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国際刑事裁判所(ICC)関係者に対する米国制裁とテロリスト制裁の徹底比較(AI作成)

第1 比較の対象と結論

1 「テロリスト制裁」は一つの制度ではない

本記事は,2026年8月21日時点で確認できる米国の法令,大統領令,OFAC規則及び裁判資料に基づき,国際刑事裁判所(ICC)関係者に対する米国制裁と,国外のテロ関係者に対する米国制裁を比較するものである。比較の中心は,ICC制裁を定める大統領令14203号及び31 C.F.R. Part 528と,Specially Designated Global Terrorist(SDGT)制裁を定める大統領令13224号及び31 C.F.R. Part 594である。

もっとも,「テロリスト制裁」という一語の中には,①SDGTに対するOFACの全面的資産凍結,②移民国籍法219条によるForeign Terrorist Organization(FTO)の指定,③FTOに対する物的支援罪,④テロ関係の入国不許可,⑤テロ被害者による民事請求及び凍結資産への執行が含まれ得る。これらを一つの制度としてICC制裁と比べると,共通点と相違点を取り違える。

2 資産凍結の仕組みはSDGT制裁とほぼ同型である

ICC関係者に対する米国制裁は,その者をテロリストに指定する制度ではない。SDNリスト上でも,ICC指定者のプログラム・タグは「[ICC-EO14203]」,SDGT指定者のタグは「[SDGT]」であり,指定理由は異なる。

他方,米国内又は米国人の占有・支配下にある財産及び財産上の権利を凍結し,移転,支払,輸出,引出しその他の取引を禁止し,指定者との資金,物品及びサービスの授受を原則として禁止する仕組みは,ICC指定とSDGT指定とでほぼ同型である。指定者が単独又は合算で50%以上を所有する法人を,SDNリストへの個別掲載がなくても凍結する点も共通する。

したがって,国外に住む指定者が,銀行口座,カード,保険,クラウド,オンライン通販,宿泊,交通その他の日常サービスから切断され得るという実際上の不利益は近い。これに対し,FTOに対する物的支援罪,広範なテロ関係入国不許可,テロ被害者による三倍賠償及び一定の凍結資産への執行は,ICC指定には原則として伴わない。

3 既存記事との役割分担

本記事は制度間の比較に対象を絞る。ICC制裁の対象者,成立経緯,ICCの管轄権,国際法上の争点及び関連する連邦訴訟の全体像は,国際刑事裁判所(ICC)関係者に対する米国制裁の総論で整理している。

また,カード停止,送金拒否,健康保険,住宅,仕事及びデジタルサービスへの具体的な影響は,米国のICC関係制裁による生活・事業上の不利益で詳しく説明している。

第2 比較する四つの法制度

1 ICC関係者制裁

大統領令14203号1条は,米国又は一定の同盟国の保護対象者について,ICCによる捜査,逮捕,拘禁又は訴追に直接関与した外国人,その活動又は指定者に物質的支援,物品若しくはサービスを提供した外国人,及び指定者に所有・支配され又はそのために行動した外国人を指定できるものとする。指定された者の財産は,米国内にある場合,米国内に入った場合又は米国人の占有・支配下に入った場合に凍結される。

同令3条は,指定者に対する,又は指定者の利益のための資金,物品若しくはサービスの提供と,指定者からの受領を禁止する。Part 528は,この大統領令の禁止を実施し,財産,米国人,米国金融機関,50%所有法人及び一般許可の範囲を定める。

2 SDGT制裁

大統領令13224号は,テロ行為を行い,行おうとし若しくは行う重大な危険がある外国人,テロ訓練に参加した外国人のほか,指定者を所有・支配する者,指定者のために行動する者,テロ行為又は指定者へ物質的支援等を提供する者などを指定対象とする。2019年の大統領令13886号が指定基準を改め,現在のPart 594に反映されている。

Part 594 §§594.201,594.204は,米国内又は米国人の占有・支配下にある指定者の財産を凍結し,米国人による指定者との財産取引及び資金,物品若しくはサービスの授受を原則として禁止する。この部分がICC制裁との最も直接的な比較対象である。

3 FTO指定

8 U.S.C. §1189によるFTO指定は,個人ではなく外国の組織だけを対象とする。国務長官は,①外国組織であること,②テロ活動若しくはテロリズムを行い,又はその能力及び意思を保持していること,③その活動が米国民又は米国の国家安全保障を脅かすことを認定して指定する。

FTO指定それ自体の財産上の効果は,31 C.F.R. Part 597 §597.201により,米国金融機関がFTO又はその代理人の資金を保有・管理していることを認識した場合に,その資金を保持・管理し,財務長官へ報告するというものである。あらゆる米国人に対する全面的な財産取引禁止は,Part 597だけから当然に生じるものではない。同じ組織がSDGTにも指定されていれば,Part 594の全面的資産凍結が重なる。

4 物的支援罪,入国不許可及び民事責任

18 U.S.C. §2339Bは,FTOであること又はその組織がテロ活動等を行うことを知りながら,物的支援若しくは資源を提供し,又はその未遂若しくは共謀をすることを犯罪とする。SDGTに指定されただけの個人又は団体は,それだけでは同条のFTOにはならない。ただし,特定のテロ犯罪に使用されることを知り,又は意図して支援したときは,18 U.S.C. §2339Aが別に問題となる。

さらに,8 U.S.C. §1182(a)(3)(B)は,テロ活動を行った者,FTO等の代表者・構成員,資金募集者,勧誘者,物的支援者,支持を表明する者及び一定の軍事訓練を受けた者などについて広い入国不許可事由を定める。18 U.S.C. §2333は,米国国民が国際テロ行為により損害を受けた場合の三倍賠償と,一定のFTO関係行為についての幇助・共謀責任を定める。これらはOFACの資産凍結とは別の法的層である。

第3 主要項目の比較表

1 ICC指定,SDGT指定及びFTO指定の違い

主要法源大統領令14203号,Part 528大統領令13224号・13886号,Part 5948 U.S.C. §1189,Part 59750%ルールあり(§528.406)あり(§594.412)Part 597固有の50%ルールは確認できない米国法人の国外子会社・従業員§528.318が文言上明記する§594.315は国外支店を明記するPart 597は主として米国金融機関を規律する人道・国際機関・NGO一般許可Part 528は簡略版で,恒久的許可は限定的である§§594.519~594.521に比較的広い一般許可がある個別のFTO及び取引に応じて別途確認する指定を争う手続Part 501によるOFAC再審査及び連邦地裁での訴訟Part 501によるOFAC再審査及び連邦地裁での訴訟行政記録,D.C.

比較項目ICC指定者SDGT指定者FTO指定だけの場合
指定対象所定のICC関係活動等に関与した外国人個人又は外国法人テロ行為,テロ危険,テロ訓練又は指定者への支援等に関係する者外国組織だけ。個人はFTOには指定されない
SDN上の表示[ICC-EO14203][SDGT]FTO指定とSDGT指定は別の法的根拠である
米国内・米国人支配下の財産全面凍結全面凍結米国金融機関が認識したFTO又は代理人の資金を保持・報告
資金,物品及びサービスの授受原則禁止原則禁止§2339Bの物的支援罪が別に適用され得る
外国銀行へのコルレス口座制裁大統領令14203号に同型の明文規定はない改正後大統領令13224号1条(b)に明文規定があるFTO指定だけでは同じ規定はない
家族の財産親族であるだけでは凍結されない親族であるだけでは凍結されない親族であるだけでは凍結されない
入国制限指定基準該当者,配偶者・子及び所定のICC職員・代理人指定者本人に加え,別の移民法上の事由が問題となる代表者,構成員,支援者等に広く及び得る
支援に対する刑事責任IEEPA違反。ICC固有の物的支援罪はないIEEPA違反。SDGT指定だけで§2339Bが適用されるわけではない§2339Bが適用され得る
民事三倍賠償ICC固有の制度はない指定だけでは足りず,テロ行為との法定の関係が別途必要である18 U.S.C. §2333の要件を満たせば問題となる
Circuitへの30日以内の直接審査等

2 「同じ扱い」と「同じ指定」は区別する必要がある

表のとおり,ICC指定者とSDGT指定者は,資産凍結及び取引禁止という機能面では近いが,指定理由も,付随する刑事法・移民法・民事法の効果も同一ではない。「ICC関係者がテロリストと同じ指定を受けた」という表現は不正確である一方,「銀行,カード及び米国系サービスとの関係ではSDGT指定に近い遮断が生じ得る」という説明は,両規則の構造を正確に表している。

第4 資産凍結と日常生活への影響

1 財産の範囲は預金に限られない

Part 528 §528.314及びPart 594 §594.309の「財産及び財産上の権利」は,金銭,預金,債権,株式,証券,不動産,保険契約,貸金庫,知的財産権,契約及びサービスなどを広く含む。したがって,凍結は銀行預金の出金停止だけではなく,送金,カード決済,保険給付,契約上の支払,デジタルサービス及び財産の売却代金に及び得る。

Part 528 §528.319は,米国金融機関に銀行だけでなく,クレジットカードシステム運営者,保険会社,証券業者,清算機関等を含める。Part 594 §594.314にも米国金融機関の定義はあるが,カードシステム運営者及び保険会社は明示列挙されていない。ただし,これらが米国法で設立された法人であれば,Part 594 §594.315の米国人として取引禁止に服する。このため,カードの発行銀行又は利用店舗が米国外にあっても,決済網,米国親会社,米国金融機関の国外支店又はコルレス銀行が関与する経路で取引が停止することがある。

2 50%所有法人は個別掲載がなくても凍結される

Part 528 §528.406及びPart 594 §594.412は,一人又は複数の指定者が直接又は間接に,単独又は合算で50%以上を所有する法人の財産を凍結する。法人名がSDNリストに個別掲載されていることは要件ではない。

これに対し,取締役,役員又は支配者であるだけで所有割合が50%未満の場合は,50%ルールだけで法人が当然に凍結されるわけではない。ただし,OFACがその法人を別途指定する可能性,指定者のための取引として禁止される可能性及び民間企業がリスク回避のために取引を拒絶する可能性は残る。

3 家族の財産は親族関係だけでは凍結されない

ICC指定者又はSDGT指定者の配偶者,子その他の親族であることだけを理由として,その家族が単独で所有する財産まで自動的に凍結する規定はない。しかし,共同口座,共有不動産,指定者が持分を有する法人又は指定者の利益のために行われる支払では,指定者の財産上の権利が含まれるため,取引停止の対象となり得る。

さらに,金融機関又はサービス提供者は,所有関係,資金の帰属又は許可の範囲を短時間で確認できない場合,法令上の最低限を超えて家族又は関係組織との取引まで保留することがある。これは法令が家族全員を指定したこととは異なり,コンプライアンス上の過剰対応として区別すべきである。

4 凍結は直ちに没収する処分ではない

OFACのblockingは,原則として,指定者の所有権を直ちに米国政府へ移す没収ではなく,財産の移転,利用及び処分を止める措置である。もっとも,利用不能が長期化すれば経済的な負担は重大であり,Part 528 §528.202及びPart 594 §594.202は,禁止に反する移転や凍結財産に対する司法上の執行を原則として無効とする。

テロ関係では,別に判決を取得した被害者が,Terrorism Risk Insurance Act of 2002 §201等の要件を満たすテロ当事者の凍結資産へ執行できる場合がある。ICC指定には,これに対応するICC固有の被害者執行特則はない。このため,当初の凍結方法が似ていても,最終的に財産を失う法的経路はテロ関係の方が多い。

第5 ICC制裁の方が文言上広い点

1 米国法人の国外子会社及び従業員

Part 528 §528.318は,米国人を,米国市民,永住者,適法に米国内にいる者及び米国法で設立された法人と定義した上で,その法人の「foreign branch, subsidiary, or employee」を明示的に含める。これに対し,Part 594 §594.315が米国法人について明示するのは「foreign branches」であり,国外子会社又は従業員という語はない。

したがって,条文の文言だけを比べると,ICC制裁は米国企業グループの国外子会社及び従業員へ直接及ぶ余地をSDGT規則より広く示している。ただし,資本関係だけで全ての国外子会社が含まれるのか,「employee」がどの範囲の従業員を指すのかについて,OFACの詳細な公表解釈又はこの文言を適用した公刊裁判例は確認できない。具体的な域外適用範囲は未確定であり,規則の文言を超えて断定することはできない。

2 入国停止は指定者以外にも及ぶ

大統領令14203号4条は,同令1条の指定基準を満たす外国人だけでなく,その配偶者及び子並びに国務長官がICCに雇用され又はICCの代理人として行動すると認定する外国人の入国を停止する。したがって,財産を凍結される者と入国を停止される者の範囲は一致しない。

この規定により入国を停止された家族又はICC職員の財産が,その身分だけで凍結されるわけではない。財産凍結には,同令1条の指定,指定者の財産上の権利又は50%所有関係など,別の根拠が必要である。

第6 テロ制裁の方が広く又は重い点

1 外国金融機関に対する二次制裁

大統領令13886号による改正後の大統領令13224号1条(b)は,SDGT等のために重大な取引を故意に行い,又は促進した外国金融機関について,米国内のcorrespondent account又はpayable-through accountの開設を禁止し,又は維持に厳しい条件を課すことを認める。大統領令14203号には,これと同型の外国金融機関向けコルレス口座制裁の明文規定がない。

この差は,米国人に該当しない国外銀行にも,SDGT関係取引を避ける強い誘因を追加する。ただし,ICC制裁でも,指定者又は対象活動へ物質的支援,物品若しくはサービスを提供した外国人を新たに指定できるため,米国との接点がない国外企業にリスクが全くないという意味ではない。

2 FTOへの物的支援罪

18 U.S.C. §2339Bの物的支援又は資源には,金銭,金融サービス,宿泊,訓練,専門的助言,隠れ家,文書,通信設備,施設,武器,人員及び輸送等が含まれる。刑は原則として20年以下の拘禁であり,死亡結果が生じた場合は有期又は無期となる。同条には,相手がFTOであること,又はテロ活動若しくはテロリズムを行っていることについての知識が必要である。

ICC制裁違反には,ICC固有の物的支援罪はない。もっとも,大統領令及びPart 528に違反すればIEEPA違反となり,50 U.S.C. §1705により民事制裁のほか,故意の違反について刑事罰が科され得る。自然人の拘禁刑の上限がいずれも20年となり得る点だけを見て同じ犯罪と扱うことはできず,§2339BはFTOへの支援自体を独立のテロ犯罪として規制する点で法的性質が異なる。

3 テロ関係の入国不許可

8 U.S.C. §1182(a)(3)(B)は,FTOの代表者・構成員だけでなく,テロ活動への関与,勧誘,資金募集,物的支援,支持の表明及び軍事訓練等を広く入国不許可事由とする。また,原因となる活動が直近5年以内に行われた場合の配偶者又は子にも及び得るが,その活動を知らず,かつ合理的に知り得なかった場合,又は活動を離脱したと信じるべき場合の例外がある。

ICC制裁の家族入国停止は,大統領令14203号が配偶者・子を明示的に対象とする一方,テロ関係の移民規制は,行為類型,組織との関係,時期及び知識に応じた別の体系を持つ。いずれについても,家族の入国制限と家族財産の凍結を混同してはならない。

4 三倍賠償及び凍結資産への執行

18 U.S.C. §2333(a)は,米国国民が国際テロ行為により身体,財産又は事業上の損害を受けた場合に,三倍賠償及び弁護士費用を請求できるものとする。同条(d)は,行為が実行,計画又は承認された時点でFTOであった組織により行われた国際テロ行為について,故意に実質的援助を提供した幇助者又は共謀者の責任を定める。

ただし,FTOと何らかの取引をしたというだけで当然に民事責任を負うわけではない。Twitter, Inc. v. Taamneh, 598 U.S. 471 (2023)は,幇助責任には,違法行為への意識的,自発的かつ有責な参加と,故意による実質的援助が必要であり,一般に利用可能なプラットフォームを提供し,排除が不十分であったという事情だけでは足りないとした。ICC指定には,このようなICC固有の三倍賠償又は幇助責任の制度はない。

第7 一般許可と人道・国際機関活動

1 許可はサービス提供義務を生じさせない

Part 528 §528.502(c)及びPart 594 §594.502(c)は,一般許可又は個別許可が,その文言の範囲で制裁上の禁止を取り除くにとどまり,通常の法理によって存在しない権利,義務又は請求権を新たに作らないことを定める。したがって,OFACの許可を得ても,銀行,カード会社,保険会社又はクラウド事業者に契約締結若しくはサービス再開を強制できるわけではない。

企業は,許可の解釈,制裁違反の可能性,評判又は事務負担を考慮して取引を断ることがある。この過剰遵守は,ICC指定者とSDGT指定者の双方に生じ得るため,法令上許可された取引と,実際に利用できるサービスとを分けて考える必要がある。

2 Part 594の恒久的一般許可は比較的広い

Part 594には,法的サービス,緊急医療,通信及び郵便に加え,§594.519による国連その他一定の国際機関の公務,§594.520によるNGOの人道支援,民主主義支援,教育,非商業的開発,環境保護及び平和構築等,並びに§594.521による個人の非商業的使用のための食料,医薬品,医療機器等に関する一般許可がある。

これらの許可には対象,目的,受益者及び資金移転に関する条件があり,FTO又はSDGTとの全取引を包括的に許可するものではない。それでも,長期間運用されてきたPart 594には,制裁対象地域又は関係者の下で人道・国際機関活動を継続するための恒久的な条項がPart 528より多い。

3 Part 528は簡略版であり許可体系が狭い

Part 528 §528.101の注記は,同規則が直ちに公衆へ案内するための簡略版として公布され,OFACが将来,解釈指針,定義及び一般許可等を追加する予定であると明記する。現行規則には,通常の口座維持費,法的サービス,緊急医療,米国政府の公務及び個人使用の食料・医薬品等に関する§§528.505~528.510がある一方,Part 594 §§594.519,594.520に対応する国際機関及びNGOの包括的な恒久許可や,ICCの公務自体を一般的に許可する条項はない。

ICC General License 12は,2026年8月18日に指定された者及びその50%所有法人との取引のうち,終了処理に通常付随し必要なものを,同年9月17日午前0時1分(米国東部夏時間)まで許可する。ただし,指定者への支払は米国内の利息付き凍結口座へ入れる必要があり,恒久的なサービス継続を認めるものではない。

第8 言論,法律助言及び裁判例

1 FTOと協調した平和的助言も物的支援となり得る

Holder v. Humanitarian Law Project, 561 U.S. 1 (2010)は,FTOに対し,国際法を利用した平和的紛争解決又は国連への申立方法を教える活動であっても,団体と協調し又はその指揮下で提供されるtraining,expert advice又はserviceであれば,§2339Bを合憲的に適用できるとした。他方,FTOから独立して行う支持言論,独立したadvocacy及び単なる構成員性は,同条が禁止する物的支援とは区別した。

したがって,「暴力を支援する意図がなく,平和的な法律助言である」という事情だけで§2339Bの適用を免れるわけではない。問題となるのは,支援の内容に加え,FTOとの協調又は指揮関係及び法定の知識要件である。

2 ICC制裁では地方裁判所が言論的サービスを保護した

Smith v. Trump, 791 F. Supp. 3d 90 (D. Me. 2025)は,ICCへの証拠,専門知識及び助言の提供等について,大統領令14203号が必要以上に広く言論を制限する可能性が高いとして,原告らの言論的サービスに対するIEEPA上の民刑事執行を仮に差し止めた。Rona v. Trump, No. 1:25-cv-03114-JMF, Doc. 70 (S.D.N.Y. July 30, 2025)は,原告らの言論的活動に対する執行について,修正第1条違反を認めて永久差止めを命じた。

また,L.C. v. Trump, No. 1:26-cv-00688-RJL, Doc. 48 (D.D.C. May 13, 2026)は,国外の指定者の家族による申立てについて仮差止めを認めたが,D.C. Circuitは2026年6月15日,控訴中,OFACが家族向けに発行した許可へ違反しないことを条件として,政府が指定を実施・執行できるよう地裁命令を一部停止した。付随意見は,国外外国人の国外言論に修正第1条が及ばないとの見方を示している。

3 両制度の裁判例は単純に同じ方向を向いていない

FTO物的支援規制には,最高裁判所のHolder判決があり,FTOと協調した言論的サービスを規制できる範囲が示されている。これに対し,ICC制裁では,米国内の研究者又は法律家の言論的サービスを保護した地方裁判所判断がある一方,国外指定者本人の憲法上の権利についてはD.C. Circuitの控訴中命令が政府側に有利な見方を示した。

ICC制裁事件の差止めは,原告の活動及び当事者に即したものであり,全ての指定者又は全ての取引についてPart 528を無効にしたものではない。また,FTOの物的支援罪とICC制裁は指定目的及び法的根拠が異なるため,Holder判決だけからICC制裁訴訟の結論を導くこともできない。

第9 指定を争う手続の違い

1 ICC指定及びSDGT指定の再審査

ICC指定及びSDGT指定を受けた者は,31 C.F.R. §501.807に基づき,OFACへ行政的再審査を申し立て,指定の根拠が不十分であること,指定原因となった事情が消滅したこと又は組織再編等の是正措置を主張できる。OFACは追加資料を求めることができ,面談の要請を受け入れる義務はないが,審査後には書面の決定を出す。

そのほか,連邦地裁で行政手続法,適正手続,修正第1条又はIEEPA上の権限逸脱等を争う余地がある。ただし,Part 501には,FTO指定における議会への7日前通知に対応する指定対象者向けの事前通知手続は置かれておらず,§501.807は指定後の行政的再審査を定めている。また,国家安全保障及び外交に関する行政記録の司法審査には制約がある。

2 FTO指定には特別の法定手続と短い期間がある

8 U.S.C. §1189は,国務長官が指定の7日前に議会指導者及び関係委員会へ機密通知し,行政記録を作成した上でFederal Registerに指定を掲載する手続を定める。指定組織は,初回指定から2年後に取消しを請求でき,取消し審査がないまま5年を経過した場合は国務長官による見直しが必要となる。

指定組織がD.C. Circuitへ直接司法審査を申し立てる期間は,指定又は取消請求に対する決定の掲載後30日以内である。審査は原則として行政記録に基づき,政府は機密情報を相手方へ開示せず,裁判所へex parteかつin cameraで提出できる。また,刑事事件の被告人又は退去手続の外国人は,その手続内でFTO指定の有効性を争うことができない。

People’s Mojahedin Organization of Iran v. Department of State, 613 F.3d 220 (D.C. Cir. 2010)は,取消請求の審査において必要な通知及び反論機会を与えなかったとして国務長官へ差し戻した。もっとも,裁判所が外交・国家安全保障上の判断を自ら置き換えたものではなく,FTO指定の特別手続の中で最低限の適正手続を求めた判断である。

第10 個別の取引を確認する順序

1 最初に指定の法的根拠を確認する

対象者がSDNリストに載っているという事実だけでは,適用法を確定できない。まず,プログラム・タグが[ICC-EO14203]か[SDGT]か,対象がFTOでもあるか,制裁対象者が50%以上を所有する未掲載法人ではないかを確認する必要がある。

次に,取引の当事者,資金,物品,サービス,決済通貨及び仲介者の中に,米国人,米国法人の国外拠点,米国金融機関,米国決済網又は米国内財産が含まれるかを確認する。外国企業間かつ米ドル以外の取引であるというだけでは,米国との接点がないとは限らない。

2 FTOとの重複及び許可の条件を確認する

テロ関係者との取引では,SDGTの資産凍結だけでなく,FTO指定,18 U.S.C. §§2339A,2339B,テロ関係入国不許可及び18 U.S.C. §2333の民事責任が重なるかを別々に確認する。とりわけ,SDGT指定だけを見て§2339Bを当然に適用したり,反対にFTO指定だけを見てPart 594の全面的資産凍結が当然に適用されると考えたりしてはならない。

最後に,一般許可又は個別許可の対象者,目的,期間,支払先,報告及び記録保存の条件を取引ごとに照合する。許可の存在は私企業のサービス提供を保証しないため,法的に許可されるかという問いと,銀行又は事業者が実際に取引を受け付けるかという問いを分ける必要がある。
米国の制裁対象となったことが,日本法準拠の契約における反社会的勢力排除条項へ及ぼす影響は,米国の制裁対象となることと反社会的勢力排除条項の関係で別に整理している。

第11 出典・参考資料

1 法令・大統領令

Executive Order 14203, Imposing Sanctions on the International Criminal Court(2025年2月6日署名,90 Fed. Reg. 9369)

International Criminal Court-Related Sanctions Regulations, 31 C.F.R. Part 528(特に§§528.201,528.303,528.314,528.318,528.319,528.406,528.502,528.505~528.510)

Executive Order 13224, Blocking Property and Prohibiting Transactions With Persons Who Commit, Threaten To Commit, or Support Terrorism(2001年9月23日署名,66 Fed. Reg. 49079)

Executive Order 13886, Modernizing Sanctions To Combat Terrorism(2019年9月10日署名,84 Fed. Reg. 48041)

Global Terrorism Sanctions Regulations, 31 C.F.R. Part 594(特に§§594.201,594.204,594.309,594.314,594.315,594.412,594.502,594.519~594.521)

Foreign Terrorist Organizations Sanctions Regulations, 31 C.F.R. Part 597(特に§597.201)

8 U.S.C. §1189(FTOの指定要件,取消し及び司法審査)及び8 U.S.C. §1182(a)(3)(B)(テロ関係の入国不許可)

18 U.S.C. §2339A及び18 U.S.C. §2339B(物的支援罪)

18 U.S.C. §2333(テロ被害者の民事請求)及びTerrorism Risk Insurance Act of 2002 §201(28 U.S.C. §1610注記)

International Emergency Economic Powers Act, 50 U.S.C. §§1701~1706及び31 C.F.R. Part 501(OFACの報告,手続及び制裁)

2 裁判例

Holder v. Humanitarian Law Project, 561 U.S. 1 (2010)(FTOと協調した訓練,専門的助言及びサービスと独立言論の区別)

Twitter, Inc. v. Taamneh, 598 U.S. 471 (2023)(JASTA上の幇助責任に必要な有責な参加及び実質的援助)

Smith v. Trump, 791 F. Supp. 3d 90 (D. Me. 2025), No. 1:25-cv-00158-NT, Doc. 30(2025年7月18日仮差止命令)

Rona v. Trump, No. 1:25-cv-03114-JMF, Doc. 70(S.D.N.Y. 2025年7月30日判決・永久差止命令)

L.C. v. Trump, No. 1:26-cv-00688-RJL, Doc. 48(D.D.C. 2026年5月13日仮差止命令)及びD.C. Circuit No. 26-5172の2026年6月15日一部停止命令

People’s Mojahedin Organization of Iran v. Department of State, 613 F.3d 220 (D.C. Cir. 2010)(FTO指定取消請求における適正手続)

3 OFAC公表資料

OFAC「Counter Terrorism Sanctions」(大統領令,規則,一般許可及び関連資料の一覧)

OFAC「Revised Guidance on Entities Owned by Persons Whose Property and Interests in Property Are Blocked」(2014年8月13日)及びOFAC FAQs 398~402(50%ルール)

OFAC「International Criminal Court-Related Sanctions Regulations General License No. 12」(2026年8月18日)