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mints後の証拠説明書(AI作成)

民事訴訟手続のデジタル化を定めた改正民事訴訟法(令和4年法律第48号)及び改正民事訴訟規則(令和6年最高裁判所規則第14号)は,令和8年5月21日に全面施行され,民事裁判書類電子提出システム(mints)の利用が始まった[文4]。委任を受けた訴訟代理人は,原則としてmintsを用いて電子的に申立て等をしなければならない(民事訴訟法132条の11第1項第1号)[法2]。この施行に伴い,証拠を提出する際の証拠説明書の作り方にも変更が生じた。

本稿が扱うのは,証拠説明書の基本的な記載事項ではなく,mintsの運用開始によって新たに生じた点である。具体的には,証拠を「書証」として出すか「電磁的記録に記録された情報の内容に係る証拠調べ」(民事訴訟法231条の2)として出すかという二つの経路の区別,新設された「電子証拠説明書」,標目欄の書き分け,直送及び電子提出の義務化,並びに提出方法の選択の判断である。号証の付け方,標目・作成者・立証趣旨の一般的な記載方法などの基本は,別稿(証拠説明書の作成についての解説記事)にゆずる。

個別の事案における提出方法は,証拠の性質,相手方の対応及び裁判所の訴訟指揮によって異なり得る。本稿は一般的な情報提供を目的とするものであり,特定の事案に対する法的助言ではない。

第1 証拠を出す二つの経路――書証と電磁的記録の証拠調べ

1 mintsの全面施行と証拠説明書の位置づけ

令和8年5月21日の全面施行により,通常の民事訴訟では,誰でもmintsを用いてオンラインで訴えの提起や書類の提出をすることができ,委任を受けた訴訟代理人等についてはこれが義務化された[文4][法2]。民事執行,倒産及び家事の各手続はオンライン提出の対象から除かれており,これらは別途,遅くとも令和10年6月までに順次オンライン申立ての対象となる予定である[文4]

証拠説明書は「申立てその他の申述」(申立て等)に含まれるため,代理人は電子情報処理組織(mints)を使用して提出しなければならない(民事訴訟法132条の10,132条の11)[法1][法2]。本人訴訟の当事者は電子提出が任意であり,紙による提出も許される。以下では,代理人が電子提出をする場面を基本として述べる。

2 書証(民事訴訟法219条,民事訴訟規則137条)

書証は,文書に記載された意味内容を証拠資料とする証拠調べである。書証の申出は,文書を提出し,又は文書の所持者にその提出を命ずることを申し立ててしなければならない(民事訴訟法219条)[法3]。文書の提出は,原則として原本,正本又は認証のある謄本でしなければならない(民事訴訟規則143条1項)[規3]

mintsの下では,書証の申出をする当事者は,文書の写しの提出に代えて,当該文書の画像情報を電子情報処理組織を使用してファイルに記録する方法により提出することができる(民事訴訟規則137条3項)[規1]。もっとも,この画像情報の提出は,証拠申出に先立つ準備の段階のものである。裁判所の記載要領は,書証(紙)の取調べは訴訟記録が電子化されても,原則として原本・写しを問わず期日当日に紙媒体の書証を持参する必要があるとしている[文1]。すなわち,画像情報をmintsにアップロードすることと,期日における原本の取調べとは区別される。

この区別は,古い判例が示した理解とも整合する。最高裁判所昭和37年9月21日判決は,書証申出の目的で文書の原本を裁判所に郵送するだけでは,書証の提出とはいえないと判断した[裁1]。同判決は旧民事訴訟法の下のものであるが,書証の提出が期日における取調べを予定した訴訟行為であって,文書を裁判所へ送付する行為それ自体をもって書証の提出があったとはいえない,という枠組みは現行法の下でも参照できる。画像情報の電子提出(民事訴訟規則137条3項)が準備行為にとどまり,原本の取調べに代わるものではないことを理解する手がかりとなる。

3 電磁的記録の証拠調べ(民事訴訟法231条の2,民事訴訟規則149条の2)

改正法は,電磁的記録に記録された情報の内容に係る証拠調べという類型を新設した(民事訴訟法231条の2)[法6]。この申出は,当該電磁的記録を提出し,又は電磁的記録を利用する権限を有する者にその提出を命ずることを申し立ててする。提出は,電磁的記録を記録した記録媒体を提出する方法か,電子情報処理組織(mints)を使用する方法による(同条2項)[法6]。この証拠調べには書証に関する規定が準用されるが,準用の対象からは民事訴訟法228条4項が除かれている(民事訴訟法231条の3第1項)[法7]

規則の側では,電磁的記録を提出してこの申出をするときは,申出の時までに,当該電磁的記録の複製をmintsでファイルに記録し,又は複製を記録した記録媒体を提出するとともに,電子証拠説明書を提出しなければならない(民事訴訟規則149条の2第1項)[規5]。対象となるのは,振込記録のデータ,電子メール,画像・音声・動画のファイルなど,元から電磁的記録として存在する証拠である。加えて,紙で作成された証拠を電子化したものも,この経路で提出することができる[文1]

4 証拠説明書は両経路を1通で兼ねる

証拠を書証として出すか電磁的記録として出すかで手続は分かれるが,証拠説明書自体は経路ごとに別の書式を作るわけではない。裁判所の記載要領は,書証の証拠説明書(民事訴訟規則137条)と電磁的記録に係る電子証拠説明書(民事訴訟規則149条の2)を兼ねたものとして1通を作成し,証拠とともに提出(mintsを利用する場合はアップロード)するとしている[文1]。1件の証拠説明書の中に,書証として出す号証と電磁的記録として出す号証とが混在することになる。

第2 電子証拠説明書とは何か

1 規則149条の2が定める定義

「電子証拠説明書」は,民事訴訟規則149条の2第1項の括弧書きが定義する概念であり,電磁的記録の標目,作成者及び立証趣旨を明らかにした電磁的記録をいう[規5]。標目・作成者・立証趣旨を記載する点は文書の証拠説明書と共通するが,それ自体が紙ではなく電磁的記録として作成される点に違いがある。電子情報処理組織を使用せずに書面で提出する場合(システムを利用しない本人訴訟等)には,読替えにより「電子証拠説明書」は「証拠説明書」と,「電磁的記録」は「書面」と読み替えられる[規5]

2 文書用の証拠説明書と兼ねて作成する運用

複製を電子的に提出させながら,これに対応する証拠説明書だけは紙で提出させるのは合理的でないため,電磁的記録についても電子の証拠説明書を用いることとされたと説明されている[文5]。実際の運用は,第1の4で述べたとおり,文書用の証拠説明書と電子証拠説明書とを兼ねた1通による[文1]。したがって,実務上は「電子証拠説明書」という別個の書面を独立に作成する必要はなく,従来の証拠説明書の様式の中で,各号証を書証と電磁的記録のいずれで出すのかを標目欄等によって示すことになる。

第3 標目欄による経路の区別――裁判所の記載要領

1 標目の書き分け(原本・写し・記載なし)

どの号証をどちらの経路で出すのかは,主として標目欄の書き方で示す。裁判所の記載要領は,次のように書き分けるとしている[文1]

  • 民事訴訟法231条の2の電磁的記録として提出する場合は,標目欄に電磁的記録の標題のみを記載する。
  • 書証(原本)として提出する場合は,文書の標目に加えて「原本」と記載する。
  • 紙で作成された証拠について写ししか手元にない場合に,後記3の電子化による方法をとらずに書証として申し出るときは,標目に「写し」を加えて「契約書写し」のように記載する。

記載要領は,標目欄に原本・写しの記載がないものは,民事訴訟法231条の2の電磁的記録として提出するものである,という約束を明示している[文1]。逆にいえば,標目に「原本」「写し」の語があるかどうかが,その号証を書証として取り調べるのか,電磁的記録として取り調べるのかを画する目印になる。

2 作成年月日・作成者はオリジナルを基準とする

オリジナルのデータをコピーし,又は紙媒体の証拠を電子化して民事訴訟法231条の2の電磁的記録として提出する場合,作成年月日欄及び作成者欄には,コピーや電子化をした者・日ではなく,もともとの証拠の作成年月日及び作成者を記載する[文1]。記載要領は,その理由として,電磁的記録はコピーの前後で同一性を保つことが可能であることを挙げる。紙媒体を電子化した場合には,形式的には電子化した者が作成者となるものの,当該紙媒体に記載された内容を立証する趣旨であるときは,もともとの証拠を作成した者・作成日を記載することが考えられるとしている[文1]

3 備考欄「紙を電子化」と記載例

紙媒体の証拠を電子化して電磁的記録として提出する場合には,備考欄に「紙を電子化」と記載しておくことで,提出された電磁的記録のオリジナルが紙媒体かデータかを区別することが考えられる[文1]。号証・標目・作成年月日・作成者・立証趣旨・備考という欄の構成は,裁判所が公表する証拠説明書の書式と同じである[文2]。裁判所の記載要領が掲げる記載例は,次のとおりである[文1]

号証標目作成年月日作成者備考提出方法
甲001売買契約書 原本R5.10.1原告・被告(なし)紙の原本を書証として申出
甲002振込記録R5.10.15●●銀行●●支店(なし)電子データを電磁的記録として提出
甲003領収書R5.11.17被告紙を電子化紙を電子化して電磁的記録(231条の2)として提出

甲001は標目に「原本」があるため書証として取り調べる号証であり,期日には原本を持参する。甲002・甲003は標目に原本・写しの記載がなく,電磁的記録として提出する号証である。甲003は元が紙であるため備考欄に「紙を電子化」と付され,甲002は元からデータであるため備考欄が空欄になる,という書き分けになる[文1]。なお,複数の領収書を一括して提出するなど関連証拠をまとめるときは,「甲002-1」「甲002-2」のように枝番号を付す[文1]

第4 改正規則で実際に変わった点

1 直送の義務化と写しの通数

改正後の民事訴訟規則137条2項は,書証の申出をする当事者は,写し及び証拠説明書について直送をしなければならないと定める[規1]。電磁的記録の証拠調べについても,複製及び電子証拠説明書の直送が義務とされている(民事訴訟規則149条の2第2項)[規5]。直送は「することができる」ではなく「しなければならない」と規定されている点に注意を要する。

写しの通数についても変更があった。改正前は写しを2通提出することとされていたが,改正後は「その写し」とされ,直送の義務化に伴い1通で足りることとなったと説明されている[文5]

2 訴訟代理人による画像情報(PDF)提出の義務

民事訴訟規則137条3項は,写しの提出に代えて画像情報を電子情報処理組織で提出することを認める[規1]。そのうえで同条4項は,電子情報処理組織による申立て等の特例(民事訴訟法132条の11第1項・3項)を写しの提出について準用する[規1]。その結果,委任を受けた訴訟代理人等は,書証の写しについても画像情報として電子的に提出することが義務づけられる[法2]。mintsにアップロードする画像情報の形式は,準備の手引によればA4又はA3のPDFである[文3]

3 「写し」と「証拠説明書」で電子提出の根拠条項が分かれる

証拠説明書は「申立て等」に当たるため,代理人はこれをmintsで提出する義務を負う(民事訴訟法132条の10,132条の11)[法1][法2]。これに対し,書証の対象となる文書の「写し」は,原本の存在を示すものであって内容を陳述するものではないことから「申立て等」には当たらないため,写しの電子提出は,一般規定ではなく民事訴訟規則137条3項・4項によって別に手当てされていると説明されている[文5]。同じmintsでの提出でありながら,証拠説明書と写しとで根拠条項が分かれている点は,実務家でも理解しにくい部分である。

4 書証申出の努力義務(規則137条の2)と条番号の混同

改正で新設された民事訴訟規則137条の2第1項は,当事者は書証の申出に当たり,証明すべき事実に照らして当該申出が必要かつ十分なものになるよう努めなければならないと定める[規2]。同条2項は,申出に係る文書中に証明すべき事実と関連性を有する部分とそれ以外の部分があるときは,写しにおいて関連性を有する部分を明らかにするよう努めなければならないとする[規2]。電子的な提出により証拠の提出が容易になり,吟味を経ない大量の書証申出が生じ得ることへの対応と説明されている[文5]

条番号の混同に注意を要する。民事訴訟137条の2は,訴えの提起の手数料を納付しない場合の訴状却下に関する規定であり[法8],書証申出の努力義務を定める民事訴訟規則137条の2とは全く別の条文である。条名だけで引用すると取り違えるおそれがある。

第5 手続の選択――書証と電磁的記録のどちらで出すか

1 原本の取調べが必要かどうかで分ける

紙で作成された証拠についても,改正法施行後は,原本の取調べが必要でない場合には,書証としてではなく民事訴訟法231条の2の電磁的記録として提出することが考えられる,と記載要領は述べている[文1]。原本の取調べが必要かどうかが,経路選択の第一の分岐点になる。

もっとも,電磁的記録として提出した場合でも,相手方がその成立の真正を争うなど,原本を取り調べることが必要であるとされたときは,裁判官(長)の訴訟指揮により書証(原本)として提出することが求められることもある,とされている[文1]。したがって,成立に争いが生じ得る重要な処分証書などは,はじめから書証(原本)として標目に「原本」を付し,原本を保管・持参できるよう準備しておくのが安全である。

2 書証手続を段階的に理解する

書証の手続は,準備行為・証拠申出・証拠の取調べという段階に分けて理解できるとの整理が示されている[文7]。この見解は,紙の原本を期日に提出する方法のほか,紙の写しを用いる方法や,画像情報(データ)を用いる方法を区別し,データを原本として扱う電子提出を含めて複数の類型に整理する[文7]。細かな分類は文献にゆずるが,実務上重要なのは,「準備の段階で写しや画像情報を提出しておくこと」と「期日に原本又はデータを取り調べること」とを分けて捉える視点である。

3 ウェブ会議期日と電子提出

前掲の見解は,原本の確認が必要な場合を除けば,データを原本として扱う電子提出の方法が,訴訟代理人・裁判所双方にとって簡便であるとする[文7]。紙の写しを用いる方法では,準備の段階で写しを提出していても期日に改めて紙の写しを取り調べる扱いとなり,とりわけウェブ会議による期日では紙のやり取りが不便になるためである,と説明されている[文7]。この点は文献上の見解であり,事案ごとの適切な提出方法は裁判所の訴訟指揮にも左右されるが,ウェブ会議期日が一般化する中での提出方法の選択を考える手がかりになる。

第6 立証上の問題――電磁的記録の成立の真正

1 署名・押印による真正の推定が準用されない

私文書は,本人又はその代理人の署名又は押印があるときは,真正に成立したものと推定される(民事訴訟法228条4項)[法4]。ところが,電磁的記録の証拠調べについて書証の規定を準用する民事訴訟法231条の3第1項は,準用の対象から同法228条4項を除いている[法7]。したがって,電磁的記録については,署名又は押印を根拠とする真正の推定は働かない。これは,署名・押印の存在を前提とする同項の推定が,そのような外形を伴わない電磁的記録になじまないことによると考えられる。電磁的記録の証拠調べにおける成立の真正の考え方は,立案担当者による解説でも取り上げられている[文6]。文書と同じ感覚で電磁的記録を提出すると,成立の真正を基礎づける推定規定がない点を見落とすおそれがある。

もっとも,成立の真正が問題となること自体は文書と共通する。電磁的記録についても,同法231条の3第1項が同法228条1項を準用する結果,その成立が真正であることの証明が求められる[法7]。署名・押印による推定に頼れないため,作成の経緯や管理状況など,成立の真正を基礎づける事情を具体的に主張・立証する必要がある。なお,電子署名がされた電磁的記録については,電子署名及び認証業務に関する法律3条による真正の推定を援用し得るとする見解があるが,これは民事訴訟法228条4項とは別個の規律であり,適用の可否は電子署名の要件を満たすかによる。

2 複製とオリジナルの同一性

電磁的記録は,複製を提出しても足りるとされるが,それは複製がオリジナルとの同一性を保ち得ることを前提とする。標目欄で作成者・作成日をオリジナル基準で記載するのも,この同一性を前提とした扱いである(第3の2)[文1]。もっとも,複製とオリジナルの内容が一致するかは事実の問題であり,一致が争われることもあり得る。この点について,期日での混乱を避けるため,準備の段階で複製とともに提出する電子証拠説明書において,複製とオリジナルのデータが一致するかどうか(一致しないのであれば別途オリジナルのデータで証拠申出をする予定であること)を明らかにしておくことが考えられる,との見解が示されている[文7]。備考欄等を活用して同一性に関する説明を付しておくことは,後の争点化に備える工夫として検討に値する。

第7 依頼者からの聴取事項と証拠の収集

経路選択と証拠説明書の記載を的確に行うためには,証拠の性質を早い段階で把握しておく必要がある。依頼者から確認しておくとよい事項は,例えば次のとおりである。

  • その証拠が,元から電子データか,紙媒体か,紙をスキャン等で電子化したものか(備考欄「紙を電子化」の要否及び作成者・作成日の記載に影響する)。
  • 紙媒体の証拠について,原本が手元にあるか,写ししかないか(標目の「原本」「写し」の別,及び原本持参の可否に影響する)。
  • 契約書などについて,相手方が成立の真正を争う可能性があるか(書証(原本)として出すか電磁的記録として出すかの判断に影響する)。
  • 電子データについて,作成・保存・送受信の経緯や管理状況,メタデータの有無(成立の真正の立証の材料になる)。
  • 録音・録画のデータについて,撮影・録音・録画の対象,日時及び場所(後述のとおり証拠説明書で明らかにする必要がある)。

録音・録画については,物としての録音テープ・ビデオテープは文書に準ずる物件として民事訴訟法231条の規定によって扱われる一方[法5],録音・録画により作成された電磁的記録(録音データ等)は,電磁的記録の証拠調べの経路によることになる。いずれの経路でも,証拠説明書(電子証拠説明書)において,撮影,録音,録画等の対象並びにその日時及び場所を明らかにしなければならない(民事訴訟規則148条,同149条の4による準用)[規4][規6]。証拠の入手方法や録音データの提供義務にも関わるため,媒体の別と入手経緯は早めに確認しておくのが実務的である。

第8 相手方から想定される主張と備え

提出方法の選択や証拠説明書の記載は,相手方の対応を想定して行う必要がある。想定される主張と備えは,例えば次のように整理できる。

  • 電磁的記録として提出した文書について,相手方が成立の真正を争い,原本の取調べを求める場合。裁判官(長)の訴訟指揮により書証(原本)としての提出を求められることがあるため[文1],重要な文書は原本を保管し,期日に持参できるようにしておく。
  • 電磁的記録について,署名・押印による推定(民事訴訟法228条4項)が働かないことを踏まえ,相手方が成立の真正を否認する場合。作成・管理の経緯など,推定規定によらずに真正を基礎づける事情をあらかじめ準備しておく[法7]
  • 複製とオリジナルの同一性を相手方が争う場合。電子証拠説明書や備考欄で同一性に関する説明を付し,必要に応じてオリジナルのデータで改めて申出をする予定であることを明らかにしておく[文7]
  • 提出範囲が広すぎるとの指摘を受ける場合。関連性を有する部分を写しで明らかにする努力義務(民事訴訟規則137条の2第2項)を踏まえ,マスキングや該当部分の特定を行う[規2]

第9 申立て・訴訟遂行上の注意点と不確実な要素

1 mintsの運用上の注意点

提出の実務では,証拠説明書と証拠の作成・記載の適否だけでなく,システム面の運用にも注意する。準備の手引その他の裁判所公表資料に基づく主な留意点は次のとおりである[文3]

  • アップロードするファイルの形式は,記録として扱われるものはA4又はA3のPDFや所定の音声・動画・画像の形式に限られ,パスワードを付したファイルは受け付けられない。
  • 証拠は原則として1証拠につき1ファイルとし,関連証拠を枝番号でまとめる場合を除く。
  • アップロードによって直送がされたものとして扱われる運用であるため,別途,相手方への送付の要否を確認する。
  • 誤ってアップロードした場合の取消しは当事者側で行えないことがあるため,アップロード前の確認を徹底する。

これらのシステム運用は細則や操作マニュアルの改訂により変わり得るため,提出の直前に裁判所公表の最新資料を確認する必要がある。

2 結論を左右し得る不確実な要素と追加確認事項

本稿で述べた枠組みには,事案ごとに確認を要する不確実な要素がある。第一に,電磁的記録として提出した証拠について原本の取調べが求められるかどうかは,相手方の対応と裁判所の訴訟指揮によるものであり,あらかじめ確定できない[文1]。第二に,提出方法の選択に関する文献上の見解は,実務の一つの整理であって,個別の裁判体の運用と一致するとは限らない[文7]。第三に,ファイル形式・容量・命名などのシステム上の要件は細則・マニュアルの改訂で変わり得る[文3]

したがって,具体的な事件では,当該裁判所の運用(進行協議や書記官の案内を含む),証拠の成立に関する相手方の見込み,及び提出時点での最新の細則・操作マニュアルを個別に確認したうえで,経路と記載方法を決めるのが相当である。

第10 まとめ――提出前の判断手順

証拠を提出する前に,次の順序で確認すると整理しやすい。

  1. その証拠が元からデータか,紙か,紙を電子化したものかを確認する(作成者・作成日・備考欄の記載に反映する)。
  2. 原本の取調べが必要かどうかを検討する。必要なら書証(原本)として標目に「原本」を付し,原本を持参する。不要なら電磁的記録(民事訴訟法231条の2)として提出することを検討する[文1]
  3. 電磁的記録として出す場合は,署名・押印による真正の推定が働かないことを前提に,成立の真正を基礎づける事情を準備する[法7]
  4. 証拠説明書は,書証の証拠説明書と電子証拠説明書を兼ねた1通として作成し,標目欄で経路を書き分ける[文1]
  5. 写し・証拠説明書(複製・電子証拠説明書)の直送義務を確認し,mintsでの提出形式・容量などを最新資料で点検する[規1][文3]

個別事案における最終的な提出方法は,証拠の性質,相手方の対応及び裁判所の訴訟指揮によって異なり得る。重要な証拠については,成立の真正が争われた場合の原本取調べに備えておくことが,実務上の要点となる。

出典

1 法令

2 裁判例

  • [裁1]最高裁判所第二小法廷昭和37年9月21日判決(昭和36年(オ)第71号・売掛代金請求・民集16巻9号2052頁)――文書の原本を裁判所に郵送するだけでは書証の提出とはいえないこと(旧民事訴訟法下の判例)。裁判所ウェブサイト(裁判例詳細)

3 文献

  • [文1]裁判所「証拠説明書の記載要領・記載例」(裁判所ウェブサイト掲載)――標目欄による書証と電磁的記録の書き分け,作成者・作成日のオリジナル基準,備考欄「紙を電子化」,記載例,兼用1通の運用,原本取調べの要否。裁判所ウェブサイト(記載要領)
  • [文2]裁判所「証拠説明書」書式(フェーズ3用。裁判所ウェブサイト掲載)――号証・標目・作成年月日・作成者・立証趣旨・備考の欄構成を示す様式。裁判所ウェブサイト(証拠説明書書式)
  • [文3]裁判所「民事訴訟フェーズ3に向けた準備の手引(06 証拠の提出)」(裁判所ウェブサイト掲載)――画像情報の形式(A4・A3のPDF),ファイル・アップロードに関する運用上の留意点。裁判所ウェブサイト(準備の手引)
  • [文4]裁判所「改正民訴法等で変わる民事訴訟手続の概要」(裁判所ウェブサイト掲載)――全面施行日(令和8年5月21日),mintsの利用義務化,対象外手続の範囲。裁判所ウェブサイト(手続の概要)
  • [文5]最高裁判所事務総局民事局監修『条解民事訴訟規則(デジタル化関係等)』(司法協会,令和7年)――写しの通数(「その写し」)の説明,電子証拠説明書を設けた趣旨,証拠説明書と写しで電子提出の根拠が分かれること,書証申出の努力義務の趣旨。
  • [文6]脇村真治編著『一問一答 新しい民事訴訟制度(デジタル化等)』(商事法務,令和6年)――電磁的記録の証拠調べの立法趣旨及び成立の真正の考え方。
  • [文7]日下部真治「民事訴訟手続のデジタル化のこれから 第8回 弁護士の視点から(2)」ジュリスト1621号(2026年4月号)70頁――書証手続の段階的整理,データを原本として扱う方法の簡便性,電子証拠説明書における複製とオリジナルの一致に関する記載の勧め(いずれも文献上の見解)。