修習給付金

司法修習生の給費制と修習給付金制度との比較等

目次
1   司法修習生の給費制が実施されていた現行65期までの司法修習生の場合
2 司法修習生の修習給付金が実施される71期以降の司法修習生の場合
3 給費制下の給与及び貸与制下の貸与金を比較した一覧等
4 他の公的な研修制度の取扱い
5 会計検査院の決算検査報告における指摘
6 関連記事その他

* 給費制が廃止された後となる新65期以降の司法修習生の場合,地域手当が支給されることはないです。

1   司法修習生の給費制が実施されていた現行65期までの司法修習生の場合
(1)   司法修習生の取扱いは以下のとおりです(平成25年12月17日開催の第5回法曹養成制度改革顧問会議の資料3-1「司法修習生に対する支給等一覧」参照)。
① 月額20万4200円(新64期の場合)の給料,地域手当,扶養手当等を支給されており,給与所得として給与所得控除が適用されました。
② 裁判所共済組合の組合員として各種の給付を受けることができました。
③ 実務修習中,通勤手当,住居手当及び寒冷地手当を支給されていました。
④ 集合修習中,通勤手当,住居手当及び日額旅費を支給されていました。
(2)   弁護士になってからの2年間,裁判所共済組合の任意継続組合員として,引き続き短期給付及び福祉事業を受けることができました(共済組合の任意継続組合員の意義につき,文部科学省共済組合HPの「退職後の医療」参照)。
(3)ア 裁判所共済組合への加入実績に基づき,公務員厚生年金から老齢厚生年金を支給してもらえます。
  私のねんきん定期便によれば,59期徳島修習(1年6月の修習)(調整手当→地域手当は0%)で扶養手当をもらっていなかった私の場合,公務員厚生年金からの老齢厚生年金は年額2万7407円です。
イ 平成27年10月1日,共済年金は厚生年金に統合された結果,公務員厚生年金となりました(外部HPの「共済年金は厚生年金に統一されます」参照)。 
ウ 平成28年7月27日発表の平成27年簡易生命表の概況によれば, 平成27年現在,30歳男性の平均余命は51.46年であり(平均で81.46歳まで生きるということ。),30歳女性の平均余命は57.51年です(平均で87.51歳まで生きるということ。)。
  65歳から老齢厚生年金を受給できますから, 男性であれば平均で16.46年間,女性であれば平均で22.51年間,公務員厚生年金から老齢厚生年金を受給できることとなります。
エ 今後の年金の状況については,厚生労働省HPの「いっしょに検証!公的年金」にある,「財政検証結果レポート」(発表年は平成16年,平成21年及び平成26年)が非常に参考になります。
(4) 給与所得である点で確定申告をする必要がありませんでした。


法務省作成の,令和元年6月18日の参議院文教科学委員会の国会答弁資料

2 司法修習生の修習給付金が実施される71期以降の司法修習生の場合
(1)   司法修習生の取扱いは以下のとおりです。

① 月額13万5000円の基本給付金,月額3万5000円の住居給付金及び引越のための移転給付金は出ますものの,基本給付金及び住居給付金については雑所得として課税の対象となりますし,地域手当及び扶養手当はありません。
② 修習給付金は給与ではない点で裁判所共済組合の組合員となることはできません(国家公務員共済組合法2条1項1号・国家公務員共済組合法施行令2条2項4号「国及び行政執行法人から給与を受けない者」参照)から国民年金及び国民健康保険となります。
③ 実務修習中,通勤手当は出ませんから交通費は自腹になりますし,寒冷地手当は出ませんから寒冷地の実務修習地における暖房代等は自腹になります。
④ 集合修習中,通勤手当及び日額旅費は出ませんから交通費は自腹になります。
(2)   弁護士になってからの2年間,裁判所共済組合の任意継続組合員となることはできません。
(3) 裁判所共済組合への加入実績がありませんから,公務員厚生年金から老齢厚生年金を支給してもらうことはできません。
(4) 雑所得である点で確定申告をする必要がありますし,司法研修所の公式見解によれば必要経費がありませんから,その分,所得税及び住民税が高くなります。


3 給費制下の給与及び貸与制下の貸与金を比較した一覧等
(1) 平成25年1月30日開催の第8回法曹養成制度検討会議の資料3「法曹養成課程における経済的支援について」の資料14(PDF77頁,末尾73頁)に,給費制下の給与及び貸与制下の貸与金を比較した一覧表が載っています。 

(2)   新64期司法修習生の場合,毎月20万4200円の給与を支給されていたほか,諸手当として以下のものがありました。
① 扶養手当
   配偶者につき1万3000円,配偶者以外の扶養親族一人につき6500円等

② 住居手当
   家賃額に応じて2万7000円を限度に支給

③ 通勤手当
   交通機関等の利用者について一ヶ月あたり5万5000円を限度に支給

   自転車等の使用者について使用距離に応じて2000円~2万4500円を支給
④ 地域手当
   支給対象地域で修習を行う者について,給与月額等に,修習地の区分に応じた割合(3%~18%)を乗じて得た額を支給

⑤ 寒冷地手当
   支給対象地域で修習を行う者について,11月から3月までの間,修習地の区分等に応じて7360円~2万6380円を支給

⑥ 期末手当
   年間で,給与月額等の2.6月分を支給

⑦ 勤勉手当
   年間で,給与月額等の1.29月分を支給


4 他の公的な研修制度の取扱い
   平成25年1月30日開催の第8回法曹養成制度検討会議の資料3「法曹養成課程における経済的支援について」の資料15(PDF79頁,末尾75頁)によれば,他の公的な研修制度の取扱いは以下のとおりです。

① 防衛大学校
   陸上・海上・航空の各自衛隊の幹部自衛官となる者の教育訓練を目的としており,身分は防衛省職員であり,終了後は自衛隊に勤務し,学生手当等が支給され,期間は4年です。

② 防衛医科大学校
   医師である幹部自衛官となるべき者の教育訓練を目的としており,身分は防衛省職員であり,終了後は自衛隊に勤務し,学生手当等が支給され,期間は6年です。

③ 税務大学校
   税務職員に対する必要な研修等を目的としており,身分は税務職員であり,終了後は引き続き税務職員として勤務し,給与が支給され,期間は個々の研修によります。

④ 警察大学校
   上級幹部に対して必要な知識,技能,指導能力及び管理能力を習得させるための教養等を目的としており,身分は警察官であり,終了後は引き続き警察官として勤務し,給与が支給され,期間は個々の教養課程によります。

⑤ 航空大学校
    航空機の操縦士の教育訓練を目的としており,身分は学生(非公務員)であり,終了後は民間企業等への就職等であり,給与等の支給はなく,期間は2年です。


5 会計検査院の決算検査報告における指摘
(1) 平成2年度決算検査報告における裁判所に対する指摘事項(旅費の経理が適正を欠くと認められるもの)には以下の記載があります。
1 旅費支給の概要
 東京、水戸、宇都宮、広島、福岡各地方裁判所及び宇都宮、福岡両家庭裁判所において、平成2年度に、職員の公務出張に対し総額131,059,553円の旅費を支払っている。
2 検査の結果
 上記の旅費について検査したところ、管内支部との事務打合せ等を用務とする近距離の出張について、日帰りの出張を1泊2日に付増ししたり、精算の事務手続を適切に行わなかったりしていたものが1,585件、同様に1泊2日の出張を2泊3日にしていたものが35件、計1,620件あった。この支払が適正を欠いていた旅費の合計額は19,731,250円である。
 なお、この旅費の金額については、3年11月末までに全額国庫に返納された。
 これを裁判所別に示すと次のとおりである。
(2) 平成17年度決算検査報告における裁判所に対する指摘事項(自動車等を使用して通勤する職員等に対する通勤手当の認定等を適切に行い、適正な支給額となるよう改善させたもの)の「検査の結果」には以下の記載があります。
 検査の結果、次のような事態となっていた。
 各裁判所において17年度に支給した自動車等に係る通勤手当のうち、職員等2,072人に係る通勤手当について、一般的に利用することができる経路のうち最短の経路を検討せず、職員等が届け出た経路や計測距離をそのまま用いていたり、地図の縮尺を誤って計測距離を求めていたりなどしていたため、経路や計測距離の認定が適切に行われていなかった。
 そこで、改めて正しい経路及び計測距離により通勤手当を算定すると、最高裁判所ほか79裁判所(注) (17年度の支給人数5,543人、これに対する通勤手当支給額3億4738万余円)の398人に係る通勤手当については、自動車等の使用距離区分が下位の区分に該当することとなり、この結果、17年度において9,135,570円、遡って検査した13年度から16年度までの間において18,274,008円、計27,409,578円が過大に支給されていた。
 また、前記のとおり、通勤手当の支給要件を具備しているかなどについて事後確認を行うこととされているのに、ほとんどの裁判所では、自動車等を使用して通勤する職員等について経路等の事後確認が十分行われていなかった。
 以上のように、法令等で定められた認定及び事後確認が適切に行われておらず、自動車等に係る通勤手当が過大に支給されており、改善の必要があると認められた。

6 関連記事その他
(1) 平成16年12月3日の日弁連会長談話(第161回臨時国会の終了にあたって)には以下の記載があります。
   本日、第161回臨時国会が会期満了により終了した。今国会において審議された司法制度改革に関連する法案のうち「裁判外紛争解決手続の利用の促進等に関する法律案(ADR法案)」及び「裁判所法の一部を改正する法律案(司法修習生への給費制廃止)」の2法案は可決成立し、「民事訴訟費用等に関する法律の一部を改正する法律案(弁護士報酬の敗訴者負担制度)」は廃案となった。今臨時国会は、司法制度改革推進本部の設置期限が平成16年11月末とされたその最終の国会であり、今次司法制度改革における立法は基本的に完了した。
(2) 以下の記事も参照してください。
 修習給付金に関する司法研修所の公式見解を前提とした場合の,修習給付金に関する取扱い
 修習給付金を受ける司法修習生の社会保険及び税務上の取扱い
 司法修習生の給費制,貸与制及び修習給付金

月額3万5000円の住居給付金の根拠

1 平成29年3月22日の,井出庸生衆議院議員(民進党)に対する国会答弁資料7頁に以下の記載があることから,月額3万5000円の住居給付金は,生活保護法における単身世帯の住居扶助額に合わせたのだと思います。

・ 司法修習生が住宅を借り受け,家賃を支払っている場合には,住居給付金として月額3.5万円を支給することを予定。
   この金額は,法曹人材確保の充実・強化の推進を図るという制度の導入理由のほか,ほかの給付制度との比較(注),司法修習生の生活実態その他の諸般の事情を総合考慮して決定したものである。
(注)生活保護法における単身世帯の住居扶助額の全国平均は月額3万4,542円。
   なお,国家公務員については,一般職の職員の給与に関する法律に基づき,住居手当については,月額2万7,000円を上限として支給される。

2 生活保護の総合情報サイトに「各都道府県別住宅扶助上限額」(平成27年7月改正後のもの)が載っています。

3 「司法修習生の修習給付金及び修習専念資金」も参照して下さい。

月額13万5000円の基本給付金の根拠

目次
1 国会答弁資料の記載
2 法律案説明資料の記載
3 関連記事

1 国会答弁資料の記載
◯ 平成29年3月22日の衆議院法務委員会における国会答弁資料には,以下の趣旨の記載があります。
・ 日弁連が実施した第68期司法修習生の修習実態アンケート結果によれば,修習生の実務修習期間中の標準的な1か月の支出状況は,平均支出月額が約18万1000円であり,
・ このうち,住居費の支出を要しない自宅等からの通所者の平均支出月額が約13万5000円,
・ うち,アパートを借りるなどして住居費の支出を要する者の平均支出月額が約20万7000円となっている。

2 法律案説明資料の記載
・ 「裁判所法の一部を改正する法律案【説明資料】」(平成29年1月付の,法務省大臣官房司法法制部の文書)の「修習給付金及び修習専念資金の金額について」には,13万5000円の基本給付金に関して,以下の記載があります(ナンバリングを追加しました。)。
(1) 日本弁護士連合会が第68期の司法修習生を対象に実施した「修習実態アンケート」によれば,以下のとおり,修習期間中に生活実費及び学資金として月額おおむね13.5万円程度の支出がされている。
(内訳)
① 生活実費(合計約9.4万円)
・ 食   費(約4.0万円)
・ 交 通 費(約0.9万円)
・ 情報通信費(約0.9万円)
・ 水道光熱費(約1.0万円)
・ 就職活動費(約1.1万円)
・ 諸雑費(医療費・衣服費等)(約1.5万円)
※ アンケートに回答した全ての司法修習生の平均値。なお,食費及び水道光熱費については,回答中75%を占める住居費支出のある司法修習生の平均値。
② 学資金(合計約4.0万円)
・ 学 習 費(約1.0万円)
・ 書 籍 代(約0.8万円)
・ OA機器購入費(約1.2万円)
・ 勉強会参加費(約1.0万円)
※ 学習費についてはアンケートに回答した全ての司法修習生の平均値。勉強会参加費は,アンケート結果の交際費(2.7万円)のうち,業務時間外に庁舎や会議室等で行う弁護士等との勉強会の参加費用として日弁連が推計した金額。書籍代及びOA機器購入費は,法曹に必要な能力の修得に資する関連書籍・判例集等やパソコン本体・周辺機器等の初期投資費用を月割で按分した金額として,日弁連が推計した金額
(2) 基本給付の額については,以上のような生活実費及び学習費等に関する司法修習生の生活実態(注1)のほか,法曹人材確保の充実・強化の推進等といった修習給付金制度の導入理由(注2),貸与制との連続性(注3),類似の給付・貸付制度(別紙「生活費等の給付・貸付制度」参照)との均衡等を総合考慮したうえで決定されたものである。

(注1)このほか,一般的な生活実態としては,総務省統計局が公表している平成27年度の「家計調査」によれば,単身世帯(全国の全世帯対象。ただし,学生の単身世帯等を除く。)の消費支出は合計約16.0万円(食費約4.0万円,住居費約2.0万円,水道・光熱費約1.2万円,交通・通信費約1.9万円,被服・履物費約0.7万円,諸雑費約1.4万円,教養娯楽費約1.8万円)となっている。
(注2)法曹人材確保の観点から,日本弁護士連合会は,司法修習生に対する給付額として,大学院卒者の平均給与額と同水準を要望していたところ,厚労省「平成28年賃金構造基本統計調査」によれば,大学院卒者の平均給与額は23万1400円(男女計・初任給)である。
(注3)現行貸与制では,司法修習生がその修習に専念することを確保するための資金として,月額23万円(基本額)を司法修習生の希望者に貸与されている。後記2のとおり,修習給付金(基本給付額)と貸与額(基本額)を合わせた額は23.5万円となる予定である。


3 関連記事
・ 修習給付金に関する司法研修所の公式見解を前提とした場合の,修習給付金に関する取扱い
・ 修習給付金は必要経費のない雑所得であるとした国税不服審判所令和3年3月24日裁決
・ 修習給付金の課税関係に関する大阪国税局の見解
・ 司法修習生に対する旅費及び移転給付金について課税関係は発生しないこと
・ 司法修習生の旅費に関する文書
・ 修習給付金を受ける司法修習生の社会保険及び税務上の取扱い
・ 司法修習生の給費制と修習給付金制度との比較等
・ 修習給付金制度を創設した平成29年の裁判所法改正法に関する,衆議院法務委員会における国会答弁資料
・ 修習給付金制度を創設した平成29年の裁判所法改正法に関する,参議院法務委員会における国会答弁資料
・ 司法修習終了翌年の確定申告

司法修習生の修習給付金の名称に関する説明

○修習給付金の名称に関する説明が書いてある,法務省が作成した「「修習給付金(仮称)」の名称について」の本文は以下のとおりです。
「司法修習生の修習給付金及び修習専念資金」も参照して下さい。

1 名称に「給付金」を用いる理由
   司法修習生に対して支給される渡し切りの金銭(修習給付金(仮称))の名称については,用例上,「手当」又は「給付金」を用いることが考えられる。このうち,「手当」については,一般的には,「労働・勤務などの報酬として与える金銭。また,基本的な給料などのほかに支給する金銭。」(広辞苑)を意味するものとされており,用例上も,「児童手当」など給与ではない支給金の名称に用いられる例もあるものの,「期末手当」「住居手当」など,基本的には本給に付随する給与の名称に用いられる例が多い。これに対し,「給付金」は,犯罪被害者等給付金(犯罪被害者等給付金の支給等による犯罪被害者等の支援に関する法律)や,「老齢年金生活者支援給付金」(年金生活者支援給付金の支給に関する法律)など,支給対象者の生活を支援する等の目的で無償で支給される金銭の名称として用いられる例が多く,反対に,給与の名称として用いられている例は見当たらない。
   司法修習生は,公務員ではなく,国に対して何らかの職務を行う立場にはなく,本改正法案により司法修習生に支給される渡し切りの金銭(修習給付金) は,(司法修習生の生活支援を通じて)修習専念義務を確保するために,修習資金の一部として支給されるものであり,司法修習生の給与として支給されるものではない。このような修習給付金の性格及び上記の用例によれば,修習給付金の名称に「給付金」を用いることにつき,用例上問題はないと考えられる。
   また,修習給付金の支給額については,現在,修習期間中の約1年間にわたり,月額10万円から20万円の範囲内の金額を支給する方向で調整が進められている。他の給付金制度としては,①雇用保険を受給できない求職者が公共職業訓練等を受講することを容易にするため,当該求職者に対し,訓練期間(概ね3月から1年)中,月額10万円を支給する職業訓練受講給付金制度(職業訓練の実施等による特定求職者の就職の支援に関する法律)や,②雇用保険に加入している育休取得中の者に対し,子が1歳(両親が取得する場合は1歳2か月)に達するまでの間,賃金の一定割合(50%ないし67%)の金額を支給する育児休業給付金制度(雇用保険法)等がある。

2 「修習給付金」の名称を用いる理由
   法令上の「給付金」の名称については,犯罪被害者等給付金(犯罪被害者等給付金の支給等による犯罪被害者等の支援に関する法律),特定B型肝炎ウイルス感染者給付金(特定B型肝炎ウイルス感染者給付金等の支給に関する特別措置法)のように,その支給の客体に着目した名称,職業訓練受講給付金(職業訓練の実施等による特定求職者の就職の支援に関する法律),育児休業給付金(雇用保険法)のように,支給対象者が置かれた状況に着目した名称のほか,老齢年金生活者支援給付金(年金生活者支援給付金の支給に関する法律),被害回復給付金(犯罪被害財産等による被害回復給付金の支給に関する法律)のように,その支給目的に着目した名称があると考えられる。
   本改正法案による給付金については,司法修習を実施している司法修習生に対して支給されるものであり,「修習資金」(本改正法案による改正前の裁判所法第67条の2)との平灰も考慮して,支給対象者が置かれた状況に着目して「修習給付金」との名称にした。

司法修習生の修習給付金の導入理由等

目次
第1 司法修習生の修習給付金の導入理由等
第2 給費制から給付制に至るまでの経緯の概要に関する国会答弁
第3 関連記事

第1 司法修習生の修習給付金の導入理由等
・ 修習給付金の導入理由等が書いてある,法務省が作成した「修習給付金(仮称)について」の本文は以下のとおりです。
1 制度内容
    司法修習生全員に対し,修習給付金(仮称)を支給する制度を導入する。
    なお,現行の貸与制については,貸与額等を見直した上で,新設する上記制度と併存させる。
2 導入理由
(1)   司法修習生の修習専念義務を担保するための財政的措置の経緯
    戦後,法曹三者を統一的に養成する司法修習制度の創設に伴い,司法修習生に対し国が給与を支給する制度(給費制)が導入された。
    その後,司法制度改革のー環として,新たな法曹養成制度の整備に伴い,平成16年,給費制に代えて,国が修習資金を無利息で貸与する制度 (貸与制)を導入する裁判所法改正法案が成立した。貸与制は,平成22年議員立法により,その施行がー年延期された後,新65期司法修習生(平成23年11月修習開始)から開始されている。加えて,最高裁判所において,第67期司法修習生(平成25年11月修習開始)から,分野別実務修習開始時における転居費用の支給,集合修習期間中に司法研修所内の寮への入寮を希望する者のうち通所圏内に住所を有しない者への入寮に関する配慮,兼業許可基準に関する運用の緩和の措置が実施されている。
(2)   貸与制導入時からの状況の変化
    平成16年裁判所法改正時の貸与制導入時には,その立法理由として,司法制度改革推進計画(平成14年3月19日閣議決定)において,「平成22年ころには司法試験の合格者数を3, 000人程度とすることを目指す」とされたことを前提に,①新たな法曹養成制度の整備に当たり,司法修習生の増加に実効的に対応できる制度とする必要があること,②新たな法曹養成制度の整備や日本司法支援センター(法テラス)の創設,裁判員制度の導入等,新たな財政負担を伴う司法制度改革の諸施策を進める上で,限りある財政資金をより効率的に活用し,司法制度全体に関して国民の理解が得られる合理的な国民負担(財政負担)を図る必要があること,③公務員ではなく公務にも従事しない者に国が給与を支給するのは現行法上異例の制度であること等を考慮すれば,給費制の維持について国民の理解を得るのは困難であることが挙げられていた。
    しかしながら,①の点については,司法試験の年間合格者数3, 000人目標は現実性を欠くものとして「法曹養成制度改革の推進について」(平成25年7月16日法曹養成制度関係閣僚会議決定)において事実上撤回されており平成27年度の司法修習生数は1,787人と,給費制下の平成22年度(2, 124 人)よりも少なくなっている。
    また,②の点についても,司法制度改革関連予算については,貸与制創設当初には想定されていなかった上記3,000人目標の撤回や法科大学院の統廃合等(平成17年度のピーク時には74校あったが,平成28年5月現在,32 校が学生の募集を停止しており,学生の募集をしているのは42校のみ)を背景に平成22年度(567億円)をピークに減少傾向にあり,平成28年度予算では約450億円程度にまで減少している。
    このように,貸与制創設当初は想定されていなかった様々な事情を背景として,現時点では,貸与制導入時から大きな事情の変化が認められる。
    なお,③の点についても,導入予定の制度は,貸与制を前提とするものであり,給与を支給する給費制を復活させるものではなく,制度の連続性・整合性は維持されており,必ずしも妥当しない。
3 司法修習生に対する追加的な支援措置の必要性
    司法修習生の貸与制の導入を1年延期する平成22年裁判所法改正後,法曹養成フオーラムにおいて法曹の所得調査が実施され,同調査結果等に基づき貸与制を基本とすることが決定された。しかしながら,本年3月,法務省が日弁連・最高裁の協力の下で実施した法曹の所得調査では,弁護士の所得が平成22年の調査時に比べ明らかに減少しており,特に,貸与制導入以降の新65期以降の若手弁護士の所得は,例えば,登録1年の弁護士の所得については58期(平成18年分)では平均値が690万円,中央値が600万円であったのに対し,67期(平成27年分)では平均値が327万円,中央値が317万円となるなど,所得の低い層が拡大している。このように,貸与制を基本とすることの前提とされた弁護士の経済状況についても大きな変化が認められており,現行のような貸与制をそのまま継続すれば,返済に窮する弁護士も出てくるおそれもあり,その安定的な運用に支障を来すおそれがある。
    また,法曹志望者数についても,法科大学院志願者数は平成16年当時は7万2,800人であったのが本年には僅か8, 278人に減少し,適性試験の志願者数も平成15年当時は5万9, 393人であったのが本年には僅か3, 535人に減少するなどしており,こうした傾向に歯止めをかけ,法曹志望者を確保することが喫緊の課題である。「経済財政運営と改革の基本方針2016(本年6月2日閣議決定)や「未来への投資を実現する経済対策」(本年8月2日閣議決定)も,「司法修習生に対する経済的支援を含む法曹人材確保の充実・強化等…を推進する」ことを求めている。
    法務省・文科省が共同で本年9月~10月に実施した法学部生に対するアンケートにおいても,「法曹等を志望するに当たって感じている不安や迷いは何ですか」という質間に対し,制度的な要因の中では最も多くの学生が「司法修習の1年間,貸与制の下で給与の支給を受けられない」ことを1位に挙げている。また,日弁連のアンケートによれば,68期司法修習生の回答者の約65%が司法試験や法曹を目指すに当たり,経済的不安を感じており,進路選択を迷ったと回答しており,進路選択に迷った者のうち約20%が司法修習の辞退を考えたことがあり,うち約71%がその理由として「貸与制に移行したことによる経済的不安」を挙げている。このような法曹志願者数の減少は,法曹の給源である法曹志願者や司法修習生の質の低下を招き,ひいては有為な法曹の減少につながりかねないものであるから,公共的・公益的使命を有する法曹の役割の重要性に鑑み,経済的不安による法曹志望の阻害要因の除去を図るため,司法修習生に対し,修習給付金(仮称)を支給することとし,併せて法曹の資格要件としての司法修習の確実な履践を担保し,その実効性の更なる確保を図るための方策を導入するとともに,司法修習を終えた者の公益性を高めるための措置を設けることとしたい。
法務省作成の,令和元年6月18日の参議院文教科学委員会の国会答弁資料


第2 給費制から給付制に至るまでの経緯の概要に関する国会答弁
1 田所嘉徳法務副大臣は,令和3年4月14日の衆議院内閣委員会において以下の答弁をしています。
 給費制から給付制に至るまでの説明をちょっと簡単にさせていただきたいと思います。
 給費制から貸与制への移行は平成十六年の裁判所法改正によるものであって、貸与制は、平成二十三年十一月に修習を開始した新六十五期の司法修習生から、平成二十八年十一月に修習を開始した第七十期の司法修習生まで実施されたものであります。現在の修習給付金制は、平成二十九年度以降に修習を開始した司法修習生から実施されております。
 この貸与制への移行につきましては、司法試験合格者数の年間三千人目標ということが前提としてありまして、その増加に実効的に対応する必要があったこと、さらには、司法制度改革の諸施策を進める上で、限りある財政資金をより効率的に活用し、司法制度全体に関して国民の理解が得られる合理的な財政負担を図る必要があったこと、さらには、公務員ではなく、公務に従事しない者に国が給与を支給するのは異例だというような批判もあった、そういう中で、給費制を維持することについて国民の理解を得ることはなかなか難しいということで考えていたわけでございます。
 もっとも、平成二十八年六月の骨太の方針の中では、法曹志願者が大幅に減少していることが心配されまして、司法修習生に対する経済的支援を含む法曹人材確保の充実強化の推進が喫緊の課題となった、そういう事情変更があったわけでございます。
 そういう中で、委員を始めとする支援強化の件もありまして、そういう中にあって司法給付金(山中注:修習給付金のこと。)を創設したわけでありまして、貸与制についても、貸与額を見直して併存するということにしたものでございます。
2 ちなみに,田所嘉徳は,平成24年12月16日に衆議院議員総選挙に茨城1区から自民党公認出馬して初当選し,その後,国会議員活動と並行して白鴎大学法科大学院に通い,平成26年3月に同法科大学院を終了して法務博士(専門職)となりました。

第3 関連記事
・ 司法修習生の給費制,貸与制及び修習給付金

修習給付金制度が創設されるまでの経緯

○修習給付金制度が創設されるまでの経緯は以下のとおりです(衆議院HPの「議案審議経過情報」(裁判所法改正法案)及び「議案審議経過情報」(平成29年度一般会計予算)参照)。
○内閣提出法律案につき,原案作成から公布までの流れが内閣法制局HPの「法律の原案作成から法律の公布まで」に載っています。

平成25年
6月26日

   「法曹養成制度検討会議取りまとめ」(平成25年6月26日付)の「法曹養成課程における経済的支援」において,貸与制を前提とした上で,①分野別実務修習開始時における転居費用の支給,②集合修習期間中の入寮及び③兼業許可に関する従来の運用の緩和を実施すべきいう趣旨のことが記載されました。
7月16日
   「法曹養成制度改革の推進について」(平成25年7月16日法曹養成制度関係閣僚会議決定)2頁の「法曹養成課程における経済的支援」において,①分野別実務修習開始時における転居費用の支給,②集合修習期間中の入寮及び③兼業許可に関する従来の運用の緩和を実施することが期待されるという趣旨のことが記載されました。
平成27年
6月30日
   「法曹養成制度改革の更なる推進について」(平成27年6月30日法曹養成制度改革推進会議決定)6頁に,「法務省は、最高裁判所等との連携・協力の下、司法修習の実態、司法修習終了後相当期間を経た法曹の収入等の経済状況、司法制度全体に対する合理的な財政負担の在り方等を踏まえ、司法修習生に対する経済的支援の在り方を検討するものとする。」と記載されました。
平成28年

6月2日
   「経済財政運営と改革の基本方針2016~600兆円経済への道筋~」(平成28年6月2日閣議決定)(いわゆる骨太方針です。)28頁(PDF36頁)に,「
(前略)法科大学院に要する経済的・時間的負担の縮減や司法修習生に対する経済的支援を含む法曹人材確保の充実・強化(中略)を推進する。」と記載されました。
8月2日
   「未来への投資を実現する経済対策」(平成28年8月2日閣議決定)22頁(PDF28頁)に,「(2)若者への支援拡充、女性活躍の推進(中略)・法科大学院に要する経済的・時間的負担の縮減や司法修習生に対する経済的支援を含む法曹人材確保の充実・強化等の推進(法務省、最高裁判所、文部科学省)」と記載されました。
11月4日
・   遅くともこの日までに,裁判所法の一部を改正する法律案について内閣法制局の予備審査が開始しました(「裁判所法の一部を改正する法律案(仮称)について」(平成28年11月4日付)参照)。
・ 裁判所法の一部を改正する法律案新旧対照条文のうち,初期段階のもの(手書きの記載は内閣法制局参事官の手によるものと思われます。)を掲載しています。実際に成立した,裁判所法の一部を改正する法律の条文と全く異なります。
12月8日
   平成29年度司法試験の願書受付が終了しました(法務省HPの「平成29年司法試験の実施について」掲載の「実施日程」参照)。
12月19日
・   法曹三者の幹部が集まって,司法修習生に対する経済的支援策を確認して,これを発表しました(平成28年12月19日付の確認事項。なお,法務省HPの「司法修習生に対する経済的支援について」のほか,フォトニュース「司法修習生に対する新たな経済的支援策について法曹三者で確認しました(平成28年12月19日)」)。
・ 法務省大臣官房司法法制部長,最高裁判所事務総局総務局長及び日本弁護士連合会事務総長が「確認事項」を作成しました。
12月22日
   平成29年度予算政府案が閣議決定されました(財務省HPの「平成29年度予算」参照)。
平成29年
1月20日
   平成29年度予算案が衆議院予算委員会に付託されました。
2月1日
   裁判所法の一部を改正する法律案が閣議請議されました(裁判所法の一部を改正する法律(平成29年4月26日法律第23号)に関する,内閣法制局の法律案審議録(法務省提出分は除く。)参照)。
2月3日
   裁判所法の一部を改正する法律案(第193回国会閣法第5号)(以下「裁判所法改正法案」といいます。)が国会に提出されました(法務省HPの「裁判所法の一部を改正する法律案」のほか「裁判所法の一部を改正する法律案の概要」参照)。
2月27日
   平成29年度予算案が衆議院予算委員会及び衆議院本会議で可決され,参議院に送付されました。
3月17日
   裁判所法改正法案が衆議院法務委員会に付託されました。
3月27日
   平成29年度予算案が参議院予算委員会及び参議院本会議で可決された結果,平成29年度予算が政府案どおり成立しました(財務省HPの「平成29年度予算」参照)。
3月31日
   裁判所法改正法案が衆議院法務委員会で可決されました。
4月4日
   裁判所法改正法案が衆議院本会議で全会一致で可決され(参議院HPの「議案情報」参照),参議院に送付されました。
4月12日
   裁判所法改正法案が参議院法務委員会に付託されました。
4月18日
   裁判所法改正法案が参議院法務委員会で可決されました。
4月19日
   裁判所法改正法案が参議院本会議で全会一致で可決され(参議院HPの「議案情報」参照),成立しました。
4月26日
   裁判所法改正法(裁判所法の一部を改正する法律(平成29年4月26日法律第23号))が公布されました。
6月6日
   日弁連の,「修習給付金の創設を感謝する会~若手法曹が輝く社会へ~」が開催されました。
11月1日
   裁判所法改正法が施行されました。

修習給付金を受ける司法修習生の社会保険及び税務上の取扱い

目次
第1 法務省の公式説明
第2 国民健康保険への加入
第3 健康保険の任意継続
第4 関連記事その他

第1 法務省の公式説明
・ 「裁判所法の一部を改正する法律案【説明資料】」(平成29年1月付の,法務省大臣官房司法法制部の文書)の「修習給付金を受ける司法修習生の社会保険及び税務上の取扱いについて」には以下の記載がありますところ,修習給付金案内27頁及び28頁の「所得税等の取扱い」にも同趣旨の記載があります。

1 社会保険の取扱い
(1) 健康保険
〇 国民健康保険に加入することになる(現行貸与制下の司法修習生と同じ。)。
〇 なお,給費制下の司法修習生と同様に裁判所共済組合に加入できないかが問題となるが,国家公務員共済組合法(昭和33年法律第128号)第2条第1項第1号は,国家公務員共済組合の組合員たる「職員」の範囲として,「常時勤務に服することを要する国家公務員」(「政令で定める者」,具体的には,同法施行令(昭和33年政令第207号)第2条第2項第4号所定の「国…から給与を受けない者」等を除く。)であることを前提としている。司法修習生は,国家公務員でない上,国から給与を受けない者であるため,同法第2条第1項第1号所定の「職員」には該当しない。
〇 親族が健康保険に加入している場合,その被扶養者として健康保険の「被保険者」(健康保険法(大正11年法律第70号))第3条第1項)とならないかが問題となるが,修習給付金の支給を受けた場合,「主としてその被保険者により生計を維持するもの」(同条第7項)とはいい難いことから,健康保険の被保険者には該当しない。
(2) 年金
〇 健康保険と同様の整理により,国民年金の第一号被保険者(国民年金法(昭和34年法律第141号)第7条第1項第1号)に当たることになる(現行貸与制下の司法修習生と同じ。)。
2 税務上の取扱い
(1) 所得税の課税の有無
〇 修習給付金は,貸与金と異なり返済が予定されていない以上,所得税法上の「所得」に該当する。
〇 なお,修習給付金が非課税所得である「学資に充てるため給付される金品」(所得税法(昭和40年法律第33号)第9条第15号)に該当しないかが問題となり,この点は,国税庁担当者と協議中である(なお,これまでの法務省と国税庁の担当者協議では,修習給付金の金額規模等から,同号に該当する金品と直ちに解するには難しい面があるのではないかという指摘があった。)。
(2) 所得の性格
〇 仮に,非課税所得に該当しない場合,その性格(雑所得か給与所得か)が問題となる。この点も,国税庁担当者と協議することになる(これまでの法務省と国税庁の担当者協議では回答は得られていない。)が,修習給付金は,基本的に雑所得に当たるのではないかと考えられる。すなわち,「給与所得」とは,雇用契約又はこれに類する原因に基づき使用者の指揮命令に服して提供した労務の対価として使用者から受ける給付をいうところ,修習給付金は,労務提供の対価ではなく(給与とは明らかに性質の異なるものと整理されている。),司法修習生の任用関係を雇用契約類似と整理することも容易ではないからである。
〇 修習給付金について,雑所得となれば,その収入については確定申告を要することになる。
(3) 住民税の課税の有無
〇 住民税も課税されることになる。修習給付金の金額規模からして,非課税要件は満たさないのが通常と考えられる。



法務省作成の,令和元年6月18日の参議院文教科学委員会の国会答弁資料

第2 国民健康保険への加入
1 協会けんぽの被保険者の被扶養者に削除,氏名変更等があった場合,被保険者(例えば,司法修習生となった子どもを被扶養者としている会社員の父親又は母親)が勤務先(事業主)を経由して「被扶養者(異動)届」を年金事務所に提出する必要があります(日本年金機構HPの「従業員の被扶養者に異動があったときの手続き」参照)。
2 子どもが司法修習生になった時点で,その親が勤務先に被扶養者異動届を提出しなかった場合,健康保険の被扶養者資格の再確認(健康保険法施行規則50条参照)(協会けんぽHPの「被扶養者資格の再確認について」参照)が実施されたときに,被扶養者でなくなったことを指摘されると思います。
3 国民健康保険に加入するため,健康保険被保険者資格の喪失日,被扶養者でなくなった日等を証する書類が必要になった場合,
「健康保険・厚生年金保険資格取得・資格喪失確認通知書」の交付を求める請求書を年金事務所に提出すればいいです(日本年金機構HPの「国民健康保険等へ切り替えるときの手続き」参照)。
   ただし,通常は事業主が発行する「健康保険・厚生年金保険被保険者資格等取得(喪失)連絡票」を市役所等に提出すれば,国民健康保険に加入できます(富山県砺波市(となみし)HP「[お知らせ]健康保険・厚生年金保険被保険者資格等取得(喪失)連絡票について」参照)。
4 会社員をしていて健康保険に加入していた人が会社を退職した場合,①健康保険の任意継続をすること,②国民健康保険に加入すること及び③家族の健康保険の被扶養者となることという三つの選択肢があります(協会けんぽHPの「退職後の健康保険について」参照)。
   しかし,司法修習生は修習給付金を支給されますから,家族の健康保険の被扶養者となることはできません。


第3 健康保険の任意継続
・ 健康保険の任意継続をしたい場合,退職日から20日以内に,協会けんぽ支部において,①退職日を確認できる書類(例えば,離職票)及び②任意継続被保険者資格取得申出書を提出するといった手続をすればいいです(協会けんぽHPの「任意継続の加入手続きについて」参照)。
   居住する市区町村によって国民健康保険の保険料は異なる(国民健康保険HPの「主要都市の保険料を比較しよう」参照)ものの,配偶者及び子供といった扶養家族がいる場合は通常,健康保険の任意継続の方が国民健康保険よりも保険料が安いです(国民健康保険HPの「国保と任意継続の保険料を保険料をシミュレーション」参照)。


第4 関連記事その他
1 二回試験に合格して弁護士登録をした場合,弁護士会の新人研修等の際に,日本弁護士国民年金基金への加入を勧誘されるようになりますところ,日本弁護士国民年金基金の取扱いとして,平成7年3月31日までに加入した弁護士の予定利率は現在でも5.5%であるにもかかわらず,平成26年4月1日以降に加入した弁護士の予定利率は1.5%となっていること,②平成30年3月期における20~29歳の加入者は156人であること(加入者全体の1.8%),及び③いったん加入した場合,減口はできるものの,1口目の任意解約はできないこと等については,「日本弁護士国民年金基金」を参照してください。
 基礎年金番号に紐づけられた、これまでの年金加入履歴等が記載された日本年金機構による書面として,年金事務所で発行してもらえる被保険者記録照会回答票があります(リーガレットHP「被保険者記録照会回答票の申請方法(もらい方)3つと簡単な見方|見本付き」参照)。
3 以下の記事も参照してください。
① 司法修習生と国民年金保険料の免除制度及び納付猶予制度
② 修習給付金に関する司法研修所の公式見解を前提とした場合の,修習給付金に関する取扱い
③ 修習給付金は非課税所得であると仮定した場合の取扱い
④ 修習給付金は必要経費を伴う雑所得であると仮定した場合の取扱い
 司法修習生の給費制,貸与制及び修習給付金

修習資金の返還の猶予

目次
第1 総論
1 修習資金の返還猶予事由
2 修習資金の返還猶予の手続等
3 返還期限の猶予申請における添付資料の例
4 その他
第2 平成24年の裁判所法改正
1 裁判所法67条の2第3項の改正前後の条文
2 追加された裁判所法附則5項
第3 関係条文
1 司法修習生の修習専念資金の貸与等に関する規則(平成21年10月30日最高裁判所規則第10号)
2 修習資金貸与要綱
第4 関連記事その他

第1 総論
1 修習資金の返還猶予事由
(1) 以下の場合,修習資金の返還を猶予してもらえます(裁判所法67条の2第3項前段)。
① 災害,傷病その他やむを得ない理由により返還が困難となったとき
② 修習資金を返還することが経済的に困難であるとき
(2) ②につき,具体的には,返還期限前1年間(修習資金貸与要綱20条1項)について,(a)奨学金等の返済を控除した後の給与収入が300万円以下である場合,又は(b)奨学金等の返済を控除した後の事業所得が200万円以下である場合をいいます(司法修習生の修習資金の貸与等に関する規則7条の2)。
2 修習資金の返還猶予の手続等
(1) 修習資金の返還猶予のための申請は毎年行う必要があります(修習資金貸与要綱28条3項及び4項)。
(2) 修習資金の返還猶予は最大で5年間です(修習資金貸与要綱28条5項)。
(3) 修習資金の返還猶予基準を事後的に満たさなくなった場合(例えば,奨学金等の返済を控除した後の事業所得が200万円を超えた場合),それまでの猶予分とあわせて修習資金を返還しなければならないと思います。
3 返還期限の猶予申請における添付資料の例
裁判所HPの「ガイド~据置期間・返還期間中の手続について~」の「第6 返還期限の猶予について」には,以下の記載があります(タイトルを太字表記にしています。)。
※ 添付資料の例は次のとおりです。
ア 災害の場合
被災証明書等,所得証明書等,申述書
イ 傷病の場合
診断書等,所得証明書等,申述書
ウ 事故の場合
事故証明等,所得証明書等,申述書
エ 経済的に困難な場合
・ 給与所得者
給与証明書(又は所得証明書),申述書
借入金の返還がある場合には,借入れの目的や返還の事実が分かる契約書,領収書等
・ 給与所得者以外の者
確定申告書(控え)(又は所得証明書),申述書
借入金の返還がある場合には,借入れの目的や返還の事実がわかる契約書,領収書等
4 その他
(1) 修習資金の返還を猶予してもらう場合,国の債権の管理等に関する法律26条の例外として,担保を提供したり,利息を支払ったりする必要はありません(裁判所法67条の2第3項後段)。
(2) 修習資金貸与要綱は,司法修習生の修習資金の貸与等に関する規則12条に基づくものと思います。


第2 平成24年の裁判所法改正
1 裁判所法67条の2第3項の改正前後の条文
(1)   平成24年8月3日法律第54号による改正前の裁判所法67条の2第3項は以下のとおりです。
   最高裁判所は、修習資金の貸与を受けた者が災害、傷病その他やむを得ない理由により修習資金を返還することが困難となつたときは、その返還の期限を猶予することができる。この場合においては、国の債権の管理等に関する法律(昭和三十一年法律第百十四号)第二十六条の規定は、適用しない。
(2) 平成24年8月3日法律第54号による改正後の裁判所法67条の2第3項は以下のとおりであり,赤字部分が追加されました。
   最高裁判所は、修習資金の貸与を受けた者が災害、傷病その他やむを得ない理由により修習資金を返還することが困難となつたとき、又は修習資金の貸与を受けた者について修習資金を返還することが経済的に困難である事由として最高裁判所の定める事由があるときは、その返還の期限を猶予することができる。この場合においては、国の債権の管理等に関する法律 (昭和三十一年法律第百十四号)第二十六条 の規定は、適用しない。
2 追加された裁判所法附則5項
平成24年8月3日法律第54号は,裁判所法附則5項として以下の条文を追加しました。
    第六十七条の二第一項の修習資金の貸与については、法科大学院の教育と司法試験等との連携等に関する法律(平成十四年法律第百三十九号)附則第二条の規定による法曹の養成に関する制度についての検討において、司法修習生に対する適切な経済的支援を行う観点から、法曹の養成における司法修習生の修習の位置付けを踏まえつつ、検討が行われるべきものとする。

第3 関係条文
1 司法修習生の修習専念資金の貸与等に関する規則(平成21年10月30日最高裁判所規則第10号)
(法第六十七条の二第三項に規定する最高裁判所の定める事由)
第七条の二 法第六十七条の二第三項に規定する最高裁判所の定める事由は、次に掲げるものとする。
一 修習資金の貸与を受けた者が給与所得(俸給、給料、賃金、歳費及び賞与並びにこれらの性質を有する給与に係る所得をいう。)以外の所得を有しない者(次号において「給与所得者」という。)である場合において、当該者の最高裁判所の定める期間における収入金額(法科大学院(学校教育法(昭和二十二年法律第二十六号)第九十九条第二項に規定する専門職大学院であって、法曹に必要な学識及び能力を培うことを目的とするものをいう。)における修学のための借入金(最高裁判所の定めるものを除く。次号において単に「借入金」という。)を当該期間中に返還したときは、その返還額を控除した残額)が三百万円以下であること(当該者について次条第二項第二号から第五号までに掲げる事由のいずれかが生じたときを除く。)。
二 修習資金の貸与を受けた者が給与所得者以外の者である場合において、当該者の前号に規定する期間における総収入金額(借入金を当該期間中に返還したときは、その返還額を控除した残額)から必要経費を控除した残額が二百万円以下であること(当該者について次条第二項第二号から第五号までに掲げる事由のいずれかが生じたときを除く。)。
2 修習資金貸与要綱
(規則第7条の2に規定する最高裁判所の定める期間等)
第20条 規則第7条の2第1号に規定する最高裁判所の定める期間は,猶予を受けようとする修習資金の返還の期限前1年間とする。
② 規則第7条の2第1号に規定する最高裁判所の定めるものは,配偶者又は3親等内の親族からの借入金とする。
(返還期限の猶予の手続)
第28条 法第67条の2第3項の規定による修習資金の返還の期限の猶予の申請は,別紙様式第8による返還期限猶予申請書を最高裁判所に提出してするものとする。
② 前項の返還期限猶予申請書には,災害,傷病その他やむを得ない理由により修習資金を返還することが困難となったことを証する資料又は規則第7条の2各号に掲げる事由のいずれかがあることを証する資料を添付しなければならない。
③ 第1項に規定する猶予の期間は,1年以内で当該猶予に係る事由(当該事由が規則第7条の2各号に掲げる事由である場合には,同条各号に掲げる事由に相当する事由。以下この条において同じ。)が継続すると見込まれる期間とする。
④ 前項の猶予の期間が終了するときに当該猶予に係る事由が継続していると認められる場合には,再度第1項の規定による申請をすることにより,当該猶予の期間の延長をすることができるものとし,当該延長をすることができる期間は,1年以内で当該猶予に係る事由が継続すると見込まれる期間とする。
⑤ 前2項の規定による猶予の期間は,通じて5年を超えることができない。
⑥ 最高裁判所の歳入徴収官は,第1項に規定する猶予をする場合には,当該猶予を申請した者,被貸与者及びその保証人に対し,その旨及び当該猶予後の返還の期限を通知するものとする。
⑦ 第1項に規定する猶予をされた被貸与者は,その者について次に掲げる事由のいずれかが生じた場合には,第3項から第5項までの規定にかかわらず,最高裁判所の歳入徴収官の請求に基づき,その指定する日までに,返還未済額の全部を返還しなければならない。
一 規則第6条第4号に掲げる事由が生じたとき。
二 規則第8条第1項第4号又は第2項各号に掲げる事由が生じたとき。
三 最高裁判所に提出した書類に虚偽の事実を記載したことにより第1項に規定する猶予を受けたことが判明したとき。
四 国の不利益にその財産を隠し,損ない,若しくは処分したとき,又はこれらのおそれがあると認められたとき。
五 虚偽に債務を負担する行為をしたとき。
六 次項の規定による求めに応じなかったとき。
⑧ 最高裁判所は,第1項に規定する猶予をした被貸与者に対し,当該猶予の期間中,当該猶予に係る事由が継続していることを確認するために必要な資料の提出を求めることができる。

第4 関連記事その他
1 司法修習生に対する修習資金及び修習専念資金の貸与・返済状況等に関するデータの提供について(令和2年11月16日付の最高裁総務局長回答)を掲載しています。
2 以下の記事も参照してください。
・ 修習資金の返還の免除
 修習資金貸与金の返還を一律に免除するために必要な法的措置,及びこれに関する国会答弁