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交通事故証明書の取得方法――申請経路,手数料,申請期間及び記載事項の読み方(AI作成)

第1 本記事の対象と射程

交通事故証明書は,自動車安全運転センターの都道府県事務所長が,交通事故の発生した日時及び場所,当事者の住所及び氏名並びに事故類型等を記載して交付する書面である。本記事は,この書面をどのような手続で取得することができるか,取得することができない場合に何を代替とするか,及び取得した書面をどの範囲まで事実認定の資料として用いることができるかを,法令,自動車安全運転センターの公表資料,国会会議録並びに裁判所ウェブサイト掲載の裁判例に基づいて整理する。制度及び手続の一般的な説明であって,個別の事案について結論を示すものではない。

本記事はAIを用いて作成しており,引用した条文はe-Gov法令検索で,裁判例は裁判所ウェブサイトで,交付手数料及び交付件数は自動車安全運転センターが令和7年に公表した資料でそれぞれ確認している。刑事記録の入手方法については不起訴事件記録(実況見分調書・物件事故報告書)の入手方法及び刑事記録の入手方法等に関する記事の一覧で扱っているため,本記事では交通事故証明書の取得に必要な限度で触れるにとどめる。

第2 交通事故証明書の法的性格

1 交付の根拠と記載事項

交通事故証明書の交付は,自動車安全運転センター法(昭和50年法律第57号)29条1項5号が定めるセンターの法定業務である。同号は,センターの業務として「交通事故に関し,その発生した日時,場所その他内閣府令で定める事項を記載した書面を,当該事故における加害者,被害者その他当該書面の交付を受けることについて正当な利益を有すると認められる者の求めに応じて交付すること」を掲げ,同条3項は,この書面の様式を内閣府令で定めるものとしている。

内閣府令で定めるべき記載事項及び様式を受けているのが,自動車安全運転センター法施行規則(昭和50年総理府令第53号)10条である。同条は「法第二十九条第一項第五号の内閣府令で定める事項は,交通事故の当事者の住所及び氏名,事故類型その他当該交通事故に関する事実を証するため必要と認められる事項とし,同号の書面の様式は,別記様式第五のとおりとする」と定めており,交通事故証明書の記載欄は同令の別記様式第五によって全国一律に定まっている。この構造から,交通事故証明書に記載されるのは事故の発生した日時,場所,当事者及び事故類型といった外形的事実に限られ,過失割合,責任の所在又は損害の内容は記載の対象とされていないことが分かる。

2 センターは事故を独自に調査しない

交通事故証明書の性格を理解するうえで重要なのは,センターが自ら事故を調査する機関ではないという点である。同法31条は「センターは,第二十九条第一項第三号から第五号までに掲げる業務を行うため必要な事項について,警察庁又は都道府県警察に照会することができる。この場合において,警察庁又は都道府県警察は,照会に係る事項をセンターに通知するものとする」と定めており,センターは警察から通知を受けた記録の内容をそのまま証明しているにすぎない。センターも,交通事故証明書について「警察から提供された証明資料に基づき,交通事故の事実を確認したことを証明する書面として交付するもの」と説明している。

したがって,警察に届出のない事故について交通事故証明書が交付されないのは,運用上の取扱いではなく制度の構造そのものに由来する。センターは「警察への届出のない事故については交通事故証明書の発行はできませんので,ご注意下さい」と明示している。

3 届出義務の所在と被害者側の利害

事故の届出義務を定めるのは道路交通法72条1項後段であり,「当該車両等の運転者……は,警察官が現場にいるときは当該警察官に,警察官が現場にいないときは直ちに最寄りの警察署……の警察官に当該交通事故が発生した日時及び場所,当該交通事故における死傷者の数及び負傷者の負傷の程度並びに損壊した物及びその損壊の程度,当該交通事故に係る車両等の積載物並びに当該交通事故について講じた措置……を報告しなければならない」と定めている。同項の報告義務を負うのは車両等の運転者その他の乗務員であって,歩行者である被害者は法律上の報告義務を負わない。

もっとも,証明書の交付が届出を前提とする以上,届出の有無について最も大きな利害を持つのは被害者側である。加害者から警察に届け出ないよう求められることがあるが,届出がされなければ交通事故証明書が作成されず,自賠責保険の請求,任意保険の請求及び訴訟のいずれにおいても事故の存在の立証に支障が生ずる。人身事故と物件事故のいずれとして処理されたかによって刑事記録の作成範囲も変わるため,届出の場面での判断は後の手続全体に影響する。

第3 取得方法

1 申請することができる者

申請することができるのは,法29条1項5号の文言のとおり,交通事故の加害者,被害者及びその書面の交付を受けることについて正当な利益を有すると認められる者である。センターは,正当な利益のある者の例として「損害賠償の請求権のある親族,保険金の受取人等」を挙げたうえで,「正当な利益のある方か否かの確認をさせていただく場合があります」と注記している。当事者以外の者が申請する場合には,交付を受ける利益の疎明を求められる可能性を織り込んでおく必要がある。

2 申請の経路

申請の経路は,①ゆうちょ銀行又は郵便局での払込みによる方法,②センター事務所の窓口で直接申し込む方法,③センターのウェブサイトから申請する方法の三つであり,これに加えて,④相手方の任意保険会社が事故対応のために取り寄せた交通事故証明書について原本照合印を押した写しの交付を受けるという実務上の経路がある。

経路申込用紙の入手先費用交付までの期間代理人
①郵便局等での払込みセンター事務所,警察署,交番及び駐在所1,000円及び払込料金申請から手元に届くまで10日程度委任状が必要
②センター事務所窓口センター事務所1,000円事故資料が届いていれば原則として即日交付委任状及び代理人の本人確認書類が必要
③インターネット申請不要1,000円及び払込手数料143円入金確認後10日程度不可
④相手方任意保険会社からの写し不要実費なし保険会社の対応による不要

①の申込用紙(払込取扱票及び振替払込請求書兼受領証)は,センター事務所のほか警察署,交番及び駐在所に備え付けられている。②の窓口申請は,交通事故資料が警察署等から届いていれば原則として即日交付を受けられる点に利点があるが,他の都道府県で発生した事故については後日郵送となる。センターの本部では各種証明書の申請を受け付けていないため,申請先は都道府県に所在するセンター事務所である。

③のインターネット申請には,センターが公表する四つの条件が付されており,「証明を希望する交通事故が警察に届け出たものであること」,「申請者が交通事故当事者『本人』(加害者・被害者)であること。代理人の申請はできません」,「申請される事故証明が,人身事故で5年以内,物損事故で3年以内に発生の事故であること」及び「交通事故発生時に警察へ届け出た住所に居住していること」のすべてを満たす必要がある。申請の流れは,連絡先メールアドレスを登録して案内メールを受け取り,そのメールに記載されたURLから申し込むという二段階であり,手数料の支払を7日以内に行わないと自動的にキャンセルとなる。代理人が申請することができないため,弁護士が受任した事件でこの経路を用いることはできない。

3 交付手数料

交付手数料は1通につき1,000円であり,消費税は非課税である。この額は令和7年10月1日に改定されたものであり,同日より前に作成された解説記事及びチェックリストの金額は現行のものではない。インターネット申請でコンビニエンスストア等で支払う場合の払込手数料も,同日に1通132円から143円へ改定されている。

改定時期交通事故証明書の交付手数料
令和元年10月改定前540円
令和元年10月から600円
令和4年4月1日から800円
令和7年10月1日から1,000円

手数料の額は法令には定められていない。自動車安全運転センター法及び同法施行規則を通覧しても手数料に関する規定はなく,同法30条及び同法施行規則13条5号が,交通事故証明書の交付に関する事項を国家公安委員会の認可に係る業務方法書の記載事項としているにとどまる。センターは手数料の算定根拠を公表しており,交通事故証明手数料1,000円に対し人件費546円,物件費460円,合計1,006円を計上し,物件費の内訳として証明書用紙等費用,システム経費,郵送料等費用及びその他を挙げている。同資料は,手数料について定期的に算定根拠の積算を行って手数料額との乖離を検証し,必要に応じて見直すこととしている旨を記載しており,今後も改定される可能性がある。

4 申請期間の制限

センターは「交通事故証明書は,人身事故については事故発生から5年,物件事故については事故発生から3年をそれぞれ経過したものについては原則交付できません」としており,この期間制限は物件事故として処理された事故について後に人身事故への切替えを検討する場面で特に問題となる。物件事故の3年という期間は,人身損害の消滅時効期間より短い場合があるため,受任時に事故日を確認して残期間を把握しておく必要がある。

もっとも,センターの説明は「原則」交付できないという書きぶりであり,「詳しくは交通事故が起きた都道府県のセンター事務所にお問い合わせください」と付記されている。この5年及び3年という期間について,自動車安全運転センター法,同法施行規則,道路交通法及び同法施行令のいずれにも根拠規定を見出すことはできず,センターが公表している資料からもその法的根拠は明らかでない。期間が経過した事案について一律に取得を断念するのではなく,事故を取り扱った警察署に対応するセンター事務所に照会することが実務上の手順となる。

5 代理人による取得

代理人が申請する場合には申請者本人の委任状が必要である。センターが公表している委任状の様式は,代理人の住所及び氏名並びに委任者の住所及び氏名を記載して「私は,上記の者を代理人と定め,   証明書の交付申請手続き及び証明書の受領にかかる一切の事務を委任します」とするものであり,委任者の氏名欄については「委任者本人が署名(氏名を自署すること)してください。記名(パソコンやゴム印等で記入すること)の場合は,委任者本人が押印してください」と注記されている。自賠責保険の被害者請求に用いる委任状が実印による押印と印鑑登録証明書の添付を求められるのとは異なり,交通事故証明書の交付申請の委任状は自署で足り,実印及び印鑑登録証明書は要求されていない。両者を同じものとして準備すると,不要な手間が生ずる。

代理人による申請の方法については,公表資料と実務書の記載に食い違いがある。センターの「よくある質問」は「代理人が申請する場合は,申請者本人からの委任状をお持ちのうえ,事務所の窓口で直接お申込みください」とし,あわせて代理人が自身の運転免許証等の本人確認書類を持参すべきことを求めている。これに対し,実務書には,交番等に備え付けられている申込用紙に必要事項を記入して郵便局で費用を払い込み,委任状を添えてセンターに手続をすれば入手することができるとするものがあり,郵送による代理申請を前提とした説明がされている。窓口申請を求めるかどうかは都道府県のセンター事務所ごとの運用による可能性があるため,郵送による代理申請を予定する場合には,事故地のセンター事務所に事前に照会するのが確実である。

なお,実務上最も負担が少ないのは④の経路,すなわち相手方の任意保険会社が既に取り寄せている交通事故証明書について,「原本に相違ないことを証明します」等の原本照合印を押した写しの送付を受ける方法である。受任通知に併せて資料一式の送付を求める際に,交通事故証明書についても原本照合印を求めておけば,自賠責保険の被害者請求にそのまま用いることができる。

6 証明書が交付されない場合の手数料の取扱い

申込用紙の記載内容に誤りがあるなど証明書の交付ができない場合について,センターは「申請日から1年間が経過したものについては,不交付扱いとさせていただきます。この場合,証明書交付手数料の返金はできません」としている。センターは,交付に際して確認を要する事項がある場合等には電話等で問い合わせるとしているため,申込用紙には確実に連絡の取れる電話番号を記載しておく必要がある。

他方で,インターネット申請に関する「よくある質問」には,「証明書を交付できない場合は,その理由を連絡の上,交付手数料を返還します。ただし,返還する金額は,交付手数料の額から返還に必要な費用を差し引いた金額相当となります。なお,払込手数料については返還できません」との記載がある。1年の経過を境として取扱いが分かれる建付けと読めるが,両者の関係はセンターの公表資料からは明示されていない。

第4 記載事項の読み方

1 主要な記載欄と用途

交通事故証明書の各欄は,事故の存在を証明するという用途にとどまらず,後続の手続の入口として機能する。左上に記載される事故照会番号は,政府の自動車損害賠償保障事業への請求書に転記すべき項目とされている。右下の照合記録簿の種別欄は,当該事故が人身事故として処理されているか物件事故として処理されているかを示し,自賠責保険の請求では原則として人身事故と記載されたものが求められる。自賠責保険関係の欄には相手方の自賠責保険会社及び証明書番号が記載されており,被害者請求の請求先はこの欄から特定する。事故類型の欄には追突,出会い頭衝突,側面衝突等の類型が記載され,過失割合の検討の出発点となる。

当事者の住所及び氏名の欄は,使用者責任の検討にも用いる。事故が業務中に発生した場合には加害者の使用者に対する民法715条に基づく請求を検討する余地があるが,使用者は交通事故証明書に記載されないため,車両の種類及び事故発生の時間帯等から業務中の事故であることをうかがわせる事情がないかを確認することになる。

2 甲欄及び乙欄から過失の大小を読み取ることはできない

当事者欄の甲及び乙の順序をどのように評価すべきかについては,見解が分かれている。実務書には,当事者欄の記載は公には加害者と被害者を区別するものではないとされているものの,実質的には通常,警察が責任が重いと判断した者が甲欄に記載されることなどから,事故態様を考えるうえで参考になるとするものがある。

これに対し,司法研修所の研究は,一般に甲乙の順に過失が大きいといわれているが必ずしもそうとはいえないから,交通事故証明書によって過失の大小を判断するのは避けるべきであるとしている。裁判官が執筆した実務書も,交通事故証明書は交通事故が発生したことを証明するものであって,どちらの当事者に責任があるかについて証明するものではないとしている。訴訟における過失の評価という場面では,裁判所側の資料が明示的に用いるべきでないとしている以上,甲乙の順序を過失の大小の根拠として主張することは避けるのが相当である。受任直後の見通しを立てる段階でも,甲乙の順序を出発点とするのではなく,実況見分調書,物件事故報告書及びドライブレコーダーの映像によって事故態様を独立に確定する必要がある。人身事故として届け出られていれば実況見分調書が作成されるが,物件事故のままである場合には実況見分調書は作成されず,警察署内限りの物件事故報告書が作成されるにとどまるため,交通事故の実況見分調書作成時の留意点及び交通事故の検番・送致番号の入手方法と弁護士会照会の手続(大阪)で扱った手順に従って記録を取り寄せることになる。

3 事故類型欄が事実認定に用いられた例

もっとも,甲欄及び乙欄と事故類型欄とでは扱いが異なる。甲府地方裁判所平成18年3月1日判決(平成16年(ワ)第490号)は,「交通事故証明書(甲1)の事故類型欄には車両相互の『追突』のところに○がついており,事故時の状態欄には,原告A,被告双方とも『運転』のところに○がついている。この証明書からは,被告運転自動車が原告A運転自転車に追突したことが読み取れる。追突の場合,過失相殺をしないのが原則である」と判示し,事故類型欄の記載から事故態様を認定して過失相殺を否定している。事故類型は警察が現認又は聴取した外形的事実の記録であり,過失の評価を含まない点で甲乙の順序とは性質が異なる。

4 交付された事実は事故性を決定づけない

交通事故証明書が交付されたことは,当該事象が保険上の「事故」に当たることまで証明するものではない。札幌地方裁判所平成14年4月26日判決(平成13年(ワ)第5029号)は,車両ごと河川に転落した死亡事案について,遺族が自動車安全運転センターの方面事務所長による交通事故証明書が発行されていることを主張したのに対し,「周囲の者の対応や交通事故証明書の発行の事実も,本件において,自殺を疑わせる決定的な事情はなかったことを示しているものと考えられる」と述べたうえで,他の事情を総合して自殺と認定し,保険金請求を棄却している。交通事故証明書は,警察に事故として届け出られ,その記録が存在することを示すにとどまる。

第5 交通事故証明書を取得することができない場合

1 人身事故証明書入手不能理由書

物件事故として届け出たまま人身損害の請求をする場合には,人身事故と記載された交通事故証明書を提出することができないため,これに代えて人身事故証明書入手不能理由書を提出する。物件事故の交通事故証明書は,照合記録簿の種別欄の記載を除けば人身事故のものと外観が大きく異ならないため,そのまま自賠責保険に提出して入手不能理由書の追完を求められることが少なくない。

実務上留意すべきは,作成者の選択である。実務書は,保険会社が入手不能理由書を作成すると事故軽微を理由とすることが多く,後遺障害の認定に不利に働くことがあるため,可能であれば被害者側で作成したい書類の一つであると指摘している。理由欄にどのような記載がされるかによって,後の等級認定の判断に影響が及び得る。

2 私有地内の事故等で証明書が発行されない場合

工場構内又は駐車場内の事故のように,そもそも交通事故証明書が発行されない事案がある。この場合について,自賠責保険の解説書は,信憑性のある立証資料の提出をもって交通事故証明書に代えることができるとしつつ,交通事故証明書の提出がない場合には被保険者,被害者及び目撃者に対して事故状況を詳細に調査することとなるため事故事実の調査に日時を要し,場合によっては支払われないこともあるとしている。

この代替が可能であることは,法令の構造からも説明することができる。自動車損害賠償保障法施行令3条は,被害者請求の書面に記載すべき事項として「加害者及び被害者の氏名及び住所並びに加害行為の行われた日時及び場所」等を挙げ,同条2項2号でこれらの事項を「証するに足りる書面」の添付を求めているにすぎず,交通事故証明書を名指しで要求してはいない。交通事故証明書は,この「証するに足りる書面」として実務上定着した標準的な資料であって,法令上の必要的添付書類ではない。

3 労災保険における交通事故発生届

労災保険の給付を受ける場合には,労働者災害補償保険法施行規則22条に基づき,保険給付を受けるべき者が所轄労働基準監督署長に対して第三者行為災害届を提出する。この届出に添付すべき書類として交通事故証明書が挙げられているが,労働局は「交通事故証明書は,自動車安全運転センターにおいて交付証明を受けたものを提出してください。なお,警察署へ届け出ていない等の理由により証明書の提出ができない場合には,『交通事故発生届』を提出してください」としており,様式第3号の交通事故発生届による代替が明示的に用意されている。労災保険と自賠責保険の適用関係については労災保険又は障害年金を支給される可能性がある事案における示談を参照されたい。

第6 制度ごとに見た交通事故証明書の必要性

1 自賠責保険の被害者請求

前記のとおり,自動車損害賠償保障法16条1項に基づく被害者請求において交通事故証明書は法令上の必要的添付書類ではないが,自賠責保険の実務では原則として人身事故と記載された交通事故証明書の提出が求められる。自賠責保険の解説書も,自動車事故が発生した事実についての公的証明として交通事故証明書の提出が必要であり,公的証明がなければ事故の事実の確認ができず保険の対象外とすることがあり得ると説明している。

2 政府の自動車損害賠償保障事業

ひき逃げ又は無保険車による事故について政府の保障事業に対して損害の塡補を請求する場合,自動車損害賠償保障法施行規則27条1項5号は請求書に「政府に対し損害の塡補を請求することができる理由」を記載すべきものとし,同条2項2号がその事項を証するに足りる書面の添付を求めている。損害保険料率算出機構が公表する請求書類の案内は,共通の必要書類として「『交通事故証明書』(人身事故扱いのもの)」を掲げ,申請用紙を最寄りの自動車安全運転センター,警察署,交番又は駐在所から入手してセンターに発行を依頼するよう案内している。また,請求書には交通事故証明書の左上に記載された事故照会番号を転記することとされている。制度の全体像は政府保障事業と無保険車傷害特約|ひき逃げ・無保険事故の補償と請求手続で扱っている。

3 任意保険の約款

任意自動車保険の標準的な約款は,保険金又は損害賠償額の請求に際して提出すべき書類として「公の機関が発行する交通事故証明書」を掲げつつ,「提出できない相当な理由がある場合を除きます」という留保を付している。約款の解説書は,この相当な理由の例として,事故当事者が死亡したことにより警察官署における事故事実が確認できない場合及び警察署へ交通事故届出を行ったが受理されなかった場合を挙げ,「公の機関が発行する交通事故証明書」とは警察官署への交通事故届出に基づき警察官署において事故の事実確認を行ったうえで自動車安全運転センターを発行窓口として発行されるものをいい,これ以外の私人による証明書等はこれに当たらないとしている。

もっとも,交通事故証明書があれば保険金が支払われるわけではない。同じ解説書は,車両保険のいわゆる当て逃げ免責について,交通事故証明書又は証人によって自動車相互間の衝突事故であることが立証された場合であっても相手自動車が確認されないときは免責となると説明しており,証明書の存在と支払要件の充足とは別の問題である。

4 健康保険その他の社会保険

健康保険を使用して治療を受ける場合には,第三者行為による傷病届に交通事故証明書の写しを添付することが求められ,人身事故の交通事故証明書を入手することができないときには人身事故証明書入手不能理由書を添えることとされている。詳細は交通事故でも健康保険は使える―第三者行為による傷病届と利用時の注意点を参照されたい。障害年金の裁定請求では,診療録の保存期間の経過等により初診時の医証を得ることができない場合に,身体障害者手帳の作成時の診断書,健康保険の給付記録等とともに交通事故証明書が初診日の認定資料として用いられることがあり,この扱いは複数の裁判例においても行政側の運用として説明されている。

第7 制度の沿革

交通事故証明書の交付が自動車安全運転センターの業務とされたのは,昭和50年法律第57号による同センターの設立以降である。それ以前は,事故を取り扱った警察署長の名義で証明書が発行されていた。この点は,昭和50年3月19日の衆議院交通安全対策特別委員会における質疑から確認することができる。同委員会で,交通事故証明書の発行主体がセンターに移ることによってかえって不便になるのではないかとの質問に対し,警察庁交通局長は「いままでそれぞれ事故を起こした署の署長名で証明書を出しておるわけでございます。事故を起こすところというのは必ずしも自分の住居の管轄署内ではなくて,半数以上は自分の署外で事故を起こしているのが実情でございます」と述べたうえ,「今回は郵送でひとつ受け付けてやりましょうということであります」,「できるだけこのために御不便にならないように,手近の派出所,駐在所,そういうところへ行けば申請書があるのだ,それで払い込みで証明書の申請を出せるというような形にして,できるだけ御不便をかけないようにしていこう」と答弁している。

現在の申請方法,すなわち警察署,交番及び駐在所に申込用紙を備え付け,郵便局での払込みによって申請するという仕組みは,この答弁で示された設計をそのまま引き継いだものである。窓口が警察署からセンター事務所に集約されることの不便を緩和する目的で用意された経路であるという経緯を踏まえると,申込用紙が現在も交番及び駐在所に置かれている理由を理解しやすい。

警察署長名義で発行されていた当時の実務は,裁判例からも確認することができる。東京高等裁判所昭和39年9月29日判決(昭和39年(う)第126号,高等裁判所刑事判例集17巻6号597頁)は,自動車損害賠償責任保険金の請求手続の代行が弁護士法72条にいう「その他の法律事務」に当たるとした事案であるが,その判決理由中で,請求者が請求書等に「所轄警察署長の自動車事故証明書」,医師の診断書等を添付して保険会社に提出するという当時の手続を説明している。また,東京高等裁判所昭和50年3月27日判決(昭和49年(う)第1158号,高等裁判所刑事判例集28巻2号170頁)は,交通事故証明書用紙の証明願欄に虚構の事実を記入し,真正な交通事故証明書から警察署長の記名印及び公印の押捺されている部分を切り取って貼り合わせ,これを複写機にかけて作成した写しが刑法155条1項の有印公文書に当たらないとした事例であり,当時の交通事故証明書が警察署長名義の文書であったことを示している。同判決は,写真コピーの文書性について異なる見解を採る名古屋高等裁判所の判決等には賛同することができないと明示しており,当時の下級審の判断が分かれていたことも読み取れる。なお,現在の交通事故証明書は特別民間法人であるセンターの事務所長名義で発行されており,同判決の事案とは文書の名義人が異なる。

第8 交付件数の推移

自動車安全運転センターの令和7事業年度業務報告書によれば,同年度の交通事故証明業務の実施件数は1,970,290件,金額は1,770百万円であり,前年度の1,955,159件から15,131件(0.8パーセント)増加している。制度創設時の見込みと比較すると,昭和50年3月19日の前記委員会で警察庁交通局長が昭和51年度の交通事故証明を130万件と見込むと答弁していたことに照らせば,半世紀を経て約1.5倍の水準にある。

同報告書は,交通事故1件当たりの証明書利用件数を交付率として公表している。

区分令和3年度令和4年度令和5年度令和6年度令和7年度
全体0.6160.5880.5690.5600.553
人身事故1.4671.4141.4071.4181.419
物件事故0.5260.5030.4880.4820.476

人身事故については1件当たり1.4通を超える証明書が交付されているのに対し,物件事故については2件に1通に満たず,しかもその比率は令和3年度から令和7年度まで一貫して低下している。物件事故として処理された事故の多くで交通事故証明書が取得されないまま推移していることを示す数値であり,物件事故については事故発生から3年という申請期間の制限があることと併せて意識しておく必要がある。

なお,同報告書の令和7事業年度事業計画には,交通事故証明業務について「交通事故証明書の適正かつ迅速な交付を推進するとともに,スマートフォンを含むインターネットを活用した交通事故証明書の電子申請の一層の普及・浸透を図る」と記載されている。ただし,前記のとおり電子申請は当事者本人に限られており,代理人による申請には対応していない。

出典・参考資料

1 法令

自動車安全運転センター法(昭和50年法律第57号)1条・29条1項5号・29条3項・30条・31条(e-Gov法令検索)
自動車安全運転センター法施行規則(昭和50年総理府令第53号)10条・13条(e-Gov法令検索)
道路交通法(昭和35年法律第105号)72条1項(e-Gov法令検索)
自動車損害賠償保障法(昭和30年法律第97号)16条1項・72条1項(e-Gov法令検索)
自動車損害賠償保障法施行令(昭和30年政令第286号)3条(e-Gov法令検索)
自動車損害賠償保障法施行規則(昭和30年運輸省令第66号)27条(e-Gov法令検索)
労働者災害補償保険法施行規則(昭和30年労働省令第22号)22条(e-Gov法令検索)

2 裁判例

東京高等裁判所昭和39年9月29日判決(昭和39年(う)第126号,高等裁判所刑事判例集17巻6号597頁,裁判所ウェブサイト)
東京高等裁判所昭和50年3月27日判決(昭和49年(う)第1158号,高等裁判所刑事判例集28巻2号170頁,裁判所ウェブサイト)
札幌地方裁判所平成14年4月26日判決(平成13年(ワ)第5029号,裁判所ウェブサイト)
甲府地方裁判所平成18年3月1日判決(平成16年(ワ)第490号,裁判所ウェブサイト)
さいたま地方裁判所平成19年11月30日判決(平成18年(ワ)第121号,裁判所ウェブサイト)
大阪地方裁判所平成19年2月7日判決(平成17年(わ)第7238号,裁判所ウェブサイト)

3 公的資料

①自動車安全運転センター交通事故に関する証明書及び申請方法(2026年8月8日閲覧)
②自動車安全運転センターよくある質問(2026年8月8日閲覧)
③自動車安全運転センター各種証明書のインターネット申請及び各種証明書のネット申請受付ページ(2026年8月8日閲覧)
④自動車安全運転センター証明書交付手数料改定のお知らせ(2025年10月1日)及び交通事故証明書交付手数料改定のお知らせ(2022年2月24日)
⑤自動車安全運転センター運転経歴証明手数料及び交通事故証明手数料の算定根拠(令和7年10月1日,PDF1頁)
⑥自動車安全運転センター事業・財務に関する資料所収の令和7事業年度業務報告書(資料上3頁,PDF5頁)
第75回国会衆議院交通安全対策特別委員会議録第7号(昭和50年3月19日。国立国会図書館国会会議録検索システム)
⑧損害保険料率算出機構政府の保障事業 請求キット 冊子② ご請求に関する書類(PDF3頁・5頁・11頁)
⑨損害保険料率算出機構自賠責保険(共済)ポータルサイト掲載の請求案内(PDF7頁)
⑩大阪労働局第三者行為災害に関する提出書類について(2026年8月8日閲覧),厚生労働省第三者行為災害のしおり

4 文献

①司法研修所編『簡易裁判所における交通損害賠償訴訟事件の審理・判決に関する研究』(法曹会,2016年)21頁~22頁・30頁・33頁
②『交通事故事件マニュアル』(新日本法規出版,2022年)38頁~40頁
③『交通事故事件の実務――裁判官の視点――』(新日本法規出版,2020年)195頁~196頁・208頁
④『2019年交通事故損害賠償必携 資料編』(新日本法規出版,2018年)24頁・63頁
⑤『交通事故事件処理の道標――実務をはじめからていねいに――』(日本加除出版,2020年)119頁~122頁・132頁~133頁
⑥『適切な賠償額を勝ち取る 交通事故案件対応のベストプラクティス』(中央経済社,2020年)19頁・252頁
⑦『自賠責保険のすべて〔13訂版〕』(保険毎日新聞社,2020年)140頁~141頁・144頁
⑧『自動車保険の解説』(保険毎日新聞社,2017年)233頁・236頁~237頁・320頁
⑨『交通事故事件の実務用語辞典』(第一法規,2018年)61頁~62頁・72頁~75頁
⑩日弁連交通事故相談センター編『交通事故損害額算定基準』(日弁連交通事故相談センター,2020年)313頁・318頁~319頁
⑪証明書交付請求研究会編著『実用 各種証明書のとり方』(日本法令,2021年)321頁・323頁