(AI作成)2026年の日弁連会長選挙における矢吹公敏候補(東弁39期)と松田純一候補(東弁45期)の徹底比較

本ブログ記事は専らAIで作成したものです。
◯以下の資料を主たる情報源としています。
(矢吹公敏候補)
・ 日本弁護士会会長候補 矢吹公敏ホームページ
・ 東京弁護士会前年度会長 矢吹公敏 会員東弁リブラ2022年7-8月号
(松田純一候補)
・ 日本弁護士連合会会長選挙候補者 松田純一 公式ホームページ
・ 東京弁護士会前年度会長 松田純一 会員東弁リブラ2024年7-8月号
「(AI作成)2026年の日弁連会長選挙の選挙公報の徹底比較(39期東弁の矢吹公敏候補 対 45期東弁の松田純一候補)」も参照してください。

目次

第1 はじめに:令和8年度日弁連会長選挙の歴史的意義
1 4万7000人時代の分岐点
2 本記事の目的と視座

第2 候補者の基本的立ち位置とキャリアの比較分析
1 矢吹候補:国際派・政策通の重鎮
2 松田候補:現場主義・未来志向の熱血漢
3 両候補が醸し出す「カラー」の違い

第3 【経済政策】「稼げる弁護士」をどう作るか?
1 矢吹候補の戦略:ビジネスローと公的支援のハイブリッド
2 松田候補の戦略:中小企業支援と若手・セーフティネット重視

第4 日弁連改革と地方・若手への視点
1 矢吹候補:構造改革と意見集約のシステム化
2 松田候補:対話とエンパワーメント

第5 司法制度改革・人権課題・デジタル化へのスタンス
1 再審法・死刑制度・憲法問題
2 デジタル化・AIへの対応における温度差

第6 【広報分析】資料の裏に隠された両候補の真の狙い
1 「読む」矢吹対「感じる」松田
2 松田候補に見る「HP」と「政策要綱」の二重構造

第7 弁護士自治の未来像と選挙戦術の深層
1 弁護士自治:信頼か独立か
2 組織票の「地上戦」対ゲリラ戦の「空中戦」

第8 結論:有権者はどちらを選ぶべきか
1 「システムと実利の矢吹」を選ぶべき会員層
2 「共感と安心の松田」を選ぶべき会員層
3 最終的な判断のためのチェックリスト

第1 はじめに:令和8年度日弁連会長選挙の歴史的意義

1 4万7000人時代の分岐点

弁護士人口が4万7000人を超え,司法の在り方や弁護士の経済基盤が大きく揺れ動く現在,令和8年度(2026年度)日本弁護士連合会(日弁連)会長選挙は,法曹界の未来を決定づける極めて重要な分岐点となります。
弁護士自治が崩壊の危機に瀕していると言われる昨今,この選挙は単なる会長選びではなく,日弁連という組織が生き残れるかどうかの生存競争の始まりであると言っても過言ではありません。

次期会長に求められる資質は,巨大組織を統率する「強力なリーダーシップ」か,それとも疲弊する現場を包摂する「現場への共感力」か。有権者である会員一人ひとりが,自身の置かれた環境と法曹界の未来像をどう描くかによって,その選択は大きく分かれることになります。

2 本記事の目的と視座

(1) 本記事では,いずれも東京弁護士会・法友会の出身である39期の矢吹公敏(やぶき きみとし)氏と45期の松田純一(まつだ・じゅんいち)氏について,両候補の選挙運動ホームページ,及び両候補が代表を務めていた政策提言団体(矢吹候補につきこれからの弁護士の未来研究会,松田候補につき明日の弁護士と司法を語り、未来を創る会)の政策資料に基づき,徹底的に比較・分析を行います。
単なる経歴の羅列にとどまらず,両候補が描く「弁護士像」の違い,地方会への具体的アプローチ,そして経済的基盤への考え方まで,可能な限り詳細に深掘りして解説します。

(2) 矢吹候補は,令和7年6月に法友会は脱退しており無派閥での立候補です(選挙運動HPの「47000人分の1としての矜持」参照)。

第2 候補者の基本的立ち位置とキャリアの比較分析

1 矢吹候補:国際派・政策通の重鎮

矢吹公敏候補(39期)は昭和31年8月22日生まれであり,東京大学法学部卒業後,米国コロンビア・ロースクール(LL.M)を経て,国際的なビジネスローや独占禁止法分野で活躍してきた「エリート実務家」の側面が強い人物です。
日弁連副会長(2021年度)及び東京弁護士会会長(2021年度)を歴任し,国際活動・国際戦略に関する協議会議長を務めるなど,日弁連の国際戦略の中枢を担ってきました。

特筆すべきは,その圧倒的な「実行力」です。彼は東京弁護士会会長時代を振り返り,「年度末までに完了できなくても、取組みをスタートしたものも含めるのであれば、9割は何らかの形で実施した」と自己評価しています。彼のキャッチフレーズ「47000人のために」は,全会員の総力を結集させるという組織論的なアプローチを感じさせると同時に,計画した政策を確実に遂行する実務家としての自信が裏打ちされています。

政策の記述も論理的かつ網羅的であり,日弁連という巨大組織をシステムとして機能させようとする「統治者」としての視点が色濃く反映されています。
もっとも,彼が徹底して効率化やシステム化にこだわるのは,それが「4万7000人の生活と誇りを守る」ための最良の手段であると信じているからに他なりません。その冷徹にも見える合理性の裏側には,会員の窮状をシステムで救おうとする,ある種のパターナリズムにも似た深い愛着(組織愛)が流れていることを見落とすべきではないでしょう。

2 松田候補:現場主義・未来志向の熱血漢

松田純一候補(45期)は昭和35年5月4日生まれであり,慶應義塾大学法学部出身です。山形県の農村で育ち,「世のため人のため」という農民運動家の親族の影響を受けて弁護士を志したという,土着的な原風景を持っています。
彼もまた日弁連副会長(2023年度)及び東京弁護士会会長(2023年度)を歴任していますが,特筆すべきは「現場主義」へのこだわりです。203ある支部の半数以上に足を運び,地域の声を聴いたというエピソードは,彼の「地域の声に寄り添い」というスローガンに強い説得力を与えています。

もっとも,彼は単なる熱血漢ではありません。彼は東京弁護士会会長時代を振り返り,「直感的な判断力は1日で鍛えられるものではないので、適正な判断ができるのかというプレッシャーは相当にありました」「致命的な迷惑を掛けずに卒業して、本当にほっとしました」と吐露する繊細な責任感の持ち主でもあります。
「夢」や「未来チャート」といった情緒的な言葉を多用しつつも,その根底にある謙虚さと誠実さで,若手や地方会員の不安に寄り添う「伴走者」としてのリーダー像を打ち出している点が特徴的です。

3 両候補が醸し出す「カラー」の違い

両候補の対比は,「システム(仕組み)で解決する矢吹」対「ヒューマン(対話)で解決する松田」という構図で捉えることができます。
矢吹候補が,自身のバックグラウンドを生かし,国際標準や論理的な制度設計で組織を牽引しようとするのに対し,松田候補は,自身の苦労体験や地方の実情に根ざした「肌感覚」と「熱量」で会員を巻き込もうとしています。
この「カラー」の違いは,具体的な政策の端々に表れています。

第3 【経済政策】「稼げる弁護士」をどう作るか? ビジネスローの矢吹対マチ弁支援の松田

会員にとって最大の関心事である経済問題へのアプローチには,両者の明確な違いが見て取れます。

1 矢吹候補の戦略:ビジネスローと公的支援のハイブリッド

(1) 職域の高付加価値化と「聖域なきコストカット」

矢吹候補は,「会員の所得を向上させる」ことを政策の2本目の柱として明記しており,極めて具体的です。ここで見逃せないのが,彼のコスト管理能力です。
東弁会長時代,OAのセキュリティシステムの見直し等により「機能を維持した上で2022年度の支出予定を1/4位に削減」し,結果として「次年度へ引き継ぐべき繰越金が10億円を下回らない」という盤石な財政基盤を築き上げました。

こうした「無駄を徹底的に省く」手腕と,刑事事件における「ホワイトカラークライム」等の収益性の高い分野への参入促進や,AI・IT分野,企業の不祥事対応といった先端・専門分野での収益拡大を掲げている点を合わせると,弁護士の職域を「高付加価値化」しつつ足元の財政も固めるという,極めて現実的な戦略と言えます。
ただし,この強力な削減マインドが,委員会活動費や補助金の過度なカット(外科手術の副作用)につながらないか,注視する必要はあるでしょう。

(2) 弁護士国民健康保険の全国化という「実利」とハードル

一方で,法テラス報酬の増額に加え,「弁護士国民健康保険の全国化」に言及している点は見逃せません。現在は東京都など一部地域に限られている国保組合のメリットを全国に広げようとするこの提案は,地方会員や若手にとって,手取り収入に直結する切実な問題に対する「手堅い実利」の提示であり,大きな訴求力を持ちます。

もっとも,その実現には,昭和33年以降,国保組合の新規設立を原則認めていない厚生労働省の基本方針(「国民健康保険組合設立の認可について」(昭和38年4月22日付の厚生省保険局長通知)のほか,厚労省HPの「国民健康保険組合について」2ページ参照)の転換に加え,地域住民との公平性を重視する各自治体との極めて高い壁が存在します。高所得層が地域国保から抜けることによる財政悪化(いわゆるクリームスキミング)への懸念を払拭することは容易ではありません。
これは「東京の既得権益を地方へ」という魅力的なトップダウンの発想ですが,「国保の都道府県単位化(広域化)」という国の大きな流れに逆行するものであり,制度設計と調整には10年単位の時間を要する可能性もあり,任期中に実現できるか否かは未知数です。

画期的な公約である反面,立法事実に匹敵する強力なロジックと相当な政治力が必要となる,極めて難易度の高い挑戦であることも付言しておきます。

2 松田候補の戦略:中小企業支援と若手・セーフティネット重視

(1)  「マチ弁」の現場に即した報酬改善と活動領域の拡大

松田候補は、「弁護士の社会的・経済的基盤の確立」を主要な展望の一つに掲げています 。 彼は、弁護士のプレゼンスと経済的基盤を強化するために、既存の業務にとどまらず、中小企業支援(ひまわりほっとダイヤルの活用や事業承継・再生等)や、行政連携・国際業務といった「未開拓の分野への挑戦」を積極的に支援する姿勢を打ち出しています 。

特筆すべきは、民事法律扶助(法テラス)の改善に関し、非常に具体的な数値目標を掲げている点です。松田候補は、現状の報酬が業務量に見合っていないとし、特に離婚調停事件の代理援助における着手金について「20万円(税別)を下回らないものとすべく、取組みを進めます」と明言しています 。
家事事件等の市民に身近な事件を主戦場とする多くの一般民事弁護士にとって、この数値目標は現場の実情と疲弊感を正確に捉えたものと言えます。

ただし、松田候補自身も、各種法的援助事業や犯罪被害者支援等の分野で「国費・公費化」を求めていく方針を示しており 、これらの実現には財布の紐を握る財務省を含む政府との厳しい予算折衝が必須となります。
国の予算配分ロジック,とりわけEBPM(証拠に基づく政策立案)の壁は極めて厳格であり,単に現場の窮状を訴えるだけでは門前払いされかねません。また,現在の民事法律扶助は原則として利用者が返済する「償還制(ローン)」であるため,報酬増額はそのまま「貧困にある依頼者の返済負担増」に直結するというジレンマがあります。これを解消して「20万円」を実現するには,制度を「給付型」へ抜本改革するか,あるいは事務負担のDX化や過疎地対応といったバーター条件を飲む覚悟が必要となります。
「20万円」という数字は現場にとって涙が出るほど魅力的ですが,これらの構造的問題をクリアできる確たる財源の見通しなき公約を実現できなかった場合,この公約は単なる「努力目標」に終わるリスクがあります。
松田候補の手腕は,夢を語るだけでなく,この複雑な連立方程式を解き,財務省を説得し,実利をもぎ取れるかどうかに懸かっています。

(2) 業務妨害対策と「弁護士が十全に役割を果たせる」環境

さらに、松田候補は「弁護士が十全にその役割を果たすために」という項目の中で、「弁護士業務妨害の根絶」を政策に掲げています 。 具体的には、離婚事件や刑事事件等において、相手方のみならず依頼者からのハラスメントや、昨今急増しているSNSを利用した誹謗中傷などの被害が深刻であると指摘しています 。
彼は、こうした妨害によって弁護活動が萎縮すれば、最終的には「依頼者の権利擁護にも支障をきたす」として、市民への攻撃と同義であると警鐘を鳴らしています 。これに対し、対策ノウハウの提供や警察との連携強化を通じて、不当な妨害を根絶する姿勢を鮮明にしています 。
これは、「稼ぐ」以前の「安全に働く」という基盤を保障するものであり、現場の痛みを知る松田候補ならではの重点政策と言えます。

第4 日弁連改革と地方・若手への視点

「4万7000人」という巨大組織をどう運営するか。ここにも両者の哲学の違いが現れます。

1 矢吹候補:構造改革と意見集約のシステム化

矢吹候補は,「会長権限を持った後,52単位会のすべてを回り,会員から意見を聞く」としつつも,組織改革として「次長室の改革(地方からの採用拡充)」や「理事会の意思決定能力の強化」を挙げています。
彼の改革は精神論にとどまりません。東弁会長時代には,「様々な立場の方が理事者になりやすい環境を作る」ために電子決裁をトップダウンで導入し,「週1日は在宅でもできる」体制を構築しました。
これは,日弁連の中枢機構を機能的に再編し,地方の声を制度的に吸い上げる仕組みを作ろうとするものであり,ITによる「場所にとらわれない会務」の実現を予感させます。

また,各単位会の会費の平準化や,小規模単位会への助成見直しにも言及しており,財政面からの組織再編を視野に入れていることがうかがえます。 さらに,司法過疎問題に対しては,「会員が全国的に適正に再配置される仕組み作り」を掲げています。
新規登録者だけでなく,弁護士経験を持った会員の地方会への登録変更(Iターン・Uターン)を促進するという提案は,即戦力を求める地方にとっても現実的な処方箋となり得ます。

グローバルな視点が強みである一方,その「エリート性」ゆえに,地方の小規模会や庶民的なマチ弁の実感とどこまでリンクできるかが課題となります。ただし,グローバル化による海外法曹との競争激化は,回り回って国内の法的サービスの質や単価にも影響を与えるため,矢吹候補の視点は,長期的に見れば国内市場の防衛策とも言える側面があります。

2 松田候補:対話とエンパワーメント

松田候補のアプローチは,より人間的でウェットです。「若手弁護士サポートセンター」での活動実績を背景に,若手への就業・独立支援を厚く語ります。 彼は「新ゼロ・ワン問題」(新規登録者がいない地域)に対し,司法過疎地に赴く弁護士の育成や経済的支援を掲げ,地方の疲弊に直接的な支援を行おうとしています。
また,弁護士会運営における「DEI(ダイバーシティ・エクイティ・インクルージョン)」の推進を掲げ,女性や若手,組織内弁護士がもっと会務に参加できる環境作りを目指しています。

松田候補は,会派に代わる中間団体の重要性を痛感しており,「委員会、法律研究部、同好会、新入会員研修などいろいろな中間団体的なコミュニティーがあって、先輩から後輩に経験を伝える。そんな縦横のコミュニティーを豊富にしたい」と語っています。
これは,組織のフラット化が進む中で希薄になりがちな「若手の育成機能」を,新たな形で再生させようとする試みです。

地方会の負担軽減策として,「弁護士会業務のIT化,OA構築のためのシステム提供」を掲げている点も特徴的です。
各単位会が独自に行うには負担が大きいシステム開発を日弁連が肩代わりするという発想は,事務局体制の脆弱な小規模会にとって即効性のある支援となります。

第5 司法制度改革・人権課題・デジタル化へのスタンス

1 再審法・死刑制度

両候補とも,再審法改正(証拠開示の制度化や検察官抗告の禁止など)や,選択的夫婦別姓制度の早期実現については極めて熱心であり,この点は日弁連としての揺るぎないコンセンサスであると言えます。

一方で,死刑制度の廃止に向けたアプローチには,両者の個性が反映された微妙なニュアンスの違いが見受けられます。

矢吹候補は,ウェブサイトの政策において「死刑廃止を全面的に支持」すると明言されています。その上で,国際的な潮流や冤罪のリスクを踏まえ,「死刑の執行を5年程度停止したのち,犯罪率の検証を行った上で死刑を廃止する」という,モラトリアム期間を設けた具体的かつ段階的な工程表を提示されている点が特徴的です。

対して松田候補は,日弁連が呼びかけた「日本の死刑制度について考える懇話会」の提言を重視されています。死刑制度の存廃に関する議論を深めるため,国会や内閣の下に公的な検討組織を設置させることを喫緊の課題として掲げておられます。情報の開示と対話を重ねることで,世論の理解を得ながら進めようとする姿勢が読み取れます。

2 デジタル化・AIへの対応における視座の違い

2026年からの民事裁判手続のIT化完全実施等を控え,デジタル化への向き合い方にもそれぞれの哲学が現れています。

矢吹候補は,東京弁護士会会長時代の実績として,令和3年2月の選挙後の3月に事務局に対して電子決裁の導入を「とにかく4月1日からやる」と期限を切ってトップダウンで指示し,既存のグループウェア(サイボウズ社のGaroon等)を活用することで迅速に実現した経験をお持ちです。
「方法は分からなかったが,局次長の提案を採用して進めた」というエピソードは,多少の現場の混乱を厭わずとも結果を出す,CEO型のリーダーシップを示しています。
この経験に基づき,今回の選挙においても,AI等の先端技術についてはガイドラインを策定して安全性を確保しつつ,業務効率化や収益向上のために迅速に実装していくという,スピード感と実利を重視した「実行力」のアプローチをとられています。

対して松田候補は,東京弁護士会会長時代のリブラインタビューにおいて,システム開発における「疎結合(そけつごう)」という専門的な概念を提唱されていたことが印象的です。これは,巨大なシステムが一つの業者や技術に依存してブラックボックス化(ベンダーロックイン)してしまうリスクを避けるため,パーツごとに独立させ,時代に合わせて柔軟に入れ替え可能にするという「建築家」のような慎重な設計思想です。
「外注でブラックボックス化し,ロックされちゃったシステムになると困る」という発言は,システム開発の失敗リスクを熟知している証左です。これは単に「慎重で遅い」ということではありません。特定の技術やベンダーに依存せず,時代の変化に合わせて柔軟に中身を入れ替えられるようにするという,現代のシステム設計において主流となりつつある「持続可能性」を重視した,極めてアーキテクト(設計者)的な思想と言えます。

総じて拝見しますと,矢吹候補は「走りながら直すアジャイルなスピード重視の実装」であり,松田候補は「将来の拡張性と持続可能性を見据えた堅牢な設計」であると言えます。
これは,日弁連という組織をどのように運営していくかという,ガバナンスに対する視点の興味深い対比であると言えるでしょう。

第6 【広報分析】資料の裏に隠された両候補の真の狙い

ここで,少し視点を変えて,両候補(特に松田陣営)の広報戦略・資料の作り方から見える「戦略的な意図」について分析します。

1 「読む」矢吹対「感じる」松田

提供された資料やウェブサイトの構成を見ると,両者のコミュニケーションスタイルの違いは明白です。

矢吹候補の広報は,テキストベースで政策を詳細に語り,自身の論文や経歴を羅列する「読む」スタイルが基本ですが,実はSNS活用にも積極的です。
彼は東京弁護士会会長時代を振り返り,「会員に対して何を理事者がしているのかを伝達するのが私たちの義務」,「東弁公式Twitterで会長矢吹のつぶやきを出しましょうと提案されたので、それはいいと思って時々載せました」と語るように,閉ざされた理事者室を開放しようとする柔軟性も持ち合わせています。

対して松田候補の広報は,動画メッセージや「松田代表のイメージ(お酒好き,グルメ等)」といった親しみやすいコンテンツを配置し,視覚的・情緒的に訴える「見る/感じる」スタイルです。これは若手や無党派層への心理的ハードルを下げる効果があります。

2 松田候補に見る「HP」と「政策要綱」の二重構造

特に興味深いのは,松田候補の「公式ホームページ(HP)」と,その支持母体(創る会)が作成した「政策要綱」の使い分けです。

HPでは,「地域の声に寄り添い」「夢」といった柔らかな言葉を前面に出しています。
彼は東弁会長時代,役員に虹をイメージした担当カラーを割り振り,「執行部として、役員として一体感を持つこともできた」と語っており,視覚的な演出によって組織の結束を高める手法に長けています。こうした「話のわかる先輩」「共感できるリーダー」というイメージを徹底しています。
ここでは政治的に先鋭化した表現は抑えられ,ウィングを広げる工夫がなされています。

しかし,一転して「政策要綱」を見ると,そこには「国内人権機関の設置」「個人通報制度」「敵基地攻撃能力議論の違憲性」といった,日弁連が直面するハードな政治的・社会的課題に対する極めて具体的かつ踏み込んだ記述が並んでいました。また,民事法律扶助の具体的な金額目標など,実務的な詳細も網羅されていました。
この「HPのソフトな印象」と「要綱のハードな中身」のハイブリッド戦略こそが,幅広い支持層を獲得しようとする松田陣営の巧妙な点です。有権者は,HPで「人物」を見て,要綱で「覚悟」を測ることが求められているのです。

第7 弁護士自治の未来像と選挙戦術の深層

1 弁護士自治:信頼か独立か

日弁連会長選挙の底流には常に「弁護士自治(自律権)をどう守るか」というテーマがあります。
矢吹候補のような国際派・政策通は,弁護士自治を守るためには「社会(特に経済界や政府)から信頼される組織であること」を重視し,ガバナンス強化に向かいます。
対して松田候補のような在野派・現場派は,弁護士自治を「権力からの独立」という文脈で捉え,政府介入や裁判所の官僚統制への対抗を重視します。

2 組織票の「地上戦」対ゲリラ戦の「空中戦」

選挙戦術の観点からも,興味深い対比が見られます。
伝統的な主流派の支持を固め,組織の論理で票を積み上げる「地上戦」を展開する矢吹候補に対し,松田候補はSNSでの発信や全国行脚による個別の対話を組み合わせた「空中戦×ゲリラ戦」で,既存の組織票の切り崩しを図っています。

第8 結論:有権者はどちらを選ぶべきか

以上の分析から,本選挙は,「システムと実利の矢吹」対「共感と安心の松田」という構図であることが明らかとなりました。

1 「システムと実利の矢吹」を選ぶべき会員層

(1) 「今の会費は高すぎる,不公平だ」と考える会員

会費平準化や小規模会助成の見直しにより,構造的な負担軽減が期待できます。

(2) 「職域を守り,拡大してほしい」と願う会員

司法書士への家事代理権付与阻止や,ビジネスロー・AI分野への進出,弁護士国保の全国化など,制度的な利益誘導を重視する方に適しています。

(3) 「強い日弁連」を求める会員

国際経験豊富で,政府や他士業と論理的に渡り合えるトップダウン型のリーダーシップを望むなら,矢吹候補が適任でしょう。

2 「共感と安心の松田」を選ぶべき会員層

(1) 「地方の実情を東京は分かっていない」と不満を持つ会員

自ら現場を回り,地方の痛みを肌感覚で理解している松田候補の姿勢は,信頼に足るものでしょう。

(2) 「日々の業務の単価を上げてほしい」と切望する会員

離婚事件の着手金20万円確保など,マチ弁の収益構造に直結する具体的な改善案は魅力的です。

(3) 「ボトムアップ型の運営」を好む会員

トップダウンではなく,会員一人ひとりの意見を吸い上げ,対話を重ねながら進めていくスタイルに共感するなら,松田候補が適任です。

3 最終的な判断のためのチェックリスト

最後に,投票に迷った際の指針として,ご自身の価値観や置かれた状況に照らし合わせた「判断基準」を提示して本稿を閉じます。

(1) ご自身の「懐事情」と「期待する成果」

ア 「構造改革によるコスト削減と,ビジネスロー等の職域拡大(パイの拡大)で豊かになりたい」 → 矢吹候補(高付加価値化とコストカットの実績)
イ  「公的資金の注入や報酬基準の適正化によって,足元の事件単価を確実に底上げしてほしい」→ 松田候補(着手金20万円確保への挑戦)

(2) 日弁連に対する「不満」の質

ア 「動きが遅い,決まらない,何をしているか分からない」 → 矢吹候補(政策の遂行力・CEO型)
イ 「地方や現場の実情を無視した決定が上から降りてくる」 → 松田候補(全国行脚の傾聴力・親分型)

(3) 好みの「リーダー像」

ア 「多少強引でも,論理的でスマートに改革を進めるエリート」 → 矢吹候補
イ 「泥臭くても,飲みニケーションで意見を吸い上げる熱血漢」 → 松田候補

「希望」を設計し,システムで解決する矢吹候補か。「夢」を描き,人間力で突破しようとする松田候補か。
提示された政策メニューの「価格」や「見栄え」だけに目を奪われてはいけません。その公約を実現するための「財源」や「政治的プロセス」を誰がどう担うのか。実現可能性が乏しい「夢」をあたかも選択可能な「メニュー」として提示されていないか。
先生方の賢明な選択の一助となれば幸いです。