第1 本記事の位置付け
本記事は,電子申立て義務の例外,システム障害,期限切迫時の代替提出及び期間徒過への対応を扱う分割記事である。
mintsの全体像と論点別の入口は,mintsに関する弁護士向けQ&Aにまとめている。
画面上のクリック,入力,アップロード,ダウンロードその他の操作手順は,mints操作マニュアル~当事者ユーザ編~の解説を参照されたい。
証拠の提出方法,証拠説明書の作成及び証拠原本の取扱いは,mints後の証拠説明書を参照されたい。
第2 弁護士の電子申立て義務
1 義務の内容と根拠
弁護士等の訴訟代理人には,電子申立ての義務がある(改正民訴法第132条の11第1項)。義務があるにもかかわらず書面で訴えを提起すると,原則として,その訴えは不適法なものとなる(以上,準備の手引10頁)。まずこの原則を押さえたい。
2 例外事由
(1) 例外が認められる場合
例外として書面提出が許されるのは,「裁判所の使用に係る電子計算機の故障その他その責めに帰することができない事由」がある場合である(改正民訴法第132条の11第3項)。書面で提出するときは,例外事由がある旨とその具体的内容を記載した書面を添付する(改正民訴規則第52条の14)。例外事由の立証責任は,書面提出をする側にある。
例外が認められる典型は2つある。1つは,専ら裁判所側の事情でシステムが使えない場合である。これは基本的に公知の事実として扱われ,特段の立証は不要である。もう1つは,大規模な通信障害である。この場合は,通信事業者に障害が発生したことと,代理人がその事業者を利用していることの立証が必要である(以上,準備の手引10頁)。
(2) 例外が否定される場合
例外が否定される典型は,代理人の側のPC・周辺機器の故障である。改正法は,代理人がPC等を準備・管理することを前提としている。そのため,他の端末・回線や裁判所設置端末の利用といった代替手段をとることが求められる。代替手段を尽くせる以上,例外が認められる場合は限られる(以上,準備の手引11頁)。
3 申立てができないときの代替手段
(1) 障害発生時の代替措置の順次実行
自分のPCで申立てができず,原因が分からないときがある。時効完成や控訴期間満了が迫る場合には,次の代替策を順に試す(準備の手引11頁)。
ア まず確認する。インターネット接続とサインインの可否を確認する。PC・ルーター等の設定を確認し,再起動で改善するかを見る。
イ 事務所内の他の端末・回線を使う。他のPCやタブレットを使う。スマートフォンのテザリングで接続する。
ウ 裁判所設置端末を使う(開庁時間中のみ)。訴状等を記録したUSBメモリを持参し,裁判所設置端末で電子申立てをする。
(2) 例外事由認定のための客観的疎明
これらを尽くしてもできなかった場合は,その状況を陳述書等の証拠で裏付ける。サインインできない画面の動画やスクリーンショットが考えられる。そうすることで,例外事由が認められることもある(準備の手引11頁)。
(3) 不変期間徒過における訴訟行為の追完
これらを尽くしても控訴期間等の不変期間を徒過してしまった場合には,例外事由による書面受理とは別に,訴訟行為の追完(民訴法第97条)による救済の余地が残されている。
改正法は,追完をすることができる「その責めに帰することができない事由」の例示として「裁判所の使用に係る電子計算機の故障」との文言を加えており,裁判所の使用するサーバの故障により不変期間を遵守することができなかった場合には,追完をすることができることを明確にしている。
もっとも,インターネットの使用を義務付けられている訴訟代理人等にとっては,書面の提出による申立て等は救済的に認められるものにすぎず,あくまでも例外的なものであることからすると,書面の提出をすることができたことのみをもって,追完を否定すべきではないと解されている。
(4) システム障害等における時効の完成猶予
時効の完成猶予との関係では,改正法は特段のルールを設けていないが,裁判所のシステムの故障により長期間にわたって手続をすることができない事態が生じた場合には,天災その他避けることのできない事変による時効の完成猶予を定める民法第161条により対応することが考えられるとされている。
第3 システム障害が生じたとき
mintsに障害が生じたら,速やかに稼働状況を確認する。確認先は,裁判所ウェブサイト「民事裁判手続のデジタル化」の「システムの稼働状況」と,mintsのトップページである。期日がある場合は,事件係属部に連絡する(以上,準備の手引46頁)。
障害発生時も,直ちに全ての手続を紙へ切り替えるのではない。控訴期間又は消滅時効の完成が迫っていない場合など,速やかな申立てを要しないときは,まず裁判所のシステムの復旧を待って電子申立てをする。手数料も,復旧後にペイジーで納付できるため,最初から収入印紙を貼付するのではなく,裁判所の指示を待つ。
これに対し,障害が長期化し,又は期限が切迫している場合は,裁判所側のシステム障害が電子申立て等義務の例外事由に当たり得る。この場合は,裁判所へ連絡した上で,例外事由の具体的内容を記載した書面を添えて書面申立てをする。訴えの提起であれば,被告への送達に必要な訴状副本及び書証の写し等も併せて提出する。手数料を収入印紙で納付するかも,裁判所の指示を確認する。係属中事件の準備書面,答弁書等を書面で提出する場合は,相手方への直送が別途必要となる。手続の種類によって必要書類と相手方への送付方法が異なるため,「障害だから紙で出せば足りる」と一律に判断しないことが重要である(以上,準備の手引46頁・47頁)。
操作時のエラーコード,PDFの向き,メタデータその他の画面操作上の問題は,mints操作マニュアル~当事者ユーザ編~の解説にまとめている。