◯本ブログ記事は,2005年4月から2026年3月までの自由と正義の懲戒公告,及び弁護士懲戒事件議決例集第8集ないし第27集に基づき,専らAIで作成したものです。
目次
- 第1 はじめに——弁護士に課される情報保護の責務
- 1 なぜ個人情報漏洩が懲戒の重要テーマなのか
- 2 本稿で扱う「漏洩」の範囲
- 3 検討の素材と引用の方針
- 第2 弁護士の情報保護義務を支える法令の体系
- 1 弁護士法23条——秘密保持義務
- 2 弁護士職務基本規程の関連条項
- 3 戸籍・住民票をめぐる法令
- 4 個人情報保護法と弁護士
- 5 守秘義務が及ぶ人的範囲
- 第3 類型1——職務上知り得た秘密の第三者開示
- 1 秘密保持義務違反の基本構造
- 2 書面やインターネットで秘密を公開した事例
- 3 通報者・相談者の情報を漏らした事例
- 4 相談・聴取で得た情報と立場の利用
- 第4 類型2——プライバシー情報の暴露とネット公開
- 1 デジタルタトゥーという新しい危険
- 2 SNSに氏名・顔写真・属性を掲載した事例
- 3 裁判書類の画像を投稿した事例
- 4 「届け先」を誤って第三者に知らせた事例
- 5 報道・取材への対応と情報の管理
- 第5 類型3——職務上請求の濫用による戸籍・住民票の不正取得
- 1 職務上請求制度の意義と濫用の構造
- 2 虚偽の利用目的を記載した事例
- 3 取得した情報を依頼者・第三者に交付した事例
- 4 調査業者と結びついた事例と大量・組織的濫用
- 5 濫用が制度全体に与える影響
- 第6 類型4——記録の管理を怠った「過誤型」の漏洩
- 1 「裏紙」から漏れる他事件の個人情報
- 2 マスキングを怠った交付
- 3 弁護士会照会で得た情報の目的外交付
- 第7 処分の重さを分けるもの——量定の視点
- 1 情報の機微性
- 2 第三者交付と実害の有無
- 3 故意性と動機
- 4 大量性・組織性・反復性
- 5 裁決で取り消された事例が示す限界
- 第8 漏洩を防ぐための実務指針
- 1 入口——情報を取りすぎない
- 2 過程——混ぜない・残さない
- 3 出口——届け先と媒体を確認する
- 4 事務職員の指導監督
- 5 デジタル時代の発信における自制
- 第9 結びに代えて
https://t.co/t4ilfKSdMk
大阪弁護士会の委員会で活動する弁護士ら約500人に対して、全会員約5000人分の住所・生年月日を含むリストが誤ってメール送信されていました。— 弁護士ドットコムニュース (@bengo4topics) June 10, 2026
第1 はじめに——弁護士に課される情報保護の責務
1 なぜ個人情報漏洩が懲戒の重要テーマなのか
弁護士は,その職務の性質上,他人の生活と人格の核心に触れる情報を日常的に取り扱う。離婚や相続の紛争では家族関係の機微が記録に残る。刑事弁護では被疑者の前科や病歴が問題になる。債務整理では収入や資産の全体像が明らかになる。これらの情報は,本人が他人に知られたくないと考えるものばかりである。弁護士が安心して秘密を打ち明けてもらえなければ,適切な法的助言は成り立たない。秘密の保持は,弁護士という制度そのものを支える土台である。
その土台が揺らぐ場面が,個人情報の漏洩である。弁護士が職務上知り得た情報を不用意に第三者へ漏らせば,依頼者や相手方の信頼は一瞬で失われる。漏れた情報は,現代では取り返しがつかない。インターネットに一度載った情報は,本人の意思に反して拡散される。弁護士会の懲戒委員会も,この点を「デジタルタトゥーの危険性」として明確に指摘している。漏洩は,もはや「うっかり」では済まされない領域に入っている。
弁護士会の懲戒制度は,こうした情報保護義務の違反を,弁護士法56条1項に定める「品位を失うべき非行」として捉えてきた。懲戒事件議決例集や懲戒公告を通覧すると,個人情報の漏洩に関わる懲戒は,毎年一定数が積み重ねられている。その類型は時代とともに変化し,近年はSNSやインターネット上での公開という新しい形態が増えている。本稿は,これらの蓄積を整理し,どのような行為が懲戒の対象となるのか,そして処分の軽重を分ける要素は何かを,実務の視点から明らかにすることを目的とする。
2 本稿で扱う「漏洩」の範囲
一口に個人情報の漏洩といっても,その態様は一様ではない。本稿では,弁護士懲戒の実務で一体的に扱われてきた次の4類型を対象とする。
第1は,職務上知り得た秘密を第三者へ開示する類型である。これは秘密保持義務違反の中核であり,弁護士法23条と弁護士職務基本規程23条が正面から規律する。
第2は,依頼者や相手方のプライバシーに属する情報を,ネットやSNS,文書によって暴露する類型である。
第3は,戸籍や住民票を取得するための職務上請求の制度を濫用し,本来取得できない他人の個人情報を不正に取得し,しばしばこれを依頼者や第三者へ交付する類型である。
第4は,記録や書面の管理を怠ったために他人の個人情報が漏れ出る「過誤型」の類型である。
これらはいずれも,本人の意思に反して個人情報が本来到達すべきでない者へ渡るという点で共通する。狭い意味での「漏えい」だけでなく,不正取得や不適切な管理までを視野に入れることで,弁護士が陥りやすい落とし穴の全体像が見えてくる。
3 検討の素材と引用の方針
本稿が依拠するのは,弁護士懲戒事件議決例集の各集,及び自由と正義に掲載された懲戒処分の公告である。議決例集は,弁護士会及び日本弁護士連合会の綱紀委員会・懲戒委員会の議決を,事案ごとに要旨と理由とともに収録したものである。そこには,どのような事実がどの条項に違反すると判断されたのか,その論理の過程が詳細に記されている。
本稿では,個々の弁護士の氏名や登録番号といった特定情報は記載しない。議決例集自体が対象弁護士を匿名で扱っているのと同じ趣旨である。事案は「ある弁護士」「対象弁護士」といった形で抽象化し,行為の構造と判断の理由に焦点を当てる。これは,本稿が特定の弁護士を論評することを目的とするものではなく,懲戒の規範を学ぶための教材として事例を用いるためである。
第2 弁護士の情報保護義務を支える法令の体系
1 弁護士法23条——秘密保持義務
(1) 条文と趣旨
弁護士法23条は,「弁護士又は弁護士であつた者は,その職務上知り得た秘密を保持する権利を有し,義務を負う。ただし,法律に別段の定めがある場合は,この限りでない」と定める。この規定は,弁護士の秘密保持を「権利」であると同時に「義務」であると位置付ける点に特徴がある。依頼者との信頼関係を守るための義務であると同時に,証言拒絶権などの形で弁護士の独立を支える権利でもある。
懲戒委員会は,この秘密保持義務を「弁護士の職務上の義務として最も基本的かつ重要な義務である」と繰り返し述べてきた。秘密の保持が崩れれば,市民は弁護士に安心して相談できなくなり,司法制度全体の信頼が損なわれる。それゆえ,この義務の違反は重く受け止められる。
この義務は,事件が終了した後も,弁護士でなくなった後も存続する。条文が「弁護士であつた者」をも名宛人とするのは,このためである。依頼者との委任関係が終わったからといって,かつて知った秘密を自由に語ってよいことにはならない。時の経過は,守秘義務を解除する理由にはならないのである。後述するとおり,過去の相談で得た書面を,年月を経て相手方のために用いた事例が懲戒の対象とされているのは,この義務の永続性の表れである。
(2) 「秘密」の意義
弁護士法23条にいう「秘密」とは何か。懲戒委員会の議決は,一般人に知られていない事実であって,本人から見て特に秘匿しておきたいと考える性質のものに限らず,一般人の立場から見ても秘匿しておきたいと考える性質を持つ事項を含むと解している。すなわち,主観的秘密と客観的秘密の双方を含む広い概念である。
具体的には,別件訴訟の係属裁判所や事件番号,当事者の氏名,架空通院や不正請求が問題となったという事実なども「秘密」に当たると判断された例がある。情報そのものは断片的でも,組み合わされば個人を特定し不利益を与えうる。弁護士は,自らが扱う情報のどこまでが「秘密」に当たるかを,狭く考えてはならない。
(3) 「正当な理由」の解釈
弁護士職務基本規程23条は,「弁護士は,正当な理由なく,依頼者について職務上知り得た秘密を他に漏らし,又は利用してはならない」と定める。問題は「正当な理由」の解釈である。懲戒委員会は,秘密保持義務が弁護士の職務上の義務として最も基本的かつ重要な義務であることからすれば,「正当な理由」の存否は安易に解釈されてはならないとする。
防御権の行使に必要であったという弁解も,容易には認められない。職務上知り得た秘密の一部が報道や訴訟の場で公開されたとしても,それだけで弁護士の守秘義務が失われるわけではない,というのが懲戒委員会の立場である。一度秘密として託された情報は,外部で部分的に明らかになった後も,弁護士の側からは慎重に扱われなければならない。
2 弁護士職務基本規程の関連条項
(1) 5条・6条——誠実公正義務と信用品位
弁護士職務基本規程5条は,弁護士が真実を尊重し,信義に従い,誠実かつ公正に職務を行うべきことを定める。同6条は,弁護士の名誉を重んじ,信用を維持すべきことを定める。個人情報の漏洩は,秘密保持の条項だけでなく,これらの一般条項にも違反すると評価されることが多い。
懲戒委員会は,信義誠実,公正や品位といった概念をむやみに拡張適用すべきではないとしつつ,法令や指針によって職務の性質が明らかにされている場合には,これらに基づいて5条や6条の解釈が補充されることは当然であるとする。一般条項は曖昧であるがゆえに不当に広く使われるべきではないが,職務の公正さや中立性が求められる場面では,明文の個別規定で捉えきれない部分を補う役割を果たす。
(2) 18条——事件記録・預り品の保管
弁護士職務基本規程18条は,弁護士が事件記録を保管又は廃棄するに際し,秘密及びプライバシーに関する情報が漏れないように注意しなければならないことを定める。漏洩は,積極的に情報を開示する行為だけでなく,記録の管理を怠ることによっても生じる。後述する「過誤型」の漏洩は,主としてこの18条の問題である。
(3) 23条——秘密の保持
すでに述べたとおり,弁護士職務基本規程23条は,弁護士法23条を受けて,正当な理由のない秘密の漏示・利用を禁じる。なお,依頼者以外の者に対しても守秘義務を負うかについては解釈が分かれる。たとえば,弁護士が組織のハラスメント相談窓口の担当者として相談者から事情を聴取した場合,当該相談者に対しても守秘義務を負うとの解釈もありうる。この点は,後述の事例で改めて触れる。
3 戸籍・住民票をめぐる法令
(1) 戸籍法10条の2と職務上請求
弁護士は,受任している事件の遂行に必要な場合に限り,戸籍法10条の2に基づき,他人の戸籍謄本等を職務上請求することができる。これは,弁護士に与えられた特別の権限である。本人の同意なく他人の戸籍に手が届くという強い権限であるからこそ,その行使は「業務を遂行するために必要がある場合」に厳格に限定される。
(2) 住民基本台帳法12条の3・20条
住民票についても同様である。住民基本台帳法12条の3及び20条は,弁護士が職務上必要な場合に住民票の写し等の交付を請求できることを定める。戸籍と住民票は,氏名・生年月日・住所・本籍・家族関係といった,個人を特定し追跡できる中核的な情報の塊である。これらへのアクセス権限は,市民の権利擁護という目的のために弁護士に託されたものであり,私的な調査や第三者への提供のために用いることは制度の趣旨に反する。
(3) 戸籍謄本等請求用紙の使用及び管理に関する規則
日本弁護士連合会の戸籍謄本等請求用紙の使用及び管理に関する規則3条及び5条は,職務上請求の用紙の使用方法と利用目的の記載について定める。利用目的の欄に虚偽の事実を記載することや,用紙を弁護士以外の者に渡して使用させることは,この規則に正面から違反する。後述するとおり,職務上請求の濫用事例の多くは,この規則違反として整理されている。
4 個人情報保護法と弁護士
個人情報の保護に関する法律は,個人情報取扱事業者一般に適用される。弁護士もまた,業務に関連して大量の個人情報を取り扱う以上,その安全管理に責任を負う。もっとも,弁護士懲戒の実務においては,個人情報保護法違反それ自体よりも,弁護士法56条1項の「品位を失うべき非行」という枠組みを通じて漏洩が評価されることが多い。個人情報保護法が定める安全管理措置の考え方は,弁護士の情報管理の水準を測る一つの参照点となる。
個人情報保護法は,個人データの安全管理のために必要かつ適切な措置を講じることを求め,従業者や委託先に対する監督義務をも定めている。弁護士事務所に置き換えれば,事件記録の施錠保管,電子データのアクセス制限,事務職員に対する監督,廃棄時の裁断といった日常の管理がこれに対応する。弁護士懲戒の事例で繰り返し問題となる事務職員への任せきりや記録の不適切な廃棄は,個人情報保護法が求める安全管理措置の観点からも,本来あってはならないものである。法令違反として直接に問われるかどうかにかかわらず,弁護士は,個人情報を預かる専門職として,社会一般に求められる以上の管理水準を満たすことが期待されている。
5 守秘義務が及ぶ人的範囲
情報保護義務の射程を考える上で重要なのが,守秘義務が及ぶ人の範囲である。弁護士法23条の守秘義務は,第一義的には依頼者との関係で生じる。もっとも,依頼者以外の者に対しても負うとする解釈もある。たとえば,弁護士が組織のハラスメント相談窓口の担当者として相談者から事情を聴取した場合,その解釈によれば,相談者に対しても守秘義務を負いうる。
この点について,懲戒委員会は,仮にそのような解釈によったとしても,事案によっては依頼者以外の相談者に対する守秘義務違反があったとは認められない場合があるとしつつ,別途,誠実公正義務や信用品位の観点から行為の当否を検討する必要があるとしている。すなわち,守秘義務の人的範囲が明確でない場面であっても,弁護士が職務上知った情報を,その情報を託した者の信頼に反して用いることは,一般条項を通じて非行と評価されうる。情報を「誰から」得たかにかかわらず,職務を通じて触れた他人の情報は,慎重に扱わなければならない。
第3 類型1——職務上知り得た秘密の第三者開示
1 秘密保持義務違反の基本構造
最も古典的かつ中核的な漏洩類型は,職務上知り得た秘密を第三者へ開示するものである。ここでの「第三者」は,相手方であることもあれば,依頼者の関係者であることもあり,さらには不特定多数であることもある。開示の媒体も,口頭,書面,ファクシミリ,ホームページ,グループチャットと多様である。
この類型の判断の核心は,第1に,開示された情報が「秘密」に当たるか,第2に,開示に「正当な理由」があったかである。前述のとおり,「秘密」は広く解され,「正当な理由」は厳格に解される。その結果,弁護士が自らの正当性を確信していた場合であっても,懲戒の対象となることが少なくない。
2 書面やインターネットで秘密を公開した事例
ある弁護士は,自身が関与した破産法違反被告事件において提出した意見書の全文を,自分のホームページに掲載した。その意見書には,事件関係者の実名や詐欺破産行為の詳細が具体的に記述されていた。懲戒委員会は,職務上知り得た秘密の一部が報道や訴訟の場で公開された場合であっても,直ちに弁護士の職務上の守秘義務が失われるわけではないとし,ホームページ上での公開を正当化するやむを得ない事情があったとは認められないとした。弁護士法23条及び弁護士職務基本規程23条に違反するとして,戒告の処分がされている。この事案は,2009年4月13日に処分の効力が生じ,自由と正義2009年8月号203頁に公告されている。
この事例が示すのは,秘密が「すでに訴訟の場に出ている」ことが,公開を正当化する理由にはならないという点である。訴訟記録は,限られた範囲の関係者がアクセスできるにすぎない。これをインターネットという無限定の場に置くことは,秘密の到達範囲を質的に変える行為である。
3 通報者・相談者の情報を漏らした事例
会社の内部通報制度において,外部通報窓口の担当弁護士を務めていたある弁護士は,通報者の実名を会社に通知した。その制度では,弁護士から会社への連絡は通報者の氏名を匿名で行う扱いとなっていた。弁護士は,実名を伝えた方が不正を訴える熱意が会社に伝わると考え,通報者に実名通知を勧めた。通報者はこれを承諾したが,弁護士は,実名通知が例外であることや,それによって生じうる不利益について十分な説明をしておらず,書面による確認も取らなかった。
懲戒委員会は,この承諾は弁護士の呼びかけに応じたものであって自発的なものとはいえず,弁護士は確定的な承諾を確認すべきであったのにこれを怠ったとした。外部通報窓口担当弁護士としての秘密保持義務に違反するとして,戒告の処分がされている。この事案は,2009年2月28日に処分の効力が生じ,自由と正義2009年6月号209頁に公告されている。通報者保護を旨とする制度において,通報者の最も基本的な情報である氏名を,本人の真意による承諾を確認しないまま開示したことが問われたのである。
別の事例では,ある弁護士が,過去に元相談者から離婚した元妻との問題等について秘密を含む書面を受領していたところ,後にその相談者と相手方との間の遺産確認請求訴訟において,相手方の代理人として,元相談者の承諾なく,かつての書面を証拠として裁判所に提出した。弁護士職務基本規程23条に違反するとして,戒告の処分がされている。この事案は,2014年8月20日に処分の効力が生じ,自由と正義2014年11月号99頁に公告されている。かつて秘密として託された情報を,後の事件で相手方のために用いることは許されない。立場が変われば,過去に得た秘密は一層慎重に扱わなければならない。
4 相談・聴取で得た情報と立場の利用
近年の議決例には,組織のハラスメント相談窓口に関わる事案がある。ある弁護士は,会社からの委託により,ハラスメント相談窓口の担当者として相談者から事情を聴取した。その後,同じ弁護士が,相談者が会社を相手に提起した訴訟において,会社の訴訟代理人に就任し,訴訟活動を行った。
原弁護士会は,ハラスメント相談窓口の担当者として聴取した事実を,相談者と対立する会社のために利用するおそれを生じさせたことが,職務の中立性・公正・秘密保持に疑いをもたせるとして,弁護士職務基本規程5条に違反するとし,戒告の処分をした。弁護士の審査請求に対し,日本弁護士連合会も当初これを棄却して戒告を維持し,その議決は弁護士懲戒事件議決例集第26集(2023年)に収録されている。
しかし,この事案は,その後の裁判で覆った。弁護士が日弁連の棄却裁決の取消しを求めて出訴したところ,東京高等裁判所は,所属事務所のA弁護士が会社のハラスメント相談窓口において中立・公正な立場で事実調査や法的判断を行ったとは認め難く,棄却裁決は重要な事実の基礎を欠き違法であるとして,これを取り消した(2025年2月13日判決,同月28日確定)。日弁連は,この判決に従って改めて審査し,A弁護士は面談で聴いた内容を整理して会社に伝えたにとどまり,事実調査や法的判断を行ったとはうかがわれないこと,相談者もA弁護士を中立・公正な立場の者と認識していなかったことを認定し,戒告処分を取り消して懲戒しないこととした(2025年8月25日効力発生。自由と正義2025年10月号65頁)。
この経過が示すのは,聴いた立場の利用が問題となるかどうかは,一律に決まるものではないということである。日弁連と裁判所は,委員会等の設置目的や態様,弁護士の立場,申立人や相手方への説明内容,その後に代理した事件の性質や活動内容など,諸般の事情を総合して判断すべきものとした。弁護士が中立・公正な調査者としての立場を実際に引き受けていた場合には,その立場を後に相手方のために用いることは,職務の公正とそれへの信頼を損なう。逆に,単に面談内容を聴いて伝えたにとどまり,中立・公正な立場が認められない場合には,直ちに非行とはならない。いずれにせよ,弁護士は,自らがどのような立場で情報に接したのかを意識し,中立・公正な立場を引き受けたのであれば,その立場に伴う制約を誠実に守らなければならない。
また,会話の無断録音をめぐる事案もある。ある弁護士は,依頼者の同僚である相手方との通話を無断で録音し,相手方が会話内容を会社に知られることを拒否していたにもかかわらず,録音の一部を反訳した報告書を作成し,これを相手方に無断で証拠として裁判所に提出した。弁護士法23条及び弁護士職務基本規程5条に違反するとされ,業務停止2月の処分がされた(2024年9月3日効力発生。自由と正義2025年2月号81頁)。なお,この事案は審査の段階で,証拠の保全を目的とする会話の録音が弁護士の正当な業務行為に当たりうる場面が相当程度あるとして,無断録音の部分についての評価が見直され,業務停止1月へと処分の程度が変更されている(2025年3月11日効力発生。自由と正義2025年5月号65頁)。録音それ自体の評価と,録音によって得た秘密を本人の意思に反して開示することの評価とは,区別して考える必要がある。
第4 類型2——プライバシー情報の暴露とネット公開
1 デジタルタトゥーという新しい危険
近年,個人情報の漏洩は,インターネットやSNSという新しい舞台で起こるようになった。懲戒委員会は,この変化を正面から捉えている。すなわち,SNSなどのインターネット上の媒体に個人情報が一度掲載されてしまうと,掲載者の意に反して拡散される危険性があり,これはデジタルタトゥーの危険性として広く知られている,というのである。
紙の書面であれば,到達範囲は限られ,回収も一定程度は可能である。しかし,ネット上の情報は,瞬時に複製され,検索可能となり,本人の手を離れて永続する。弁護士がネット上で他人の個人情報を扱うときは,この不可逆性を強く意識しなければならない。プライバシーに属する情報を第三者に知らしめることには,極めて慎重でなければならない。これが懲戒委員会の一貫した姿勢である。
2 SNSに氏名・顔写真・属性を掲載した事例
詐欺被害に遭ったとする者から被害回復の依頼を受けたある弁護士は,加害者とされる会社の従業員の名前と顔写真を自らのSNSアカウントに掲載し,詐欺師であると紹介した。弁護士は,被害の拡大防止という公益目的を主張したが,懲戒委員会は,その目的を達成するために氏名と写真を掲載して詐欺師と紹介する必要があったのか疑問であるとした。
そして,掲載の目的には相手方にプレッシャーをかける意図も含まれており,依頼者の被害回復という目的に重きが置かれていたと見ることもできるとして,専ら公益を図るという要件を満たすとはいえないとした。さらに,前述のデジタルタトゥーの危険性に言及し,被害が拡散される危険性の高い行為であるとして,弁護士法56条1項の品位を失うべき非行に当たるとした。この事案は,弁護士懲戒事件議決例集第26集86頁(2023年)に収録されている。依頼者の被害回復という正当な動機があっても,その手段として第三者の個人情報を公然と晒すことは許されない。
別の事例では,ある弁護士が,複数の相手方に対して同種の行為を重ねた。返金交渉の相手方に対しては,氏名や写真,居住するマンション名や部屋番号をSNSに掲載すると告知した上で,実際に氏名や写真を掲載して詐欺師であると断定し,別の損害賠償請求事件の相手方に対しては,写真,氏名,生年月日,居住地等をSNSに投稿し,その母親の住所を覚知したと告知して,加害行為の誘発をほのめかすメッセージを送った(戒告。2024年1月23日効力発生。自由と正義2024年6月号97頁)。交渉を有利に進めるために個人情報を武器として用いるものであり,品位を失うべき非行とされた。
3 裁判書類の画像を投稿した事例
家事事件において相手方の手続代理人を務めていたある弁護士は,依頼者がSNS上に投稿した,相手方とその子の個人情報が判読できる審判書の一部の画像を,拡散を希望する趣旨のコメントとともに自らのアカウントに掲載した。さらに,抗告審の決定書の一部の画像も貼り付け,両者を合わせることで相手方と子を特定し認識できる状態にした。調停委員から削除を求められても応じなかった。弁護士職務基本規程1条及び6条に違反するとして,戒告の処分がされている。この事案は,2023年3月28日に処分の効力が生じ,自由と正義2023年8月号64頁に公告されている。
審判書や決定書は,本来,事件の当事者と裁判所の限られた範囲で扱われる文書である。そこには,家族関係や住所といった機微な情報が詰まっている。これを画像として不特定多数に向けて公開することは,個人情報の漏洩そのものである。子の情報が含まれる点で,配慮の必要性は一層高い。
また,別の弁護士は,相手方の名誉を毀損する投稿に,相手方の住所が公知でないにもかかわらず,住所,氏名,携帯電話番号,メールアドレスの記載がある懲戒請求書の画像を添付した。証拠として用いた文書の画像に,連絡先まで含む個人情報がそのまま写り込んでいたのである。この事案は,戒告とされ,2025年4月11日に処分の効力が生じ,自由と正義2025年9月号65頁に公告されている。文書を画像で公開する際には,そこに付随する個人情報の写り込みにも注意が及ばなければならない。
4 「届け先」を誤って第三者に知らせた事例
漏洩は,ネット上の公開だけで起こるのではない。文書の送付先を誤ることでも生じる。ある弁護士は,被疑者の依頼を受けて,その子が通う小学校宛てに,被疑者が逮捕され留置されている事実を推認できる内容の文書を送付し,相手方らのプライバシーの権利を侵害した(戒告。2017年4月19日効力発生。自由と正義2017年8月号67頁)。被疑者が逮捕・留置されているという事実は,家族にとって秘匿したい情報である。これを子の通う学校という第三者に届けることは,配慮を著しく欠く。
別の弁護士は,第三者が容易に目にし得るはがきによって,相手方のプライバシーの中核に及ぶ事項や名誉を毀損する内容を送付した(戒告。2018年6月6日効力発生。自由と正義2018年9月号67頁)。封書ではなくはがきを用いたことで,配達の過程で他人の目に触れる危険が生じた。また,相手方のプライバシーや社会的評価を低下させる事実を含む通知書を電子データとして保存し,依頼者を通じて相手方の勤務先の上司に渡した弁護士の事案では,パスワードによるロックもかけず,受け取る上司に秘密保持の注意もしなかった点が問われた(戒告。2021年12月15日効力発生。自由と正義2022年6月号90頁)。さらに,取引先の多数の会社に向けたファクシミリ送信を求める文書に,相手方らのプライバシーに関する事項を記載した文書を添付した事例もある(戒告。2023年8月31日効力発生。自由と正義2023年11月号73頁)。
これらに共通するのは,情報を「誰に」「どの媒体で」届けるかという出口の管理の甘さである。離婚訴訟の妻側の代理人が,夫の勤務先に電話をかけ,離婚訴訟中であることを人事部に伝えた事案について,懲戒委員会は,弁護士がプライバシーに属する情報を第三者に知らしめることには極めて慎重でなければならないと述べている。情報を伝える相手と方法の選択は,常に慎重でなければならない。
5 報道・取材への対応と情報の管理
事件が社会の関心を集めるとき,弁護士は記者会見や取材という形で外部に向けて発言する機会を持つことがある。この場面は,個人情報の管理という観点から特に注意を要する。ある事案では,記者会見によって相手方の社会的評価が低下することを相互に認識した上で会見を開催した点が問題とされた。会見や取材での発言は,その全体がそのまま報道されるわけではない。報道機関は,放送の尺や記事の文字数といった限られた条件の中で,取材内容の一部を取り出して伝える。発言の一部が切り取られて伝わることを前提に,弁護士は自らの言葉を選ばなければならない。
ここで意識すべきは,句点を意識して短い文を重ねるという話し方である。読点を連ねた長い説明は,一部を切り取られたときに本来の趣旨と異なる形で伝わる危険がある。短い文で,事実と評価を分けて述べることが,誤解を防ぐ。また,相手方や被害を受けたとされる人に触れる際には,一層の配慮が求められる。親しい記者との打ち解けた会話であっても,説明を端折ったり言葉が荒くなったりしないよう心掛ける必要がある。
そして,会見や取材の資料として裁判書類や陳述書を提示する場合には,そこに含まれる第三者の氏名や住所といった個人情報が外部に渡らないよう,提示の要否と範囲を吟味しなければならない。事件を社会に伝えるという目的と,個人情報を守るという要請とは,両立させなければならない。発言は切り取られ,資料は拡散される。この前提に立って,外部への発信は慎重に設計する必要がある。
第5 類型3——職務上請求の濫用による戸籍・住民票の不正取得
1 職務上請求制度の意義と濫用の構造
弁護士懲戒の実務において,個人情報に関わる事案として件数が最も多いのが,職務上請求の濫用である。前述のとおり,弁護士は受任事件の遂行に必要な場合に限り,本人の同意なく他人の戸籍や住民票を取得できる。この強い権限は,市民の権利擁護のために弁護士へ託されたものである。
濫用は,典型的には次の構造をとる。受任していない事件について,あるいは取得の必要がないにもかかわらず,職務上請求の用紙の利用目的欄に「遺産分割調停の申立て」「相続関係調査のため」「訴訟準備のため」といった虚偽の目的を記載して,他人の戸籍や住民票を取得する。そして,取得した情報を依頼者や第三者に交付する。ここには,権限の目的外行使という問題と,個人情報の第三者交付という漏洩の問題とが重なっている。
2 虚偽の利用目的を記載した事例
具体的な利用目的を欠くにもかかわらず,あるいは事件を受任していないにもかかわらず,虚偽の利用目的を記載して職務上請求を行った事例は枚挙にいとまがない。ある弁護士は,相続放棄申述の手続を受任していないのに,利用目的の欄に「相続放棄申述の添付書類」と記載して,相手方の母や相手方の戸籍謄本,住民票,戸籍の附票を取得した。事務職員に任せきりにして指導や確認を怠った点も問われている(戒告。2023年2月14日効力発生。自由と正義2023年8月号59頁)。
別の弁護士は,研究資料として故人の関係者の戸籍を調べてほしいという依頼を受け,35回にわたり虚偽の使用目的を記載して戸籍謄本等を請求した(戒告。2014年3月6日効力発生。自由と正義2014年6月号121頁)。また,調査会社からの住所調査の依頼に応じ,虚偽の利用目的や依頼者名を記載して,相手方の父の改製原戸籍や戸籍,住民票,戸籍の附票を取得した弁護士もいる(業務停止1月。2025年3月12日効力発生。自由と正義2025年8月号61頁)。いずれも,戸籍法10条の2,住民基本台帳法12条の3,戸籍謄本等請求用紙の使用及び管理に関する規則3条及び5条への違反として整理されている。
これらの事案では,利用目的欄への虚偽記載が決め手となっている。職務上請求の用紙は,弁護士の信用を担保として戸籍や住民票へのアクセスを認める制度である。そこに虚偽を書くことは,制度の存在意義を根底から脅かす行為と評価される。
3 取得した情報を依頼者・第三者に交付した事例
濫用が一層重く評価されるのは,取得した個人情報を依頼者や第三者に交付した場合である。ある弁護士は,受任事件において職務上請求により取得した相手方の住民票や戸籍謄本の写しを,依頼者の求めに応じて交付し,相手方とその親族の個人情報を開示した(戒告。2014年2月5日効力発生。自由と正義2014年5月号112頁)。別の弁護士は,相手方の夫や父,母の住民票や戸籍を職務上請求で取得し,目的と無関係な情報を含めてマスキングを一切せずに依頼者へ交付した(戒告。2018年11月2日効力発生。自由と正義2019年3月号90頁)。
取得した情報の交付が悪用につながった事例もある。ある弁護士は,職務上請求で取得した相手方の戸籍全部事項証明書の記載を依頼者らに開示したところ,依頼者らがその情報を利用して相手方に畏怖を与えるメールを送り,相手方の母の自宅を訪れて畏怖させる行為に及んだ(当初は戒告。2016年5月23日効力発生。自由と正義2016年9月号93頁)。なお,この事案は,後に審査の段階で,戸籍の利用が受任事件の業務に必要な範囲内であり,依頼者らが非違行為に及ぶ具体的な予見可能性があったとはいえないとして,処分が取り消されている(2018年4月10日効力発生。自由と正義2018年5月号106頁)。取得情報の交付が漏洩・悪用に直結する危険と,弁護士に求められる予見可能性の程度とが,慎重に衡量される領域である。
4 調査業者と結びついた事例と大量・組織的濫用
職務上請求の濫用は,探偵社や興信所,調査会社と結びつくと,個人情報の流出経路そのものとなる。ある弁護士は,探偵事務所からの依頼で,調査依頼者の相手方の住民票や戸籍を「訴訟準備のため」と虚偽記載して職務上請求し,これを探偵事務所に交付した(戒告。2023年1月25日効力発生。自由と正義2023年5月号64頁)。別の弁護士は,興信所の従業員からの相談に応じ,本人と面談もしないまま,相続人調査という虚偽の理由で相手方の戸籍謄本を取り寄せた(戒告。2016年7月21日効力発生。自由と正義2016年12月号95頁)。
濫用が大量・組織的に行われた事案もある。ある弁護士は,マスコミ関連の調査を業とする会社からの依頼で,マスコミ等の第三者に開示するという不正な目的のために,芸能人等の戸籍謄本や住民票について,司法書士へのファクシミリ依頼の形式を含めて90件以上の職務上請求を行った(業務停止6月。2010年6月7日効力発生。自由と正義2010年9月号148頁)。また,非弁護士が集客した相談者の事件を紹介してもらう関係の中で,依頼に基づいて住民票や戸籍謄本等を職務上請求し,その対価を得ていた弁護士もいる(業務停止1年6月。2017年9月7日効力発生。自由と正義2017年12月号104頁)。
さらに,職務上請求の用紙そのものを弁護士以外の者に渡した事例もある。ある弁護士は,職印を押捺した白紙の職務上請求用紙を非弁護士に交付し,使用し得る状態にした(退会命令。2008年10月9日効力発生。自由と正義2009年2月号138頁)。別の弁護士は,事務員でない者に100枚綴りの職務上請求書を交付し,その者が用紙を利用して書類を取り寄せていることを知りながら黙認した(業務停止2月。2014年7月30日効力発生。自由と正義2014年11月号93頁)。これらは,戸籍や住民票へのアクセス権限を,権限のない者へ譲り渡す行為である。個人情報の取得経路を野放しにするものであり,制度の信頼を著しく損なう。
5 濫用が制度全体に与える影響
職務上請求の濫用が重く受け止められるのは,個別の被害にとどまらず,制度全体への信頼を損なうからである。戸籍や住民票は,本人の同意がなくても弁護士であれば取得できる。この扱いは,弁護士が職務の必要の範囲で適正に権限を行使するという信頼を前提に成り立っている。その信頼があるからこそ,市町村の窓口は,弁護士の請求に応じて重要な個人情報を交付する。
濫用が積み重なれば,この信頼は揺らぐ。仮に弁護士の職務上請求が広く疑いの目で見られるようになれば,本来必要な場面での迅速な情報取得が滞り,結局は依頼者の権利擁護に支障が生じる。職務上請求の濫用は,濫用した弁護士個人の問題にとどまらず,弁護士全体に与えられた制度上の特権を掘り崩す行為である。懲戒委員会が,虚偽の利用目的の記載について,制度の存在意義を根底から脅かすものと評価するのは,こうした制度的な視点に立つものである。各弁護士の一件一件の慎重な運用が,制度全体を支えている。
第6 類型4——記録の管理を怠った「過誤型」の漏洩
1 「裏紙」から漏れる他事件の個人情報
漏洩は,積極的な開示意思がなくても,管理の不注意によって生じる。その典型が,いわゆる「裏紙」を介した漏洩である。ある弁護士は,依頼を受けた事件の一件記録の中に,一部に裏紙を利用した書類が含まれており,その裏紙には他の事件の依頼者に関する個人情報が印刷されていたにもかかわらず,内容を確認しないまま複写目的での交付を承諾し,記録を相手方に交付した。弁護士職務基本規程18条に違反するとして,戒告の処分がされている(2022年3月22日効力発生。自由と正義2022年9月号67頁)。
同種の事案は反復して現れる。別の弁護士は,既済となった刑事弁護事件の記録の裏面の白紙部分を利用して書類を印刷していた。その記録には,詐欺被害者の氏名一覧表,被疑者の氏名や顔写真のコピー,供述調書の一部といった,第三者の秘密やプライバシーに当たる内容が含まれていた。弁護士は,そのことを失念し,廃棄しないまま記録を依頼者に交付した。弁護士法23条及び弁護士職務基本規程18条に違反するとされている(戒告。2009年7月28日効力発生。自由と正義2009年12月号176頁)。
裏紙の利用は,経費節約の習慣として根強い。しかし,弁護士が扱う書類の裏面には,別の人の人生に関わる情報が眠っている。再利用の前に裏面を確認するという一手間を怠ると,それが漏洩となる。
2 マスキングを怠った交付
記録や書面を交付・閲覧させる際に,無関係な第三者の情報を黒塗りしないことも,過誤型の漏洩である。ある弁護士は,依頼者と他の債務者らを共同原告とする訴訟において,依頼者が他の原告に自分の情報を開示しないよう要望していたにもかかわらず,その承諾を得ずに共同原告として訴訟を提起した上,他の原告の情報を黒塗りするなど情報が漏れない確実な方法を採らず,手で隠す方法で依頼者に訴状を閲覧させた(業務停止1月。自由と正義2014年10月号99頁)。
交付や閲覧の場面では,「見せてよい情報」と「見せてはならない情報」が同じ書面に同居していることが多い。両者を分離する作業を省くと,後者が漏れる。マスキングは,単なる事務作業ではなく,情報保護の最後の砦である。
3 弁護士会照会で得た情報の目的外交付
弁護士会照会は,弁護士法23条の2に基づく重要な証拠収集の手段である。しかし,これによって得た情報の取扱いを誤れば,漏洩となる。ある事案では,成年後見人である弁護士が,被後見人の金銭の流れを調査するために弁護士会照会によって複数名義の預金取引明細を取得し,事情を知る立場にある第三者に交付した行為について,秘密保持義務を定める弁護士法23条及び事件記録の保管等を定める弁護士職務基本規程18条に違反するか否かが問題とされた(弁護士懲戒事件議決例集第18集(平成27年)所収の綱紀審査会議決例)。
弁護士会照会は,弁護士に与えられた強い情報収集権限である。その権限で得た情報は,照会の目的の範囲で用いられなければならない。これを第三者に交付することは,権限の趣旨を超えた利用であり,漏洩の評価を受けうる。照会で得た情報ほど,その後の取扱いに慎重さが求められる。
第7 処分の重さを分けるもの——量定の視点
1 情報の機微性
以上の事例を通覧すると,処分の軽重を分ける要素が見えてくる。第1は,漏れた情報の機微性である。性的プライバシー,病歴や診療情報,家族関係,子に関する情報といった,本人にとって秘匿の必要性が高い情報ほど,漏洩の非行性は重く評価される。診療情報の目的外使用を防ぐ措置を怠った事案(業務停止6月。2019年4月17日効力発生。自由と正義2019年8月号71頁)や,性的プライバシーが記載された刑事記録を被害者となる少女に渡した事案(戒告。2005年3月1日効力発生。自由と正義2005年6月号134頁)などは,情報の性質の重さが量定に影響している。
2 第三者交付と実害の有無
第2は,情報が実際に第三者へ渡ったか,そしてそれによって実害が生じたかである。職務上請求の濫用でも,取得にとどまる事案より,取得した情報を依頼者や第三者へ交付した事案の方が重く扱われる傾向がある。さらに,交付された情報がなりすましの資料に使われて登記がされた事案や,相手方に畏怖を与える行為に悪用された事案では,実害の発生が処分を重くする方向に働く。逆に,第三者に内容が開示された事実が見受けられず実害が発生していないことが,懲戒しない方向の事情として考慮された事案もある。
3 故意性と動機
第3は,故意性と動機である。虚偽の利用目的を記載するなど,違法性を認識しながら意図的に行った場合は重い。他方,裏紙の確認を失念したような過失型は,悪質性が相対的に低いと評価されうる。もっとも,過失型であっても,弁護士に求められる注意義務の水準は高く,懲戒を免れるものではない。動機についても,依頼者の利益のためという動機があっても,手段が個人情報の暴露に及べば正当化されない,というのが懲戒委員会の立場である。
4 大量性・組織性・反復性
第4は,行為の量と広がりである。1件の濫用と,90件を超える大量の濫用とでは,社会的影響が大きく異なる。調査業者や非弁護士と結びついた組織的な濫用は,個人情報の流出経路を制度化するものとして重く評価される。反復継続して行われた場合も同様である。これらの要素は,業務停止という重い処分を選択する方向に働く。
5 裁決で取り消された事例が示す限界
最後に,懲戒の限界を示す事例にも触れておく。個人情報に関わる懲戒のうち,原弁護士会の処分が日本弁護士連合会の裁決によって取り消され,懲戒しないとされた事案がいくつかある。これらは,どこまでが許され,どこからが非行となるかの境界を示す限界事例として,特に参考になる。確認できた7件を挙げる(うち,1件は東京高裁判決が出た後に取り消された事例である。)。
第1は,別居中の妻の代理人が,相手方である夫の個人情報が明示された審判書の全文を,夫が子の転園先と予定していた幼稚園に送付した事案である。原弁護士会は守秘義務違反等を認めて戒告としたが,経験不足とプライバシーへの配慮の欠如により生じた軽率な行為であるものの,園長以外の第三者に内容が開示された事実は見受けられず実害が発生していないとして,処分が取り消された(2019年6月14日効力発生。自由と正義2019年8月号73頁)。
第2は,養育費請求事件で,相手方の海外留学予定の有無を確認するため弁護士会照会を申し出た際,その申出の理由に相手方の子の出生の経緯等プライバシーにわたる記載をした事案である。原弁護士会は戒告としたが,弁護士会照会の主体は弁護士会であり,照会内容に問題があってもその責任は照会を行った弁護士会にあるとして,処分が取り消された(2010年12月22日効力発生。自由と正義2011年2月号128頁)。
第3は,離婚訴訟の妻側の代理人が,夫である相手方の勤務先に電話をかけ,離婚訴訟中であることを人事総務部に伝えた事案である。原弁護士会は,プライバシーに配慮せず個人的事情を第三者である勤務先に知らしめたとして戒告としたが,架電は訴訟上の立証のためのものであり,架電先も総務人事部で内容も必要最小限度であったとして,処分が取り消された(2015年2月効力発生。自由と正義2015年4月号125頁。弁護士懲戒事件議決例集第18集にも収録)。
第4は,ある弁護士が,依頼者への嫌がらせ等への対応の中で,職務を通じて知った相手方の個人情報を不特定多数が閲覧可能なインターネット掲示板に書き込んだとして戒告とされたが,審査の結果,処分が取り消された事案である(原処分2012年5月24日。取消は2012年12月11日効力発生。自由と正義2013年2月号97頁。弁護士懲戒事件議決例集第15集125頁にも収録)。
第5は,前述の,職務上請求で取得した相手方の戸籍全部事項証明書の記載を依頼者らに開示した事案である。当初は戒告とされたが,戸籍の利用が受任事件の業務に必要な範囲内であり,依頼者らが非違行為に及ぶ具体的な予見可能性があったとはいえないとして,処分が取り消された(2018年4月10日効力発生。自由と正義2018年5月号106頁)。
第6は,交通事故の損害賠償請求事件で,加害者側代理人が,被害者及びその治療に当たった相手方に送付した文書において,相手方についての別件訴訟の係属裁判所,事件番号,当事者の氏名,架空通院や不正請求が問題となったという事実を記載した事案である。これらはいずれも「秘密」に当たり,原弁護士会は守秘義務違反として戒告としたが,保険会社が一括対応しない方針を決定し被害者に伝えていた以上,その理由を示すために架空通院等の存在を指摘せざるを得なかった事情があるとして,処分が取り消された(2021年6月21日効力発生。自由と正義2021年8月号66頁)。なお,正当な理由がない以上は非行に当たるとして戒告を相当とする意見も一定数あったことが付言されている。
第7は,第3の4で取り上げた,ハラスメント相談窓口に関わる事案である。所属事務所の弁護士が相談窓口で相談者から事情を聴取した後,同じ事務所の弁護士が相談者と対立する会社の訴訟代理人となったことが問題とされ,当初は戒告とされた。しかし東京高等裁判所が日弁連の裁決を取り消し,日弁連も改めて戒告を取り消して懲戒しないとした。聴取を担当した弁護士が中立・公正な立場で事実調査や法的判断を行ったとは認め難く,面談内容を整理して伝えたにとどまるとされたためである(2025年8月25日効力発生。自由と正義2025年10月号65頁)。中立・公正な立場が実際に認められて初めて,その立場の利用が問題となることを示す事例である。
これらは,個人情報に関わる行為であっても,訴訟上の立証や業務遂行に必要な範囲内であり,方法も相当であれば,直ちに非行とはならないことを示す。重要なのは,必要性と相当性である。情報に触れること自体が問題なのではなく,必要を超えて,あるいは不相当な方法で,本人の意思に反して情報を移転させることが問題なのである。
この限界の見極めは,実務において悩ましい。弁護士は,依頼者の権利を実現するために,相手方や第三者の情報を収集し,立証に用いる必要に日々直面する。情報を一切扱わなければ職務は成り立たない。だからこそ,問われるのは情報の取扱いの「質」である。取得は必要な範囲にとどめる。立証に用いる際は,求釈明や文書送付嘱託といった正規の手続を優先し,本人の関与の機会を確保する。やむを得ず第三者に情報を伝える場合も,伝える相手と範囲を必要最小限にとどめる。こうした節度を備えた取扱いであれば,たとえ結果として相手方に不利益が生じても,正当な業務として保護される。取消事例は,弁護士の正当な活動を萎縮させないための歯止めとして機能している。懲戒は,情報を扱うことを罰するものではなく,扱い方の逸脱を正すものである。
第8 漏洩を防ぐための実務指針
1 入口——情報を取りすぎない
事例の蓄積からは,漏洩を防ぐための実務的な指針を導くことができる。第1は入口の管理である。職務上請求は,受任事件の遂行に必要な範囲に厳格に限定する。利用目的の欄には,受任の実態に即した正確な内容を記載する。取得の必要性が乏しい範囲まで広げない。そもそも取得しなければ,漏らしようがない。必要のない情報は取らないという姿勢が,最初の防壁となる。
2 過程——混ぜない・残さない
第2は過程の管理である。事件記録は事件ごとに分離し,他の事件の情報を混在させない。裏紙の再利用は,個人情報が印刷されていないことを確認できる場合に限る。不要となった記録は,秘密及びプライバシーに関する情報が漏れないように廃棄する。弁護士会照会や職務上請求で得た情報は,その目的の範囲内で用い,目的を終えたら適切に管理する。情報を「混ぜない」「不用意に残さない」ことが,過誤型の漏洩を防ぐ。
3 出口——届け先と媒体を確認する
第3は出口の管理である。書面を交付・送付する前に,宛先と媒体を確認する。無関係な第三者の情報が含まれていないか,マスキングは十分か,封書とすべきところをはがきにしていないか,職場や学校など本人が知られたくない先に届けていないかを点検する。電子データで渡す場合は,アクセス制限を施す。出口の一手間が,漏洩の多くを未然に防ぐ。
4 事務職員の指導監督
職務上請求の濫用や記録管理の不備の事案では,事務職員に任せきりにして指導や確認を怠ったことが問われた例が目立つ。弁護士は,事務職員が行う戸籍・住民票の請求や記録の取扱いについて,適切に指導し監督する責任を負う。職員に委ねる場合でも,利用目的の正確性や記録の管理状況を弁護士自身が確認する体制が必要である。
事務職員への指導は,個別の指示にとどまらず,事務所全体の仕組みとして整えることが望ましい。職務上請求の用紙の保管と使用の記録を残す,請求の前に受任の有無と利用目的を弁護士が点検する,請求した書類の交付先を管理するといった運用を,事務所の標準的な手順として定着させることが有効である。属人的な注意だけに頼ると,繁忙時や担当者の交代の際に漏れが生じる。仕組みとして漏洩を防ぐ発想が求められる。
5 デジタル時代の発信における自制
インターネットとSNSの時代においては,これらに加えて,ネット上で他人の情報に触れる際の自制が欠かせない。一度載せれば取り返せないというデジタルタトゥーの性質を踏まえ,依頼者の被害回復や交渉上の必要を感じても,第三者の個人情報を公然と晒すことは避けなければならない。情報を発信する前に,その情報が本人の意思に反して拡散される危険を,常に想起すべきである。
SNSでの発信は,私的なものと職務上のものとの境界が曖昧になりやすい。弁護士という肩書きを示して発信すれば,その内容は弁護士の職務行為と切り離して見ることが難しくなる。気心の知れた相手とのやり取りのつもりであっても,第三者の目に触れ,拡散される可能性がある。交渉の相手方を批判したい,依頼者のために圧力をかけたいという思いが生じても,その手段として個人情報の公開を選んではならない。発信の前に一呼吸を置き,その投稿が第三者の住所や氏名,写真を含んでいないか,本人の意思に反して情報を拡散させるものでないかを,立ち止まって確認する習慣が,デジタル時代の弁護士には不可欠である。
第9 結びに代えて
個人情報の漏洩に関する弁護士懲戒の事例を通覧すると,一つの軸が見えてくる。それは,弁護士が他人の情報に触れる権限と立場を持つがゆえに,その情報を本人の意思に反して移転させてはならないという,職務の根本にある規律である。秘密保持義務は,弁護士という制度の信頼を支える最も基本的かつ重要な義務である。職務上請求の権限は,市民の権利擁護のために託された強い権限である。これらの権限と立場は,個人情報を守るためにこそ与えられている。
漏洩の態様は,書面の交付から,職務上請求の濫用,そしてSNSでの公開へと,時代とともに広がってきた。媒体は変わっても,問われる本質は変わらない。必要な範囲を超えて,あるいは不相当な方法で,本人の意思に反して情報を外へ出すことが,懲戒の対象となる。逆にいえば,必要性と相当性を備えた情報の取扱いは,正当な業務として保護される。
個人情報の漏洩は,多くの場合,悪意から生じるわけではない。依頼者のために役立ちたいという熱意,交渉を有利に進めたいという思い,経費を節約しようという習慣,繁忙の中での確認の省略といった,ありふれた動機や事情から生じる。だからこそ,誰にでも起こりうる。事例を学ぶ意義は,特定の弁護士を批判することにあるのではなく,自らが同じ落とし穴に陥らないための備えを得ることにある。漏洩がどのような場面で,どのような心理の下で起こるのかを知ることは,それを避ける第一歩である。
弁護士にとって,情報は預かりものである。預かったものは,預けた人の信頼を裏切らないように扱う。この当たり前の原則を,入口・過程・出口のそれぞれの場面で具体化することが,漏洩を防ぐ唯一の道である。情報を取りすぎない。事件を混ぜず,不要な記録を残さない。届け先と媒体を確かめる。ネットでの発信を自制する。事務職員を指導し,仕組みとして管理する。これらの一つ一つは,特別な技術ではなく,日々の小さな注意の積み重ねである。その積み重ねが,依頼者の信頼を守り,弁護士という制度の信頼を支える。本稿が,その実践の一助となれば幸いである。
第10 類型別 懲戒事例一覧表
各事案本体が載る印字ページのフッターを一件ずつ読み直して再検証した確定版である。他の事案と併合して処分された場合は事案の内容末尾に(他事案あり)と付した。
1 類型1(秘密の第三者開示)
| 番号 | 事案の内容 | 処分 | 効力発生日 | 掲載号・頁 |
|---|---|---|---|---|
| 1-1 | 破産被告事件の意見書全文(関係者の実名等)を自身のホームページに掲載 | 戒告 | 2009年4月13日 | 自由と正義2009年8月号203頁 |
| 1-2 | 内部通報の外部窓口担当弁護士が,匿名扱いの通報者の実名を会社に通知 | 戒告 | 2009年3月4日 | 自由と正義2009年6月号209頁 |
| 1-3 | 過去に元相談者から受領した秘密記載の書面を,相手方代理人として承諾なく証拠提出 | 戒告 | 2014年8月20日 | 自由と正義2014年11月号99頁 |
| 1-4 | ハラスメント相談窓口で聴取した事実を,相談者と対立する会社の訴訟代理人として利用するおそれを生じさせた(当初戒告も,東京高裁判決を経て取消・懲戒しない) | 戒告→取消・懲戒しない | 戒告2022年9月6日/取消2025年8月25日 | 弁護士懲戒事件議決例集第26集(棄却裁決)。取消は自由と正義2025年10月号65頁(判決確定公告は同2025年4月号72頁) |
| 1-5 | 相手方との通話を無断録音し,反訳した報告書を無断で証拠提出して秘密を漏洩 | 業務停止2月(裁決で業務停止1月) | 2024年9月3日(裁決2025年3月11日) | 自由と正義2025年2月号81頁(裁決同2025年5月号65頁) |
2 類型2(プライバシーのネット公開・第三者送付)
| 番号 | 事案の内容 | 処分 | 効力発生日 | 掲載号・頁 |
|---|---|---|---|---|
| 2-1 | 加害者とされる会社従業員の氏名・顔写真をSNSに掲載し詐欺師と紹介(懲戒審査相当。戒告は原弁護士会が別途) | 戒告 | — | 弁護士懲戒事件議決例集第26集86頁(綱紀委員会議決例) |
| 2-2 | 複数の相手方(投資被害・返金交渉の各相手方)に対し,氏名・写真・生年月日・居住地・居住先等をSNSに掲載し,又は掲載すると告知して詐欺師と断定 | 戒告 | 2024年1月23日 | 自由と正義2024年6月号97頁 |
| 2-3 | 相手方と子の個人情報が判読できる審判書・決定書の画像をSNSに掲載 | 戒告 | 2023年3月28日 | 自由と正義2023年8月号64頁 |
| 2-4 | 名誉毀損投稿に,住所・氏名・携帯番号・メールアドレス記載の懲戒請求書の画像を添付 | 戒告 | 2025年4月11日 | 自由と正義2025年9月号65頁 |
| 2-5 | YouTube・法人ブログで相手方の陳述書,氏名・住所,住民票等職務上請求書の写真を公開(他事案あり) | 戒告 | 2024年4月11日 | 自由と正義2024年10月号63頁 |
| 2-6 | プライバシーに関わる文書を相手方の職場にファクシミリ送信 | 戒告 | 2016年3月14日 | 自由と正義2016年6月号138頁 |
| 2-7 | 子の通う小学校宛てに,被疑者の逮捕・留置を推認できる文書を送付 | 戒告 | 2017年4月19日 | 自由と正義2017年8月号67頁 |
| 2-8 | 第三者が目にし得るはがきで,相手方のプライバシー中核事項を送付 | 戒告 | 2018年6月6日 | 自由と正義2018年9月号67頁 |
| 2-9 | プライバシー等を含む通知書を,依頼者を通じて相手方の勤務先の上司に渡す | 戒告 | 2021年12月15日 | 自由と正義2022年6月号90頁 |
| 2-10 | 取引先約20社へのファクシミリ送信を求める文書に,相手方のプライバシー事項を記載した文書を添付(他事案あり) | 戒告 | 2023年8月31日 | 自由と正義2023年11月号73頁 |
| 2-11 | 第三者の実名記載でプライバシー上の補正を求められた訴状の写しを,勤務先の市等に送付(他事案あり) | 業務停止2月 | 2024年3月19日 | 自由と正義2024年7月号142頁 |
| 2-12 | 内容証明の写しを,相手方の父や経営会社宛てに親展等の配慮なく送付 | 戒告 | 2015年9月28日 | 自由と正義2016年1月号106頁 |
| 2-13 | 弁護士会照会で得た相手方の診療情報の目的外使用を防ぐ措置を怠った(他事案あり) | 業務停止6月 | 2019年4月17日 | 自由と正義2019年8月号71頁 |
3 類型3(職務上請求の濫用)
| 番号 | 事案の内容 | 処分 | 効力発生日 | 掲載号・頁 |
|---|---|---|---|---|
| 3-1 | 刑事被告人の依頼で,刑務所職員13名と家族の戸籍・住民票を職務上請求し,本人に交付 | 業務停止3月 | 2008年8月18日 | 自由と正義2008年11月号118頁 |
| 3-2 | 職印を押捺した白紙の職務上請求用紙を非弁護士に交付(他事案あり) | 退会命令 | 2008年10月9日 | 自由と正義2009年2月号138頁 |
| 3-3 | マスコミ調査会社の依頼で,芸能人等の戸籍・住民票を90件以上職務上請求 | 業務停止6月 | 2010年6月7日 | 自由と正義2010年9月号148頁 |
| 3-4 | 「相続関係調査のため」と虚偽記載して相手方の戸籍謄本を職務上請求 | 戒告 | 2013年4月1日 | 自由と正義2013年7月号113頁 |
| 3-5 | 業務停止期間中に他人の戸籍附票・住民票を職務上請求 | 戒告 | 2013年12月3日 | 自由と正義2014年2月号111頁 |
| 3-6 | 受任事件で取得した相手方の住民票・戸籍を依頼者に交付 | 戒告 | 2014年2月5日 | 自由と正義2014年5月号112頁 |
| 3-7 | 故人の関係者の戸籍を,35回にわたり虚偽の使用目的を記載して請求 | 戒告 | 2014年3月6日 | 自由と正義2014年6月号121頁 |
| 3-8 | 世帯全員の住民票を必要を超えて取得し,調停と無関係に依頼者へ交付 | 戒告 | 2014年6月18日 | 自由と正義2014年10月号99頁 |
| 3-9 | 事務員でない者に100枚綴りの職務上請求書を交付し使用を黙認(他事案あり) | 業務停止2月 | 2014年7月30日 | 自由と正義2014年11月号93頁 |
| 3-10 | 事務職員への指示を怠り,虚偽目的記載で相手方の戸籍謄本等を取得 | 戒告 | 2015年7月3日 | 自由と正義2015年10月号88頁 |
| 3-11 | 興信所従業員の相談で,相続人調査の虚偽理由で相手方の戸籍謄本を取り寄せ | 戒告 | 2016年7月21日 | 自由と正義2016年12月号95頁 |
| 3-12 | 「売掛金請求」と虚偽記載して相手方の戸籍附票・戸籍を職務上請求(弁護士法人) | 戒告 | 2017年3月28日 | 自由と正義2017年7月号87頁 |
| 3-13 | 非弁提携の依頼で住民票・戸籍を職務上請求し対価を取得(他事案あり) | 業務停止1年6月 | 2017年9月7日 | 自由と正義2017年12月号104頁 |
| 3-14 | 相手方の夫・父・母の住民票・戸籍を職務上取得し,無関係情報を含め無マスキングで依頼者交付 | 戒告 | 2018年11月2日 | 自由と正義2019年3月号90頁 |
| 3-15 | 事件委任前・弁護人段階で相手方の戸籍・住民票を過度に広範に職務上請求(他事案あり) | 業務停止1月 | 2019年7月18日 | 自由と正義2019年11月号70頁 |
| 3-16 | 虚偽目的記載で住民票・戸籍附票を不正取得し,不動産会社・なりすまし人物に交付(登記被害) | 業務停止6月 | 2021年1月28日 | 自由と正義2021年6月号92頁 |
| 3-17 | 遺産分割調停と虚偽記載して相手方の住民票を不正取得(他事案あり) | 業務停止3月 | 2021年11月10日 | 自由と正義2022年4月号69頁 |
| 3-18 | プライバシー配慮を欠き,虚偽記載で相手方の世帯全部の住民票を請求 | 戒告 | 2022年3月30日 | 自由と正義2022年10月号57頁 |
| 3-19 | 「訴訟準備のため」と虚偽記載し,会社代表者の住民票・戸籍謄本を職務上請求 | 業務停止1月 | 2022年7月25日 | 自由と正義2023年1月号91頁 |
| 3-20 | 委任契約がないのに住所調査依頼のみで相手方の住民票を取得し,住所を依頼者に教える | 戒告 | 2022年9月20日 | 自由と正義2023年2月号60頁 |
| 3-21 | 「貸金返還請求」等と虚偽記載して戸籍・住民票を職務上請求 | 業務停止4月 | 2022年10月11日 | 自由と正義2023年2月号62頁 |
| 3-22 | 探偵事務所の依頼で,相手方の住民票・戸籍を虚偽記載で職務上請求し交付 | 戒告 | 2023年1月25日 | 自由と正義2023年5月号64頁 |
| 3-23 | 事務職員任せで,虚偽目的記載により相手方の母・本人の戸籍・住民票等を職務上請求 | 戒告 | 2023年2月14日 | 自由と正義2023年8月号59頁 |
| 3-24 | 調査会社の住所調査依頼で,虚偽目的・依頼者名を記載して実父の原戸籍・戸籍・住民票等を取得 | 業務停止1月 | 2025年3月12日 | 自由と正義2025年8月号61頁 |
4 類型4(記録管理の過誤)
| 番号 | 事案の内容 | 処分 | 効力発生日 | 掲載号・頁 |
|---|---|---|---|---|
| 4-1 | 既済刑事記録(被害者氏名一覧・顔写真・供述調書)の裏紙利用書類を含む記録を依頼者に交付 | 戒告 | 2009年7月28日 | 自由と正義2009年12月号176頁 |
| 4-2 | 共同原告訴訟で,他原告の情報を無マスキングのまま依頼者に訴状を閲覧させた(他事案あり) | 業務停止1月 | 2014年6月21日 | 自由と正義2014年10月号99頁 |
| 4-3 | 一件記録の裏紙に他事件依頼者の個人情報が印刷されていたのに,確認せず相手方に交付 | 戒告 | 2022年3月22日 | 自由と正義2022年9月号67頁 |
| 4-4 | 弁護士会照会で得た預金取引明細を第三者に交付(綱紀審査会議決例。懲戒審査相当の議決が得られず=処分なし) | 綱紀審査 | — | 弁護士懲戒事件議決例集第18集188頁(平成27年) |
5 訴訟書面でのプライバシー暴露
| 番号 | 事案の内容 | 処分 | 効力発生日 | 掲載号・頁 |
|---|---|---|---|---|
| 5-1 | 強姦事件の弁護人が,証言予定の被害少女に性的プライバシー記載の検面調書等の謄写を渡し持ち帰らせた | 戒告 | 2005年3月1日 | 自由と正義2005年6月号134頁 |
| 5-2 | 控訴趣意書に,相手方の同意なくプライバシーにわたる事柄を記述 | 戒告 | 2006年3月30日 | 自由と正義2006年6月号169頁 |
| 5-3 | 準備書面・控訴理由書で,相手方の異性関係等プライバシーの機微や親族・知人のプライバシーを暴露 | 戒告 | 2009年2月23日 | 自由と正義2009年6月号207頁 |
| 5-4 | 主張書面に,相手方陳述書の作成者夫婦の名誉・プライバシーを侵害する表現を記載 | 戒告 | 2010年3月30日 | 自由と正義2010年8月号135頁 |
6 裁決で処分が取り消された限界事例
| 番号 | 事案の内容 | 経過 | 取消の効力発生日 | 掲載号・頁 |
|---|---|---|---|---|
| 6-1 | 相手方の個人情報が明示された審判書全文を幼稚園に送付(守秘義務違反は認定も実害なし) | 戒告→取消・懲戒せず | 2019年6月14日 | 自由と正義2019年8月号73頁 |
| 6-2 | 弁護士会照会の申出理由に相手方の子の出生経緯等プライバシーを記載(照会主体は弁護士会) | 戒告→取消・懲戒せず | 2010年12月22日 | 自由と正義2011年2月号128頁 |
| 6-3 | 相手方の勤務先に離婚訴訟中と伝達(訴訟上の立証・内容は必要最小限度)(他事案あり) | 戒告→取消・懲戒せず | 2015年2月 | 自由と正義2015年4月号125頁(議決例集第18集) |
| 6-4 | 相手方の個人情報をネット掲示板に書込(審査の結果,処分取消) | 戒告(2012年5月24日)→取消 | 2012年12月11日 | 自由と正義2013年2月号97頁 |
| 6-5 | 職務上請求で取得した相手方の戸籍記載を依頼者に開示(業務に必要な範囲内・予見可能性なし) | 戒告(2016年5月23日)→取消 | 2018年4月10日 | 自由と正義2018年5月号106頁 |
| 6-6 | 架空通院・不正請求が問題となった事実等を被害者に送付(理由を示す必要があった事情) | 戒告→取消・懲戒せず | 2021年6月21日 | 自由と正義2021年8月号66頁 |