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収入印紙と弁護士業務――受取書,契約書及び訴訟費用における取扱い(AI作成)

第1 この記事が扱う対象

1 「収入印紙」が示す複数の法律関係

「収入印紙」という語は,弁護士の実務において複数の異なる法律関係の納付手段を指して用いられる。第一は,印紙税法(昭和42年法律第23号)が定める印紙税を,契約書や受取書などの課税文書に貼り付けて納付する場合である。第二は,民事訴訟費用等に関する法律(昭和46年法律第40号)が定める訴え提起の手数料その他の裁判所手数料を,収入印紙で納付する場合である。第三は,登録免許税法(昭和42年法律第35号)が定める登録免許税を,一定額以下の登記等について収入印紙で納付する場合である。これらは課税又は徴収の根拠法令,納税義務者若しくは納付義務者,及び現在の主たる納付方法がそれぞれ異なり,同じ「収入印紙」という証票を用いる点で共通するにすぎない。なお,収入印紙という証票の様式自体は,印紙をもつてする歳入金納付に関する法律(昭和23年法律第142号)2条2項に基づき財務大臣が定めている。以下では,このうち弁護士の日常業務に最も関係が深い印紙税法上の取扱いを中心に整理した上で,訴訟費用及び登録免許税における取扱いとの違いを確認する。

2 検討の対象と時点

本記事が対象とするのは,2026年8月現在で確認できる現行の印紙税法及び関連通達の解釈,並びに同時点までに施行された民事訴訟法改正(令和4年法律第48号)による訴訟費用実務の変化である。印紙税の課税文書該当性は,個別の文書の記載内容及び作成の実態によって結論が左右され得るため,具体的な文書が課税文書に当たるかどうかについては,税務署又は税理士に個別に確認することが望ましい。本記事は一般的な情報提供を目的とするものであり,特定の文書又は事案についての法的助言ではない。

第2 印紙税法における受取書と契約書の扱い

1 課税文書と納税義務者

印紙税法は,同法別表第一の課税物件欄に掲げる文書に印紙税を課すこととしており(同法2条),課税文書の作成者が納税義務者となる(同法3条1項)。一の課税文書を二以上の者が共同して作成した場合には,その全員が連帯して納税義務を負う(同条2項)。国税庁の印紙税法基本通達第7節(作成者等)は,委任に基づく代理人が代理人名義で作成する課税文書については,委任者の名義が表示されていても,当該代理人を作成者として扱うとしている(同通達43条1項)。弁護士が依頼者の代理人として文書を作成する場面では,誰が印紙税の納税義務者になるかを判断する上で,この規律を確認する必要がある。

2 弁護士が作成する受取書――「営業に関しない受取書」による非課税

印紙税法別表第一第17号は金銭又は有価証券の受取書を課税文書としているが,同号の非課税物件欄2は「営業に関しない受取書」を非課税としている。国税庁の印紙税法基本通達は,別表第一第17号文書26として,「弁護士,弁理士,公認会計士,計理士,司法書士,行政書士,税理士,中小企業診断士,不動産鑑定士,土地家屋調査士,建築士,設計士,海事代理士,技術士,社会保険労務士等がその業務上作成する受取書は,営業に関しない受取書として取り扱う」と定めている。国税庁の質疑応答事例「営業の意義」も,商法上の商行為に該当しない医師や弁護士等の行為は「営業」に当たらないと説明している。したがって,弁護士個人が着手金や報酬金を受け取った際に作成する領収書は,記載金額にかかわらず印紙税が課されない。同号の非課税物件欄1は,記載金額が5万円未満の受取書を一般に非課税としているが,弁護士等の受取書はこの金額基準にかかわらず,営業に関しないものとして非課税となる。

3 事務所職員が作成する受取書

弁護士事務所が職員に金銭を貸し付け,職員がその受領に際して受取書を作成する場合にも,同じ非課税の枠組みが適用される。国税庁の質疑応答事例「従業員から交付を受ける受取書」は,「会社と従業員の関係は,消費貸借契約に基づく私法上の関係となり,同一法人内で作成する事務の整理上の文書とは認められませんから不課税文書とはなりません。しかしながら,従業員は,給与所得者であり,印紙税法上の『営業者』には当たりませんので,従業員の作成する受取書は,営業に関しないものとして非課税になります」と説明している(根拠=印紙税法基本通達59条)。同事例は,受取書自体は非課税となる一方,事務所と職員との間で作成する消費貸借契約書や借用証書は第1号の3文書(消費貸借に関する契約書)に該当し,記載金額が1万円以上であれば課税される旨も注記しており,受取書の非課税と契約書の課税とを混同しないよう注意を要する。

4 弁護士法人が作成する受取書

一方,国税庁の質疑応答事例は,税理士法人が作成する受取書及び監査法人が作成する受取書については,出資者以外の者に対するものは課税されるとしている。その理由として示されているのは,税理士法48条の21第1項及び公認会計士法34条の22第1項が,いずれも会社法621条(利益の配当)の規定を準用しており,社員の利益配当を認める法人は,定款で配当を行わない旨を定めていても,別表第一第17号文書の非課税物件欄2かっこ書にいう「法令の規定又は定款の定めにより利益金又は剰余金の配当又は分配をすることができることとなっているもの」に該当し,出資者以外の者に対する受取書は非課税の対象から外れる,というものである。

弁護士法人についても,同法30条の30第1項が,一般社団法人及び一般財団法人に関する法律4条並びに会社法621条及び622条の規定を弁護士法人について準用しており,税理士法人及び監査法人と同じ法律構造が存在する。会社法621条1項は,持分会社の社員は持分会社に対して利益の配当を請求できると定めており,弁護士法人にこの規定が準用される以上,税理士法人及び監査法人と同じ理屈を当てはめれば,弁護士法人が社員以外の依頼者に対して作成する着手金や報酬金の受取書は,非課税物件欄2の対象から外れ,課税されることになる。もっとも,国税庁のウェブサイトには,弁護士法人が作成する受取書について,税理士法人や監査法人のような個別の質疑応答事例が公表されていない。この整理は,税理士法人及び監査法人に関する公表済みの解釈からの類推であり,弁護士法人固有の行政解釈による裏付けを欠く。個人事務所を法人化した弁護士法人が実務上どのような取扱いを受けるかについては,所轄の税務署に個別に確認することが確実である。

5 委任契約書,訴訟委任状及び顧問契約書の扱い

印紙税法別表第一第2号は「請負に関する契約書」を課税文書としているが,国税庁の印紙税法基本通達は,民法648条の2に定める成果完成型の委任に基づく契約は請負に該当しないとしている。同通達は,税理士委嘱契約書について,委任に関する契約書に該当し不課税であるが,税務書類等の作成を目的とし,これに対して一定の金額を支払うことを約した契約書は第2号文書に該当するとしている。同様の考え方によれば,弁護士の委任契約書についても,成果物の作成そのものを約する内容を含まない限り,委任に関する契約書として不課税に当たると考えられるが,弁護士の委任契約書を直接の対象とした国税庁の公表資料は確認できなかった。継続的な法律顧問契約のように,特定の相手方との間に継続的に生ずる取引の基本となる契約書に当たる場合には,別表第一第7号の課税文書(1通につき4000円)に該当し得る点にも留意を要する。

訴訟委任状については,印紙税法別表第一の課税物件表に「委任状」という文書は掲げられておらず,同表のいずれの号にも該当しないため,不課税文書に当たると解される。ただし,この整理は同表に委任状が明示的に列挙されていないことからの消極的な確認にとどまり,訴訟委任状の不課税性を正面から説明した国税庁の通達又は質疑応答事例は確認できなかった。

6 電子契約と印紙税

印紙税は文書課税であるため,契約書や受取書を紙の文書として作成せず,電子メールへの添付又はPDFファイルの送付といった電磁的記録の形で作成した場合には,印紙税は課されない。国税庁の質疑応答事例「取引先にメール送信した電磁的記録に関する印紙税の取扱い」は,「印紙税の課税対象となるのは,課税物件表の物件名欄に掲げられている文書であり,電磁的記録は文書に含まれません。したがって,おたずねの電磁的記録に印紙税は課税されません」と説明している。この扱いは,平成17年3月15日付けの政府答弁書(内閣参質162第9号)が,「文書課税である印紙税においては,電磁的記録により作成されたものについて課税されないこととなるのは御指摘のとおりである」と明言していることからも確認できる。弁護士が依頼者との間で委任契約書を電子署名により締結する場合や,顧問契約書をPDFで取り交わす場合には,この扱いにより印紙税は発生しない。

もっとも,同じ答弁書は,「電磁的記録については,一般にその改ざん及びその改ざんの痕跡の消去が文書に比べ容易なことが多いという特性を有しており,現時点においては,電磁的記録が一律に文書と同等程度に法律関係の安定化に寄与し得る状況にあるとは考えていない」と述べ,電子商取引の進展等によるペーパーレス化と印紙税の関係については,「今後ともペーパーレス化の普及状況やその技術の進展状況等を注視するとともに,課税の適正化及び公平化を図る観点等から何らかの対応が必要かどうか…必要に応じて検討してまいりたい」としている。電子契約が印紙税を発生させないという現在の扱いは,制度上確立した恒久的な取扱いというよりは,文書課税という印紙税の性格を前提とした現時点での解釈であり,将来にわたって同じ扱いが維持されるとは限らない。

紙で作成した契約書や受取書をスキャナで読み取って電子データとして保存した場合でも,印紙税の納税義務自体は文書を紙で作成した時点で既に成立しているため,消えることはない。国税庁「電子帳簿保存法一問一答【スキャナ保存関係】」(令和5年6月)問3は,「印紙税の納税義務は課税文書を作成したときに成立するものであることから,スキャナ保存される国税関係書類の書面(紙)についても,印紙税の課税文書であれば収入印紙を貼付しなければなりません」とした上で,「収入印紙を貼付した後にスキャナで読み取って最低限の同等確認を行った後であれば,収入印紙が貼付された当該書面(紙)を即時に廃棄しても差し支えありません」と説明している。令和3年度税制改正で紙段階の定期検査を求める適正事務処理要件が廃止されて以降は,スキャナ保存の要件を満たせば紙原本を保存し続ける法的義務はない。ただし,同じ一問一答は,印紙税の過誤納があった場合の還付申請には過誤納の事実を証する文書(原本)の提示が必要であり,スキャナデータに基づく還付は受けられないと注記しており,将来の還付請求に備える観点からは紙原本を保持しておく実務上の利益がある。

7 過怠税及び罰則

印紙税を課税文書の作成の時までに納付しなかった場合には,納付しなかった印紙税額とその2倍に相当する額との合計額,すなわち本来の税額の3倍に相当する過怠税が徴収される(印紙税法20条1項)。もっとも,納税者が自らその旨を所轄税務署長に申し出た場合であって,かつ,その申出が調査があったことにより過怠税の決定があるべきことを予知してされたものでないときは,過怠税の額は,納付しなかった印紙税額に10パーセントを加算した額に軽減される(同条2項)。印紙を貼り付けたが消印をしなかった場合には,消されていない印紙の額面金額に相当する額が過怠税として徴収される(同条3項)。これらの過怠税とは別に,相当印紙の貼付けをしなかった者は1年以下の拘禁刑又は50万円以下の罰金に処せられ(同法22条),偽りその他不正の行為により印紙税を免れた者は3年以下の拘禁刑若しくは100万円以下の罰金に処し,又はこれを併科するとされている(同法21条)。

8 過誤納の還付及び収入印紙の交換

課税文書に誤って過大な収入印紙を貼付した場合や,委任契約書のように課税文書に該当しない文書に誤って収入印紙を貼付してしまった場合には,過誤納金として還付を受けることができる(印紙税法14条)。還付を受けるには,「印紙税過誤納確認申請(兼充当請求)書」に過誤納となっている文書の現物を添えて,納税地の所轄税務署長に提出する必要があり,還付請求権は請求できる日から5年で消滅する。国税庁タックスアンサーNo.7130「誤って納付した印紙税の還付」は,収入印紙が印紙税だけでなく登録免許税や各種手数料の納付にも用いられていることを踏まえ,「登録免許税や特許手数料を納付するために収入印紙を貼り付けたような場合には,たとえ誤って貼り付けたものであっても印紙税法による還付の対象とはなりません」と注意を促している。誤って納付した収入印紙がどの法律関係に基づくものかによって還付の根拠法令が異なる点は,第1で述べた収入印紙の多義性が実務上の還付手続の分岐点としてそのまま現れる例である。なお,未使用の収入印紙は,郵便局において1枚につき5円の手数料(10円未満の券種はその半額)を支払うことで他の額面の収入印紙と交換できるが,現金への交換はできない。

第3 平成17年答弁書にみる非課税の位置づけと限界

1 弁護士等の受取書が非課税とされている理由

参議院議員櫻井充議員が提出した「印紙税に関する質問主意書」に対し,政府(小泉純一郎内閣総理大臣)は,平成17年3月15日付けの答弁書(内閣参質162第9号)で,弁護士や税理士,医師の受取書が非課税とされている理由を次のように説明している。「税理士,弁護士,医師等の業務には高度な公共性が期待されており,営利を目的とした商行為とは異なる。そこで,これらの者が本来の業務に基づき作成する金銭等の受取書は営業に関しないものとして取り扱っており,その結果,これらの金銭等の受取書に係る印紙税は非課税とされているものである」。この説明は,印紙税法基本通達が定める非課税の取扱いの根拠を,行政解釈のさらに上位にある立法政策の観点から示すものである。

2 政府が留保した見直しの可能性

同じ答弁は,この非課税の取扱いが将来にわたって固定されたものではないことも明らかにしている。答弁書は続けて,「なお,今後,これらの者の業務についてその社会的,経済的位置付けが変化するなど事情の変化があれば,必要に応じてその課税の在り方について検討してまいりたい」と述べている。弁護士法人による業務の法人化は,個人開業を前提とした従来の弁護士業務の形態から一定の変化を伴うものであり,この答弁が想定する「事情の変化」の一場面に当たり得る。もっとも,答弁から20年以上が経過した本記事作成時点においても,弁護士等の受取書非課税の取扱いを変更する法改正は確認できず,通達上の扱いも維持されている。

第4 訴訟費用としての収入印紙

1 印紙税とは別の法体系であること

弁護士が訴状や控訴状に貼付する収入印紙は,印紙税法上の印紙税ではなく,民事訴訟費用等に関する法律が定める裁判所への手数料の納付手段である。同法3条1項は,別表第一の上欄に掲げる申立てをするには,同表の下欄に掲げる額の手数料を納めなければならないと定めており,訴え提起の手数料は,訴訟の目的の価額に応じて算出される(同法4条1項)。手数料の費目及び計算方法の詳細は,別稿「訴訟費用とは――費目,計算方法,敗訴者負担と回収手続」で扱っており,本記事では収入印紙という納付手段そのものの位置づけに絞って説明する。

2 令和8年5月21日の民事訴訟IT化全面施行による変化

改正民事訴訟法(令和4年法律第48号)は令和8年5月21日に全面施行され,民事裁判書類電子提出システム(mints)を通じた電子申立てが,委任を受けた訴訟代理人について義務化された。この施行に伴い,民事訴訟費用等に関する法律8条も改正され,手数料の納付方法が変わっている。同条1項は,電子情報処理組織を使用してすることができる申立て(特定申立て)等の手数料について,最高裁判所規則で定めるところにより現金をもって納めなければならないと定め,書面申立てができる場合でやむを得ない事由があるときに限り,収入印紙による納付を認めている。同条2項は,これ以外の手数料については収入印紙による納付を原則としつつ,最高裁判所規則で定める場合には現金による納付も認めている。弁護士が代理人として通常の民事事件を提起する場合,手数料はペイジーによる電子納付が原則となり,収入印紙を貼付する場面は,書面による申立てがやむを得ない例外的な場合に限られることになる。

手数料額についても,電子申立てと書面申立てとで別表が分かれている。書面申立て用の別表第一に対し,電子申立て用の別表第二は,郵便費用相当額が定額で加算される仕組みになっている。訴え提起の場合,被告が1名であれば,書面申立ては別表第一の額に2500円を加算した額,電子申立ては1400円を加算した額となる(被告が2名以上の場合は,1名増えるごとに2000円が加算される)。特定申立てに係る手続では,従来の予納郵券の予納も不要とされた(同法11条1項ただし書)。mintsを用いた電子申立ての手続そのものについては,別稿「mintsの実務解説 弁護士向けQ&A」で扱っている。

3 訴訟上の救助による猶予

訴訟の準備及び追行に必要な費用を支払う資力がない者又はその支払により生活に著しい支障を生ずる者に対しては,裁判所は,申立てにより,勝訴の見込みがないとはいえないときに限り,訴訟上の救助の決定をすることができる(民事訴訟法82条1項)。この決定を受けた者は,裁判費用の支払を猶予される(同法83条1項1号)。訴訟上の救助は,手数料そのものを免除する制度ではなく,その支払を猶予する制度である点に注意を要する。

4 過納還付及び再使用証明

手数料が過大に納められた場合,裁判所書記官は,申立てにより,過大に納められた額の還付をしなければならない(民事訴訟費用等に関する法律9条1項)。訴え提起後,口頭弁論を経ない却下の裁判の確定又は最初にすべき口頭弁論の期日の終了前の取下げがあった場合には,納めた手数料の額から,その2分の1に相当する額(その額が4000円に満たないときは4000円)を控除した額が還付される(同条2項1号)。還付を受けるべき者が,納付に用いた収入印紙を他の手数料の納付に再使用したい旨を申し出た場合には,金銭による還付に代えて,還付の日から1年以内に限り再使用ができる旨の裁判所書記官の証明を付して,収入印紙が交付される(同法10条)。

第5 登録免許税及びその他の場面における収入印紙

不動産登記や商業登記に関与する場面では,登録免許税法に基づく登録免許税の納付手段として収入印紙が用いられることがある。同法は現金による納付を原則としつつ(21条),登記等につき課されるべき登録免許税の額が3万円以下である場合その他政令で定める場合には,登録免許税額に相当する印紙を登記の申請書に貼り付けて納付することを認めている(22条)。同一の申請書により二以上の登記等を受ける場合の税額は各登記等の税額の合計額となり(18条),計算した額が1000円に満たない場合の最低税額は1000円である(19条)。印紙税法上の課税文書への貼付,民事訴訟費用等に関する法律上の裁判所手数料の納付,登録免許税法上の登記等の税額の納付は,いずれも収入印紙という同じ形式の証票を用いるが,課税又は徴収の根拠及び納付義務者を異にする別々の制度である。

行政機関に対する情報公開請求の手数料も,収入印紙で納付する場面の一つであるが,印紙税法とも登録免許税法とも異なる第4の法体系に基づく。行政機関の保有する情報の公開に関する法律(平成11年法律第42号)16条1項は,開示請求をする者又は行政文書の開示を受ける者が政令で定める額の手数料を納めなければならないと定め,同法施行令(平成12年政令第41号)13条1項は,開示請求手数料を1件につき300円(オンライン申請の場合は200円),開示実施手数料のうち白黒の複写による交付を用紙1枚につき10円と定めている。同施行令13条3項は,特許庁その他一部の機関を除き,これらの手数料を開示請求書等に収入印紙を貼って納付しなければならないと定めており,行政文書の開示請求という弁護士業務に関わりの深い場面でも収入印紙が登場する。この手数料は印紙税法上の印紙税ではないため,過誤納があった場合の還付も印紙税法14条ではなく情報公開法令上の手続による。

第6 印紙税法の解釈が争われた裁判例

1 「受取書」の意義と仮受取書の二重課税

最高裁判所第一小法廷昭和27年3月13日判決(昭和25年(あ)第3312号,刑集6巻3号463頁,裁判所ウェブサイト)は,旧印紙税法下の事案において,同法にいう「受取書」とは,その名称が受取,記,証その他いかんを問わず,その内容,実質が金銭又は物品等の受領を証明する書面を指すと判示した上で,仮受取書についても,本受取書と同じくこれを作成する者が所定の印紙税を納めるべきものであると判断した。この判断は,一つの取引について複数の文書が作成された場合には,それぞれの文書について印紙税が課されるという,現行の印紙税実務における考え方の基礎となっている。前記の平成17年答弁書も,仮領収書と本領収書がそれぞれ作成された場合について,「『仮領収書』であっても,金銭等の受取の事実を証明する効力を有し,『仮領収書』と『本領収書』のそれぞれの文書が取引に係る法律関係の安定化に寄与するものであると考えられることから,それぞれの文書について課税することは文書課税である印紙税の趣旨に合致するものであり」,軽減措置を講ずることは考えていないと説明しており,同判決が示した理解と同じ方向にある。

2 課税文書該当性は文書の実質で判断される

東京地方裁判所平成27年12月18日判決(平成27年(行ウ)第28号,裁判所ウェブサイト)及びその控訴審である東京高等裁判所平成28年6月29日判決(平成28年(行コ)第14号,裁判所ウェブサイト)は,日用雑貨等の販売業者が,商品を購入した顧客から返品又は交換等の申出を受けた際に使用する「お客様返金伝票」と題する伝票綴りが,印紙税法別表第一第20号の「判取帳」に当たるかどうかが争われた事案である。両判決は,伝票綴りの冊子の表紙に綴り込まれた100枚の伝票の連続番号の範囲等が記載され,各伝票が切り離されずに保管・管理されるなど,一冊の冊子としての物理的な一体性が認められること,伝票の形式,内容及び使用方法から,複数の顧客から金銭受領の事実につき付込証明を受ける目的で作成されたものと認められること,店舗において多数回発生する商取引に関して金銭受領の事実という課税事項を継続的又は連続的に記載証明する目的で作成された帳簿であると認められることを理由に,同伝票綴りが判取帳に当たると判断した。この判断は,課税文書に該当するかどうかが,文書の名称や体裁ではなく,その使用方法及び使用実態という実質によって判断されることを示すものであり,弁護士が依頼者や事務所内部で用いる帳票が課税文書に当たるかどうかを検討する際にも参考になる枠組みである。

出典・参考資料

1 法令

印紙税法(昭和42年法律第23号)2条・3条・8条・9条~12条・14条・20条~22条・別表第一(e-Gov法令検索)
印紙税法施行令(昭和42年政令第108号)5条(e-Gov法令検索)
印紙をもつてする歳入金納付に関する法律(昭和23年法律第142号)2条(e-Gov法令検索)
民事訴訟費用等に関する法律(昭和46年法律第40号)3条・4条・8条~11条・別表第一・別表第二(e-Gov法令検索)
民事訴訟法(平成8年法律第109号)82条・83条(e-Gov法令検索)
登録免許税法(昭和42年法律第35号)18条・19条・21条・22条(e-Gov法令検索)
弁護士法(昭和24年法律第205号)30条の30(e-Gov法令検索)
会社法(平成17年法律第86号)621条(e-Gov法令検索)
行政機関の保有する情報の公開に関する法律(平成11年法律第42号)16条(e-Gov法令検索)
行政機関の保有する情報の公開に関する法律施行令(平成12年政令第41号)13条(e-Gov法令検索)

2 通達・行政資料

印紙税法基本通達 別表第一第17号文書21~27(国税庁)
印紙税法基本通達 第2号文書1・14・17(国税庁)
印紙税法基本通達 第7節(作成者等)42条~47条(国税庁)
印紙税法基本通達 第10節(その他の共通事項)59条(国税庁)
国税庁タックスアンサーNo.7105「金銭又は有価証券の受取書,領収書」(国税庁)
国税庁タックスアンサーNo.7125「営業に関しない受取書」(国税庁)
国税庁タックスアンサーNo.7130「誤って納付した印紙税の還付」(国税庁)
国税庁質疑応答事例「営業の意義」(国税庁)
国税庁質疑応答事例「税理士法人が作成する受取書」(国税庁)
国税庁質疑応答事例「監査法人が作成する受取書」(国税庁)
国税庁質疑応答事例「従業員から交付を受ける受取書」(国税庁)
国税庁質疑応答事例「取引先にメール送信した電磁的記録に関する印紙税の取扱い」(国税庁)
国税庁質疑応答事例「収入印紙の交換制度」(国税庁)
国税庁「電子帳簿保存法一問一答【スキャナ保存関係】」(令和5年6月)問3(国税庁)

3 国会答弁

内閣参質162第9号「印紙税に関する質問に対する答弁書」(平成17年3月15日,参議院)

4 裁判例

最高裁判所第一小法廷昭和27年3月13日判決(昭和25年(あ)第3312号,刑集6巻3号463頁,裁判所ウェブサイト)
東京地方裁判所平成27年12月18日判決(平成27年(行ウ)第28号,裁判所ウェブサイト)
東京高等裁判所平成28年6月29日判決(平成28年(行コ)第14号,裁判所ウェブサイト)