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精神科病院退院者の環境調整の諸制度――退院後生活環境相談員,地域移行支援,居住支援法人及び費用負担(AI作成)

◯私自身は,精神科病院退院者の環境調整に関する業務を取り扱っていません。

第1 この記事が扱う範囲

1 検討の対象と時点

精神科病院に入院している人が退院するに当たって整えるべき事柄は,①退院後に住む場所の確保,②退院後の生活を支える福祉サービスの利用手続,③生活費及び医療費の確保,④金銭管理や契約の締結を支える仕組み,⑤退院後の見守りと緊急時の対応,の五つに分けることができる。実務ではこれらをまとめて「環境調整」と呼ぶことが多いが,これは法令上の用語ではなく,個々の作業がどの法律に基づき誰の義務又は給付として位置付けられているのかは,語そのものからは分からない。本記事は,この五つの作業について,精神保健福祉法,障害者総合支援法,住宅セーフティネット法,生活保護法及び生活困窮者自立支援法が,それぞれ誰に何を義務付け又は給付しているのかを,条文,行政通知及び公表資料に即して整理する。

作業の担い手を先に確定することには実益がある。日本弁護士連合会が公表した弁護士白書2025年版の特集2は,退院後の受入先などの環境調整は本来病院の責務であり,精神保健福祉法の平成25年改正及び令和4年改正でそのための規定が強化されたと述べている。もっとも,どの規定が誰に何を義務付けているかは,条番号を追わなければ見えてこない。本記事はAIを用いて作成し,一次資料への到達性を優先した。記載内容は,令和8年8月時点でe-Gov法令検索により確認した現行条文並びに厚生労働省,国土交通省,日本弁護士連合会及び日本司法支援センターが公表している通知及び資料に基づく。

2 隣接する論点との切り分け

入院そのものの可否,すなわち身元保証人等がいないことを理由とする入院拒否の問題は,別稿「身元保証人等がいない場合の入院拒否は医師法19条違反か」で扱っている。医療保護入院の同意主体となり得る後見人・保佐人が医療行為への同意にどこまで関与できるかという論点は,別稿「成年後見人の医療行為の同意」の対象である。本記事は,入院中の人が地域で生活を再開するために利用できる制度の側に限って整理する。脳血管疾患や頭部外傷による高次脳機能障害のある人については,同じ障害者総合支援法の給付を用いつつ,令和8年4月1日施行の高次脳機能障害者支援法に基づく支援センターが加わるので,高次脳機能障害者を支援するための諸制度を参照されたい。

3 使える制度の一覧

本記事で扱う制度を,退院に当たって整えるべき場面ごとに一覧にすると次のとおりである。同じ場面に複数の制度が並ぶことがあり,どれを使うかは本人の状態,資産及び地域の実施状況によって変わる。各制度の要件,義務の主体及び運用は第2以下で個別に述べる。

場面使える制度(担い手)根拠
退院後の住まいを確保する地域移行支援(指定一般相談支援事業者。市町村の地域相談支援給付決定を受ける)障害者総合支援法5条21項,51条の5第1項
退院後の見守りを受ける地域定着支援(常時の連絡体制と緊急時の対応)同法5条22項,51条の5第1項
共同生活の場に入る共同生活援助(グループホーム)同法5条18項
共同生活援助から一人暮らしへ移る自立生活援助(定期的な巡回訪問と随時の対応)同法5条17項
見学・体験利用をする,緊急に泊まる場所を確保する地域生活支援拠点等(市町村の努力義務事業。体験の機会の提供,緊急時の宿泊場所の一時的な提供)同法77条3項1号・2号,同条4項
低額の料金で住まいを借りる福祉ホーム同法77条5項
民間賃貸住宅に入居する住宅確保要配慮者居住支援法人(家賃債務保証,入居後の援助,死亡時の賃貸借契約の解除及び残置物の処理)住宅セーフティネット法59条,62条
見守り付きの賃貸住宅を探す居住サポート住宅(居住安定援助賃貸住宅の認定制度)同法40条
生活保護受給中の家賃の支払を確実にする家賃等の代理納付(実施機関が入居者に代わって賃貸人に支払う)同法53条
住まいを失うおそれがある生活困窮者居住支援事業,生活困窮者住居確保給付金生活困窮者自立支援法3条6項・3項
病院内で退院後の生活を相談する退院後生活環境相談員(管理者が入院後7日以内に選任する義務)精神保健福祉法29条の6,33条の4,同法施行規則15条の2,15条の3
地域の事業者を紹介してもらう地域援助事業者の紹介(本人又は家族等の求めが義務発生の要件)同法29条の7,33条の4
退院に向けて関係者が協議する医療保護入院者退院支援委員会(本人が希望すれば家族等及び地域援助事業者も出席)同法33条6項2号,同規則15条の11,15条の12
入院中に外部の人と交流する入院者訪問支援事業(都道府県の任意事業)同法35条の2
行政の相談窓口を使う都道府県等及び市町村の相談援助,精神保健福祉相談員,精神保健福祉センター同法6条,47条,48条
受入先の事業所が見付からない市町村によるあっせん,調整及び要請(事業者は要請にできる限り協力する義務)同法49条2項・4項
関係機関を一つの場に集める基幹相談支援センター,協議会(関係機関等に協力を求めることができる)障害者総合支援法77条の2,89条の3
日中の居場所を確保する地域活動支援センター(市町村の地域生活支援事業)同法77条1項9号
生活費を確保する生活保護(生活扶助は居宅において行うのが原則)生活保護法19条,30条
転居の初期費用を出してもらう住宅扶助の敷金等(特別基準額の3倍の範囲内。実施機関の指導に基づく退院であることが要件)同法14条,社発第246号第7の4(1)カ,社保第34号問30
退院後の通院医療費を軽くする自立支援医療障害者総合支援法5条25項
各種の減免を受ける精神障害者保健福祉手帳(2年ごとに認定を受ける)精神保健福祉法45条
金銭管理を支えてもらう日常生活自立支援事業(福祉サービス利用援助事業。実施は社会福祉協議会)社会福祉法2条3項12号,81条
後見等の費用が払えない,申し立てる親族がいない成年後見制度利用支援事業,市町村長による審判の請求障害者総合支援法77条1項4号,精神保健福祉法51条の11の2
退院請求等を弁護士に依頼する精神障害者に対する法律援助事業(日本弁護士連合会が法テラスに委託)法令上の根拠規定はなく,日弁連の事業として実施
福祉機関を通じて出張相談を受ける特定援助対象者法律相談援助(申込みは福祉機関の支援者から。資力を問わない)総合法律支援法30条1項3号

第2 精神科病院に課されている退院促進の措置

1 退院後生活環境相談員

精神保健福祉法29条の6は,措置入院者を入院させている精神科病院又は指定病院の管理者に対し,精神保健福祉士その他厚生労働省令で定める資格を有する者のうちから退院後生活環境相談員を選任し,措置入院者及びその家族等からの退院後の生活環境に関する相談に応じさせ,これらの者に対する必要な情報の提供,助言その他の援助を行わせなければならないと定める。同法33条の4は,この規定を医療保護入院者を入院させている精神科病院の管理者について準用する。省令で定める資格は,保健師,看護師,准看護師,作業療法士,社会福祉士又は公認心理師であって精神障害者に関する当該業務に従事した経験を有する者,及び,精神障害者等の退院後の生活環境に関する相談・指導の実務に3年以上従事した経験を有し,かつ,厚生労働大臣が定める研修を修了した者である(同法施行規則15条の2)。選任は,入院措置が採られた日から7日以内に行わなければならない(同規則15条の3)。

運用の細目は,厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部長通知「措置入院者及び医療保護入院者の退院促進に関する措置について」(令和5年11月27日障発1127第7号。令和8年3月26日障発0326第2号による一部改正後)が定めている。同通知は,配置の目安として相談員1人につき概ね50人以下の入院者を担当すること(常勤換算の目安)とし,入院者1人につき1人の相談員を入院後7日以内に選任した上で,選任された相談員の一覧を作成することを求めている。同通知が想定する相談員は,精神科病院内の多職種による支援チームの一員として,入院者が退院に向けた取組や入院に関することについて最初に相談することができる窓口である。

同通知は,選任された相談員が入院者及び家族等に対して速やかに説明すべき事項も列挙している。すなわち,①相談員に選任されたこと及びその役割,②退院に向けて相談に応じること,③地域援助事業者の趣旨及び本人・家族等が希望する場合には病院が地域援助事業者を紹介すること,④退院等の請求及び都道府県の虐待通報窓口等,⑤市町村長同意による医療保護入院者の場合には市町村担当者との面会が速やかに行われるようにするための説明及び連絡調整を行うこと,⑥医療保護入院者退院支援委員会について,その趣旨,本人が出席し又は出席せずに書面により意見を述べることができること,及び退院後の生活環境に関わる者に委員会への出席の要請を行うことができること,である。また,相談員の「退院調整に関する業務」として,入院者の希望を踏まえ,地域援助事業者等との連携により居住の場の確保等の退院後の環境に係る調整を行うとともに,地域生活の維持に必要な障害福祉サービス等の利用に向けて調整することが明記されている。居住の場の確保は,条文の文言では「退院後の生活環境に関する相談」に包摂されているが,通知の水準では相談員の業務として名指しされている。

2 地域援助事業者の紹介

精神保健福祉法29条の7は,措置入院者又はその家族等から求めがあった場合その他退院による地域における生活への移行を促進するために必要があると認められる場合に,管理者が地域援助事業者を紹介しなければならないと定める。紹介の対象となる地域援助事業者は,①一般相談支援事業又は特定相談支援事業を行う者,②障害者総合支援法77条1項3号又は3項各号に掲げる事業を行う者,③介護保険法上の居宅介護支援事業を行う者,④その他省令で定める者である。この規定も同法33条の4により医療保護入院者について準用され,さらに同法33条の5は,管理者に対し,必要に応じて地域援助事業者と連携を図りながら地域移行のための体制整備その他の措置を講じなければならないという一般的な義務を課している。

条文が「求めがあった場合」を義務発生の要件としている点は,制度の使い方を左右する。前記通知は,紹介の方法について,書面の交付に加えて面会(オンラインによるものを含む。)やインターネット情報を活用した紹介を工夫すべきこと,どの地域援助事業者を紹介するかについては必要に応じて退院先又はその候補となる市町村へ照会を行うこと,居住の場の確保や退院後の生活環境に係る調整に当たっては市町村等との協働により地域相談支援の利用に努めることを求めている。さらに,入院者から紹介の希望がない場合であっても,希望する地域生活について聴取し,障害福祉サービス等の利用について丁寧な説明を継続し,後に利用を希望した場合には速やかに紹介等ができるよう連絡調整に努めることとされている。

3 医療保護入院者退院支援委員会

医療保護入院の入院期間は法定されており,入院期間を更新するには,指定医の診察により引き続き医療保護入院の要件に該当することが確認されることに加えて,厚生労働省令で定める者により構成される委員会において当該医療保護入院者の退院による地域における生活への移行を促進するための措置について審議が行われたことが必要である(精神保健福祉法33条6項1号・2号)。省令で定める期間は,当該医療保護入院から6月を経過するまでの間は3月,6月を経過した後は6月である(同法施行規則15条の6)。委員会は,入院期間が経過する前に開催しなければならず,入院を継続する必要があると認めるときは,更新後の入院期間及び退院に向けた取組の方針を定めなければならない(同規則15条の11)。

委員会の構成は同規則15条の12が定める。必ず加わるのは,①当該医療保護入院者の主治医,②当該精神科病院に勤務する看護師又は准看護師,③当該医療保護入院者について選任された退院後生活環境相談員,④管理者から出席を求められたその他の病院職員である。これに対し,⑤当該医療保護入院者本人は,本人が構成員となることを希望するときに加わり,委員会に出席し,又は書面により意見を述べることができる。そして⑥家族等及び⑦地域援助事業者その他の当該医療保護入院者の退院後の生活環境に関わる者は,本人がこれらの者を構成員とすることを希望するときに,病院が書面で通知し,通知を受けた者が希望する場合に加わる。前記通知は,⑥⑦への通知に「文書による意見提出も可能であること」を記載すべきこととし,本人の了解が得られる場合にはオンライン会議等による出席も可能としている。

開催時期は,入院期間の更新に際して可能な限り入院期間満了日に近い日の病状を踏まえて審議することが求められることから,入院期間満了日の1月前から当日までの間とされている。審議結果は別添様式2「医療保護入院者退院支援委員会審議記録」により作成し,審議終了後できる限り速やかに本人及び出席した⑥⑦に対して写しにより通知するものとされ,入院期間の更新の際には当該審議記録を更新届に添付して提出することとされている。審議の結果,退院後の地域生活への移行の調整に課題があることが明らかとなった場合には,相談員が速やかに市町村又は地域援助事業者に連絡し,障害福祉サービス等との連携について検討・調整を行うこととされている。委員会は,更新の可否を判断する場であると同時に,退院後の生活環境を調整するための会議として設計されている。

4 入院者訪問支援事業

精神保健福祉法35条の2は,都道府県が,精神科病院に入院している者のうち市町村長同意による医療保護入院者その他の外部との交流を促進するための支援を要するものとして省令で定める者に対し,都道府県知事の研修を修了した者から選任された入院者訪問支援員が,その者の求めに応じ,訪問により,その者の話を誠実かつ熱心に聞くほか,入院中の生活に関する相談,必要な情報の提供その他の支援を行う事業を行うことができると定める。訪問支援員は,支援を受ける者が個人の尊厳を保持し自立した生活を営むことができるよう,常にその者の立場に立って誠実に職務を行わなければならず,従事者には守秘義務が課される。都道府県の任意事業であるため実施状況には地域差があるが,前記通知は,都道府県が実施している場合には,市町村長同意による医療保護入院者を中心に当該事業を紹介した上で,その利用に係る希望の有無を確認することを求めている。

第3 都道府県及び市町村が負う相談援助と調整

1 相談援助の義務と精神保健福祉センター

精神保健福祉法47条1項は,都道府県,保健所を設置する市又は特別区に対し,必要に応じて精神保健福祉相談員その他の職員又は知事等が指定した医師をして,精神障害者及びその家族等その他の関係者からの相談に応じさせ,必要な情報の提供,助言その他の援助を行わせなければならないと定める。同条2項は医療を必要とする精神障害者に対する適切な医療施設の紹介義務を,同条3項は市町村について同種の相談援助義務を定め,同条6項は,市町村,精神保健福祉センター及び保健所が,相互に,及び福祉事務所その他の関係行政機関と密接な連携を図るよう努めなければならないとする。精神保健福祉相談員は,精神保健福祉士その他政令で定める資格を有する者のうちから知事又は市町村長が任命する(同法48条)。精神保健福祉センターは,複雑又は困難な相談援助を行うほか,精神医療審査会の事務,精神障害者保健福祉手帳の交付申請に対する決定及び自立支援医療の支給認定に関する専門的事務,市町村が支給の要否決定を行うに当たっての意見具申を担う(同法6条2項)。

これらの相談援助は,精神障害の有無及び程度にかかわらず,地域の実情に応じて,精神障害者等の心身の状態に応じた保健,医療,福祉,住まい,就労その他の適切な支援が包括的に確保されることを旨として行われなければならない(同法46条)。「住まい」が条文上の目的に含まれていることは,住居の確保が精神保健行政の外にある問題ではないことを示している。

2 障害福祉サービスの利用のあっせん,調整及び要請

受入先となる事業所が見付からないという場面で正面から機能し得るのが,精神保健福祉法49条である。同条1項は,市町村が,精神障害者から求めがあったときは,希望,精神障害の状態,必要な訓練その他の援助の内容等を勘案し,最も適切な障害福祉サービス事業の利用ができるよう相談に応じ,必要な助言を行うものとし,この事務を一般相談支援事業又は特定相談支援事業を行う者に委託することができるとする。同条2項は,助言を受けた精神障害者から求めがあった場合には,市町村が必要に応じて障害福祉サービス事業の利用についてあっせん又は調整を行うとともに,必要に応じて障害福祉サービス事業を行う者に対し当該精神障害者の利用についての要請を行うものとすると定める。そして同条4項は,障害福祉サービス事業を行う者は,この要請に対しできる限り協力しなければならないと定めている。

同条3項は,都道府県が,市町村の行うあっせん,調整及び要請に関し,保健所による技術的協力その他の必要な援助及び市町村相互間の連絡調整を行うとする。あっせん・調整・要請はいずれも本人からの求めを契機とする構造であるから,制度を動かす最初の一手は,本人の名で市町村に求めることになる。

第4 障害者総合支援法による地域移行の給付

1 地域移行支援及び地域定着支援

住居の確保は,障害者総合支援法上の給付として明文で位置付けられている。同法5条21項は,地域移行支援の対象に,障害者支援施設等に入所している障害者と並べて,精神科病院(精神病室が設けられている精神科病院以外の病院を含む。)に入院している精神障害者を掲げた上で,供与すべき便宜を「住居の確保その他の地域における生活に移行するための活動に関する相談」その他の主務省令で定める便宜と定めている。精神科病院の入院者が対象として名指しされ,便宜の筆頭に住居の確保が置かれているため,受入先を探す作業は,制度上,指定一般相談支援事業者による給付として組み立てられていることになる。退院後の見守りは,同条22項の地域定着支援が担い,居宅において単身その他の状況で生活する障害者につき常時の連絡体制を確保し,障害の特性に起因して生じた緊急の事態その他の場合に相談その他の便宜を供与するものとされている。

地域移行支援と地域定着支援は併せて地域相談支援と呼ばれ,この両方と基本相談支援を行う事業が一般相談支援事業である(同条19項)。地域相談支援給付費等の支給を受けようとする障害者は,市町村の地域相談支援給付決定を受けなければならない(同法51条の5第1項)。したがって,この給付を動かす手続上の起点は,市町村に対する申請である。

2 共同生活援助,自立生活援助及び体験の機会

共同生活援助(グループホーム)は同法5条18項に定義があり,主として夜間において共同生活を営むべき住居で相談,入浴,排せつ又は食事の介護その他の日常生活上の援助を行い,これに併せて居宅における自立した日常生活への移行を希望する入居者について移行及び移行後の定着に関する相談その他の援助を行うものである。同条17項の自立生活援助は,施設入所支援又は共同生活援助を受けていた障害者等が居宅で自立した日常生活を営む上での問題につき,定期的な巡回訪問又は随時の通報により相談に応じ,情報の提供及び助言その他の援助を行うものであり,共同生活援助の次の段階に位置する。

受入先となる事業所は,見学や体験の機会を経ずに受入れを決めにくい。この点について,同法77条3項は,市町村が,地域において生活する障害者等及び地域における生活に移行することを希望する障害者等につき,同項2号の事業として,関係機関と協力して障害福祉サービスの利用の体験又は居宅における自立した日常生活若しくは社会生活の体験の機会を提供するとともに,これに伴う相談に応じ,情報の提供及び助言を行い,併せて関係機関との連携及び調整を行う事業を行うよう努めるものとする。同項1号は,障害の特性に起因して生じる緊急の事態等に対処し又は備えるための相談,体制の確保,関係機関との連携及び調整に加えて,当該事態が生じたときにおける宿泊場所の一時的な提供その他の必要な支援を行う事業を掲げる。市町村は,これらの事業を実施する場合には,効果的に実施するために地域生活支援拠点等を整備するものとされている(同条4項)。さらに同条5項は,現に住居を求めている障害者につき低額な料金で福祉ホームその他の施設の居室その他の設備を利用させ,日常生活に必要な便宜を供与する事業を掲げる。体験入居も緊急時の一時的な宿泊も,制度の外で工面すべきものとはされていない。

3 相談支援事業者,基幹相談支援センター及び協議会

サービス等利用計画の作成は,基本相談支援と計画相談支援を行う特定相談支援事業者が担う(同法5条19項・23項)。市町村は,地域生活支援事業として,障害者等が障害福祉サービスその他のサービスを利用しつつ自立した日常生活又は社会生活を営むことができるよう,地域の障害者等の福祉に関する各般の問題につき相談に応じ,必要な情報の提供及び助言その他の便宜を供与するとともに,虐待の防止及びその早期発見のための関係機関との連絡調整その他の権利擁護のために必要な援助を行う事業を行う(同法77条1項3号)。

基幹相談支援センターは,地域における相談支援の中核的な役割を担う機関と位置付けられ,市町村は設置するよう努めるものとされている(同法77条の2第2項)。その業務には,同法77条1項3号・4号の事業のほか,精神保健福祉法49条1項に規定する業務,すなわち前記の障害福祉サービス事業の利用に関する相談・助言の業務が含まれる(同法77条の2第1項2号)。地方公共団体は,関係機関,関係団体,障害者等及びその家族並びに関係職種の従事者等により構成される協議会を置くように努めなければならず,協議会は,必要があると認めるときは関係機関等に対し資料又は情報の提供,意見の表明その他必要な協力を求めることができ,関係機関等はこれに協力するよう努めるものとされている(同法89条の3)。個別の事案で関係機関を一つのテーブルに乗せるための法的な足場は,ここにある。

4 地域活動支援センター及び成年後見制度利用支援事業

退院後の日中の居場所については,市町村の地域生活支援事業として,障害者等につき地域活動支援センターその他の主務省令で定める施設に通わせ,創作的活動又は生産活動の機会の提供,社会との交流の促進その他の便宜を供与する事業が定められている(同法77条1項9号)。この事業は市町村の必須事業であり,都道府県は,市町村の地域生活支援事業の実施体制の整備の状況その他の地域の実情を勘案して,関係市町村の意見を聴いて,当該市町村に代わって事業の一部を行うことができるにとどまる(同条2項)。

成年後見制度の利用に費用の壁がある場合については,市町村の地域生活支援事業として,障害福祉サービスの利用の観点から成年後見制度を利用することが有用と認められる障害者で,費用について補助を受けなければ利用が困難と認められるものに対し,主務省令で定める費用を支給する事業が定められている(同法77条1項4号)。同項5号は,後見,保佐及び補助の業務を適正に行うことができる人材の育成及び活用を図るための研修を行う事業を定める。申立てを行う親族がいない場合には,市町村長が,精神障害者につきその福祉を図るため特に必要があると認めるときに,後見開始その他の審判を請求することができる(精神保健福祉法51条の11の2)。令和8年の成年後見制度改正が関係法律に及ぼす影響については,別稿「令和8年成年後見制度改正と関係法律61本の整備」で整理している。

第5 住まいの確保に関する制度

1 住宅確保要配慮者居住支援法人

障害者は,住宅セーフティネット法2条1項4号により住宅確保要配慮者として明記されている。同法59条1項は,都道府県知事が,特定非営利活動法人,一般社団法人若しくは一般財団法人その他の営利を目的としない法人又は住宅確保要配慮者の居住の支援を行うことを目的とする会社を,住宅確保要配慮者居住支援法人として指定することができると定める。支援法人の業務は同法62条に列挙されており,①登録事業者からの要請に基づく登録住宅入居者の家賃債務の保証,②住宅確保要配慮者に対する賃貸住宅への円滑な入居の促進に関する情報の提供,相談その他の援助,③賃貸住宅に入居する住宅確保要配慮者に対する生活の安定及び向上に関する情報の提供,相談その他の援助,④賃貸住宅の賃貸人に対する情報の提供,⑤賃借人である住宅確保要配慮者からの委託に基づく,当該住宅確保要配慮者が死亡した場合における賃貸借契約の解除並びに居住していた住宅及びその敷地内に存する動産の保管,処分その他の処理,⑥これらに附帯する業務である。

家賃債務の保証と死亡時の残置物処理という二つの業務が法定されている点は,単身の入居希望者について賃貸人が引受けをためらう典型的な理由に対応している。残置物処理をめぐる一般的な問題については,別稿「遺品整理業者の許可・選び方―相続放棄・残置物処理」でも触れている。

2 居住サポート住宅と生活保護の代理納付

住宅セーフティネット法等の一部を改正する法律(令和6年法律第43号)は令和6年6月5日に公布され,令和7年10月1日に施行された。これにより,居住安定援助賃貸住宅事業,すなわち賃貸住宅に日常生活を営むのに援助を必要とする住宅確保要配慮者を入居させ,訪問その他の方法によりその心身及び生活の状況を把握し,その状況に応じた利用可能な福祉サービスに関する情報の提供及び助言その他生活の安定を図るために必要な援助を行う事業について,計画の認定制度が設けられた(同法40条)。認定を行うのは,市の区域については当該市の長,社会福祉法に規定する福祉事務所を設ける町村の区域については当該町村長,その他の区域については当該区域を管轄する都道府県知事である。国土交通省はこの認定を受けた住宅を「居住サポート住宅」と呼び,情報提供システムで検索できるようにしている。

生活保護を受給しながら入居する場合については,同法53条が生活保護法の特例を定める。居住支援協議会の構成員であること等の要件に該当する認定事業者は,被保護認定住宅入居者の居住の安定の確保を図るために必要があると認めるときは,保護の実施機関に対し,住宅を賃借して居住することに伴い通常必要とされる費用に相当する金銭について,入居者に代わって認定賃貸人に支払うことを希望する旨を通知することができ,通知を受けた実施機関は,口座振替納付が行われている場合等を除き,家賃等の額に相当する金銭を入居者に代わって認定賃貸人に支払うものとされる。また同法21条は,登録事業者が,被保護入居者が家賃の請求に応じないことその他の事情があるときに保護の実施機関へ通知することができ,通知を受けた実施機関が速やかに状況把握等の措置を講ずるものとする仕組みを定めている。

3 居住支援協議会及び生活困窮者自立支援法の居住支援事業

住宅セーフティネット法81条は,地方公共団体が,単独で又は共同して,支援法人,宅地建物取引業者,賃貸住宅を管理する事業を行う者その他の住宅確保要配慮者の民間賃貸住宅への円滑な入居の促進に資する活動を行う者及び社会福祉協議会その他の住宅確保要配慮者の福祉に関する活動を行う者により構成される住宅確保要配慮者居住支援協議会を置くように努めなければならないと定める。協議会は,情報の提供,相談に応じて適切に対応するための体制の整備,住宅施策と福祉施策との連携の推進その他必要な措置について協議を行うものとされ,協議が調った事項については構成員がその結果を尊重しなければならない(同条3項)。

住居を確保するまでの間の受け皿としては,生活困窮者自立支援法の制度がある。同法3条6項の生活困窮者居住支援事業は,①一定の住居を持たない生活困窮者に対し,一定期間,宿泊場所の供与,食事の提供その他必要な便宜を供与する事業と,②同事業を利用していた者や,現在の住居を失うおそれのある者又は地域社会から孤立している者に対し,訪問により情報の提供及び助言その他現在の住居において日常生活を営むのに必要な便宜を供与する事業とから成る。同条3項の生活困窮者住居確保給付金は,離職等又は収入の著しい減少により住宅を失い又は家賃の支払が困難となった者に支給される。同条2項の生活困窮者自立相談支援事業は,就労及び居住の支援その他の自立に関する問題につき相談に応じ,必要な情報の提供及び助言をし,関係機関との連絡調整を行う事業と定義されており,居住が明文で対象に入っている。

第6 生活費,医療費及び金銭管理に関する制度

1 生活保護の実施機関と居宅保護の原則

生活保護の実施機関は,原則として,その管理に属する福祉事務所の所管区域内に居住地を有する要保護者について,都道府県知事,市長及び福祉事務所を管理する町村長である(生活保護法19条1項1号)。居住地がないか又は明らかでない要保護者については,現在地を有する区域の実施機関が行う(同項2号)。同条3項は,同法30条1項ただし書により救護施設等に入所させ又は入所を委託した場合には,当該入所又は委託の継続中,保護を行うべき者は入所又は委託前の居住地又は現在地によって定めるとする。入院や転居によって実施機関が動くことがあるため,どの福祉事務所が実施機関となるかを最初に確定することが手続の前提となる。

同法30条1項本文は,生活扶助は被保護者の居宅において行うものとすると定め,同条2項は,同項ただし書の規定が被保護者の意に反して入所又は養護を強制することができるものと解釈してはならないと定める。居宅で生活することが原則である旨が条文上明示されている。なお,保護の開始は,要保護者,その扶養義務者又はその他の同居の親族の申請に基づいて行われるのが原則であり,要保護者が急迫した状況にあるときは申請がなくても必要な保護を行うことができる(同法7条)。契約によらない福祉サービスの提供という別系統の仕組みについては,別稿「老人福祉法の「やむを得ない事由による措置」」で扱っている。

2 転居に伴う敷金等

住宅扶助は,住居及び補修その他住宅の維持のために必要なものの範囲内で行われる(生活保護法14条)。転居に伴う敷金等については,「生活保護法による保護の実施要領について」(昭和38年4月1日社発第246号厚生省社会局長通知)第7の4の(1)のカが,被保護者が転居に際し敷金等を必要とする場合で,同(1)のオに定める特別基準額以内の家賃又は間代を必要とする住居に転居するときは,特別基準額に3を乗じて得た額の範囲内において特別基準の設定があったものとして必要な額を認定して差し支えないとしている。

どのような場合が「転居に際し,敷金等を必要とする場合」に当たるかは,「生活保護法による保護の実施要領の取扱いについて」(昭和38年4月1日社保第34号厚生省社会局保護課長通知)の問30が18の類型を挙げて具体化している。退院との関係で直接に問題となるのは,その第1類型である「入院患者が実施機関の指導に基づいて退院するに際し帰住する住居がない場合」である。実施機関の指導に基づくことが要件とされているため,福祉事務所が退院に向けた指導を行っているかどうかが分かれ目になる。このほか,第6類型として宿所提供施設,無料低額宿泊所等の利用者が居宅生活に移行する場合が,第17類型として被保護者の状態等を考慮の上,グループホームや有料老人ホーム等,社会福祉各法に規定されている施設及びサービス付き高齢者向け住宅に入居する場合であってやむを得ない場合が挙げられている。

敷金等の内訳と,旧居の敷金が戻る場合の扱いについても同通知に定めがある。問35は,権利金,礼金,不動産手数料,火災保険料及び保証料についても,必要やむを得ない場合は転居に際し必要なものとして認定して差し支えないとする。問31は,転居により敷金が返還される場合,当該返還金は原則として収入として認定すべきものであるが,実施機関の指導又は指示により転居した場合には,これを新たな敷金等に充てさせて差し支えないとしている。転居費用の可否も金額も,実施機関の指導又は指示があるかどうかによって取扱いが変わる仕組みになっている。

3 自立支援医療,精神障害者保健福祉手帳及び日常生活自立支援事業

退院後の通院医療費については,障害者総合支援法5条25項の自立支援医療がある。精神障害者保健福祉手帳は,精神障害者が居住地(居住地を有しないときは現在地)の都道府県知事に交付を申請することができ,知事は政令で定める精神障害の状態にあると認めたときに交付しなければならず,交付を受けた者は2年ごとに同状態にあることについて知事の認定を受けなければならない(精神保健福祉法45条)。手帳の交付申請に対する決定及び自立支援医療の支給認定に関する専門的な事務は,精神保健福祉センターが担う(同法6条2項4号)。

金銭管理については,成年後見制度に至る前の段階の仕組みとして,社会福祉法2条3項12号の福祉サービス利用援助事業がある。これは,精神上の理由により日常生活を営むのに支障がある者に対して,無料又は低額な料金で,福祉サービスの利用に関し相談に応じ,及び助言を行い,並びに福祉サービスの提供を受けるために必要な手続又は福祉サービスの利用に要する費用の支払に関する便宜を供与することその他の福祉サービスの適切な利用のための一連の援助を一体的に行う事業をいい,実務上は日常生活自立支援事業の名称で運営されている。都道府県社会福祉協議会は,市町村社会福祉協議会その他の者と協力して,都道府県の区域内においてあまねく同事業が実施されるために必要な事業を行う(同法81条)。同事業の適正な運営の確保及び福祉サービスに関する苦情の解決のため,都道府県社会福祉協議会に運営適正化委員会が置かれる(同法83条)。

第7 弁護士の費用に関する制度

1 精神障害者に対する法律援助事業

日本弁護士連合会は,法律援助事業を日本司法支援センター(法テラス)に委託して実施しており,その一つが精神障害者・心神喪失者等医療観察法法律援助である。日弁連の説明によれば,これは精神障がい等のために入院している人が処遇改善や退院請求を求めて弁護士に相談する費用や,これらの人の代理人として活動する弁護士に対し,依頼者に代わって弁護士費用を支払う制度であり,経済的に余裕がなく弁護士に依頼する必要性・相当性がある場合に,原則として交付の形で行われる。援助後に資力が回復した場合や金銭的利益を得た場合には負担が生じ得る。

弁護士白書2025年版の特集は,この事業の財源が日弁連の会員から徴収した特別会費であること,及び具体的な支払基準を示している。それによれば,審査請求代理人活動については,費用相当分5,000円と報酬110,000円(税込み)の合計115,000円が着手時に支払われ,事件終了時に45,000円を上限とする追加費用が支払われる。受任に至らなかった出張法律相談については,30分までが5,500円,30分を超えた場合は11,000円の日当,及び出張場所までの公共交通機関による所要時間が片道30分以上の場合には所要時間に応じて5,500円から22,000円の交通費が支払われる。同特集は,こうした支払基準に対して各地の弁護士会が独自報酬又は上乗せ報酬を支払っている例が少なくないこと,及び,法テラスの民事法律扶助の出張法律相談制度が行政手続の相談にも利用できる運用に変更された結果,出張法律相談についてこちらを利用する弁護士会が出てきていることにも触れている。

2 特定援助対象者法律相談援助

総合法律支援法30条1項3号は,法テラスの業務として,特定援助対象者であって,近隣に居住する親族がいないことその他の理由により,弁護士,弁護士法人,弁護士・外国法事務弁護士共同法人又は隣接法律専門職者のサービスの提供を自発的に求めることが期待できないものを援助するため,自立した日常生活及び社会生活を営むに当たり必要な法律相談を実施することを掲げる。法テラスは,特定援助対象者を,認知機能が十分でないために自己の権利の実現が妨げられているおそれがある国民等であると説明している。

この援助の特徴は,申込みの経路と資力要件にある。法テラスの説明によれば,申込みは本人や親族からではなく,地域包括支援センターや社会福祉協議会などの関係機関の支援者から行うこととされ,本人の資力にかかわらず利用することができる(一定の基準を超える収入・預貯金がある場合には相談料1件税込み5,500円の負担が生じる。)。相談は自宅や福祉施設等に弁護士等が出向いて行われ,面談が難しい場合にはオンライン等の方法によることができるとされている。同法30条1項11号は,法テラスの業務として,高齢者又は障害者の援助を行う団体その他の関係する者の間における連携の確保及び強化を図ることも掲げている。

第8 環境調整が進まない場合の手続と時期の制約

1 退院等の請求と精神医療審査会の参考意見

精神科病院に入院中の者又はその家族等は,厚生労働省令で定めるところにより,都道府県知事に対し,その者を退院させ,又は精神科病院の管理者に対しその者を退院させることを命じ,若しくはその者の処遇の改善のために必要な措置を採ることを命じることを求めることができる(精神保健福祉法38条の4)。家族等がない場合又は家族等の全員がその意思を表示することができない場合等には,居住地を管轄する市町村長が請求権者となる。知事は請求の内容を精神医療審査会に通知し,入院の必要があるかどうか又は処遇が適当であるかどうかについて審査を求めなければならず,審査会は,請求をした者及び入院先の精神科病院の管理者の意見を聴かなければならない(同法38条の5第1項から第3項まで)。請求先は都道府県知事であるが,同法51条の12第1項は,同法の規定中都道府県が処理することとされている事務で政令で定めるものについて,指定都市においては指定都市が処理するものとしている。このため受付窓口は指定都市の区域とそれ以外とで分かれ,たとえば大阪府が案内している受付窓口は,大阪市及び堺市を除く府内の精神科病院に入院している人を対象としている。

環境調整との関係で意味を持つのは,厚生省大臣官房障害保健福祉部長通知「精神保健及び精神障害者福祉に関する法律第12条に規定する精神医療審査会について」(平成12年3月28日障第209号)が別添として定める精神医療審査会運営マニュアルの運用である。同マニュアルは,退院の請求に係る審査結果の類型として,引き続き現在の入院形態での入院が適当と認められること,他の入院形態への移行が適当と認められること,合議体が定める期間内に他の入院形態へ移行することが適当と認められること,入院の継続は適当でないこと,及び,退院の請求を認めない場合であっても処遇に関し適当でない事項があるときはその処遇内容が適当でないこと,を挙げた上で,審査会が,別途,都道府県知事,入院先の精神科病院の管理者及び治療を担当する指定医に対する参考意見を述べることができるとしている。さらに,退院の請求がなされた場合において,審査の結果,当該患者の処遇,社会復帰への指導方法その他適切な医療の提供のために合議体が必要と認める措置があるときは,その旨を知事に通知するものとされている。退院の請求そのものが認められない場合であっても,退院後の生活環境の調整に関する意見が示される余地は,制度上残されている。同マニュアルは,退院等の請求が適当との判断がされた場合には,知事がおおむね1か月以内に病院管理者が採った措置を確認し,審査会に報告することとしている。

2 入院期間の更新と委員会の開催時期

医療保護入院の入院期間を更新するときは,管理者は,当該入院に係る同意をした家族等に対し,①当該医療保護入院者が引き続き医療保護入院の要件に該当する旨及びその理由,②退院支援委員会の審議が行われたこと,③更新後の入院期間,④みなし同意によることとする場合はその旨及び基準日の日付を通知しなければならない(精神保健福祉法施行規則15条の10第1項)。この通知は,やむを得ない場合を除き,入院期間満了日の1月前から2週間前までの間に行うものとされている(同条3項)。同法33条8項によるみなし同意の基準日は,入院期間満了日前であって,同通知を発した日から2週間を経過した日である(同規則15条の14)。

3 時期に関する制約の整理

以上のうち,時期が定められているものを整理すると,①退院後生活環境相談員の選任は入院措置が採られた日から7日以内,②医療保護入院の入院期間は入院から6月を経過するまでは3月,6月を経過した後は6月,③医療保護入院者退院支援委員会の開催は入院期間満了日の1月前から当日までの間,④家族等に対する更新の同意に関する通知は原則として入院期間満了日の1月前から2週間前までの間,⑤みなし同意の基準日は当該通知を発した日から2週間を経過した日,⑥精神障害者保健福祉手帳の認定は2年ごと,となる。医療保護入院については入院期間の更新のたびに委員会の審議が必要となるため,退院後の生活環境について関係者を集めて協議する機会は,制度上,3月又は6月ごとに巡ってくることになる。

出典

1 法令

精神保健及び精神障害者福祉に関する法律(昭和25年法律第123号)6条・29条の6・29条の7・33条・33条の4・33条の5・35条の2・38条の4・38条の5・45条・46条・47条・48条・49条・51条の11の2・51条の12(e-Gov法令検索)

精神保健及び精神障害者福祉に関する法律施行規則(昭和25年厚生省令第31号)15条の2・15条の3・15条の6・15条の10・15条の11・15条の12・15条の14(e-Gov法令検索)

障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律(平成17年法律第123号)5条17項・18項・19項・21項・22項・23項・25項,51条の5,77条,77条の2,89条の3(e-Gov法令検索)

住宅確保要配慮者に対する賃貸住宅の供給の促進に関する法律(平成19年法律第112号)2条・21条・40条・53条・59条・62条・81条(e-Gov法令検索)

生活保護法(昭和25年法律第144号)7条・14条・19条・30条(e-Gov法令検索)

生活困窮者自立支援法(平成25年法律第105号)3条(e-Gov法令検索)

社会福祉法(昭和26年法律第45号)2条3項12号・81条・83条(e-Gov法令検索)

総合法律支援法(平成16年法律第74号)30条1項3号・11号(e-Gov法令検索)

2 行政通知

①厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部長「措置入院者及び医療保護入院者の退院促進に関する措置について」(障発1127第7号,令和5年11月27日。障発0326第2号,令和8年3月26日一部改正)

②厚生省大臣官房障害保健福祉部長「精神保健及び精神障害者福祉に関する法律第12条に規定する精神医療審査会について」(障第209号,平成12年3月28日)別添「精神医療審査会運営マニュアル」(厚生労働省法令等データベースサービス)

③厚生省社会局長「生活保護法による保護の実施要領について」(社発第246号,昭和38年4月1日)第7の4(厚生労働省法令等データベースサービス)

④厚生省社会局保護課長「生活保護法による保護の実施要領の取扱いについて」(社保第34号,昭和38年4月1日)問30・問31・問35(厚生労働省法令等データベースサービス)

3 公的資料

①日本弁護士連合会「弁護士白書2025年版」特集2「精神保健当番弁護士制度(精神保健出張相談制度)~その意義と全国普及までの歩み~」28頁~29頁・33頁(日本弁護士連合会)

日本弁護士連合会「法律援助事業のご案内」(日本弁護士連合会)

日本司法支援センター「特定援助対象者援助事業について」(法テラス)

④国土交通省「住宅セーフティネット法等の一部を改正する法律について」(国土交通省住宅局)

大阪府「精神保健福祉法第38条の4による退院等の請求」(大阪府こころの健康総合センター)