弁護士山中理司

従業員から特別徴収した住民税に関するメモ書き

目次
1 総論
2 特別徴収税額の通知及び納入
3 特別徴収税額の納期の特例
4 従業員が退職等をした場合
5 給与所得等以外に係る住民税の納付方法の選択
6 関連記事その他

1 総論
(1) 大阪市HPの「個人市・府民税の給与からの特別徴収について」には以下の記載があります。
 従業員等(納税義務者)が毎年4月1日現在に在職する会社等(給与支払者)において、従業員等の前年中の給与(前勤務先など他の給与支払者から支払いを受けた給与を含む)に対する個人市・府民税を特別徴収していただく必要がありますので、給与支払報告書についても、適切に特別徴収として提出してください。
 なお、4月1日以後に、新たに雇用した従業員等の個人市・府民税(納期限が過ぎていない普通徴収(本人納付)税額)についても、 特別徴収切替届出(依頼)書を提出いただくことにより、年度途中でも特別徴収に切り替えることができます。
(2) 4月1日以後に採用した従業員については,特別徴収切替届出(依頼)書を提出しない限り,翌年5月までの間,住民税の特別徴収をする必要はありません。
(3) 大阪市HPの「個人市・府民税の通知書類について」に,①市民税・府民税 納税通知書兼税額決定(充当)通知書,及び②給与所得等に係る市民税・府民税 特別徴収税額の決定・変更通知書(納税義務者用)の説明が載っています。
(4) 住民税の特別徴収の根拠は地方税法321条の4です。

2 特別徴収税額の通知及び納入
・ 大阪市HPの「特別徴収税額の通知および納入について」には以下の記載があります。
特別徴収税額の通知および納税義務者への配付について
 個人市・府民税を特別徴収の方法によって徴収する場合は、給与支払者を特別徴収義務者として指定し、特別徴収の方法により市・府民税を徴収する旨を、特別徴収義務者(給与支払者)および納税義務者(従業員等)に通知しなければならないとされています。 
 毎年5月31日までに、特別徴収義務者(給与支払者)に「給与所得等に係る市民税・府民税 特別徴収税額の決定・変更通知書」をお送りしますので、「特別徴収税額の決定・変更通知書(納税義務者用)」については、個人情報保護のためのシールを剥がさずに、速やかに納税義務者(従業員等)に配付してください。
 なお、給与所得等に係る特別徴収税額がない従業員等の方についても、通知書を作成しておりますので、納税義務者(従業員等)に配付してください。

3 特別徴収税額の納期の特例
(1) 東京都主税局HPの「特別徴収Q&A」には以下の記載があります。
納期の特例を利用すれば、毎月の給与から住民税を差し引きしなくてもよいのですか?
「納期の特例」は、特別徴収した住民税を半年分まとめて納入することができる制度ですので、毎月の給与からの差し引きは通常どおり行っていただく必要があります。給与から差し引きをした住民税を預かっていただき、年2回に分け納付してください。
(2) 大阪市HPの「給与所得等に係る市民税・府民税特別徴収税額の納期の特例に関する承認申請書」には以下の記載があります。
給与の支払を受ける従業員等が常時10人未満の特別徴収義務者(給与支払者)に限り、申請書を提出し、承認を受けた場合には、納期を年12回(毎月)から年2回(6月分から11月分を12月10日まで、12月分から翌年5月分を翌年6月10日まで)とすることができます。
(3) 池田市HPの「特別徴収税額の納期の特例に関する承認申請書」には,「各月の期間中に申請する場合、申請書を受付けた月以降の希望する月から期間の最後の月までが納期特例の対象になります。」と書いてあります。
(4) 給与所得に係る特別徴収税額の納期の特例の根拠は地方税法321条の5の2です。

4 従業員が退職等をした場合
(1) 従業員が退職等をした場合,翌月10日までに従業員の住所地の市区町村に給与所得者異動届出書を提出する必要があります。
(2) SaaS辞典HP「給与所得者異動届出書の書き方のポイントとは?転職者の住民税処理をマスターしよう」には以下の記載があります。
転職してきた労働者の特別徴収を行う場合
 転職してきた労働者の前職の会社から転職後の会社に給与所得者異動届出書が送られてくることがあります。それは、転職してきた労働者が前職で一括徴収を希望せず、転職先での特別徴収の継続を希望した場合です。そのような場合、途中まで記入がされている状態だと思います。こちら側(転職先)で残りの部分を記入し、市区町村へ提出しましょう。
(3) 大阪市HPの「給与支払報告・特別徴収に係る給与所得者異動届出書」には以下の記載があります。
 従業員(納税義務者)が転勤、退職、休職、死亡等により、給与の支払を受けなくなった場合は、異動した月の翌月10日までに、特別徴収ができなくなった旨を、給与支払者(特別徴収義務者)から「給与所得者異動届出書」の提出により、届け出てください。
 なお、「給与所得者異動届出書」の提出がない場合は、特別徴収義務が継続したままとなり、督促状等が送付されることがありますので、必ず提出してください。

5 給与所得等以外に係る住民税の納付方法の選択
・ 豊田市HPの「確定申告書の「住民税・事業税に関する事項」の記載について」には以下の記載があります。
(5)給与、公的年金等以外の所得に係る住民税の徴収方法
 給与所得者の方が、給与所得及び公的年金等に係る所得(申告年の4月1日において65歳未満の方は給与所得)以外の所得(例:事業所得や譲渡所得等)がある場合、給与所得及び公的年金等に係る所得以外の所得に対する所得割額の徴収方法を選択することができます。
(地方税法第321条の3第2項、同条第4項、豊田市税条例第42条第2項、同条第4項)
 給与所得及び公的年金等に係る所得以外の所得に係る所得割額を、特別徴収によって徴収すべき給与所得に係る所得割額及び均等割額の合算額に加算して特別徴収とする場合は、「特別徴収」にチェックを付ける、又は「特別徴収」・「自分で納付」どちらにもチェックを付けずにおきます。給与所得及び公的年金等に係る所得以外の所得に係る所得割額を、普通徴収とする場合は、「自分で納付」にチェックを付けます。
(地方税法施行規則第2条の3第2項第2号)


6 関連記事その他
(1) 大阪府は,平成30年度から,大阪府内全43市町村において,原則として法定要件に該当するすべての事業主を特別徴収義務者に指定し,個人住民税の給与からの特別徴収(給与からの差し引き)を徹底しています(大阪府HPの「個人住民税の特別徴収について」参照)。
(2) 以下の記事も参照してください。
・ 個人事業主の税金,労働保険及び社会保険に関するメモ書き
・ 個人事業主本人の住民税に関するメモ書き

個人事業主本人の住民税に関するメモ書き

目次
1 総論
2 所得割及び均等割
3 令和3年度以降の住民税
4 住民税等の計算サイト
5 関連記事その他

1 総論
・ 住民税とは、1月1日に住所がある都道府県、市町村に納める税金のことを指し,「道府県民税」(東京都は都民税)と「市町村民税」(東京23区は特別区民税)の2つが含まれます(マネーフォワードクラウド給与HPの「住民税が非課税になる条件と受けられる恩恵のポイントまとめ」参照)。

2 所得割及び均等割
・ 総務省HPの「個人住民税」には以下の記載があります。
 個人住民税には、所得に応じた負担を求める「所得割」と、所得にかかわらず定額の負担を求める「均等割」があります。所得とは、企業から受け取る給与や、事業による利益をいいます。
 所得割の税率は、所得に対して一律10%とされており、前年の1月1日から12月31日までの所得で算定されます。
 均等割は、個人住民税は「地域社会の会費」的なものであるとして負担を求める個人住民税の性格を反映したもので、通常5,000円(市町村民税3,500円、道府県民税1,500円)と定められています。

3 令和3年度以降の住民税
(1) 令和3年度(令和2年分)以降の住民税については,令和2年度(令和元年分)以前の住民税と比べて以下の点が異なります(大阪府箕面市(みのおし)HPの「令和3年度からの個人住民税(市・府民税)の主な改正点」参照)。
① 基礎控除が33万円から38万円になりました。
② 給与所得控除が63万円から53万円になりました。
③ 寡婦控除(特別の寡婦)につき,父子家庭も対象に加えてひとり親控除になりました(控除額は30万円)。
(2) 令和2年分以降の所得税につき,基礎控除は48万円であり,給与所得控除は58万円であり,ひとり親控除は35万円です(国税庁HPの「ひとり親控除」等参照)。

4 住民税等の計算サイト
(1) 所得税・住民税簡易計算機HP「税金計算機(生命保険料控除、医療費控除、扶養控除、ふるさと納税対応)」が載っています。
(2) ふるさとチョイスHP「¥控除限度額シミュレーション」が載っています。

5 所得証明書
(1) suumo所得証明書とは?課税証明書との違いや必要な場面、取り方を紹介」には,「所得証明書」と「課税証明書」の違いとして以下の記載があります。
 所得証明書は、市区町村が発行する『所得額』が記載された書類のこと。所得額とは、各年(1月1日~12月31日)の収入(年収)から必要経費(会社員の場合は給与書等控除額)を差し引いた金額で、市区町村などが住民税(市区町村税・県民税等)を計算する際の基準となります。このため所得証明書は、収入を証明する公的な書類(収入証明書)の一つとして、住宅ローンや賃貸住宅の申し込みなどの際に提出を求められることがあります。
 一方、「課税証明書」は、市区町村が発行する『住民税の課税額』を証明する書類のこと。課税額の計算基準となる『所得額』も掲載されているため、「課税証明書」は「所得証明書」として利用できます。実際のところ、「所得証明書」の代わりに「課税証明書」を発行する市区町村も少なくありません。
(2) 大阪市の場合,課税(所得)証明書として発行され(大阪市HPの「市税に関する証明書を請求される方へ」参照),堺市の場合,市民税・府民税(所得・課税)証明書として発行されます(堺市HPの「市税の証明をとるには」参照)。

6 関連記事その他
(1) 大阪市の場合,市民税・府民税納税通知書は6月上旬に郵便により届きます(大阪市HPの「令和4年度 個人市・府民税納税通知書の送付について」参照)。
(2) 財務省HPに「住民税について教えてください。所得税とはどう違うのですか?そもそも国税と地方税の違いはなんですか?」が載っています。
(3) 以下の記事も参照してください。
・ 個人事業主の税金,労働保険及び社会保険に関するメモ書き
・ 従業員から特別徴収した住民税に関するメモ書き



借地権に関するメモ書き

目次
1 借地契約における通常の地代
2 借地契約の権利金の認定課税
3 借地権に関する相場
4 借地権の鑑定評価
5 借地非訟事件の書式例
6 関連記事その他

1 借地契約における通常の地代
(1) 借地契約の場合,通常の地代は,土地の価額×(1-借地権割合)×6%で計算し,相当の地代(法人税法施行令137条,法人税基本通達13-1-2)は,土地の価額×6%で計算します(税理士法人チェスターHP「通常の地代、相当の地代とは。借地権評価に絶対必須の概念。」参照)。
(2) 借地権割合は,国税庁HPの「財産評価基準書 路線価図・評価倍率表」に載っています。

2 借地契約の権利金の認定課税
(1) こまったときのこすぎのかいけいHP「借地権」に借地権に関する課税関係が表形式でまとめられています。
(2) 借地契約の権利金の認定課税の例外として以下の制度があります(相続・税理士相談室HP「使用貸借・相当の地代・無償返還とは何ですか?」参照)。
① 昭和38年制定の「相当の地代」通達
・ 相当の地代(年6%)を計算する場合における土地の価額は,相続税評価額でもいいです(国税庁HPのタックスアンサー「No.5732 相当の地代及び相当の地代の改訂」参照)。
② 昭和48年11月1日制定の「使用貸借」通達
・ 個人間の契約にだけ適用されます。
③ 昭和55年創設の無償返還届出制度(法人税基本通達13-1-7)
・ 貸主又は借主の一方又は双方が法人である場合にだけ適用されます。
・ 国税庁HPに「[手続名]土地の無償返還に関する届出」が載っています。
(3) 貸主が個人であり,借主が法人である場合,③無償返還方式+賃貸借契約(固定資産税の2倍~3倍の地代を支払う契約)がお勧めみたいです(相続・税理士相談室HP「「土地の無償返還に関する届出書」とは何ですか?」参照)。
   これに対して貸主が法人であり,借主が個人である場合,相当の地代よりも低い地代を設定したとき,法人には源泉所得税が,個人には給与所得が発生します。
   また,貸主及び借主が法人である場合,相当の地代よりも低い地代を設定したとき,貸主法人に寄付金課税が発生します。
(4) 最高裁昭和45年10月23日判決は以下の判示をしています。
    原判決(その引用する第一審判決を含む。)の確定するところによれば、第二次大戦以前においては、土地賃貸借にあたつて権利金が授受される例は少なく、また、その額も比較的低額で、これを地代の一部と解しても不合理ではないようなものであつたし、土地賃借権の売買もそれほど広く行なわれてはいなかつた、そして、昭和二五年法律第七一号による旧所得税法の改正によつて、再度、不動産所得という所得類型が定められた当時も、立法上特別の考慮を促すほどには権利金授受の慣行は一般化していなかつた、ところが、比較的近時において、土地賃貸借における権利金授受の慣行は広く一般化し、その額も次第に高額となり、借地法等による借地人の保護とあいまつて土地所有者の地位は相対的に弱体化し、多くの場合、借地権の譲渡の承認や期間の更新を事実上拒み得ず、土地賃借権の価格も著しく高額となつた、そして、借地権の設定にあたり借地権の価格に相当するものが権利金として授受されるという慣行が、東京近辺の都市において特に多く見られ、その額も、土地所有権の価格の半額を上廻る場合が少なくない、というのである。

3 借地権に関する相場
(1) 株式会社日本都市鑑定HP「借地権・底地・更新料・建替承諾料・借地条件変更承諾料等」によれば,借地権に関する相場は以下のとおりです。
① 更新料
更地価格(実勢価格) × 3.5%前後
地代(更新直前の月額地代) × 36か月~120ヶ月分
② 建替承諾料
更地価格 × 1~3%(期間延長を伴うもの 5~6%)
③ 借地条件変更承諾料~非堅固から堅固建物へ
更地価格 × 10%
④ 名義変更承諾料
借地権価格 × 10%
(2) フクマネ不動産HP「借地権の更新料・承諾料・名義書換料の相場まとめ」では,増改築の承諾料は更地価格×2~3%であり,建替の承諾料は更地価格×2~3%であるとされています。

4 借地権の鑑定評価
・ 国土交通省の「不動産鑑定評価基準」45頁の「② 借地権の鑑定評価」には以下の記載があります。
借地権の鑑定評価は、借地権の取引慣行の有無及びその成熟の程度によってその手法を異にするものである。
ア   借地権の取引慣行の成熟の程度の高い地域
   借地権の鑑定評価額は、借地権及び借地権を含む複合不動産の取引事例に基づく比準価格、土地残余法による収益価格、当該借地権の設定契約に基づく賃料差額のうち取引の対象となっている部分を還元して得た価格及び借地権取引が慣行として成熟している場合における当該地域の借地権割合により求めた価格を関連づけて決定するものとする。

   この場合においては、次の(ア)から(キ)までに掲げる事項(定期借地権の評価にあって、(ア)から(ケ)までに掲げる事項)を総合的に勘案するものとする。
(ア)将来における賃料の改定の実現性とその程度
(イ)借地権の態様及び建物の残存耐用年数
(ウ)契約締結の経緯並びに経過した借地期間及び残存期間
(エ)契約に当たって授受された一時金の額及びこれに関する契約条件
(オ)将来見込まれる一時金の額及びこれに関する契約条件
(カ)借地権の取引慣行及び底地の取引利回り
(キ)当該借地権の存する土地に係る更地としての価格又は建付地としての価格
(ク)借地期間満了時の建物等に関する契約内容
(ケ)契約期間中に建物の建築及び解体が行われる場合における建物の使用収益が期待できない期間
イ   借地権の取引慣行の成熟の程度の低い地域
   借地権の鑑定評価額は、土地残余法による収益価格、当該借地権の設定契約に基づく賃料差額のうち取引の対象となっている部分を還元して得た価格及び当該借地権の存する土地に係る更地又は建付地としての価格から底地価格を控除して得た価格を関連づけて決定するものとする。

    この場合においては、前記ア(ア)から(キ)までに掲げる事項(定期借地権の評価にあっては、(ア)から(ケ)までに掲げる事項)を総合的に勘案するものとする。

5 借地非訟事件の書式例
(1) 東京地裁民事第22部(調停・借地非訟・建築部)HP「借地非訟事件の書式例」に以下の書式例が載っています。
① 借地条件変更と増改築許可の併合申立書,及びこれに対する答弁書
② 借地条件変更申立書,及びこれに対する答弁書
③ 増改築許可申立書,及びこれに対する答弁書
④ 土地賃借権譲渡・土地転貸許可申立書,及びこれに対する答弁書
⑤ 競売・公売に伴う土地賃借権譲受許可申立書,及びこれに対する答弁書
(2) 大阪地裁第10民事部(建築・調停部)HP「第4 借地非訟事件」に,申立書書式等が載っています。

6 関連記事その他
(1) 借地契約を合意解約するに当たり,当事者間の合意で,賃借人の建物買取請求権を留保した場合にはこれを行使することができるものの,留保していない場合にはこれを行使することはできません(最高裁昭和29年6月11日判決(裁判所HPにはありません)のほか,不動産流通推進センターHP「借地権の合意解約の場合の建物買取請求権の行方」参照)。
(2) 夫婦その他の親族の間において無償で不動産の使用を許す関係は,主として情義に基づくもので,明確な権利の設定若しくは契約関係の創設として意識されないか,又はせいぜい使用貸借契約を締結する意思によるものにすぎず,無償の地上権のような強力な権利を設定する趣旨でないのが通常です(最高裁昭和47年7月18日判決)。
(3) 建物の賃借人の失火により右建物が全焼してその敷地の使用借権を喪失した賃貸人は,賃借人に対し,右建物の焼失による損害として,焼失時の建物の本体の価格と土地使用に係る経済的利益に相当する額とを請求することができます(最高裁平成6年10月11日判決)。
(4) 以下の記事も参照してください。
・ 宅建業に関するメモ書き
・ 家賃相場・土地価格相場等の情報
・ 私道に関するメモ書き

宅建業に関するメモ書き

目次
1 宅建業者の報酬
2 宅建業者の査定書
2の2 宅建業者の重要事項説明書に関するメモ書き
2の3 契約不適合責任に関するメモ書き
2の4 売主の説明義務に関するメモ書き
2の5 職業的専門家の説明義務に関するメモ書き
3 賃貸マンションに関するメモ書き
3の2 分譲マンションに関するメモ書き
3の3 宅建業者による勧誘に関する規制等
3の4 地区計画,建築協定及び紳士協定
3の5 開発行為に関するメモ書き
3の6 市街地再開発事業及び土地区画整理事業に関するメモ書き
4の1 固定資産税に関するメモ書き
4の2 固定資産評価証明書の閲覧
5 家賃保証
6 住宅セーフティネット制度
7 引越しに関するメモ書き
7の2 オフィスに関するメモ書き
7の3 公衆浴場に関するメモ書き
8 立退料に関するメモ書き
8の2 抵当権に基づく妨害排除請求
8の3 競売不動産価格維持のための保全処分
9 住宅ローンに関するメモ書き
10 表題登記及び所有権保存登記に関するメモ書き
11 旧住所登記と新住所登記
12 安心R住宅制度
12の2 S造,RC造,SRC造及び木造
13 サブリース
13の2 スルガ銀行・シェアハウス事件の被害者救済スキーム
14 廃棄物処理法に関するメモ書き
14の2 家電リサイクル等に関するメモ書き
15 農地法に関するメモ書き
15の2 市街化調整区域に関するメモ書き
16 私力の行使及び刃物携帯の禁止
17 耐震基準等に関するメモ書き
18 排水管に関するメモ書き
18の2 下水道に関するメモ書き
19 空き家に関するメモ書き
20 関連記事その他

1 宅建業者の報酬
(1) 賃貸借の仲介(媒介又は代理)で不動産会社が賃借人から受け取ることができる報酬額は原則として賃料の0.5月分(税抜)だけであって,特に賃借人の承諾がある場合に限り,1月分(税抜)となります(不動産ジャパンHPの「4.仲介・管理を依頼する会社を選ぶ」参照)。
(2) 契約時に「0.5ヵ月分しか支払わない」と伝えた場合,仲介会社が値引きに応じるケースがほとんどらしいです(TERASS HPの「「仲介手数料は原則0.5ヵ月分」判決 家を借りるときの“法律と業界知識”」参照)。
(3) 大阪府HPに「宅地建物取引業者が宅地又は建物の売買等に関して受けることができる報酬の額(建設省告示)」が載っています。
(4)  無免許者が宅地建物取引業を営むために宅地建物取引業者からその名義を借り,当該名義を借りてされた取引による利益を両者で分配する旨の合意は,公序良俗に反し,無効です(最高裁令和3年6月29日判決)。


2 宅建業者の査定書
(1) 宅建業者の査定書の根拠として,宅建業法34条の2第1項2号及び同条2項に言及されることがあります。
(2) 媒介契約について定める宅建業法34条の2第2項は,「宅地建物取引業者は、前項第二号の価額又は評価額(山中注:当該宅地又は建物を売買すべき価額又はその評価額)について意見を述べるときは、その根拠を明らかにしなければならない。」と定めています。
(3) 国土交通省HPの「宅地建物取引業法 法令改正・解釈について」に載ってある「宅地建物取引業法の解釈・運用の考え方」には「4 媒介価額に関する意見の根拠の明示義務について」の「(1) 意見の根拠について」として以下の記載があります。
    意見の根拠としては、価格査定マニュアル(財団法人不動産流通近代化センターが作成した価格査定マニュアル又はこれに準じた価格査定マニュアル)や、同種の取引事例等他に合理的な説明がつくものであることとする。
    なお、その他次の点にも留意することとする。
① 依頼者に示すべき根拠は、宅地建物取引業者の意見を説明するものであるので、必ずしも依頼者の納得を得ることは要さないが、合理的なものでなければならないこと。
② 根拠の明示は、口頭でも書面を用いてもよいが、書面を用いるときは、不動産の鑑定評価に関する法律に基づく鑑定評価書でないことを明記するとともに、みだりに他の目的に利用することのないよう依頼者に要請すること。
③ 根拠の明示は、法律上の義務であるので、そのために行った価額の査定等に要した費用は、依頼者に請求できないものであること。
(4) 東京地裁平成21年3月24日判決は「不動産取引の媒介業者は媒介価格よりも若干高い額の売出価格を設定する義務を負担しているとはいえない。」と判示しています(三井住友トラスト不動産HPの「宅地建物の売却の媒介における「媒介価額」とは何か」参照)。


2の2 宅建業者の重要事項説明に関するメモ書き
(1) 四日市の弁護士による企業法務HPに「重要事項説明書について」が載っています。
(2) 国土交通省HPに「「宅地建物取引業者による人の死の告知に関するガイドライン」を策定しました」(令和3年10月8日付)が載っています。
(3)ア みずほ中央法律事務所HPの「【売買契約に関する責任の種類(瑕疵担保・債務不履行・不法行為)】」には「調査や説明義務違反による責任は,売主だけでなく仲介業者も負うことがありあす。」と書いてあります。
イ 東京地裁平成28年3月11日判決(判例秘書に掲載)は以下の判示をしています。
不動産仲介業者は,直接の委託関係はなくても,これら業者の介入に信頼して取引をなすに至った第三者一般に対しても,信義誠実を旨とし,格別に注意する等の業務上の一般的注意義務があると解されるところ,仲介者が負うべき義務は,宅地建物取引業法第35条に定める事項はもちろん,信義則上,買主が売買契約を締結するかどうかを決定づけるような重大な事項について調査し,知り得た事実について説明すべきであるが,宅地建物取引業者は,高度の専門知識や鑑定能力を有するものとは限らないことからすると,売買契約当時,その目的物に瑕疵が存在することを疑わせるような特段の事情がない限りは,瑕疵の存否について積極的に調査するまでの義務はないと解するべきである。

2の3 契約不適合責任に関するメモ書き
(1)ア 数量不適合,権利不適合及び抵当権等が存在した場合における売主の担保責任は,権利行使可能認識時から5年で消滅時効にかかります(月刊不動産HPの「Vol.20 売主の担保責任」参照)。
イ  国土交通省HPに「「物件状況等報告書」記入上のご注意【土地建物・土地用】」が載っています。
(2)ア 契約不適合責任免除の特約が有効と判断されるかどうかのポイントは以下のとおりみたいです(不動産DOJO「売主に重過失があれば契約不適合責任免責を無効にできるか? 」参照)。
① 売主により事前調査がされているか。
② 調査することが容易であったか
③ 売主は買主に対して真摯な対応をしているか
イ 東京地裁平成16年10月28日判決(判例秘書に掲載)は,隣人と共有共用の配水管及び浄化槽が地中に埋設されていた土地の売買において,瑕疵担保責任を限定する特約を排除して売主の瑕疵担保責任が肯定された事例です。
ウ みずほ中央法律事務所HPに「【瑕疵担保責任免除特約の有効性】」が載っています。
(3) 売買契約の当事者間において目的物がどのような品質・性能を有することが予定されていたかについては,売買契約締結当時の取引観念をしんしゃくして判断されます(最高裁平成22年6月1日判決)。

2の4 売主の説明義務に関するメモ書き
(1) 石川県宅建業協会HP「売主・媒介業者から見た不動産売買における契約不適合責任等の留意点と予防策」が載っています。
(2) 東京地裁平成28年3月11日判決は(判例秘書に掲載)は以下の判示をしています。
不動産売買における売主は,その売買の当時,購入希望者に重大な不利益をもたらすおそれがあり,その契約締結の可否の判断に影響を及ぼすことが予想される事項を認識していた場合には,売主は,売買契約に付随する信義則上の義務として,購入希望者に対して当該事項について説明すべき義務があるというべきである。


2の5 職業的専門家の説明義務に関するメモ書き
・ 最高裁令和2年3月6日判決の裁判官草野耕一の意見には以下の記載があります(改行を追加しています。)。
 職業的専門家は社会にとって有用な存在であり,その有用性は社会の複雑化と社会生活を営む上で必要とされる情報の高度化が進むほど高まるものである。そうである以上,専門的知見を依頼者以外の者に対して提供することを怠ったことを理由として職業的専門家が法的責任を負うことは特段の事情がない限り否定されてしかるべきである。
   なぜなら,職業的専門家が同人からの知見の提供を求めている者に遭遇した場合において,たとえその者が依頼者でなくとも当該職業的専門家は知見の提供をしなければならないという義務が肯定されるとすれば,知見を求める人々の側においてはわざわざ報酬を支払って依頼者となろうとする必要性が消失し,その結果として,職業的専門家の側においては安定した生活基盤の形成が困難となってしまうからである。
   のみならず,職業的専門家が依頼者に提供する役務の質を向上させるためには職業的専門家と依頼者の間において高度な信頼関係が形成されることが必要であるところ,それを達成するためには職業的専門家は依頼事項に関して依頼者の同意を得ずに依頼者以外の者に対して助言することはないという行動原理が尊重されなければならず,この点からも職業的専門家が依頼者以外の者に対して知見の提供を怠ったことを理由として法的責任を負うことは否定されてしかるべきである。

3 賃貸マンションに関するメモ書き
(1)ア 賃貸マンションの経営側の視点については,土地活用のいろはHP「土地活用でアパート経営をするべき人と失敗しない為の全知識」が参考になります。土地活用について,4つのタイプと17種類の活用方法に関する表が非常にまとまっています。
イ データとしては,株式会社LIFULL(ライフル)HP「不動産投資」(例えば,全国の不動産投資物件を掲載している「収益物件を検索する」,賃貸用住宅の空室率を掲載している「見える賃貸住宅」)が参考になります。
(2) 健美家HP「ワンルームに住む平均年齢91歳夫婦の滞納事件。強制執行はできるか?できないか。」には,「夫婦は娘の遺影だけを抱え、着の身着のままで部屋を後にした。残念ながら滞納額も残置物の処分費用も、家主負担しかない。」と書いてあります。
(3)  適法な転貸借関係が存在する場合,賃貸人が賃料の不払を理由として賃貸借契約を解除するには,特段の事情のない限り,転借人に通知等をして賃料の代払の機会を与えなければならないものではありません(最高裁平成6年7月18日判決)。
(4)ア 家屋賃貸借契約において、一箇月分の賃料の遅滞を理由に催告なしで契約を解除することができる旨を定めた特約条項は、賃料の遅滞を理由に当該契約を解除するにあたり、催告をしなくても不合理とは認められない事情が存する場合には、催告なしで解除権を行使することが許される旨を定めた約定として有効となります(最高裁昭和43年11月21日判決)。
イ 賃貸住宅に係る賃料債務等の保証委託及び連帯保証に関する契約書中の、賃料等の不払があるときに連帯保証人が無催告にて賃貸借契約を解除することができる旨を定める条項の消費者契約法10条に規定する消費者契約の条項に当たります(最高裁令和4年12月12日判決)。
(5) 令和3年6月15日,賃貸住宅の管理業務等の適正化に関する法律に基づく賃貸住宅管理業の登録制度が開始しました。


3の2 分譲マンションに関するメモ書き
(1)  東弁リブラ2017年12月号「マンション管理の諸問題」は,以下のテーマを扱っています。
① マンション管理の現代的課題と弁護士の関与
② マンション第三者管理について
③ マンションの被災と復興のための制度
(2) 国立国会図書館HPレファレンス平成29年6月号に「マンション老朽化への対応に向けた課題」が載っています。
(3) オウチーノニュース「年代別のマンショントレンド ― 設備、仕様の変化をプロが解説」が載っています。
(4)ア 管理人は超~つらいよHP「マンション管理人とは?何者なんでしょうか?」が載っています。
イ 現代ビジネスHP「いま日本中で急増している「マンション管理人失踪」という異常事態」(平成29年7月10日付)が載っています。
(5)  マンション建替事業の施行者がマンションの建替え等の円滑化に関する法律76条3項に基づく補償金の供託義務を負う場合において、上記補償金の支払請求権に対する差押えの競合が生じたときは、上記施行者は同項及び民事執行法156条2項を根拠法条とする混合供託をしなければなりません(最高裁令和4年10月6日判決)。

3の3 宅建業者による勧誘に関する規制等
(1)   平成23年10月1日,宅建業者が,契約の締結の勧誘をするに際し,以下の行為をすることが禁止されるようになりました(国土交通省HPの「国土交通省から消費者の皆さんへのお知らせ・注意喚起(マンションの悪質勧誘・訪問、アンケート調査等)」参照)。
① 勧誘に先立って宅地建物取引業者の商号又は名称,勧誘を行う者の氏名、勧誘をする目的である旨を告げずに,勧誘を行う行為(宅建業法施行規則16条の12第1号のハ)
② 相手方が契約を締結しない旨の意思(勧誘を引き続き受けることを希望しない旨の意思を含む。)を表示したにもかかわらず、勧誘を継続する行為(宅建業法施行規則16条の12第1号の二)
③ 迷惑を覚えさせるような時間の電話又は訪問する行為(宅建業法施行規則16条の12第1号のホ)
(2) 消費者トラブルネット!HP「威迫(脅迫)で勧誘する宅建業者に対する行政処分申出書の記載例」が載っています。
(3) 宅地建物取引業者に対する知事の免許の付与ないし更新が宅地建物取引業法所定の免許基準に適合しない場合であっても,知事の右行為は,右業者の不正な行為により損害を被った取引関係者に対する関係において直ちに国家賠償法1条1項にいう違法な行為に当たるものではありません(最高裁平成元年11月24日判決)。


3の4 地区計画,建築協定及び紳士協定
(1)ア 都市計画は都市全体の計画を定めるものであるのに対し,地区計画は地区レベルの計画を定めるものです。
イ 地区計画は以下の二つからなります(国土交通省HPの「地区のルールを決める話」参照)。
① 地区計画の方針
・ 地区の目標,将来像を示すものです。
② 地区整備計画
・ 生活道路の配置,建築物の建て方のルール等を具体的に定めるものです。
ウ 届出に係る行為が地区計画に適合していない場合,設計の変更その他の必要な措置をとることを勧告されますし,適合していない事項が建築基準法68条の2に基づき条例化されている部分である場合,建築確認の審査が通りませんし(横浜市HPの「地区計画の区域内における行為の届出制度」参照)。
エ 地区計画に適合していない場合,開発行為(建築物の建築等を目的とする土地の区画形質の変更)に対する開発許可もおりません(都市計画法33条1項5号イ)。
(2)ア 建築協定(建築基準法69条ないし77条)は,住民が自主的に建築物に関する協定内容を定め,それに賛成する者全員が合意して締結するものです。
イ 建築協定書を市町村に提出し,市町村長が認可すれば,建築協定を締結した土地が売却等され,別の人が権利を取得たい場合でも,建築協定の内容が引き継がれることになります(横浜市HPの「建築協定とは」参照)。
(3) 紳士協定は,あくまでも住民同士の申し合わせ事項に過ぎないため,内容について遵守すべき拘束力はなく,強制力はありません(イクラ不動産HPの「地区計画・建築協定・紳士協定の違いについてわかりやすくまとめた」参照)。

3の5 開発行為に関するメモ書き
(1) 「土地の区画形質の変更」は,宅地造成だけでなく,道路の新設などを伴う土地区画の変更,農地から宅地への変更などを含む広い概念です(みずほ不動産販売HPの「土地の区画形質の変更」参照)。
(2) 対象の土地が農地である場合,農地転用と開発行為のいずれもが許可見込みとなることを関連部署に確認した上で,同時に申請して同時に許可を受けなければなりません(農地転用手続代行HPの「農地転用許可と開発行為許可の関係と費用」参照)。
(3) 開発行為はあくまでも「土地の区画形質の変更」であって,建物については考慮しないところ,開発許可を取得してから開発工事を完了した後に建築確認を申請することになります(わかった不動産HPの「開発許可を取得するときには、建築確認を受けなくてもよいか?」参照)。

3の6 市街地再開発事業及び土地区画整理事業に関するメモ書き
1 ①都市再開発法に基づく市街地再開発事業は,細分化された土地を共同利用し,地区を高層ビルや高層マンションに建て替える事業であるのに対し,②土地区画整理法に基づく土地区画整理事業は,バラバラになっている土地を整理して,きれいな区画をした市街地を平面的に作り直すという事業です。
2 市街地再開発事業には,土地の買収をしない権利変換方式による第1種市街地再開発事業,及び買収方式による第2種市街地再開発事業があります。
3 地価の高い都市の中心市街地には狭小な敷地に様々な権利者が存在しており,土地の持分を減らす土地区画整理事業を押し進めるのは困難でしたから,昭和36年に防災建築街区造成法及び市街地改造法が制定され,昭和44年にこれらを一つにまとめて都市再開発法が制定されました(イクラ不動産HPの「市街地再開発事業とはなにかわかりやすくまとめた」参照)。
4 令和6年2月15日時点で,公益社団法人街づくり区画整理協会は以下の図書を出版しています(同協会HPの「出版図書」参照)。
① 土地区画整理必携(令和5年度版)
② 土地区画整理事業実務標準(改訂版)-第6版-
③ 土地区画整理法逐条解釈(第10版)
④ 土地区画整理事業調査設計費積算資料(改訂版補正6刷)
⑤ 土地区画整理事業実務問答集(第4版)
⑥ 土地区画整理事業移転補償実務マニュアル(第9版)
⑦ 区画整理土地評価基準(案)(改訂版)
⑧ 土地区画整理事業・市街地再開発事業一体的施行実務ガイドマニュアル

4の1 固定資産税に関するメモ書き
(1) 総論
・ 固定資産税がかかる固定資産としては以下のものがあります(総務省HPの「固定資産税」参照)。
① 土地
・ 田,畑,住宅地,池沼(ちしょう),鉱泉地(例えば,温泉),牧場,原野等の土地です。
② 家屋
・ 住宅,お店,工場(発電所及び変電所を含む),倉庫等の建物のことです。
③ 償却資産
・ 土地及び家屋以外の事業の用に供することができる資産のことであって,例えば,会社等が所有する構築物(例えば,広告塔及びフェンス),飛行機,船,車両,運搬具(例えば,鉄道及びトロッコ),備品(例えば,パソコン及び工具)があります。
(2) 固定資産税の計算
ア 固定資産評価額は固定資産評価基準により算出されますところ,土地及び建物については3年ごとに評価替えが行われ,償却資産については毎年評価替えが行われます。
イ(ア) 固定資産評価にもとづき,賦課期日(毎年1月1日)の資産価格を決定し,これが課税標準額となります。
(イ) 200㎡以下の住宅用地の場合,課税標準額が固定資産評価の6分の1となり,200㎡を超える住宅用地の場合,超えた部分の課税標準額が固定資産評価の3分の1となります。
ウ(ア) 固定資産課税標準額に1.4%の税率をかけたものが固定資産税額となります。
(イ) 令和4年6月31日までの間に新築された住宅が一般住宅又は長期優良住宅に該当する場合,固定資産税の税率が半分になります。
(3) パソコン等にかかる固定資産税
・ パソコン等の課税標準額の合計が150万円以上となった場合,1.4%の固定資産税が毎年,発生することになります(創業融資に強い新宿税理士事務所HP「パソコン(PC)を買っただけで固定資産税がかかる!新宿の税理士が解説」参照)。
(4) その他
・  真実は不動産の所有者でない者が,登記簿上その所有者として登記されているために,右不動産に対する固定資産税を課せられ,これを納付した場合には,右所有名義人は,真の所有者に対し,不当利得として,右納付税額に相当する金員の返還を請求することができます(最高裁昭和47年1月25日判決)。
・ 固定資産課税台帳に登録された基準年度に係る賦課期日における土地の価格が同期日における当該土地の客観的な交換価値を上回る場合には,上記価格の決定は違法となります(最高裁平成15年6月26日判決)。
・ 家屋の評価の誤りに基づきある年度の固定資産税及び都市計画税の税額が過大に決定されたことによる損害賠償請求権に係る民法724条後段所定の除斥期間は,当該年度の固定資産税等に係る賦課決定がされ所有者に納税通知書が交付された時から進行します(最高裁令和2年3月24日判決)。

4の2 固定資産評価証明書の閲覧
(1) 平成15年4月1日以降,借地人及び借家人は,地方税法382条の3・地方税法施行令52条の15に基づき,本人確認資料のほか,賃貸借関係を証明できる書類(例えば,賃貸借契約書及び賃料の領収書等の原本)を持参すれば,固定資産評価証明書を取得できますし,固定資産課税台帳を閲覧できます(東京都主税局HPの「証明・閲覧」,大阪市HPの「法人の請求や代理人が請求される場合」参照)。
(2)   平成13年当時の固定資産税における情報開示については,「地方税における資産課税のあり方に関する調査研究中間報告書」(平成13年10月作成)が詳しいです。

5 家賃保証
(1) いわゆる家賃保証には,入居者向けのものとして①入居者の滞納保証があり,賃貸物件オーナー向けのものとして②サブリース及び③空室保証があります(一般社団法人全国賃貸経営補償機構(全賃機構)HPの「家賃保証とサブリース,空室保証の違いは?」参照)。
(2) 平成29年10月25日,家賃債務保証の業務の適正化を図るために,国土交通省の告示による家賃債務保証業者の登録制度が開始しました(国土交通省HPの「家賃債務保証業者登録制度」参照)。
(3) ライフルホームズプレスHP「家賃債務保証業者登録制度が2017年10月スタート。その登録基準やルールは?」が載っています。


6 住宅セーフティネット制度
・ 平成29年4月に公布された住宅セーフティネット法(正式名称は「住宅確保要配慮者に対する賃貸住宅の供給の促進に関する法律 」です。)の改正法が同年10月25日に施行され,高齢者,低額所得者,子育て世帯等の住宅確保要配慮者の入居を拒まない賃貸住宅の登録制度など,民間賃貸住宅や空き家を活用した「新たな住宅セーフティネット制度」が本格的に始まりました(国土交通省HPの「住宅セーフティネット制度について」参照)。

7 引越しに関するメモ書き
(1) 引越ライフHP「初めての引越しでも迷わない|引越し完了までの手順を9ステップで解説!」が載っています。
(2) おいくらHP「おいくら買取価格相場」が載っています。
(3) 白物家電ブログ「値引きのコツ」一覧が載っています。
(4) 一人暮らしでピザ,弁当,寿司,カレー等の出前を取る場合,出前館楽天デリバリー等が便利です。


7の2 オフィスに関するメモ書き
(1) IBOSHOに「オフィスにおいての適度な一人当たり面積とは?業種による違いも紹介」が載っています。
(2) 法律事務所開業・移転NAVI「坪数で見る」によれば,法律事務所レイアウトイメージとして,ネット面積10坪で弁護士1名・事務員1名・面談室1室であり,ネット面積15坪で弁護士2名・事務員2名・面談室1室であり,ネット面積25坪で弁護士3名・事務員2名・面談室2室であり,ネット面積27坪で弁護士4名・事務員2名・面談室3室となっています。
(3) 全国住宅産業協会HP「賃貸住宅における「共益費」のあり方に関する研究 報告書」が載っていますところ,同報告書によると「共益費(※)として収受している項目」,つまり,共益費の使い道で多いものは以下のとおりです(suumoの「賃貸の管理費・共益費って何に使われてるの?消費税はかかる?」参照)。
・共用電気料 78%
・共用灯保守・交換料 69%
・共用水道料 64%
・ゴミ置場清掃費 57%
・定期清掃費 56%
(4) ビルオーナーが賃料以外に請求できる費用としては,水道光熱費,清掃費,ゴミの処理費,設備使用料(例えば,付帯看板及び駐車場の使用料),消火器点検費及び空調設備の時間外使用費があります(タイズホームHP「『ビルオーナーが賃料以外に請求できる費用について』」参照)。
(5) 大家の味方HPに不動産投資・空室対策・リフォーム・火災保険・法人保険・バイク駐車場・トランクルーム・節税・家族信託・相続対策のことが書いてあります。


7の3 公衆浴場に関するメモ書き
(1)ア 公衆浴場法2条2項後段の,「公衆浴場の設置場所が配置の適正を欠くと認められる場合には、都道府県知事は公衆浴場の経営を許可しないことができる」旨の規定は,憲法22条に違反しません(最高裁平成元年3月7日判決。なお,先例として,最高裁大法廷昭和30年1月26日判決,最高裁昭和32年6月25日判決,最高裁昭和35年2月11日判決,最高裁昭和37年1月19日判決,最高裁昭和41年6月16日判決,最高裁昭和47年5月19日判決参照)。
イ 刑事事件に関する最高裁平成元年1月20日判決も公衆浴場法2条2項は憲法22条1項に違反しないと判示しています。
(2) 衆議院議員初鹿明博君提出入れ墨がある人の公衆浴場での入浴に関する質問に対する答弁書(平成29年2月21日付)は以下のとおりです。
     御質問は、入れ墨がある者(以下「対象者」という。)が入れ墨があることのみをもって、公衆浴場法(昭和二十三年法律第百三十九号)第四条に規定する伝染性の疾病にかかっている者と認められる者(以下「り患者」という。)に該当するか否か、又は入れ墨があることのみをもって、対象者による公衆浴場における入浴が同法第五条第一項に規定する浴槽内を著しく不潔にし、その他公衆衛生に害を及ぼすおそれのある行為に該当するか否かというものであると考えるところ、入れ墨があることのみをもって、対象者がり患者に該当し、又は当該入浴が当該行為に該当すると解することは困難である。

8 立退料に関するメモ書き
(1) 賃貸管理を増やすHP「オーナーの7つのリスク 立ち退き料編」によれば,賃貸人の7つのリスクは,①空室,②値下がり,③未回収損の発生,④運営費の増加,⑤天災地変への遭遇,⑥事件に巻き込まれる,⑦高額の立退料(家賃の10か月分ぐらい。)となっています。
(2) 立退料の内訳は,住居用の場合と事業用の場合とで異なります(いえらぶCLOUD「老朽化した建物の修繕だけど、立退料を支払う必要はあるの?」(2019年5月22日付))。
(3) ベリーベスト法律事務所の法律情報サイトであるリーガルモール「不動産の立退きにあたって押さえておくべき8つの知識」が載っています。


8の2 抵当権に基づく妨害排除請求
(1) 第三者が抵当不動産を不法占有することにより、競売手続の進行が害され適正な価額よりも売却価額が下落するおそれがあるなど、抵当不動産の交換価値の実現が妨げられ抵当権者の優先弁済請求権の行使が困難となるような状態があるときは、抵当権者は、抵当不動産の所有者に対して有する右状態を是正し抵当不動産を適切に維持又は保存するよう求める請求権を保全するため、所有者の不法占有者に対する妨害排除請求権を代位行使することができます(最高裁大法廷平成11年11月24日判決)。
(2) 抵当不動産の所有者から占有権原の設定を受けてこれを占有する者であっても,抵当権設定登記後に占有権原の設定を受けたものであり,その設定に抵当権の実行としての競売手続を妨害する目的が認められ,その占有により抵当不動産の交換価値の実現が妨げられて抵当権者の優先弁済請求権の行使が困難となるような状態があるときは,抵当権者は,当該占有者に対し,抵当権に基づく妨害排除請求として,上記状態の排除を求めることができます(最高裁平成17年3月10日判決)。
(3) 弁護士法人白濱法律事務所HP「抵当権に基づく妨害排除請求」には「売却のための保全処分(民事執行法第188条、同法第55条1項)を利用すれば、判決によらず簡易な手続で済む上、執行官保管の命令を受ければ抵当権者で抵当不動産を管理する必要はありません。」と書いてあります。

8の3 競売不動産価格維持のための保全処分
・ 不動産が差し押えられても,執行債務者は所有者としてそれを使用・収益することができる(民事執行法46条2項参照)ものの,債権者が差押えにより把握した交換価値は基本的に維持されなければなりませんから。競売不動産価格維持のための保全処分としては以下のものがあります(関西大学法学部名誉教授・栗田隆HP「2006年度民事執行・保全法講義」参照)。
(競売開始決定前)
① 担保不動産競売の開始決定前の保全処分(民事執行法187条)
(競売開始決定後)
② 売却のための保全処分(民事執行法55条及び55条の2)
③ 買受の申出をした差押債権者のための保全処分(民事執行法68条の2)
(最高価買受申出人の選定後)
④ 最高価買受申出人等のための保全処分(民事執行法77条)

9 住宅ローンに関するメモ書き
(1) ナビナビHPに「住宅ローンの特典を9行の金融機関で比較!あなたにぴったりのサービスが見つかる」が載っています(取り上げられている金融機関は,auじぶん銀行,新生銀行,ARUHI(アルヒ),住信SBIネット銀行,ソニー銀行,イオン銀行,三菱UFJ銀行,みずほ銀行及び三井住友信託銀行です。)。
(2) 出産時1年間の金利優遇があるのは三菱UFJ銀行及び三井住友信託銀行だけです。

10 表題登記及び所有権保存登記に関するメモ書き
(1) 住宅用家屋として登録免許税の軽減措置を受けるために必要となる住宅用家屋証明書は,建物表題登記を行った後に市町村の役所で入手できますところ,発行にかかる手数料は1300円です(いえーる住宅研究所HPの「所有権保存登記とは|費用・必要書類、自分で申請する方法も徹底解説」参照)。
(2) 土地家屋調査士事務所ランドテックHPに「建物の表示に関する登記の所有権証明書(具体例)」が載っています。
(3)ア 自分で登記.comに「不動産登記費用の相場について教えてください。」が載っています。
イ 土地家屋調査士の費用は,①調査業務,②測量業務,③申請手続及び④書類作成業務からなります(土地家屋調査士法3条1項のほか,土地家屋調査士法人えん公式ブログの「建物表題登記の費用はどれくらいかかるの?専門家への依頼でお得に」参照)。
(4) 工事請負業者(ハウスメーカー),売主業者によっては,代金の支払いを受けなければ,表題登記に必要な工事完了引渡証明書を出さないという業者もあり,その場合には,金融機関が,建物登記が完了するまでの間(2週間程度)抵当権設定登記を申請できない状態のリスクを負うことになります(土地家屋調査士法人えん公式ブログの「新築一戸建の建物表題登記の申請できるタイミングについてまとめ」参照)。

11 旧住所登記と新住所登記
(1) 現在住んでいる物件の住所で登記する場合を「旧住所登記」,購入する物件の住所で登記する場合を「新住所登記」といいますところ,
    旧住所登記の場合,メリットは「残金決済までの手続が比較的楽」であり,デメリットは①後で住所変更登記が必要になること,②住宅用家屋証明書の必要書類が多くなること,及び③銀行への住民票の提出が再度必要になることであり,
    新住所登記の場合,メリットは「残金決済後の手続が比較的楽」であり,デメリットは①嘘をつくことになること,②役所からの書類が届かない可能性があること,及び③時間の余裕がないです(マイホーム登記情報館HPの「旧住所!?新住所!?マイホーム購入の際の登記の住所について徹底解説!」参照)。
(2) あべんちのマイホームブログの「新築⇒引き渡し前の住所変更【タイミングと注意点】」には,建物表題登記を住所変更前の「旧住所」で行っていい理由として以下の記載があるほか,役所からの確認書類を受領できるようにするため,氏名及び住所を表記した簡易的なポストを必ず設置しておきましょうと書いてあります。
     建物表題登記には所有者の住所や氏名も記載されます。
     旧住所で登記した場合でも引渡時の所有権保存登記で「新旧の移動がわかる住民票」を添付して登記することで書き換えられる仕組みだからです。
(3) ゆめ部長の真っ直ぐ不動産仲介HP「新住所登記・旧住所登記をわかりやすく解説!」には以下の記載があります。
    新築一戸建てを購入した場合、表題部は「旧住所」で登記を行い、権利部(甲区・乙区)は「新住所」で行うことが多いです。理由は、日程がカツカツになること・表題部は売却時に住所変更が必要ないことの2つです。新住所登記をしても、表題部には昔住んでいた住所が残ってしまうため、もし「○○社宅」という名称を残したくない場合は不動産屋さんに相談してみてください。
(4) 住宅ローン控除のため耐震補強工事を行う場合,入居開始までに改修工事を実施し耐震基準適合証明書を取得する必要があるりますところ,新住所登記をしてしまうとこの制度の対象外となりますから,住宅ローン控除は受けられなくなります(不動産売買の説明書HPの「新住所登記と旧住所登記のメリット・デメリットをプロがわかりやすく解説!」参照)。

12 安心R住宅制度
・ 平成29年12月1日,既存住宅の流通促進に向けて,「不安」「汚い」「わからない」といった従来のいわゆる「中古住宅」のマイナスイメージを払拭し,「住みたい」「買いたい」既存住宅を選択できる環境の整備を図るため,国土交通省の告示による「安心R住宅」制度(特定既存住宅情報提供事業者団体登録制度)が開始しました(国土交通省HPの「安心R住宅」参照)。

12の2 S造,RC造,SRC造及び木造
(1) RENOSYマガジンの「RC造、S造、SRC造、木造とは? 構造別のメリット・デメリットや選び方」には以下の記載があります。
建物の構造は、大きく分けると、S造(鉄骨造)、RC造(鉄筋コンクリート造)、SRC造(鉄骨鉄筋コンクリート造)、木造の4種類があります。それぞれ「えす(ぞう)」「あーるしー(ぞう)」「えすあーるしー(ぞう)」「もくぞう」とよびます。
簡単にそれぞれの特徴を以下に説明します。
・ S造:軽くて柔らかい。大空間に向いている。
・ RC造:重くて硬い。耐火性、耐久性、遮音性に優れている。
・ SRC造:SとRC両方の特徴を持つ。建設コストは髙い
・ 木造:小さい建物に向いている。小規模であればS造、RC造と比べて建設コストは安い
(2) 公益社団法人日本建築士会連合会HP「知ってほしい建築を支える専門工事業 第3回 鉄筋工事業」に「RCとは Reinforced Concreteの略で、直訳すると「補強された
コンクリート」です。」と書いてあります。

13 サブリース
(1)ア サブリースについては,独立行政法人国民生活センターHP「不動産サブリース問題の現状」(建築提携型サブリース及び購入勧誘型サブリースがあります。),不動産投資ユニバーシティHP「収益物件のサブリースは全く意味がない」が参考になります。
イ ドットHPの「古賀茂明「業者から紹介料を取り、アパート融資で顧客をカモる悪徳銀行」」によれば,賃貸アパート向けの融資で,一部の大手地銀が顧客を建築業者に紹介する見返りに手数料(アパート建築請負金額の0.5%~3%)を受け取っているそうです。
(2) 物件を管理会社に委託する場合の管理委託契約の形態としては,①一般管理契約(「管理受託契約」ともいいます。)及び②一括借上管理契約(=サブリース契約)があります(リプロスHPの「Q&A」,国民生活センターHPの「不動産サブリースのしくみ-管理・原契約を中心に-」参照)。
(3) 日弁連は,平成30年2月15日,サブリースを前提とするアパート等の建設勧誘の際の規制強化を求める意見書を取りまとめました。
(4) 国土交通省HPの「『サブリース住宅原賃貸借標準契約書』について」に,サブリース住宅原賃貸借標準契約書が載っています。
(5) 金融庁HPに「アパート等のサブリースに関連する注意喚起について」(平成30年10月26日付)が載っています。
(6)ア 令和2年12月15日以降,サブリースに関しては,賃貸住宅の管理業務等の適正化に関する法律に基づく規制がなされています。
イ 国土交通省HPに「賃貸住宅管理業法ポータルサイト」が載っています。

13の2 スルガ銀行・シェアハウス事件の被害者救済スキーム
(1)ア NBL 1178号(2020年9月15日付)に「スルガ銀行・シェアハウス事件の被害者救済スキーム 全面解決への経緯報告<レポート>」(筆者はさくら共同法律事務所河合弘之弁護士スルガ銀行・スマートデイズ被害弁護団団長)です。)が載っていますところ,これによれば,令和2年3月25日,スルガ銀行・スマートデイズ被害弁護団はスルガ銀行との間で,以下の和解をしたそうです。
① スルガ銀行から融資を受けてシェアハウスを購入した者は当該不動産を手放す。
② スルガ銀行は全ての貸付債権を消滅させる。
イ NBL 1178号・61頁には,債務免除益課税を回避したスキームとして以下の記載があります。
スルガ銀行第二次弁護団は国税庁と多数回交渉した。その結果出た結論は、
① スルガ銀行は異常に高額な不動産を購入させるという不法行為を被害者に対してした。その損害額は融資額と当該シェアハウスの時価である。(山中注:「時価」ではなく,「時価の差額」と思います。)
② その損害賠償債務と借入金残債務を相殺する。
③ その結果残る債務(当該シェアハウス時価と同額)と当該シェアハウスを代物弁済とする。
というスキームであった。
上記スキームの①と②は「損害賠償については課税しない」という課税実務上の原則を利用したものである。③の代物弁済は等価交換だから免除益は発生しない。
国税庁は本件事件において被害者は気の毒なので課税はできない、しかし、従来の課税の実務や法令解釈は変えるわけにはいかない、ということで苦肉の策を講じてくれたのだ。
ウ 所得税法9条1項17号は,「損害賠償金(これらに類するものを含む。)で、心身に加えられた損害又は突発的な事故により資産に加えられた損害に基因して取得するものその他の政令で定めるもの」を非課税所得としています。
(2)ア 現代ビジネスHPに「スルガ銀行「かぼちゃの馬車」事件、借金帳消しは甘すぎやしないか」(2020年4月5日付)が載っています。
イ 証券取引法42条の2第1項3号が,平成3年法律第96号による同法の改正前に締結された損失保証や特別の利益の提供を内容とする契約に基づいてその履行を請求する場合を含め,顧客等に対する損失補てんや利益追加のための財産上の利益の提供を禁止していることは,憲法29条に違反しません(最高裁平成15年4月18日判決)。

14 廃棄物処理法に関するメモ書き
(1) 総論

・ 廃棄物処理法は,正式名称を廃棄物の処理及び清掃に関する法律といい,廃棄物の排出を抑制しつつ,発生した廃棄物をリサイクル等の適正な処理を行うことで,人々の生活環境を守ることを目的に作られました(e-reverse.com「廃棄物処理法とは|概要・罰則についてわかりやすく解説」参照)。
(2) 自分の土地への産業廃棄物の投棄は禁止されていること
・ 株式会社山本清掃HPの「自分の土地に産業廃棄物は捨てていいのか?」には以下の記載があります(改行を追加しています。)。
平成9年まで、設置許可が必要な処理場は管理型で1,000㎡以上、安定型で3,000㎡以上と定められていました。
処理基準を満たす必要はあったものの、1,000㎡未満なら設置許可がない土地でも埋め立てすることは合法でした。
ところが行政の目が行き届かず、不法投棄する行為が増加したため、以下の法律によって現在は規制されています。
・法第15条:産業廃棄物の最終処分場を設置する場合、設置前に都道府県知事の許可を受けなければいけない
・法第16条:何人も、正当な理由なく廃棄物を捨ててはいけない
上記の法律によって、自分の土地でも許可が必要となり、たとえ小さな埋立地でも投棄することは違反です。また、埋めずに放置するだけの場合でも「廃棄した」と判断され、不法投棄となるため要注意です。

(3) 地中埋設物としての産業廃棄物
ア MIZUNO HPの「【話題の埋立廃棄物】意外と多い!購入した土地から“廃棄物交じり土“が出てくる」には以下の記載があります。
「土地を掘り返したら廃棄物が出てきた」と聞けば、過去に不法投棄があったのか?と考えてしまいますね。確かに、不法投棄の現場を掘り起こすという可能性もなくはないでしょう。しかし、もっと高確率で遭遇するのは法整備前には合法だった“埋立現場”です。
どういうことかと言いますと、廃棄物を埋め立てる最終処分場を設置する場合には、どんなに小さくてでも設置許可を必要とします。しかしこれは、平成9年に廃棄物処理法が改正されてからのルールです。意外と最近のことです。

実は改正前は、安定型処分場で3000㎡以上、管理型処分場で1000㎡以上が設置許可の対象でした。裏を返せば、これ以下の規模だったら、許可が要らないため、勝手に埋立が出来てしまったのです。
イ 素人さんの為の不動産学校ブログ「地中に産廃が埋設されている土地の売買(No. 2543)」には以下の記載があります。
 昭和の時代は、当たり前に、田んぼにゴミやガラなどを埋めて土をかぶせてあるような土地が多く・・・。
 今回は、農地ですが・・・、昭和40年代~60年代ぐらいに埋め立てがされた雑種地などは、半分以上の確率で、コンクリートガラや、アスファルト、瓦、木材、外壁材、石など、何らか埋まっている土地です。
ウ 地中埋設物の調査方法としては,地歴調査,地中レーダー調査及びボーリング調査があります(スマイティHPの「地中埋設物がある土地の売却でトラブルに?調査方法や撤去費用について解説」参照)。
(3) 廃棄物処理法に関する判例
ア 廃棄物の処理及び清掃に関する法律施行令2条4号にいう「不要物」とは,自ら利用し又は他人に有償で譲渡することができないために事業者にとって不要となった物をいい,これに該当するか否かは,その物の性状,排出の状況,通常の取扱い形態,取引価値の有無及び事業者の意思等を総合的に勘案して決することとなっています(最高裁平成11年3月10日決定)。
イ  工場から排出された産業廃棄物を,同工場敷地内に掘られた穴に投入して埋め立てることを前提に,その穴のわきに野積みした行為は,廃棄物の処理及び清掃に関する法律16条違反の罪に当たります(最高裁平成18年2月20日決定)。
ウ  一般廃棄物収集運搬行の許可を受けた業者が,一般廃棄物たるし尿を含む汚泥と産業廃棄物たる汚泥を混合させた廃棄物を,一般廃棄物と装って市のし尿処理施設の受入口から投入した行為は,その混合物全量について,廃棄物の処理及び清掃に関する法律16条違反の罪に当たります(最高裁平成18年2月28日決定)。
エ 最高裁平成26年7月29日判決は,産業廃棄物の最終処分場の周辺住民が産業廃棄物処分業及び特別管理産業廃棄物処分業の許可処分の無効確認訴訟並びに上記各処分業の許可更新処分の取消訴訟の原告適格を有するとされた事例です。
(4) 残置物の処理等に関するモデル契約条項
・ 国土交通省HPの「残置物の処理等に関するモデル契約条項」には以下の記載があります。
 近時、高齢者の単身世帯が増加している中、民間賃貸住宅等においては、相続人の有無や所在が明らかでない単身者が死亡した際の賃貸借契約の解除や居室内に残された動産(残置物)の処理への不安感から、高齢者の入居の申込みを賃貸人が拒否することがあります。
 このような不安感を払拭し、単身の高齢者の居住の安定確保を図る観点から、単身の高齢者が死亡した際に契約関係及び残置物を円滑に処理できるように、今般、国土交通省及び法務省において、賃借人と受任者との間で締結する賃貸借契約の解除及び残置物の処理を内容とした死後事務委任契約等に係る「残置物の処理等に関するモデル契約条項」を策定しました。
 モデル契約条項は、その使用が法令で義務づけられているものではありませんが、モデル契約条項を利用することにより、合理的な死後事務委任契約等が締結され、ひいては、単身の高齢者の居住の安定確保が図られることを期待し、広く普及に努めています。
(5) その他
・ 大阪市HPに「品目別収集区分一覧表(50音順)」が載っています。

14の2 家電リサイクル等に関するメモ書き
(1) 平成25年4月1日に小型家電リサイクル法が施行され,一部の家電量販店などでもパソコンの回収を行うようになりました(パソコン3R推進協会HP「小型家電リサイクル法によるパソコンの回収」参照)。
(2) リネットジャパンHPに「パソコンのデータ消去について」及び「携帯電話・スマートフォンのデータ消去について」が載っていますところ,同社の「おまかせ安心データ消去サービス」を利用すれば,1台3300円でデータを消去してくれるみたいです。
(3) 株式会社オーミヤHP「RoHS指令(ローズ指令)とは?誰でも分かるRoHS【2022年最新版】」には以下の記載があります。
RoHSとは「Restriction of the use of certain Hazardous Substances in electrical and electronic equipment」の略称。
日本語で直訳すると、Restriction of the use of certain = 「使用制限」。Hazardous Substances = 「有害な物質」。In elextrical and electronic equipment = 「電気・電子機器の中の」となり、「電気・電子機器における特定有害物質の使用制限」のこととなります。
翻訳からもわかる通り、日本で考えられたものではないため、日本と同等に適切な処分、リサイクルが進んでいれば、そこまで厳しい制限が必要かという物質の制限も多く見られます。


15 農地法に関するメモ書き
(1) 農地転用許可制度の合憲性
・ 農地法4条1項は,農地を農地以外のものにするには,原則として都道府県知事等の許可を受けなければならないとし,農地法5条1項は,農地以外のものにするため農地について権利を設定し,移転するには,原則として都道府県知事等の許可を受けなければならないとしていますところ,これらの定めは憲法29条に違反しません(最高裁平成14年4月5日判決)。
(2) 農地の売買
ア 知事の許可を得ることを条件として農地の売買契約をしたとしても、いわゆる停止条件を付したものということはできません(最高裁昭和42年10月27日判決(判例秘書に掲載)。なお,先例として,最高裁昭和36年5月26日判決)。
イ 農地法の趣旨は,耕作者の地位の安定や農業生産の増大を図るという点にあり,これに違反することが直ちに公序良俗に反するとまではいえない上,農地法が適用されるのは農地であり,農地であるか否かはその土地の現況によって判断されるところ,農地の売買契約締結後に当該土地が非農地化した場合,農地法所定の許可なくして所有権移転の効力が生ずる可能性があります(最高裁令和4年4月18日判決。なお,先例として,最高裁昭和42年10月27日判決(判例秘書に掲載),最高裁昭和44年10月31日判決(判例秘書に掲載)及び最高裁昭和52年2月17日判決)。
(3) 地目変更
・ Earthcom「農地転用と地目変更の違いは?それぞれの内容と関係性、方法も詳しく!」には以下の記載があります。
    地目を変更するためには、地目を変更してから1ヶ月以内に地目変更登記をする必要があります。
    地目変更登記は、農地転用許可を経て、必要書類を添付して法務局で地目変更の手続きを行います。
    農地転用許可が済んでいなければ地目変更登記はできません。
(4) その他
・ 農林水産省HPに「農地制度」,及び「スマート農業の展開について」(2021年9月の農林水産省の文書)が載っています。
・ アンモニア製品は窒素質肥料となったり,工業用に用いられたりしています(日本肥料アンモニア協会HPの「アンモニアのご紹介」参照)。
・ JA静岡経済連HPの「田んぼのしくみ」には「田んぼの下の土壌は、『作土層(さくどそう)』『鋤床層(すきどこそう)』に分けられます。『作土層』は稲を植えるために耕された土で、その下の『鋤床層』は土をつき固めて作られた、水を通しにくい層で水を貯める働きをします。」と書いてあります。

15の2 市街化調整区域に関するメモ書き
(1) 分家住宅というのは,原則として建築物の建築が禁じられている市街化調整区域において,線引きの日前から引き続き現在に至るまで生活の本拠を構えている本家から世帯が分かれて,分家としての世帯が新たに必要とする住宅のことをいいますところ,「世帯構成員の住宅」ともいいます(福岡市HPの「分家住宅とは何か。(都市計画法第34条第12号)」参照)。
(2) 不動産SHOPナカジツHPの「市街化調整区域で建築許可がほしい!おさえておきたいポイントとは」には「市街化調整区域に既にある中古の住宅、つまり既存宅地を購入し、建て替え、リノベーションを行う際にも注意が必要です。既に建物が建っているからといって、建て替えを行う場合に許可を受けなければならないのです。」と書いてあります。

16 私力の行使及び刃物携帯の禁止
(1) 私力の行使
ア 私力の行使は,原則として法の禁止するところであるものの,法律に定める手続によったのでは,権利に対する違法な侵害に対抗して現状を維持することが不可能又は著しく困難であると認められる緊急やむを得ない特別の事情が存する場合においてのみ,その必要の限度を超えない範囲内で,例外的に許されるに過ぎません(最高裁昭和40年12月7日判決)。
イ ヤフーニュースに「横浜地裁に放置駐車してレッカー移動された車が話題 私有地だとどうなる?」が載っています。
(2) 刃物携帯の禁止
ア 銃刀法22条本文は「何人も、業務その他正当な理由による場合を除いては、内閣府令で定めるところにより計つた刃体の長さが六センチメートルをこえる刃物を携帯してはならない。」と定めています。
イ 鹿児島県警察HP「正当な理由なく刃物を携帯するのはやめましょう」には「正当な理由なく刃物を携帯するのはやめましょう」として以下の記載があります。
     銃砲刀剣類所持等取締法では,刃体の長さが6センチメートルをこえる刃物について「何人も,業務その他正当な理由による場合を除いては,これを携帯してはならない」と定めています。
     ただし,刃体の長さが8センチメートル以下のはさみ又は折りたたみ式のナイフ等で,刃体の先端部が著しく鋭くなく,かつ,刃が鋭利でないもの等は除かれます。
【業務その他正当な理由による場合】
     業務~調理人が仕事へ行くため包丁を持って行く場合など
正当な理由~社会通念上,その刃物を携帯することが当然に認められる場合であり,購入して自宅に持ち帰る場合など
イ(ア) 「正当な理由がなくて刃物、鉄棒その他人の生命を害し、又は人の身体に重大な害を加えるのに使用されるような器具を隠して携帯していた者」は拘留又は科料に処せられます(軽犯罪法1条2号)。
(イ) 軽犯罪法1条2号にいう「正当な理由」があるとは,同号所定の器具を隠して携帯することが,職務上又は日常生活上の必要性から,社会通念上,相当と認められる場合をいい,これに該当するか否かは,当該器具の用途や形状・性能,隠匿携帯した者の職業や日常生活との関係,隠匿携帯の日時・場所,態様及び周囲の状況等の客観的要素と,隠匿携帯の動機,目的,認識等の主観的要素とを総合的に勘案して判断すべきである(最高裁平成21年3月26日判決)。


17 耐震基準等に関するメモ書き
(1) 昭和46年の建築基準法改正により,排煙設備,非常用の照明装置及び非常用の進入口等の設置が義務化され,昭和56年の建築基準法改正により新耐震基準が導入されました(住宅サポート建築研究所HP「建築基準法の変遷」参照)。
(2) 非常用侵入口は,火事などの災害時に,外部から消防隊が進入するための開口部やバルコニー(足場)などの総称であって,建築基準法施行令126条の6で定められています(確認申請ナビ「『非常用進入口』とは|建築基準法における設置基準・免除方法を解説」参照)。
(3) 最高裁平成25年3月26日判決は,一級建築士により構造計算書に偽装が行われていた建築物の計画についての建築主事による建築確認が国家賠償法1条1項の適用上違法となるとはいえないとされた事例です。
(4) 民法717条1項に基づく土地の工作物の設置又は保存の瑕疵とは,当該工作物が通常有すべき安全性を欠いていることをいいます(最高裁平成25年7月12日判決)。


18 排水管に関するメモ書き
(1) モノタロウHPに「6-6 配管工事トラブルクレーム:給排水衛生設備編」が載っています。
(2) 水道修理のせーフリーHP「汚水桝とは何?仕組み・構造や排水桝との違い・掃除方法を紹介!」が載っています。
(3) HLS水道サービスHP「排水管・下水管のつまりと溢れの原因と修理」が載っています。

18の2 下水道に関するメモ書き
(1) 合流式下水道は,汚水と雨水を一本の管渠で集水するため,汚水排除と雨水排除を早く経済的に実施できるため,古くから下水道整備を進めてきた大都市を中心に採用されてきたのであって,大阪市の場合,市域の97%が合流式下水道で整備されています(大阪市HPの「大阪市公共下水道事業 (合流式下水道改善事業)」参照)。
(2)ア 厨房から出る排水に含まれる油やゴミ(野菜くずや残飯など)を直接下水道に流してしまうと,自然環境への悪影響が考えられ,それを防止するために作られたのがグリス(油脂)トラップ(せき止め)です(アイエスジーHPの「グリストラップ(グリーストラップ)とは?」参照)。
イ 埼玉県川口市HPに「下水道に食用油やラードなどを流し続けると管が詰まります」が載っています。

19 空き家に関するメモ書き
(1) 空家等対策特別措置法は平成27年2月26日に施行されました(国土交通省HPの「空家等対策の推進に関する特別措置法関連情報」参照)。
(2) 京都市では,令和8年1月から非居住住宅利活用促進税を導入することを検討しています(京都市情報館HPの「非居住住宅利活用促進税の導入に向けた取組について」参照)。

20 関連記事その他
(1)ア 国土交通省HPの「都市計画制度の概要」に,都市計画法制,土地利用計画制度等に関する資料が載っています。
イ 宅建業法に関する国土交通省の考え方は,国土交通省HPの「宅地建物取引業法 法令改正・解釈について」に載っています。
(2) 山梨県北杜市HP「太陽光発電システムを設置した住宅火災における消火活動の留意点について」が載っています。
(3) 二弁フロンティア2021年4月号「建築紛争処理の実務」が載っています。
(4)  建物の借主が該建物を含む貸主所有の不動産に賦課された固定資産税等の公租公課の支払を負担するといった事実があるとしても,右負担が建物の使用収益に対する対価の意味をもつものと認めるに足りる特段の事情のないかぎり,当該貸借関係は使用貸借となります(最高裁昭和41年10月27日判決)。
(5)  最高裁令和5年10月16日決定は,個人として免許を受けないで宅地建物取引業を営んだという訴因と、法人の代表者として法人の業務に関し免許を受けないで宅地建物取引業を営んだという訴因との間に公訴事実の同一性が認められた事例です。
(6) 以下の記事も参照してください。
・ 家賃相場・土地価格相場等の情報
・ 借地権に関するメモ書き
・ 私道に関するメモ書き

佐藤克則裁判官(49期)の経歴

生年月日 S41.12.27
出身大学 不明
定年退官発令予定日 R13.12.27
R7.4.1 ~ 大阪家地裁堺支部判事
R3.4.1 ~ R7.3.31 大阪地家裁岸和田支部判事
H30.4.1 ~ R3.3.31 大阪高裁6民判事
H27.4.1 ~ H30.3.31 大津家地裁判事
H24.4.1 ~ H27.3.31 大阪地家裁堺支部判事
H21.4.1 ~ H24.3.31 名古屋地裁3民判事
H19.4.10 ~ H21.3.31 大阪地家裁岸和田支部判事
H18.4.1 ~ H19.4.9 大阪地家裁岸和田支部判事補
H15.4.1 ~ H18.3.31 徳島地家裁判事補
H11.4.1 ~ H15.3.31 静岡地家裁沼津支部判事補
H9.4.10 ~ H11.3.31 大阪地裁判事補

* 以下の記事も参照してください。
・ 地方裁判所支部及び家庭裁判所支部

会社法等に関する最高裁判例

目次
第1 会社法等に関する最高裁判例(裁判所HPに掲載されているもの)
◯株券の発行関係
◯共有株式関係
◯株式の買取請求関係
◯株式有利関係
◯株式の譲渡関係
◯株主権関係
◯株主総会関係
◯営業譲渡関係
◯取締役会関係
◯取締役の責任関係
◯役員報酬関係
◯役員退職慰労金関係
◯監査役関係
◯会計帳簿等の閲覧謄写
◯会社の解散関係
◯所得税法関係
◯法人税関係
◯相続税法関係
◯金融商品取引法関係
◯民事訴訟法関係
◯刑事事件関係
第2 会社法に関する書籍のメモ書き
第3 会社法に関する論文のメモ書き

第4 株主総会に関するメモ書き
第5 取締役に関するメモ書き
第6 
関連記事その他

第1 会社法等に関する最高裁判例(裁判所HPに掲載されているもの)
◯株券の発行関係
・ 株券の発行前にした株券発行会社の株式の譲渡は、譲渡当事者間においては,当該株式に係る株券の交付がないことをもってその効力が否定されることはありません(最高裁令和6年4月19日判決)。
・ 株券発行会社の株式の譲受人は、譲渡人に対する株券交付請求権を保全する必要があるときは、民法423条1項本文により、譲渡人の株券発行会社に対する株券発行請求権を代位行使することができます(最高裁令和6年4月19日判決)。
◯共有株式関係
・ 株式を相続により準共有するに至った共同相続人は,商法203条2項にいう「株主ノ権利ヲ行使スベキ者」の指定及びその旨の会社に対する通知を欠く場合には,特段の事情がない限り,株主総会決議不存在確認の訴えにつき原告適格を有しません(最高裁平成2年12月4日判決)。
・ 株式を相続により準共有するに至った共同相続人は,商法203条2項にいう「株主ノ権利ヲ行使スベキ者」の指定及びその旨の会社に対する通知を欠く場合には,特段の事情がない限り,合併無効の訴えにつき原告適格を有しません(最高裁平成3年2月19日判決)。
・  有限会社の持分が数人の共有に属する場合,有限会社法22条,商法203条2項にいう社員の権利を行使すべき者は,その共有持分の価格に従い過半数をもって定めます(最高裁平成9年1月28日判決のほか,令和5年4月1日以降の民法252条第1項)。
・ 共同相続された株式は,相続開始と同時に当然に相続分に応じて分割されることはありません(最高裁平成26年2月25日判決。なお,先例として,最高裁昭和45年1月22日判決参照)。
・ 共有に属する株式について会社法106条本文の規定に基づく指定及び通知を欠いたまま当該株式についての権利が行使された場合において,当該権利の行使が民法の共有に関する規定に従ったものでないときは,株式会社が同条ただし書の同意をしても,当該権利の行使は,適法となるものではありません(最高裁平成27年2月19日判決)。

◯株式の買取請求関係
(「公正な価格」関係)
・  会社法782条1項所定の吸収合併等によりシナジー(組織再編による相乗効果)その他の企業価値の増加が生じない場合に,同項所定の消滅株式会社等の反対株主がした株式買取請求に係る「公正な価格」は,原則として,当該株式買取請求がされた日における,吸収合併契約等を承認する旨の株主総会の決議がされることがなければその株式が有したであろう価格をいいます(最高裁平成23年4月19日決定及び最高裁平成23年4月26日決定)。
・ 株式移転完全子会社の反対株主がした株式買取請求に係る「公正な価格」は,原則として,株式移転により組織再編による相乗効果その他の企業価値の増加が生じない場合には,当該株式買取請求がされた日における,株式移転を承認する旨の株主総会決議がされることがなければその株式が有したであろう価格をいうが,それ以外の場合には,株式移転計画において定められていた株式移転設立完全親会社の株式等の割当てに関する比率が公正なものであったならば当該株式買取請求がされた日においてその株式が有していると認められる価格をいいます(最高裁平成24年2月29日決定)。
・  非上場会社において会社法785条1項に基づく株式買取請求がされ,裁判所が収益還元法を用いて株式の買取価格を決定する場合に,非流動性ディスカウント(当該会社の株式には市場性がないことを理由とする減価)を行うことはできません(最高裁平成27年3月26日決定)。
・ 公開買付けに応募しなかった株主の保有する株式も買付価格と同額で取得する旨が明示されているなど,一般に公正と認められる手続により経営統合の手段たる公開買付けが行われ,その後に買付価格と同額で株式売渡請求がされた場合には,株主が公開買付けに応じるか否かを適切に判断することができる以上,特段の事情がない限り,特別支配株主による株式売渡請求に係る株式の売買価格を買付価格と同額とするのが相当であり,それは非上場株式である場合にも等しく当てはまります(最高裁令和2年3月12日決定によって支持された東京高裁平成31年2月27日決定(判例時報2492号115頁))。
・  最高裁令和5年5月24日決定は,会社法144条2項に基づく譲渡制限株式の売買価格の決定の手続において裁判所が上記売買価格を定める場合に、DCF法によって算定された上記譲渡制限株式の評価額から非流動性ディスカウントを行うことができるとされた事例です。


(その他関係)
・  社債等振替法128条1項所定の振替株式についての会社法172条1項に基づく価格の決定の申立てを受けた会社が,裁判所における株式価格決定申立て事件の審理において,申立人が株主であることを争った場合には,その審理終結までの間に社債等振替法154条3項所定の通知がされることを要します(最高裁平成22年12月7日決定)。
・ 会社法116条1項に基づく株式買取請求をした株主が同請求に係る株式を失った場合は,当該株主は同法117条2項に基づく価格の決定の申立ての適格を欠くに至り,同申立ては不適法になります(最高裁平成24年3月28日決定)。
・ 最高裁平成28年7月1日決定は, 株式会社の株式の相当数を保有する株主が当該株式会社の株式等の公開買付けを行い,その後に当該株式会社の株式を全部取得条項付種類株式とし,当該株式会社が同株式の全部を取得する取引において,上記公開買付けが一般に公正と認められる手続により行われた場合における会社法172条1項にいう「取得の価格」について判断した事例です。
・ 会社法179条の4第1項1号の通知又は同号及び社債,株式等の振替に関する法律161条2項の公告がされた後に会社法179条の2第1項2号に規定する売渡株式を譲り受けた者は,同法179条の8第1項の売買価格の決定の申立てをすることができません(最高裁平成29年8月30日決定)。
・  会社法182条の4第1項に基づき株式の買取請求をした者は,同法182条の5第5項に基づく支払を受けた場合であっても,上記株式の価格につき会社との協議が調い又はその決定に係る裁判が確定するまでは,同法318条4項にいう「債権者」に当たります(最高裁令和3年7月5日判決)。

◯株式の譲渡関係
・ いわゆる一人会社の株主がした株式譲渡は,定款所定の取締役会の承認がなくても,会社に対する関係においても有効です(最高裁平成5年3月30日判決)。
・  定款に株式の譲渡につき取締役会の承認を要する旨の定めのある会社の株式について,会社に対して株式の譲渡を承認すべきこと及びこれを承認しないときは他に譲渡の相手方を指定すべきことを請求した株主は,取締役会から指定された者が株主に対して当該株式を売り渡すべき旨を請求するまで,その請求を撤回することができます(最高裁平成15年2月27日決定)。
・ 最高裁平成21年2月17日判決は, 株式会社の従業員がいわゆる持株会から譲り受けた株式を個人的理由により売却する必要が生じたときは持株会が額面額でこれを買い戻す旨の当該従業員と持株会との間の合意が有効とされた事例です。


◯株式発行関係
・  株式会社を代表する権限のある取締役によって行われた新株の発行は,それが著しく不公正な方法によってされたものであり,かつ,右会社の取締役がその新株を引き受けて現に保有し,右会社が小規模で閉鎖的な会社であるなど原判示の事情がある場合でも,有効です(最高裁平成6年7月14日判決)。
・  非上場会社が株主以外の者に新株を発行するに際し,客観的資料に基づく一応合理的な算定方法によって発行価額が決定されていたといえる場合には,その発行価額は,特別の事情のない限り,商法280条ノ2第2項(会社法199条3項に相当する条文)にいう「特ニ有利ナル発行価額」に当たりません(最高裁平成27年2月19日判決)。

◯株主権関係
・ 株式は,株主たる資格において会社に対して有する法律上の地位を意味し,株主は,株主たる地位に基づいて,剰余金の配当を受ける権利(会社法105条1項1号),残余財産の分配を受ける権利(同項2号)などのいわゆる自益権と,株主総会における議決権(同項3号)などのいわゆる共益権とを有します(最高裁平成26年2月25日判決。なお,先例として最高裁大法廷昭和45年7月15日判決参照)

◯株主総会関係
・ 会社の支配ないし経営の参加の問題は,究極的には株主の手に委ねられています(最高裁昭和42年3月14日判決)。
・ 株式会社において,株主である取締役は,当該取締役の解任に関する株主総会の決議について特別の利害関係を有する者に当たりません(最高裁昭和53年4月14日判決。なお,先例として,最高裁昭和42年3月14日判決)ところ,昭和56年の商法改正により,特別利害関係人となる株主であっても株主総会において議決権行使できることとなり,当該議決権行使によって著しく不当な決議がなされたことが決議取消事由となるにすぎないこととなりました(旧商法247条3号)。
・ 株主は,他の株主に対する招集手続のかしを理由として株主総会決議取消の訴を提起することができます(最高裁昭和42年9月28日判決)。
・ 議決権を行使する株主の代理人の資格を当該会社の株主に制限する旨の定款の規定は,有効です(最高裁昭和43年11月1日判決)。
・ 定款により株主総会における議決権行使の代理資格を株主に制限している株式会社において,株主名簿上の株主でない甲に乙名義株式の議決権行使を許容した仮処分がされても,右仮処分は,甲に乙以外の株主の議決権を代理行使する資格を与えるものではありません(最高裁昭和45年1月22日判決)。
・  取締役会の決議を経ることなく,代表取締役以外の取締役によって招集された株主総会は法律上の意義における株主総会とはいえず,そこで決議がなされたとしても,株主総会の決議があったものと解することはできません(最高裁昭和45年8月20日判決)。
・ 株主総会招集の手続が、その招集につき決定の権限を有する取締役会の有効な決議に基づかないでなされたものであるのみならず、その招集の通知が、すべての株主に対して法定の招集期間に二日足りない会日より一二日前になされたものであるときは、右株主総会招集の手続には、右総会の決議の取消請求を裁量棄却することの許されない重大なかしがあります(最高裁昭和46年3月18日判決)。
・ 株式会社が定款で株主総会における議決権行使の代理人の資格を株主に限定している場合においても,株主である地方公共団体,株式会社が,その職制上上司の命令に服する義務を負い,議決権の代理行使にあたつて法人の代表者の意図に反することができないようになつている職員又は従業員に議決権を代理行使させることは,右定款の規定に反しません(最高裁昭和51年12月24日判決)。
・ 株主総会決議取消の訴において,商法248条1項所定の期間経過後に新たな取消事由を追加主張することは,許されません(最高裁昭和51年12月24日判決)。
・  2700株の株主に対する株主総会の招集通知に法定の招集期間より6日足りない瑕疵がある場合であつても,右株主に対しては代表取締役があらかじめ総会の議題を話しており,右株主も総会が右株主の住居と同一建物内で開催されることを熟知しながら意識的に出席を拒否したものであり,かつ,他の7300株の株主全員が出席して全会一致で解散の決議をしたなどといった事情のもとにおいては,決議取消請求を棄却するのが相当です(最高裁昭和55年6月16日判決)。
・  取締役に選任する旨の株主総会の決議が不存在である場合に,その者を構成員の一員とする取締役会で選任された代表取締役が,その取締役会の招集決定に基づき招集した株主総会において取締役を選任する旨の決議がされたときは,右決議は,いわゆる全員出席総会においてされたなど特段の事情がない限り,不存在です(最高裁平成2年4月17日判決)。
・  取締役等を選任する甲株主総会決議の不存在確認請求に、同決議が存在しないことを理由とする後任取締役等の選任に係る乙株主総会決議の不存在確認請求が併合されている場合には,後の決議がいわゆる全員出席総会において行われたなどの特段の事情のない限り,先の決議についても存否の確認の利益が認められます(最高裁平成11年3月25日判決)。
・ 特定の株主による経営支配権の取得に伴い,株式会社の企業価値がき損され,株主の共同の利益が害されることになるか否かについては,株主総会における株主自身の判断の正当性を失わせるような重大な瑕疵が存在しない限り,当該判断が尊重されるべきです(ブルドックソース事件に関する最高裁平成19年8月7日決定)。
・  株式会社の取締役又は監査役の解任又は選任を内容とする株主総会決議不存在確認の訴えの係属中に当該株式会社が破産手続開始の決定を受けても,上記訴訟についての訴えの利益は当然には消滅しません(最高裁平成21年4月17日判決)。
・  ある議案を否決する株主総会等の決議の取消しを請求する訴えは不適法です(最高裁平成28年3月4日判決)。
・  取締役会設置会社である非公開会社における,取締役会の決議によるほか株主総会の決議によっても代表取締役を定めることができる旨の定款の定めは有効です(最高裁平成29年2月21日決定)。
・ 最高裁令和5年10月26日決定は, 吸収合併消滅株式会社の株主が吸収合併をするための株主総会に先立って上記会社に対して委任状を送付したことが会社法785条2項1号イにいう吸収合併等に反対する旨の通知に当たるとされた事例です。


◯営業譲渡関係
・  商法245条1項1号にいう「営業ノ全部又ハ重要ナル一部ノ譲渡」とは,一定の営業の目的のため組織化され,有機的一体として機能する財産の全部又は重要なる一部を譲渡し,これによって,譲渡会社がその財産によって営んでいた営業的活動の全部又は重要な一部を譲受人に受け継がせ,譲渡会社がその譲渡の限度に応じ法律上当然に競業避止業務を負う結果を伴うものをいいます(最高裁大法廷昭和40年9月22日判決)。
・ 商法245条1項1号の営業譲渡契約が譲渡会社の株主総会の特別決議を経ていないことにより無効である場合には,譲受人もまた右の無効を主張することができます(最高裁昭和61年9月11日判決)。
・ 営業の重要な一部を譲渡する旨の株主総会決議がされたが,右営業の譲渡の要領を株主総会の招集通知に記載しなかった違法がある場合には,右違法が重大でないとはいえず,商法251条により右決議の取消請求を棄却することはできません(最高裁平成7年3月9日判決)。

◯取締役会関係
・ 代表取締役が,取締役会の決議を経てすることを要する対外的な個々的取引行為を,右決議を経ないでした場合でも,右取引行為は,内部的意思決定を欠くに止まるから,原則として有効であって,ただ,相手方が右決議を経ていないことを知りまたは知り得べかりしときに限り無効です(最高裁昭和40年9月22日判決)。
・ 代表取締役の解任に関する取締役会の決議については,その代表取締役は,特別利害関係人にあたります(最高裁昭和44年3月28日判決)。
・  会社と取締役間に商法265条(現在の会社法365条1項・356条1項2号)所定の取引がなされる場合でも,右取締役が会社の全株式を所有し,会社の営業が実質上右取締役の個人経営のものにすぎないときは,右取引によって両者の間に実質的に利害相反する関係を生ずるものでなく,右取引については,同条所定の取締役会の承認を必要としません(最高裁昭和45年8月20日判決)。
・  株式会社の代表取締役が取締役会の決議を経ないで重要な業務執行に該当する取引をした場合,当該会社以外の者が取締役会の決議を経ていないことを理由にその無効を主張することは,当該会社の取締役会が上記無効を主張する旨の決議をしているなどの特段の事情がない限り,許されません(最高裁平成21年4月17日判決)。
・ 取締役会が商法280条ノ21第1項に基づく株主総会決議による委任を受けて新株予約権の行使条件を定めた場合において,新株予約権の発行後に上記行使条件を変更することができる旨の明示の委任がないときは,当該新株予約権の発行後に上記行使条件を変更する取締役会決議は,上記行使条件の細目的な変更をするにとどまるものであるときを除き,無効です(最高裁平成24年4月24日判決)。

◯取締役の責任関係
・ 商法266条1項5号にいう「法令」には,取締役を名あて人とし,取締役の受任者としての義務を一般的に定める商法254条3項(民法644条),商法254条ノ3の規定及び取締役がその職務遂行に際して遵守すべき義務を個別的に定める規定のほか,会社を名あて人とし,会社がその業務を行うに際して遵守すべきすべての規定が含まれます(最高裁平成12年7月7日判決)。
・ 有限会社の破産宣告当時に取締役の地位にあった者は,破産宣告によっては取締役の地位を当然には失わず,社員総会の招集等の会社組織に係る行為等については,取締役としての権限を行使し得ると解されるから,火災保険約款所定の「取締役」に該当する(最高裁平成16年6月10日判決)。
・ いわゆる仕手筋として知られるAが,大量に取得したB社の株式を暴力団の関連会社に売却するなどとB社の取締役であるYらを脅迫した場合において,売却を取りやめてもらうためAの要求に応じて約300億円という巨額の金員を融資金の名目で交付することを提案し又はこれに同意したYらの忠実義務,善管注意義務違反が問われた行為について,Aの言動に対して警察に届け出るなどの適切な対応をすることが期待できないような状況にあったということはできないという事情の下では,やむを得なかったものとしてその過失を否定することはできません(最高裁平成18年4月10日判決)。
・ 最高裁平成20年1月28日判決は,銀行が,積極的な融資の対象であったが大幅な債務超過となって破たんに直面した企業に対し,同企業を数か月延命させる目的で追加融資を実行した場合において,追加融資を決定した取締役らに忠実義務,善管注意義務違反があるとされた事例です。
・  株主代表訴訟の対象となる商法(平成17年法律第87号による改正前のもの)267条1項にいう「取締役ノ責任」には,同法266条1項各号所定の責任など同法が取締役の地位に基づいて取締役に負わせている責任のほか,取締役が会社との取引によって負担することになった債務についての責任も含まれます(最高裁平成21年3月10日判決)。
・ 最高裁平成21年7月9日判決は,株式会社の従業員らが営業成績を上げる目的で架空の売上げを計上したため有価証券報告書に不実の記載がされ,株主が損害を被ったことにつき,会社の代表者に従業員らによる架空売上げの計上を防止するためのリスク管理体制構築義務違反の過失がないとされた事例です。
・ 最高裁平成21年11月27日判決は,A銀行が,県から要請を受け,県において再建資金の融資を計画していたB社に対し,上記融資が実行されるまでのつなぎ融資をした後に,B社に追加融資をしてもその回収を容易に見込めない一方で,これをしなければB社が破綻,倒産する可能性が高く,上記つなぎ融資まで回収不能となるおそれがある状況の下で,B社に対して追加融資をした場合において,その追加融資の一部につき,これを決定したA銀行の取締役らに善管注意義務違反があるとされた事例です。
・ アパマンショップホールディングス株主代表訴訟事件に関する最高裁平成22年7月15日判決は,A社が事業再編計画の一環としてB社の株式を任意の合意に基づき買い取る場合において,A社の取締役に上記株式の買取価格の決定について善管注意義務違反はないとされた事例でありますところ,弁護士の意見も聴取したことが取締役の善管注意義務違反を否定する事情の一つとなりました。


◯役員報酬関係
・  取締役の報酬額には使用人兼務取締役の使用人分給与は含まれない旨を明示して取締役全員の報酬総額を改訂する株主総会決議がされた場合において,少なくとも使用人として受ける給与の体系が明確に確立されており,かつ,使用人として受ける給与がそれにより支給されている限り,右株主総会決議は,商法269条(現在の会社法361条)に違反せず,また,同条の脱法行為に当たりません(最高裁昭和60年3月26日判決)。
・ 株主総会の決議を経ずに支払われた役員報酬について事後に株主総会の決議を経た場合には,当該決議の内容等に照らして商法269条及び商法279条1項の規定の趣旨目的を没却するような特段の事情があると認められない限り,当該役員報酬の支払は株主総会の決議に基づく適法有効なものになります(最高裁平成17年2月15日判決)。


◯役員退職慰労金関係
・  株式会社の役員であった者に対する退職慰労金について,株主総会の決議により,その金額などの決定をすべて無条件に取締役会に一任することは許されないというべきであるが,これと異なり,株主総会の決議において,明示的もしくは黙示的に,その支給に関する基準を示し,具体的な金額,支払期日,支払方法などは右基準によつて定めるべきものとして,その決定を取締役会に任せることは差しつかえなく,かような決議をもって無効と解すべきではありません(最高裁昭和44年10月28日判決。なお,先例として,最高裁昭和39年12月11日判決参照)。
・  役員退職慰労金贈呈の株主総会決議取消しの訴えの係属中,右決議と同一の内容を持ち,右決議の取消判決が確定した場合にはさかのぼって効力を生ずるものとされている決議が有効に成立し,それが確定したときは,特別の事情がない限り,右決議取消しの訴えの利益は,失われます(最高裁平成4年10月29日判決)。
・ 最高裁平成19年11月16日判決は, 会社の執行役員を退任した者が会社に対し退職慰労金の支払を請求することができないとされた事例です。
・  最高裁平成21年12月18日判決は,株式会社が株主総会の決議等を経ることなく退任取締役に支給された退職慰労金相当額の金員につき不当利得返還請求をすることが信義則に反せず権利の濫用に当たらないとした原審の判断に違法があるとされた事例です。
・  株主総会の決議を経て,役員に対する退職慰労金の算定基準等を定める会社の内規に従い支給されることとなった会社法361条1項にいう取締役の報酬等に当たる退職慰労年金について,退任取締役相互間の公平を図るため集団的,画一的な処理が制度上要請されているという理由のみから,上記内規の廃止の効力を既に退任した取締役に及ぼし,その同意なく未支給の退職慰労年金債権を失わせることはできません(最高裁平成22年3月16日判決)。
・ 最高裁令和6年7月8日判決は,退任取締役の退職慰労金について株主総会決議による委任を受けた取締役会がした,内規の定める基準額から大幅に減額した額を支給する旨の決議に裁量権の範囲の逸脱又はその濫用があるとはいえないとされた事例です。

◯監査役関係
・  監査の範囲が会計に関するものに限定されている監査役は,計算書類及びその附属明細書の監査を行うに当たり,会計帳簿が信頼性を欠くものであることが明らかでない場合であっても,当該計算書類等に表示された情報が会計帳簿の内容に合致していることを確認しさえすれば,常にその任務を尽くしたといえるものではありません(最高裁令和3年7月19日判決)。

◯会計帳簿等の閲覧謄写
・ 商法293条ノ6の規定に基づく会計帳簿等の閲覧謄写請求の理由は,具体的に記載されなければならないが,その記載された請求の理由を基礎付ける事実が存在することを立証する必要はありません(最高裁平成16年7月1日判決)。
◯ 子会社の会計帳簿等の閲覧謄写許可申請をした親会社の株主につき,商法(平成17年法律第87号による改正前のもの)293条の8第2項が不許可事由として規定する同法293条の7第2号に掲げる事由があるというためには,当該株主が子会社と競業をなす者であるなどの客観的事実が認められれば足り,当該株主に会計帳簿等の閲覧謄写によって知り得る情報を自己の競業に利用するなどの主観的意図があることを要しません(最高裁平成21年1月15日判決)。

◯会社の解散関係
・  株式会社が破産宣告とともに同時破産廃止の決定を受けた場合において,なお残余財産があるときは,従前の取締役が当然に清算人となるものではなく,商法417条1項ただし書の場合を除き,同条2項に則り,利害関係人の請求によつて,裁判所が清算人を選任すべきです(最高裁昭和43年3月15日判決)。
・  清算の結了した株式会社の利害関係人は,商法429条の規定に基づき,同条後段所定の保存者に対し,同条前段所定の帳簿及び重要な資料の閲覧又は謄写の請求をすることはできません(最高裁平成16年10月4日判決)。
・ 株式会社の解散の訴えに係る請求を認容する確定判決の効力を受ける第三者は,上記確定判決に係る訴訟について独立当事者参加の申出をすることによって,上記確定判決に対する再審の訴えの原告適格を有することになります(最高裁平成26年7月10日決定)。



◯所得税法関係
・ 取引相場のない株式の譲渡に係る所得税法59条1項所定の「その時における価額」につき,当該株式の譲受人が財産評価基本通達においてその株主が取得した株式は配当還元価額によって評価するものとされている株主に該当することを理由として,配当還元価額によって評価した額であるとした原審の判断には,同項の解釈適用を誤った違法があります(最高裁令和2年3月24日判決)。

◯法人税関係
・ 最高裁平成18年1月24日判決は,親会社が子会社に新株の有利発行をさせて親会社の保有する子会社株式に表章された資産価値を上記発行を受けた関連会社に移転させたことが親会社の益金の額の計算において法人税法22条2項にいう取引に当たるとされた事例です。
・ 最高裁平成28年2月29日判決は,法人税法132条の2にいう「法人税の負担を不当に減少させる結果となると認められるもの」の意義及びその該当性の判断方法について判示した事例です。

◯相続税法関係
・ 最高裁平成23年2月18日判決は,香港に赴任しつつ国内にも相応の日数滞在していた者が,国外財産の贈与を受けた時において,相続税法(平成15年法律第8号による改正前のもの)1条の2第1号所定の贈与税の課税要件である国内(同法の施行地)における住所を有していたとはいえないとされた事例です。

◯証券取引法及び金融商品取引法関係
1 有価証券報告書関係
・ 金融商品取引法21条の2第3項にいう「虚偽記載等に係る記載すべき重要な事項」とは,虚偽記載等のある有価証券報告書等の提出者等を発行者とする有価証券に対する取引所市場の評価の誤りを明らかにするに足りる基本的事実をいいます(最高裁平成24年3月13日判決)。
・ 最高裁平成24年12月21日判決は, 株式会社が,臨時報告書及び有価証券報告書の虚偽記載等の事実の公表をするとともに,同日,再生手続開始の申立てをした場合において,金融商品取引法21条の2第2項の規定により損害の額を算定するに当たり,同条4項又は5項の規定による減額を否定した原審の判断に違法があるとされた事例です。
・ 最高裁令和2年12月22日判決は,有価証券届出書の財務計算に関する書類に係る部分に虚偽記載等がある場合に当該有価証券の募集に係る発行者等と元引受契約を締結した金融商品取引業者等が金融商品取引法21条1項4号の損害賠償責任につき同条2項3号による免責を受けるための要件を判示した事例です。
2 適合性原則及びこれに関連する説明義務関係
・ 証券会社の担当者が,顧客の意向と実情に反して,明らかに過大な危険を伴う取引を積極的に勧誘するなど,適合性の原則から著しく逸脱した証券取引の勧誘をしてこれを行わせたときは,当該行為は不法行為法上も違法となります(最高裁平成17年7月14日判決)。
・ 最高裁平成21年7月16日判決は, 特定の種類の商品先物取引について差玉向かいを行っている商品取引員が,専門的な知識を有しない委託者との間で締結した商品先物取引委託契約上,委託者に対して負う説明義務及び通知義務について判示した事例です。
・ 最高裁平成25年3月7日判決及び最高裁平成25年3月26日判決は,銀行と顧客との間で固定金利と変動金利を交換してその差額を決済するという金利スワップ取引に係る契約を締結した際に銀行に説明義務違反があったとはいえないとされた事例です。
・ 最高裁平成28年3月15日判決は, 顧客が証券会社の販売する仕組債を運用対象金融資産とする信託契約を含む一連の取引を行った際に証券会社に説明義務違反があったとはいえないとされた事例です。
3 その他
・  証券取引法施行令(平成18年政令第377号による改正前のもの)7条5項4号,発行者以外の者による株券等の公開買付けの開示に関する内閣府令(平成18年内閣府令第86号による改正前のもの)3条の2の4第1項及び第2項所定の「株券等」には,特定買付け等(同施行令7条5項にいうもの)の対象とならない株券等は含まれません(最高裁平成22年10月22日判決)。

◯民事訴訟法関係
・  取締役会の意思決定が違法であるとして取締役に対し提起された株主代表訴訟において,株式会社は,特段の事情がない限り,取締役を補助するため訴訟に参加することが許されます(最高裁平成13年1月30日決定)。
・  甲が提起した株主代表訴訟において,控訴審の第1回口頭弁論期日後に乙がした商法268条2項による参加の申出が,甲の第1審における不適切な訴訟追行を是正するためであって,遅きに失したとまではいえないこと,乙の参加の申出を許したとしても相当期間にわたる審理を要するものではないことなどといった事情の下においては,乙の参加は本件訴訟を不当に遅延させるものとはいえません(最高裁平成14年1月22日判決)。

◯刑事事件関係
1 証券取引法及び金融商品取引法違反関係
・  最高裁平成20年7月18日判決は,旧株式会社日本長期信用銀行の平成10年3月期に係る有価証券報告書の提出及び配当に関する決算処理につき,これまで「公正ナル会計慣行」として行われていた税法基準の考え方によったことが違法とはいえないとして,同銀行の頭取らに対する虚偽記載有価証券報告書提出罪及び違法配当罪の成立が否定された事例です。
・  最高裁平成21年12月7日判決は,旧株式会社日本債券信用銀行の平成10年3月期の決算処理における支援先等に対する貸出金の査定に関して,これまで「公正ナル会計慣行」として行われていた税法基準の考え方によることも許容されるとして,資産査定通達等によって補充される平成9年7月31日改正後の決算経理基準を唯一の基準とした原判決が破棄された事例です。
・ 最高裁平成22年5月31日決定は, 虚偽記載半期報告書提出罪及び虚偽記載有価証券報告書提出罪について,当該会社と会計監査契約を締結していた監査法人に所属する公認会計士に会社代表取締役らとの各共同正犯の成立を認めた原判断が是認された事例です。
・  証券取引法(平成18年法律第65号による改正前のもの)167条2項にいう「公開買付け等を行うことについての決定」をしたというためには,同項にいう「業務執行を決定する機関」において,公開買付け等の実現を意図して,公開買付け等又はそれに向けた作業等を会社の業務として行う旨の決定がされれば足り,公開買付け等の実現可能性があることが具体的に認められることは要しません(最高裁平成23年6月6日決定)。
・ 金融商品取引法166条1項1号にいう「役員,代理人,使用人その他の従業者」とは,上場会社等の役員,代理人,使用人のほか,現実に当該上場会社等の業務に従事している者を意味し,当該上場会社等との委任,雇用契約等に基づいて職務に従事する義務の有無や形式上の地位・呼称のいかんを問いません(最高裁平成27年4月8日決定)。
2 特別背任罪関係
・  甲社の絵画等購入担当者である乙らが,丙の依頼を受けて,甲社をして丙が支配する丁社から多数の絵画等を著しく不当な高額で購入させ,甲社に損害を生じさせた場合において,その取引の中心となった甲と丙の間に,それぞれが支配する会社の経営がひっ迫した状況にある中,互いに無担保で数十億円単位の融資をし合い,各支配に係る会社を維持していた関係があり,丙がそのような関係を利用して前記絵画等の取引を成立させたとみることができるなど判示の事情の下では,丙は,乙らの特別背任行為について共同加功をしたということができます(最高裁平成17年10月7日決定)。
・  銀行がした融資に係る頭取らの特別背任行為につき,当該融資の申込みをしたにとどまらず,融資の前提となるスキーム(判文参照)を頭取らに提案してこれに沿った行動を取り,同融資の担保となる物件の担保価値を大幅に水増しした不動産鑑定書を作らせるなどして,同融資の実現に積極的に加担した融資先会社の実質的経営者は,上記特別背任行為に共同加功をしたということができます(最高裁平成20年5月19日決定)。
3 公正証書原本不実記載罪関係
・ 定款に株式譲渡制限の定めのある非上場会社の一人株主が,その全株式を同社の債務の担保のため譲渡担保に供した後に,同社の役員の解任及び選任等の株式会社変更登記申請を債権者の関与なく行い,同社の商業登記簿の原本にその旨記載させた行為は,上記譲渡担保の契約当事者の合理的な意思解釈として,株主共益権を債権者に帰属させる旨の合意があったものと認められるといった事情の下では,公正証書原本不実記載罪に当たります(最高裁平成17年11月15日判決)。
・  甲社の増資の際,新株の引受人である乙社が,甲社から丙社,丙社から乙社へと順次融資により移動した甲社の資金により新株の払込みをし,上記融資により甲社が取得した丙社に対する債権が丙社との合意などから甲社の実質的な資産と評価することができないなど判示の事情の下においては,上記払込みは無効であり,甲社の商業登記簿の原本である電磁的記録に上記増資の記録をさせた行為は,電磁的公正証書原本不実記録罪に当たります(最高裁平成17年12月13日決定)。
4 その他関係
・ 被告人は,その権限がないのに,A株式会社臨時株主総会議事録及び同社取締役会議事録をそれぞれ議長取締役と表示して作成し,さらに,株式会社変更登記申請書をA株式会社代表取締役と表示して作成しており,このような場合,各文書の作成名義人は,A株式会社臨時株主総会,同社取締役会,あるいは同社と解するのが相当です(最高裁平成16年10月18日決定)。


第2 会社法に関する書籍のメモ書き
1 ビジネス法務相談室HP「【ひな形あり】株主総会の開催時期と招集方法」が載っています。
2 別冊商事法務では毎年,以下の書籍が出ています。
・ 事業報告記載事項の分析
・ 招集通知・議案の記載事例
・ 株主総会想定問答集
・ バーチャル株主総会の実施事例
・ コードに対応したコーポレート・ガバナンス報告書の記載事例の分析
・ 株主総会日程
・ 株主総会白書
・ 機関投資家の議決権行使方針及び結果の分析
・ 東証一部上場会社の役員報酬設計


第3 会社法に関する論文のメモ書き
・ 54期の丹下将克,60期の内林尚久及び66期の伊藤圭子は,判例タイムズ1506号(2023年5月号)に「株式会社の役員の解任の訴えをめぐる諸問題」を寄稿しています。
・ 56期の西山渉,57期の足立拓人及び68期の本村理絵は,判例タイムズ1496号(2022年7月号)に「取締役の不当解任を理由とする損害賠償請求の訴えをめぐる諸問題」を寄稿しています。


第4 株主総会に関するメモ書き
・ 経済産業省HPの「株主総会運営に係るQ&A」には以下のQ&Aが載っています。
Q6.新型コロナウイルス感染症については、令和5年5月8日から、感染症法上の位置づけが新型インフルエンザ等感染症から5類感染症に変更される予定とのことですが、Q1~Q5で示された考え方はなおも妥当しますか。(令和5年3月30日追加)」への回答が載っています。
(A)
 Q1~Q5は、新型コロナウイルス感染症が拡大し、関係者の健康や安全の確保を特に重視した対応が求められるという特殊な状況下で、株主総会が開催される場合に想定される事項についての一般的な考え方を整理したものです。
 新型コロナウイルス感染症拡大防止を理由としてQ1~Q5で掲げられた各措置をとることが直ちに否定されるものではありませんが、かかる措置をとることが許容されるか否かは、新型コロナウイルス感染症の感染症法上の位置づけが変更される予定であるように、新型コロナウイルスの感染状況や対策の在り方等が昨今変化していることを踏まえながら、関係者の健康や安全の確保及び株主の権利にも十分に留意しつつ、事案ごとに個別的に判断されることになると考えます。


第5 取締役に関するメモ書き
1 裁判例

(1) 東京地裁令和2年3月24日判決は以下の判示をしています(リンク先9頁)。
法人税法施行令70条2号は,役員退職給与適正額の算定に当たって「退職の事情」を考慮すべきことを明文で定めており,本件のような辞任(会社法330条,民法651条1項)の場合と株主総会による決議を要する解任(会社法339条5 1項)の場合とでは,退職の事情が異なると認められる上,一般に,解任手続が採られた場合に,役員退職給与が支給されないか又は役員退職給与の額が支給規程の定めにより算出された額よりも減額されることがあることは,当裁判所に顕著である。
(2)ア 東京地裁令和4年3月23日判決(判例体系に掲載)は「殊に、被告は弁護士の資格を有しており、これを前提に原告の取締役に就任した(原告代表者、被告本人)のであるから、被告の原告の取締役としての上記善管注意義務については高度のものが求められていたものというべきである。」と判示していますところ,控訴審としての東京高裁令和4年9月15日判決(判例体系に掲載)は控訴を棄却しました。
イ ビジネス法務の部屋ブログに「弁護士資格を有する取締役であるがゆえに高度な善管注意義務あり、との裁判例」が載っています。
2 その他
(1)ア 経済産業省HPの「「社外取締役の在り方に関する実務指針」を策定しました」「社外取締役の在り方に関する実務指針(社外取締役ガイドライン)」が載っています。
イ 日本取引所グループHPの「社外取締役向けリーフレット「社外取締役のことはじめ」の公表について」「社外取締役向けリーフレット「社外取締役のことはじめ」」が載っています。
(2) 国税不服審判所HPに「役員報酬」「役員賞与」「役員退職給与」等が載っています。
(3) 使用人から執行役員への就任に伴い退職手当等として支給される一時金のうちの一定のものは退職所得に該当します(所得税基本通達30-2の2参照)。


第6 関連記事その他
1 旧商法時代,破産者は株式会社の取締役たる地位を相容れないと考えられていた(最高裁昭和42年3月9日判決)ものの,平成18年5月1日施行の会社法では,復権前の破産者であっても株式会社の取締役になることができます。
2(1) 平成19年9月30日,証券取引法は金融商品取引法に題名が変わりました。
(2) 最高裁平成25年3月7日判決は, 銀行と顧客との間で固定金利と変動金利を交換してその差額を決済するという金利スワップ取引に係る契約を締結した際に銀行に説明義務違反があったとはいえないとされた事例です。
(3)  医療法人の社員が一般法人法37条2項の類推適用により裁判所の許可を得て社員総会を招集することはできません(最高裁令和6年3月27日決定)。
3(1) 東京地裁HPに「訴訟事件について-会社訴訟チェックリスト」が載っています。
(2) 日弁連HPに「社外取締役ガイドライン2023年改訂版」が載っています。
4(1) 経済産業省HPに「公正な買収の在り方に関する研究会」(令和4年11月18日初会合),及び「公正なM&Aに関するルール形成について」が載っています。
(2) 弁護士法人ベンチャーサポート法律事務所HP「有限会社を休眠会社として放置するメリット・デメリット|みなし解散制度も合わせて解説」が載っています。
(3) 金融庁HPに「インサイダー取引規制に関するQ&A」が載っています。
5(1) 日本公認会計士協会HPに「監査委員会報告第73号「訴訟事件等に係わるリスク管理体制の評価及び弁護士への確認に関する実務指針」の改正について」(平成30年2月19日付)が載っています。
(2) 太陽監査法人HPに「~残高確認の実務~」が載っています。
6 以下の記事も参照してください。
・ 個人事業主の税金,労働保険及び社会保険に関するメモ書き
・ 労働基準法に関するメモ書き
・ 監査役設置会社と取締役との間の訴えにおける会社代表者
・ 上告審から見た書記官事務の留意事項

反社会的勢力排除条項に関するメモ書き

目次
1 総論
2 従業員の採用と反社会的勢力排除
3 反社チェック
4 反社会的勢力が行う不当要求の類型
5 暴力団離脱者支援
6 警察は原則として,元暴力団員であるかどうかに関する情報を部外に提供していないこと
7 反社会的勢力排除条項の拡張は独占禁止法との関係で制限されると思われること
8 反社会的勢力排除条項がない場合,錯誤無効を主張できないこと
9 暴力団排除条項を確認する場合に気を付けるべき点
10 反社会的勢力に関する統一的な定義はないこと
11 相手方が元暴力団構成員であることを弁護士が準備書面に記載できるとは限らないこと
12 預貯金口座の凍結に関する警察庁の文書
13 関連記事その他

1 総論
(1) 反社会的勢力排除条項(略称は「反社条項」です。)は,契約を締結する際,反社会的勢力ではないことや,暴力的な要求行為等をしないことなどを相互に示して保証する条項であって,暴力団排除条項(略称は「暴排条項」です。)ともいいます(KEIYAKU-WATCHの「反社条項(暴排条項)とは? 契約書に定めるべき理由・条項の例文(ひな形)などを解説!」参照)。
(2) 大阪府暴力団排除条例5条(府民及び事業者の責務)2項は「事業者は、基本理念にのっとり、その事業に関し、暴力団との一切の関係を持たないよう努めるとともに、府が実施する暴力団の排除に関する施策に協力するものとする。」と定めています。
(3) 大阪府警察HPに「暴力団排除条項の記載例」が載っています。

2 従業員の採用と反社会的勢力排除
(1) 企業法務の扉HP「暴力団排除条例と暴力団排除条項」には「取引時の「誓約書」に倣い,従業員の採用時に従業員から暴排の「誓約書」の提出を求めるのも一計です。採用時の提出書類として、従業員から誓約書を提出してもらう事業者がほとんどですので、この誓約書に暴排の条項を入れることになるでしょう。」と書いてあります。
(2) 「就業規則で定める基準に達しない労働条件を定める労働契約は、その部分については、無効とする。この場合において、無効となった部分は、就業規則で定める基準による。」と定める労働契約法12条からすれば,就業規則にも暴力団排除条項を入れておく必要があると思います。
(3) Legal Expressに「従業員・労働者が反社会的勢力に該当する場合、会社がとるべき対策を弁護士が解説!」が載っています。

3 反社チェック
(1) 企業法務弁護士ナビ「反社チェック6つの方法|契約後に取引先が怪しいと感じたら?」には,取引開始前にすべき反社チェックの方法として,①会社情報の確認,②インターネットによる検索,③新聞記事・Webニュース記事(帝国データバンク及び日経テレコン等)の検索,④風評の調査及び⑤外部機関(警察及び暴力追放運動推進センター)への相談が挙げられています。
(2) 反社会的勢力と認定された人は銀行口座を持つことが非常に難しいことからすれば,反社チェックの方法の一つとして,採用面接の交通費の支払等の名目で求職者の銀行口座を確認した方がいい気がします。
(3) RoboRoboコラム「反社会的勢力の具体的な調査方法は?おすすめのツールや反社への対応方法も解説!」(2022年11月8日付)が載っています。
(4) 若手弁護士が解説する個人情報・プライバシー法律実務の最新動向ブログの「第14回:改正個人情報保護法下における反社対応の留意点」には「特定の個人が反社会的勢力に属しているという情報は、社会的身分に該当しない。また、犯罪の経歴や刑事事件に関する手続が行われたことには該当せず、要配慮個人情報には該当しないとされている(GL通則パブコメ143番、159番)。」と書いてあります。


4 反社会的勢力が行う不当要求の類型
・ 法務省HPの「企業が反社会的勢力による被害を防止するための指針について」(平成19年6月19日付の犯罪対策閣僚会議幹事会申合せ)には「不当要求の二つの類型 接近型と攻撃型」として以下の記載があります。
    反社会的勢力による不当要求の手口として、「接近型」と「攻撃型」の2種類があり、それぞれにおける対策は、次のとおりである。
① 接近型(反社会的勢力が、機関誌の購読要求、物品の購入要求、寄付金や賛助金の要求、下請け契約の要求を行うなど、「一方的なお願い」あるいは「勧誘」という形で近づいてくるもの)
→ 契約自由の原則に基づき、「当社としてはお断り申し上げます」「申し訳ありませんが、お断り申し上げます」等と理由を付けずに断ることが重要である。理由をつけることは、相手側に攻撃の口実を与えるのみであり、妥当ではない。
② 攻撃型(反社会的勢力が、企業のミスや役員のスキャンダルを攻撃材料として公開質問状を出したり、街宣車による街宣活動をしたりして金銭を要求する場合や、商品の欠陥や従業員の対応の悪さを材料としてクレームをつけ、金銭を要求する場合)
→ 反社会的勢力対応部署の要請を受けて、不祥事案を担当する部署が速やかに事実関係を調査する。仮に、反社会的勢力の指摘が虚偽であると判明した場合には、その旨を理由として不当要求を拒絶する。また、仮に真実であると判明した場合でも、不当要求自体は拒絶し、不祥事案の問題については、別途、当該事実関係の適切な開示や再発防止策の徹底等により対応する。

5 暴力団離脱者支援

(1) 公益財団法人大阪府暴力追放推進センターHP「暴追センター案内」には「暴力団離脱者受入協賛企業」として以下の記載があります。
    暴力団離脱者を、雇用してくださる企業を募集しています。
    暴力団対策法施行後、暴追センター等に暴力団員やその家族から「暴力団をやめて、まじめに働きたい。」等の相談が寄せられています。離脱した暴力団員が一般社会人として社会復帰をするためには、生活の基礎となる就労が是非とも必要です。真撃な気持ちで暴力団をやめ、社会復帰を望む人には、「大阪府暴力団離脱者支援対策連絡会」が手助けをしています。
(2)ア 警察庁HPに「暴力団離脱者の口座開設支援について」(令和4年2月1日付の警察庁刑事局組織犯罪対策部暴力団対策課長の文書)が載っています。
イ 日刊ゲンダイHPに「元暴力団員に聞いてわかった「辞めてから5年間の厳しすぎる現実」保険も入れず、保育園の入園拒否も…」(2019年1月24日付)が載っています。

6 警察は原則として,元暴力団員であるかどうかに関する情報を部外に提供していないこと

・ 暴力団排除等のための部外への情報提供について(平成31年3月20日付の警察庁刑事局組織犯罪対策部帳の通達)4頁には,元暴力団員に関する情報提供について以下の記載があります。
    現に自らの意思で反社会的団体である暴力団に所属している構成員の場合と異なり、元暴力団員については、暴力団との関係を断ち切って更生しようとしている者もいることから、過去に暴力団員であったことが法律上の欠格要件となっている場合や、現状が暴力団準構成員、共生者、暴力団員と社会的に非難されるべき関係にある者、総会屋及び社会運動等標ぼうゴロとみなすことができる場合は格別、過去に暴力団に所属していたという事実だけをもって情報提供しないこと。

7 
反社会的勢力排除条項の拡張は独占禁止法との関係で制限されると思われること
(1) 反社会的勢力排除条項の中には「暴力団員でなくなった時から5年を経過しない者」を従業員としている企業を反社会的勢力とした上で,「暴力団員でなくなった時から5年を経過しない者」を従業員としている企業についても下請業者,委託業者,外注先及び調達先(以下「下請業者等」といいます。)から排除するように求めている条項を見かけることがあります。
    しかし,職業安定法5条の5(求職者等の個人情報の取扱い)との関係で自社の従業員でも必ず調査することは難しいと思いますが,下請業者等の従業員が「暴力団員でなくなった時から5年を経過しない者」に該当するかどうかまで必ず調査することは不可能と思います。
    また,このような条項をそのまま適用した場合,暴力団離脱者受入協賛企業まで下請業者等から排除する必要がありますところ,警察及び暴力追放運動推進センターの活動を否定する側面があることをも考慮すれば,そのような行為は独占禁止法19条(不公正な取引方法の禁止)に違反して独占禁止法20条に基づく排除措置命令の対象となる可能性があると思います。
(2) 不公正な取引方法に関しては例えば,以下の条文があります(「不公正な取引方法」は独占禁止法2条9項6号に基づくものです。)。
① 独占禁止法2条9項5号
五 自己の取引上の地位が相手方に優越していることを利用して、正常な商慣習に照らして不当に、次のいずれかに該当する行為をすること。
(中略)
ハ 取引の相手方からの取引に係る商品の受領を拒み、取引の相手方から取引に係る商品を受領した後当該商品を当該取引の相手方に引き取らせ、取引の相手方に対して取引の対価の支払を遅らせ、若しくはその額を減じ、その他取引の相手方に不利益となるように取引の条件を設定し、若しくは変更し、又は取引を実施すること。
② 不公正な取引方法12項(拘束条件付取引)
    法第二条第九項第四号又は前項に該当する行為のほか、相手方とその取引の相手方との取引その他相手方の事業活動を不当に拘束する条件をつけて、当該相手方と取引すること
(3) 内閣官房のビジネスと人権に関する行動計画の実施に係る関係府省庁施策推進・連絡会議HPに載ってある「責任あるサプライチェーン等における人権尊重のためのガイドライン」(令和4年9月の,ビジネスと人権に関する行動計画の実施に係る関係府省庁施策推進・連絡会議の文書)12頁及び13頁には以下の記載があります。
    企業が、製品やサービスを発注するに当たり、その契約上の立場を利用して取引先に対し一方的に過大な負担を負わせる形で人権尊重の取組を要求した場合、下請法や独占禁止法に抵触する可能性がある。人権尊重の取組を取引先に要請する企業は、個別具体的な事情を踏まえながらも、取引先と十分な情報・意見交換を行い、その理解や納得を得られるように努める必要がある。
(4)ア 独占禁止法に違反する事実があると思うときは,だれでも,公正取引委員会にその事実を報告し,適当な措置を採るよう求めることができます(独占禁止法45条1項)。
    また,独占禁止法に違反する事実があるという報告が報告者の氏名又は名称及び住所が記載された書面で行われ,具体的な事実を示しているものである場合,公正取引委員会は,その報告に係る事件についてどのような措置を採ったか,又は措置を採らなかったかを報告者に通知することになっています(独占禁止法45条3項のほか,公正取引委員会HPの「申告」参照)。
イ 公正取引委員会HPに「相談・届出・申告の窓口」が載っていますところ,大阪府の事業所の場合,近畿中国四国事務所が窓口となります。

8 反社会的勢力排除条項がない場合,錯誤無効を主張できないこと

・ 信用保証協会と金融機関との間で保証契約が締結され融資が実行された後に主債務者が反社会的勢力であることが判明した場合において,信用保証協会の保証契約の意思表示に要素の錯誤がないと判示した最高裁平成28年1月12日判決からすれば,仮に下請業者等が反社会的勢力に該当したとしても反社会的排除条項を含む契約書を作成していない限り,下請け業者等との取引について錯誤無効(令和2年4月1日以降は「錯誤取消し」)を主張することはできません。
    そのため,反社会的勢力排除条項がない限り,反社会的勢力排除に該当する下請先等との取引を当然に打ち切ることはできないと思います。

9 暴力団排除条項を確認する場合に気を付けるべき点

    暴力団排除条項を確認する場合,以下の事項を受け入れるかどうかについては特に気をつけた方がいいと思います。
① 「暴力団員でなくなった時から5年を経過しない者」を排除の対象に含めること。
・ 反社5年ルール(「暴力団員でなくなつた日から5年を経過しない者」まで反社会的勢力とするルール)はよく見かけるものの,元暴力団員であるかどうかを調査することは容易ではありません。
・ 役員に元暴力団員がいる企業であってもハローワークに求人の申込みを提出できます(職業安定法5条の6第1項5号)。
② 従業員を排除の対象に含めること。
・ 厚生労働省の「公正な採用選考の基本」からすれば,
家族に関すること,生活環境・家庭環境に関すること,人生観・生活信条に関することを聞いてはいけませんし,身元調査などの実施は禁止されているわけですから,採用時点で暴力団員であるかどうかが分かるとは限りません。
・ 採用した従業員が暴力団員であることが判明した場合において,当該従業員の日頃の業務遂行状況に特段の問題がないのであれば,重要な経歴の詐称を理由に解雇することは非常に難しいと思いますし,元暴力団員にすぎない場合についてはなおさら解雇することは難しいです。
・ 役員に暴力団員がいる企業はハローワークに求人の申込みを提出できない(職業安定法5条の6第1項5号)ものの,従業員に暴力団員がいるに過ぎない企業はハローワークに求人の申込みを提出できます。
③ 下請業者等を排除の対象に含めること。
・ 反社会的勢力排除条項を入れた契約書を交わしていない限り,反社会的勢力排除に該当するというだけの理由で取引を打ち切ることはできないと思います(最高裁平成28年1月12日判決参照)。

10
 反社会的勢力に関する統一的な定義はないこと
・ 参議院議員熊谷裕人君提出反社会的勢力の定義に関する質問に対する答弁書(令和元年12月13日付)には以下の記載があります。
    政府としては、「反社会的勢力」については、その形態が多様であり、また、その時々の社会情勢に応じて変化し得るものであることから、あらかじめ限定的、かつ、統一的に定義することは困難であると考えている。

11 相手方が元暴力団構成員であることを弁護士が準備書面に記載できるとは限らないこと
・ 令和4年11月11日発効の東京弁護士会の懲戒処分(戒告)の「処分の理由の要旨」は以下のとおりです(自由と正義2023年3月号86頁)から,相手方が元暴力団構成員であることを弁護士が準備書面に記載できるとは限りません。
    被懲戒者は、2018年10月16日、懲戒請求者がAを被告として提起した貸金返還請求訴訟の口頭弁論期日において、訴訟行為との関係性や訴訟追行上の必要性及び主張方法等の相当性の観点から正当な訴訟活動とは認められないにもかかわらず、Aの訴訟代理人として、懲戒請求者が過去に暴力団の構成員であったことを記載した答弁書及び準備書面を陳述し、証拠説明書を提出した。
    被懲戒者の上記行為は、弁護士法第56条第1項に定める弁護士としての品位を失うべき非行に該当する。

12 預貯金口座の凍結に関する警察庁の文書
・ 預貯金口座の凍結に関する警察庁の以下の文書につき,①は総論であり,②凍結及び凍結解除並びに③凍結解除の報告は「特殊詐欺」に関するものであり,④凍結及び凍結解除並びに⑤凍結解除の報告は「利殖勧誘事犯」及び「ヤミ金融事犯」に関するものです。
① 生活安全事犯に利用される預金口座等対策の推進について(平成29年4月7日付の警察庁生活安全局生活経済対策管理官の通達)
② 特殊詐欺に係る凍結口座名義人リスト及び凍結口座名義法人リストの運用について(令和2年3月31日付の警察庁刑事局捜査第二課長等の文書)
③ 特殊詐欺に係る凍結口座名義人リスト及び凍結口座名義法人リストの削除にかかる報告要領等について(令和2年3月31日付の警察庁刑事局捜査第二課長の文書)
④ 利殖勧誘事犯又はヤミ金融事犯に係る凍結口座名義人リスト及び凍結口座名義法人リストの運用について(令和2年3月31日付の警察庁生活安全局生活経済対策管理官の通達)
⑤ 特殊詐欺に係る凍結口座名義人リスト及び凍結口座名義法人リストの削除にかかる報告要領等について(令和2年3月31日付の警察庁刑事局捜査第二課長の文書)


13 関連記事その他
(1) 反社5年ルールを定めた業法の例としては,建設業法,宅建業法,貸金業法,廃棄物処理法及び労働者派遣法があります(RoboRoboコラムの「反社排除の5年条項があれば大丈夫? 反社チェックの必要性を解説」参照)。
(2) 平成23年6月2日付で改正された銀行取引約定書の参考例において,反社5年ルールが記載されるようになりました(全銀協HPの「融資取引および当座勘定取引における暴力団排除条項参考例の一部改正について」(平成23年6月2日付)参照)。
(3) 令和2年4月1日以降につき,暴力団員でなくなつた日から5年を経過しない者は不動産の買受の申出をすることはできません(民事執行法65条の2第1号)。
(4) 取締役等の役員が暴力団員となっている法人は,ハローワークに求人を出すことはできません(職業安定法5条の6第1項5号ロ)。
(5)ア 暴力団対策法11条2項及び46条1号は憲法14条1項に違反しません(最高裁令和5年1月23日判決)。
イ 暴力団対策法11条2項は「公安委員会は、指定暴力団員が暴力的要求行為をした場合において、当該指定暴力団員が更に反復して当該暴力的要求行為と類似の暴力的要求行為をするおそれがあると認めるときは、当該指定暴力団員に対し、一年を超えない範囲内で期間を定めて、暴力的要求行為が行われることを防止するために必要な事項を命ずることができる。」というものです。
(6) 以下の記事も参照してください。
・ 個人事業主の税金,労働保険及び社会保険に関するメモ書き
・ 労働保険に関するメモ書き

年末調整に関するメモ書き

目次
0 総論
1 扶養控除等申告書
2の1 基礎控除申告書
2の2 配偶者控除等申告書
2の3 所得金額調整控除申告書
3 保険料控除申告書
4 住宅借入金等特別控除申告書
5 ふるさと納税及びワンストップ特例制度
6 年末調整の計算サイト
7 年末調整で過納額が出た場合の取扱い
8 関連記事その他

0 総論
(1) 国税庁HPの「給与所得者(従業員)の方へ(令和4年分)」には,「年末調整を行う理由」として以下の記載があります。
 年末調整とは、源泉徴収された税額の年間の合計額と、年税額を一致させる精算の手続です。
 年末調整の対象となっているのは、原則として、勤務先に「扶養控除等申告書」を提出している人ですが、給与の収入金額が2,000万円を超える人など、一定の人は年末調整の対象とはなりません。
 この精算の手続をするためには、「扶養控除等申告書」のほか、「基礎控除申告書」、「配偶者控除等申告書」、「所得金額調整控除申告書」、「保険料控除申告書」又は「住宅借入金等特別控除申告書」を勤務先に提出する必要があります。
(2) 年末調整の場合,以下の書類を従業員に提出してもらうこととなります。
① 扶養控除等申告書
② 基礎控除申告書 兼 所得金額調整控除申告書 兼 配偶者控除等申告書
③ 保険料控除申告書
④ 住宅借入金等特別控除申告書
(3) オフィスステーションHP「年末調整で必要な提出書類には、どのようなものがある?」には以下の記載があります。
 年末調整では、さまざまな 書類を集めたり、作成したりする必要があります。年末調整の計算に使った給与所得者の扶養控除等(異動)申告書などの書類は、税務署に提出する必要がありません。
 しかし、給与所得の源泉徴収票等の法定調書合計表や源泉徴収票、支払調書、給与支払報告書は、税務署や市区町村などに提出する必要があります。

1 扶養控除等申告書
(1) 国税庁HPに扶養控除等申告書の記載例が載っています。
(2) 国税庁HPの「給与所得者(従業員)の方へ(令和4年分)」には以下の記載があります。
 従業員の方は「扶養控除等申告書」を、その年の最初の給与の支払を受ける日の前日までに勤務先(2か所以上から給与の支払を受けている人は、主たる給与の支払を受けている勤務先。)に提出することになっています。
 この申告書は、扶養親族や源泉控除対象配偶者などがいない人でも提出しなければならないこととされており、この申告書の提出のない人が支払を受ける給与に対する源泉徴収税額は、税額表の「乙」欄が適用されることになります(この申告書を提出した場合よりも高い税率が適用されます。)。
 また、年末調整においては、勤務先はこの申告書の情報から、扶養控除等の額(扶養控除、障害者控除、寡婦控除、ひとり親控除、勤労学生控除)を確認することとなります。
 そのため、まだ申告書を提出していない場合や、控除対象扶養親族等に異動があって「異動申告書」(注)の提出をしていない場合は、早急に提出をしましょう。
(注) 控除対象扶養親族であった人の就職、結婚などにより控除対象扶養親族の数が減少した場合など、年の中途で「扶養控除等申告書」の記載内容に変更があった場合には、その都度、「異動申告書」を提出することになっています。
(3) 非居住者である親族に係る扶養控除又は障害者控除の適用を受ける場合,その年最後に給与の支払を受ける日の前日までに,その親族と生計を一にする事実を記載した上で提出すれば足ります(国税庁HPの「[手続名]給与所得者の扶養控除等の(異動)申告」参照)。

2の1 基礎控除申告書

(1) 基礎控除申告書は令和2年分から新しく設けられた申告書であり,国税庁HPに基礎控除申告書の記載例が載っています。
(2) 令和元年分までは,合計所得金額に関わらず一律38万円の控除を受けることができましたが,令和2年分以降は,年末調整において基礎控除(最大48万円の控除)の適用を受けるときは,従業員が勤務先に基礎控除申告書を提出する必要があります。
(3)ア 芦屋会計事務所HP「【年末調整】給与所得者の基礎控除申請書の書き方は?収入金額や独身など」には以下の記載があります。
 独身者で「扶養親族等がいない」「特別障害者ではない」のであれば、記入項目は基本情報と給与所得者の基礎控除申請書だけとなります。
イ タウンワークマガジンHP「副業がバレない方法はないの?バレる理由は?バレるとどうなる?」には以下の記載があります。
 年末調整の際に、「給与所得者の基礎控除申告書兼給与所得者の配偶者控除等申告書兼所得金額調整控除申告書」を提出します。その中の「給与所得者の基礎控除申告書」には、「給与所得」記載欄があり、これは副業分も含めて合算で記載する必要があります。また、副業が給与所得でない場合でも、「給与所得以外の所得の合計額」欄に額を記載する仕組みとなっています。

2の2 配偶者控除等申告書
(1) 国税庁HPに配偶者控除等申告書の記載例が載っています。
(2) 国税庁HPの「給与所得者(従業員)の方へ(令和4年分)」には以下の記載があります。
 「配偶者控除」とは、従業員の方の合計所得金額が1,000万円以下で、その従業員の方と生計を一にする配偶者の合計所得金額が48万円以下である場合に受けられる控除で従業員の方の合計所得金額に応じて38万円を限度として控除されます(配偶者が70歳以上の場合は、48万円を限度として控除されます。)。
 「配偶者特別控除」とは、従業員の方の合計所得金額が1,000万円以下で、その従業員の方と生計を一にする配偶者の合計所得金額が48万円を超え133万円以下である場合に受けられる控除です。従業員の方の合計所得金額と配偶者の合計所得金額に応じて38万円を限度として控除されます。
 年末調整において「配偶者控除」又は「配偶者特別控除」を適用するためには、勤務先に「配偶者控除等申告書」を必ず提出する必要があります。

2の3 所得金額調整控除申告書

(1) 国税庁HPに所得金額調整控除申告書の記載例が載っています。
(2) 「所得金額調整控除」とは,年末調整の対象となる給与の収入金額が850万円を超える人が次のいずれかの要件を満たす場合に適用される控除です。
① 23歳未満の扶養親族を有する場合
② 従業員ご本人が特別障害者である場合
③ 従業員の扶養親族や同一生計配偶者が特別障害者である場合
(3) 年末調整において「所得金額調整控除」を適用するためには,勤務先に「所得金額調整控除申告書」を必ず提出する必要があります。

3 保険料控除申告書

(1) 国税庁HPに保険料控除申告書の記載例が載っています。
(2) 生命保険料や地震保険料については「保険料控除申告書」に基づいて控除の適用を受けます。

4 住宅借入金等特別控除申告書
(1) 国税庁HPに住宅借入金等特別控除申告書の記載例が載っています。
(2) 国税庁HPの「給与所得者(従業員)の方へ(令和4年分)」には以下の記載があります。
 「住宅借入金等特別控除」とは、住宅借入金等の年末残高に応じて、一定額を税額から直接差し引くことができる控除です。
 最初の年分は確定申告により適用を受ける必要がありますが、2年目以降は年末調整の際に適用を受けることができますので、年末調整の時までに「住宅借入金等特別控除申告書」を給与の支払者へ提出してください。
 なお、「住宅借入金等特別控除申告書」は、控除を受けることとなる各年分のものを一括して税務署から従業員ご本人に送付しています。
(3) 金融広報中央委員会HPに「7.住宅借入金等特別控除制度の仕組み」が載っています。

5 ふるさと納税及びワンストップ特例制度
(1) ふるさと納税の控除は年末調整ではできません(ふるさとチョイス「年末調整のとき、会社員はふるさと納税の証明は必要?理由とともに解説」参照)。
(2) ふるさと納税の謝礼として供与された返礼品に係る経済的利益は一時所得に該当します(国税庁HPの「ふるさと納税の返礼品の収入計上時期」参照)。
(3)ア ワンストップ特例制度は,ふるさと納税をした後に確定申告をしなくても寄付金控除が受けられる便利な仕組みでありますところ,ワンストップ特例制度を利用するためには,申請書と必要書類は寄付をした翌年の1月10日必着で寄付先の自治体に送る必要があります(ふるさとチョイスの「ワンストップ特例制度」参照)。
イ さとふるHPの「確定申告を行った場合とワンストップ特例制度を申請した場合、受ける控除は異なりますか?」には以下の記載があります。
 確定申告を行うと、ふるさと納税を行った年の所得税からの控除(還付)と、翌年の住民税から控除されます。
一方、ワンストップ特例制度の場合は、所得税の還付は無く、住民税の減税のみの控除となります。
 多くの方の場合はどちらで控除を受けられても控除額は同等となりますが、ご自身について正確な確認を行いたい場合は、最寄りの税務署や税理士等へお問い合わせいただきますようお願いいたします。


6 年末調整の計算サイト
(1) 最強の税務情報提供サイトMyKomon TAX「年末調整用 給与所得金額計算」が載っています。
(2) 生活や実務に役立つ計算サイト「源泉徴収票(給与所得)」が載っています。

7 年末調整で過納額が出た場合の取扱い
(1) Bizerの「年末調整で還付があった場合の納付書(給与所得等の所得税徴収高計算書)の書き方」には「摘要」欄の記載に関して以下の記載があります。
相談者:年末調整で還付される金額が「172,174円」でも、「年末調整による超課税額」欄は「134,282円」と記入して、「172,174円」ではないのですね。
村田税理士:はい、ここの欄は、今回の納付所得税額から控除する金額を記載するので、本税が0円になる金額の「134,282円」を記載します。
相談者:記載例の吹き出しを見ると、税金0円の場合でも税務署への提出は必要なのですね。忘れないように注意します。
(2)ア 源泉所得税の納期特例を利用している給与等の支払者が年末調整により生じた過納額を給与等の受給者に還付する場合,3月1日までに過納額の還付を受けることはできませんから,所得税法191条及び所得税法施行令313条に基づき,源泉所得税及び復興特別所得税の年末調整過納額の還付請求をすることができます(国税庁HPの「[手続名]源泉所得税及び復興特別所得税の年末調整過納額の還付請求」参照)。
イ 年末調整過納額の還付請求をする場合,年末調整により過納額が生じた給与等の受給者各人ごとの給与所得の源泉徴収簿(過納額が生じた年分と過納額を還付する年との2年分)の写し1部が必要となります。
(3)ア 年末調整過納額の還付請求は,所得税法施行令313条及び所得税基本通達191-2(過納額が著しく過大である場合の還付の特例)に基づく取扱いですから,当該請求をしない場合,所得税法施行令312条及び所得税基本通達191-1(過納額の計算上控除された未徴収の税額)に基き,翌年7月の源泉所得税から年末調整還付金を控除できると思います。
イ 所得税基本通達191-1(過納額の計算上控除された未徴収の税額)は以下のとおりです。
法第191条に規定する過納額の計算上同条かっこ内の規定により超過額から控除されたまだ徴収されていない部分の金額に相当する税額は、その後においてはその徴収を要しないものとする。この場合において、当該税額をその後において徴収したときは、その徴収の時に当該徴収した金額に相当する当該過納額が生じたものとする。
ウ 総務の森HPの「納期の特例による源泉所得税の納め過ぎについて」が参考になります。

8 関連記事その他

(1) 国税庁HPの「年末調整計算シート」に,給与所得者に対する源泉徴収簿(PDF)及び年末調整計算シート(エクセル)が載っています。
(2) 税務研究ノート(栗原洋介税理士事務所)「ペーパーレスで年末調整するなら、10月末までに申請しておこう」が載っています。
(3) ウェルスハックHP「【早見表付】年収200万円~1億円の手取り|計算式と簡易計算方法も解説」が載っています。
(4) 「税理士又は税理士法人が行う付随業務の範囲に関する確認書」(平成14年6月6日付)には「年末調整に関する事務は、税理士法第2条第1項に規定する業務に該当し、社会保険労務士が当該業務を行うことは税理士法第52条(税理士業務の制限)に違反する。」と書いてあります。
(5) 以下の記事も参照してください。
・ 個人事業主の税金,労働保険及び社会保険に関するメモ書き

源泉所得税に関するメモ書き

目次
第1 総論
第2 給与支払事務所等の開設届出書
第3 源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書
第4 給与所得者の扶養控除等申告書
第5 源泉徴収制度の趣旨等
第6 源泉所得税の確定時期及び不納付加算税の確定時期及びその争い方
1 源泉所得税の確定時期及びその争い方
2 不納付加算税の確定時期及びその争い方
第7 源泉所得税の徴収・納付に過誤がある場合の取扱い
第8 e-Tax(SP版)を利用した源泉所得税の申告
第9 破産管財人の源泉徴収義務
第10 強制執行を受けた場合の源泉徴収義務
1 最高裁平成23年3月22日判決に基づく取扱い
2 所得税法の関連条文
第11 債務名義に基づく支払をする場合の源泉徴収義務
第12 源泉徴収義務に関する最高裁判例の裁判要旨
第13 その他特殊なお金の支払と源泉徴収
1 未払の残業代及び付加金の支払と源泉徴収
2 従業員の交通事故の慰謝料と源泉徴収
3 出向社員に給料を支払う場合
第14 給与の計算サイト
→ Ke!san「給与所得の源泉徴収税額 令和2,3,4年(月額)」及び「賞与の源泉徴収税額」が載っています。
第15 関連記事その他

第1 総論
1 給与等の支払をする人は,その支払に係る金額について源泉徴収をする義務があり(所得税法6条),源泉徴収義務者といいます。
2 賞与に対する源泉所得税の額は,前月の給与と扶養親族の数によって決まります(転職Hacksの「令和3年税額表つき賞与(ボーナス)の所得税の計算方法」参照)。

第2 給与支払事務所等の開設届出書
1 給与の支払者は,新たに給与の支払事務を取り扱う事務所等を設けた場合(例えば,法律事務所の開業),その事実が生じた日から1か月以内に「給与支払事務所等の開設届出書」を提出する必要があります(所得税法230条)。
2 国税庁HPの「[手続名]給与支払事務所等の開設・移転・廃止の届出」に「給与支払事務所等の開設・移転・廃止届出書」が載っています。

第3 源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書
1 源泉所得税の納期の原則
・ 源泉徴収義務者が源泉徴収をした所得税及び復興特別所得税は,原則として,その源泉徴収の対象となる所得を支払った月の翌月10日までに併せて納付しなければなりません(所得税法181条)。
2 源泉所得税の納期の特例
(1) 給与の支給人員が常時10人未満である源泉徴収義務者については,「源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書」を提出して承認を受けることで,7月10日及び翌年1月20日にそれぞれ半年分をまとめて納付すれば足りることとなります(所得税法216条)。
(2) この申請書を提出した日の属する月の翌月末日までに税務署長から承認又は却下の通知がない場合,その申請月の翌月末日において承認があったものとされ,その申請月の翌々月の納付分からこの特例が適用されます(所得税法216条,217条5項)。
 そのため,例えば,令和4年9月13日にこの申請書を提出した場合,同年10月末日までに税務署長から承認又は却下の通知がない場合,同日において承認があったものとされ,11月の納付分からこの特例が適用される結果,同年10月から同年12月までの源泉所得税については翌年1月20日までに納付すれば足りることとなります。

第4 給与所得者の扶養控除等申告書
1(1) 給与所得者は「扶養控除等申告書」を,その年の最初の給与の支払を受ける日の前日までに提出することになっています(所得税法194条1項)。
(2) 控除対象扶養親族であった人の就職,結婚などにより控除対象扶養親族の数が減少した場合など,年の中途で「扶養控除等申告書」の記載内容に変更があった場合には,その都度,「異動申告書」を提出することになっています(所得税法194条2項)。
2 国税庁HPの「[手続名]給与所得者の扶養控除等の(異動)申告」に「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」及びその記載例が載っています。
3 濱田会計事務所HP「Q10 【令和3年分】「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」とは?記載方法は?」には以下の記載があります。
 給与所得者は、原則としてその年の最初(給与の支払を受ける日の前日までに)に提出します。例えば、令和3年分の「扶養控除等申告書」は、一般的に令和2年12月までに提出します。
 ここでの注意点は、記載する「扶養親族」等の判定は、1年後の12月末で行う点です。
 例えば、令和3年の扶養控除等申告書は、令和2年12月末に提出しますが、16歳以上の「控除対象扶養親族」は、令和3年12月31日現在の年齢が16歳以上、つまり、扶養控除申告書を提出する時点では15歳のお子さんがいる場合ですので、注意しましょう。
 なお、年途中で子供が生まれたり、配偶者のパート勤務等、「扶養家族」に異動があった場合は、随時「扶養控除等申告書」を会社に提出しなければいけません。
4(1) 従業員から扶養控除等申告書を提出してもらっていない場合,給与所得の源泉徴収税額表(月額表)の乙欄で源泉徴収をする必要があります。
(2)  国税庁HPに「令和4年分 源泉徴収税額表」が載っています。


第5 源泉徴収制度の趣旨等
1 東京高裁昭和49年9月26日判決(判例秘書に掲載)は,源泉徴収制度の趣旨に関して以下の判示をしています。
  源泉徴収制度の趣旨は、納税義務者の納税を容易ならしめるため、所得が納税義務者の手中に帰する以前の段階で徴収して税金の概算前払の方法で国が一応これを収納し、他日所得金額が明らかになってから、改めて納税義務者から納税させる代りに既に源泉徴収によって納付した右税額をもってこれに充て、もし不足があれば追加納付させ、余剰があれば還付して、納税義務者の事後納税によって生ずる煩雑な事務を軽減すること、他面、源泉徴収の方法によらないと容易に捕捉しがたい種類の収入を容易に捕捉してその支払の段階で支払者をして捕捉徴収させ、これによって国の所得調査の手数を省くこと等にあるものとされている。
2 最高裁平成23年1月14日判決は,以下の判示をしています。
  弁護士である破産管財人が支払を受ける報酬は,所得税法204条1項2号にいう弁護士の業務に関する報酬に該当するものというべきところ,同項の規定が同号所定の報酬の支払をする者に所得税の源泉徴収義務を課しているのは,当該報酬の支払をする者がこれを受ける者と特に密接な関係にあって,徴税上特別の便宜を有し,能率を挙げ得る点を考慮したことによるものである(最高裁昭和31年(あ)第1071号同37年2月28日大法廷判決・刑集16巻2号212頁参照)。


第6 源泉所得税の確定時期及び不納付加算税の確定時期及びその争い方
1 源泉所得税の確定時期及びその争い方
(1) 源泉所得税の徴収納付義務は,源泉徴収の対象となる所得等の支払の時に成立し(国税通則法15条2項2号),その成立と同時に特別の手続を要しないで納付すべき税額が確定します(国税通則法15条3項2号)。
  そのため,源泉所得税の納税の告知(所得税法36条1項2号)は,税額の確定した国税債権について納税義務者に履行を請求する行為(徴収処分)であり,源泉所得税の額を確定する行為(課税処分)ではありません。
  したがって,支払者は,源泉徴収義務の存否又は範囲を争って納税の告知に対する抗告訴訟を提起できるものの,これと併せて,又はこれと別個に,源泉徴収義務の全部又は一部の不存在確認の訴えを提起できます(最高裁昭和45年12月24日判決参照)。
(2) 源泉所得税は,原則として徴収した日の翌月10日が納期限となっているものの,源泉所得税の納期の特例の承認を受けていた場合,毎年7月10日及び翌年1月10日だけが源泉所得税の納期限となります(国税庁HPの「[手続名]源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請」参照)。
2 不納付加算税の確定時期及びその争い方
(1) 不納付加算税につき,源泉所得税を税務署の通知に基づいて納付した場合は源泉所得税の10%が課税され,税務署からの通知を受けることなく自ら納付した場合は源泉所得税の5%が課税されます(国税通則法67条)。
(2) 不納付加算税の納税義務は,本税である源泉所得税の法定納期限の経過の時に成立し(国税通則法15条2項14号),税務署長の賦課決定(課税処分)によりその納付すべき税額が確定します(国税通則法16条2項2号,32条)。
  そのため,支払者が不納付加算税の納税義務の存否又は範囲を争うためには,賦課決定に対する抗告訴訟を提起することが通常の争い方となるものの,賦課決定の無効を主張して納税義務の不存在確認の訴えを提起することもできます(最高裁平成23年1月14日判決の最高裁判所判例解説(法曹時報66巻1号214頁)参照)。
(3) 国税庁HPに「源泉所得税及び復興特別所得税の不納付加算税の取扱いについて(事務運営指針)」が載っています。


第7 源泉所得税の徴収・納付に過誤がある場合の取扱い
1 源泉所得税の徴収・納付に不足がある場合,不足分について,税務署長は源泉徴収義務者たる支払者から徴収し(所得税法221条),支払者は源泉納税義務者たる受給者に対して求償すべきものとされており(所得税法222条),また,源泉所得税の徴収・納付に誤りがある場合,支払者は国に対し当該誤納金の還付を請求することができ(国税通則法56条),他方,受給者は,何ら特別の手続を経ることを要せず直ちに支払者に対し,本来の債務の一部不履行を理由として,誤って徴収された金額の支払を直接に請求することができます(最高裁平成4年2月18日判決)。
2 国税庁HPの「タックスアンサーNo.2506 源泉所得税及び復興特別所得税を納め過ぎたとき」からすれば,受給者は,源泉所得税の納税地の所轄税務署長に「源泉所得税及び復興特別所得税の誤納額還付請求書」を提出することで,納め過ぎた源泉徴収税額の還付を請求することもできます。


第8 e-Tax(SP版)を利用した源泉所得税の申告
1(1) e-Tax(SP版)を利用した源泉所得税の申告の流れは以下のとおりです。
① タブレット又はスマホを使い,利用者識別番号及び暗証番号を入力してe-Tax(SP版)にログインをする。
② 「申請・納税」
→ 「徴収高計算書を提出する」
→ 「(一般)給与所得・退職所得等の所得税徴収高計算書」,「(納期特例分)給与所得・退職所得等の所得税徴収高計算書」又は「報酬・料金等の所得税徴収高計算書」と進む。
③ (「(一般)給与所得・退職所得等の所得税徴収高計算書」を選んだ場合)「提出先税務署」及び「内容の作成」を入力する。
・ 「内容の作成」に際し,「納期等の区分及び区分の選択」については,例えば,「令和4年9月分」及び「俸給・給料等」と入力する。
・ 「内容の作成」に際し,「支払年月日・人員・支給額・税額の入力」のうち,「納期等の区分」は入力済みとなっていて,「区分」につき,「報酬・給料等(01)」を選択した場合,「支払年月日」,「人員」,「支給額」及び「税額」を入力します。
 そのため,従業員全体の給料の支給額及び源泉徴収額を別にメモ書きしておいた方がいいです。
・ ネットバンキング等を利用する予定の場合,「所得税徴収高計算書用紙の送付の要否」は「否」でいいです。
④ 「送信」ボタンをタップする。
(2) 「(納期特例分)給与所得・退職所得等の所得税徴収高計算書」を選んだ場合,「人員」欄には,各月の実人員の合計数を記載する必要があるのであって,例えば,1月から6月まで毎月2人に給与を支払っている場合の人員は12人となります。
(3) 令和5年1月現在,私のパソコンでは「e-Taxソフト(WEB版)の構成に問題がある可能性がありますので、e-Taxソフト(WEB版)の事前準備セットアップを再度実行してください。」というエラーメッセージが出て解決方法がわからないため,タブレットで源泉所得税の申告を行いました。
2(1) インターネットバンキングを用いて源泉所得税を支払う場合,以下の番号を入力すればいいです。
① 国税庁の収納機関番号として00200を入力する。
② 納付番号として利用者識別番号(16桁の数字です。)を入力する。
③ 確認番号として納税用確認番号(e-taxの開始届出書を提出した際に設定した6桁の番号です。)を入力する。
④ 納付区分として受信通知(納付区分番号通知)に届いた納付区分を入力する。
(2) 国税庁HPに「e-Taxを利用して源泉所得税が納付できます!」が載っています。
(3) e-Taxに「納付区分番号を確認するには、どうすればいいですか。」が載っています。


第9 破産管財人の源泉徴収義務
1 最高裁平成23年1月14日判決によれば以下のとおりです。
① 弁護士である破産管財人は,所得税法204条1項2号の規定に基づき,自らの報酬の支払の際にその報酬について所得税を徴収し,これを国に納付する義務を負います。
② 弁護士である破産管財人の報酬に係る源泉所得税の債権は破産法148条1項3号の財団債権です。
③ 破産管財人は,破産債権である所得税法199条所定の退職手当等の債権に対する配当の際にその退職手当等について所得税を徴収し,これを国に納付する義務を負うものではありません。
2 最高裁平成23年1月14日判決の最高裁判所判例解説には以下の記載があります(法曹時報66巻1号211頁)。
  退職手当等の債権に対する配当についての本判決の考え方は,給与等の債権等,源泉徴収の対象となり得る他の破産債権に対する配当に関しても基本的に妥当し,また,現行破産法の下における破産債権に対する配当及び弁済許可に基づく弁済(現行破産法101条)に関しても同様に妥当するものと考えられる。さらに,現行破産法の下では,労働者の給料及び退職手当の請求権の一部が財団債権とされているが(現行破産法149条),これらの請求権のうち本来の性質が破産債権であるものについては,本判決の考え方が妥当し,破産管財人はその弁済について源泉徴収義務を負わないものと解される。


第10 強制執行を受けた場合の源泉徴収義務 
1 最高裁平成23年3月22日判決に基づく取扱い
(1) 給与等の支払をする者が,その支払を命ずる判決に基づく強制執行によりその回収を受ける場合であっても,上記の者は,所得税法183条1項所定の源泉徴収義務を負うのであって,給与等の債権者がその債務名義に基づいて民事執行法122条2項により弁済を受ける場合には,源泉徴収されるべき所得税相当額をも含めて強制執行をし,他方,源泉徴収義務者は,強制執行により支払った給与等につき源泉徴収すべき所得税を納付した上で,法222条に基づき求償することになります(最高裁平成23年3月22日判決)。
(2) 最高裁平成23年3月22日判決の裁判官田原睦夫の補足意見には「給与等の債権者による強制執行手続が複数回にわたって行われる場合には,給与等の支払義務者が第1回目の強制執行手続に基づいて支払った給与等に係る所得税の源泉徴収義務は,その支払によって具体的に発生することになるから,同税相当額は,それ以後に支払うべき金額から控除することができる。」と書いてあります。
(3) 最高裁平成23年3月22日判決は,給与等の支払が強制執行による場合における社会保険料の控除の問題については,何ら明らかにしていません(法曹時報65巻12号72頁参照)。


2 所得税法の関連条文
(1) 所得税法183条(源泉徴収義務)1項は以下のとおりです。
  居住者に対し国内において第二十八条第一項(給与所得)に規定する給与等(以下この章において「給与等」という。)の支払をする者は、その支払の際、その給与等について所得税を徴収し、その徴収の日の属する月の翌月十日までに、これを国に納付しなければならない。
(2) 所得税法222条(不徴収税額の支払金額からの控除及び支払請求等)は以下のとおりです。
  前条の規定により所得税を徴収された者がその徴収された所得税の額の全部又は一部につき第一章から第五章まで(源泉徴収)の規定による徴収をしていなかつた場合又はこれらの規定により所得税を徴収して納付すべき者がその徴収をしないでその所得税をその納付の期限後に納付した場合には、これらの者は、その徴収をしていなかつた所得税の額に相当する金額を、その徴収をされるべき者に対して同条の規定による徴収の時以後若しくは当該納付をした時以後に支払うべき金額から控除し、又は当該徴収をされるべき者に対し当該所得税の額に相当する金額の支払を請求することができる。この場合において、その控除された金額又はその請求に基づき支払われた金額は、当該徴収をされるべき者については、第一章から第五章までの規定により徴収された所得税とみなす。


第11 債務名義に基づく支払をする場合の源泉徴収義務
1 最高裁平成23年3月22日判決に関する最高裁判所判例解説には以下の記載があります(法曹時報65巻12号73頁及び74頁参照)。
  使用者としては,源泉所得税を控除しない金額の支払を命ずる判決を受けたとしても,強制執行に至る前に,判決において命ぜられた金額から源泉所得税を控除した金額を労働者に支払うことはできる。そして,その支払時には,公法上源泉徴収義務が成立するから,この義務の履行のために私法上労働者には源泉徴収を受忍する義務が発生すると解され(法183条が労働基準法24条1項にいう法令の別段の定めに当たると解されていることは,このことを前提としているものと思われる。),源泉所得税を控除した金額の支払をもって,判決において命ぜられた給与等の全額について債務が消滅することになるのではないかと思われる。そうだとすると,使用者としては,判決段階における抗弁として,源泉所得税額の控除を主張することが認められないとしても,口頭弁論終結後の執行段階における異議事由として,源泉所得税を控除した金額の支払いの事実を主張し,請求異議の訴えを提起することができ(東京地決昭和62年6月9日・判時1236号153頁参照),求償の問題を避けることができるのではないかと思われる。
2(1)ア 給与等の債権者と債務者との間で,判決において支払を命じられた金員がいずれの所得であるかについて争いがある場合,源泉徴収税額が確定しないところ,結果として債務者による源泉徴収税額が多すぎた場合,債権者との関係では未払金が残りますから,請求異議の訴えにおいて全部勝訴判決を得ることはできません。
  また,給与等の債権者が,その支払を受ける時までに退職所得の受給に関する申告書(所得税法203条1項及び6項)を債務者に提出していない場合,債務者としては,20.42%の税率による源泉徴収義務を負うことになります(所得税法201条3項のほか,国税庁HPの「[手続名]退職所得の受給に関する申告(退職所得申告)」参照)。
  そのため,債務者が給与等の債権者との間で源泉徴収税額について合意できなかった場合,源泉徴収税額を含む全額を支払った上で,所得税法222条に基づいて求償する方が無難である気がします。
イ 給与等の債権者が取得するお金が,心身に加えられた損害に起因して取得する損害賠償金に該当する場合,非課税所得となる(所得税法9条1項18号)ために債務者が源泉徴収をする必要はないに対し,給与所得又は退職所得に該当する場合,債務者が源泉徴収をする必要があります。
  なお,心身に加えられた損害に起因して取得する損害賠償金の典型例は,交通事故の治療費,休業損害,入通院慰謝料,後遺障害逸失利益及び後遺障害慰謝料並びに相当の見舞金(葬祭料及び香典を含む。)です(所得税法9条1項18号,所得税法施行令30条及び所得税基本通達9-23参照)。
ウ 請求異議の訴えは,債務名義の存在を前提とし,その執行力の排除を目的とする訴えです(最高裁昭和40年7月8日判決)。
  そのため,判決その他の債務名義が作成されれば訴えを提起することができるのであって,執行文が付与されたこと,又は執行が開始されたことは,請求異議の訴えの要件ではないと思います。
(2) 労働基準法20条に基づく解雇予告手当は退職所得です(所得税法30条1項。所得税基本通達30-5)から,退職所得の受給に関する申告書を事前に受領していない場合,所得税のことだけを考えれば,20.42%の税率による源泉徴収をした上で支払うことが正しいこととなります(d’s JOURNAL「【弁護士監修・完全版】解雇予告手当の複雑な計算方法や支給ルール、流れを解説」参照)。


第12 源泉徴収義務に関する最高裁判例の裁判要旨
1 源泉徴収義務者の納付額は,所得税法の規定により,控除に当たる事項の申告に応じて計算されます(最高裁昭和29年2月23日判決)。
2 所得税法中源泉徴収に関する規定は憲法29条1項等に違反しません(最高裁大法廷昭和37年2月28日判決)。
3 給与等の受給者が,支払者により誤って所得税の源泉徴収をされた場合において,当該年分の所得税の額から右誤徴収額を控除して確定申告をすることはできません(最高裁平成4年2月18日判決)。
4 給与所得に係る源泉所得税の納税告知処分について,法定納期限が経過したという一事をもって,当該源泉所得税の納付義務を成立させる支払の原因となる行為の錯誤無効を主張してその適否を争うことが許されないとはいえません(最高裁平成30年9月25日判決)。


第13 その他特殊なお金の支払と源泉徴収
1 未払の残業代及び付加金の支払と源泉徴収
(1) 未払の残業代を支払う場合,残業代の本体については源泉徴収が必要です。
(2) 未払の残業代の遅延損害金は雑所得です(国税不服審判所平成22年4月22日裁決)から,源泉徴収は不要です。
(3) 未払の残業代に対する付加金(労働基準法114条)は一時所得です(所得税基本通達34-1(3))から,源泉徴収は不要です。
(4) 法律事務所エソラHPの「未払残業代の支払いと税金 」が参考になります。
2 従業員の交通事故の慰謝料と源泉徴収
・ 従業員が交通事故を起こした場合において事業主が当該事故の慰謝料を負担する場合,当該事故が,①会社の業務と関係ないものである場合,又は②従業員の故意又は重過失によるものである場合,原則として源泉徴収が必要です(所得税基本通達36-33のほか,「Q18 従業員が起こした自動車事故の慰謝料を会社が負担するとき」参照)。
3 出向社員に給料を支払う場合
(1) 出向社員の場合,給与を実際にその従業員に支給する会社において源泉徴収を行います(源泉所得税.com「Q32 出向社員への給与と源泉徴収」参照)。
(2) 法人税基本通達9-2-45及び9-2-46は,出向先法人が支出する給与負担金が出向者に対する給与として取り扱われる場合を定めています。



第14 給与の計算サイト
・ Ke!sanに「給与所得の源泉徴収税額 令和2,3,4年(月額)」及び「賞与の源泉徴収税額」が載っています。
・ 給与ねっと「給与計算Ver.2」を使えば,給料及び賞与の源泉所得税等を計算し,かつ,給料明細を作成できます。

第15 関連記事その他
1 給与所得に対する源泉徴収は昭和15年の所得税法改正によって導入されました(名古屋青年税理士連盟HP「源泉徴収制度の仕組みとその問題点」2頁)。
2 源泉徴収制度は憲法14条1項,18条及び29条に違反しません(最高裁大法廷昭和37年2月28日判決)。
3(1) 税理士法人松本HP「税務調査で指摘されやすい税務署が見る源泉所得税のポイントとは? 」が載っています。
(2) 柴田尚之税理士事務所HP「Q1-3 税務調査の担当部署について教えてください。」には「源泉所得税に関しては、 どんなに大規模な法人であっても、 国税局の調査部が担当することは無く、 すべて税務署の法人課税部門の源泉所得税部門等が調査を担当することになっています。」と書いてあります。
4 国内において給与の支払をする者は,支払の際に,給与の金額,源泉徴収税額など必要な事項を記載した支払明細書をその支払を受ける人に交付する必要があります(所得税法231条1項,所得税法施行規則100条1項)。
5 退職所得の受給に関する申告書は,税務署長から提出を求められるまでの間又は7年間,源泉徴収義務者が保存するものとされています(所得税法施行規則77条6項)。
6 マネーフォワードクラウド確定申告「源泉徴収の種類や注意点、フリーランスの場合も解説!」が載っています。
7 国税庁HPに以下の記事が載っています。
・ 令和4年版 源泉徴収のあらまし
・ 令和4年分 源泉徴収税額表
→ 例えば,給与所得の源泉徴収税額表(月額表)賞与に対する源泉徴収税額の算出率の表及び源泉徴収のための退職所得控除額の表、課税退職所得金額の算式の表及び退職所得の源泉徴収税額の速算表が載っています。
8 以下の記事も参照してください。
・ 個人事業主の税金,労働保険及び社会保険に関するメモ書き
・ e-tax(国税電子申告・納税システム)に関するメモ書き
・ 年末調整に関するメモ書き

e-tax(国税電子申告・納税システム)に関するメモ書き

目次
1 総論
2 e-Taxの利用の流れ
3 e-Taxの種類
4 e-Taxの導入時期
5 e-Tax(SP版)を利用した源泉所得税の申告
6 関連記事その他

1 総論
・ e-Taxの最大の特徴は,インターネット環境さえあれば,自宅又はオフィスにいたまま,①申告,②納税及び③開業届・青色申告承認書等の提出といった申請・届出手続を完結できる点にありますところ,個人事業主やフリーランスだけでなく,確定申告が必要な会社員や法人でも利用することができます(freeeの「【2022年(令和3年分)】e-taxでネットから確定申告する方法とメリットを解説」参照)。

2 e-Taxの利用の流れ
・ e-Taxの利用の流れは以下のとおりです(e-Taxの「ご利用の流れ」参照)。
① 利用者識別番号の取得
・ e-Taxを利用する場合,電子申告・納税等開始届出書を所轄の税務署長に提出又は送信し,利用者識別番号を取得する必要があります。
・  利用者識別番号は,電子申告をするために必要な16桁の個人又は法人の識別番号であり,なりすましを防止するために導入されました。
② 電子証明書の取得
・ 私は,マイナンバーカードのほか,「マイナンバーカードの読み取りに対応したスマートフォン」をICカードリーダライタの代替として利用しています。
③ 手続きを行うソフト・コーナーを選ぶ。
・ 私は,源泉所得税の納付に必要となる所得税徴収高計算書を作成する場合,e-Taxソフト(SP版)を利用しています。
④ 申告・申請データの作成・送信
⑤ 送信結果の確認

3 e-Taxの種類
(1) e-Taxには以下の種類があります(e-Taxの「各ソフト・コーナー」参照)ところ,以下のリンク先の右上にログインボタンがあります。
① WEB型ソフト・コーナー
・ 受付システム(パソコン)
・ 確定申告書等作成コーナー(パソコン,スマホ又はタブレット)
・ e-Taxソフト(WEB版)(パソコン)
・ e-Taxソフト(SP版)(スマホ又はタブレット)
・ 開始(変更等)届出書作成・提出コーナー(パソコン又はスマホ)
・ 多国籍企業情報の報告コーナー(パソコン)
・ CSVファイルチェックコーナー(パソコン)
・ QRコード付証明書等作成システム(パソコン)
② ダウンロード型ソフト・コーナー
・ e-Taxソフト(パソコン)
・ 源泉徴収票等作成ソフト(パソコン)
・ 電子的控除証明書等作成ソフト(パソコン)
③ 金融機関向けコーナー
・ NISAコーナー(パソコン)
・ FACTAコーナー(パソコン)
・ CRS報告コーナー(パソコン)
(2)ア 受付システムは,「送信結果・お知らせの確認」及び「各種登録・変更」だけができるソフトです。
イ 確定申告書等作成コーナーは,個人の所得税,消費税及び贈与税の確定申告書の作成に特化したソフトです。
ウ e-Taxソフト(WEB版)及びe-Taxソフト(SP版)で確定申告書を作成することはできません。


4 e-Taxの導入時期
(1) 国税庁HPの確定申告書等作成コーナーは,平成14年分の確定申告期に導入されました(国税庁HPの「(2)電子申告等ITを活用した申告・納税の推進」参照)。
(2) e-Taxは,平成16年2月から名古屋国税局管内において,所得税,消費税(個人)の申告について運用を開始し,3月には法人税,消費税(法人)の申告,納税,申請・届出等の一部について運用を拡大し,6月には運用地域を全国に拡大しました(国税庁HPの「(2)電子申告等ITを活用した申告・納税の推進」参照)。

5 e-Tax(SP版)を利用した源泉所得税の申告
(1) e-Tax(SP版)を利用した源泉所得税の申告の流れは以下のとおりです。
① タブレット又はスマホを使い,利用者識別番号及び暗証番号を入力してe-Tax(SP版)にログインをする。
② 「申請・納税」
→ 「徴収高計算書を提出する」
→ 「(一般)給与所得・退職所得等の所得税徴収高計算書」,「(納期特例分)給与所得・退職所得等の所得税徴収高計算書」又は「報酬・料金等の所得税徴収高計算書」と進む。
③ (「(一般)給与所得・退職所得等の所得税徴収高計算書」を選んだ場合)「提出先税務署」及び「内容の作成」を入力する。
・ 「内容の作成」に際し,「納期等の区分及び区分の選択」については,例えば,「令和4年9月分」及び「俸給・給料等」と入力する。
・ 「内容の作成」に際し,「支払年月日・人員・支給額・税額の入力」のうち,「納期等の区分」は入力済みとなっていて,「区分」につき,「報酬・給料等(01)」を選択した場合,「支払年月日」,「人員」,「支給額」及び「税額」を入力します。
 そのため,従業員全体の給料の支給額及び源泉徴収額を別にメモ書きしておいた方がいいです。
・ ネットバンキング等を利用する予定の場合,「所得税徴収高計算書用紙の送付の要否」は「否」でいいです。
④ 「送信」ボタンをタップする。
(2)ア インターネットバンキングを用いて源泉所得税を支払う場合,以下の番号を入力すればいいです。
① 国税庁の収納機関番号として00200を入力する。
② 納付番号として利用者識別番号(16桁の数字です。)を入力する。
③ 確認番号として納税用確認番号(e-taxの開始届出書を提出した際に設定した6桁の番号です。)を入力する。
④ 納付区分として受信通知(納付区分番号通知)に届いた納付区分を入力する。
イ 国税庁HPに「e-Taxを利用して源泉所得税が納付できます!」が載っています。
ウ e-Taxに「納付区分番号を確認するには、どうすればいいですか。」が載っています。


6 関連記事その他
(1) 休祝日の翌稼働日(例えば,令和5年1月9日(成人の日)翌日となる1月10日(火))は午前8時30分からe-Taxを利用できます(「e-Taxの利用可能時間」参照)。
(2) 令和2年分以降の所得税につき,青色申告特別控除額が65万円から55万円に減ったものの,e-Taxによる申告(電子申告)又は電子帳簿保存を行った場合,引き続き65万円の青色申告特別控除を受けられます(国税庁HPの「令和2年分の所得税確定申告から65万円の青色申告特別控除の適用要件が変わります」参照)。
(3) 市販の会計ソフト→e-Taxソフト(ダウンロード版)経由の場合,QRコード認証(2022年1月開始)を使えませんから,ICカードリーダーが必要となります(自営百科ブログ「e-TaxでICカードリーダーが不要に【2022年1月~】」参照)。
(4) e-Taxには例えば,以下の質問への回答が載っています。
・ e-Taxを利用して所得税の確定申告書を提出する場合の「生命保険料控除の証明書」などの第三者作成書類の添付省略の制度について教えてください。
・ 申告等データを送信する際に、併せて「添付書類のイメージデータ」を送信したいのですが、どうすればいいですか。
(5) 以下の記事も参照してください。
・ 個人事業主の税金,労働保険及び社会保険に関するメモ書き
・ 源泉所得税に関するメモ書き

消費税に関するメモ書き

目次
1 制度の変遷
2 税抜経理方式及び税込経理方式
3 簡易課税制度
4 中間申告・中間納付
5 インボイス制度
6 消費税の計算サイト
7 関連記事その他

1 制度の変遷
(1) 消費税の税率は,平成元年4月1日の制度開始時点では3%であり,平成9年4月1日に5%(地方消費税1%を含む。)となり,平成26年4月1日に8%(地方消費税1.7%を含む。)となり,令和元年10月1日に10%(地方消費税2.2%を含む。)となりました。
(2)ア 免税点制度の適用上限は,平成元年4月1日の制度開始時点では3000万円であり,平成16年4月1日に1000万円となりました。
イ 免税点制度が適用されるかどうかについては,税込みの売上高で判断されます(最高裁平成17年2月1日判決)。
(3) 簡易課税制度の適用上限は,平成元年4月1日の制度開始時点では5億円であり,平成3年10月1日に4億円となり,平成9年4月1日に2億円となり,平成16年4月1日に5000万円となりました。
(4) 仕入税額控除の方式は,平成元年4月1日の制度開始時点では帳簿方式であり,平成9年4月1日に請求書等保存方式となりました。
(5) 内閣府HPの「消費税の歴史」に,平成16年度までの消費税の歴史が載っています。

2 税抜経理方式及び税込経理方式
(1) 国税庁HPの「タックスアンサーNo.6375 税抜経理方式又は税込経理方式による経理処理」には以下の記載があります。
 消費税の納税義務者である事業者は、所得税または法人税の所得計算に当たり、消費税および地方消費税(以下「消費税等」といいます。)について税抜経理方式または税込経理方式のどちらを選択してもよいこととされています。
 税抜経理方式による場合は、課税売上げに係る消費税等の額は仮受消費税等とし、課税仕入れに係る消費税等の額については仮払消費税等とします。
 税込経理方式による場合は、課税売上げに係る消費税等の額は売上金額、課税仕入れに係る消費税等の額は仕入金額などに含めて計上し、消費税等の納付税額は租税公課として必要経費または損金の額に算入します。
 なお、消費税の納税義務が免除されている免税事業者は、税込経理方式によります。
(2) ソムリエHPに「税抜経理方式と税込経理方式、どちらを採用するべき?」が載っています。

3 簡易課税制度
(1) 国税庁HPの「タックスアンサーNo.6505 簡易課税制度」には以下の記載があります。
 簡易課税制度は、中小事業者の納税事務負担に配慮する観点から、事業者の選択により、売上げに係る消費税額を基礎として仕入れに係る消費税額を算出することができる制度です。
 具体的には、その納税地の所轄税務署長に「消費税簡易課税制度選択届出書」を提出した課税事業者は、その基準期間(個人事業者は前々年、法人は前々事業年度)における課税売上高が5,000万円以下の課税期間について、売上げに係る消費税額に、事業の種類の区分(事業区分)に応じて定められたみなし仕入率を乗じて算出した金額を仕入れに係る消費税額として、売上げに係る消費税額から控除することになります。
(2) 消費税簡易課税制度選択届出書は,適用を受けようとする課税期間の初日の前日まで(例えば,令和4年分の消費税について簡易課税制度の適用を受けようとする場合,令和3年12月31日まで)に提出する必要があるものの,インボイス制度に関する例外として,国税庁HPの「[手続名]消費税簡易課税制度選択届出手続」には以下の記載があります。
※ 平成28年改正法附則第44条第4項の規定の適用を受ける事業者が、この届出書を適格請求書発行事業者の登録がされた日を含む課税期間中に提出した場合には、経過措置として、この届出書を提出した課税期間から簡易課税制度の適用を受けることができます。詳しくは、「消費税軽減税率制度の手引き」 をご覧ください。
(3) 東京トラスト会計HP「【インボイスと一緒に申請】簡易課税届出書の書き方とインボイス特例」には以下の記載があります。
万が一、間違った届出書を提出してしまった場合、簡易課税の適用ができなくなっています。簡易課税の適用要件に「消費税簡易課税制度選択届出書」の提出が法律上の要件となっているためです。(消費税法37条1項)
(中略)
※インボイス制度の開始日(2023年10月1日)から簡易課税を適用する場合を前提として記載しております。

(中略)
簡易課税選択届出書の書き方(中段)

適用開始課税期間:法人の場合は2023年10月1日を含む事業年度を記載します。個人事業主の場合は、事業年度は暦年になりますので、「自 令和5年1月1日 至 令和5年12月31日」と記載します。
①の基準期間:「適用開始課税期間」の2期前の事業年度を記載します。個人事業主の場合は「自 令和3年1月1日 至 令和3年12月31日」となりますね。
(4) 弁護士業は簡易課税制度の第五種事業(サービス業等)に該当しますから,みなし仕入率は50%です。

4 中間申告・中間納付
(1) 前年に納付した消費税(地方消費税は除く。)が48万円を超えた場合,消費税の中間申告が必要になりますから,1年の申告回数は確定申告1回,中間申告1回となります。
(2) 令和元年10月1日以降につき,消費税率は7.8%(標準税率)又は6.24%(軽減税率)であり,地方消費税率は2.2%(標準税率)又は1.76%(軽減税率)です。
(3) 消費税の中間納付税額の算出方法としては,予定申告方式(前年の実績による申告方式)及び仮決算方式があります。
イ 予定申告方式の場合,税務署から「金額が記載された中間申告書と納付書」が郵送されてきますから,そのまま支払をすれば終了です(濱田会計事務所HPの「Q76【消費税】中間申告義務のある方・申告回数・計算方法は?/課税期間短縮との関係は?」参照)。

5 インボイス制度
(1) 令和5年10月1日から導入されるインボイス制度により、請求書等の記載事項が区分記載請求書等保存方式から適格請求書等保存方式に変更になります(TKC HPの「インボイス制度対応ガイド」参照)。
(2) 国税庁HPの「インボイス制度の概要」には以下の記載があります。
適格請求書(インボイス)とは、
売手が買手に対して、正確な適用税率や消費税額等を伝えるものです。
具体的には、現行の「区分記載請求書」に「登録番号」、「適用税率」及び「消費税額等」の記載が追加された書類やデータをいいます。
インボイス制度とは、
<売手側>
 売手である登録事業者は、買手である取引相手(課税事業者)から求められたときは、インボイスを交付しなければなりません(また、交付したインボイスの写しを保存しておく必要があります)。
<買手側>
 買手は仕入税額控除の適用を受けるために、原則として、取引相手(売手)である登録事業者から交付を受けたインボイス(※)の保存等が必要となります。
(※)買手は、自らが作成した仕入明細書等のうち、一定の事項(インボイスに記載が必要な事項)が記載され取引相手の確認を受けたものを保存することで、仕入税額控除の適用を受けることもできます。
(3)ア マネーフォワードクラウド請求書HP「インボイス制度とは?2023年導入までに消費税免税事業者がとるべき対応をわかりやすく解説」が載っています。
イ 公正取引委員会HPに「免税事業者及びその取引先のインボイス制度への対応に関するQ&A」が載っています。
(4)ア 令和4年時点で免税事業者の場合,「簡易課税制度選択届出書」を令和5年1月1日から同年12月31日までに提出し,「適格請求書発行事業者の登録申請書」を令和3年10月1日から令和5年3月31日までに出せば,同年10月1日から「課税事業者」「インボイスの登録事業者」「簡易課税で仕入税額控除」の3つが同時スタートとなります(みんなの経営応援通信HPの「免税事業者が気になるインボイス制度…簡易課税を選べば節税できる?」参照)。
イ 私の登録番号は「T1810906557835」でありますところ,国税庁適格請求書発行事業者公表サイトにおいて,私が適格請求書発行事業者登録を行っている事業者であることを確認できます。
(5) 東弁リブラ2023年3月号「消費税インボイス制度導入の意義と実務対応」が載っています。


6 消費税の計算サイト
・ 生活や実務に役立つ計算サイトkeisan「消費税」を使えば,税抜き又は税込みの金額から消費税を計算できます。

7 関連記事その他
(1) 消費税の前年納税額が地方消費税を含めて60万円を超えた場合,中間申告が必要となります(国税庁HPの「タックスアンサーNo.6609 中間申告の方法」参照)。
(2) 東京地裁平成2年3月26日判決における国の主張には「事業者が取引の相手方から収受する消費税相当額は、あくまでも当該取引において提供する物品や役務の対価の一部である。この理は、免税事業者や簡易課税制度の適用を受ける事業者についても同様であり、結果的にこれらの事業者が取引の相手方から収受した消費税相当額の一部が手元に残ることとなっても、それは取引の対価の一部であるとの性格が変わるわけではなく、したがって、税の徴収の一過程において税額の一部を横取りすることにはならない。」というものがありました。
(3)ア  事業者が,消費税法施行令(平成7年政令第341号による改正前のもの)50条1項の定めるとおり,消費税法(平成6年法律第109号による改正前のもの)30条7項に規定する帳簿又は請求書等を整理し,これらを税務職員による検査に当たって適時に提示することが可能なように所定の期間及び場所において態勢を整えて保存していなかった場合は,同項にいう「事業者が当該課税期間の課税仕入れ等の税額の控除に係る帳簿又は請求書等を保存しない場合」に当たります(最高裁平成16年12月16日判決)。
イ 課税対応課税仕入れとは,当該事業者の事業において課税資産の譲渡等にのみ対応する課税仕入れをいい,課税資産の譲渡等のみならずその他の資産の譲渡等にも対応する課税仕入れは,全て共通対応課税仕入れに該当します(最高裁令和5年3月6日判決)。
ウ  事業者が消費税等の確定申告において課税期間中に行った課税仕入れに係る消費税額の全額を当該課税期間の課税標準額に対する消費税額から控除したことにつき国税通則法(平成28年法律第15号による改正前のもの)65条4項にいう「正当な理由」があると認めることはできないとされた事例です(最高裁令和5年3月6日判決)。
(4) 国税庁HPの「テナントから領収するビルの共益費」には以下の記載があります。
 ビル管理会社等が、水道光熱費、管理人人件費、清掃費等を共益費等と称して各テナントから毎月一定額で領収し、その金額の中からそれぞれの経費を支払う方法をとっている場合には、ビル管理会社等が領収する共益費等は課税の対象となります。
(5) 以下の記事も参照してください。
・ 個人事業主の税金,労働保険及び社会保険に関するメモ書き




所得税の確定申告に関するメモ書き

目次
1 総論
2 所得税の確定申告の種類
3 所得控除の種類及び限度額
4 株式譲渡益課税制度
5 外国税額控除
6 所得税等の計算サイト
7 白色申告者の記帳義務の拡大
8 関連記事その他

1 総論
(1) 所得税の確定申告は,毎年1月1日から12月31日までの1年間に生じた全ての所得の金額とそれに対する所得税等の額を計算し,申告期限までに確定申告書を提出して,源泉徴収された税金や予定納税で納めた税金などとの過不足を精算する手続であり,平成25年分から令和29年分まで,東日本大震災からの復興を図るための施策に必要な財源を確保するため,復興特別所得税を所得税と併せて申告・納付することとされています(国税庁HPの「所得税の確定申告とは」参照)。
(2) 個人事業主メモ「青色申告決算書(一般用)の書き方・記入例」が載っています。

2 所得税の確定申告の種類
① 確定申告(所得税法120条1項)
・ その年の翌年の2月16日から3月15日までに行う必要があります。
② 死亡による準確定申告(所得税法124条及び125条)
・ 相続の開始があったことを知った日の翌日から4か月以内に行う必要があります。
③ 出国による準確定申告(所得税法126条及び127条)
・ 出国のときまでに行う必要があります。

3 所得控除の種類及び限度額
(1) 社会保険料控除
・ ①健康保険、国民年金、厚生年金保険および船員保険の保険料で被保険者として負担した場合,②国民健康保険の保険料又は国民健康保険税,③介護保険料,④雇用保険の被保険者として負担する労働保険料,⑤国民年金基金の加入員として負担する掛金等を支払った場合等の控除です。
・ その年に支払った全額が対象です。
(2) 小規模企業共済等掛金控除
・ ①小規模企業共済,②個人型確定拠出年金(iDeCo),③企業型確定拠出年金(企業型DC)又は④心身障害者扶養共済の掛金を支払った場合の控除です。
・ その年に支払った全額が対象です。
(3) 生命保険料控除
・ 平成24年以後に締結した保険契約の場合,民間の保険会社に①生命保険料,②介護医療保険料又は③個人年金保険料を支払った場合の控除です。
・ ①ないし③の限度額はそれぞれ4万円です。
(4) 地震保険料控除
・ 民間の保険会社に一定の地震保険料を支払った場合の控除です。
・ 限度額は5万円です。
(5) 寡婦控除
・ 夫と離婚又は死別した女性が受けられる控除であり,合計所得金額が500万円以下の人が対象です。
・ 一般の寡婦が27万円であり,特別の寡婦が35万円です。
(6) ひとり親控除
・ シングルマザー又はシングルファザーが受けられる控除であり,寡婦控除が適用されない,合計所得金額が500万円以下の人が対象です。
・ 令和2年分の所得税から適用されるようになりました。
・ ひとり親控除は男性でも女性でも適用されますし,結婚歴がなくても適用されます。
・ 35万円です。
(7) 勤労学生控除
・ 納税者が勤労者の場合に受けられる控除です。
・ アルバイトなどを頑張りながら学校に通っている学生のための控除です。
・ 27万円です。
(8) 障害者控除
・ 納税者や控除対象の親族が所得税法上の障害者に当てはまる場合の控除です。
・ 原則として1人につき27万円ですが,40万円又は75万円となる場合があります。
(9) 配偶者控除
・ 控除対象になる配偶者がいる場合の控除です。
・ 原則として38万円ですが,配偶者が70歳以上の場合は48万円です。
(10) 配偶者特別控除
・ 配偶者に38万円を超える所得(例えば,103万円を超える給与収入)があり,配偶者控除が受けられない場合に,配偶者の所得金額に応じて受けられる控除です。
・ 配偶者の所得に応じて控除額が変わりますところ,最高で38万円です。
(11) 扶養控除
・ 控除対象になる扶養親族(例えば,16歳以上の子)がいる場合の控除です。
・ 原則として38万円ですが,特定扶養親族(19歳以上23歳未満の扶養親族)の場合は63万円であり,老人扶養親族(70歳以上の扶養親族)の場合は48万円(別居の場合)又は58万円(同居の場合)です。
(12) 基礎控除
・ 所得2500万円以下の納税者が受けられる控除です。
・ 所得2400万円以下の場合,48万円です。
(13) 雑損控除
・ 災害や盗難等によって損害を受けた場合の控除です。
・ 損失額に応じて控除額が変わります。
(14) 医療費控除
・ 病院などで医療費を一定以上支払った場合の控除です。
・ 原則として,実際に支払った医療費の合計額から保険金及び10万円を控除した額が医療費控除額となります。
・ その年の総所得金額等が200万円未満の場合,総所得金額等の5%の金額を超えれば,医療費控除を受けることができます。
(15) 寄付金控除
・ 寄付をした場合の控除であり,ふるさと納税も寄付金控除の一種です。
・ 特定寄附金から2000円を控除した額が寄付金控除額となります。

*1 個人事業主メモHPに「所得控除の一覧表【まとめ】個人事業主・会社員の所得控除」が載っています。
*2 マネージャーナルHP「ひとり親控除と寡婦控除の違いを徹底解説!あなたはどちらに該当する?」が載っています。
*3 雑損控除,医療費控除及び寄付金控除を適用してもらうためには確定申告をする必要があります。


4 株式譲渡益課税制度
(1) 国税庁HPの「株式譲渡益課税制度」「個人の方が上場株式等を保有・譲渡した場合の金融・証券税制について(令和元年10月)」等が載っていますところ,源泉徴収ありの特定口座を利用している場合,「上場株式等の譲渡損失に係る損益通算及び繰越控除」を利用する場合でない限り,上場株式等の譲渡所得について確定申告をする必要はありません。
(2) 令和3年分の確定申告の場合,令和元年分,令和2年分及び令和3年分の上場株式等に係る譲渡損失の金額を令和4年以後に繰り越すためには確定申告をする必要がありました(令和3年分確定申告特集「株式を売却した方へ」参照)。
(3) 水戸市HPの「特定配当等及び特定株式等譲渡所得金額の所得税と異なる課税方式の選択について」に「平成29年度税制改正により、特定配当等に係る所得及び特定株式等譲渡所得金額に係る所得(以下「上場株式等の特定配当等」)について、所得税と個人住民税で異なる課税方式(申告不要制度・総合課税・申告分離課税)を選択できることが明確化されました。」と書いてあります。


5 外国税額控除
(1) 楽天証券HPの「外国税額控除」に「外国証券に関するご案内(権利配当等)」及び「外国税額控除に関する明細書」の記載例が載っています。
(2) 投資家としてのリテラシー I&Tの「外国税額控除部分の申告書の書き方」には以下の記載があります。
①「本年中に納付する外国所得税額」欄
重要なことは、「全部書いてたらキリが無いので、集計して処理をすることは可能」です。
別紙のように、利子・配当・譲渡を一括にしても問題ないと思われます。(特に複数の国から所得を得ているなら3行ではすぐ埋まってしまいます。)
(3) 池田一暁公認会計士事務所HPの「分配時調整外国税相当額控除について」には「2018年度税制改正により、2020年1月1日以降、証券会社等が、外国所得税が課税された公募投資信託等の収益の分配金を支払う際に、二重課税調整計算を行うこととされました。」と書いてあります。
(4) みやした税理士事務所HPの「海外投資をする方の税金計算について【外国税額控除】」には「調整国外所得金額④は基本的には海外投資に係る収入金額の合計額ですが、配当に係る負債利子がある場合は負債利子控除後の金額、株式の譲渡の場合は取得費及び譲渡費用控除後の金額となります。」と書いてあります。

6 所得税等の計算サイト
・ 所得税・住民税簡易計算機HP「税金計算機(生命保険料控除、医療費控除、扶養控除、ふるさと納税対応)」が載っています。


7 白色申告者の記帳義務の拡大
(1) 平成24年度の税制改正により,平成26年分以降の所得税の確定申告では,事業所得,不動産所得又は山林所得のある白色申告対象者は,収入の金額にかかわらず,記帳義務及び帳簿等保存義務を負うこととなりました(マネーフォワードクラウド確定申告HPの「白色申告の帳簿のつけ方や保存義務についてわかりやすく解説!」参照)。
(2) 令和2年度の税制改正により,令和4年分以降の所得税の確定申告では,2年前の雑所得の収入金額が1000万円を超える人は確定申告書に収支内訳書を添付する必要がありますし,2年前の雑所得の収入金額が300万円を超える人は,現金預金取引等関係書類を保存する必要があります(国税庁HPの「タックスアンサーNo.2080 白色申告者の記帳・帳簿等保存制度」参照)。


 関連記事その他
(1)ア 平成31年4月1日以降に確定申告書を提出する場合,給与所得等の源泉徴収票を添付又は提示する必要がなくなりました(国税庁HPの「平成31年4月1日以後の申告書の提出の際、源泉徴収票等の添付が不要となりました」参照)。
イ 国税庁HPに「個人課税事務提要(様式編 Ⅰ)」の制定について(平成12年11月15日付の国税庁長官の法令解釈通達)が載っています。
(2)ア 東京高裁平成2年6月28日判決は,近視及び乱視矯正用の眼鏡及びコンタクトレンズの購入費用並びにその購入に当たり医師がした検眼費用が医療費控除の対象にならないとしてされた所得税更正処分が,適法とされた事例です。
イ 最高裁平成29年12月15日判決が出た後の取扱いとして,競馬の馬券の払戻金は例外的に雑所得となることがあるものの,普通は一時所得です(国税庁HPの「競馬の馬券の払戻金に係る課税について」参照)。
ウ 法人税法127条1項の規定による青色申告の承認の取消処分については,その処分により制限を受ける権利利益の内容,性質等に照らし,その相手方に事前に防御の機会が与えられなかったからといって,憲法31条の法意に反するものとはいえません(最高裁令和6年5月7日判決)。
(3)ア 日本人が個人として米国株投資をする場合,日米租税条約(平成16年3月30日条約第2号)に基づき,配当所得については米国の源泉税が10%に軽減され,譲渡所得については日本の所得税及び住民税だけが課税されます。
イ 令和元年8月30日に発効した日米租税条約を改正する議定書は,個人投資家とは関係がない話と思います(国税庁HPの「源泉所得税の改正のあらまし」参照)。
(4)ア こども基本法(令和4年6月22日法律第77号)は令和5年4月1日に施行される予定です。
イ 文部科学省HPの「生徒指導提要(改訂版)」に,12年ぶりに改訂されて,令和4年12月に公表された「生徒指導提要(改訂版)」が載っています。
(5) 雑所得が20万円以下の場合,所得税の確定申告は不要ですが,住民税の確定申告は必要です(代官山税理士法人HP「雑所得は確定申告が必要?確定申告書への書き方や経費の範囲を解説」参照)。
(6)ア 以下の資料を掲載しています。
・ 令和3年分の確定申告書(案)の国税庁ホームページへの掲載について(令和3年7月9日付の国税庁個人課税課課長補佐の事務連絡)
・ 確定申告期における申告書等の収受に関する取扱いについて(令和5年1月20日付の大阪国税局長の指示)
・ 令和5年分確定申告期における事務実施上の留意事項について(令和5年12月12日付の大阪国税局長の指示)
・ 申告書等の控えへの収受受付印の押なつの見直しに係る納税者への周知等について(令和5年12月18日付の国税庁長官の指示)
イ 以下の記事も参照してください。
・ 個人事業主の税金,労働保険及び社会保険に関するメモ書き

消費者契約法に関する最高裁判例

目次
1 消費者契約法9条に関する最高裁判例
2 消費者契約法10条に関する最高裁判例
3 消費者契約法12条に関する最高裁判例
4 その他の最高裁判例
5 関連記事その他

1 消費者契約法9条に関する最高裁判例
(1) 無効とされた事例(いずれも授業料不返還特約に関するものです。)

・  大学の平成16年度の入学試験に合格し,同大学に入学金,授業料等の所定の納付金を納付して,平成16年3月25日までに入学辞退を申し出た場合には入学金を除く納付金を返還する旨の特約の付された在学契約を締結した者が,同月26日に入学辞退に関する問合せをした際に,同大学の職員から入学式に出席しなければ入学辞退として取り扱う旨告げられたため,同月31日までに同契約を解除すれば同特約は消費者契約法9条1号により無効となったのに,同日までに同契約を解除することなく同年4月2日の入学式に欠席することにより同契約を解除したなどといった事情の下では,同大学において,同特約が有効である旨主張して,授業料の返還を拒むことは許されません(最高裁平成18年11月27日判決)。
・ 入学手続要項等に「入学式を無断欠席した場合には入学を辞退したものとみなす」,「入学式を無断欠席した場合には入学を取り消す」等の記載がある大学の入学試験の合格者と当該大学との間の在学契約における納付済みの授業料等を返還しない旨の特約は,入学式の日までに明示又は黙示に同契約が解除された場合には,原則として,当該大学に生ずべき消費者契約法9条1号所定の平均的な損害は存しないものとして,同号によりすべて無効となります(最高裁平成18年11月27日判決)。
・  いわゆる鍼灸学校の平成14年度の入学試験に合格し,当該鍼灸学校との間で,納付済みの授業料等を返還しない旨の特約の付された在学契約を締結した者が,入学年度の始まる前の平成14年3月27日ころに同契約を解除した場合において,(1)一般に鍼灸学校の入学試験の受験者において,他の鍼灸学校や大学,専修学校を併願受験することが想定されていないとはいえず,鍼灸学校の入学試験に関する実情が,大学のそれと格段に異なるというべき事情までは見いだし難いこと,(2)鍼灸学校が大学の場合と比較してより早期に入学者を確定しなければならない特段の事情があることはうかがわれないこと,(3)当該鍼灸学校においても,入学試験に合格しても入学しない者があることを見込んで補欠者を定めている上,定員割れが生ずることを回避するため入学定員を若干上回る数の者を合格させていることなど判示の事情の下では,当時当該鍼灸学校の周辺地域に同種の学校等が少なかったことや,これまで当該鍼灸学校において入学手続後に入学辞退をした者がいなかったことなどを考慮しても,当該鍼灸学校に生ずべき消費者契約法9条1号所定の平均的な損害は存しないものとして,上記特約は,同号により全部無効です(最高裁平成18年12月22日判決)。
(2) 有効とされた事例(いずれも授業料不返還特約に関するものです。)
ア 専願の推薦入学の場合
・ 入学試験要項等の定めにより,その大学,学部を専願あるいは第1志望とすること,又は入学することを確約することができることが出願資格とされている大学の推薦入学試験等の合格者と当該大学との間の在学契約における納付済みの授業料等を返還しない旨の特約は,上記授業料等が初年度に納付すべき範囲内のものである場合には,同契約の解除の時期が当該大学において同解除を前提として他の入学試験等によって代わりの入学者を通常容易に確保することができる時期を経過していないなどの特段の事情がない限り,消費者契約法9条1号所定の平均的な損害を超える部分は存しないものとして,すべて有効となります(最高裁平成18年11月27日判決)。
イ 私立医科大学の場合
・ 私立医科大学の平成13年度の入学試験の合格者が,同大学に授業料等を含む所定の納付金を納付して,同大学との間で,平成13年3月21日正午よりも後に入学辞退を申し出た場合には授業料等を返還しない旨の特約の付された在学契約を締結した後,同月27日ころ同契約を解除した場合において,医科大学においては入学辞退によって欠員が生ずる可能性が潜在的に高く,欠員が生じた場合に生ずる損失が多額になることは否定し難いこと,上記特約が当時の私立大学の医学関係の学部におけるそれとの比較において格別合格者に不利益な内容のものであることがうかがわれないことなど判示の事情の下では,上記授業料等の金額が614万円であり,このうち教育充実費については6年間に納付することとされている合計額950万円のうち500万円を在学契約締結時に納付すべきものとされていることや,同大学に定員割れが生じていないことなどを考慮しても,上記特約は公序良俗に反するものではなく,同大学が上記授業料等の返還を拒むことが信義に反するともいえず,上記合格者から同大学に対する上記授業料等の返還請求は認められません(最高裁平成18年11月27日判決)。
・  専願等を資格要件としない大学の平成18年度の推薦入学試験に合格し,初年度に納付すべき範囲内の授業料等を納付して,当該大学との間で納付済みの授業料等は返還しない旨の特約の付された在学契約を締結した者が,入学年度開始後である平成18年4月5日に同契約を解除した場合において,学生募集要項に,一般入学試験の補欠者とされた者につき4月7日までに補欠合格の通知がない場合は不合格となる旨の記載があり,当該大学では入学年度開始後にも補欠合格者を決定することがあったなどの事情があっても,上記授業料等は,上記解除に伴い当該大学に生ずべき平均的な損害を超えるものではなく,上記解除との関係では,上記特約は,すべて有効です(最高裁平成22年3月30日判決)。 
2 消費者契約法10条に関する最高裁判例

(1) 賃貸借契約関係
・ 消費者契約である居住用建物の賃貸借契約に付されたいわゆる敷引特約は,信義則に反して賃借人の利益を一方的に害するものであると直ちにいうことはできないが,賃借人が社会通念上通常の使用をした場合に生ずる損耗や経年により自然に生ずる損耗の補修費用として通常想定される額,賃料の額,礼金等他の一時金の授受の有無及びその額等に照らし,敷引金の額が高額に過ぎると評価すべきものであるときは,当該賃料が近傍同種の建物の賃料相場に比して大幅に低額であるなど特段の事情のない限り,信義則に反して消費者である賃借人の利益を一方的に害するものであって,消費者契約法10条により無効となります(最高裁平成23年3月24日判決)。
・  消費者契約である居住用建物の賃貸借契約に付されたいわゆる敷引特約は,保証金から控除されるいわゆる敷引金の額が賃料月額の3.5倍程度にとどまっており,上記敷引金の額が近傍同種の建物に係る賃貸借契約に付された敷引特約における敷引金の相場に比して大幅に高額であることはうかがわれないなど判示の事実関係の下では,消費者契約法10条により無効であるということはできません(最高裁平成23年7月12日判決)。
・ 賃貸借契約書に一義的かつ具体的に記載された更新料の支払を約する条項は,更新料の額が賃料の額,賃貸借契約が更新される期間等に照らし高額に過ぎるなどの特段の事情がない限り,消費者契約法10条にいう「民法第1条第2項に規定する基本原則に反して消費者の利益を一方的に害するもの」には当たりません(最高裁平成23年7月15日判決)。
・ 最高裁令和4年12月12日判決は,賃貸住宅に係る賃料債務等の保証委託及び連帯保証に関する契約書中の,①賃料等の不払があるときに連帯保証人が無催告にて賃貸借契約を解除することができる旨を定める条項,及び②賃料等の不払等の事情が存するときに連帯保証人が賃貸住宅の明渡しがあったものとみなすことができる旨を定める条項は,消費者契約法10条に規定する消費者契約に該当すると判断した事例です。
(2) 生命保険契約関係
・  生命保険契約に適用される約款中の保険料の払込みがされない場合に履行の催告なしに保険契約が失効する旨を定める条項は,(1)これが,保険料が払込期限内に払い込まれず,かつ,その後1か月の猶予期間の間にも保険料支払債務の不履行が解消されない場合に,初めて保険契約が失効する旨を明確に定めるものであり,(2)上記約款に,払い込むべき保険料等の額が解約返戻金の額を超えないときは,自動的に保険会社が保険契約者に保険料相当額を貸し付けて保険契約を有効に存続させる旨の条項が置かれており,(3)保険会社が,保険契約の締結当時,上記債務の不履行があった場合に契約失効前に保険契約者に対して保険料払込みの督促を行う実務上の運用を確実にしているときは,消費者契約法10条にいう「民法第1条第2項に規定する基本原則に反して消費者の利益を一方的に害するもの」に当たりません(最高裁平成24年3月16日判決)。
3 消費者契約法12条に関する最高裁判例
・  事業者等による働きかけが不特定多数の消費者に向けられたものであったとしても,そのことから直ちにその働きかけが消費者契約法12条1項及び2項にいう「勧誘」に当たらないということはできません(最高裁平成29年1月24日判決)。
4 その他の最高裁判例
・ 消費者契約法2条3項に規定する消費者契約を対象として損害賠償の予定等を定める条項の効力を制限する同法9条1号は,憲法29条に違反するものではありません(最高裁平成18年11月27日判決)。
・  金の商品先物取引の委託契約において将来の金の価格は消費者契約法4条2項本文にいう「重要事項」に当たりません(最高裁平成22年3月30日判決)。
・ 最高裁令和6年3月12日判決は,消費者裁判手続特例法2条4号所定の共通義務確認の訴えについて同法3条4項にいう「簡易確定手続において対象債権の存否及び内容を適切かつ迅速に判断することが困難であると認めるとき」に該当するとした原審の判断に違法があるとされた事例です。

5 関連記事その他
(1) 消費者庁HPに「逐条解説(平成31年2月)」が載っています。
(2)ア 賃借建物の通常の使用に伴い生ずる損耗について賃借人が原状回復義務を負うためには,賃借人が補修費用を負担することになる上記損耗の範囲につき,賃貸借契約書自体に具体的に明記されているか,賃貸人が口頭により説明し,賃借人がその旨を明確に認識して,それを合意の内容としたものと認められるなど,その旨の特約が明確に合意されていることが必要です(最高裁平成17年12月16日判決)。
イ 2020年4月1日施行の改正民法では,賃貸借終了時のルールである敷金及び原状回復の取扱いが明文化されました(法務省HPの「民法の一部を改正する法律(債権法改正)について」参照)。
(3)ア 国土交通省HPに「「賃貸住宅標準契約書」(改訂版)のダウンロード」及び「「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」について」があります。
イ 東京地裁令和2年2月6日判決(判例秘書に掲載。裁判長は46期の金澤秀樹裁判官)は,
    通常損耗範囲のハウスクリーニング費用は賃借人負担とされていることは,契約書で明記され,本件請求額は不当な額とは言えず,また賃借人の故意・過失による損傷・汚損は賃借人が修繕費用を負担するとの定めがあり,玄関・廊下壁クロス,洗面所クッションフロア,浴室の右壁の損耗・汚損は過失によるとし,1室単位の算定規定を超える請求とは認められず,本件違約金特約も,消費者契約法に反するとはいえないから有効であるとし,原判決を相当として,控訴を棄却しました。
(4) 東京都港区HPに「消費者契約法が適用された具体的な事例」が載っています。
(5) ビジネス法務2023年11月号127頁には「事業用建物では,各社の事業の必要に応じて,床,壁,天井,設備等を整える必要があり,各社の用途や使用方法等に応じて,損耗の程度や状況も相当程度異なってくる。そのため,通常損耗については賃借人が負担すべき(通常損耗の原状回復費用は賃料に含まれていないと解すべき)という考えも,あり得るところである。」と書いてあります。
(6) 以下の記事も参照してください。
・ 消費者契約法及び特定商取引法等に関するメモ書き
・ 文書提出命令に関する最高裁判例

収入印紙及び定額小為替に関するメモ書き

目次
第1 収入印紙に関するメモ書き
1 総論
2 収入印紙の形式改正
3 弁護士の領収書と収入印紙
4 スキャナ保存と収入印紙
5 従業員から交付を受ける受取書
6 その他
第2 定額小為替に関するメモ書き

第1 収入印紙に関するメモ書き
1 総論

(1) 収入印紙の形式は,印紙をもつてする歳入金納付に関する法律(昭和23年7月12日法律第142号)2条2項に基づき,財務大臣が,収入印紙の形式を定める件(昭和23年2月大蔵省告示第39号)において定めています。
(2) 印紙税額一覧表左の番号は,印紙税法の「別表第一 課税物件表(第二条―第五条、第七条、第十二条関係)」の番号と対応しています。
(3) 例えば,1万円未満の金銭消費貸借契約書,及び5万円未満の領収書は印紙税の非課税文書です。
2 収入印紙の形式改正
・ 平成に入ってからは,平成5年7月1日及び同年10月1日に収入印紙の形式改正があり,平成6年4月1日に8000円の収入印紙が追加され,平成30年7月1日に再び収入印紙の形式改正がありました(「収入印紙の形式改正について」(平成30年6月1日付)参照)。
3 弁護士の領収書と収入印紙
・ 弁護士が個人として領収書を発行する場合,収入印紙を貼付する必要はありません(印紙税基本通達別表第一第17号文書26項)が,弁護士法人が領収書を発行する場合,収入印紙を貼付する必要があります(みずほ中央法律事務所HP「【領収証に貼付する収入印紙|印紙額・非課税|弁護士・司法書士など】」参照)。
4 スキャナ保存と収入印紙
・ まもりの種HP「契約書等文書のスキャナ保存の扱いとは?改正電子帳簿保存法の対応ポイント」には以下の記載があります(改行を追加しています。)。
   紙で契約書を締結した場合、収入印紙を貼付・消印することで印紙税を納付する義務が発生します。
   しかし、その契約書原本をスキャナ保存しても、そのデータはコピー扱いとなり、印紙税法上は納税義務を果たしていないことになってしまいます。
   そのため、スキャナ保存後も原本の保存が必要となっています。
5 従業員から交付を受ける受取書
・ 国税庁タックスアンサーの「No.7125 営業に関しない受取書」には以下の記載があります。
   会社と従業員の関係は、消費貸借契約に基づく私法上の関係となり、同一法人内で作成する事務の整理上の文書とは認められないことから、不課税文書とはなりません。
   しかしながら、従業員は給与所得者であり、印紙税法上の「営業者」には当たりませんので、従業員の作成する受取書は、営業に関しないものとして非課税になります。
(注) 受取書は非課税となりますが、会社と従業員の間で作成する消費貸借契約書、借用証書等は、第1号の3文書(消費貸借に関する契約書)に該当することになります。
印法別表一の一、十七、印基通59
6 その他
(1) 国税庁HPの「第3 印紙納付法の一部改正関係」には,収入印紙の交換手続の説明が書いてあります。
(2) 国税庁HPに「収入印紙の交換と印紙税の還付について」(平成23年7月)が載っています。
(3) 行政文書開示手続において開示請求手数料(1件300円)及び開示実施手数料(白黒の場合,1枚10円)を収入印紙で納付するのは行政機関情報公開法16条及び行政機関情報公開法施行令13条3項に基づく取扱いであって,印紙税法に基づく取扱いではないです。

2 定額小為替に関するメモ書き
1 定額小為替の発行手数料の変遷は以下のとおりです
平成19年9月30日以前は証書1枚につき10円
令和 4年1月16日以前は証書1枚につき100円
令和 4年1月17日以降は証書1枚につき200円
2 定額小為替の再発行につき,令和4年1月16日以前は無料でしたが,同月17日以降は証書1枚につき200円がかかるようになりました。
3 大和市HPの「定額小為替に関するQ&A」には以下の記載があります。
    定額小為替の有効期限は発行日から6ヶ月ですが換金の都合上、発行日から5ヶ月と20日を越えないものでお願いいたします。
    なお、お釣銭が発生する場合は切手でお返しします。

消費者契約法及び特定商取引法等に関するメモ書き

目次
第1 消費者契約法に関するメモ書き
第2 特定商取引法に関するメモ書き
1 訪問販売等におけるクーリング・オフ
2 通信販売に関する取扱い
3 特定商取引法の申出制度
4 その他
第3 割賦販売法に関するメモ書き
1 総論
2 令和3年4月1日施行の改正割賦販売法の概要
3 割賦販売法に関する最高裁判例
第4 個人情報保護法に関するメモ書き
1 総論
2 個人情報保護法の適用範囲の拡大
3 その他
第5 マイナンバー法に関するメモ書き
第6 関連記事その他

第1 消費者契約法に関するメモ書き
1 消費者契約法は平成13年4月1日に施行されました。
2 平成19年6月に開始した消費者団体訴訟制度は,平成20年の法改正により景表法及び特定商取引法を対象とするようになり,平成25年の法改正により食品表示法も対象とするようになりました。
3 平成28年,平成30年及び令和4年には,①取り消しうる不当な勧誘行為の追加,②無効となる不当な契約条項の追加等の民事ルールの改正が行われました。
4 消費者庁HPに「逐条解説(平成31年2月)」が載っています。
5 「消費者契約法に関する最高裁判例」も参照してください。

第2 特定商取引法に関するメモ書き
1 総論
・ 特定商取引法は,事業者による違法・悪質な勧誘行為等を防止し,消費者の利益を守ることを目的とする法律であり, 具体的には,訪問販売や通信販売等の消費者トラブルを生じやすい取引類型を対象に,事業者が守るべきルールと,クーリング・オフ等の消費者を守るルール等を定めています(特定商取引ガイドHP「特定商取引とは」参照)。 
2 訪問販売等におけるクーリング・オフ

(1) 訪問販売(キャッチセールス,アポイントメントセールス等を含む。),電話勧誘販売,特定継続的役務提供及び訪問購入の場合,申込み書面等の受領日から8日以内であればクーリング・オフができます。
(2) 連鎖販売取引及び業務提供誘引販売取引(内職商法,モニター商法等)の場合,申込み書面等の受領日から20日以内であればクーリング・オフができます。
(3) クレジット契約をしている場合にクーリングオフをするときは,販売会社及びクレジット会社の両方にクーリング・オフの通知をする必要があります(国民生活センターHPの「クーリング・オフ」参照)。
3 通信販売の取扱い
(1) 通信販売(例えば,ネットショッピング及びテレビショッピング)の場合,クーリング・オフはできないものの,返品に関する特約がない場合,商品を受け取った日を含めて8日以内であれば,消費者が送料を負担して返品することができます(特定商取引法15条の3)。
(2) Amazon.co.jp及びAmazonマーケットプレイスの大半の出品者は,原則として商品到着から30日以内の返品・交換に応じています(アマゾンHPの「返品・交換の条件」参照)。
4 特定商取引法の申出制度
・ 特定商取引法に規定される7つの取引類型(訪問販売・通信販売・電話勧誘販売・連鎖販売取引・特定継続的役務提供・業務提供誘引販売取引・訪問購入)において、取引の公正や消費者の利益が害されるおそれがある場合に、消費者庁長官若しくは経済産業局長又は都道府県知事にその内容を申し出て、事業者等に対して適切な措置を採るよう求めることができるものの,申出に対する見解,調査経過,調査結果等の問い合わせに答えてもらうことはできません(消費者庁HPの「特定商取引法の申出制度」参照)。
5 その他
・ 令和3年の特定商取引法改正では,通販の「詐欺的な定期購入商法」対策,送り付け商法対策,クーリング・オフの通知の電子化対応,事業者が交付すべき契約書面等の電子化対応などが定められました(KEIYAKU-WATCH HP「【2022年6月1日等施行】特定商取引法(特商法)
改正とは? 改正点を分かりやすく解説!」参照)。


第3 割賦販売法に関するメモ書き
1 総論

・ 割賦販売法は,「①割賦販売等に係る取引の公正の確保、②購入者等が受けることのある損害の防止及び③クレジットカード番号等の適切な管理等に必要な措置を講ずることにより、割賦販売等に係る取引の健全な発達を図るとともに、購入者等の利益を保護し、あわせて商品等の流通及び役務の提供を円滑にし、もつて国民経済の発展に寄与することを目的とする」法律です(割賦販売法1条1項)。
・ 経済産業省HPの「割賦販売法」には,過去の法令改正関係資料(主な改正は平成20年12月施行分,平成28年12月施行分及び令和3年4月1日施行分です。)等が載っています。
・ 経済産業省HPの「割賦販売法(後払信用)の概要」(令和3年6月の経済産業省商務・サービスグループ商取引監督課の文書)5頁に,昭和36年の制定から令和2年改正までの経緯が書いてあります。
2 令和3年4月1日施行の改正割賦販売法の概要
・ 令和3年4月1日施行の改正割賦販売法の概要は以下のとおりです(経済産業省HPの「割賦販売法の一部を改正する法律について(令和2年法律第64号)」(令和3年3月の経済産業省商務・サービスグループ商取引監督課の文書)参照)。
① 「認定包括信用購入あつせん業者」の創設
    従来の包括支払可能見込額調査に代わる与信審査手法によることを許容。
② 「登録少額包括信用購入あつせん業者」の創設極度額
    10万円以下の包括信用購入あつせん業を営む事業者の新たな登録制度による規制合理化。
③ クレジットカード番号等の適切管理の義務主体の拡充
    新たなクレジットカード番号等の保持主体を適切管理義務の主体に追加。
④ 書面交付の電子化利用者の事前の承諾を要することなく、電子による利用明細等の提供を行うことを許容等。
⑤ 業務停止命令の導入
3 割賦販売法に関する最高裁判例
・  最高裁平成13年11月22日判決は,預託金会員制ゴルフクラブに入会するために支払うべき預託金についてされた申込者とクレジット会社との間のクレジット契約においてゴルフ場の開場遅延が同契約に規定する支払拒絶の事由に該当しないとされた事例です。
・ 最高裁平成23年10月25日判決は,個品割賦購入あっせんにおいて,購入者と販売業者との間の売買契約が公序良俗に反し無効であることにより,購入者とあっせん業者との間の立替払契約が無効となる余地はないと判示した事例です。
・ 最高裁平成29年2月21日判決は, 個別信用購入あっせんにおいて,購入者が名義上の購入者となることを承諾してあっせん業者との間で立替払契約を締結した場合に,販売業者が上記購入者に対してした告知の内容が,割賦販売法35条の3の13第1項6号にいう「購入者の判断に影響を及ぼすこととなる重要なもの」に当たるとされた事例です。


第4 個人情報保護法に関するメモ書き
1 総論

・ 個人情報保護委員会HPの「個人情報保護法の過去・現在・未来」には昭和55年のOECDプライバシー8原則から平成27年の個人情報保護法改正までの経緯が載っています。
2 個人情報保護法の適用範囲の拡大
(1)ア 令和4年4月1日,個人情報保護法,行政機関個人情報保護法及び独立行政法人等個人情報保護法が個人情報保護法に一本化されました。
イ 令和5年4月1日,地方公共団体にも個人情報保護法が適用される予定です(神奈川県HPの「個人情報保護制度の見直しについて」参照)。
(2)ア 経済産業省HPに「個人情報保護法 令和2年改正及び令和3年改正案について」(令和3年5月7日付)が載っています。
イ BUSINESS LAWYERS「令和3年個人情報保護法改正とは?改正項目の全体像と施行スケジュールを解説(新旧対照表つき)」に,令和2年改正と令和3年改正による個人情報保護法の条番号の変更をまとめた一覧表が載っています。
3 その他
(1) 個人情報保護委員会HPに「マンガで学ぶ個人情報保護法」が載っています。
(2) 日本医事新報社HPの「Vol.3 閉院時のカルテの処分」には「カルテの【法定保存期間は5年】、しかし【損害賠償請求権は10年】を考慮した対応をお薦めします。また、保管場所・処分方法共に、個人情報保護の観点から細心の注意が求められます。」と書いてあります。

第5 マイナンバー法に関するメモ書き
1 マイナンバーは,住民票が日本にあるすべての住民に対して一人に一つずつ付与される12桁の個人番号です。
2 マイナンバーカードは,マイナンバーや個人情報が記載された顔写真付きのカードです。
3 個人番号通知書は,住民の一人ひとりにマイナンバーを通知するものであって,同通知書には「氏名」,「生年月日」,「マイナンバー」等が記載されています。
4 地方公共団体情報システム機構は,マイナンバーカード総合サイトを運営しています。


第6 関連記事その他
1 消費者契約法,特定商取引法及び景品表示法の所管省庁は消費者庁であり,割賦販売法の所管省庁は経済産業省であり,個人情報保護法の所管省庁は個人情報保護委員会であり,マイナンバー法の所管省庁は総務省です。
2 以下の記事も参照してください。
・ 個人事業主の税金,労働保険及び社会保険に関するメモ書き
・ 弁護士法人アディーレ法律事務所に対する懲戒処分(平成29年10月11日付)