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裁判所における一般職の職員―職種・身分・定員・採用(AIリライト)

第1 「一般職」という呼称と記事の対象

1 本記事で扱う職員

裁判所には,裁判官のほか,裁判所書記官,裁判所事務官,家庭裁判所調査官,裁判所速記官,裁判所調査官,裁判所技官,秘書官及び執行官等が勤務している。本記事では,最高裁判所が作成した「裁判所における一般職の職員」の資料価値を残しつつ,裁判所法上の職,令和8年度の定員及び現在の採用・養成制度を整理する。

ここでいう「一般職」は,裁判官以外の職員を便宜上まとめる呼称であり,国家公務員法上の一般職を意味しない。裁判所の公表資料でも「一般職(秘書官含)」という集計上の表現が用いられることがあるが,法令上の身分区分とは分けて読む必要がある。

2 国家公務員法上は特別職であること

国家公務員法2条3項13号は,「裁判官及びその他の裁判所職員」を特別職としている。したがって,裁判所書記官,裁判所事務官及び家庭裁判所調査官等も,国家公務員法上は一般職ではなく,特別職の国家公務員である。

もっとも,裁判所職員臨時措置法は,裁判官及び裁判官の秘書官以外の裁判所職員について,採用試験,任免,給与,人事評価,分限,懲戒,服務及び退職管理等に関する一般職の国家公務員の法律を,必要な読替えをして準用している。法的身分は特別職である一方,勤務条件には一般職の制度が広く準用されるという関係である。

3 裁判所職員と司法手続への参加者の違い

裁判所データブック2026は,裁判所の職員に続けて,調停官,調停委員,司法委員,参与員,鑑定委員,専門委員,精神保健審判員,精神保健参与員,労働審判員並びに裁判員・補充裁判員を掲載している。これらは司法手続に参加する者であるが,裁判所書記官や裁判所事務官等の常勤職員とは制度上の位置付けが異なる。

特に,裁判所調査官と専門委員を混同してはならない。裁判所調査官は裁判所法57条に基づく裁判所職員であるのに対し,専門委員は,民事事件等に関与して専門的知見に基づく説明等を行う司法手続への参加者であり,令和8年4月1日現在1795人のうち知的財産権関係は249人である。

第2 裁判官以外の主な裁判所職員

1 裁判所書記官と裁判所事務官

(1) 裁判所書記官

裁判所法60条は,各裁判所に裁判所書記官を置くと定める。裁判所書記官は,事件記録その他の書類又は電磁的記録の作成・保管,法令及び判例調査の補助等を担当し,裁判所の採用案内によれば,裁判所書記官が立ち会わなければ法廷を開くことができない。

裁判所書記官には裁判手続の進行を支える固有の役割があり,法廷立会いや調書作成だけでなく,当事者や訴訟代理人等との連絡・調整,書面・証拠の提出に関する働き掛け等を行う。書類だけでなく電磁的記録も職務の対象であることは,裁判手続のデジタル化を踏まえた現在の条文上も明記されている。

(2) 裁判所事務官

裁判所法58条は,各裁判所に裁判所事務官を置くと定める。裁判所事務官は,裁判部では裁判所書記官の下で裁判事務を担当し,事務局では総務,人事,会計等の司法行政事務を担当する。

事務局長は,裁判所法59条に基づき,各高等裁判所,各地方裁判所及び各家庭裁判所に置かれ,裁判所事務官の中から補される。事務局長は,裁判所長等の監督を受けて事務局の事務を掌理し,職員を指揮監督する。

2 裁判所調査官と家庭裁判所調査官

(1) 裁判所調査官

裁判所法57条は,最高裁判所,各高等裁判所及び各地方裁判所に裁判所調査官を置くと定める。裁判所調査官は,裁判官の命を受けて事件の審理及び裁判に必要な調査等を行い,地方裁判所では知的財産事件だけでなく,租税事件も職務の対象となる。

したがって,裁判所調査官を「一部の高裁及び地裁に配置され,知的財産事件を担当する職員」とだけ説明するのは正確でない。法律上の配置先と,個々の庁における実際の勤務配置は区別して記載する必要がある。

(2) 家庭裁判所調査官と家庭裁判所調査官補

裁判所法61条の2は,各家庭裁判所及び各高等裁判所に家庭裁判所調査官を置くと定める。家庭裁判所調査官は,家事事件,人事訴訟事件及び少年事件等について,心理学,社会学,社会福祉学,教育学等の行動科学の知見を用いて調査・調整を行う。

もっとも,法律上の配置と支部への常駐状況は一致しない。令和8年4月14日の衆議院法務委員会における最高裁判所の説明では,全国203か所の家庭裁判所支部のうち家庭裁判所調査官が配置されている支部は113か所,約55%であり,未配置庁では近隣庁の調査官が出向くなどして対応している。

3 裁判所速記官,裁判所技官及び秘書官

(1) 裁判所速記官

裁判所法60条の2は,「各地方裁判所」ではなく「各裁判所」に裁判所速記官を置くと定める。裁判所速記官は,供述を逐語的に記録する必要がある場合に法廷に立ち会い,速記録を作成する。

最高裁判所は平成9年2月の裁判官会議で速記官の新規養成を停止する方針を決定し,平成10年4月以降,新たな養成を行っていない。令和8年度の裁判所速記官の定員は180人であり,平成29年度の215人から35人減少している。

(2) 裁判所技官

裁判所法61条は,各裁判所に裁判所技官を置き,上司の命を受けて技術をつかさどると定める。ただし,これは各庁に全分野の技官が常駐することを意味するものではない。

営繕技官は,最高裁判所の営繕課を中心に配置され,建築,電気設備及び機械設備の専門分野ごとに,裁判所施設の設計・積算,工事監理,維持保全等を担当する。裁判所技官である医師は,家庭事件について医学的知見に基づく意見・助言を行うほか,裁判所職員の健康管理も担当する。

(3) 裁判官の秘書官

裁判所法54条及び56条の5により,最高裁判所長官秘書官1人,最高裁判所判事秘書官14人及び各高等裁判所長官秘書官各1人が置かれ,機密に関する事務を担当する。裁判官の秘書官は裁判所職員臨時措置法の適用対象から除かれているため,他の裁判所職員と給与・人事制度を一括して説明することはできない。

4 司法行政,研修及び図書館の法定職

裁判所法は,最高裁判所事務総長のほか,司法研修所教官・同所長,裁判所職員総合研修所教官・同所長及び最高裁判所図書館長を個別に定めている。最高裁判所事務総長は事務総局の事務を掌理し,司法研修所教官は裁判官の研究・修養及び司法修習生の修習を,裁判所職員総合研修所教官は裁判官以外の職員の研究・修養をそれぞれ指導する。

最高裁判所図書館長は,最高裁判所図書館の事務を掌理し,図書館職員を指揮監督する。これらは裁判所法53条及び55条から56条の4までに根拠を持つ法定職であり,「その他の職員」とだけ記載するより,司法行政・研修・図書館を担当する職として位置付ける方が分かりやすい。

5 執行官と廷吏

裁判所法62条は,各地方裁判所に執行官を置くと定める。執行官は,民事裁判の執行,競売不動産の現況調査及び裁判所文書の送達等を行い,事件関係者から手数料を受け,手数料が一定額に達しないときは国庫から補助金を受ける点で,他の職員と異なる。

執行官は裁判所職員定員法2条の定員に含まれず,令和8年4月1日現在の全国の員数は241人である。また,裁判所法63条には各裁判所に廷吏を置く旨の規定が残るが,法廷の秩序維持等にあたる裁判所職員に関する規則により,裁判官以外の裁判所職員に法廷秩序維持等の事務を命じることができる。

第3 令和8年度の定員と平成29年度からの変化

1 令和8年度の職種別定員

裁判所職員定員法2条は,裁判官以外の裁判所職員の員数を2万1540人とする。ただし,執行官,非常勤職員,2月以内の期間を定めて雇用される者及び休職者は,この定員に含まれない。

裁判所データブック2026による職種別定員は,次のとおりである。裁判官3826人を加えた合計は2万5366人であるが,執行官は別に集計されている。

職種令和8年度定員
裁判所書記官9878人
裁判所速記官180人
家庭裁判所調査官1613人
裁判所事務官9317人
その他552人
合計2万1540人

2 平成29年度との比較

最高裁判所作成資料に掲載された平成29年度定員と令和8年度定員を比較すると,裁判所書記官は44人,家庭裁判所調査官は17人増加した一方,裁判所速記官は35人,裁判所事務官は17人,その他の職員は352人減少し,全体では343人減少している。

職種平成29年度令和8年度増減
裁判所書記官9834人9878人+44人
裁判所速記官215人180人△35人
家庭裁判所調査官1596人1613人+17人
裁判所事務官9334人9317人△17人
その他904人552人△352人
合計2万1883人2万1540人△343人

この比較は定員の変化を示すものであり,現に勤務している実員や個々の裁判所への配置人員を示すものではない。また,各年度間の増減理由を一つの事情に帰することはできず,個別年度の定員法案及び国会審議による確認が必要である。

3 令和8年度改正の内訳

令和8年法律第14号による定員法改正は,家庭事件処理の充実強化のため家庭裁判所調査官10人を,ワーク・ライフ・バランス推進のため最高裁判所事務総局の裁判所事務官2人を増員する一方,事務の合理化・効率化等に伴い技能労務職員等138人を減員し,差引き126人を減員するものである。

令和8年4月14日の衆議院法務委員会では,減員対象に長期間欠員となっていた常勤の医師・看護師等の医療職72人分が含まれることについて質疑が行われた。最高裁判所は,非常勤医師の採用等により対応してきたこと,今後は非常勤採用を拡大して人的体制の充実を図る予定であることを説明しているが,これは定員整理についての最高裁判所の説明であり,個々の庁における医療職の配置状況を示すものではない。

第4 採用,養成,給与及び人事異動

1 裁判所事務官の採用

裁判所事務官の通常の採用試験には,総合職試験及び一般職試験があり,一般職試験には大卒程度区分と高卒者区分がある。採用試験の概要や過去の資料は,平成3年度以降の裁判所職員採用試験の採用案内パンフレット及び裁判所職員採用試験に関する各種データでも確認できる。

現在は通常の採用試験だけでなく,中途採用(社会人経験者選考採用・裁判所退職者の再雇用)も実施されている。社会人経験者選考の採用者は,採用時から係長級の裁判所事務官である主任・調査員として勤務する。

2 裁判所書記官と家庭裁判所調査官の養成

裁判所職員総合研修所の養成・研修案内によれば,裁判所書記官養成課程に入所するには,裁判所職員として一定期間勤務した後,裁判所職員総合研修所入所試験に合格する必要がある。養成期間は,法学部卒業者等の第一部が約1年,それ以外の第二部が約2年である。

本ブログでは裁判所書記官任用試験に関する規程も掲載しているが,現在の一般向け公表資料から実施範囲を確定できない。このため,本記事では裁判所が現在案内している一般的な養成経路を中心に説明している。

家庭裁判所調査官補は総合職試験により採用され,裁判所職員総合研修所の約2年間の養成課程を修了した後に家庭裁判所調査官に任命される。養成課程では,行動科学と法律の理論,面接・心理検査等の技法及び調査実務を学び,途中に各地の家庭裁判所での実務修習が置かれている。

3 給与,昇進及び服務

裁判官及び裁判官の秘書官以外の裁判所職員には,裁判所職員臨時措置法により,一般職給与法,国家公務員法その他の一般職関係法令が読替えの上で準用される。職員は行政職俸給表等の適用を受け,昇任や昇格は能力・勤務成績,職制及び級別定数等の枠組みの中で行われる。

服務,分限及び懲戒についても一般職制度が準用されるが,任免権者等は裁判所の組織に合わせて読み替えられる。裁判官の秘書官は同法の対象外であるため,この説明には含まれない。

4 人事異動で考慮される事情

平成28年3月16日の衆議院法務委員会において,最高裁判所は,一般論として,裁判所職員の異動では介護等の具体的な家庭事情にも可能な限り配慮する一方,適材適所,均質な司法サービス,人材育成及び異動負担の公平も考慮するため,本人の希望どおりにならない場合があると説明した。家庭裁判所調査官については,介護事情のほか,現住所から通勤する場合の経済的・身体的負担も検討すると答弁している。

これは平成28年時点の国会答弁であり,個別の異動結果や現在の全庁的な運用を示すものではない。令和8年度には仕事と育児の両立支援等のため事務官2人が増員されているが,公表資料から個々の職員の希望がどの程度実現したかまで確認することはできない。

第5 関連する資料記事

裁判所職員に関する記事の一覧では,採用試験,職員研修,給与,人事及び個別の官職に関する記事をまとめている。本記事で扱わない年度別の採用試験結果やパンフレットを探す場合は,同一覧から確認できる。

また,平成3年度以降の裁判所職員採用試験の採用案内パンフレットは制度説明の変遷を,裁判所職員採用試験に関する各種データは採用試験の年度別情報を確認するための資料記事である。現在の試験制度や募集状況は,裁判所ウェブサイトの最新情報と併せて確認する必要がある。

第6 出典・参考資料

1 法令

① e-Gov法令検索「国家公務員法」2条

② e-Gov法令検索「裁判所法」53条~65条

③ e-Gov法令検索「裁判所職員臨時措置法」

④ e-Gov法令検索「裁判所職員定員法」2条

⑤ e-Gov法令検索「執行官法」

2 裁判所資料

① 最高裁判所「裁判所データブック2026・裁判所の職員」22頁~24頁(PDF1頁~3頁)

② 最高裁判所「裁判所における一般職の職員」121頁~135頁(PDF1頁~15頁)

③ 最高裁判所「裁判所の仕事について

④ 最高裁判所「養成及び研修・研究について

⑤ 最高裁判所「中途採用(社会人経験者選考採用・裁判所退職者の再雇用)

⑥ 最高裁判所「営繕技官採用試験」及び「裁判所技官(医師)採用案内

3 国会資料

① 衆議院「第221回国会法務委員会第3号(令和8年4月14日)

② 衆議院「第154回国会法務委員会第8号(平成14年4月10日)

③ 衆議院「第190回国会法務委員会第4号(平成28年3月16日)

④ 法務省「裁判所職員定員法の一部を改正する法律案