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Googleアカウントの相続手続―死亡後のデータ取得・資金請求・閉鎖(AI作成)

第1 対象範囲と結論

1 この記事の対象

本記事は,令和8年8月9日現在,日本に居住していた人の個人向けGoogleアカウントについて,利用者の死亡後に遺族,相続人,遺言執行者又は遺産管理権限を有する者が行う手続を扱う。Google Workspace,YouTubeのブランドアカウント,AdSense及びGoogle Payは,個人向けアカウントと手続が異なる範囲で別に説明する。デジタル財産全般については,非典型財産の相続実務(AI作成)も参照されたい。

Googleのフォーム及び利用規約は変更され得るため,実際の申請時には公式画面を再確認する必要がある。また,本記事は一般的な情報提供を目的とするものであり,個別事案では被相続人の国籍・住所,アカウントの種類,保存内容,遺言及び共同相続の状況に応じた検討を要する。

2 アカウント,データ及び金銭を分けて考えること

「Googleアカウントを相続する」という表現だけでは,結論を正確に示せない。相続の対象となり得る契約上の地位,Gmail・Drive・Googleフォト等の保存データ,動画・文書等の著作権,AdSense・Google Payに関する金銭債権及びアカウントを管理する技術的権限は,それぞれ法的性質と取得方法が異なるからである。

Googleが死亡した利用者について用意している主な手続は,①一定のデータの取得,②AdSense又はGoogle Payの資金の取得,③アカウントの閉鎖である。これは,被相続人と同じ名義でログインし,アカウントを使い続ける権限を付与する制度ではない。

3 パスワードは開示されないこと

Googleの死亡したユーザーに関する公式手続は,パスワードその他のログイン情報を提供しないと明記している。相続人がパスワードを知っている場合でも,被相続人としてログインし,パスワード変更,メール送信又はデータ削除をすることは,利用規約,通信相手の秘密,不正アクセス禁止法及び証拠保全との関係で問題を生じさせ得るため,Googleの公式手続を先に用いるべきである。

第2 Googleが用意する三つの手続

1 三つの請求の違い

Googleの公式フォームでは,死亡した利用者について次の三つの目的を選択する。データと資金を取得する可能性があるときは,閉鎖を最後にする必要がある。

請求主な目的申請後に得られ得るもの実務上の位置付け
データ取得Gmail,Drive,Googleフォト等の必要な情報を得ることGoogleの個別審査で認められたデータ最初に必要性と対象を検討する
資金取得AdSense又はGoogle Payに関する金銭を受領すること権限と残高が確認された場合の支払データ請求とは別に行う
アカウント閉鎖利用者のアカウントを終了させること閉鎖の処理データ・資金の処理後に行う

2 データ取得を先に検討する理由

Googleの現行フォームは,アカウントを先に閉鎖すると,その後はアカウント内容の提供請求を処理できないと説明している。したがって,遺言,契約書,写真,税務資料,事業資料又は相続財産の手掛かりが保存されている可能性がある場合,閉鎖請求より前に必要なデータを特定し,取得請求をするのが安全である。

もっとも,データ取得請求をすれば必ず開示されるわけではない。Googleは,利用者のプライバシーを保護する責任を理由として個別審査を行い,保存内容,申請者の権限及び必要性によっては開示しないことがある。

3 処理期間,費用及び開示率

Googleの公開資料からは,個別事案の標準処理期間,承認率,保存期間又は米国裁判所命令を取得する場合の総費用を確定できない。そのため,「申請から何か月以内に取得できる」,「無料で完了する」又は「相続人であれば開示される」と一律に見込むことはできない。

第3 申請前の確認と必要書類

1 低負担の初期確認

最初に,ログインせずに確認できる資料から,被相続人の氏名,Googleメールアドレス,死亡日,利用していたサービス,端末,Googleからの請求・入金明細及びYouTubeチャンネルの有無を整理する。個人向けアカウントかGoogle Workspaceか,YouTubeチャンネルがブランドアカウントに接続されているかも区別する。

端末に証拠価値があるときは,電源状態,保管場所及び発見時の状況を記録し,安易に操作しない。特に紛争が予想される場合,ログインやファイル操作によって更新日時,アクセス履歴又はデータ自体を変えないことが重要である。

2 Googleフォームで求められる資料

令和8年8月9日に確認したデータ取得分岐では,死亡した利用者の氏名・メールアドレス・死亡日,申請者の氏名・住所・メールアドレス等の入力に加え,申請者の政府発行身分証明書,死亡証明書及び権限を示す資料の提出が求められる。英語以外の書類には,認証された英訳を添付するよう求められる。

日本の事案では,死亡の記載がある戸籍・除籍謄本,相続関係を示す戸籍一式又は法定相続情報一覧図,遺言書,遺言執行者の権限資料,遺産分割協議書等が候補となる。ただし,日本のどの書類と英訳方法が個別事案で受理されるかは公式資料に一義的な説明がないため,フォームの表示とGoogleからの案内に従って補充する必要がある。

3 データ取得と米国裁判所命令

現行フォームは,予備審査の結果,請求が認められ得ると判断された場合でも,米国で発行された裁判所命令の取得を求めることがあり,命令に含めるべき文言をその段階で案内すると説明している。日本の戸籍又は遺言書を提出すれば,それだけで必ずGmail本文等が開示される仕組みではない。

裁判所命令を検討するときは,Googleから示された条件を確認した上で,申請者の遺産管理権限,アカウントの特定,求めるサービス・期間・送受信者・ファイル名又は検索語,データと相続目的との関連性,第三者の秘密及び秘匿特権への配慮を具体化する必要がある。高額の費用を要し得るため,まず公式フォームによる予備審査を利用し,対象データの価値と取得可能性を評価してから米国での手続へ進むのが合理的である。

4 AdSense・Google Payの資金請求

資金取得の分岐は,現行画面上,AdSense又はGoogle Payを対象としている。申請者は,支払先名義,政府発行身分証明書,死亡証明書及び遺言執行権・遺産管理権限を示す裁判所の認証を受けた資料等を求められ,権限ある受領者であることを確認する。

資金請求は,保存データの取得やアカウント閉鎖とは別の手続である。共同相続の場合,金銭債権の帰属,遺産分割,遺言執行者の権限及び受領権限を整合させる必要があり,相続人の一人が当然に全額を受領できるとは限らない。

5 アカウント閉鎖

閉鎖分岐では,申請者と死亡した利用者との関係,申請者の政府発行身分証明書,死亡証明書及び認証された英訳等が求められる。必要なデータ・資金の処理を終え,YouTubeチャンネル等への影響も確認してから閉鎖を請求すべきである。

第4 日本法上の位置付け

1 相続による包括承継とその限界

民法896条は,相続人が相続開始時から被相続人の財産に属した一切の権利義務を承継し,被相続人の一身に専属したものを除くと定める。Googleとの契約上の地位,未払収益又は著作権等は原則として承継の対象となり得るが,アカウントの全機能が一体として承継され,被相続人名義で能動的に利用できることまで直ちに導かれるわけではない。

令和8年8月9日に確認した同年7月30日発効のGoogle利用規約本文には,利用者の死亡により一般利用契約が当然に終了する,又は相続を一律に禁止するとの明示条項を確認できなかった。ただし,これは現行の一般利用規約についての確認結果であり,個別サービスの規約,利用者の設定及び請求する機能を別に確認しなければならない。

民法898条及び899条との関係では,遺産分割前の相続財産は共同相続人間の共有となり,各相続人が相続分に応じて権利義務を承継する。全データの開示やアカウント閉鎖が保存行為にとどまるか,処分又は管理に当たるかは請求内容によって異なるため,遺言執行者の権限,遺産分割及び他の共同相続人の意思を確認する必要がある。

2 保存データ,所有権及び著作権

クラウド上のデータは,民法85条が「物」と定義する有体物ではないため,紙又はUSBメモリと同じ所有権の対象としてだけ説明することはできない。データの取得可能性は,契約上の請求権,著作権等の知的財産権,金銭債権及びGoogleの開示手続を分けて検討する必要がある。

被相続人が作成した文書,写真又は動画の著作権は,原則として相続の対象となる。他方,著作権法59条,60条及び62条によれば,著作者人格権そのものは相続されないが,著作者の死後も人格的利益を保護する規定があり,コンテンツを取得したことと自由に改変・公開できることは同じではない。

3 死亡者情報と第三者の秘密

個人情報保護委員会のFAQ Q1-21は,死者に関する情報だけであれば個人情報保護法の個人情報に該当しないが,遺族等の生存者に関する情報でもある場合はその生存者の個人情報となると説明する。Gmail,連絡先及び共有ファイルには通信相手,共有者又は依頼者等の情報が含まれ得るため,被相続人の権利を承継したことだけで第三者情報の制約がなくなるわけではない。

さらに,電気通信事業法4条の通信の秘密,通信相手のプライバシー及び弁護士・医師等の職業上の秘密が問題となり得る。必要な情報の種類,期間,送受信者又は検索語を限定することは,取得費用を抑えるだけでなく,第三者の秘密を不必要に開示させないためにも意味がある。

4 自己判断によるログインの危険

不正アクセス禁止法2条及び3条は,他人の識別符号を入力してアクセス制御を免れる行為等を規制する。相続人によるログインが直ちに同法違反になると一律に断定することはできず,具体的なアクセス制御,権限及び故意によって判断されるが,Googleの承諾を得ずに死亡者名義でアクセスすることには法的な不確実性がある。

また,ログイン後の閲覧,転送,削除又はパスワード変更は,証拠の同一性及び取得経過を争わせる原因となる。端末内の情報を保全する必要が高い事案では,公式手続又はデジタル・フォレンジックを先行させるべきである。

5 準拠法,国際裁判管轄及び米国法

法の適用に関する通則法36条によれば,相続は被相続人の本国法によるため,日本国籍者の相続は日本法が出発点となる。他方,Googleの現行利用規約は契約についてカリフォルニア法及び同州の裁判所を指定しつつ,利用者の居住地法が法選択を許さない範囲では居住地法が適用されるとしており,相続準拠法とGoogleとの契約・開示に適用される法を同一視できない。

米国のStored Communications Act・18 U.S.C. §2702は,通信内容等の任意開示を制限し,適法な同意等の例外を定める。Googleが米国裁判所命令を求める場合,日本法上の相続資格だけでなく,米国法上の開示許容性及び裁判所の管轄を満たす必要がある。

第5 サービス別に異なる管理構造

1 Gmail,Drive及びGoogleフォト

個人向けGmail,Drive及びGoogleフォトは,一つのGoogleアカウントに結び付いていても,請求の必要性はサービスごとに異なる。遺言又は財産資料を探すための限定請求と,私的通信や写真を全件取得する請求では,必要性,第三者の秘密及び審査負担が大きく異なるため,目的に必要な範囲を具体化すべきである。

2 YouTube,ブランドアカウント及びAdSense

YouTubeチャンネルがブランドアカウントに接続されている場合,Googleのブランドアカウント管理資料によれば,複数の所有者・管理者を設定し,パスワードを共有せずに管理できる。主所有者の変更先は,原則として変更前7日以上所有者であることを要し,主所有者のGoogleアカウントを削除するとチャンネルも削除されることがある。

したがって,死亡後直ちに主所有者の個人アカウントを閉鎖するのではなく,既存の所有者,ブランドアカウントの役割,YouTube Studioのチャンネル権限,動画の著作権及びAdSense収益を確認する必要がある。チャンネル権限だけでは所有権を移転できない場合があるため,ブランドアカウント側の設定を別に確認する。

3 Google Workspace

職場又は学校から割り当てられたGoogle Workspaceアカウントでは,組織の管理者がアカウントへのアクセス,停止又はデータ移転を行えることがあり,個人向けの死亡者手続をそのまま用いるべきではない。Googleの共有ドライブに関する説明によれば,共有ドライブ内のファイルは個人ではなくチームに帰属し,作成者が組織を離れても残る。

また,管理者によるDriveファイルの所有権移転には,組織内外の移転等に制限がある。業務用メール,Drive,カレンダー及び共有ドライブについては,組織の管理者,契約プラン,保存ポリシー及びGoogle Vaultによる法的保持の有無を先に確認する必要がある。

第6 国内外の裁判例

1 日本の公表裁判例の確認範囲

裁判所ウェブサイトの裁判例検索で,「Googleアカウント」,「相続」,「デジタル遺産」,「故人」,「通信の秘密」及び「クラウド」を単独又は組み合わせて検索した範囲では,Googleアカウントの死亡後の承継又はデータ開示を直接判断した日本の公表裁判例を確認できなかった。この結果は,裁判所HP未掲載又は未公刊の裁判例を含めて裁判例が存在しないことを意味しない。

間接的に参考となるものとして,最高裁平成21年1月22日判決・平成19年(受)第1919号・民集63巻1号228頁は,共同相続人の一人が,被相続人の預金契約上の地位に基づき,金融機関に取引経過の開示を求められるとした。ただし,銀行の取引履歴に関する判決であり,通信内容を含むGoogleデータへそのまま適用できるものではない。

2 主要裁判例が示す判断要素

外国裁判例は日本の裁判所を拘束しないが,死亡者の契約上の地位,通信内容と非内容情報,第三者の秘密,請求範囲及び遺産管理権限を分ける必要性を示している。Googleを直接扱う事件と,デジタルアカウント承継の基準を形成した主要事件は次のとおりである。

裁判例対象判断の要点日本の手続への示唆
ドイツ連邦通常裁判所2018年7月12日判決・III ZR 183/17Facebook利用契約上の地位と通信内容の相続を認めた保存内容の私的性質だけで承継を否定しなかったが,能動的利用は別である
ドイツ連邦通常裁判所2020年8月27日決定・III ZB 30/20Facebook約1万4000頁のPDFを渡すだけでは足りず,生前と同様の閲覧方法を求めたデータ複製とアカウントアクセスは同じでない
Ajemian v. Yahoo!, Inc., 478 Mass. 169, 84 N.E.3d 766(2017年10月16日)Yahooメール遺産管理人の同意がStored Communications Act上の適法な同意となり得るとした米国法が開示を常に禁止するわけではないが,契約上の開示義務は別に判断される
Matter of Serrano, 56 Misc.3d 497, 54 N.Y.S.3d 564, 2017 N.Y. Slip Op. 27200(2017年6月14日)Google連絡先・カレンダー等の非内容情報を認め,メール本文は留保した内容情報と非内容情報を分け,必要性を示す必要がある
Estate of Paragon, 2019 N.Y. Slip Op. 33893(U)(2019年12月5日)死亡した弁護士のGmail職業上の秘密を理由に全メール本文の開示を認めず,限定請求の余地を示した全件請求より,非内容情報又は対象を限定した請求を先行させるべきである
Chauhan v. Google LLC, No. 3:21-cv-08948-VC, Dkt. 29(N.D. Cal. 2022年5月4日)Google治安判事は管轄,遺産管理人資格及びアカウント所有の立証不足等から却下を勧告した実体的な開示可否以前に,申請者の権限とアカウントの特定が必要である
Jinwoo Co., Ltd. v. Google LLC, No. 5:26-mc-80121-BLF, 2026 WL 1388703(N.D. Cal. 2026年5月18日)Google韓国の相続関係訴訟のため,限定的なディスカバリーを許可した召喚状発付の許可段階であり,具体的な開示範囲の最終判断ではない
パリ司法裁判所2026年1月27日仮処分命令・RG 25/56761Googleオンライン上の遺言探索について,司法執行官がGoogleの死亡者手続を用いることを許可した一般的な探索を認めず,相続に関係する検索語へ限定した

これらの裁判例に共通する実務上の要素は,①申請者の相続・遺産管理権限,②対象アカウントの特定,③通信内容と連絡先等の非内容情報の区別,④データと相続目的との関連性,⑤期間・相手方・検索語による限定,⑥第三者のプライバシー及び職業上の秘密への配慮である。相続人であることだけを示して全データを求める請求より,必要性を具体化した請求の方が,裁判例の考慮要素に適合する。

第7 実際の手続の進め方

1 初動からGoogleへの申請まで

① 被相続人のメールアドレス,利用サービス,端末,請求・入金明細及びYouTubeチャンネルを,ログインせずに把握する。端末を操作する前に,証拠保全の必要性を検討する。

② アカウント無効化管理ツールによる受取人指定が発動していないかを確認し,個人向けアカウント,Workspace及びブランドアカウントを区別する。その上で,必要なデータ,AdSense・Google Payの資金及び閉鎖を別々の課題として整理する。

③ データ取得については,サービス,期間,送受信者,ファイル名又は検索語を可能な範囲で限定し,政府発行身分証明書,死亡証明書,権限資料及び認証された英訳を準備する。Googleの公式フォームから予備審査を申し込み,追加資料又は米国裁判所命令に関する案内を待つ。

④ 資金があるときは受領権限を整理して別に請求し,必要なデータと資金の処理が全て終了してから閉鎖を請求する。申請画面,提出資料,受付通知及びGoogleとの通信は,将来の説明ができるよう保存する。

2 米国での手続へ進む条件と停止基準

米国裁判所命令の取得は,Googleが予備審査後に命令を求め,対象データが特定され,その取得が遺産の価値又は紛争の結論に実質的な影響を与え,費用に見合う場合に検討する。Googleが示す命令文言,管轄,Stored Communications Act上の同意,申請者の権限及び第三者情報の保護を,米国法の専門家と確認する必要がある。

反対に,対象アカウントを特定できない,必要なデータの種類・期間を説明できない,申請者の権限を証明できない,データを取得しても遺産又は紛争の評価が変わらない,又は予想費用が対象財産の価値を大きく上回る場合は,高負担の裁判手続へ進まないことを検討すべきである。まず非内容情報,手元の端末,金融明細及び関係者が保有する資料で目的を達成できないかを確認する。

第8 生前にできる対策

1 アカウント無効化管理ツール

Googleのアカウント無効化管理ツールでは,一定期間アカウントを使用しなかった場合に,最大10人の信頼できる連絡先へ通知し,選択したデータを共有するよう設定できる。共有するサービス,待機期間及びアカウント削除の希望を定期的に見直すことにより,死亡後に裁判手続が必要となる範囲を減らせる。

2 無効な個人アカウントの削除方針

無効なGoogleアカウントに関するポリシーによれば,個人向けGoogleアカウントが2年以上使用されていない場合,Googleはアカウント及びデータを削除できる。これは死亡後2年で必ず一律に削除されるという意味ではなく,継続中の購入・定期購入,Google Play残高等には例外もあるが,必要なデータがあると判明したときは申請を先延ばしにしない方がよい。

3 パスワードを遺言に書かないこと

遺言又は財産目録には,パスワード自体ではなく,アカウントの存在,利用サービス,重要データの所在,希望する処理及び担当者を記載する方が安全である。パスワードを遺言に記載すると,遺言の閲覧者へ不要な秘密が広がり,変更のたびに内容が陳腐化し,遺族によるログインが許されるとの誤解も生じる。

4 YouTube事業とWorkspace

YouTubeを事業に利用する場合,ブランドアカウントに第二の所有者を設定し,主所有者変更の7日要件を踏まえて平時に権限を整える。動画の著作権,出演者・音源の権利処理,AdSense収益,スポンサー契約及び事業データの所在も財産目録に記載する必要がある。

組織がGoogle Workspaceを利用する場合,退職・死亡時のメール,Drive,共有ドライブ及びカレンダーの移管,アカウント停止,法的保持並びに監査ログ保存を管理手順に含める。業務ファイルを共有ドライブへ保存し,管理者と所有者を一人に集中させないことが,死亡時だけでなく事故又は退職時の事業継続にも役立つ。

第9 出典・参考資料

1 法令・公的資料

① e-Gov法令検索・民法85条,896条,898条及び899条。

② e-Gov法令検索・著作権法59条,60条及び62条。

③ e-Gov法令検索・電気通信事業法4条。

④ e-Gov法令検索・不正アクセス行為の禁止等に関する法律2条及び3条。

⑤ e-Gov法令検索・法の適用に関する通則法36条。

⑥ 個人情報保護委員会「個人情報保護法に関するQ&A」Q1-21(令和8年8月9日閲覧)。

⑦ 18 U.S.C. §2702(令和8年8月9日閲覧)。

2 Google公式資料

① Google「亡くなったユーザーのアカウントに関するリクエストを送信する」(令和8年8月9日閲覧)。

② Google利用規約(令和8年7月30日発効,同年8月9日閲覧)。

③ Google「アカウント無効化管理ツールについて」(令和8年8月9日閲覧)。

④ Google「無効なGoogleアカウントに関するポリシー」(令和8年8月9日閲覧)。

⑤ Google「ブランドアカウントの所有者と管理者を変更する」(令和8年8月9日閲覧)。

⑥ Google Workspace「共有ドライブとは」(令和8年8月9日閲覧)。

⑦ Google Workspace管理者ヘルプ「ユーザーのドライブ ファイルを新しいオーナーに移管する」(令和8年8月9日閲覧)。

3 裁判例

① 最高裁平成21年1月22日第一小法廷判決・平成19年(受)第1919号・民集63巻1号228頁

② ドイツ連邦通常裁判所2018年7月12日判決・III ZR 183/17・BGHZ 219, 243

③ ドイツ連邦通常裁判所2020年8月27日決定・III ZB 30/20

④ Ajemian v. Yahoo!, Inc., 478 Mass. 169, 84 N.E.3d 766(Mass. SJC 2017年10月16日)

⑤ Matter of Serrano, 56 Misc.3d 497, 54 N.Y.S.3d 564, 2017 N.Y. Slip Op. 27200(N.Y. Sur. Ct. 2017年6月14日)

⑥ Estate of Paragon, 2019 N.Y. Slip Op. 33893(U)(N.Y. Sur. Ct. 2019年12月5日)

⑦ Chauhan v. Google LLC, No. 3:21-cv-08948-VC, Dkt. 29(N.D. Cal. 2022年5月4日)

⑧ Jinwoo Co., Ltd. v. Google LLC, No. 5:26-mc-80121-BLF, 2026 WL 1388703, Dkt. 12(N.D. Cal. 2026年5月18日)

⑨ パリ司法裁判所2026年1月27日仮処分命令・RG 25/56761

4 文献

① 北川祥一『デジタル遺産の法律実務Q&A』(日本加除出版,2020年)49頁,53頁~55頁,77頁~83頁,111頁~118頁,138頁~156頁及び169頁~186頁。

② 中村規代実・井崎淳二・横山宗祐編『非典型財産の相続実務―金融商品,デジタル財産,知的財産,地位・権利,特殊な不動産・動産等―』(新日本法規出版,2024年)38頁~43頁及び53頁~55頁。

③ 河瀬季『Q&A 実務家のためのYouTube法務の手引き』(日本加除出版,2022年)134頁~136頁。