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被保険者本人が支出した診療録,画像記録その他の資料取得費が弁護士費用特約の「弁護士・損害賠償請求等費用」に当たり得るか(AI作成)

◯本ブログ記事は専らAIで作成したものです。

目次

第1 本記事の射程と結論

1 本記事の対象

(1) 一般論としての検討

本記事は,あいおいニッセイ同和損害保険株式会社が公開する自動車保険約款を題材として,被保険者本人が支出した診療録,画像記録その他の資料取得費が「弁護士・損害賠償請求等費用」に当たり得るかを検討するものである。

併せて,費用を請求する弁護士が,定義②該当性,必要性,相当性及び同意の各要件をどのように主張立証すれば,保険会社の査定及び社内決裁に耐える申請となるかを具体的に示す。

本記事は一般的な情報を示すものであり,特定の保険事故又は保険金請求についての法的助言ではない。

法令,監督指針,約款及び公表資料は,2026年7月16日時点で確認した内容である。

実際の案件では,保険始期日,商品名,特約名,改定履歴及び証券記載を確認し,当該契約に適用される約款原文から検討を始める必要がある。

(2) 検討対象となる公開約款

検討対象は,あいおいニッセイ同和損害保険株式会社が公開する2026年1月1日以降始期契約用の「ご契約のしおり(普通保険約款・特約)」の冊子166頁~167頁に掲載された弁護士費用に関する特約である。Web約款のページ表示では168頁~169頁に当たる。

同社の商品説明ページは,弁護士・損害賠償請求等費用について300万円を限度とする実費,法律相談費用について10万円を限度とする補償を案内し,弁護士等へ委任する場合には事前承認が必要であると説明している。

ただし,商品説明ページは要約であるため,具体的な給付範囲は適用約款によって判断すべきである。

2 結論の要点

(1) 本人取得という一事だけでは対象外としにくいこと

公開約款の定義①は,弁護士,司法書士又は行政書士への報酬について,委任及び保険会社の事前承認を明記している。

これに対し,定義②は,訴訟,仲裁,和解,調停その他の権利保全・権利行使に必要な手続費用を独立して掲げ,弁護士等への委任を文言上の要件としていない。

さらに,約款は,被保険者が自ら手続を行うことによって失った収入だけを補償対象から除いている。

したがって,「本人が直接取得した資料である」という一事だけで定義②該当性を否定することは,定義②に書かれていない取得主体の限定を追加することになるため,公開約款の文言及び構造からは採りにくいと考えられる。

(2) 本人取得費用が無条件に補償されるわけではないこと

請求側の主位的な主張は,①定義②には弁護士等への委任要件がないこと,②本人が行う手続を予定した逸失収入除外規定があること,③当該資料取得が損害賠償請求権の保全又は行使に具体的に必要であること,④第2条(1)の同意を得て支出したことの4点で構成するべきである。

このうち,①及び②は費用類型の解釈に関する問題であり,③及び④は個別案件の支払要件に関する問題である。

両者を分ければ,保険会社は,取得主体だけを理由とする包括的な不承認ではなく,個別の必要性,範囲,金額又は同意のどこに問題があるかを示す必要がある。

ただし,本人が支出した費用が当然に補償されるわけではない。

判断は,①適用約款,②損害賠償に関する争訟との関連,③権利保全・権利行使に必要な手続への該当性,④個別資料の必要性,⑤取得範囲及び金額の相当性,⑥重複又は代替可能性,⑦保険会社の同意,⑧支出及び用途の証明に分けて行うべきである。

この分解を行えば,「費用類型には該当し得るが,当該案件では重複資料であるため必要性を欠く」という判断と,「本人取得であるから費用類型そのものに入らない」という判断を区別できる。

(3) 見解相違が生じた場合の基本順序

見解相違が生じた場合,保険会社は,まず適用約款と争点を特定し,不足資料を確認し,必要に応じて二次査定を行い,結論と理由を具体的に説明すべきである。

それでも解決しない場合に,社内の法務・コンプライアンス部門,外部専門家又は裁判外紛争解決手続を利用するのが適切な順序である。

外部弁護士への相談自体は不適切ではないが,顧客への条項説明及び再査定を尽くす前に,対外窓口だけを外部弁護士へ切り替えることは避けるべきである。

第2 あいおいニッセイ同和損害保険の定義②の解釈

1 約款の構造

(1) 定義①と定義②の役割分担

公開約款は,「弁護士・損害賠償請求等費用」を,損害賠償に関する争訟についての費用として定義している。

定義①は,あらかじめ同社の承認を得て保険金請求権者が委任した弁護士,司法書士又は行政書士に対する報酬である。

定義②は,次の費用である。

「訴訟費用,仲裁,和解もしくは調停に要した費用またはその他権利の保全もしくは行使に必要な手続をするために要した費用」

定義①が専門職への報酬を扱い,定義②が権利保全・権利行使の手続実費を扱うと理解すれば,両者の役割を重複なく説明できる。

(2) 本人による手続を予定する除外規定

同じ定義は,被保険者が費用を支出するための手続を自ら行うことによって得られなかった収入を補償対象から除外している。

この規定は,被保険者が手続を自ら行う場面を予定した上で,手続に伴う逸失収入と,外部へ現実に支出する費用とを区別したものと理解するのが自然である。

本人による手続に伴う実費を全て対象外と解すると,逸失収入だけを除外した規定の意味は大幅に縮小する。

(3) 第2条(1)の同意要件

公開約款の第2条(1)は,保険金請求権者が同社の同意を得て弁護士・損害賠償請求等費用を支出したことを支払要件としている。

したがって,定義②に該当する可能性がある費用であっても,実務上は支出前に,資料名,取得先,予定額,取得範囲,取得目的及び対象争点を示し,書面又は電子メールで同意を得ることが重要である。

定義①の事前承認要件と,第2条(1)の同意要件は,次のように区別する必要がある。

判断対象定義①定義②
費用の性質弁護士,司法書士又は行政書士に対する報酬訴訟,仲裁,和解,調停その他の権利保全・権利行使に必要な手続費用
弁護士等への委任明記されている明記されていない
定義中の事前承認明記されている明記されていない
第2条(1)の支出同意適用される適用される

すなわち,定義②について弁護士等への委任は要求されていないが,第2条(1)の同意まで不要になるわけではない。この2つを明確に分けることが,請求側の主張の説得力を確保する。

2 文理解釈及び体系解釈

(1) 定義①の要件を定義②へ持ち込めないこと

同じ約款の中で,定義①には委任主体及び事前承認が明記され,定義②にはこれらが記載されていない。

同一の定義規定におけるこの書き分けは重い。定義①の「弁護士等への委任」という要件を,文言のない定義②へ当然に持ち込むことは困難である。

また,「弁護士費用に関する特約」という名称は,定義規定の具体的な文言を狭める独立の根拠にはならない。

給付範囲は,商品名から受ける一般的な印象ではなく,定義規定,支払条項及び除外規定を一体として判断すべきである。

請求側は,作成者不利の原則だけに依拠するのではなく,まず,①同一規定内の書き分け,②定義②の独立した文言,③本人手続を予定した除外規定,④第2条(1)との役割分担という客観的な解釈材料を示すべきである。

作成者不利の考え方は,これらの解釈を尽くしてもなお合理的な疑義が残る場合の補充的な主張に位置付ける方が,保険会社に対する説得力を保ちやすい。

(2) 「またはその他」の意味

定義②は,訴訟,仲裁,和解及び調停の費用と,「その他権利の保全もしくは行使に必要な手続」の費用を「または」で接続している。

この文言からは,後半部分が正式な裁判手続だけに完全に従属するのではなく,損害賠償請求権の保全又は行使に具体的に必要な手続を受け止める包括類型であると解するのが文理に整合する。

もっとも,「手続」という語がある以上,損害賠償請求と何らかの関係がある全ての生活上の支出まで含むものではない。

費用と権利保全・権利行使との間に,具体的かつ直接的な結び付きが必要である。

(3) 想定される限定解釈とその検討

保険会社からは,定義②の前半に訴訟,仲裁,和解及び調停が列挙されている以上,後半の「その他」の手続も,これらに準ずる制度的な手続に限られるとの反論が考えられる。

この反論には,費用範囲を無限定に広げないという合理性がある。

しかし,①「またはその他」という独立した接続,②権利の「保全」及び「行使」という広い目的表現,③本人による手続を予定する逸失収入除外規定を考慮すると,裁判所又はADR機関への申立費用だけに限定する解釈は,公開約款の全体構造との整合性を慎重に検討する必要がある。

適切な限定は,取得主体ではなく,争訟との関連性,手続性,必要性,相当性及び同意の各要件によって行うべきである。

3 「争訟」及び「必要な手続」の意味

(1) 訴訟提起後に限られないこと

定義全体は「損害賠償に関する争訟について」の費用であることを求めている。

もっとも,定義②が和解及び調停を明記し,特約が示談交渉段階の損害賠償請求にも利用されることからすれば,「争訟」を訴訟提起後に限ることは文脈に合わない。

事故態様,因果関係,治療の必要性,休業損害,慰謝料又は後遺障害について,相手方との具体的な見解相違が生じていれば,示談交渉中でも「争訟」に当たり得ると考えられる。

また,相手方から正式な拒否回答が出る前であっても,損害賠償請求の準備が具体化し,想定される争点,資料の立証目的及び提出先が特定されている場合は,正式回答前であることだけを理由に争訟関連性を否定すべきではない。

反対に,事故が発生しただけで,相手方の見解も資料の用途も明らかでない段階の探索的な取得は,争訟との関連が弱い。

(2) 資料取得が「手続」といえるための条件

資料取得が「必要な手続」といえるためには,少なくとも,①立証しようとする争点,②当該資料によって確認できる事実,③既存資料では足りない理由,④取得後の提出先又は使用方法を特定することが望ましい。

例えば,診療録を取得するという抽象的な説明よりも,「相手方が事故との因果関係及び休業の必要性を争っているため,初診時所見,検査結果及び就労制限の記載を確認し,追加請求書に添付する」という説明の方が,権利行使との結び付きを明確にできる。

4 同意要件の実務

(1) 同意は無限定な裁量を意味しないこと

約款上の同意要件は,保険会社が必要性及び費用の合理性を事前に確認するための重要な要件である。

もっとも,同意要件は,定義②に存在しない「弁護士等を通じて取得したこと」という主体要件を追加するための規定ではない。

同意の可否は,約款の目的,同種案件との整合性,具体的な争点,代替資料,取得範囲及び費用額に結び付けて判断されるべきである。

不同意とする場合は,費用類型への該当性を否定するのか,必要性を否定するのか,範囲又は金額だけを問題とするのかを区別して示す必要がある。

請求側は,不同意の結論だけではなく,適用条項,認定事実及び否定する要件を文書で特定するよう求めるべきである。これにより,再査定及びADRでの争点を固定できる。

(2) 支出済みの場合

同意前に支出済みである場合,請求者側は約款文言上不利になり得るため,まず,支出前の電子メール,電話記録,従前の承認範囲及び担当者の案内から,明示又は黙示の同意が成立していないかを時系列で確認する必要がある。

明示又は黙示の同意が認められない場合でも,保険会社の先行案内,従前の承認内容,証拠散逸の危険,取得の緊急性,回答の遅延,事後承認及び保険会社に生じた具体的な不利益を,形式的な不同意処理の相当性を検討する事情として主張する余地がある。

もっとも,これらの事情があれば当然に同意要件を充足するわけではない。この場面では,①同意の成立,②同意を欠いた効果,③費用自体の必要性及び相当性を分けて主張するべきである。

第3 診療録,画像記録その他の資料取得費への当てはめ

1 診療録及び画像記録

(1) 該当性が肯定されやすい場面

診療録及び画像記録は,初診時の訴え,客観的所見,検査結果,治療内容,症状の推移,既往症との区別,就労制限及び後遺障害の基礎事実を確認する資料となる。

相手方が傷害の内容,事故との因果関係,治療期間,休業の必要性又は後遺障害を具体的に争っており,当該資料を追加請求,異議申立て,ADR又は訴訟に使用する予定がある場合,取得費用は定義②に該当し得る。

(2) 個別検討を要する場面

相手方の正式回答前でも,診断書だけでは損害の内容を説明できず,近く請求又は異議申立てに使用する具体的な予定があれば,対象期間及び部位を限定した取得には必要性が認められることがある。

他方で,取得目的の定まらない全診療期間の一括取得,既に同一資料がある場合,簡易な代替資料で足りる場合又は損害賠償請求と無関係な部分については,必要性又は相当性が否定され得る。

判断理由は,「本人取得」であることではなく,争訟関連性,必要性,範囲,重複及び費用の各項目に即して示すべきである。

2 労働基準監督署その他の公的記録

(1) 記録の名称ではなく内容を見ること

労災認定関係資料は,事故又は業務起因性,療養経過,休業期間その他の事実を確認する資料となり得る。

もっとも,労災保険上の判断が,民事上の損害賠償責任又は損害額を当然に拘束するものではない。

したがって,書類名だけで有用又は無用と決めず,①取得可能な書類か,②どの事実認定が記載されているか,③損害賠償請求のどの争点に使用するか,④既存資料と重複しないかを確認すべきである。

「行政機関内部の報告書である」という説明だけでは,損害立証上の有用性及び定義②該当性への十分な回答にならない。

3 その他の典型的費用

(1) 内容証明郵便,公的証明及び記録謄写

時効完成猶予を目的とする催告,請求意思を客観的に残す内容証明郵便,事故記録,登記事項証明書その他の公的証明の取得費は,具体的な権利保全・権利行使との関係が明らかであれば,定義②に該当し得る。

ただし,通常の通信費まで一律に含むとは限らず,目的,手段の必要性及び金額を個別に確認する必要がある。

(2) 医師の意見書その他の専門資料

医師の意見書,鑑定資料その他の専門資料は,争点に対する有用性が高い反面,費用も大きくなり得る。

取得前に,質問事項,作成者,予定額,既存資料との差異及び利用場面を明らかにし,必要に応じて取得範囲を段階化することが望ましい。

4 必要性及び相当性の判断表

(1) 査定を可視化する項目

判断項目確認すべき内容主な証拠
適用約款保険始期日,商品名,特約名,定義及び支払条項保険証券,適用約款
争訟関連性相手方と見解相違がある争点相手方回答,交渉記録,請求書
手続該当性権利保全又は権利行使との具体的な結び付き取得目的書,提出予定書面
必要性何を立証し,既存資料ではなぜ足りないか争点・資料対応表
相当性対象期間,部位,媒体,単価及び総額料金表,見積書
重複・代替同一資料の有無,より簡易な手段の有無既取得資料一覧
同意誰が,何について,いつ同意したか電子メール,受付記録
支出証明現実の支出額及び支出目的請求書,領収書,送付状

この表を請求者と保険会社が共有すれば,抽象的な約款論だけで対立することを避けやすい。

第4 保険会社のあるべき対応手順

1 受付時の争点整理

(1) 適用約款を最初に確定すること

最初に,保険始期日,商品名,特約名及び改定履歴を確認し,回答に用いる定義及び支払条項を確定する必要がある。

現行の商品説明又は社内の要約資料だけで,過去契約を判断してはならない。

(2) 照会と苦情を区別し過ぎないこと

当初は一般照会であっても,約款解釈への異議又は再査定の申出が示された時点で,苦情管理の対象として記録し,回答期限及び責任者を定めることが望ましい。

照会,異議,苦情及び紛争は連続しており,名称だけで処理水準を下げるべきではない。

2 一次査定

(1) 結論を5つに分けること

一次査定では,少なくとも,①費用類型への該当性,②個別資料の必要性,③取得範囲及び金額の相当性,④同意要件,⑤支出証明の5項目を別々に判定するべきである。

「対象外」という1語だけでは,追加資料によって判断が変わるのか,約款解釈そのものが争われているのかが分からない。

(2) 不足資料を具体的に求めること

必要性が不明であれば,資料の名称,取得先,予定額,対象期間,対象部位,立証事項,既存資料及び利用予定を照会するべきである。

保険会社が疑問を示すこと自体は適切な査定であり,問題は,何を確認すれば判断できるかを明らかにしないまま結論だけを示すことである。

少額の実費については,必要性の確認に要する事務負担,顧客負担及び紛争拡大の費用も考慮し,簡易かつ迅速に判断することが望ましい。

ただし,少額であることは,必要性を確認せずに支払う理由にも,約款上の給付を省略する理由にもならない。

3 二次査定及び部門間連携

(1) 同じ前提を繰り返さないこと

請求者が約款の具体的文言を示して異議を述べた場合,同じ査定者が同じ説明を繰り返すだけでは再査定として十分でない。

管理者による二次確認を行い,定義①と定義②の関係,本人手続を予定する除外規定,同意要件及び個別の必要性を改めて検討すべきである。

(2) 全社的な解釈問題として扱う場合

同種契約への波及が想定される場合,請求額が小さいことだけを理由に,社内法務又は外部専門家への照会が不要になるわけではない。

むしろ,商品部門,支払管理部門,法務・コンプライアンス部門が連携し,統一的な解釈及び回答例を整備することに合理性がある。

ただし,内部で専門的検討を行うことと,顧客対応の窓口を直ちに外部弁護士へ切り替えることは別の問題である。

4 回答書の内容

(1) 不承認又は一部承認の理由

回答書には,少なくとも次の事項を記載することが望ましい。

① 適用約款の名称,版及び該当条項

② 本人取得であること自体は定義②該当性を当然には排除しないか否か

③ 当該費用について認定した事実

④ 争訟関連性,手続性,必要性,相当性,重複及び同意ごとの判断

⑤ 追加資料によって再検討する余地

⑥ 一部だけ承認できる場合の範囲及び金額

⑦ 再査定窓口及び利用できるADR

(2) 一部承認を先に行うこと

取得期間又は部位の一部に争いがない場合,争いのない部分まで保留する必要はない。

必要な範囲を区分し,その部分を先に承認又は支払うことは,紛争の縮小及び証拠確保に資する。

5 外部弁護士が関与する場合

(1) 関与自体を否定すべきでないこと

高度な約款解釈,同種契約への波及,訴訟又はADRへの移行,利益相反管理その他の事情があれば,外部弁護士への相談又は対応依頼が合理的となる場合がある。

したがって,争点額が小さいという理由だけで,外部弁護士の関与を一律に不相当と評価することはできない。

もっとも,請求者側の連絡窓口が弁護士であること又は約款解釈への異議が述べられたことだけで,保険会社側の窓口を外部弁護士へ変更する必要が生じるわけではない。

窓口変更を行う場合は,社内権限に従って目的及び必要性を確認し,決定過程と引継事項を記録することが望ましい。

(2) 顧客対応では順序が重要であること

一方で,日本損害保険協会「損害保険の保険金支払に関するガイドライン」別紙2の17頁は,休業損害資料の提出後,十分な説明がないまま交渉窓口が弁護士へ変更された苦情事例を掲げている。

同ガイドラインが示す改善策は,弁護士への窓口変更を禁止することではない。

見解相違があっても丁寧に説明し,窓口変更前の説明の適切性を責任者が点検し,変更を事前に説明し,従前の交渉経緯を弁護士へ確実に引き継ぐことを求めるものである。

この考え方は,弁護士費用特約の実費該当性をめぐる争いにも応用できる。

別紙2の事例は,賠償交渉における被害者対応の事例であり,弁護士費用特約の保険金請求と同一の事案類型ではないが,説明,再点検,事前告知及び確実な引継ぎという手順は共通する。

第5 監督指針,損保協会ガイドライン及び保険法21条

1 保険会社向けの総合的な監督指針

(1) 支払管理態勢の位置付け

金融庁「保険会社向けの総合的な監督指針」2026年7月版II-4-4-3は,適時・適切な保険金支払を,保険事業における基本的かつ最も重要な機能と位置付けている。

同指針は,付随的な保険金の支払漏れも問題としているため,主たる損害賠償請求だけでなく,資料取得費のような費用保険金についても,約款に即した査定が必要である。

(2) 事実調査,二次確認及び不払理由の説明

同指針II-4-4-3は,立証責任の所在にかかわらない十分な事実確認,管理者等による二次的チェック,苦情申出後の再度の事実確認,不払時の約款上の根拠条文を含む丁寧な説明を着眼点としている。

また,不払に関する苦情を,不払を決定した部門だけで終わらせず,最終的にコンプライアンス担当部門等が処理の適切性を検証する態勢を求めている。

したがって,定義②の解釈に具体的な異議が示された場合は,担当者間のメール往復だけで完結させず,二次査定及び他部門検証へ接続することが望ましい。

2 損保協会ガイドライン

(1) 必要十分な調査及び再調査

損保協会ガイドラインⅣ-4及びⅣ-6は,必要かつ十分な損害調査を遅滞なく行い,支払内容への了解が得られない場合も,丁寧な説明と必要に応じた再調査を行うことを求めている。

必要性及び費用額の確認は,保険会社の正当な査定である。

しかし,その確認は,請求者が回答可能な具体的質問によって行うべきであり,抽象的な疑問の提示だけで終えるべきではない。

(2) 不払理由及び相談機関の案内

同ガイドラインⅣ-7は,支払わない場合に,根拠となる具体的な約款条項及び調査で確認した事実を丁寧に説明し,了解が得られない場合には,そんぽADRセンター等の相談機関を案内することを求めている。

「本人取得だから対象外である」という結論だけでは,どの条項のどの要件を満たさないのかが明らかでない。

3 保険法21条

(1) 調査期間と履行期

保険法21条1項は,約定された支払期限が,保険事故,てん補損害額,免責事由その他の契約上必要な確認のための相当期間を超える場合,相当期間の末日を支払期限とする。

同条2項は,支払期限の定めがない場合,保険者は,請求後に保険事故及びてん補損害額を確認するために必要な期間が経過するまで遅滞責任を負わないと定める。

同条3項は,保険契約者又は被保険者が正当な理由なく必要な調査を妨げ,又は応じなかった場合の遅延期間について,保険者が遅滞責任を負わないと定める。

(2) 実務への示唆

保険法21条は,全案件に共通する固定日数を定めたものではない。

保険会社は,確認事項,請求者へ求める資料,回答見込み及び遅延理由を明らかにし,必要な調査を速やかに進めるべきである。

請求者側も,争点・資料対応表,見積書及び領収書を提出し,調査に必要な情報を早期に整えることが重要である。

4 監督資料の私法上の位置付け

(1) 約款を書き換えるものではないこと

金融庁の監督指針は監督上の着眼点であり,損保協会ガイドラインは会員会社の自主的な業務指針である。

これらが,個別契約の給付範囲を直接拡張し,又は約款上の同意要件を消滅させるものではない。

もっとも,保険会社がどのような調査,説明,再査定及び苦情管理を行うべきかを検討する上で,重要な基準となる。

2026年6月施行の保険業法改正を解説する石田哲也「令和8年6月施行 保険業法改正の概要と実務対応」も,保険金支払管理部門と営業部門の適切な分離等,支払管理の独立性を重視する制度的背景を説明している。

もっとも,同改正は,大規模な兼業代理店等から保険金支払管理部門への不適切な影響を防ぐための制度整備を主題とするものであり,定義②の給付範囲を直接定めるものではない。本論点では,支払判断の独立性及び検証可能性を支える背景事情として位置付けるべきである。

第6 LACマニュアル及び2つのADR

1 LAC基準を利用できる範囲

(1) 約款が出発点であること

LACマニュアルに掲載される弁護士費用保険の保険金支払基準は,主として弁護士報酬及び事件処理上の費用について,協定会社等と弁護士との円滑な運用を図る基準である。

狩倉博之ほか編著『弁護士費用特約を活用した物損交通事故の実務』10頁~15頁も,保険金支払義務の根拠及び範囲は各社の約款によって定まり,LAC基準は制度運営上尊重される基準であると整理している。

したがって,LAC基準は重要な実務基準であるが,約款にある定義②を削除し,又は本人取得費用を当然に弁護士経由へ限定する根拠にはならない。

東京弁護士会が公開する協定会社・共済協同組合の一覧には,あいおいニッセイ同和損害保険株式会社が掲載されている。ただし,個別案件でLACの書式,支払基準又はADRを利用できるかは,適用約款,受任経路,申立人適格及び最新の協定関係を確認する必要がある。

(2) 本論点で利用できる事項

本人が直接負担する資料取得費についてLACマニュアルを機械的に適用するのではなく,次の運用を参考にすることが有用である。

① 費用発生前の照会及び承認

② 費用見込額及び処理方針の共有

③ 弁護士報酬と実費の区分

④ 事件処理及び費用の報告

⑤ 自己負担が生じる可能性の説明

⑥ 見解相違時の照会,再審査及びADR

2 弁護士費用保険ADR

(1) 対象となる争い

東京弁護士会『LIBRA』2025年5月号「弁護士費用保険(LAC制度)のいまとこれから」11頁~12頁は,弁護士費用保険ADRが,主として,①保険金給付義務の有無,②対象となる弁護士費用等の適否又は妥当性に関する紛争を扱うと説明している。

同資料は,実際の申立内容として,弁護士報酬の多寡だけでなく,実費が支払対象となるか,特約の適用自体があるかという争いも挙げている。

(2) 手続及び当事者

同資料によれば,手続には,和解あっせん,裁定及び見解表明があり,保険契約者だけでなく,被保険者,受任弁護士及び協定会社等も当事者となり得る。

定義②の実費該当性が争われ,LAC制度との関係がある場合には,申立適格及び対象範囲を事務局へ事前確認することが有用である。

3 そんぽADRセンター

(1) 一般的な保険金支払紛争の経路

そんぽADRセンターは,保険業法に基づく指定紛争解決機関として,損害保険会社との苦情解決手続及び紛争解決手続を行っている。

相談,苦情及び紛争解決手続の費用は原則として無料であるが,通信費,交通費,宿泊費,証明書及び診断書等の取得費は利用者負担とされている。

定義②の解釈,同意拒絶又は不払判断そのものを保険会社との間で争う場合,まず保険会社の再査定を求め,解決しなければ,そんぽADRセンターを利用する方法が考えられる。

4 ADRの選択

(1) 争点で選ぶこと

弁護士費用保険ADRは,弁護士費用保険及びLAC制度に関する専門的な紛争に適する。

そんぽADRセンターは,保険会社との一般的な保険金支払紛争について,苦情解決から紛争解決へ進む経路を提供する。

どちらを選ぶかは,①申立人,②相手方保険会社,③LACとの関係,④争点が給付義務か費用の妥当性か,⑤求める解決方法によって判断すべきである。

重複申立て又は手続競合を避けるため,申立前に各事務局へ対象範囲を確認することが望ましい。

5 時効管理

(1) 保険金請求権の3年時効

保険法95条1項は,保険給付を請求する権利について,権利を行使することができる時から3年間行使しないときは,時効によって消滅すると定める。

資料取得費が少額であっても,再査定又はADRの協議中であることだけを理由に時効管理を止めてはならない。

請求側は,費用ごとの支出日,保険金請求日,不承認日及び時効完成見込日を一覧化し,必要に応じて時効完成猶予又は更新のための措置を個別に検討するべきである。

(2) そんぽADRセンター申立ての効果は限定されること

そんぽADRセンターのQ&Aは,手続実施委員が「和解成立の見込みがない」ことを理由に紛争解決手続を終了し,その通知を受けた日から1か月以内に訴訟を提起した場合に,紛争申立時へ遡って時効完成猶予の効力が生じると説明している。

これは,保険業法308条の14に基づく限定的な取扱いである。

したがって,相談又は苦情の申出をしただけで時効問題が解消したと考えず,紛争解決手続への正式申立ての有無,終了理由,通知受領日及び出訴期限を確認する必要がある。

第7 弁護士側の主張立証

1 主位的主張と予備的主張

(1) 約款文言に基づく主位的主張

請求側の主位的主張は,次の順序で組み立てるべきである。

① 定義①は専門職への報酬,定義②は権利保全・権利行使の手続実費という別の費用類型であること

② 定義①にある弁護士等への委任要件が,定義②には置かれていないこと

③ 逸失収入除外規定が,被保険者本人による手続を予定していること

④ 取得予定資料が,特定した損害賠償上の争点を立証するために必要であること

⑤ 取得範囲及び費用額が相当であり,既存資料と重複しないこと

⑥ 第2条(1)の同意を得て支出したこと

この順序であれば,保険会社の査定担当者は,費用類型の解釈と個別案件の必要性を分けて検討できる。

(2) 同意又は必要性に争いがある場合の予備的主張

保険会社が同意の成立,必要性又は範囲を争う場合は,主位的な約款解釈を維持した上で,予備的に,①承認済み部分,②黙示の同意を基礎付ける連絡経過,③緊急性,④証拠散逸のおそれ,⑤代替資料がない理由,⑥部分承認が可能な最小範囲を示すべきである。

請求側に有利な事情を一括して述べるのではなく,どの事情がどの要件に対応するかを明示する方が,保険会社の再査定及びその後のADR又は訴訟で利用しやすい。

2 事前同意を求める段階

(1) 1枚の争点・資料対応表を作ること

資料取得前に,次の事項を1枚にまとめて保険会社へ送付すると,判断対象を明確にできる。

① 適用約款及び定義②の該当箇所

② 相手方が争う具体的事項

③ 取得する資料及び取得先

④ 資料によって立証する事実

⑤ 既存資料では足りない理由

⑥ 対象期間,部位及び媒体

⑦ 予定費用及び料金根拠

⑧ 取得後の使用方法

⑨ 同意を求める回答期限

⑩ 全部同意が難しい場合に部分同意を求める最小範囲

⑪ 不同意の場合に回答を求める条項,要件及び認定事実

(2) 取得範囲を段階化すること

必要性に争いがある場合,最初から全資料を取得するのではなく,まず要約記録又は限定期間の診療録を取得し,内容を確認してから画像又は専門意見を追加する方法がある。

段階化は,費用の相当性を示し,重複取得の反論を減らす。

3 不承認回答を受けた段階

(1) 理由を項目別に確認すること

不承認回答を受けた場合,次の点を文書で確認するべきである。

① 定義②の費用類型への該当性自体を否定するのか

② 「争訟」がないと判断するのか

③ 資料取得を「手続」と認めないのか

④ 個別の必要性又は金額だけを否定するのか

⑤ 同意要件だけを問題とするのか

⑥ 追加資料による再査定が可能か

争点を分離しなければ,主張立証がすれ違ったままになる。

(2) 反論ごとの備え

ア 「弁護士費用特約だから弁護士の関与が必要」との反論

定義①には委任要件があるのに,定義②にはないこと,本人手続を予定する逸失収入除外規定があることを示す。

その上で,定義②該当性とは別に,必要性及び同意要件を満たすことを資料で立証する。

イ 「訴訟前だから争訟ではない」との反論

約款が和解及び調停を含むことを指摘し,相手方の回答書,交渉記録又は異議内容によって,既に生じている具体的な見解相違を示す。

正式回答前であれば,請求書案,争点整理表,提出予定先及び取得資料の立証趣旨により,損害賠償請求が具体化していることを示す。

ウ 「その他の手続は裁判又はADRに準ずるものに限る」との反論

定義②が,列挙した手続と「その他権利の保全もしくは行使に必要な手続」を「または」で接続していること,権利の「保全」及び「行使」という広い目的を掲げていること,本人手続を予定した逸失収入除外規定があることを一体として示す。

その上で,費用範囲が無限定に広がるとの懸念には,争訟関連性,必要性,相当性,重複及び同意の個別要件によって限定できると回答する。

エ 「既存資料で足りる」との反論

既存資料で確認できる事項と確認できない事項を対照表にし,追加資料によって初めて立証できる事実を特定する。

オ 「事前同意がない」との反論

まず,支出前の電子メール,受付記録及び電話記録から,対象費用について明示又は黙示の同意が成立したとの主位的主張が可能かを確認する。

予備的に,同意を求めた日時及び内容,保険会社の回答,緊急性,証拠散逸のおそれ,先行案内,回答遅延及び事後承認の経緯を時系列表にする。

もっとも,事前同意がない案件は約款上の障害が大きいため,同意不要を安易に前提とすべきではない。

カ 「本人取得費は一律に対象外である」との反論

保険会社に対し,①定義②のどの文言が取得主体を限定するのか,②逸失収入除外規定とどのように整合するのか,③第2条(1)の同意要件とは別に取得主体要件を置く根拠は何か,④弁護士が取得手続を代行すれば同一費用が対象になるのかを文書で確認する。

この4点への回答を求めることにより,単なる商品名からの推論と,約款条項に基づく不承認理由を区別できる。

4 ADR又は訴訟での要件事実型整理

(1) 請求者側が主張立証すべき主要事項

請求者側は,少なくとも次の主要事項を整理する必要がある。

① 保険契約の成立,適用約款及び被保険者性

② 特約所定の対象事故及び損害賠償に関する争訟

③ 支出した費用の内容及び金額

④ 当該費用が権利保全・権利行使に必要な手続費用であること

⑤ 保険会社の同意の内容及び時期

⑥ 現実の負担及び支出を示す資料

⑦ 保険金請求及び履行期に関する事実

これは,請求側が訴状又は申立書を作成するための一般的な整理である。具体的な主張責任及び立証責任は,適用約款の文言,保険会社の認否及び個別の請求原因に応じて検討する必要がある。

(2) 想定される保険会社の抗弁及び争点

保険会社からは,①対象となる争訟がない,②資料取得は手続に当たらない,③必要性がない,④範囲又は金額が過大である,⑤既存資料と重複する,⑥同意がない,⑦現実の支出がない,⑧他の除外又は限度額に当たるという主張が考えられる。

請求者側は,各主張に対し,約款解釈と事実認定を分けて反論する必要がある。

(3) 証拠説明書の組み立て

証拠は,①保険証券及び適用約款,②相手方との見解相違を示す書面,③保険会社への同意申請,④取得資料の料金表及び見積書,⑤資料の立証趣旨を示す対応表,⑥保険会社の回答,⑦請求書及び領収書,⑧再査定申出の順に並べると,判断過程を追いやすい。

資料そのものだけでなく,「なぜ取得が必要であったか」を支出前の記録で残すことが重要である。

(4) 訴訟を選ぶ場合の管轄確認

裁判所法33条1項1号により,訴訟の目的の価額が140万円を超えない請求は,原則として簡易裁判所が第一審の裁判権を有する。

訴訟の目的の価額が140万円を超える場合は地方裁判所が第一審となる。土地管轄については,民事訴訟法4条及び5条の普通裁判籍及び義務履行地に加え,適用約款に管轄合意条項があるかを確認する必要がある。

少額の資料取得費だけを単独で請求するか,他の弁護士費用保険金と併合するかにより,訴額,費用対効果及び管轄が変わり得るため,ADRとの比較を行った上で選択するべきである。

第8 そのまま使える実務書式

1 事前同意申請の文例

(1) 請求者側の文例

適用約款の弁護士費用に関する特約に定める「その他権利の保全もしくは行使に必要な手続をするために要した費用」への該当性について,事前同意を申請します。相手方は,○○の点を争っています。取得予定資料は○○であり,○○の事実を確認し,追加請求書へ添付するために使用します。既存の○○では当該事実を確認できません。取得範囲は○年○月から○年○月まで,予定額は○円です。○年○月○日までに,同意の可否又は追加確認事項を文書でご回答ください。

この文例では,具体的な案件に応じ,争点,資料,必要性,範囲及び費用を補充する必要がある。

全部同意が難しい場合に備え,「全部の同意が困難な場合は,同意可能な取得期間,部位,媒体又は金額をご提示ください」と付記しておくと,一部承認の余地を残すことができる。

2 不承認後の再査定申出の文例

(1) 請求者側の文例

ご回答は,本人が直接資料を取得することを理由に対象外とするものと理解します。しかし,適用約款の定義①は,弁護士等への委任及び事前承認を明記する一方,定義②は,「その他権利の保全もしくは行使に必要な手続をするために要した費用」と定め,弁護士等への委任を要件としていません。また,同じ定義は,被保険者が自ら手続を行うことによって得られなかった収入だけを対象外としています。そこで,①定義②のどの文言が取得主体を限定するのか,②上記逸失収入除外規定とどのように整合するのか,③第2条(1)の同意要件とは別に取得主体要件を置く根拠は何か,④費用類型,争訟関連性,必要性,相当性,重複及び同意の各項目についてどのように判断したのかを,認定事実とともにご回答ください。本申請では,○○という争点について,○○を立証するために,○年○月から○年○月までの○○を取得するものであり,既存の○○では代替できません。全部の同意が困難な場合は,同意可能な範囲及び金額を示した上で,管理者又は支払管理部門による再査定をお願いします。

この文例は,取得主体だけを理由とする不承認を,約款解釈,必要性,相当性及び同意の各争点へ分解するものである。

実際の申出では,適用約款の版,支出前申請日,取得予定額,回答期限及び時効完成見込日を追記する必要がある。

3 不承認回答の文例

(1) 保険会社側の文例

ご申請の費用について,適用約款は○○,該当条項は○条○項です。本人が資料を取得すること自体を理由に,定義②への該当性を否定するものではありません。もっとも,今回の○○は既に提出済みの○○と内容が重複し,○○という争点の立証には追加取得の必要性が確認できないため,現時点では同意しません。○○の点を確認できる資料又は取得範囲を○○に限定した見積りが提出された場合は,再検討します。なお,本回答に異議がある場合の再査定窓口は○○であり,解決しない場合は○○ADRを利用できます。

この文例は,結論,根拠条項,認定事実,不足事項,再検討の可能性及び解決経路を1つの回答に含めるものである。

4 チェックリスト

(1) 保険会社側

① 適用約款の版を確認したか。

② 定義①と定義②を区別したか。

③ 本人手続を予定する除外規定を検討したか。

④ 費用類型,必要性,相当性,同意及び支出証明を分けたか。

⑤ 不足資料を具体的に示したか。

⑥ 異議申出後に二次査定を行ったか。

⑦ 不承認部分の条項及び認定事実を説明したか。

⑧ 争いのない部分を先に承認できないか検討したか。

⑨ 外部弁護士への窓口変更前に説明及び引継ぎを行ったか。

⑩ 再査定窓口及びADRを案内したか。

(2) 弁護士側

① 保険始期日及び適用約款を確定したか。

② 相手方が争う事項を証拠化したか。

③ 資料ごとの立証趣旨を明記したか。

④ 取得範囲を必要な期間及び部位へ限定したか。

⑤ 料金表又は見積書を添付したか。

⑥ 重複及び代替可能性を検討したか。

⑦ 支出前に書面で同意を求めたか。

⑧ 保険会社の回答期限及び不足資料を確認したか。

⑨ 不承認理由を項目別に確認したか。

⑩ 再査定,弁護士費用保険ADR及びそんぽADRセンターを比較したか。

⑪ 保険法95条の時効完成見込日を管理しているか。

第9 まとめ

1 約款解釈の結論

(1) 取得主体ではなく要件ごとに判断すること

公開約款の定義②は,弁護士等への報酬を定める定義①とは別に,権利保全・権利行使に必要な手続費用を補償する規定である。

本人が資料を取得したという理由だけで定義②該当性を一律に否定することは,文言及び体系からは慎重であるべきである。

他方で,補償の可否は,争訟関連性,手続性,必要性,相当性,重複,保険会社の同意及び支出証明によって個別に判断される。

請求側弁護士は,定義②該当性を主位的に主張しつつ,争点・資料・立証事項・費用・同意を対応させ,全部同意が難しい場合には部分同意の範囲を具体的に求めるべきである。

2 あるべき紛争対応

(1) 説明,再査定,専門的検討,ADRの順序

保険会社は,約款条項及び認定事実を示し,追加資料の要否を明確にし,異議申出があれば二次査定及び他部門検証を行うべきである。

社内法務又は外部弁護士の関与は,約款解釈の難度又は全社的影響に応じて合理的となり得るが,顧客への説明を省略する理由にはならない。

弁護士側は,抽象的な約款論だけでなく,争点・資料・立証事項・費用・同意を1対1で対応させることにより,保険会社の反論に備えるべきである。

それでも解決しない場合は,争点に応じて弁護士費用保険ADR又はそんぽADRセンターを選択し,必要に応じて訴訟による解決を検討することになる。

その間も,保険法95条の3年時効を管理し,そんぽADRセンターの時効完成猶予が働く条件及び手続終了後の出訴期間を個別に確認する必要がある。

第10 出典

1 法令

① 保険法(平成20年法律第56号)21条及び95条

② 保険業法(平成7年法律第105号)308条の14

③ 裁判所法(昭和22年法律第59号)33条1項1号

④ 民事訴訟法(平成8年法律第109号)4条及び5条

2 裁判例

① 本記事では,定義②と本人取得の医療記録費用との関係を直接判断した裁判所ウェブサイト掲載裁判例を確認できなかったため,裁判例を引用していない。これは,裁判所ウェブサイト未掲載の裁判例その他の判断例が存在しないことを意味しない。

3 文献

① あいおいニッセイ同和損害保険株式会社「ご契約のしおり(普通保険約款・特約)」弁護士費用に関する特約冊子166頁~167頁,Web約款のページ表示168頁~169頁(2026年1月1日以降始期契約用)

② あいおいニッセイ同和損害保険株式会社「自動車保険の補償内容 その他の補償・サービス」

③ 金融庁「保険会社向けの総合的な監督指針」II-4-3及びII-4-4-3(2026年7月版)

④ 一般社団法人日本損害保険協会「損害保険の保険金支払に関するガイドライン」10頁~14頁,17頁(2026年5月18日改定)

⑤ 一般社団法人日本損害保険協会「相談対応,苦情・紛争の解決(そんぽADRセンター)」

⑥ 一般社団法人日本損害保険協会「そんぽADRセンターQ&A 4.紛争解決手続」

⑦ 東京弁護士会『LIBRA』2025年5月号「弁護士費用保険(LAC制度)のいまとこれから」3頁~6頁,11頁~12頁

⑧ 東京弁護士会「協定会社・共済協同組合の提供する弁護士費用保険」

⑨ 狩倉博之・渡部英明・三浦靖彦・杉原弘康編著『弁護士費用特約を活用した物損交通事故の実務』学陽書房,2020年,10頁~15頁

⑩ 東京海上日動火災保険株式会社編著『損害保険の法務と実務〔第2版〕』金融財政事情研究会,2016年,343頁~351頁

⑪ 中原健夫・山本啓太・関秀忠・岡本大毅『保険業務のコンプライアンス〔第3版〕』金融財政事情研究会,2016年,290頁~298頁

⑫ 嶋寺基・細川慈子・小林直弥『約款の基本と実践』商事法務,2020年,190頁~197頁,219頁~221頁,231頁~234頁

⑬ 吉田和央『詳解 保険業法』金融財政事情研究会,2016年,192頁~210頁

⑭ 石田哲也「令和8年6月施行 保険業法改正の概要と実務対応」BUSINESS LAWYERS(2026年7月6日更新)