司法修習生の採用選考の必要書類


目次
第1 はじめに
第2 提出書類の一覧
1 最高裁判所事務総局人事局任用課試験係に提出する書類(書留・速達)
2 司法研修所企画第二課調査係に提出する書類(簡易書留)
第3 追完できない書類及び追完可能な書類
第4 書類の記載方法等
第5 司法試験合格証書
第6 民間企業が採用選考する時に配慮すべきとされている事項
第7 犯罪経歴証明書及び犯罪人名簿における取扱い
第8 検察庁は行政官庁等からの前科照会に回答していないこと,及び最高裁昭和56年4月14日判決の判示内容
1 検察庁は行政官庁等からの前科照会に回答していないこと
2 最高裁昭和56年4月14日判決の判示内容
第9 就職希望者の前科前歴の秘匿に関する裁判例
第10 二回試験不合格者が再採用してもらう際の手続
第11 54期の司法修習生採用選考当時の提出書類
第12 かつて存在した司法修習生の国籍条項
第13 司法修習生採用選考の申込期間の適法性に関する東京地裁平成29年9月7日判決の判示内容
第14 関連記事その他

第1   はじめに
1 本ブログの記載は参考程度にとどめた上で,必ず裁判所HPで提出書類の書き方等を確認して下さい。
2 司法修習生の採用選考の必要書類は例年,以下のとおりでありますところ,コピーを提出してもいいものはありません。
3 提出書類の書式等は「司法修習生の採用選考に関する公式文書」に掲載しています。

第2 提出書類の一覧
1 最高裁判所事務総局人事局任用課試験係に提出する書類(書留・速達)
① 司法修習生採用選考申込書(署名・押印・写真貼付)
② 資格の登録抹消証明書(該当者だけ)(追完可能)
・ コピー不可です。
③ 資格に関する申述書(該当者だけ)
・ 資格の登録抹消証明書を提出しない場合に提出するものです。
④ 提出書類確認票
⑤ 司法試験合格証書のコピー(平成27年度以前の合格者に限る。)
⑥ 戸籍抄(謄)本又は住民票の写し(申込みの3ヶ月以内に発行されたもの)
・ コピー不可です。
・ 住民票の写しを提出する場合,本籍地及び戸籍筆頭者の記載がされており,個人番号(マイナンバー)が記載されていないものが必要です。
⑦ 成績証明書(追完可能)
・ コピー不可です。
・ 卒業・修了・退学年月の記載のあるもの
*1 73期司法修習生から,登記されていないことの証明書を提出する必要がなくなりました。
*2 74期司法修習生から,健康診断票の提出が不要になりました。
*3 75期司法修習生から,平成28年度以降の合格者は提出不要となりました。

2 司法研修所企画第二課調査係に提出する書類(簡易書留)
⑩ 実務修習希望地調査書
⑪ 身上報告書2部・カラー写真5枚
→ カラー写真(縦4cm,横3cm)5枚のうち,2枚は身上報告書に貼付し,残り3枚は写真用封筒に入れて送付します。


第3 追完できない書類及び追完可能な書類
1 追完できない書類
(1)   追完できない書類のうち,取得に時間がかかる書類は,⑨健康診断票でした。
   ただし,健康診断において要再検査の項目がある場合,再検査の項目については,9月末日頃までに再検査等結果報告書を提出すれば足ります。
(2) 74期以降の司法修習の場合,健康診断票の提出が不要になりました。
2 追完可能な書類
(1) 「司法修習生採用選考審査基準」(令和元年7月3日付)からすれば,⑤学校の成績証明書,⑥学校の卒業(退学)年月を証する書面,⑦退職証明書及び⑧資格の登録抹消証明書等は,司法修習生の採用選考における審査基準と直接の関係がないから,追完可能な書類となっているのかもしれません。
(2) 外部HPの「退職」に,退職証明書の追完日に関してブログ主が最高裁の担当者に問い合わせたときの体験談が書いてあります(リンク先のブログでは「法務省」と書いてありますが,「最高裁」の誤記と思います。)。


第4 書類の記載方法等
1 一晩待って作成した方がいいこと
   司法修習生採用選考申込書,実務修習希望地調査書,身上報告書及び入寮許可願については,最初は下書きを作成しながら推敲し,記入事項を完全に確定した後,一晩待って考えに変更がないかどうかを確認した上で,改めて一から書類を作成した方がいいと思います。
2 誤記等の訂正はしない方がいいこと
   二重線で誤記等の訂正をした場合,書類が汚くなります。
   そして,身上報告書は,司法研修所及び実務修習地の修習指導関係者など,多くの人の目に触れる書類です「司法修習生の身上報告書等の取扱いについて(平成28年11月9日付の司法研修所事務局長事務連絡)参照)から,少なくとも身上報告書については訂正のないものを提出した方がいいと思います。
3 写真撮影プラン
   東京都豊島区池袋にあるフォトスタジオアペックスHP「司法修習生用写真/写真名刺」に,合格時の書類提出用の,写真撮影のみのプランが載っています。


第5 司法試験合格証書
1 司法試験合格者が合格直後に司法修習生となる場合(例えば,令和元年度司法試験合格者が73期司法修習生となる場合),司法試験合格証書のコピーを提出する必要はありません。
   ただし,司法試験合格証書を受領するためには,6か月以内に作成された戸籍抄本又は本籍若しくは国籍の記載のある住民票等を用意して,合格した年の9月中に受領手続をしておく必要があります。
2 法務省HPの「平成28年司法試験の結果について」に載ってある「平成28年司法試験合格証書の交付について」を見れば司法試験合格証書の受領手続が分かります。
   毎年,同趣旨の説明文が法務省HPに載ってあります。


第6 民間企業が採用選考する時に配慮すべきとされている事項
1 厚生労働省HPの「公正な採用選考の基本」には以下の記載があります。
(3)採用選考時に配慮すべき事項
 次のaやbのような適性と能力に関係がない事項を応募用紙等に記載させたり面接で尋ねて把握することや、cを実施することは、就職差別につながるおそれがあります。
<a.本人に責任のない事項の把握>
・本籍・出生地に関すること (注:「戸籍謄(抄)本」や本籍が記載された「住民票(写し)」を提出させることはこれに該当します)
・家族に関すること(職業、続柄、健康、病歴、地位、学歴、収入、資産など)(注:家族の仕事の有無・職種・勤務先などや家族構成はこれに該当します)
・住宅状況に関すること(間取り、部屋数、住宅の種類、近郊の施設など)
・生活環境・家庭環境などに関すること
<b.本来自由であるべき事項(思想信条にかかわること)の把握>
・宗教に関すること
・支持政党に関すること
・人生観、生活信条に関すること
・尊敬する人物に関すること
・思想に関すること
・労働組合に関する情報(加入状況や活動歴など)、学生運動など社会運動に関すること
・購読新聞・雑誌・愛読書などに関すること
<c.採用選考の方法>
・身元調査などの実施 (注:「現住所の略図」は生活環境などを把握したり身元調査につながる可能性があります)
・合理的・客観的に必要性が認められない採用選考時の健康診断の実施
(2) 大阪市HPに「職業安定法(抄)、労働省指針(抄)」が載っています。
2 日弁連の,死刑制度の廃止を含む刑罰制度全体の改革を求める宣言(平成28年10月7日付)には,「刑罰を受けることにより、一定の資格制限があり、刑を終えて(仮釈放を得て)社会に戻る人に、社会復帰の障害となるような資格制限が多く設けられていることは、今や時代錯誤である。」と書いてあります。


第7 犯罪経歴証明書及び犯罪人名簿における取扱い
1 犯罪経歴証明書における取扱い

(1)ア   犯罪経歴証明書発給要綱(平成31年3月29日警察庁刑事局長通達)によれば,以下の①ないし⑦のいずれかの場合に該当すれば,当該①ないし⑦に規定する犯罪については犯罪経歴を有しないものとみなしてもらえます。
① 刑の執行猶予の言渡しを取り消されることなく猶予の期間を経過しているとき。
② 禁錮以上の刑の執行を終わり又はその執行の免除を受け、罰金以上の刑に処せられられないで10年を経過しているとき。
③ 罰金以下の刑の執行を終わり又はその執行の免除を受け、罰金以上の刑に処せられないで5年を経過しているとき。
④ 恩赦法の規定により大赦若しくは特赦を受け,又は復権を得たとき。
⑤ 道路交通法125条1項に規定する反則行為に該当する行為を行った場合であって、同条第2項各号のいずれにも該当しないとき。
⑥ 少年法60条の規定により刑の言渡しを受けなかったものとみなされたとき。
⑦ 刑の言渡しを受けた後に当該刑が廃止されたとき。
イ 警察庁HPには「犯罪経歴証明書発給要綱の運用について(通達)」が別途,掲載されています。
(2) 恩赦を受けた場合,犯罪経歴証明書発給申請書(別記様式第1号)の注記欄にあるとおり,同申請書と一緒に,特赦状,復権状等を提出する必要があります。

2 犯罪人名簿における取扱い
(1) 犯罪人名簿は,もともと大正6年4月12日の内務省訓令第1号により市区町村長が作成保管すべきものとされてきたものですが,戦後においては昭和21年11月12日内務省発地第279号による同省地方局長の都道府県知事あて通達によって選挙資格の調査等の資料として引きつづき作成保管され,昭和22年に地方自治法が施行されてのちも明文上の根拠規定のないまま従来どおり継続して作成保管されています(最高裁昭和56年4月14日判決における裁判官環昌一の反対意見参照)。
(2)ア 罰金以上の刑に処する裁判が確定した場合,地方検察庁の本庁の犯歴事務担当官は,本籍市区町村長に対し,既決犯罪通知書を送付してその裁判に関し必要な事項を通知します(犯歴事務規程3条4項)から,本籍市区町村長はこれによって犯罪歴を把握しています。
イ 前科登録と犯歴事務(五訂版)9頁には,「昭和35, 6年ころから道路交通法違反事件が急増し,従来の方式のままではその犯歴を適正かつ的確に登録管理することが不可能になったため, 同37年6月には,道路交通法違反の罪に係る裁判で罰金以下の刑に処したものについては,市区町村長に対する既決犯罪通知をしない取扱いが実施され」と書いてあります。
 そのため,道交法違反の罰金前科については,そもそも本籍市区町村の犯罪人名簿に記載されていません。
(3) 恩赦があった場合,地方検察庁の本庁の犯歴担当事務官は,本籍市区町村長に対し,恩赦事項通知書を送付して恩赦に関し必要な事項を通知します(犯歴事務規程4条及び8条)。
(4) 令和元年10月10日付の総務省の行政文書開示決定通知書によって開示された,刑の消滅等に関する照会の書式について(昭和34年8月13日付の自治庁行政局行政課長の通知)を掲載しています。
(5) 恩赦法に基づく復権の対象となった犯歴については,犯罪人名簿から削除されます。
(6) その余の詳細は「前科抹消があった場合の取扱い」を参照してください。


第8 検察庁は行政官庁等からの前科照会に回答していないこと,及び最高裁昭和56年4月14日判決の判示内容
1 検察庁は行政官庁等からの前科照会に回答していないこと
(1) 前科登録と犯歴事務(五訂版)26頁ないし28頁には以下の記載があります(ナンバリング及び改行を追加しています。)。
① 検察庁における前科の調査回答は,検察,裁判の事務処理上これを必要とするものについて行われるものであることは犯歴把握の目的からみて当然のことであり,みだりに前科が他の目的に利用されることはない。
   したがって,一般人からの照会に対してはもちろん,法令に基づいて付与される特定の資格が前科のあることを欠格事由とする場合において, これを取り扱う主務官庁が欠格事由の有無の判断資料として前科を知る必要がある場合であっても,原則としてその照会には応じていない。
   行政官庁等からの法令上の欠格事由の調査のための前科照会に対する回答事務は,従前から地方公共団体が行ってきた身分証明事務に属するものと考えられているからである。
② 市区町村の犯罪人名簿の記載のみでは,恩赦に該当しているか,刑の言渡しの効力が失われているか等が明確でないときは,市区町村長から検察庁に照会が行われれば回答することになるが, この場合でも,道交犯歴については原則としてその調査は行われない。
   道交犯歴自体が法令上の欠格事由となることはごくまれにしかないからである。
③ 市区町村を含む行政官庁等からの前科の照会に対しては,特赦・大赦・復権のあった前科,刑法34条の2の規定により刑の言渡しの効力が失われた前科,執行猶予期間を経過した前科及び少年法60条1項又は2項の適用がある前科については回答されない。
(2) その余の詳細は「前科抹消があった場合の取扱い」を参照してください。
2 最高裁昭和56年4月14日判決の判示内容
(1) 最高裁昭和56年4月14日判決は以下のとおり判示しています(ナンバリングを追加しています。)。
① 前科及び犯罪経歴(以下「前科等」という。)は人の名誉、信用に直接にかかわる事項であり、前科等のある者もこれをみだりに公開されないという法律上の保護に値する利益を有するのであつて、市区町村長が、本来選挙資格の調査のために作成保管する犯罪人名簿に記載されている前科等をみだりに漏えいしてはならないことはいうまでもないところである。
② 前科等の有無が訴訟等の重要な争点となつていて、市区町村長に照会して回答を得るのでなければ他に立証方法がないような場合には、裁判所から前科等の照会を受けた市区町村長は、これに応じて前科等につき回答をすることができるのであり、同様な場合に弁護士法二三条の二に基づく照会に応じて報告することも許されないわけのものではないが、その取扱いには格別の慎重さが要求されるものといわなければならない。
(2) 最高裁昭和56年4月14日判決の判示と異なり,犯罪人名簿は,弁護士登録等のための資格調査でも利用されています(東京都HPの「○犯罪人名簿の取扱について」参照)。

第9 就職希望者の前科前歴の秘匿に関する裁判例
1 仙台地裁昭和60年9月19日判決(判例秘書に掲載)は,就職希望者の前科前歴の秘匿に関して以下のとおり判示しています(ナンバリング及び改行を追加しています。)。
①   使用者が雇用契約を締結するにあたつて相手方たる労働者の労働力を的確に把握したいと願うことは、雇用契約が労働力の提供に対する賃金の支払という有償双務関係を継続的に形成するものであることからすれば、当然の要求ともいえ、遺漏のない雇用契約の締結を期する使用者から学歴、職歴、犯罪歴等その労働力の評価に客額的に見て影響を与える事項につき告知を求められた労働者は原則としてこれに正確に応答すべき信義則上の義務を負担していると考えられ、
   したがつて、使用者から右のような労働力を評価する資料を獲得するための手段として履歴書の提出を求められた労働者は、当然これに真実を記載すべき信義則上の義務を負うものであつて、その履歴書中に「賞罰」に関する記載欄がある限り、同欄に自己の前科を正確に記載しなければならないものというべきである(なお、履歴書の賞罰欄にいう「罰」とは一般に確定した有罪判決(いわゆる「前科」)を意味するから、使用者から格別の言及がない限り同欄に起訴猶予事案等の犯罪歴(いわわゆる「前歴」)まで記載すべき義務はないと解される。)。

 そして、刑の消滅制度が、犯罪者の更生と犯罪者自身の更生意欲を助長するとの刑事政策的な見地から一定の要件のもとに刑の言渡しの効力を将来に向かつて失効させ、これにより犯罪者に前科のない者と同様の待遇を与えることを法律上保障しているとはいえ、同制度は、犯罪者の受刑という既往の事実そのものを消滅させるものではないし、またその法的保障も対国家に関するもので直接私人間を規律するものではないことからみても、同制度の存在が、当然には使用者に対し、前科の消滅した者については前科のない者と同一に扱わなければならないとの拘束を課すことになるものでないことはいうまでもない。
②   しかしながら、犯罪者の更生にとつて労働の機会の確保が何をおいてもの課題であるのは今更いうまでもないところであつて、既に刑の消滅した前科について使用者があれこれ詮策し、これを理由に労働の場の提供を拒絶するような取扱いを一般に是認するとすれば、それは更生を目指す労働者にとつて過酷な桎梏となり、結果において、刑の消滅制度の実効性を著しく減殺させ同制度の指向する政策目標に沿わない事態を招来させることも明らかである。
 したがつて、このような刑の消滅制度の存在を前提に、同制度の趣旨を斟酌したうえで前科の秘匿に関する労使双方の利益の調節を図るとすれば、職種あるいは雇用契約の内容等から照らすと、既に刑の消滅した前科といえどもその存在が労働力の評価に重大な影響を及ぼさざるをえないといつた特段の事情のない限りは、労働者は使用者に対し既に刑の消滅をきたしている前科まで告知すべき信義則上の義務を負担するものではないと解するのが相当であり、使用者もこのような場合において、消滅した前科の不告知自体を理由に労働者を解雇することはできないというべきである。
2 司法修習生の場合,既に刑の消滅した前科の存在が修習専念義務等の履行にどのような影響を及ぼすのかはよく分かりません。


第10 二回試験不合格者が再採用してもらう際の手続
1 かつて司法修習生であった者が,考試を再度受験するために司法修習生に再採用されることを希望する場合,司法研修所を経由して最高裁判所に採用選考の申し込みを行う必要があります(「司法修習生採用選考申込み(考試再受験希望者)について」参照)。
2(1) 平成29年度(最情)答申に第38号(平成29年10月2日答申)は以下の記載があります。
   本件開示文書には,司法修習生の採用選考における審査基準が記載されているところ,その記載内容を踏まえて検討すれば,司法修習生であった者が考試を再度受験するために再採用される際には,本件開示文書に基づいて審査が行われるのであり,本件開示文書以外に司法行政文書を作成し,又は取得する必要はないという最高裁判所事務総長の上記説明の内容が不合理とはいえない。そのほか,最高裁判所において本件開示文書以外に本件開示申出文書に該当する文書を保有していることをうかがわせる事情は認められない。
(2) 本件開示文書は「司法修習生採用選考審査基準(平成28年6月1日付け)」であり,本件開示申出文書は「司法修習生考試に不合格となった者を再び採用する際の,最高裁判所及び司法研修所内部の事務手続が分かる文書(最新版)」でありますところ,そこには以下の記載があります。
2 司法修習生採用選考申込者に次に掲げる事由があると認めるときは,これを不採用とする。
(中略)
(2) 司法修習生であった者が,次のいずれかに該当すること。
ア 修習態度の著しい不良その他の理由により修習をすることが不相当である者
イ 成績不良(裁判所法(昭和22年法律第59号)第67条第1項の試験の不合格を除く。)その他の理由により修習をすることが困難である者
ウ 裁判所法第67条第1項の試験に連続して3回合格しなかった者(再度司法試験法による司法試験に合格した者を除く。)。ただし,病気その他やむを得ないと認められる事情により,裁判所法第67条第1項の試験の全部又は一部を受験することができなかった場合には,当該試験については,受験回数として数えないものとすることができる。


第11 54期の司法修習生採用選考当時の提出書類
1 平成12年度採用の54期当時の司法修習生採用選考のための提出書類が,1999年度の司法試験合格者「さく」のHP「知られざる合格後」に載っています。
2   平成11年度司法試験の場合,平成11年10月29日に最終合格発表があり(日弁連HPの「平成11年度司法試験最終合格者発表に関する会長声明」参照),司法研修所への入所が平成12年4月1日頃でしたから,司法試験合格から司法研修所入所までに5ヶ月余りありました。


第12 かつて存在した司法修習生の国籍条項
1   昭和51年採用の30期までは,司法修習生採用選考要領の欠格事由が「日本の国籍を有しない者」となっていて,司法修習生となるためには帰化して日本国籍を取得する必要がありましたから,台湾国籍では司法修習生に採用されませんでした(神戸合同法律事務所HPの「吉井正明」参照)。
    しかし,昭和52年に在日韓国人の金敬得が帰化せずに31期司法修習生に採用されて以降,司法修習生採用選考要領の欠格事由が「日本の国籍を有しない者(最高裁判所が相当と認めた者を除く。)」となりました。
    そして,平成21年11月採用の司法修習生(新63期)から,司法修習生採用選考要領の欠格事由から「日本の国籍を有しない者」が削除されました(外部ブログの「「司法修習生は日本国籍必要」条項を削除 最高裁」参照)。
2 平成29年5月12日付の司法行政文書不開示通知書によれば,司法修習生採用に際しての国籍条項が廃止されるに至った経緯が分かる文書は,保存期間を満了しており廃棄済みです。
3 外国人登録原票は現在,法務省入国管理局で保管されています(法務省入国管理局HP「外国人登録原票を必要とされる方へ」参照)。

第13 司法修習生採用選考の申込期間の適法性に関する東京地裁平成29年9月7日判決の判示内容
・ 東京地裁平成29年9月7日判決(判例秘書に掲載)は以下の判示をしています。
(1) 裁判所法66条1項は,「司法修習生は,司法試験に合格した者の中から,最高裁判所がこれを命ずる。」と規定しているが,司法修習生採用選考の具体的な在り方については,何らの規定も設けられておらず,最高裁判所の合理的な裁量に委ねられていると解するのが相当である。そうだとすると,最高裁判所による司法修習生採用選考の在り方が国家賠償法1条1項の適用上違法とされることがあるとしても,その裁量権の範囲を逸脱し,又はこれを濫用したと認められる場合に限られるというべきである。
 そして,司法修習生採用選考において申込受付期間を設定している趣旨は,司法試験等に合格した者が,司法修習生採用選考に申し込むか否かを改めて検討し,申込書の作成,提出書類の準備,申込書等の提出のための手続をすることに一定の期間が必要であることを考慮したものであり,司法修習生の採用選考を行う最高裁判所としては,これらの点のほか,司法修習生の採用時期(司法修習の開始時期),採用までの審査,事務手続に要する期間をも考慮し,合理的な範囲で申込受付期間を決定することができるというべきである。
(2) そもそも,司法修習生採用選考は,一般に司法試験の受験を前提としており,司法修習生採用選考の申込者は,欠格事由の有無,原則として兼業が禁止されている司法修習中の生計について,司法試験を受験する時点からある程度見通しをもっているものと考えられる。前記第2の1,第3の1(1)のとおり,最高裁判所は,平成27年7月1日には同年度の司法修習生採用選考要領を公告し,同要領において,欠格事由,選考内容,選考の申込方法,申込受付期間,提出書類,申込書等用紙の入手方法を明らかにしており,その内容は,例年と大きく変わるものではなかったのであるから,司法修習生採用選考の申込みに当たって司法試験の合格後に新たに検討しなければならない事項はなかったということができる。欠格事由の内容を見ても,①禁錮以上の刑に処せられた者,②成年被後見人又は被保佐人(準禁治産者を含む。)及び③破産者で復権を得ない者とされ,その内容は,一義的に明らかであり,これに当たるか否かについて判断に迷うものではない。また,最高裁判所は,司法修習生採用選考の申込みに関する問合せ先が最高裁判所事務総局人事局任用課試験第一係であることも明らかにしており,司法試験の合格発表前から問合せに応ずる態勢を整えていること,申込書以外の各種書類について,発行手続を理由として提出が遅れる場合,採用発令日以降の提出も認めていることは,前記1(1)のとおりである。
(3) そうだとすると,司法修習生採用選考の申込受付期間が司法試験の合格発表日である平成27年9月8日(火曜日)から同月15日(火曜日)までの8日間であったとしても,司法修習生採用選考に申し込むか否かを改めて検討した上,申込書を作成し,提出書類の準備をしてこれらを郵送する手続をするための期間として不合理とまではいえないというべきである。そして,最高裁判所としては,同年11月末には司法修習生の採用を発令し翌月から司法修習の開始を予定していたところ,同年度に採用された司法修習生の人数は1787人に及んでおり,その採用のための審査にも相応の期間を要すると考えられることをも考慮すると,司法修習生採用選考の申込受付期間を司法試験の合格発表日から8日間とした最高裁判所の判断は,原告がるる主張する点を全て考慮しても,その裁量権の範囲内にあり,これを濫用したともいえないから,国家賠償法1条1項の適用上違法ということはできない。


第14 関連記事その他
1 72期司法修習生向けの修習給付金案内29頁には「修習給付金の支給及び修習専念資金の貸与については,司法修習生に対し個別の支払通知書書等等は発行しません。各種手続に必要がある場合には,最高裁判所ウェブサイトに掲載されている交付日一覧や振込を受けた金融機関の預貯金通帳等を利用してください。」と書いてあります。
    つまり,修習給付金等が入金される預貯金通帳については,そのコピーを税務署その他の関係先に提出する必要が出てくることがあります(例えば,修習給付金の確定申告に関して更正の請求をした場合)から,修習給付金とは関係のない入出金を税務署その他の関係先に知られたくない場合,修習給付金等の入金専用の預貯金口座を作成しておいた方がいいです。
2(1) 73期までは,
司法研修所(いずみ寮)総務課寮務係に提出する書類(簡易書留)(入寮希望者だけ)として以下のものがありました。
・ 入寮許可願
・ 84円相当の切手を貼付した返信用封筒(消費税・軽減税率情報Cafe「消費税10%増税で郵便料金も値上げ、はがき63円、手紙84円に」(2019年4月4日付)参照)
→ 令和元年9月30日までは消費税は8%でしたから,72期司法修習までは82円相当の切手を貼付していました。
(2) 74期及び75期の導入修習はオンライン形式で実施されましたから,これらの書類は不要でした。
3 日弁連HPの「司法修習生採用時の逮捕歴等による差別人権救済申立事件(要望)」には以下の記載があります。

最高裁判所長官宛要望

1994年3月28日

最高裁判所が司法修習生採用選考において、外国籍の者や逮捕歴・起訴歴を有する者に対して、本人の誓約書や保証人を求めていることは憲法等に違反するとして、司法修習生採用選考要項の「国籍条項」を削除するとともに、これらの差別的取扱・慣行を行わないよう要望した事例。

4  地方公務員である職員としての採用内定の通知がされた場合において,職員の採用は内規によって辞令を交付することにより行うこととされ,右採用内定の通知は法令上の根拠に基づくものではないなどといった事実関係があるときは,右採用内定の通知は事実上の行為にすぎず,右内定の取消しは,抗告訴訟の対象となる処分に当たりません(最高裁昭和57年5月27日判決)。
5 出入国在留管理庁HPの「平成28年4月1日から外国人入国記録・再入国出入国記録(EDカード)の様式が変わりました。」を見れば,外国人が日本に入国又は再入国する際,刑事事件における有罪判決の有無を聞かれることが分かります。
6 名古屋高裁令和4年11月15日判決(担当裁判官は38期の長谷川恭弘43期の末吉幹和及び47期の寺本明広)は,民法上の保佐(準禁治産)等の制度は,本人の財産権等を擁護することを目的とするもので,警備業法における規制とは制度の趣旨が異なり,これを借用して被保佐人(準禁治産者)であることを警備員の欠格事由と定めた警備業法の本件規定(14条,3条1号)は,その制定当初から,憲法14条1項(法の下の平等),22条1項(職業選択の自由)に反するものであったとした事例です。
7 以下の記事も参照してください。
・ 司法修習生の採用選考に関する公式文書
・ 司法修習生採用選考の内容の変化(6期以降)
・ 司法修習生の国籍条項に関する経緯
・ 司法修習生の採用選考に必要な書類の掲載時期
・ 二回試験不合格時の一般的な取扱い
・ 司法修習生の司法修習に関する事務便覧
・ 司法修習生の旅費に関する文書
・ 採用内定留保者に対する面接(司法修習)
・ 司法修習開始前に送付される書類
・ 司法研修所の沿革
・ 恩赦の効果
・ 前科抹消があった場合の取扱い


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