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家庭裁判所の参与員――役割,選任,権限及び裁判官との関係(AI作成)

第1 家庭裁判所の参与員とは

1 裁判官に意見を述べる非常勤の裁判所職員

家庭裁判所の参与員は,家事審判又は人事訴訟に国民の良識,社会生活上の経験及び専門的知見を反映させるため,個別事件について裁判官に意見を述べる者である。毎年選ばれる候補者の中から事件ごとに指定され,その事件に関与する間は非常勤の裁判所職員として職務を行う。

参与員は裁判官と合議体を構成せず,評決権を持たない。その意見は裁判官を法的に拘束せず,審判又は判決の結論を決める権限と責任は裁判官にある。この点で,一定の重大な刑事事件について裁判官とともに有罪・無罪及び刑を決める裁判員とは異なる。

2 家事審判と人事訴訟では関与の仕組みが異なる

参与員が関与する制度は,①家事事件手続法40条による家事審判と,②人事訴訟法9条による人事訴訟に分かれる。家事審判では,家庭裁判所が審判をするときに参与員の意見を聴くことが法文上の原則であり,裁判所が相当と認めるときは意見聴取を省略できる。人事訴訟では,裁判所が必要と認めるときに参与員を審理又は和解の試みに立ち会わせて意見を聴くことができる。

当事者には,特定の人物を参与員に選ぶ権利も,参与員の関与を裁判所に請求できる旨を定めた申立権もない。当事者が関与を希望する旨を述べることはできるが,関与させるかどうかは裁判所が判断する。

第2 家事審判における参与員の役割

1 意見聴取,期日への立会い及び質問

家庭裁判所は,参与員を家事審判の期日に立ち会わせることができる。期日に立ち会った参与員は,裁判長が相当と認めて許可した場合に限り,証人,当事者本人その他の関係人に直接質問できる。参与員に独立の尋問権があるわけではなく,質問は裁判長の手続指揮の下で行われる。

参与員は,家庭裁判所の許可を得て,申立人が提出した資料の内容について申立人から説明を聴くこともできる。ただし,この説明聴取は,参与員が独立して事実を調査し,又は新たな証拠を集める制度ではない。また,遺産分割,婚姻費用及び養育費等を含む家事事件手続法別表第2の事件には,この説明聴取の規定は適用されない。別表第2事件に参与員を一切関与させられないという意味ではなく,除外されるのは申立人提出資料に関する説明聴取である。

2 実際に関与し得る事件

裁判所の参与員制度の説明は,成年後見開始,氏又は名の変更,戸籍訂正及び未成年者養子縁組等を家事審判で参与員が関与する例として挙げている。相続放棄の申述について参与員が申立人から説明を聴いた事例も,後記の裁判例に現れている。

参与員が関与しても,医学的事項,財産関係又は法律関係を参与員だけで確定するわけではない。提出資料,裁判所による事実の調査,必要な証拠調べ及び参与員の意見を踏まえ,裁判官が審判をする。

第3 人事訴訟における参与員の役割

1 離婚訴訟等の審理及び和解への関与

人事訴訟には,離婚,認知,親子関係の存否確認及び離縁等に関する訴訟が含まれる。家庭裁判所は,必要と認めるとき,一人以上の参与員を審理又は和解の試みに立ち会わせ,事件について意見を聴くことができる。参与員は,証拠調べに立ち会い,社会生活上の経験等に基づいて意見を述べることが想定されているが,証拠の評価,法律の適用及び判決の結論は裁判官が決める。

人事訴訟規則8条によれば,裁判長は,参与員が証人,当事者本人又は鑑定人に直接質問することを許すことができる。ここでも,質問は裁判長の許可を要する。

2 先行する家事調停の調停委員との関係

離婚等の人事訴訟に先行して家事調停が行われた場合,人事訴訟規則6条は,家庭裁判所が参与員を指定するに当たり,その調停事件の調停委員であった者を指定しないよう意を用いなければならないと定めている。これは絶対的な欠格事由ではないが,非公開の調停で得た情報や心証が後続訴訟に影響する懸念に配慮した指定上の規律である。

第4 参与員の選任,資格及び身分

1 候補者の選任と事件ごとの指定

家庭裁判所は,毎年あらかじめ「徳望良識のある者」の中から参与員となるべき者を選任し,その候補者の中から個別事件について一人以上を指定する。参与員規則は,本庁及び同規則が定める支部ごとに,毎年少なくとも20人を選任するよう求めている。

特定の国家資格は必須ではない。裁判所は,弁護士,公認会計士,不動産鑑定士及び大学教授等の専門家のほか,地域社会で活動してきた者などを候補者の例として挙げている。現行の参与員規則には年齢の上限又は下限を定める規定はない。

2 欠格事由,選任の取消し及び報酬

参与員となるべき者に選任できないのは,①拘禁刑以上の刑に処せられた者,②公務員として懲戒免職を受けてから2年を経過しない者,③弾劾裁判所の罷免裁判を受けた者,④弁護士法による除名処分を受けてから3年を経過しない者である。参与員にふさわしくない行為があったときは,家庭裁判所が選任を取り消さなければならない。

参与員には旅費,日当及び宿泊料が支給される。令和7年7月1日以後の日当は,職務従事日及び旅行日について1日当たり1万0800円が上限であり,具体額は裁判所書記官が定める。

3 除斥,忌避及び秘密保持

事件の公正を確保するため,参与員には裁判官に準じた除斥及び忌避の制度がある。家事審判では家事事件手続法10条から14条まで,人事訴訟では人事訴訟法10条により準用される民事訴訟法23条から25条までが基本となる。当事者又はその近親者であること,事件で証人,鑑定人又は代理人等として関与したことなどは,具体的な除斥原因となり得る。

参与員又は参与員であった者が,正当な理由なく職務上取り扱ったことについて知り得た人の秘密を漏らしたときは,家事事件手続法292条又は人事訴訟法11条により,1年以下の拘禁刑又は50万円以下の罰金の対象となる。家事事件で裁判官又は参与員の意見を漏らした場合には,家事事件手続法293条により30万円以下の罰金の対象となる。

第5 令和8年5月からの遠隔関与

令和4年法律第48号による改正の関係部分が令和8年5月21日に施行され,家事審判と人事訴訟の双方について,参与員を音声の同時送受信によって期日等に関与させる明文の根拠が設けられた。家庭裁判所が相当と認め,当事者の意見を聴くことが要件であり,裁判所及び当事者の双方が参与員と同時に通話できる方法による。

家事事件手続規則27条及び人事訴訟規則6条の2は,裁判所が通話者及び通話場所の相当性を確認し,その旨を記録又は調書上明らかにするよう求めている。遠隔関与は参与員の移動負担を軽減し得る一方,家庭事件の秘密保持や第三者の同席防止が必要となるためである。

この改正は関与方法を遠隔化できるようにしたものであり,参与員に評決権又は独立の調査権を新たに与えたものではない。また,参与員の遠隔関与と,家事事件の申立てや記録全体のオンライン化は別の問題である。

第6 参与員の意見と国家賠償責任を扱った裁判例

1 さいたま地方裁判所平成21年1月30日判決

さいたま地方裁判所平成21年1月30日判決(平成20年(ワ)第2303号国家賠償請求事件)は,相続放棄の申述人らが参与員から2回の予備審問を受け,参与員が不受理相当の意見を述べ,家事審判官が申述を却下した事案に関する。抗告審が原審判を取り消して差し戻した後,申述人らは参与員の意見及び家事審判官の審判が違法であるとして国に損害賠償を求めた。

同判決は,上訴等による是正の仕組みがあること,参与員が裁判官の諮問機関にとどまること及びその意見の当否を明確に論じにくいことを考慮し,参与員が違法又は不当な目的で意見を述べたなどの特別の事情がなければ,国家賠償法上の職務上の注意義務違反にはならないとした。同判決は参与員の報告書に不合理な点があるとしながらも,そのような特別の事情を認めず,請求を棄却した。

2 判決の射程

この判決は地方裁判所の判決であり,最高裁判所が参与員の責任について一般的な基準を示したものではない。また,参与員が個別の申立人に職務上の注意義務を負うか,参与員の意見と損害との間に因果関係があるかを確定せず,これらの点を別として判断している。

さらに,事案は家事事件手続法の施行前に旧家事審判法の下で行われた予備審問に関する。現行の家事事件手続法40条4項は,参与員が説明を聴ける対象を申立人提出資料の内容に限定し,家庭裁判所の許可を必要としている。この判決を,現行法の下で参与員が申立人を自由に取り調べ,又は独自の事実認定資料を作成できる根拠とすることはできない。

第7 制度の沿革と公開統計

1 昭和22年から令和8年までの沿革

家事審判法(昭和22年法律第152号)3条は,家庭裁判所の発足前から参与員制度を設けていた。制定時の国会審議では,社会生活上の経験を家事審判に反映させるための諮問的な制度として説明され,参与員の意見は裁判官を拘束しない一方,尊重されるべきものとされた。家庭裁判所は,家事審判所と少年審判所を統合して昭和24年1月1日に発足したため,参与員制度は家庭裁判所の発足時に初めて創設されたものではない。

平成15年制定の人事訴訟法は,人事訴訟の第一審管轄を地方裁判所から家庭裁判所へ移し,平成16年4月1日から人事訴訟にも参与員制度を導入した。平成23年制定の家事事件手続法は旧制度を基本的に維持し,参与員による申立人提出資料の説明聴取を明文化した。令和4年改正による遠隔関与は,令和8年5月21日に施行された。

2 候補者数と過去の人事訴訟への関与

最高裁判所『裁判所データブック2026』24頁によれば,令和8年2月1日現在の参与員数は3749人である。この数は各家庭裁判所で選任されている候補者の数であり,その年に参与員が実際に関与した事件数又は延べ人数ではない。

最高裁判所事務総局家庭局が公表した過去の人事訴訟統計は,次のとおりである。

対象年既済人事訴訟参与員関与関与率双方出席・判決終局の離婚訴訟における関与
平成21年1万0547件858件8・1%2768件中531件(19・2%)
平成24年1万1840件510件4・3%3136件中327件(10・4%)

これは平成21年及び平成24年の二時点の調査結果であり,現在の関与率を示すものではない。令和8年8月20日までに,家事審判及び人事訴訟について,参与員の年間関与事件数,事件類型別内訳及び地域別利用率を継続的に示す最新の全国公開統計は確認できなかった。

第8 裁判官,調停委員,調査官及び裁判員との違い

制度主な場面中心的な役割裁判の結論を決めるか
裁判官家事審判,人事訴訟等事実認定,法解釈及び裁判決める
参与員家事審判,人事訴訟社会経験・専門知識等に基づく意見決めない
家事調停委員家事調停裁判官と調停委員会を構成し,合意形成を図る審判又は判決はしない
家庭裁判所調査官家事事件,少年事件行動科学等の専門性に基づく調査及び報告決めない
裁判員一定の重大刑事事件裁判官とともに有罪・無罪及び刑を判断する決める

参与員は,調停を成立させることを中心的な職務とする家事調停委員とも,行動科学等に基づく調査を行う家庭裁判所調査官とも異なる。複数の職種が同じ家事事件に関与することはあるが,それぞれの権限と役割を区別する必要がある。

第9 出典・参考資料

1 法令及び最高裁判所規則

2 裁判例

  • ① さいたま地方裁判所第5民事部平成21年1月30日判決・平成20年(ワ)第2303号国家賠償請求事件(裁判所HP掲載判決全文)。

3 立法資料及び公的資料

4 統計

5 文献

  • ① 金子修編著『逐条解説家事事件手続法』(商事法務,平成25年)43頁~45頁,124頁~127頁。
  • ② 金子修編著『一問一答家事事件手続法』(商事法務,平成24年)87頁~88頁。
  • ③ 最高裁判所事務総局家庭局『参与員の手引』(平成24年9月)1頁~35頁,61頁以下。なお,令和8年5月21日施行の遠隔関与改正前の資料である。