証人尋問及び当事者尋問

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1 尋問前の準備等
(1) 訴訟手続を進めていく中で証人尋問又は依頼者本人の当事者尋問が必要になった場合,証人の方又は依頼者本人に必ず裁判所の法廷に来てもらう必要があります。
(2) 「当事者は,主張及び立証を尽くすため,あらかじめ,証人その他の証拠について事実関係を詳細に調査しなければならない。」(民事訴訟規則85条)とされています。

   そのため,依頼した弁護士が証人及び依頼者本人との間で尋問に関する打ち合わせをすることは,民事訴訟規則が当然に予定していることです。
(3) 尋問のための事情聴取の際は,有利不利を問わず,関係する事情を一通り話して下さい。
   依頼した弁護士が十分に当事者又は証人の言い分を把握していない場合,当事者又は証人の法廷での証言において,言い間違い,記憶違い等があった場合,依頼者に不利な事実が法廷で初めて明らかになる危険を排除できないことから,言い間違い等を訂正するための質問ができなくなることがあります。
(4) 証人若しくは当事者本人の尋問又は鑑定人の口頭による意見の陳述において使用する予定の文書は,証人等の陳述の信用性を争うための証拠(=弾劾証拠)として使用するものを除き,当該尋問又は意見の陳述を開始する時の相当期間前までに提出する必要があります(民事訴訟規則102条)。
(5)ア 証人尋問又は当事者尋問を申請する場合,尋問に要する見込みの時間等を記載した証拠申出書(民事訴訟規則106条・127条)と一緒に,できる限り個別的かつ具体的に記載した尋問事項書を裁判所に提出します(民事訴訟規則107条・127条)。
    相手方に自宅を知られたくない場合,「〒530-0047 大阪市北区西天満4丁目7番3号 冠山ビル2・3階 林弘法律事務所内」といった感じで,勤務先を住所として記載すればいいです。
イ 証人及び当事者本人の尋問の申し出は,できる限り一括してしなければなりません(民事訴訟規則100条)。
ウ 証拠申出書,証拠説明書等の書式が日弁連HPの「裁判文
書」に載っています。
(6)ア 証人尋問又は当事者尋問における主尋問及び反対尋問の時間(「尋問予定時間」といいます。)は,裁判所が,陳述書,尋問事項書等を踏まえた上で,当事者と協議しながら決定します。
イ 証人又は当事者を尋問する旨の決定があったときは,尋問の申出をした当事者は,証人又は当事者本人を期日に出頭させるように努める必要があります(民事訴訟規則109条・127条)。

    また,証人又は当事者本人は,期日に出頭することができない事由が生じたときは,直ちに,その事由を明らかにして裁判所に届け出る必要があります(民事訴訟規則110条・127条)。
(7)  誘導質問(尋問者が期待する答えを示唆・暗示するような質問)は禁止されています(民事訴訟規則115条2項2号・127条本文)。
そのため,例えば,依頼した弁護士に対し,主尋問において,「はい」とだけ答えれば済むような質問(「クローズドクエスチョン」といいます。)だけをしてもらうことはできません。
(8) 尋問当日の服装に特に決まりはありませんが,裁判所という公の場で供述する以上,カジュアルな服装は避けて,その場にふさわしい清潔感のある服装が無難です。
例えば,会社員の場合はスーツ姿,学生の場合は制服が無難ですが,ネクタイまではしなくてもいい気がします。
(9) 最低限,尋問当日に持参すべきものとしては,①印鑑(認め印でいいですが,シャチハタは避けた方が無難です。),②依頼した弁護士からもらった尋問に関するメモ書き等(尋問直前,依頼した弁護士の事務所で最後の確認をするのが通常と思います。)となります。

2 尋問当日の流れ
(1)ア 尋問当日は,トイレをすませた上で,期日が開始する10分前ぐらいまでに法廷に入った方がいいです。
   そうすれば,期日開始前に,宣誓書に当事者又は証人として署名押印をしたり,証人等出頭カードに住所,氏名,職業及び年齢を記入したりすることができ,時間に余裕を持てます。
イ 印鑑を忘れた場合,押印の代わりに指印(指に朱肉を付けて指形(ゆびがた)を押すこと。)を押すことになります。

(2) 尋問を開始する際,裁判長が当事者又は証人に対し,人定質問として,証人等出頭カードを見ながら,「住所,氏名,職業及び年齢は証人等出頭カードに記載したとおりですね。」と確認しますから,「はい。間違いありません。」と答えます。
   個人情報保護のため,証人等出頭カードに記載した住所,氏名,職業及び年齢が朗読されることはまずありません。
(3) 人定質問の直後に,起立して宣誓書を朗読します。
   詳細については,後述しています。
(4) 宣誓書朗読が終わると,裁判官から虚偽の陳述をした場合の制裁について告知されます。
   証人尋問の場合は偽証罪を,当事者尋問の場合は過料の制裁を告知されます。

(5)ア 偽証罪等の告知が終わると,事前に決められている尋問予定時間を目安に,当事者又は証人が着席したまま証言します。
   通常は,依頼した弁護士(主尋問),相手の弁護士(反対尋問),裁判官(補充尋問)という順番で尋問が行われます(民事訴訟規則113条1項)。
イ 当事者又は証人の陳述書を書証として提出している場合,主尋問の冒頭において,弁護士が陳述書の署名押印部分を示した上で,「これはあなたが署名押印したものということで間違いありませんか?」などと確認することで,陳述書の成立の真正を立証することが多いです。
(6) 尋問が終わると,当事者であれば当事者席に座ることができますし,証人であればそのまま帰るか,傍聴席で裁判の続きを傍聴することができます。

3 尋問の雰囲気
証人尋問及び当事者尋問の大体の雰囲気としては,テレビドラマのとおりです。
ただし,尋問者の核心を突いた質問に対し,証人又は当事者本人が一方的に自白を始めるようなことは絶対にあり得ません。

4 文書等を利用した尋問
(1) 当事者は,裁判長の許可を得て,文書,図面,写真,模型,装置その他の適当な物件を利用して証人又は当事者に質問することができます(民事訴訟規則116条1項・127条)。
この場合,依頼を受けた弁護士又は相手方の弁護士が,「甲第1号証の3頁目を示します。」とか,「原告準備書面(1)の上から3行目以下を示します。」などと述べることで,弁護士が証人又は当事者に対してどの書面を示しているかを明確にしつつ質問します。
(2) 刑事裁判の場合,書面等を示すことができるのは以下の三つの場合に限定されていますものの,民事裁判の場合,特に限定されていません。
① 書面又は物に関し,その成立,同一性その他これに準ずる事項について尋問する場合(刑事訴訟規則199条の10)
② 証人の記憶を喚起するために示す場合(刑事訴訟規則199条の11)
③ 供述を明確にするために図面,写真,模型,装置等を示す場合(刑事訴訟規則199条の12)

5 付き添い及び遮へい
(1) 証人又は当事者の年齢又は心身の状態その他の事情を考慮し,証人又は当事者が尋問を受ける場合に著しく不安又は緊張を覚えるおそれがある場合,証人尋問又は当事者尋問の際,裁判長の許可があれば,適当な人を付き添わせることができます(民事訴訟法203条の2・210条,民事訴訟規則122条の2・127条)。
(2) 事案の性質,証人の年齢又は心身の状態,証人と当事者本人等との関係その他の事情により,証人又は当事者が当事者本人等の面前で陳述するときは圧迫を受け精神の平穏を著しく害されるおそれがある場合,証人尋問又は当事者尋問の際,裁判長の許可があれば,遮蔽の措置をとってもらえます(民事訴訟法203条の3・210条,民事訴訟規則122条の3・127条)。

6 書類に基づく陳述はできないこと
(1) 裁判所で尋問を受ける場合,裁判長の許可がない限り,書類に基づいて陳述することはできません(民事訴訟法203条・210条)。
(2) 書類に基づく陳述が原則として禁止されているのは,証人があらかじめ尋問事項に基づいて用意をし,メモを作成してくると,メモの作成状況が明らかでなく,他人の影響を受けやすく,自由な記憶に基づく真相を吐露しにくくなるし,一定の目的に沿う証言のみをして偽証がしやすくなるためとされています。
また,書類に基づく陳述が例外的に許容されているのは,証人が,計算事項について証言する場合,又は相当長期間にわたる事件の経過を陳述する場合等,単に記憶に基づいて証言することが困難であり,しかも偽証するおそれもないと認められるときは,書類に基づく陳述を許容する方が真実発見に資すると考えられているからです。

7 公開の法廷で行われること
(1) 証人尋問及び当事者尋問は,公開の法廷における口頭弁論期日に行われます(憲法82条1項)。
憲法82条1項は,裁判の対審及び判決が公開の法廷で行われるべきことを定めていますところ,その趣旨は,裁判を一般に公開して裁判が公正に行われることを制度として保障し,ひいては裁判に対する国民の信頼を確保しようとすることにあります(最高裁大法廷平成元年3月8日判決)。
(2) 口頭弁論期日を公開しなかった場合,最高裁判所に対する絶対的上告理由となります(民事訴訟法312条2項5号)。
ただし,口頭弁論の公開の有無は口頭弁論調書の形式的記載事項であり(民事訴訟規則66条1項6号),口頭弁論調書によってのみ証明できる事柄です(民事訴訟法160条3項)。

8 裁判所HPでの説明
裁判所HPの「口頭弁論等」には,「証人は,原則として尋問を申し出た当事者が最初に尋問し,その後に相手方が尋問することになっています。裁判所は,通常は当事者が尋問を終えた後に尋問を行います。もっとも,裁判長は,必要があると考えたときは,いつでも質問することができます。証人等の尋問の順序,誘導尋問に対する制限その他の尋問のルールは民事訴訟法及び民事訴訟規則に定められていますが,一般的に言って,英米法に見られるような広範で厳格な証拠法則は,日本の制度には存在しません。」と書いてあります。

9 岡口基一裁判官の説明
「裁判官!当職そこが知りたかったのです。-民事訴訟がはかどる本-」55頁及び56頁には以下の記載があります。
岡口   尋問で印象が変わることは少なくないですね。何で変わるかというと,じかに会って,お話を聞くから,人となりが見えてくるんですよね。
それで,陳述書で抱いていたイメージと大分変わるんですよ。尋問でバレバレの嘘を言ったりすると,途端に今まで積み重ねてきたのも全部ダメになっちゃう。
その人の人間性とか全部出ちゃうので,尋問って怖いですよ。むしろ裁判官は,そういうところを見ているんですね。なので,練習させておいたほうがいいかもしれません。
中村 そうですね。練習は絶対必要ですよね。私は修習中に裁判官から言われた「スーツをふだん着ていないような人がきっちり着てきたら,ちょっとうさんくさいと思いますね」というのが,すごく印象に残っているんですけど,そういうところはありますか?
岡口   自然体がいいですね,無理していない感じが。そこは信用性にかかわります。
中村 やっぱり尋問の時にも,つくり過ぎているなという印象はあまりよくないのかなと。
岡口 よくないですね。だから,練習し過ぎもよくないんですよ。
中村 すらすら出てき過ぎというのも。
岡口 そうなんですね。これは言わされているなと思っちゃうので。

10 反対尋問の「べからず」集
(1)   「民事反対尋問のスキル いつ,何を,どう聞くか?」37頁ないし87頁によれば,以下のとおりです。
① オープンな質問をしない。
② 「なぜ質問」をしない。
③ 「聞く順序を間違えるな」
④ ストレートに聞かない
⑤ 同意を求める質問をしない:「~ではないですか」質問
⑥ 同意を求める形の典型例:「普通ではないですか」
⑦ 深追いしない~引き際が肝心
⑧ 意見を聞かない,議論しない
⑨ 「仮定の質問」をしない
⑩ 不適当な言葉による質問
(2) 場合によっては,「べからず」集に載っている質問でも聞くべき場合があると思います。