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不当な懲戒請求と不法行為責任(AI作成)

この記事は,弁護士に対する懲戒請求が「違法な懲戒請求」として不法行為(民法709条)になる場合を,最高裁平成19年4月24日判決に即して整理したものです(2026年7月時点の法令・裁判例に基づきます。)。

目次

第1 懲戒請求は何人でもできる(弁護士法58条1項)

弁護士に対する懲戒請求は,誰でもすることができます。

何人も、弁護士又は弁護士法人について懲戒の事由があると思料するときは、その事由の説明を添えて、その弁護士又は弁護士法人の所属弁護士会にこれを懲戒することを求めることができる。(弁護士法58条1項)

懲戒請求があると,弁護士会は懲戒の手続に付し,まず綱紀委員会が事案を調査します。綱紀委員会が懲戒委員会に審査を求めることを相当と認める議決をした場合に,懲戒委員会の審査に進みます(弁護士法58条2項ないし6項)。この「何人も」という広い請求権があることの意義については,別記事「弁護士の懲戒請求権が何人にも認められていることの意義」で扱っています。

第2 懲戒請求が不法行為となる場合(最高裁平成19年4月24日判決)

懲戒請求が誰でもできるといっても,根拠のない懲戒請求を無限定に許せば,対象とされた弁護士は大きな不利益を受けます。そこで最高裁は,一定の場合に,懲戒請求それ自体が違法な不法行為になるとしています。

最高裁平成19年4月24日判決は,次のように判示しました。すなわち,弁護士法58条1項に基づく懲戒請求が事実上又は法律上の根拠を欠く場合において,請求者が,そのことを知りながら,又は通常人であれば普通の注意を払うことによりそのことを知り得たのに,あえて懲戒を請求するなど,懲戒請求が弁護士懲戒制度の趣旨目的に照らし相当性を欠くと認められるときには,違法な懲戒請求として不法行為を構成する,というものです。

つまり,単に懲戒請求が認められなかったというだけでは違法にはならず,根拠を欠くことを知り,又は容易に知り得たのにあえて請求したなど,制度の趣旨目的に照らして相当性を欠く場合に,はじめて不法行為となります。

第3 田原睦夫裁判官の補足意見

同判決の田原睦夫裁判官の補足意見は,懲戒請求が対象弁護士に与える影響の大きさを具体的に述べています(ナンバリング・改行は引用者が付しています。)。

① 弁護士に対する懲戒は,弁護士としてあるまじき行為を行ったことを意味し,弁護士としての社会的信用を根底から覆しかねないものであるだけに,懲戒事由に該当しない事由に基づくものであっても,懲戒請求がされたという事実が第三者に知れるだけでも,その業務上の信用や社会的信用に大きな影響を与えるおそれがある。虚偽の事由に基づいて懲戒請求をした場合には,虚偽告訴罪(刑法172条)に該当すると解されている。

② 懲戒請求がされると,被請求者は,根拠のない請求であっても,反論・反証活動のために相当なエネルギーを割かれる。加えて,綱紀委員会の調査に付されると手続終了まで他の弁護士会への登録換えや登録取消しの請求ができないと解されており,弁護士の身分に重大な制約が課される。

③ こうした負担の大きさからして,懲戒請求をする者は,被請求者に懲戒事由があることを事実上・法律上裏付ける相当な根拠について調査・検討すべき義務を負うのは当然である。

④ 殊に弁護士が自ら懲戒請求者となり,又はその代理人等として関与する場合には,根拠のない懲戒請求が被請求者に多大な負担を課し,懲戒請求の濫用が弁護士自治という自らの拠って立つ基盤を傷つけかねないことを自覚すべきであって,慎重な対応が求められる。

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出典

法令

  • 弁護士法58条,民法709条,刑法172条(いずれもe-Gov法令検索により現行条文を確認)

裁判例

  • 最高裁平成19年4月24日判決(民集61巻3号1102頁)〔公開前に裁判所HPの裁判例検索で実在・内容を確認し,詳細ページのURLを挿入すること〕