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形式不備を理由とする遺言無効と死因贈与

1 死因贈与が成立する場合
(1) 死因贈与の方式については遺贈に関する規定の準用はない(最高裁昭和32年5月21日判決)ことから,遺言が形式不備を理由として無効であったとしても,遺言作成過程において遺言者が受遺者と相談して遺言を作成したとか,作成した遺言内容を伝えて受遺者に遺言を預けていたといった事情がある場合,死因贈与が成立する可能性があります(自筆証書遺言に関する東京地裁昭和56年8月3日判決(判例秘書に掲載),及び秘密証書遺言に関する東京地裁平成16年9月28日判決(判例秘書に掲載)参照)。
 そのため,遺言無効確認請求訴訟が提起された場合において,遺言者の意思能力に問題はないが口授がないという理由で公正証書遺言が無効になる可能性があるときは,不動産については,公正証書遺言と同一内容の死因贈与契約が存在することを理由として所有権移転登記請求を予備的に反訴しておいた方がいいと思います(東京地裁令和元年11月18日判決(判例秘書に掲載)参照)し,遺言無効確認請求訴訟が認容された後に別訴を提起できると思います(東京地裁平成16年9月28日判決(判例秘書に掲載)参照)。
(2) 控訴審で反訴提起する場合,被控訴人の同意が必要となります(民事訴訟法300条1項)。

2 反訴請求の趣旨の記載例
・ 反訴請求の趣旨を記載する際の参考例として以下のものがあります。
① 東京地裁平成16年9月28日判決(判例秘書に掲載)の主文1項
・ 「被告らは,原告に対し,原告がAと平成10年11月20日に合意した死因贈与契約が有効であり,同契約に基づき原告が別紙財産目録1及び2記載の各建物の所有権,同目録3記載の土地持分権,同目録4記載の各預金債権を取得したことを確認する。」というものでした(Aは平成11年5月7日に死亡しました。)。
② 東京地裁令和3年8月24日判決(判例秘書に掲載)の主文1項
・ 「被告らは,原告らに対し,別紙物件目録記載1から10までの各不動産につき,令和2年5月13日贈与を原因として,原告らの持分を各3分の1とする所有権移転登記手続をせよ。」というものでした(令和2年5月13日というのは贈与者の死亡日です。)。

3 死因贈与の執行者の選任
(1) 広島家裁昭和62年3月28日審判(判例秘書に掲載)は,自筆証書遺言としては無効な遺言書を死因贈与契約を証する書面と認め,死因贈与の執行者を選任しました。
(2) 新版 遺言執行の法律と実務133頁には以下の記載があります。
 死因贈与は、贈与者の死亡を条件(期限) として贈与する契約であるが、死亡により効力を生ずる死後行為の性質から遺贈の規定が準用され(民554)、この規定から死因贈与契約の履行のため遺言執行者選任の申立てができると解釈されています(昭和37年7月3日最高家二第119号最高裁家庭局長回答・家月14・ 8.229、水戸家審昭和53年12月22日家月31.9・50も同旨)

4 死因贈与と税金
(1) 相続税

・ 個人が死因贈与により財産を取得した場合,相続により財産を取得したものとして相続税の課税対象となります(相続税法1条の3)。
(2) 登録免許税
ア 死因贈与により不動産を取得した場合の登録免許税は,原則として固定資産税評価額の2%です。
イ 相続による所有権移転登記及び相続人が遺贈により不動産を取得する場合の登録免許税は,原則として固定資産税評価額の0.4%です。これに対し,相続人以外の者が遺贈により不動産を取得する場合は,原則として2%です(登録免許税法別表第一第1号(2)国税庁「No.7191 登録免許税の税額表」参照)。
(3) 不動産取得税
ア 死因贈与により不動産を取得した場合,不動産取得税は原則として課税されます。標準税率は4%ですが,令和9年3月31日までに取得した土地及び住宅については3%,住宅以外の家屋については4%です。また,同日までに取得した宅地及び宅地評価された土地については,課税標準を価格の2分の1とする特例があります。具体的な軽減措置の適用は,所在地を管轄する都道府県税事務所に確認する必要があります。
イ 不動産取得税が非課税となるのは,相続による取得のほか,包括遺贈及び被相続人から相続人に対してされた特定遺贈による取得です。相続人以外の者に対する特定遺贈は,原則として課税対象です(地方税法73条の7第1号)。

5 金融機関に対し,死因贈与契約に基づく預貯金債権の取得を主張できるかどうか
(1) 現行民法上,譲渡制限特約があっても,債権譲渡の効力は妨げられません(民法466条2項)。ただし,預貯金債権については,金融機関は,譲渡制限特約を知り,又は重大な過失によって知らなかった譲受人その他の第三者に対し,その譲渡制限特約を対抗することができます(民法466条の5第1項)。したがって,死因贈与の受贈者が金融機関に払戻しを求められるかは,適用される経過措置,預金規定の内容,受贈者の認識,金融機関の承諾及び対抗要件等を個別に確認する必要があり,「譲渡禁止特約がある」という理由だけで一律に結論付けることはできません。
(2) 債務者である金融機関が預貯金債権の遺贈について譲渡禁止特約による無効を主張することができないのは,遺贈が,遺言者の遺言という単独行為によってされる権利の処分であって,契約による債権の移転をもたらすものではないことに由来するものであると解されています(東京地裁令和3年8月17日判決(判例秘書に掲載))。

6 その他
(1) 死因贈与の仮登記については, 「死因贈与契約の受贈者は契約によって一定の不確定期限付の権利を取得するので、贈与者が同意すれば発効後の権利保全のため可能である。」とする考え方が実務において認められています(家事事件の実務と登記・税金373頁)。
(2) 税理士が教える相続税の知識HP「【遺言による贈与(遺贈)と死因贈与はどう違う?メリット・デメリットも解説】」が載っています。

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