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高次脳機能障害で後遺障害等級7級4号を認定してもらうための具体的な主張立証方法(AI作成)

◯本ブログ記事は専らAIで作成したものです。

第1 本稿の射程と7級4号の法的座標

1 本稿の射程

(1) 一般的な実務情報であること

本稿は,交通事故による高次脳機能障害について,自賠責保険の後遺障害等級7級4号を主張立証する際の一般的な実務手順を整理するものである。認定結果は,受傷態様,急性期所見,画像,症状経過,検査結果,生活・就労状況及び提出資料の内容に左右される。個別事件では,医療記録の原本と最新の法令・運用を確認し,医学的判断は担当医療職と協議する必要がある。

(2) 認定対象を3層に分けること

7級4号の主張は,次の3層を混ぜないことから始まる。

  1. 器質性・因果関係―事故による脳損傷と現在の症状を結び付けられるか。
  2. 症状の内容―記憶,注意,遂行機能,感情・行動調整等のどの機能が,どの程度障害されているか。
  3. 労務への影響―その障害が,意思疎通,問題解決,持続力・持久力,社会行動という能力にどう現れ,どの頻度で他者の助言又は援助を必要とするか。

診断名だけでは第3層を証明できず,就労上の失敗談だけでは第1層を証明できない。申立書では,3層ごとに証拠を配置し,最後に相互の整合性を示す。

2 7級4号の文言と判断枠組み

(1) 現行の等級文言

2026年7月16日現在の自動車損害賠償保障法施行令別表第二は,第7級4号を「神経系統の機能又は精神に障害を残し,軽易な労務以外の労務に服することができないもの」と定める。したがって,論証の中心は,症状が重いという抽象評価ではなく,通常の労務を妨げる具体的な機能制限である。

(2) 4能力による具体化

高次脳機能障害の労務制限を具体化する有力な整理軸は,厚生労働省の障害等級認定基準が掲げる次の4能力である。

  • 意思疎通能力
  • 問題解決能力
  • 作業負荷に対する持続力・持久力
  • 社会行動能力

労災保険と自賠責保険では号数の表記が異なるため,書面上は自賠責保険の「7級4号」を用いる。他方,4能力の認定基準は,労務制限を事実に分解するための参照枠として有用である。4能力の語を並べるだけでは足りず,各能力について「単独でできる作業」,「援助があればできる作業」,「できない作業」を仕分ける。

(3) 労災認定基準を参照した2つの構成

厚生労働省の認定基準は,7級相当の状態を,おおむね次の2経路で整理している。もっとも,これは労災保険の認定基準であり,自賠責保険の審査を直接拘束する要件ではない。自賠責では,施行令別表第二の等級文言に照らし,事故による高次脳機能障害が通常の労務をどの程度制限するかを,個別資料から判断する。以下の2経路は,その労務制限を具体化する参照枠として用いる。

  1. 4能力のうち1能力が半分程度失われている場合
  2. 4能力のうち2以上の能力が相当程度失われている場合

資料が複数能力への独立した制限を示す事件では,「2能力以上が相当程度失われた」との構成を検討する。他方,1能力の制限が中心であり,その半分程度の喪失を示す資料が厚い事件では,「1能力が半分程度失われた」との構成を検討する。両構成を併記する場合も,同じ事実の言い換えで済ませず,各構成を支える事実と証拠を分けることが重要である。

3 9級10号との分水嶺

(1) 症状の重さだけでなく能力数を示すこと

9級10号との境界では,単一能力の相当程度の喪失にとどまるのか,2能力以上に独立した制限が及ぶのかが重要となる。例えば,手順変更に対応できないことを問題解決能力だけで評価するのか,説明を理解して共有する意思疎通能力にも別個の制限があるのかを,別の場面と証拠で示す。

(2) 援助の頻度と内容を示すこと

厚生労働省の例示では,問題解決能力について,7級相当の一例は,一人で手順どおりに作業することに困難を生じ,「時々助言を必要とする」状態である。9級相当の一例は,同じく作業に困難を生じるが,「たまには助言を必要とする」状態である。表現の差は小さいため,実務では次の事実を定量・定性の両面から示す。

  • どの種類の作業で援助が必要になったか。
  • 対象作業全体のうち,どの程度の頻度で援助が発生したか。
  • 口頭注意だけで足りたか,手順の再説明,作業中断,交代又は事後修正まで必要であったか。
  • 援助がなければ,安全,品質,納期又は対人関係にどのような結果が生じたか。

(3) 日常生活の自立と労務制限を混同しないこと

食事,更衣,移動等が自立していることは,複数業務の同時処理,例外対応,顧客対応又は疲労下の判断が可能であることを意味しない。反対に,「常時監視が必要」と主張すると,独立生活や就労の事実との不整合を招き,より重い等級の状態と混同されるおそれがある。7級4号では,日常生活の自立を認めた上で,通常労務において時々必要となる具体的な助言・援助を描写する方が,事実に即していることが多い。

第2 手続選択と異議申立ての設計

1 最初に認定理由と審査資料を固定すること

(1) 被害者請求を利用する意味

自動車損害賠償保障法16条1項は,被害者から保険会社に対する直接請求を認める。被害者請求では,提出資料の構成を被害者側で管理しやすい。とりわけ高次脳機能障害では,後遺障害診断書だけでなく,急性期資料,画像,神経心理学的検査,家族・職場の報告及び業務資料を,統一した時系列と4能力の枠組みで提出する利点がある。

(2) 認定理由の追加説明を求めること

同法16条の4は,保険会社が保険金等を支払う際の書面説明を定め,同法16条の5は,被害者側から書面で更なる説明を求める仕組みを置く。異議申立ての前に,認定結果通知と説明書面を精読し,次のどこが否定されたのかを一文で固定する。

  • 器質性又は事故との因果関係
  • 症状の存在又は一貫性
  • 労務制限の程度
  • 4能力のうち2能力以上への影響

否定理由が不明瞭なまま資料を追加すると,審査者が重視した欠缺を補えない。

(3) 医療記録と提出済み資料を確保すること

少なくとも,救急搬送記録,診療録,看護記録,画像データと読影所見,リハビリ記録,検査用紙,退院時要約,診断書,日常生活状況報告,職場資料及び従前の提出書面を確保する。自賠責実務で「頭部外傷後の意識障害についての所見」,「神経系統の障害に関する医学的意見」又は「日常生活状況報告」等の書式が用いられている場合は,記載内容を診療録・看護記録・検査原資料と突合する。検査は総合得点だけでなく,下位項目,誤反応,所要時間及び検査者の行動観察が重要であるため,取得可能な範囲で原資料を確認する。

2 異議申立てを再審査資料にすること

(1) 結論先行型の申立書にしないこと

「症状が重いから7級である」という循環論法を避ける。申立書は,①前回認定理由,②争点,③新たに提出する事実,④その証拠,⑤4能力への当てはめ,⑥結論,の順にする。前回提出資料の再掲だけでなく,何が新しく,なぜ判断を変え得るのかを明記する。

(2) 不足資料を論点ごとに補うこと

否定又は不足の論点補充する資料の例説明すべき接続関係
器質性急性期画像,追加読影,意識障害記録,手術・入院経過受傷機転から脳損傷まで
症状の存在神経心理学的検査,リハビリ観察,家族・職場の具体的報告検査所見から日常・業務上の症状まで
7級の程度業務記録,援助記録,勤務配慮,第三者供述症状から4能力の制限まで
一貫性事故前資料,経時表,反対事実を含む説明時期・場面による差の合理的理由

(3) 新資料の意味を説明すること

新たな検査結果を提出するときは,検査名と点数だけを記載しない。どの認知機能を測る検査か,事故後のどの行動と整合するか,既存の反対所見をどう理解するかを説明する。家族又は職場の報告も,評価語ではなく,日時,課題,誤り,援助,援助後の結果,裏付け資料を記載する。

3 紛争処理申請と訴訟の使い分け

(1) 自賠責保険・共済紛争処理機構

自賠責保険・共済紛争処理機構は,同法23条の6に基づく指定紛争処理機関である。同機構の案内によれば,同一紛争についての紛争処理申請は1回である。そのため,異議申立てで収集できる資料を尽くし,医学的因果関係と等級該当性の双方を完成させてから申請することが望ましい。

(2) 民事訴訟

民事訴訟では,自賠責認定が重要な資料となる一方,裁判所が提出証拠全体に基づいて損害を判断する。証人尋問,鑑定又は詳細な事実認定が必要な事件では訴訟が適することがある。ただし,時間,費用,立証負担,既存資料の強弱及び相手方の争点を比較する必要がある。

(3) 手続を選ぶための比較軸

  • 争点が資料の読み落としなのか,医学的見解の対立なのか。
  • 新たな客観資料を追加できるか。
  • 第三者の供述又は専門家への反対尋問が必要か。
  • 自賠責基準上の等級だけでなく,職業固有の損害を立証する必要があるか。
  • 時効,示談交渉及び他の損害項目との関係をどう管理するか。

被害者請求には期間制限がある。自動車損害賠償保障法19条を踏まえ,国土交通省は,後遺障害に関する被害者請求について,症状固定日の翌日から3年以内を請求期限として案内している。期限内の請求が難しいときは,引受保険会社又は共済組合に時効更新の手続を確認する。異議申立て,紛争処理,示談交渉及び訴訟上の請求は,対象となる権利及び時効への影響が同一とは限らないため,手続ごとに期限を個別管理する。なお,平成22年3月31日以前の事故については,国土交通省の案内上,2年の取扱いが示されている。

ア 争点別の選択

前回の核心が器質性又は因果関係の否定であるときは,後日の検査を増やす前に,急性期画像,意識障害及び当時の認知・行動記録を再点検する。核心が9級と7級の程度差であるときは,4能力の数,援助頻度,職務配慮及び業務原資料を補う。医学的見解が対立し,書面だけでは観察条件を解明できないときは,紛争処理又は訴訟でどこまで審理できるかを比較する。

手続の順番は固定的ではない。もっとも,理由を特定せずに手続だけを重ねても,資料上の欠缺は解消しない。

第3 医学的因果関係を先に固める方法

1 急性期資料を時系列化すること

(1) 意識障害の経過

事故現場から救急外来,入院,退院までについて,意識レベル,健忘,見当識,指示理解,鎮静・挿管の影響及び記録者を時系列表にする。単一時点の数値だけでなく,改善又は変動の経過を示す。救急隊記録と診療録の差がある場合は,一方を無視せず,測定時刻,処置及び評価法の違いを検討する。

(2) 受傷直後の行動と認知の記録

看護記録やリハビリ記録にある,反復質問,病室離脱,指示保持の困難,易怒性,無気力,手順混乱等は,後日の陳述より時期が近い。該当記載だけを抜き出さず,同じ時期の良好な場面も併記し,負荷,時間帯,支援の有無による差を説明する。

2 画像所見を検査時期と撮像法に即して整理すること

(1) 急性期CTと早期MRI

損害保険料率算出機構の検討報告は,急性期CTを基本とし,必要に応じて早期MRIのFLAIR,DWI,T2*又はSWI等を検討することを述べる。書面では,検査日,事故からの経過時間,撮像法,病変部位,経時変化及び読影者を表にする。「MRIで異常あり」とだけ記載してはならない。

(2) 機能画像等の位置付け

DTI,fMRI,SPECT又はPET等は,個々の事件で補助資料となり得るが,それだけで器質性又は等級を確定するものではない。通常のCT・MRI,意識障害,臨床経過,神経心理学的検査及び生活情報との整合性を示す必要がある。

(3) 画像の程度と生活障害を直結させないこと

画像上の異常の大きさと機能障害の程度は,必ずしも比例しない。他方,画像所見が乏しい事件では,因果関係の審査が厳しくなり得る。したがって,「画像が軽いから障害も軽い」との短絡にも,「症状があるから画像は不要」との短絡にもよらず,複数の資料を総合する。

3 症状経過と他原因を同時に検討すること

(1) 事故前・事故後・環境変化後の3期比較

国立障害者リハビリテーションセンターの評価資料は,受傷前の生活,知的機能,性格・行動及び家族・職場からの情報を重視する。事故前,事故直後,復職・復学又は生活環境の変更後の3期に分け,同じ課題がどのように変化したかを比較する。事故前の人事評価,資格取得,家計管理,業務手順書等は,事故後の能力低下を示す比較資料となり得る。

(2) 疼痛・睡眠・気分・薬剤等の影響

疼痛,睡眠障害,抑うつ,不安,心的外傷反応,薬剤,飲酒,既往症等は,注意や疲労に影響し得る。これらを隠すのではなく,発症時期,治療経過及び症状との時間的関係を整理する。他原因の可能性を検討した上で残る一貫した障害を示す方が,医学的説明として強い。

(3) 遅れて顕在化した症状の説明

退院直後の保護的な環境では問題が目立たず,復職,復学,育児又は単独生活で負荷が増えて初めて障害が明らかになることがある。この場合は,症状が事故後新たに発生したと表現せず,環境負荷の上昇により既存の機能低下が顕在化したのかを検討する。事故後から環境変化までの兆候が,診療録,家族連絡,リハビリ又は生活記録に残っていれば接続する。

第4 4能力別の具体的な主張立証

1 意思疎通能力

(1) 立証命題

業務上必要な指示を理解し,保持し,適切に質問し,結果を相手に伝えられるかを検討する。会話が成立することと,複数条件を含む業務指示を正確に処理できることは異なる。

(2) 具体的事実

  • 複数の指示の一部を忘れ,別の作業を始める。
  • 相手の説明を理解したように応答するが,実行内容が異なる。
  • 要点を整理して報告できず,時系列又は主語が入れ替わる。
  • 予定変更を関係者に共有できず,重複又は欠落が生じる。
  • 抽象的又は婉曲な表現を取り違え,確認質問を適切にできない。

(3) 適合する証拠

指示メールと成果物の差,伝達漏れの修正履歴,予約・受注記録,申し送り表,言語聴覚療法記録及び同席者の報告が適する。供述には,「コミュニケーションが苦手」という評価ではなく,発言,指示,誤った実行,修正に要した援助を記載する。

2 問題解決能力

(1) 立証命題

決められた手順を実行できるかだけでなく,例外,優先順位の競合,複数課題及び予期しない変化に対応できるかを検討する。7級と9級の境界で,最も援助頻度を示しやすい能力である。

(2) 具体的事実

  • 定型作業はできるが,予定変更後に次の行動を選べない。
  • 複数の注文又は依頼が重なると,優先順位を付けられない。
  • エラーに気付いても原因を絞れず,同じ操作を反復する。
  • 必要な情報を集めずに判断し,後から全面的なやり直しになる。
  • 手順書にない状況で作業が停止し,他者の助言後に再開する。

(3) 適合する証拠

作業修正履歴,誤発注・返品記録,POS訂正,納期変更,予約重複,廃棄記録,事故報告,業務チャット及び上司・同僚の介入記録が適する。作業の難易度,混雑,時間制限及び助言のタイミングを併記する。

3 作業負荷に対する持続力・持久力

(1) 立証命題

一定の質と速度で作業を持続できるか,時間経過又は負荷増加に伴って誤りが増えるか,休憩や勤務短縮が通常以上に必要かを検討する。単なる主観的疲労ではなく,疲労前後の成績差を示す。

(2) 具体的事実

  • 勤務後半に確認漏れ,反応遅延又は作業停止が増える。
  • 短い作業はできるが,連続作業では精度を維持できない。
  • 予定外の休憩,早退又は翌日の休養が必要となる。
  • 騒音,人の出入り又は同時課題があると,持続時間が短くなる。
  • 勤務時間を保つために,担当業務の量又は質が大きく軽減されている。

(3) 適合する証拠

勤務表,休憩記録,作業件数,時間帯別エラー,締切遅延,残業制限,産業保健記録,リハビリの持続課題及び注意検査が適する。外傷性脳損傷後の疲労は研究上も重要な症状とされるが,個別事件では睡眠,疼痛,気分及び薬剤の影響を併せて評価する。

4 社会行動能力

(1) 立証命題

職場の規則,役割,距離感及び相手の反応に応じて行動を調整できるか,感情又は欲求を抑制できるか,自発性を保てるかを検討する。性格評価に流れず,事故前との変化と業務結果を示す。

(2) 具体的事実

  • 軽微な指摘に過度に反応し,作業又は対話を中断する。
  • 相手の表情や文脈に応じて発言を修正できない。
  • 個人的な情報又は不適切な発言を抑制できず,関係調整を要する。
  • 指示がなければ着手せず,完了後も次の課題へ移れない。
  • 衝動的な判断を行い,周囲が事後処理を担う。

(3) 適合する証拠

苦情対応記録,人事面談,注意・指導記録,配置変更,担当除外,家族及び複数の同僚による独立した報告,作業療法の場面評価が適する。人格を否定する表現を避け,「どの状況で,どの行動があり,誰がどのように調整し,業務がどう回復したか」と記述する。

第5 検査結果を労務制限へ接続する方法

1 検査は仮説に合わせて選ぶこと

(1) 記憶

記銘,保持,再生,展望記憶又は日常記憶のどこに問題があるかを仮説化し,WMS,RBMT等から臨床上必要な検査を選ぶ。全ての検査を一律に行う必要はなく,症状,受傷部位及び既往を踏まえて医療職が選択する。

(2) 注意・持続性

選択性,持続性,分配性又は処理速度の問題に応じて,CAT,PASAT,CPT,TMT等を検討する。点数だけでなく,課題後半の低下,見落とし,衝動的反応,疲労及び休憩の影響を業務事実へ接続する。

(3) 遂行機能・社会行動

BADS,Stroop課題,WCST又はMCST,DEX等を,仮説に応じて検討する。質問紙は,本人,家族及び支援者の評価差も情報となるが,単独で等級を決めるものではない。作業療法による実場面に近い評価と併用する。

2 正常値と障害不存在を同一視しないこと

(1) 全般的知能と前頭葉機能

全般的知能が保たれていても,複数課題,自己監視,柔軟な切替え,社会的判断又は疲労下の持続に問題が残ることがある。知能検査を軽視せず,その検査が示す保存機能を認めた上で,測っていない機能と実務上の障害を別に示す。

(2) 静かな検査室と実務環境

一対一で,課題が明示され,妨害刺激が少ない検査場面と,顧客,電話,締切,例外対応が重なる職場では負荷が異なる。検査結果と業務上の失敗が食い違う場合は,課題構造,時間,環境刺激,フィードバック及び休憩の違いを分析する。

(3) 本人評価と他者評価の差

外傷性脳損傷後には,自己認識の低下により,本人報告と他者報告が一致しないことがある。他方,差があるだけで病識欠如と決め付けることはできない。DEX等を用いた本人報告と他者報告の研究も参照しつつ,具体的場面,観察期間及び評価者の利害関係を検討する。

3 医学意見書に求める事項

(1) 診断と等級評価を分けること

医学意見書には,①診断根拠,②画像と意識障害,③症状経過,④検査の解釈,⑤他原因の検討,⑥症状固定,⑦4能力への医学的影響,を区別して記載してもらう。等級は最終的に法的・制度的評価を含むため,診断根拠と等級結論を一文に圧縮しない。

(2) 医師へ結論を誘導しないこと

医師には,認定に有利な表現を求めるのではなく,争点,既存資料及び質問事項を中立的に示す。不利な所見も含む全資料を提供し,回答できない事項はそのままにする。専門外の等級判断を強く求めるより,臨床所見と機能制限を具体化してもらう方が有用である。

第6 職場・事業所の客観資料を作る方法

1 就労継続の内側を可視化すること

(1) 名目上の就労と実際の労務能力

復職又は事業継続の事実は重要であるが,それだけで通常労務に制限がないとはいえない。家族経営,保護的配置,同僚の代替,顧客数の調整,担当除外又は無償の支援によって外形上の就労が維持されている場合がある。反対に,実際に独力で高負荷業務を継続している事実があれば,正面から評価する必要がある。

(2) 配慮と代替労務の棚卸し

事故前と事故後を,同一項目で比較する。

比較項目事故前事故後裏付け
勤務時間・休憩通常の勤務実態短縮,追加休憩,早退等勤怠,予定表
担当業務例外対応を含む範囲定型業務への限定等職務分掌,配置表
処理量・品質件数,納期,訂正同じ指標業務システム,成果物
他者の援助通常の相互確認個別の再説明,交代,修正援助記録,供述
事業運営営業日,予約枠,外注休業,枠縮小,代替要員等予約簿,請求,シフト

2 業務資料を能力別に紐付けること

(1) 既存資料

既に業務過程で作成された資料は,紛争を意識して作成された陳述書より信用性を説明しやすい。POS訂正,注文票,予約簿,勤務表,修正履歴,廃棄・返品,顧客連絡,苦情,休業日,外注費,業務チャット等を収集し,個人情報と営業秘密を必要な範囲でマスキングする。

(2) 前向き業務記録

既存資料だけで援助の内容が分からない場合は,将来に向かって一定期間,全勤務又はあらかじめ定めた全対象作業を記録する。期間は業務の繁閑を踏まえて設定する。例えば4週間から8週間を一つの目安とし,開始前に次の項目を固定する。

日時・時間帯課題と負荷本人の行動援助者・援助内容援助後の結果原資料
実際の日時定型・例外,同時課題,期限誤り,停止,遅延又は成功再説明,助言,交代,修正再開,完了,中止,損失回避注文票,ログ等

この期間は法定の基準ではなく,代表性と実施可能性を確保するための実務上の目安である。短期間で特殊な繁忙日だけを選ばない。

(3) 援助発生率の算定

援助頻度を示す一方法は,援助を要した対象作業数 ÷ 対象作業総数である。分母となる「対象作業」を先に定義し,難易度別にも内訳を示す。件数だけでなく,援助が単なる通常確認か,判断の代行又は作業交代かを区別する。公的基準は特定の割合を7級の閾値として定めていないため,算定値だけで結論付けてはならない。

3 証拠の信用性とプライバシーを守ること

(1) 成功例も失敗例も記録すること

失敗だけを選んだ記録は,選択偏りを指摘されやすい。対象期間・対象作業を先に決め,成功,失敗,援助あり,援助なしを全て記録する。観察者は事実と評価を分け,可能であれば複数名が独立に確認する。

(2) 改変・再現・過剰収集を避けること

過去の出来事を現在再現して撮影したものを,当時の記録のように提出してはならない。記録の遡及作成,日時の修正,失敗の誘発又は過度な監視も避ける。既存の防犯映像等を利用するときは,保存の適法性,目的,第三者のプライバシー,編集履歴及び原データの保全を確認する。電子資料は,システム名,抽出条件,抽出日,抽出者及び加工の有無を説明し,編集前データを保存する。画面画像だけでなく,可能であればシステムからの出力データと対応させる。

第7 典型的反論への備え

1 「知能検査が良好である」との反論

良好な知能検査結果は,保存された能力を示す重要な事実である。これを否定せず,その検査が測定する領域と,問題となる遂行機能,社会的認知,複数課題又は持続性の領域を区別する。下位検査間の差,行動観察,実場面評価及び業務資料を用い,「良好な能力があるにもかかわらず,特定条件で制限が現れる」ことを説明する。

2 「働けている」との反論

給与又は売上が維持されている場合でも,労務内容,他者の代替,追加人件費,家族の無償支援,担当削減,休業及び品質低下を検討する。名目上の肩書ではなく,独力で遂行できる業務の範囲を示す。ただし,収入低下が別の市場要因による可能性もあるため,機能障害との因果関係を個別に説明する。

3 「診療録に問題がない」との反論

短時間の一対一診察で会話が成立したことは,その場面の所見として尊重する。他方,診察の目的,観察時間,課題の有無,家族同席,医療者の支援を確認し,職場の複雑な課題を評価した記録かを区別する。「異常なし」という記載が,認知機能を系統的に検査した結果か,主訴がなかったという意味かも確認する。

4 「訴えが遅い又は一貫しない」との反論

症状の遅い申告は重要な反対事実であり,単に高次脳機能障害の特徴で説明してはならない。保護的環境から復職等へ移った時期,家族が異変を認識した時期,本人の自己認識,事故直後の兆候及び医療記録を時系列で検討する。本人と家族の説明が異なる場合は,両方を記載し,観察場面の差を示す。

5 「他原因又は検査の信頼性」の反論

睡眠,疼痛,気分,既往,薬剤又は生活上の負荷を診療経過に即して検討する。検査結果の妥当性評価が臨床上必要な場合は,担当医療職の判断で実施し,結果を単純な人格評価に用いない。複数時点・複数方法の整合性,行動観察及び客観資料を総合する。

第8 異議申立書の具体的な組み立て

1 冒頭1頁で争点地図を示すこと

冒頭では,次の5項目を簡潔に示す。

  1. 前回認定と,変更を求める等級
  2. 前回理由のうち争う部分
  3. 医学的因果関係の主要根拠
  4. 7級へ至る経路と対象能力
  5. 新証拠の一覧と,各証拠が補う欠缺

その後に,事故,治療,症状固定,検査,就労復帰及び認定手続の時系列を置く。審査者が本文を読む前に,何をどの証拠で判断すべきか把握できる構成にする。

2 証拠構造に応じて7級相当の構成を選ぶこと

(1) 複数能力の制限を示す構成

複数能力への独立した制限を示す資料がある場合は,例えば問題解決能力と意思疎通能力が,それぞれ相当程度失われていると構成する。各能力について,独立した業務場面,援助頻度,援助内容及び客観証拠を示す。持続力又は社会行動能力を加える場合も,同じ事実を名称だけ変えて重ねない。

(2) 1能力の制限を示す構成

1能力の半分程度の喪失を示す資料がある場合は,その能力を中心に構成する。例えば問題解決能力であれば,定型作業を含めた全体の中で,独力遂行の範囲がどこまで残り,どの種類の作業で時々助言が必要かを示す。複数能力の構成と併記するときも,表現を誇張せず,各構成を支える事実と証拠の対応関係を明らかにする。

ア 能力別主張の記載ひな型

「[対象能力]について,[対象期間]の[対象作業総数]件のうち,[援助を要した作業数]件で,[再説明・助言・交代・事後修正等]を要した。援助がなかった[具体的場面]では,[安全・品質・納期・対人関係上の結果]が生じた。他方,[保存されている能力と成功場面]は認められる。以上は,[業務原資料],[医療・リハビリ資料]及び[観察者資料]により相互に裏付けられ,[相当程度又は半分程度]の能力喪失に当たる。」

角括弧内には,個別事件の原資料に一致する事実だけを記入する。援助回数の分母が取れない場合は推計せず,対象日ごとの具体的事実と観察条件を示す。

3 証拠説明表を本文と同期させること

(1) 1事実・1能力・1証拠

本文の各主要事実には,原則として主たる能力を一つ割り当て,直後に証拠番号を付す。ある出来事が複数能力に関係する場合は,それぞれの能力に表れた別の側面を説明する。これにより,能力数を水増ししたとの反論を避けやすい。

(2) 証拠マトリクス

能力単独でできる課題困難な課題援助内容・頻度援助がない場合の結果証拠
意思疎通事実を記入事実を記入対象期間と実数を記入事実を記入資料番号
問題解決事実を記入事実を記入対象期間と実数を記入事実を記入資料番号
持続力・持久力事実を記入事実を記入対象期間と実数を記入事実を記入資料番号
社会行動事実を記入事実を記入対象期間と実数を記入事実を記入資料番号

4 避けるべき主張

  • 「画像があるから当然7級である」としない。
  • 「常に監視が必要」と安易に表現しない。
  • 一般知能が保たれる事実を隠さない。
  • 将来のてんかん発症リスクを,現在の後遺障害として扱わない。
  • 根拠なくびまん性軸索損傷と断定しない。
  • 嗅覚・味覚障害を,高次脳機能障害の重症度を示す事実として二重に評価しない。
  • 一部の裁判例から,一般的な認定傾向を断定しない。

第9 裁判例から得られる限定的な示唆

以下の裁判例は,事実関係と証拠構造がそれぞれ異なり,自賠責保険の審査を拘束するものではない。結論の類推ではなく,裁判所がどの評価要素を検討したかという限度で参照する。

1 7級と嗅覚障害を別個に検討した例

大阪地裁平成28年3月10日判決・平成25年(ワ)第6684号(裁判所ウェブサイト未掲載)は,高次脳機能障害の7級相当の評価と嗅覚障害を別個に検討した例として位置付けられる。実務上の示唆は,嗅覚障害を認知・行動障害の強さに混入させず,高次脳機能障害については4能力と労務制限で,嗅覚障害については検査,因果関係及び固有の支障で立証する点にある。

2 嗅覚・味覚障害の職業上の影響を検討した例

東京地裁平成13年2月28日判決・交通事故民事裁判例集34巻1号319頁(裁判所ウェブサイト未掲載)は,嗅覚・味覚障害が職業生活に及ぼす固有の影響を損害評価の中で検討した例として参照される。等級の併合と逸失利益の評価は別の問題であり,職業上の支障を主張するときは,職務の本質的作業,代替可能性,事故前後の実績及び他原因を具体化する必要がある。

3 器質性と受傷後経過が問題となった例

東京地裁令和4年5月26日判決・自保ジャーナル2129号(裁判所ウェブサイト未掲載)は,高次脳機能障害の主張を認めなかった例であり,器質的損傷を裏付ける画像所見,意識障害の回復経過及び受傷後早期の認知・行動・情緒面の記録が検討された。後日行われた検査だけに依存せず,急性期からの連続性を構築すべきことを示す。ただし,この一例から,画像所見が乏しい全ての事件について結論を一般化することはできない。

4 裁判例の使い方

裁判例を申立書に用いるときは,①自賠責等級の認定,②民事上の労働能力喪失率,③職業固有の損害,④併合等級,を区別する。事実の似た部分だけでなく,相違点も明記する。少数例から「裁判所は通常このように判断する」と述べない。

第10 嗅覚・味覚障害等を併存するときの整理

1 高次脳機能障害とは別に立証すること

外傷性脳損傷後の嗅覚障害に関する系統的レビュー及びメタ分析もあるが,個別事件では事故との因果関係,検査の信頼性,鼻腔・副鼻腔疾患等の他原因及び症状固定を確認する。嗅覚・味覚の自覚症状だけでなく,専門診療科の検査と職務・生活上の具体的支障を提出する。高次脳機能障害の4能力評価とは別表にする。

2 併合の法則を正確に適用すること

自動車損害賠償保障法施行令2条1項3号ニは,別表第二の13級以上に該当する後遺障害が2以上あり,より重い併合規則が適用されない場合,重い方の等級を1級繰り上げる。したがって,高次脳機能障害7級と,別個の後遺障害12級がそれぞれ成立する場合は,計算上の併合等級は6級となる。ただし,同一症状の二重評価ではないこと,各障害の因果関係と等級が独立に認められることが前提である。

第11 提出前の最終チェックリスト

1 因果関係

  • 救急搬送から退院までの意識・健忘・行動を時刻順にしたか。
  • 画像の検査日,撮像法,病変部位及び経時変化を確認したか。
  • 事故前の機能と性格・行動を客観資料で示したか。
  • 疼痛,睡眠,気分,薬剤及び既往等の他原因を検討したか。
  • 症状固定時の残存症状が,急性期からどう連続するか説明したか。

2 等級該当性

  • 主位的に2能力以上の相当程度の喪失を具体化したか。
  • 必要に応じて,予備的に1能力の半分程度の喪失を具体化したか。
  • 各能力について,独力作業,困難作業,援助,結果を記載したか。
  • 7級と9級の差を,援助頻度と能力数で説明したか。
  • 日常生活の自立と通常労務の制限を分けたか。

3 証拠品質

  • 検査の総合点だけでなく下位項目と行動観察を確認したか。
  • 陳述を既存の業務資料で裏付けたか。
  • 前向き記録の対象期間と対象作業を事前に定義したか。
  • 良好な検査,就労継続及び問題なしとの診療記載も開示して説明したか。
  • 原データ,作成者,作成時期及び編集履歴を説明できるか。
  • 第三者の個人情報と営業秘密を必要な範囲で保護したか。

4 結論

7級4号の立証で重要なのは,診断名や検査得点を増やすことではない。急性期からの器質性と症状経過を確保した上で,4能力ごとに,現実の仕事で何が単独遂行できず,誰のどの援助をどの程度必要とし,援助がなければ何が起きるかを,既存の客観資料で示すことである。9級との差は,抽象的な重症感ではなく,制限される能力の数と援助の実態に現れる。反対事実も含めて一貫した説明を作ることが,異議申立て,紛争処理及び訴訟のいずれでも基礎となる。

第12 出典

1 法令

2 裁判例

  • 大阪地裁平成28年3月10日判決・平成25年(ワ)第6684号(裁判所ウェブサイト未掲載)
  • 東京地裁平成13年2月28日判決・交通事故民事裁判例集34巻1号319頁(裁判所ウェブサイト未掲載)
  • 東京地裁令和4年5月26日判決・自保ジャーナル2129号(裁判所ウェブサイト未掲載)

3 文献