(AI作成)2026年の日弁連会長選挙における矢吹公敏候補及び松田純一候補の政策と,日弁連の2025年度会務執行方針との徹底比較

本ブログ記事は専らAIで作成したものです。
◯2026年の日弁連会長選挙については以下の三つの記事を作成しています。
① (AI作成)2026年の日弁連会長選挙における矢吹公敏候補(東弁39期)と松田純一候補(東弁45期)の徹底比較
② (AI作成)2026年の日弁連会長選挙の選挙公報の徹底比較(39期東弁の矢吹公敏候補 対 45期東弁の松田純一候補)
③ (AI作成)2026年の日弁連会長選挙における矢吹公敏候補及び松田純一候補の政策と,日弁連の2025年度会務執行方針との徹底比較

目次

第1 はじめに
1 本記事の目的と視座
(1) 日弁連会長選挙の重要性
(2) 比較対象とする3つの文書

2 全体像の概観
(1) 2025年度会務執行方針の基調
(2) 矢吹公敏候補の政策の基調
(3) 松田純一候補の政策の基調

第2 根本哲学と会員への向き合い方
1 「社会正義」対「会員の幸福」対「現場の危機感」
(1) 現執行部の「公共性」と「経済的リアリズム」の併存
(2) 矢吹候補の「弁護士になってよかった」という実利重視
(3) 松田候補の「地域の声」と「生活防衛」

2 スローガンから読み解くメッセージ
(1) 矢吹候補の「47000人のために」
(2) 松田候補の「弁護士と司法の未来を創る」

第3 経済基盤の強化と業務支援策
1 法テラス・報酬問題へのアプローチ
(1) 現執行部の「協議・適正化」路線
(2) 矢吹候補の「予算拡大」と「申請簡素化」
(3) 松田候補の「国費化要求」と「具体的数値目標」

2 弁護士費用保険(LAC)と新規分野
(1) LACに対する不満の汲み上げ
(2) 中小企業支援と国際業務

3 社会保障と福祉厚生
(1) 矢吹候補の「弁護士国保全国化」構想
(2) 松田候補の「若手チャレンジ基金」拡充への注力

第4 組織改革と地方・地域司法
1 中央と地方の関係性
(1) 現執行部の「資産形成支援」という実利
(2) 矢吹候補の「統治構造改革」と「総次長室改革」
(3) 松田候補の「インフラ防衛」と「新ゼロ・ワン問題」

2 司法過疎対策と裁判所支部
(1) 人的配置の最適化
(2) 裁判官常駐化への要求

第5 法曹養成制度と司法改革の行方
1 現行制度への評価とスタンス
(1) 現執行部の「回復基調」という現状肯定
(2) 矢吹候補の「制度リセット」と「再議論」
(3) 松田候補の「予備校化懸念」と「多様性確保」

2 谷間世代問題等の未解決課題
(1) 不公平感の解消という視点
(2) 財政支援と給費制の理念

第6 デジタル化・AIへの対応
1 推進か警戒か
(1) 現執行部の「業務拡大」と「コスト削減」志向に加えられた「思考」の重視
(2) 矢吹候補の「収益化」と「ガイドライン」の両輪
(3) 松田候補の「ユーザー視点での選別」と「習熟」

2 刑事手続のIT化
(1) 弁護権の拡充と効率化の狭間
(2) オンライン接見の実現

第7 人権擁護活動と社会課題
1 重点課題への取り組み
(1) 矢吹候補の「独立人権委員会」と「死刑廃止プロセス」
(2) 松田候補の「犯罪被害者庁」と「DEIの深化」

2 政治との距離感と立法活動
(1) 立法提言の実現力
(2) 行政連携の強化

第8 総括と結論
1 3つの路線の比較総括
(1) 「着実な実利と防衛」の現執行部
(2) 「実利・構造改革」の矢吹候補
(3) 「現場・危機突破」の松田候補

2 実現へのハードルと政治力

3 会員が選択すべき未来の姿


第1 はじめに

1 本記事の目的と視座

(1) 日弁連会長選挙の重要性

来る2026年度の日弁連会長選挙は,法曹界にとって極めて重要な分岐点となります。長引く法曹養成制度の迷走,デジタル化の急速な波,そして弁護士の経済的基盤の揺らぎなど,我々を取り巻く環境は激変しています。この状況下で,次のリーダーを誰にするかは,単なる人事の問題ではなく,今後数年間の日弁連の「在り方」そのものを決定づける選択となります。

(2) 比較対象とする3つの文書

本記事では,日弁連の政策に精通した実務家の視点から,以下の3つの文書を徹底的に比較分析します。

ア 現執行部の「2025年度会務執行方針」(以下「現行方針」といいます。)

イ 矢吹公敏候補の選挙公報及び政策資料(以下「矢吹公約」といいます。)

ウ 松田純一候補の選挙公報及び政策資料(以下「松田公約」といいます。)

これらを並列させることで,現状の延長線上に未来を描くのか,それとも構造的な変革を求めるのか,あるいは現場の危機感に基づき闘う姿勢を強めるのか,それぞれの立ち位置を浮き彫りにします。

2 全体像の概観

(1) 2025年度会務執行方針の基調

現行方針は,いわば「王道」の文書です。「市民の人権」「立憲主義」「平和」を最上位概念に据え,日弁連が社会的な責務を果たすことを主眼としています。

もっとも,会員への支援がおろそかにされているわけではありません。
今の物価高や業務量の増大が会員に「大きな経済的負担」を強いている現状を直視し,報酬適正化を「急務」と断言するなど,現状に対する強い危機感が随所に滲んでいます。

解決策の提示スタイルとしては,全体としては既存の路線を安定的に継続・発展させようとする,手堅く官僚的かつ優等生的なトーンに見えます。
しかし,その行間には「法律援助事業の国費・公費化」を既に決議していることや,「女性の収入が男性の約3分の2である」という不都合な真実を直視する記述が含まれており,さらには報酬適正化を「急務」と断じ、業務妨害には「到底許すことはできません」と憤るなど、見かけの穏当さとは裏腹に,実は極めて熱量の高い闘争心とドラスティックな方針転換を内包した文書であることは見逃せません。

(2) 矢吹公敏候補の政策の基調

矢吹公約は,「47000人のために」というスローガンに象徴されるように,明確に「会員ファースト」を打ち出しています。
「弁護士になってよかった」と思える職業環境を取り戻すことを主目的に掲げ,そのために組織構造や経済的待遇を抜本的に変えようとする「構造改革派」の色彩が濃厚です。

(3) 松田純一候補の政策の基調

松田公約は,「地域の声に寄り添い」とし,地方や現場の弁護士が抱える「食えない」「忙しい」「制度に振り回されている」という悲鳴に近い声を代弁しています。
国や裁判所主導の改革に対する警戒感が強く,会員の生活を守るために闘う「現場防衛派」あるいは「労働組合的」な熱量を帯びています。

第2 根本哲学と会員への向き合い方

1 「社会正義」対「会員の幸福」対「現場の危機感」

(1) 現執行部の「公共性」と「経済的リアリズム」の併存

現行方針において,日弁連の存在意義は「基本的人権の擁護」と「社会正義の実現」に置かれています。一見すると理念先行に見えますが,その実,会員の経済的基盤に対する危機感は極めて具体的です。
現行方針は,「現行の制度は民事法律扶助制度の担い手となる弁護士に大きな経済的負担を強いており」,報酬の適正化は「急務」であると断言しています。
これは単なる「公共性の維持」という文脈を超え,担い手の生存戦略としての側面を色濃く反映しています。

特筆すべきは,ジェンダー平等の文脈において,「女性の収入・所得の平均値は男性の約3分の2という状況」という衝撃的な数値をあえて明記し,この「収入・所得の格差解消」を不可欠な取組と位置づけている点です。
抽象的な「平等」の理念にとどまらず,具体的な「経済格差」を直視し,その是正を会務の重要課題に据えている点は,現執行部が持つ高度なリアリズムを示しており,この点は正当に評価されるべきでしょう。

(2) 矢吹候補の「弁護士になってよかった」という実利重視

矢吹公約の最大の特徴は,「弁護士になってよかった」という感情的な充足感と,それを支える経済的な豊かさを真正面から肯定している点です。

ア ギルドとしての性質の回帰

矢吹候補は,日弁連が人権団体であると同時に,会員の権益を守る職能団体(ギルド)であることを隠しません。
47,000人の会員全員が共通して持てるものは「人権」という抽象的な理念よりも,「弁護士としての誇りと安心できる生活」であると喝破しており,これは経済的な閉塞感を感じている層への強烈なメッセージとなっています。

イ 所得向上の目的化

従来の執行部方針では「業務基盤の強化」といった表現でオブラートに包まれていた「金銭的な問題」について,矢吹候補は「会員の所得を向上させる」と直球の表現を用いています。
これを政策の柱の一つに据えたことは,日弁連の政策史において画期的な転換点と言えるでしょう。

(3) 松田候補の「地域の声」と「生活防衛」

松田候補の視点は,東京の会議室ではなく,地方の裁判所支部や中小規模の事務所に置かれています。

ア 現場からのボトムアップ

松田公約では,「地域」「現場」「足で稼いだ声」が強調されます。現行方針が上からの「あるべき論」であるのに対し,松田候補は下からの「悲痛な叫び」を政策の原動力としています。

イ 生活防衛としての経済基盤

松田候補も経済基盤の確立を訴えますが,矢吹候補の「所得向上」がポジティブな成長戦略のニュアンスを持つのに対し,松田候補のそれは「このままでは地域司法が崩壊する」「弁護士が生活できなくなる」という危機感に基づいた「経済的基盤の確立」や「生活防衛」に近いトーンを持っています。

2 スローガンから読み解くメッセージ

(1) 矢吹候補の「47000人のために」

この数字は,日弁連会員の総数を指します。特定のリベラル派や活動家層だけでなく,企業内弁護士,ビジネスロイヤー,若手,地方会員など,あらゆる属性の会員を包摂し,そのすべてに利益を還元するという「全会員への利益供与」を約束するものです。

(2) 松田候補の「弁護士と司法の未来を創る」

「未来チャート」という言葉を使い,閉塞感のある現状を打破し,夢を描ける将来像を提示しようとしています。しかし,その根底にあるのは,現状のままでは未来がないという強い危機意識です。「地域の声に寄り添い」という枕詞が示す通り,中央のエリートではなく,草の根の会員と共に歩む姿勢を鮮明にしています。

第3 経済基盤の強化と業務支援策

1 法テラス・報酬問題へのアプローチ

(1) 現執行部の「協議・適正化」路線

現行方針における法テラス報酬への言及は,現状の報酬水準が会員に過度な負担を強いており,「担い手確保に困難を来している」との切実な現状認識を示し,報酬の適正化は「急務」であると明記しています。
特筆すべきは,現行方針において既に「法律援助事業を国費・公費化する」ことが明確に決議済みであると明記されている点です。これは単なる努力目標ではなく,総会決議を経た組織としての確定事項です。

また,障がい者支援についても「国費・公費化の実現に向けた取組も推進」すると明記されており,現執行部においても「国費化」は既に規定路線として動き出している事実は正しく評価されるべきでしょう。
現行方針は,報酬適正化について「本制度が持続可能な制度となるよう、報酬を適正化することは急務です」と明記しており,その認識は切迫しています。
その実現手段として「協議」という言葉が散見されますが,これは主に「法テラス手続のデジタル化」の文脈で用いられているものです。
報酬問題や公費化については,既に総会決議を経た事項として,実現可能性を見据えた上での戦略的かつ粘り強い交渉を前提としていると見るべきでしょう。
目標は高く掲げつつも,手法としては着実な改善を目指す姿勢です。

(2) 矢吹候補の「予算拡大」と「申請簡素化」

矢吹候補は,より具体的かつ攻撃的です。

ア 数値への言及

「裁判所歳出予算は国家予算の0.3%内外」という具体的な数字を挙げ,このパイ自体を拡大する必要性を説いています。既存の予算内での配分変更ではなく,法務省予算そのものの規模拡大を政治的に要求する姿勢です。

イ 実務的負担の軽減

「申請手続の簡素化」を明記している点は,現場の実務家にとって非常に重要です。報酬が低いだけでなく,書類作成の手間が膨大であるという現場の「不採算感」を正確に把握しています。

(3) 松田候補の「国費化要求」と「具体的数値目標」

松田候補のアプローチは,さらに現場の痛みに即しています。

ア 最低ラインの提示

特筆すべきは,「離婚事件の代理援助着手金が20万円(税別)を下回らないものとすべく」という,極めて具体的な金額目標を掲げている点です。抽象的な「適正化」ではなく,具体的な金額をコミットメントとして提示することは,会員に対する強い約束となります。

イ 公費化の徹底

現行方針でも「国費・公費化」は掲げられていますが,松田候補はその範囲と要求の強度が異なります。犯罪被害者支援だけでなく,子ども,高齢者,障がい者,外国人等の援助についても「国費・公費化」を徹底して求めていくと明記しており,現執行部が「協議」のテーブルで目指すものを,松田候補は「要求」として突きつける姿勢において,弁護士のボランティア精神(プロボノ)に依存する構造からの脱却をより鮮明にしています。

2 弁護士費用保険(LAC)と新規分野

(1) LACに対する不満の汲み上げ

ア 矢吹候補の視点

矢吹候補は,LACについて「労力に見合わない案件がある」「保険会社の応対が良くない」という,会員間でのリアルな不満を率直に指摘しています。その上で,これらを解決して利用を推進すると述べており,単なる制度礼賛ではなく,ユーザー(弁護士)視点での制度改善(UI/UXの改善)を志向しています。

イ 現行方針との対比

現行方針が「制度の周知・広報」にに加え,「適正な報酬の確保」といった制度運営の安定に重きを置くのに対し,矢吹候補は「使い勝手の悪さ」という実務上の根本原因にメスを入れようとしています。

(2) 中小企業支援と国際業務

松田候補は,中小企業支援を「日本の屋台骨を支える」ものとして重視し,ひまわりほっとダイヤル等の普及を掲げます。また,矢吹候補は国際カルテル事件等の経験を踏まえ,ビジネスロー分野における会員の職域拡大,特にAIなどの先端分野で「稼げる」体制作りを意識しています。

3 社会保障と福祉厚生

(1) 矢吹候補の「弁護士国保全国化」構想

これは矢吹公約における最大の目玉政策の一つであり,他の候補者や現行方針には見られない独自性があります。

ア 地域間格差の是正

現在,弁護士国民健康保険は東京,千葉,神奈川,埼玉の会員のみが恩恵を受けています。これを全国化し,地方会員も加入できるようにするという提案は,地方会員にとって直接的な経済的メリット(保険料の低減や給付の充実)をもたらす最強の「実利」政策です。

イ 実現へのハードルと本気度

制度設計の難易度は高いものの,これを公約の筆頭近くに掲げること自体が,矢吹候補の「会員の生活を守る」という決意の表れと言えます。

(2) 松田候補の「若手チャレンジ基金」拡充への注力

現行方針においても「若手チャレンジ基金など日弁連が用意している様々な若手支援策についても、これまで以上に充実させ」ると明記されていますが,松田候補は,これをさらに推し進め,若手や谷間世代への支援として,基金の充実を掲げます。
これはセーフティネットとしての機能を重視するものであり,経済的弱者への配慮が行き届いています。

第4 組織改革と地方・地域司法

1 中央と地方の関係性

(1) 現執行部の「資産形成支援」という実利

現行方針における地方対策は,「支援」という言葉の響き以上に踏み込んだ内容となっています。
小規模会と大規模会の会費負担格差の是正に加え,「弁護士会館の購入・維持管理費用等」を補助対象に加える規則改正を行ったことは特筆に値します。
これは従来の運営費補助の枠を超え,地方会にとっての資産形成(BS)に直結する「巨大な実利」の供与です。
これを単なるパターナリズム(温情主義)と捉えるのは早計であり,地方会の存続基盤そのものを財政面から支えようとする,極めて実務的かつ強力な経済支援策と言えます。

(2) 矢吹候補の「統治構造改革」と「総次長室改革」

矢吹候補は,この構造自体を変革しようとしています。

ア 権限の地方分散

「52単位会のすべてを回り,会員から意見を聞く」というドブ板的な行動に加え,「総次長室の改革(地方からの採用拡充)」を掲げています。これは,日弁連の意思決定の中枢に地方の論理を組み込もうとする試みであり,中央集権的な体質の打破を意図しています。

イ 会費の平準化

各単位会の会費負担のバラつきを是正し,全国一律の負担を目指す提案は,会費が高い小規模会の会員にとって切実な願いに応えるものです。

(3) 松田候補の「インフラ防衛」と「新ゼロ・ワン問題」

松田候補にとって,地方は「改革の対象」ではなく「守るべき故郷」です。

ア 新ゼロ・ワン問題への危機感

かつての司法過疎(弁護士がいない)ではなく,新規登録者が来ないという「新ゼロ・ワン問題」に対し,強い危機感を表明しています。

イ 司法インフラの維持

裁判所の支部から裁判官がいなくなる,合議体が組めないといった事態に対し,これを「司法インフラの崩壊」と捉え,国に対して強く是正を求める姿勢です。

もっとも、現行方針においても、家事事件の増加に対し「人的・物的基盤が十分ではありません」と危機感を示し、体制強化を求めていく姿勢は示されています。
松田候補は、この認識をさらに一歩進め、現場の「崩壊」という強い言葉で危機感を増幅させ、闘う姿勢を鮮明にしている点に特徴があります。

2 司法過疎対策と裁判所支部

(1) 人的配置の最適化

矢吹候補は,会員が全国的に適正に再配置される仕組み作りを提唱しています。これは市場原理任せではなく,日弁連が積極的に介入して会員の偏在を是正しようとする強いリーダーシップを感じさせます。

(2) 裁判官常駐化への要求

松田候補は,裁判所支部機能の強化を強く訴えます。デジタル化で裁判所に行かなくて済むようになることよりも,地域に司法の拠点(裁判官)が存在し続けることの重要性を説いています。

第5 法曹養成制度と司法改革の行方

1 現行制度への評価とスタンス

(1) 現執行部の「回復基調」という現状肯定

現行方針では,法科大学院制度改革(3+2や在学中受験)により,志願者数が回復傾向にあるとポジティブに評価しています。
基本的には現行制度の枠組みを維持し,その中で広報や魅力発信を強化するという「微修正」路線です。

(2) 矢吹候補の「制度リセット」と「再議論」

矢吹候補は,この点において最もラディカルです。

ア 2001年改革の総括

「2001年の司法改革審議会意見書をもとにした法曹養成制度は岐路にある」と明言し,現状の制度が限界に達しているとの認識を示しています。

イ 司法改革審議会の再立ち上げ

「司法改革審議会を再度立ち上げて……大きな議論を開始する」という提案は,法科大学院制度や予備試験の在り方を含め,制度を一度「更地」にして設計し直すことも辞さないという覚悟を示しています。これは,現行制度のパッチワーク的な修正に疲弊した会員や法曹志望者にとって,大きな希望となる可能性があります。

(3) 松田候補の「予備校化懸念」と「多様性確保」

松田候補は,現行の「在学中受験」等の改革がもたらす副作用に敏感です。

ア 教育の形骸化への懸念

法科大学院の学修が司法試験科目偏重となり,本来の理念であるプロセス教育が損なわれていること,また社会人経験者が法曹になりにくくなっている現状に対し,強い懸念を表明しています。

イ 多様性の喪失

法曹の多様性が失われることは,市民社会の多様なニーズに応えられなくなることを意味するため,多様なバックグラウンドを持つ人材が参入できる制度への回帰を志向しています。

2 谷間世代問題等の未解決課題

(1) 不公平感の解消という視点

矢吹候補は,給費制廃止期間に修習を行った「谷間世代」の問題を,単なる経済支援の問題ではなく,「会員間の不公平感」の問題として捉えています。
組織の一体性を保つために,この「棘」を抜く必要があるという認識です。

(2) 財政支援と給費制の理念

現行方針においても,実は「国から交付金を得て基金を作り支援金を支給する制度」の検討が明記されており,給付型支援に向けた具体的な一歩が踏み出されています。
松田候補はこれに加え,若手チャレンジ基金等を通じた支援を継続しつつ,より強力に政府による財政的支援の途を模索するとしています。
両候補とも,この問題を「終わったこと」にはせず,継続課題として取り組む姿勢を見せています。

第6 デジタル化・AIへの対応

1 推進か警戒か

(1) 現執行部の「業務拡大」と「コスト削減」志向に加えられた「思考」の重視

現行方針は,デジタル化への「習熟」を促すだけでなく,これを好機と捉える姿勢を明確にしています。
もっとも、単なる効率化一辺倒ではありません。方針の冒頭において「弁護士がAI技術を利活用したとしても……弁護士も思考することを止めてはいけない」と警鐘を鳴らしており、AI時代における弁護士の職能的価値(人間の役割)を死守する姿勢も示しています。
その上で、「法律事務の効率化や業務拡大に資する情報を会員に広く発信」すると宣言しており,デジタル化を「業務拡大(=収益増)」につなげる意図は明白です。

また,「生成AIの利活用等に関する弁護士向けガイドラインの作成も検討」していることが明記されており,体制整備においても先手を打っています。

さらには,デジタル化による事務効率化が進む中で、あくまで「市民の裁判を受ける権利の保障」の観点から「高額な提訴手数料は……見直されるべき」と,国に対してコスト(印紙代等)の減額を要求している点も見逃せません。
単なるシステムへの追随ではなく,権利保障の実質化と会員や市民の経済的メリットを両立させようとするしたたかさを備えています。

(2) 矢吹候補の「収益化」への特化

矢吹候補は,AIやITを単なる事務効率化にとどまらず,「収益向上のツール」として積極的に活用する姿勢を明確に打ち出しています。

ア 収益増への意識的な取組

「収益性の高い案件も増加している」との認識の下,AI等の先端技術を活用して「収益を増やす意識的な取組」が必要であると提言しており,現行方針にある「業務拡大」の側面をより先鋭化させ,攻めの姿勢を鮮明にしています。

イ ガイドラインの活用と実践

前述の通りガイドラインの策定自体は現執行部も検討していますが,矢吹候補はそれを前提として「安全に会員に提供」し,具体的な収益化につなげる実践フェーズへの移行を強調している点に独自性があります。

ウ 民事裁判IT化へのサポート

2026年の完全義務化に向け,会内サポート体制の構築を約束しており,IT弱者となる会員を出さないための実務的な配慮がなされています。

(3) 松田候補の「ユーザー視点での選別」と「習熟」

松田候補のスタンスは,単なる「抵抗」ではなく,利便性と権利保障の観点からの「選別」と「習熟」です。

ア システムへの習熟と価値の再定義

松田候補もまた,新しい裁判システムに各弁護士が「習熟」できるよう支援する必要性を説いています。その上で,生成AIの進化により,弁護士業務が代替されることへの懸念を隠しません。
「人間(弁護士)が行うべきこと」を明確にし,弁護士の価値を再定義するという,職域防衛の色彩が強い主張を展開しています。

イ システムへの不信感と選別

国や裁判所が主導するシステム開発に対し,ユーザーである弁護士の使い勝手や権利保障が蔑ろにされているのではないかという不信感を露わにしています。
一方で,後述するようにオンライン接見の実現は強く求めており,「弁護士に不利なIT(捜査機関や裁判所の便宜優先の制度)に対しては徹底して改善を求め,有利なIT(オンライン接見等)は強力に推進する」という,是々非々の選別を行おうとしています。

2 刑事手続のIT化

(1) 「権利侵害」への徹底抗戦

この点においては,現執行部と松田候補の間に方向性の違いはほぼありません。
現行方針は,刑事デジタル法案に対し,「プライバシー権を始めとする憲法上の権利を著しく侵害する危険」や,電磁的記録提供命令が「自己負罪拒否特権との関係で問題を内包」していると指摘し,極めて強い言葉で警鐘を鳴らしています。

その上で松田候補は,「捜査機関や裁判所の便宜」という観点が前面に出されていることをより厳しく批判し,現場の弁護士が抱く肌感覚としての危機感を代弁する「言葉の熱量」において独自色を出しています。
両者とも,効率化の名の下に防御権が侵害されることは断じて許さないという点では完全に一致しており,強固なスクラムを組んでいると言えます。

(2) オンライン接見の実現

両候補ともオンライン接見の実現を掲げていますが,松田候補はこれを「弁護士過疎地では喫緊の課題」と位置づけ,地方の実情とリンクさせて強く求めています。
矢吹候補も「早急に実現」としており,この点では両者の方向性は一致していますが,松田候補の方がより「権利闘争」としての側面を強調しています。

なお,現執行部もオンライン接見について「弁護人の援助を受ける権利の内容をIT技術の発展に合わせて実質化」すべきとし,「権利化の実現に向けて」取り組むと明記しています。
明確に「権利」という強い言葉を用いて主張しており,松田候補と同様に,これを単なる要望ではなく闘争課題として位置づけている点は正当に評価されるべきでしょう。

第7 人権擁護活動と社会課題

1 重点課題への取り組み

(1) 矢吹候補の「独立人権委員会」と「死刑廃止プロセス」

矢吹候補の人権政策は,具体的かつロードマップ志向です。

ア 政府から独立した人権委員会

現行方針でも「パリ原則に基づく政府から独立した人権機関の設置」は強く求められていますが,矢吹候補はこれに加え,ウィシュマさん事件やジャニーズ問題などを例に挙げながら,世界に誇れる人権国家を目指すというビジョンを鮮明にしています。

イ 死刑廃止への具体的プロセス

単に「廃止を目指す」だけでなく,「執行を5年程度停止」→「犯罪率の検証」→「廃止」という具体的な手順を示している点は,実務家らしい現実的なアプローチと言えます。

(2) 松田候補の「犯罪被害者庁」と「DEIの深化」

松田候補は,より包括的で新しい人権概念を取り入れています。

ア 犯罪被害者庁の設置

犯罪被害者支援を法務省の外局レベルではなく,専門の「庁」として設置することを提言しています。これは行政機構の改革にまで踏み込む大胆な提案です。

イ DEI(多様性・公平性・包摂性)

従来の「男女共同参画」という枠組みを超え,LGBTQ+,障がい,民族,そして「育児・介護」まで含めた包括的な公平性を掲げています。特にケア労働(育児・介護)を担う会員への配慮を含めている点は,現代的な視点と言えます。

2 政治との距離感と立法活動

(1) 立法提言の実現力

両候補とも,選択的夫婦別姓や再審法改正など,政治的なアプローチが必要な課題に取り組む姿勢は共通しています。矢吹候補は「日弁連政治連盟」での経験を踏まえ,政治力を活用して成果を得ることを強調しています。

(2) 行政連携の強化

現行方針においても「自治体等向けの窓口を設置」し,「お品書き」を作成するなど連携強化が進められていますが,松田候補は,これを現場レベルでさらに深化させ,自治体との連携協定や災害時の対応などを通じ,行政と顔の見える関係を構築することを重視しています。
これは地域密着型の弁護士ならではの現場感覚に根ざした発想です。

第8 総括と結論

1 3つの路線の比較総括

(1) 「着実な実利と防衛」の現執行部

現行方針は,一見すると巨大組織を運営するための抑制的な文書に見えます。
しかし,その細部を読み解けば,決して単なる「建前」の羅列ではありません。
既に決議済みの「法律援助事業の国費・公費化」や,「国からの交付金を得て基金を作り支援金を支給する制度」の検討に加え,前述した「会館購入費用の補助」や「提訴手数料の見直し」など,会員の経済的利益に直結する具体的かつ実利的な施策が随所に埋め込まれています。
また,業務妨害に対しては「到底許すことはできません」と憤り,人質司法には「世論喚起を含めた運動」を宣言するなど,要所で見せる闘争心は鮮烈です。
スローガン先行型の派手さはありませんが,既存の枠組みの中で最大限の実利(果実)をもぎ取りつつ,強固な論理で防衛線を張るその姿勢は,「静かなる闘志」を秘めた現実的かつ実務的なアプローチと評すべきでしょう。

(2) 「実利・構造改革」の矢吹候補

矢吹候補は,日弁連を「会員のための互助組織」として再定義しようとしています。
47,000人の会員が経済的に潤い,制度的な不公平(国保や会費)を是正し,弁護士という職業の魅力を取り戻すための「構造改革」を提示しています。
これは,長年の閉塞感に苦しむ会員にとって,極めて合理的な選択肢となります。

(3) 「現場・危機突破」の松田候補

松田候補は,日弁連を「会員を守る闘う組織」にしようとしています。
国や権力による一方的な制度変更に抗い,地方の司法インフラを死守し,最低報酬の確保を叫ぶ姿は,現場で汗をかく会員の共感を呼ぶでしょう。
これは,日弁連に「強さ」と「優しさ」を求める会員にとっての希望となります。

2 実現へのハードルと政治力

両候補とも魅力的な政策を掲げていますが,ここで冷静な視点も必要です。
矢吹候補の掲げる「弁護士国保の全国化」や,松田候補の「犯罪被害者庁の設置」「法テラス報酬の大幅増額(国費化)」は,いずれも立法措置や巨額の国家予算を必要とする大型政策です。これらは日弁連会長の号令だけで実現できるものではなく,政治や財務省とのハードな折衝が不可欠となります。
したがって,掲げられた「夢」や「未来」が画餅に帰さないためには,その候補者にどれだけの「政治的交渉力」や「実現へのロードマップ」が備わっているかという視点も,投票行動において重要な鍵となるでしょう。

3 会員が選択すべき未来の姿

結局のところ,問われているのは「日弁連は何のために存在するのか」という問いへの答えです。

「崇高な人権団体」としての矜持を保ちつつ微修正を続けるのか(現執行部路線)。

「会員の生活と幸福」を第一義とする強力な職能団体へと舵を切るのか(矢吹路線)。

「地方と現場の砦」として,権力主導の改革を選別し,現場の実利を守り抜く防波堤となるのか(松田路線)。

今回の選挙は,単なる政策の優劣ではなく,会員一人ひとりが自らの職業観と日弁連への期待を投影する投票となるでしょう。詳細な政策比較と,それを実現しうる「力」の有無を見極めていただきたいと思います。