1 新版 証書の作成と文例【遺言編】[三訂版]12頁には,付言に関して以下の記載があります。
法定遺言事項以外にも、遺言者が、遺言の動機、心情、配分を定めた理由、相続人らに対する希望などを遺言書に記載するよう求めることがある。[付言]はその例を示したものである。付言は、本文末尾に記載するのが通常であるが、時に、本文の前書きとして記載することもある。表題は、「付言」のほか、「付言事項」、「付記事項」など多様である。法律上の効果を伴わないものであるが、相続人らに遺言の趣旨を理解してもらい、遺言内容の円滑な実現を図る上で有益なことがある。逆に、本文の内容と抵触したり、その解釈を混乱させるおそれがある記述は避けなければならない。また、生前贈与等について客観的な事実に反する記載をしたり、一部の相続人等に対するいたずらな非難、悪口を記載すると、紛争を誘発、助長させるおそれがあるといわれる。その意味で、付言を記載するか否か、どのような内容を記載するかについても、慎重な配慮が要請される。なお、本文の各条項に織り込んで記載することも当該条項の趣旨を明らかにする点で有用なことがあり得るが、記載の方法が不適当であると、かえって条項の趣旨を不明確にする危険もある。
2 ケース別 特殊な遺言条項 作成と手続のポイント-補充事項・付言事項,祭祀承継等102頁には,「(1) 付言事項の意味と目的」として以下の記載があります。
遺言事項ではないことを遺言書に書いても、法的効力(強制力)がないだけで、それを書いてはいけないというものではありません。このように法的効力のない記載は「付言事項」と呼ばれています。付言事項は、遺言としての法的効力はありませんが、手紙(メッセージ)としての意味はあり、その記載内容が相続人等に伝わり、それが相続人等の行動に影響を及ぼせば、事実上の効果をもたらすことになります。
遺言書は、相続紛争の予防を目的に作るものですから、法的効力を期待するのが本来ですが、法的効力のない付言事項が相続人等に一定の効果を及ぼして事実として紛争の予防ができるなら、遺言書に付言事項を書くことは意味があります。
3 改訂 遺言条項例300&ケース別文例集80頁には,「遺言者自身が,遺言書に特別受益の内容や価額を後日判断するための手がかりとなる事実を具体的に記載している場合は,利害関係人間の紛争を事前に予防する事実上の効果を有するから,このような事実があれば,遺言書に具体的に記載しておくとよい」と書いてあり,その条項例として以下の記載があります(同書267頁)。
遺言者は,長女Aに対し以下のとおり生前に贈与した。遺言者が本遺言において長女Aに遺産を相続させなかったのは,以下のとおり.既に相当額の生前贈与をしたからであり、遺言者は.以上の理由により,長女Aが他の相続人に対し,遺留分減殺請求権を行使しないよう希望する。
① 平成○○年○○月○○日下記記載の土地及び建物(記載略)
② 平成××年××月××日金1000万円
③ (省略)
上記引用の「遺留分減殺請求権」は旧法上の用語です。令和元年7月1日以後に開始した相続について,遺留分権利者は,受遺者又は受贈者に対し,遺留分侵害額に相当する金銭の支払を請求します(民法1046条1項)。
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