び経過措置の期限を先に整理し,数値・様式・技術基準については案を確定要件としてシステムへ固定しない方法が適切である。投資者側でも,金商法の対象となること,分離課税の対象となること及び国が価値を保証することは別問題である。

2 直接の裁判例はまだ存在しない

暗号資産制度本体は未施行であるため,新設される情報公表義務,暗号資産取引業規制又はインサイダー取引規制を直接適用した裁判例は,時系列上まだ存在しない。既存の暗号資産に関する民事・刑事裁判例は,所有権,返還請求,詐欺,差押え,税務等の個別問題に関するものであり,新制度の要件又は射程を確定する先例にはならない。このため,本記事では関連性の乏しい裁判例を列挙していない。

第9 出典・参考資料

1 法令

金融商品取引法(昭和23年法律第25号)(e-Gov法令検索。令和8年8月20日取得)

資金決済に関する法律(平成21年法律第59号)(e-Gov法令検索。2条14項~16項,63条の2。令和8年8月20日取得)

金融商品取引法及び資金決済に関する法律の一部を改正する法律(令和8年法律第64号)(金融庁。改正法本文及び附則,525PDF頁)

所得税法等の一部を改正する法律(令和8年法律第12号)関係資料(財務省。成立日及び公布日は令和8年3月31日)

2 金融庁・財務省資料

金融審議会「暗号資産制度に関するワーキング・グループ」報告(金融庁,令和7年12月10日,3頁~36頁。PDFビューア上7頁~40頁)

第221回国会における金融庁関連法律案及び説明資料(金融庁,令和8年4月10日,説明資料2頁~5頁)

令和8年金融商品取引法等改正(20日後施行)に係る政令の公布について(金融庁,令和8年7月29日)

所得税法等の一部を改正する法律案要綱(財務省。租税特別措置法38条の2,38条の3関係)

令和8年度税制改正の大綱(1/9)(財務省,令和7年12月26日閣議決定。特定暗号資産の申告分離課税,損失の3年間の繰越控除及び暗号資産ETF関係)

租税特別措置法等(所得税関係)の改正(財務省『令和8年度税制改正の解説』328頁~337頁・351頁~352頁。PDFビューア上119頁~128頁・142頁~143頁)

3 国会資料

衆議院議案審議経過情報(内閣提出第57号。提出,衆議院議決,参議院議決及び公布の日)

衆議院財務金融委員会会議録第11号(第221回国会,令和8年6月10日)

参議院財政金融委員会会議録第12号(第221回国会,令和8年7月14日)

金融商品取引法及び資金決済に関する法律案に対する附帯決議(衆議院財務金融委員会,令和8年6月10日)