1 下級裁判所裁判官指名諮問委員会
2 裁判官再任評価情報の内容
3 重点審議者
4 再任評価情報の提供時期及び提出先
5 外部情報を提供したことは対象裁判官に知られない仕組みになっていること
6 裁判官再任評価情報を弁護士会が組織として取りまとめるのは相当ではないとされていること
7 裁判官の再任に関する国会答弁
8 裁判官の5段階評価の提供が不適当である理由
9 段階式評価に関する平成14年7月16日付の報告書の記載
10 口コミサイト等に関するメモ書き
11 関連記事その他
1 下級裁判所裁判官指名諮問委員会
(1) 下級裁判所の裁判官の任期は10年であり(憲法80条本文後段,裁判所法40条3項),再任されなかった場合,任期終了と同時に裁判官を退官することとなりますところ,これがいわゆる「再任拒否」です。
(2) 裁判官「再任」評価情報の提供は,平成15年5月1日施行の下級裁判所裁判官指名諮問委員会規則(平成15年2月26日最高裁規則第6号)11条に基づく制度であり,所属裁判所を管轄する高等裁判所の事務局総務課長に対し,郵送(親展表示)又は持参する方法で提出します。
そして,提供された再任評価情報は,下級裁判所裁判官指名諮問委員会の地域委員会がとりまとめた上で,中央の委員会に報告されています(規則13条)。
(3) 下級裁判所裁判官指名諮問委員会は,最高裁判所の諮問に応じて,下級裁判所裁判官としてとして任命されるべき者を指名することの適否等について審議し,その結果に基づき,最高裁判所に意見を述べる委員会です(規則2条)。
(4) 中央の委員会は11名の委員で組織され(規則5条),高裁単位で設置される地域委員会(規則12条)は原則として5名の委員です。
ただし,東京地域委員会だけは例外的に10名の委員で組織されています(規則14条)。
(5) 東京地域委員会は東京高裁に設置され,大阪地域委員会は大阪高裁に設置され,名古屋地域委員会は名古屋高裁に設置され,広島地域委員会は広島高裁に設置され,福岡地域委員会は福岡高裁に設置され,仙台地域委員会は仙台高裁に設置され,札幌地域委員会は札幌高裁に設置され,高松地域委員会は高松高裁に設置されています。
(6) 中央の委員会の庶務は,最高裁判所事務総局総務局第一課文書総合調整係で処理され,地域委員会の庶務は,高等裁判所の事務局総務課で処理されています(規則18条参照)。
また,中央の委員会の議事要旨は最高裁判所のホームページに,地域委員会の議事要旨は各高等裁判所のホームページに掲載されています。
(7) 裁判官の職務について裁判所事務局総務課に対して不服を申し立てたとしても,裁判の結論が変わることはあり得ません(裁判所法81条参照)。
(4) 「座談会:下級裁判所裁判官指名諮問委員会の6年間」には以下の発言があります(自由と正義2009年10月号35頁)。
外部情報は、徐々に減り続けてついにゼロになってしまいました。原因は色々あると思いますが、せっかく情報を寄せても、それがどう扱われて、どうなったのか、一応議事録は公開されているが、発言者は顕名ではないし、内容によってはカットされるため、情報提供者に伝わらない。それが一つの原因だと思いますし、この委員会の発展を妨げている要因の一つになっていると思います。
裁判官について極めて詳細で具体的な批判が寄せられた例がありました。指摘は、詳細で具体的であればあるほど分かりやすい反面、個別裁判批判、裁判官の個人的非難に踏み込みかねないところがあり、地域委員会の役割としてどこまで踏み込んでいいのか、あるいは未消化のままで中央の委員会に送っていいのか、議論が未整理のように思います。
(7)ア 「座談会:下級裁判所裁判官指名諮問委員会の6年間」には以下の発言があります(自由と正義2009年10月号36頁)。
再任裁判官の場合、重点審議者の場合は、それなりの意見・情報が寄せられていましたけれども、それでもまだまだ少ない。ましてや通常の再任の裁判官に対する情報はほとんどない。それは顕名ということもありますけれども、具体的な情報ということになると個別の事件についてかなり詳細なメモをとったうえで、日ごろから出そうという意欲がある人でないとなかなか出せない。何件か担当していて、この裁判官はどうかなという抽象的な情報だったら結構出せるのですが、それは具体性がないことになりますし、段階評価はだめだということになりますから、なかなか集まりにくい。だから、弁護士の意欲ももちろん必要ですけれども、もっと集まるような工夫がないと、毎年ごく一部の重点審議者についてのみ地域委員会で何件かの資料をもとに審議するだけになると思います。
(山中注:下級裁判所裁判官指名諮問委員会の)審議の基本資料は、新任(司法修習生からの判事補任官)の場合は司法研修所の2回試験の成績、裁判教官の意見書と採用面接結果の要約、裁判官再任(判事補の判事任官と判事の再任)の場合は各年の人事評価(所属庁の所長・長官による)の10年分の要約報告書、弁護士任官の場合は司法修習中の成績(弁護士経験10年未満の場合)、過去3年間の事件担当裁判官を含む関係者からの情報、候補者に対する最高裁判所事務総局の局長面接結果報告書で、裁判所の内部情報が主体である。重点審議者も、裁判所内部資料で絞られた後に、弁護士などから寄せられる外部情報に応じて追加される。
(8) 「座談会 新しい人事評価制度の15年と弁護士による情報提供の意義」には以下の発言があります東弁リブラ2018年9月号16頁)。
重点審議者,即ノーというわけでは決してないのですよ。重点審議者というのは,これは裁判官として問題ではないか,適格性に疑問があるのではないかということで重点審議者になっていることもあるし,もう1つはここだけ確認してくれという形の重点審議者もあります。誰が見ても素晴らしい裁判官なのだけれど,1点だけマイナス情報的なものがあるので,その点を確認してもらいたいということで重点審議になったこともあります。だからそこを重点審議イコール不適格者というふうにはつなげてはいただきたくないのです。
1 裁判官再任評価情報の提供https://t.co/HZYXmJynRq
2 令和5年10月16日に再任時期を迎える
松本明子裁判官(56期)の経歴
https://t.co/WuvAuGJWRS— 弁護士 山中理司 (@yamanaka_osaka) February 3, 2023
4 再任評価情報の提供時期及び提出先
(1) 裁判官「再任」評価情報の提供は,対象裁判官の再任時期に合わせて提供する必要があります。
    再任時期以外に裁判官再任評価情報を下級裁判所裁判官指名諮問委員会に提供した場合,原則として,当該裁判官が所属する裁判所の総務課長に送付されますものの,人事評価の資料として用いることがおよそ考えられないような場合には例外的に送付しないとされています(平成29年2月24日の下級裁判所裁判官指名諮問委員会(第78回)議事要旨3頁)。
(2) 下級裁判所裁判官指名諮問委員会の答申後に裁判官再任評価情報を提供した場合,原則として同委員会としては考慮しないのであって,例外的に考慮すべきか否かにつき疑義がある場合には庶務から委員長に相談し,委員長が委員会に諮るべきであるとと判断したときは委員会で議論することとなっています(平成29年2月24日の下級裁判所裁判官指名諮問委員会(第78回)議事要旨3頁)。
(3) 大阪高裁管内に勤務している裁判官に関して裁判官再任評価情報を提出したい場合,「〒530-8521 大阪市北区西天満4丁目7番3号 大阪高等裁判所事務局総務課長」宛に持参又は郵送すればいいです。
    郵便で送る際,封筒左側に赤字で「親展」,「地域委員会関係」と書いておいた方がいいです。
(4)   以前の裁判官の任官時期は4月だけでしたから,再任「評価」情報の提供は年1回でした。
しかし,53期(平成12年10月任官)が10年目の再任期を迎える平成22年からは,再任「評価」情報の提供は4月と10月の年2回となりました。
また,新60期(平成20年1月任官)が10年目の再任期を迎える平成30年からは,再任「評価」情報の提供は1月と4月と10月の年3回となります。
(1) 東弁リブラ2016年6月号の「裁判官の職務情報提供推進委員会報告」には以下の記載があります。
外部情報提供制度においては,職務情報提供者の氏名は,当該裁判官には知られない仕組みとなっている。
(中略)
平成24年10月から平成25年9月までの一年間の人事評価の情報提供数は,東京弁護士会で分かった範囲で40件以上,再任適否の職務情報は数件であった。
訴訟指揮や判決等を通じた法的知識,論点理解力, 審理を運営してゆくためのマネジメント能力,当事者との意思疎通,説得力,柔軟性,法廷における態度などにつき,例えば,訴訟指揮が強引だ,当事者の意見を聞こうとしない,判決文が簡潔過ぎて意味が不明だ,判決日が何度も延びる,和解の押しつけがある等のケ ースに出会われたら,報告をお願いしたい。
委員:外部情報があったことは,情報提供者の氏名を含めて,評価書の中には書かれることがあるのでしょうか。
吉戒:そんなことは,書かないです。情報源が分かるような書き方は,絶対しないです。
中山:もう当然,評価書は(山中注:対象となる裁判官本人からの)開示請求があるという前提で作成します。
・ 平成25年7月8日の下級裁判所裁判官指名諮問委員会(第58回)議事要旨には,以下の記載があります。
庶務から,東京弁護士会発行の「LIBRA」2013年3月号40頁以下に掲載された同弁護士会裁判官選考検討委員会事務局長名義の「裁判官情報提供のお願い」と題する記事の中に,昨年7月の当委員会において判事指名不適当とされた2人の判事補について,そのような結果となった経緯が記載され,また,同弁護士会の会員が裁判官情報を報告書として3通提出し,同弁護士会の裁判官選考検討委員会の承認があったときには,これを会務活動と認定すると記載されていることから,委員会庶務として,日弁連を通し,同弁護士会に対して,前者の部分については,あたかも当委員会の非公開の審議内容を同弁護士会の裁判官選考検討委員会が把握しているとの誤解を与えかねない記載ぶりになっており,ひいては,当委員会の信頼を失墜させ,裁判官任命候補者や弁護士任官候補者に対し,不要な誤解や憂慮を与えるおそれが高いこと,また,後者の部分については,従来から当委員会が適切でないとしている組織としての情報の取りまとめを強化しようとするものというだけでなく,ある種の利益誘導により情報を提供させようとするものであり,いずれも大変問題ではないかと強く指摘したところ,「LIBRA」5月号において,前者の点は推測した内容を断定的な表現で記載してしまったものであり,訂正してお詫びする旨の記事が掲載され,また,同6月号において,裁判官選考検討委員会の承認があったときに裁判官情報の報告を会務活動と認定するとの運用は取りやめる旨の記事が掲載されたことが報告された。
委員長より,前者の点については,守秘義務違反の疑いを生じさせ,委員会の信頼が失墜しかねないものであり,誠に遺憾である,委員としても,守秘義務の遵守が,当委員会の審議に対する指名候補者,情報提供者その他の関係者の信頼を確保する上で決定的に重要であることに思いを致し,この点について疑義が生じることのないよう自重,自戒しなければならないことを改めて確認したいとの発言があり,委員一同これを了承した。また,後者の点については,裁判官情報の提供を利益誘導を伴う弁護士会の組織的活動として行おうとするものであって,裁判官の職権の独立に対する影響,プライバシーへの配慮,適格性に疑義が生じない情報を広く収集するという観点に照らすと,これも誠に遺憾であり,今後,各地の弁護士会が情報提供の在り方について十分に理解し,同様の事態が生じないように望むとの発言があった。
7 裁判官の再任に関する国会答弁
(1) 昭和46年5月21日の国会答弁
ア 吉田豊最高裁判所事務総長は,昭和46年5月21日の衆議院法務委員会において以下の答弁をしています(ナンバリング及び改行を追加しています。)。
① お尋ねの諸点について申し上げますが、裁判官に任期制度を取り入れておりますのは、ただいま御指摘のように、裁判官は、憲法と裁判所法によって、強い身分保障を与えられております。
すなわち、弾劾裁判または法律によって執務ができないと裁判された場合のほかは、その裁判官の意思に反して、免官、転官、転所、職務停止、報酬の減額をすることができない、こういうふうな強い身分保障が与えられております。
そういたしました関係上、どうしてもその反面において沈滞を来たし、また人事の渋滞をもたらすという弊害がございます。
それを打破するとともに不適任者を排除して、より適任者を得るという道を開くために、この任用制度ができておるわけでございます。
② 御承知のように、判事を任用する場合には判事補、簡易裁判所判事、検察官、弁護士、大学の法律の教授、また調査官とか教官の中から採用することができることになっておるわけでございます。
したがいまして、今度問題になっております判事補が判事に採用されなかったということについてでございますが、判事補は十年たちますといわゆる判事に任命される資格を得るというだけでございまして、当然に任命されるわけではございません。
その際に全法曹から適任者を得るようにしなければならないのだということでございます。
③ そこで、先ほど、従来の慣行としては必ず判事補から判事に任命されているのではないかというお尋ねでございますが、そういう事実は私どもとしては認めるわけにはいきません。
現に従来も判事補から判事に採用することをしなかった例がございます。
この点はまた所管の人事局長から御説明いたしたいと思います。
イ 高輪1期の矢口洪一最高裁判所人事局長は,昭和46年5月21日の衆議院法務委員会において以下の答弁をしています(ナンバリング及び改行を追加しています。)。
① 再任問題につきまして、これまでは全員を再任する慣例ではなかったかというようなお尋ねでございますが、過去の例を一応申し上げたいと思います。
② これまで再任問題が起こってまいりましたのは、裁判所法が施行になりましたのが二十二年でございますので、それから十年たちました三十二年に初めて十年の任期ということでこの問題が起こってきたわけでございます。
したがいまして、三十二年から四十六年の今日まで十数年の間に裁判官につきまして相当数の再任、あるいはその中にはもちろん二十年たって三十年目の再任というのもございますし、十年過ぎて判事補から判事になるいわゆる再任というものもあるわけでございますが、全部ひっくるめましてそれは相当の数にのぼっております。
しかし、それらの状況のもとにおきまして、これまでいわゆる任期終了によってこの方は不適任であるということで再任の名簿に載らなかった例は次に申し上げるようなものでございます。
③ まず三十二年でございますが、この際には五人の不再任がございました。
その次に三十三年で一名の不再任の方がございました。三十四年で一名ございました。
その後しばらくございませんでしたが、四十三年に一名、四十四年に二名ということで、四十五年はございませんでしたが、四十六年、本年にまた一名の不再任があったということでございます。
もちろん再任された方の数から見ますれば非常に少ないものはございますけれども、これまでもそういった観点から再任制度を運用して、その際不適任と思われる方について名簿に登載しないという措置はいま申し上げたようにとられてきておるわけでございます。
何も今回初めてこのような措置がとられたというものではないわけでございます。
もちろん、いま申し上げましたように再任されました方の数と比べますと非常に少ない数でございますが、これは再任制度というものを決して安易な気持ちで運用しておるものではないということを示しておるのではなかろうかというふうに私どもは考えておるわけでございます。
(2) 平成27年5月14日の国会答弁
・ 40期の中村愼最高裁判所事務総局総務局長は,平成27年5月14日の参議院法務委員会において以下の答弁をしています。
下級裁判所裁判官指名諮問委員会が設立して十一年、正確に言うと、十六年からでございますから、十六年から平成二十六年までの間で合計四十一名の人間が再任又は判事任命が適当でないと答申されているところでございます。
#裁判官訴追委員 を2年務めた。
司法内部に「行政」があり、司法独立の美名の下、外部からアンタッチャブルな独善、忖度、事なかれ主義が蔓延している様に震撼した。安倍総理もビックリだ😵
本書に出てくる #岡口基一 裁判官との対峙は守秘により詳しく語れないが、司法の闇に光を投じる志は尊い。 https://t.co/ph7Vz6aNLj
— 津村啓介 (@Tsumura_Keisuke) March 3, 2020
(1) 下級裁判所裁判官指名諮問委員会大阪地域委員会(第3回)議事要旨(平成15年11月5日開催)には以下の記載があります。
○ 近畿弁護士会連合会提出の情報(アンケート結果)について
この情報について,どのように取扱うか議論され,「これは弁護士会が組織として収集・取りまとめたものであるが,中央の委員会では組織としての情報の収集,提出は問題であると議論されていたはずである。また,すべて非顕名の情報でもあり,検証不可能で問題である。5段階評価は主観に左右されるもので,内容にもばらつきがある。訴訟の帰趨によっても評価が分かれる。中央の委員会の枠組みからはずれているので,取り上げるべきではない。」「アンケートをどう見るのかという根元的な問題があり,人の一生をアンケートで左右するのは問題ではないか。特に匿名で提出されることは被評価者が顕名であることとバランスを失している。」「制度の立ち上げ期なので,あまり厳格にするのもどうかとは思うが,匿名にしている点は,裁判官の一生にかかわることであるのに,責任の所在が明らかにならず問題である。5段階評価のアンケートという手法については新聞社が行っているアンケートの結果にばらつきがあることから見ても,そのやり方によって結果が異なっていることがあり得るし,組織としての意見の集約になる危険があり,資料としては不適当である。」「弁護士会としては,地域委員会が求める適式な方法により,個々の弁護士が地域委員会に情報を提出するよう啓蒙すべきではないか。」「地域委員会による情報の収集は ,指名の適否に関する個別具体的な事例を集める制度であり,5段階評価は想定していない。5段階の評価基準も明確でない。」との意見が出された。
これに対して,「顕名でなくとも,具体的事例については一つの資料として意味があるのではないか,5段階評価についても一定数集まれば客観性が出てくる。弁護士会は,アンケート結果に一切手を加えていない。地域委員会で一切排除してしまうのは,この委員会が設けられた趣旨からいかがなものか。近弁連にアンケートを提出すれば地域委員会に情報が届くと思って提出した弁護士がいると思うので,地域委員会において一切排除するのは適当ではない。 」との反論がされた。また, 「組織的に集めたものであるとの問題はあるが,制度の立ち上げ期であることから,具体的回答部分については,今回に限り情報提供者の氏名が補充されれば中央の委員会に送り,その判断に委ねてよいのではないかとの意見が出された協議の結果,近畿弁護士会連合会提出の情報(アンケート結果)については,5段階評価の部分と具体的事例回答の部分を区別して検討することとなり,次のとおり取りまとめられた。
委員の中から5段階評価部分も中央の委員会に送付すべきものとする意見が出たが,5段階評価部分は中央の委員会に送付する情報から除外することとする。また,具体的事例回答の部分は,近畿弁護士会連合会に対して,情報提供者の氏名を顕名にしたものを送付するよう依頼し,提出された場合には中央の委員会に送付し,中央の委員会の判断に委ねることとする。
なお,具体性を欠いた情報や事実認定に対する不満をいうにすぎない情報は排除するとの観点から,具体的事例回答部分の一部を中央の委員会に送付する情報から除外することとされた。
(2) 東弁リブラ2018年9月号の「ご存じですか?裁判官の人事評価制度 弁護士の情報が肝なのです!」には,25期の吉戒修一 元裁判官の発言として以下の記載があります(リンク先のPDF13頁)。
吉戒:地域委員会では,たくさんの案件がありますし,そんなにこまかく議論することはできないです。もっぱら親委員会である指名諮問委員会にどういうふうに情報提供しようかと議論していました。私が地域委員会の委員長の時も親委員会の方からABC評価や5段階評価はだめだと言われましたから,こういう形の外部情報の提供はだめですねと,そういうふうな議論をしていましたね。
9 段階式評価に関する平成14年7月16日付の報告書の記載
・ 裁判官の人事評価の在り方に関する研究会報告書(平成14年7月16日付)の「第4 我が国の裁判官の人事評価の在り方に関する検討」には,段階式評価について以下の記載があります。
エ 段階式評価について
各評価項目について,文章式評価に加え,段階式評価を行うか否かが問題となる。評価項目のうち,【3】「一般的資質・能力」 については,その内容に照らして,段階式評価を行うことは適当でない。また,【2】「組織運営能力」については,文章式評価を行えば,被評価者の能力を把 握するためには十分であると考えられることから,段階式評価を行う必要はない。
これに対し,【1】「事件処理能力」については,段階式評価も併 せて行うか否かが問題となる。段階式評価を行うか否かは,評価の目的,評価情報の収集方法,評価の本人開示等の問題と密接に関連するので,このような点を念頭に置いて検討したが,この問題について,当研究会においては,二つの考え方に分かれた。
一つの考え方は,文章式評価のみでは被評価者の能力水準があいまいに表現されて分かりにくくなるおそれがあることなどから,明確性をもった段階式評価を取り入れるべきであるという考え方である。もう一つの考え方は,裁判官については短期的な明確なランク付けをするまでの必要がないこと,評価情報の収集にも制約があることなどから,段階式評価を取り入れるべ きではないという考え方である。後者の意見を述べる委員の方が多かった。
仮に,段階式評価を行う場合には,絶対評価によって,A優れている,B普通,C十分でないの基準をもって行い,文章式評価において,その段階の評価に至った事情が分かるように記載することが考えられる。なお,Bについては, その中でも比較的優れていると考えられる場合にはB+,やや問題があると考えられる場合にはB-と付記することができるものとしてはどうかとの考え方も示 された。
10 口コミサイト等に関するメモ書き
(1) 食べログHPの「点数・ランキングについて」,「食べログ利用規約」及び「口コミガイドダイン」につき,外部情報を提供する際の参考になると思います。
(2)ア HIKAKULOGの「信頼できるグルメサイトはどれ?元大手飲食法人WEB担当がグルメサイトが信頼できない理由とその構造について徹底解説」には以下の記載があります。
① グルメサイトの口コミ機能は基本的には良い口コミしか投稿できません。これは飲食店側から訴訟を起こされるリスクを回避するためです。
② 「口コミの質を重視する食べログ」と「口コミの量を重視するグーグル」、この2つのサービスを上手く使い分けることで、はずれの飲食店を避けられる可能性は上がります。
イ 日経ビジネスHPの「食べログを信用しますか? やらせ依頼の全文掲載」には以下の記載があります。
AKIに連絡してくるのは、一般に口コミ代行業者と呼ばれる人たちだ。レビューを投稿する「レビュアー」たちに飲食店が直接金銭を支払ってやらせを依頼することはほぼない。発覚すれば食べログ側から制裁を受け、店の評判が地に落ちる。このため飲食業界の裏側では、口コミ代行業者を前面に立ててリスクを回避する分業体制が確立している。
ウ 文春オンラインの「4人に1人は「信用していない」…若者の「食べログ離れ」 信用をどんどん失いつつある”口コミビジネス”の正念場」には「もうGoogle MapとSNSだけでいいのでは」とか,「これまで述べてきたように、グルメサイトにとって課題は山積だ。しかし中でも一番問題なのは、サービスの根幹を成すランキング、口コミなどの信頼性が損なわれていることだ。」なとと書いてあります。
(3) 月刊大阪弁護士会2017年6月号23頁ないし33頁に載ってある「裁判官評価情報の集計と分析3」の場合,①記録の把握,②争点整理,③証拠調べ,④和解,⑤話し方態度,⑥判決及び⑦総合評価について5段階評価のアンケート回答を集約していました。
11 関連記事その他
(1) 平成29年度(最情)答申第48号(平成29年12月1日答申)には以下の記載があります。
下級裁判所裁判官に任命されるべき者として最高裁判所が指名すべき人数については,法令上,特段の定めはない。また,最高裁判所の職員の口頭説明によれば,以前は任命されるべき人数より1名多く指名するのが通例であったが,下級裁判所裁判官指名諮問委員会が設置された現在では任命されるべき人数と等しい人数を指名しており,これらの事務は慣例によって運用しているものであるから,文書を作成する必要はないとのことである。このような説明の内容は,不合理とはいえない。
(2) 令和2年7月3日の下級裁判所裁判官指名諮問委員会(第94回)議事要旨2頁の以下の記載は,令和2年4月1日に弁護士任官し,来年1月に判事新任時期を迎える63期の河野申二郎裁判官(元東弁)及び63期の豊平(塩谷)真理絵裁判官(元埼玉弁)のことと思います。
4月に判事補に弁護士任官し,来年1月に判事の任命資格を取得する者については,弁護士としての執務状況等については判事補への任命の審議の際に検討済みであるので,類似の先例に従い,更に情報収集する必要はなく,4月以降の所属庁の長が作成した報告書により審議することとされた。
(3) 以下の記事も参照してください。
・ 裁判官人事評価情報の提供
・ 下級裁判所裁判官指名諮問委員会で再任不適当とされた裁判官の数の推移
・ 下級裁判所裁判官指名諮問委員会委員名簿
・ 平成20年度以降,任期終了により退官した裁判官の一覧
・ 裁判所関係国賠事件
・ 裁判所法第82条に基づき裁判所の事務の取扱方法に対して最高裁判所に申し出がなされた不服の処理状況
