(AI作成)デジタル化された民事裁判手続における本人サポートに関する最高裁判所事務総局の本音

本ブログ記事は専らAIで作成したものです。
「(AI作成)全司法労働組合との令和6年度交渉記録から見える最高裁判所事務総局の本音」も参照してください。

目次

第1 はじめに:デジタル化の波と最高裁判所事務総局の深層心理

第2 「ITヘルプデスク」化の回避と「任意制」という防波堤
1 現場からの悲鳴と労働組合との交渉記録に見る実情
2 制度的防波堤としての「利用の任意化」

第3 財務省に対する「予算獲得」と「定員管理」のジレンマ
1 概算要求書から読み解く「システム偏重」の予算構造
2 財務省への説明ロジックと「スクラップ・アンド・ビルド」

第4 「本人サポート」への期待とリスク転嫁の構造
1 本人サポートの法的性質と事務総局の狙い
2 弁護士会・司法書士会への「連携」要請の政治的意味

第5 「本人サポート」の実務的実態と弁護士が抱えるリスク
1 「法律事務」と「事実行為」の境界線
2 具体的な業務内容とシステム操作の実際
3 看過できない実務上のリスクと留意点

第6 【海外事例】「責任の所在」を明確にするアジア近隣諸国の先進事例
1 シンガポール:徹底した「IT隔離」と「有償アウトソーシング」
2 韓国:国家主導の「徹底サポート」と「専用インターフェース」
3 中国:徹底した「モバイル統合」と「AIによる人的遮断」
4 台湾:「訴訟輔導科」という強力な緩衝地帯
5 日本への示唆:第三の道「責任の空中分解」

第7 総括:最高裁事務総局の「生存戦略」と法曹三者の未来
1 組織防衛のための冷徹な現状認識
2 我々実務家が取るべき「生存戦略」:情緒的連携からの脱却と工学的要求


第1 はじめに:デジタル化の波と最高裁判所事務総局の深層心理

1 民事裁判手続のデジタル化(IT化)は,我が国の司法制度における歴史的な転換点です。令和4年の民事訴訟法改正により,mints(民事裁判書類電子提出システム)をはじめとする電子情報処理組織の利用が段階的に進められていますところ,その実態は単なる技術革新ではありません。
表向きには,「国民の利便性向上」や「裁判の迅速化」が掲げられ,最高裁判所は関係機関と連携して,誰一人取り残さないための環境整備に努めるとされているものの,その「連携」という言葉の裏には,別の意図が透けて見えます。

長年にわたり司法行政の中枢である最高裁判所事務総局の動き,予算構造,そして人事の機微に触れてきた専門的見地から分析すると,そこには全く別の風景が広がっています。
特に,「本人訴訟(訴訟代理人に委任しない当事者)」のサポートを誰が担うのかという問題については,美しい理念の裏側に,組織防衛のための冷徹な計算と,現場崩壊を避けるためののっぴきならない「本音」が隠されているのです。

2 本稿では,公開されているmints操作マニュアル(令和7年10月24日改訂)令和8年度概算要求書(説明資料)最高裁と全司法労働組合との交渉記録(令和6年4月から令和7年1月まで),そして改正法の解説資料である「一問一答 新しい民事訴訟制度(デジタル化等)-令和4年民事訴訟法等改正の解説-(商事法務)」(以下「一問一答」という。)に加え,現場の弁護士会から発出された悲痛な決議文である令和7年2月14日付の山口県弁護士会の総会決議を全面的に参照し,最高裁判所事務総局が抱えるジレンマと,その解決策として描いている「弁護士・司法書士へのアウトソーシング」の構造を解剖します。
さらに,アジア近隣諸国の事例と比較することで,日本の「任意制」がはらむ構造的な欠陥を浮き彫りにします。
これは,単なる制度解説ではなく,司法行政の論理を読み解くための実務家向けレポートです。

第2 「ITヘルプデスク」化の回避と「任意制」という防波堤

1 現場からの悲鳴と労働組合との交渉記録に見る実情

最高裁事務総局が最も恐れている事態は何か。それは,「裁判所職員が,パソコン操作に不慣れな当事者の『無料ITヘルプデスク』と化し,本来の審理支援業務が麻痺すること」です。この懸念は,単なる想像ではなく,現場からの切実な声として上がっています。

(1) 全司法労働組合からの切実な要求

直近の「最高裁と全司法労働組合の交渉記録」を確認すると,現場の職員(書記官,事務官等)がいかに疲弊しているかが浮き彫りになります。組合側は,「裁判所のデジタル化や新たな制度,各種事件処理等に対応できる裁判所の人的充実をはかるため,各職種の大幅な増員要求を行うこと」を強く求めています。

特に,恒常化している残業や持ち帰り仕事の解消に加え,メンタルヘルス不調による病休の増加が深刻です。最高裁と全司法労働組合との交渉記録(令和6年4月から令和7年1月まで)によれば,精神及び行動の障害による長期病休者が188人であるほか,書記官278人,事務官178人が新たに育児休業を取得しています(交渉記録のPDF618頁及び619頁)。
育児・病休等の事情により,現状の事件処理だけで人的リソースが枯渇しているのが実情です。ここに,「mintsにログインできない」「PDFの変換方法が分からない」といった技術的な問い合わせが殺到すれば,裁判所機能は物理的に停止しかねません。

(2) 「司法の容量拡大」と人的リソースの限界

組合側は悲痛な叫びとして「司法の容量拡大」を主張していますが,事務総局側の回答は常に慎重かつ硬直的です。
本来,デジタル化は業務効率化のために導入されるものであり,その初期段階で「手間が増える」という現実は,事務総局にとって痛し痒しの問題だからです。

事務総局の本音としては,「デジタル化を進めるが,そのために現場職員がITサポート要員として忙殺されることは絶対に避けなければならない」という強固な防衛本能が働いています。
システム運用において最もコストを要するのは開発ではなく「ユーザーサポート」であり,ここにリソースを割けば裁判所機能は「DoS攻撃」を受けたかのように麻痺します。
現場のリソースは,「事件処理」というコア業務に集中させる必要があり,「操作説明」というノンコア業務に割く余裕は,現在の裁判所には1ミリも存在しないのです。

2 制度的防波堤としての「利用の任意化」

(1) 義務化見送りの真の理由

ア 一問一答のQ16において,本人訴訟におけるインターネット利用の義務化が見送られた経緯が解説されています。表向きの理由は,「IT機器の操作に不慣れな者等の裁判を受ける権利を保障するため」とされています。

しかし,事務総局の「本音」のロジックで読み解けば,これは「現場がパニックになるのを防ぐための最強の防波堤」に他なりません。もし本人訴訟まで義務化してしまえば,裁判所は国として,その利用を「保障」する義務を負います。

もっとも,この「逃げ道」は,事務総局にとっても決して安らかな選択ではありません。紙で提出された書面は,結局のところ裁判所内部でスキャンし,電子化しなければならないからです。「国民には強制しない」という建前を守る代償として,現場の書記官等は膨大なスキャン業務という新たなコストを背負わされます。
つまり,現状の「任意制」は,IT弱者を切り捨てたくないという美名の下,現場職員と我々外部の支援者の双方に過度な負担を強いる「痛み分け」ならぬ「苦しみ分け」の構造,「双方にとっての地獄」を生み出しているのです。

イ そもそも,mints(民事裁判書類電子提出システム)等の現行システムは,操作マニュアルにおいて「TLS1.2以上が利用可能」なネットワーク環境や特定の画面解像度(1280×1024ピクセル)を推奨するなど,一般市民には理解困難な前提条件を要求する「プロ向け仕様」です(PDF5頁)。
さらに,ファイル名には「JIS X 0213」の文字基本としつつも拡張子を含め100文字以内という厳格な制約があり(PDF9頁),これに違反すればエラーメッセージが表示される仕様となっています。 このようなUI/UX(ユーザーインターフェース/ユーザーエクスペリエンス)が未熟な状態で義務化すれば,これら多岐にわたる設定操作ができない当事者に対して,手取り足取り教える法的義務が発生しかねないのです。
システム開発において最もコストを要するのは運用フェーズの「サービスデスク(問い合わせ対応)」です。 これを回避するために,「紙でも良い」という逃げ道を残すことは,技術的障壁の高さに対する工学的敗北を糊塗し,組織防衛を図る上での必須の条件でした。

(2) 二段構えの「自己責任論」

この「任意制」は,二段構えの巧みな戦略です。

第一に,「強制はしていない」という事実により,窓口で操作方法を長時間質問してくる当事者に対し,「紙で提出してください」と合法的に誘導することが可能になります(一問一答Q38等参照)。

第二に,それでもデジタルを使いたいという当事者に対しては,「自己責任で環境を整えるか,それができないなら専門家(弁護士等)に依頼してください」という論理を展開できます。
裁判所はあくまで「プラットフォームの提供者」に徹し,「ユーザーサポート」の責任から巧みに身をかわしているのです。

(3) あえてデジタルへ誘導していること

弁護士会からはこの姿勢に対する痛烈な反論が上がっています。
例えば,山口県弁護士会は令和7年2月14日の総会決議において,「IT技術の利用が困難な当事者は,従前どおりの紙を利用した裁判をすることができることを積極的に広報すべきである」と強く指摘しました。同決議は,「本人の不利益を防止するため」にこそ,紙での裁判が可能であることを周知すべきだと述べています。
本当に利用が「任意」であり,国民の権利保障を第一に考えるならば,「無理せず紙で提出してください」とアナウンスするのが筋です。
それをせず,あえてデジタルへ誘導している点に,事務総局の「現場(裁判所職員)を守るために,外部(弁護士)へ負担を流したい」という本音が透けて見えるのです。

第3 財務省に対する「予算獲得」と「定員管理」のジレンマ

1 概算要求書から読み解く「システム偏重」の予算構造

次に,予算の観点から事務総局の苦悩を分析します。ここで我々は,事務総局を単なる「加害者」として断罪するのではなく,財務省主計局という絶対的な権力者の前で,限られた予算と定員をやり繰りせざるを得ない「無力な中間管理職」として再定義する必要があります。
近年の概算要求書(説明資料)を見ると,そのギリギリの調整の結果として,裁判所の予算配分の歪みが如実に表れています。

(1) 物件費の膨張と人件費の硬直性

概算要求書において,「デジタル化」に関連する予算は主に「物件費(システム構築費,機器リース料等)」として計上されています。一方で,「人件費」や「定員」の大幅な純増は見当たりません。

例えば,デジタル総合政策室の経費や,民事局における「裁判事務の迅速適正化」のための会議費等は計上されていますが,これらはあくまでシステムの維持管理や運用ルールの策定のための費用です。「デジタル化に伴う本人サポート要員の配置」といった名目の予算は,極めて獲得しにくい構造にあります。
なぜなら,財務省主計局に対する予算要求の基本ロジックが「スクラップ・アンド・ビルド」であり,「デジタル化=効率化=将来的には人員削減(定員合理化)が可能」という短期的な成果指標(KPI)の前提でのみ予算が承認されるからです。

(2) デジタル総合政策室の予算と現場への還元の乖離

デジタル総合政策室等の予算は確保されていますが,これは中央(最高裁)でのシステム設計や政策立案に使われるものであり,地方の裁判所の窓口に人員を配置するための予算ではありません。

つまり,最高裁は「システムという『箱』」を作るための国費は確保できても,「その箱を使いこなせない人を助ける『人』」を雇う予算は持っていないのです。この「金はあるが,人(に使途を限定できる金)はない」という状況が,外部連携(アウトソーシング)を加速させる根本原因です。
後述する韓国が,国家予算で強力なヘルプデスクを維持している点とは対照的と言わざるを得ません。

2 財務省への説明ロジックと「スクラップ・アンド・ビルド」

(1) 「効率化」という諸刃の剣

訴訟記録の電子化は,保管スペースの削減や閲覧事務の効率化など,「管理コストの低減」も大きな目的の一つです(一問一答Q7)。事務総局は財務省に対し,「IT化によって書記官事務が効率化され,人員配置の合理化が進む」というストーリーで予算を要求しています。

この手前,「IT化によって逆に手間が増える(当事者対応が大変になる)から,人を増やしてくれ」とは,口が裂けても言えません。それは,自らが掲げた効率化の旗印を否定することになるからです。

(2) 定員削減圧力とデジタル化の矛盾

国家公務員の定員管理は厳格であり,裁判所も例外ではありません。定員合理化計画に基づく削減圧力がかかる中で,新たな業務(デジタルサポート)のための純増を勝ち取るのは至難の業です。

結果として,事務総局としては,「システムによる効率化(手数料納付のキャッシュレス化等)(一問一答Q124)」をアピールしつつ,効率化できない「人間による泥臭い支援業務」は,予算の付かない「外部の自発的協力」に依存せざるを得ないのです。

第4 「本人サポート」への期待とリスク転嫁の構造

1 本人サポートの法的性質と事務総局の狙い

このような内部事情を踏まえると,最高裁が日弁連や司法書士会連合会に対して求めている「連携」の意味が明確になります。特に議論されている「本人サポート(訴訟代理によらないシステム利用支援)」は,事務総局にとっての救世主です。

(1) 書面からデータへの移行コストの所在

デジタル化の本質は,「書面」という物理媒体から「データ」への情報の形態変換です(一問一答Q12参照)。本人訴訟において,誰かがこの「入力・変換コスト」を負担しなければなりません。

当事者本人にその能力がない場合,裁判所職員が代行すれば「入力ミス」のリスクや「公平性」の疑義が生じます。
そこで,最高裁は,この最もリスクが高く面倒な作業を,弁護士や司法書士に担ってもらいたいと切望しています。日弁連が検討している「システム利用支援(法的代理を含まない技術支援)」は,最高裁にとってまさに「渡りに船」の解決策です。

(2) 「円滑な進行」という名のアウトソーシング

本人訴訟は,紙の時代であっても訴訟指揮に多大な労力を要します。デジタル化で手続のハードルが上がれば,審理の停滞は必至です。

もし,弁護士等の専門家が「入り口(申立てや書面提出)」だけでも交通整理をしてくれれば,裁判官や書記官の負担は劇的に減少します。
しかし,現行のmintsのシステム設計は,このような外部支援を想定していません。「補助者」として登録できるのは弁護士事務所の事務員や法人の従業員等に限定されており,一回的な支援を行う弁護士が補助者として登録する枠組みは存在しません。
したがって,支援を行う弁護士は,本人のID・パスワードを預かって「なりすまし」的に操作するか,権限のない状態で画面を覗き込むしか術がないのです。
セキュリティの基本原則である「認証と認可の分離」がなされていないシステムにおいて,「法的助言を含まない操作支援」が,弁護士賠償責任保険の対象外となるリスクや,守秘義務・利益相反といった倫理的課題を孕んでいることは承知の上で,最高裁としては「背に腹は代えられない」というのが実情でしょう。

2 弁護士会・司法書士会への「連携」要請の政治的意味

(1) 「司法インフラを維持するための共同責任論」という同調圧力

附帯決議や各種協議における「連携」という言葉は,行政用語としては「協力要請」以上の重みを持ちます。それは,「潜在的な圧力」というよりも,法曹三者が共有する司法インフラを守るための「共同責任論(という名目の同調圧力)」に近いものです。

事務総局の本音はこうです。「弁護士や司法書士は,司法インフラの一部であり,その恩恵を受ける立場にある。ならば,制度の円滑な移行のために汗をかくのは当然の責務である(ノブレス・オブリージュ)。もしサポートが不十分で現場が混乱すれば,それは『連携』しなかった側の責任も問われることになる」。

これは,一種の「踏み絵」であり,デジタル化を推進するパートナーとしての覚悟を迫るものです。

(2) 「デジタル弱者切り捨て」批判へのアリバイ作り

また,この連携体制は,最高裁にとって強力な「政治的保険」となります。「デジタル弱者切り捨て」という国会やメディアからの批判に対し,「弁護士会・司法書士会等と強固に連携して支援体制を構築している」と答弁できれば,最高裁の責任は大幅に軽減されます。

「我々は環境を用意した。支援体制も依頼した。あとは運用の問題だ」というロジックを構築するために,外部との連携実績は不可欠なアリバイ(証明材料)となるのです。

第5 「本人サポート」の実務的実態と弁護士が抱えるリスク

ここまでは最高裁側の論理を見てきましたが,実際にその要請を受ける日弁連側の検討状況や実務的な定義についても,最新情報を踏まえて解説します。

1 「法律事務」と「事実行為」の境界線

(1) 日弁連による「本人サポート」の定義と法的性質

日弁連によれば,2026年の全面デジタル化に伴い導入が予定されている「本人サポート」は,法律事務(弁護士法第3条)ではなく,あくまで「事実行為」であると定義されています。これは極めて重要なポイントです。
すなわち,ご本人から事件の見通しや書面の内容に関する助言を求められ,それに回答する場合は,それは「本人サポート」の範疇を超え,通常の「法律相談(法律事務)」となります。

ただし,実務的な視点で検証すれば,来訪者が作成した書面に法的に致命的な不備や不適切な内容が含まれていた場合,弁護士が見て見ぬふりをして「入力だけ」を行うことは職務倫理上極めて困難です。
「純粋な操作支援」と「法律相談」を明確に切り分けることなど,現場の実態としては不可能に近いと言わざるを得ません。

(2) 「形式サポート」と「実質サポート」の区分の撤廃

かつては「形式サポート」や「実質サポート」という用語で議論されていましたが,現在はその区分けは採用されていません。事実行為のみを「本人サポート」と呼び,法的助言を伴うものは通常の法律相談として扱う整理になっています。
これにより,弁護士が行う業務であっても,本人サポート自体は「誰でも(有償・無償問わず)行える事実行為」という位置づけになります。

2 具体的な業務内容とシステム操作の実際

では,具体的にどのような業務が想定されているのでしょうか。これは,サポータとなる弁護士がシステムにログインするか否かで大きく2つに分類されます。

(1) サポータがログインしない場合の業務範囲

ご本人がご自身の機器で操作を行うことを前提とした支援です。

ア 操作アドバイス
アカウントの取得方法,ログイン,手数料納付,書面の提出操作,通知の確認方法などの助言を行います。
ただし,アカウントの取得自体はパスワード設定等を伴うため,代行はできず,アドバイスに留まります。

イ PDF化の支援
ご本人が持参した紙の書面をスキャンしてPDF化し,データとしてご本人に提供することです。

ただし,原本性が担保されないデジタルデータにおいて,「弁護士がスキャンした」という事実は,後に「改ざん」を疑われた際の無実の証明を極めて困難にする技術的リスクを孕んでいます。操作マニュアル(PDF122頁,別紙4)においても,アップロードするPDFには「タイムスタンプを適切な位置に付するため」として,縦置き・横置きに応じた厳密な向きの指定がなされており,単にスキャンすれば良いというものではありません。
また,情報理論の観点から言えば,アナログ(紙)からデジタルへの変換は一種の「サンプリング」であり,必ず情報の欠落(ロス)や画質劣化を伴います。
原本と電子データ(PDF)の同一性をシステム側で担保するハッシュ値照合等の技術的セーフガードがない現状において,この変換プロセスにおける責任を,法的保護のない弁護士が負うことは,リスク管理上,極めて危険です。

後述するとおり,シンガポールでは,このようなデータ変換作業を「サービス・ビューロー」と呼ばれる民間業者が有償で一括して引き受けており,専門家(弁護士)がスキャン作業のような事務リスクを負わない仕組みが確立されています。

(2) サポータがログインする場合の業務範囲

サポータである弁護士自身のアカウントを使用して行う業務です。

ア オンライン提出代行
ご本人から提供された書面(PDFやフォーム入力内容)を,システムを通じて裁判所に提出します。

イ 記録の閲覧・複製
提出された訴訟記録を閲覧したり,ダウンロードしたりします。

ウ システム送達受取人としての対応
相手方からの書類や裁判所からの通知を,サポータが「システム送達受取人」として受け取ります。
受け取った書類をご本人へ送信,または印刷して交付したり,事務連絡等の通知をご本人へ伝達したりします。ご本人がアカウントを持っていない場合,システム送達を受けるためにサポータを受取人として届け出る必要が生じます。

ただし,日弁連によれば「ウェブ会議への参加の補助については、サポータはウェブ会議に同席できない」とされています。
IT操作に不慣れでサポートを必要とする当事者が,最もITリテラシーを要する「単独でのウェブ会議参加」を強いられるという,致命的な矛盾(ロジックの破綻)が生じています。

3 看過できない実務上のリスクと留意点

ここが最も重要です。「事実行為」であるという定義は,弁護士にとって重大なリスクを孕んでいます。

(1) 弁護士賠償責任保険の適用外という「無保険特攻」のリスク

ア 責任の所在が不明確な「機械トラブル」の恐怖
最大のリスクは,「本人サポート」は法律事務ではないため,原則として弁護士賠償責任保険の適用がないと解される点です。日弁連自身が認める通り,これは「無保険」での業務遂行を意味します。

例えば,以下のような機械トラブルが考えられます。
・ 大切な証拠(原本)をスキャンする際,例えばホチキスの外し忘れ等が原因で破損してしまったら誰が責任を負うのか。
・ 動画や画像のファイル形式・サイズ変更を余儀なくされ,画質が落ちた結果,『当事者が思ったとおりの画質で裁判所に提出できず,証拠価値が下がって負けた』とクレームをつけられたらどうするのか。
・ 操作マニュアル(PDF109頁,別紙3)には,ファイルのプロパティや個人情報を削除する詳細な手順が記載されていますが,この過程で意図せず重要なメタデータまで削除してしまったり,ファイル変換により画質が劣化したりするリスクは常に存在します。

これらは単なる過失ですが,法律事務ではない以上,保険の対象外となる可能性が高いのです。

イ パスワード管理及びログの証拠能力欠如という地雷原
また,高齢者等のサポートでは,事実上弁護士がID・パスワードを管理せざるを得ない場面も想定されます。
セキュリティの観点からも,他人のID等を用いて操作を行うことは,なりすましや事後否認のリスクを排除できません。
さらに致命的なのは,現状のmintsの仕様では,操作ログがアカウント単位でしか記録されない点です。「誰がエンターキーを押したか」を事後的に追跡できる仕様になっていないため(否認防止機能の欠如),仮に本人が「弁護士が勝手にやった」と主張した場合,技術的に反証することは不可能です。

もし,何らかの原因で情報流出が起きた際,「あんたが漏らしたんだろう」と疑われたら,弁護士は無実を証明できるでしょうか。
いわゆる「特級呪物」と化す可能性のある困難な当事者を相手に,無保険で業務を行うことは,まさに「神風特攻」とも言うべき無謀な行為であり,単なるボランティア精神で引き受けるにはあまりに危険すぎます。

(2) 守秘義務と利益相反に関する構造的問題

ア 守秘義務の所在
本人サポートは法律事務ではないため,形式的には弁護士法上の守秘義務の対象外となります。
しかし,弁護士に対する社会的信用を維持するため,正当な理由なく秘密を漏らしてはならないことは言うまでもありません。契約書等で守秘義務を明記することが強く推奨されます。

イ 利益相反の考え方
形式的には利益相反規定に触れない場合でも,実質的に本人の利益を損ねる恐れがある場合は,相手方からの依頼を受けるべきではありません。
特に,本人サポートで情報を得た後に,その事件の相手方から依頼を受けることは,職務基本規程の精神に照らして原則避けるべきです。

(3) 「印刷して交付」という作業に潜む作業負荷

サポータが「システム送達受取人」として受け取った書類や裁判所からの通知については,「印刷して交付」という作業が必要となります。
しかし,この「印刷して交付」という作業は,想像以上に煩雑な「シャドウ・ワーク(隠れた作業負荷)」となります。
操作マニュアルによれば,未印刷物を一括印刷しようとした際,原稿サイズA3とA4が混在していると,「A3、A4サイズが混在しているためダウンロードした後に印刷してください。」とのメッセージが表示され,プレビュー表示がなされません(操作マニュアルPDF64頁)。これは,サーバーサイドでの適切なレンダリング処理を放棄し,クライアントサイド(ユーザー側)の環境と手間に依存した,システムアーキテクチャとして極めて前近代的な設計と言わざるを得ません。
さらに,その後の印刷工程においては,Adobe Acrobat Readerの印刷設定で「PDFのページサイズに合わせて用紙を選択」にチェックを入れるなど,マニュアル「別紙5(PDF123頁)」で指定された【設定1】の手順を正確に履行しなければならず,これを怠ると用紙サイズ不整合による印刷ミスが多発する仕様となっています。

単に「紙を受け取るだけ」であった従来の業務と比較して,事務コストが著しく増大することは明白であり,これを無償に近い形で引き受けることは経営判断としてあり得ません。

(4) 契約書の重要性

トラブル防止のため,支援の範囲(法律相談は含まない等)を明確にした「本人サポート契約書」の作成が必須となります。
また,ウェブ会議への同席(代理権がないため不可),書面内容の作成・検討(法律事務になるため不可),本人のアカウント利用(不正利用になるため不可)といったNG行為を明確に除外する必要があります。

(5) 「非弁活動の温床」となる社会的リスク

さらに看過できないのが,「形式サポートには法曹資格が不要」とされることの副作用です。 これは裏を返せば,悪質な事件屋や非弁業者が「ITサポート業者」を名乗って堂々と参入できることを意味します。山口県弁護士会の決議でも指摘されているとおり,「形式サポートに名を借りた非弁行為の増加が想定され,これを防止することは,ほぼ不可能」なのです。
表面上は「操作支援」を謳いつつ,裏で実質的な非弁活動を行い,国民が高額な被害に遭う――そんな未来が容易に想像できます。
最高裁の施策は,結果として国民を食い物にする土壌を作っている可能性があり,この点でも司法の信頼を揺るがしかねないのです。

第6 【海外事例】「責任の所在」を明確にするアジア近隣諸国の先進事例

1 シンガポール:徹底した「IT隔離」と「有償アウトソーシング」

(1) 本人による直接アクセスの制限

シンガポールの電子裁判システム「eLitigation」は,原則として法律事務所及び登録された法人ユーザー向けに設計されています。
一部の簡易手続を除き,本人訴訟当事者が自宅のパソコンからシステムに自由にアクセスし,不完全なデータを流し込むことは推奨されていません。

(2) 「サービス・ビューロー(Service Bureau)」という解決策

では,本人はどうするか。裁判所内に設置された民間業者(CrimsonLogic社)が運営する「サービス・ビューロー」という窓口の利用が推奨されています。
本人は紙の書類をビューローに持ち込み,そこで所定の手数料を支払って,業者の専門スタッフにデータ入力とアップロードを代行してもらいます。

(3) 運用の妙と日本の現状

これにより,裁判所のシステムには,プロ(業者)によって整えられた完璧なデータしか流れてきません。裁判所書記官が「PDFの傾き」を直す必要も,弁護士が相手方のITサポートをする必要もないのです。
「ITスキルがないなら,対価を払ってプロに頼む」という原則を徹底し,司法インフラの汚染を防いでいます。

2 韓国:国家主導の「徹底サポート」と「専用インターフェース」

韓国は,日本と同様に国民のITリテラシーが高いことを前提としつつも,国(大法院)が責任を持ってインフラを整備する「親切な国家」モデルです。

(1) 「本人訴訟専用ポータル」の構築

弁護士用とは別に,一般市民向けの「私一人でする訴訟(ナホルロ訴訟)」という専用ポータルサイトを用意しています。なお,韓国語では,「ナ(私)」+「ホルロ(一人で)」=「私一人で」という意味です。

ナホルロ訴訟では,質問に答えていくだけで訴状が自動生成されるなど,弁護士に頼らずとも完結できるUI(ユーザーインターフェース)が実装されています。

(2) 専門部隊によるヘルプデスク

大法院(最高裁)直轄のITセンターには,強力なユーザーサポート部隊(ヘルプデスク)が設置されています。「ログインできない」「操作が分からない」という問い合わせは,すべてこの専門部隊が引き受けます。
現場の書記官が電話口で操作説明をすることは,業務分掌として明確に切り離されており,「操作のことはヘルプデスクへ」と堂々と案内できる体制が整っています。

3 中国:徹底した「モバイル統合」と「AIによる人的遮断」

中国は,韓国の「親切な国家」モデルをさらに推し進め,「国民がすでに使っているインフラに裁判所を寄生させる」という発想と,「AIによる徹底した人的遮断」で現場を守っています。

(1) 国民的アプリ「WeChat」への機能統合

新たなシステム操作を覚えさせるのではなく,国民インフラであるメッセージアプリ「WeChat(微信)」の中に「裁判所ミニプログラム」を組み込みました。ログインは顔認証で完了し,証拠提出は「スマホで写真を撮ってアップ」で済みます。
「PDFの傾き」といった概念すら排除し,UI(ユーザーインターフェース)の極度な簡便化によって,操作質問そのものを激減させています。

(2) 「12368」ホットラインとAI対応

全国統一の訴訟サービスホットライン「12368」では,AIまたは専門オペレーターが対応し,事件進捗などの定型的な質問にはシステムが自動回答します。
現場の書記官への電話は物理的に遮断され,本来業務に集中できる環境が強制的に作られています。

4 台湾:「訴訟輔導科」という強力な緩衝地帯

台湾のアプローチは,IT化を進めつつも,「デジタル弱者への手厚い人間によるケア」を専門部署に集約させる「調和型」です。

(1) 専門部署による防波堤

台湾の全ての裁判所には,玄関口に「訴訟輔導科(訴訟相談課)」という専門部署が設置されています。手続の案内やIT操作の補助は,原則としてこの部署が一手に引き受けます。

(2) 現場書記官との機能分離

事件担当の書記官(法廷立会等を行う書記官)と,窓口対応を行う職員の役割が明確に分離されています。ITが苦手な当事者が来庁した場合,担当書記官ではなく,訴訟輔導科の職員や組織された司法ボランティアがスキャニングや入力を補助します。
これにより,事件処理を行う現場のリソースは確実に保護されているのです。

5 日本への示唆:ガラパゴス化する「責任の空中分解」

(1) こうして比較すると,日本の現状がいかに「中途半端な責任転嫁」であるかが明白になります。
近隣諸国は,それぞれ異なるアプローチで「現場」を守っています。

【各国の司法IT戦略比較】
・ シンガポール型
「隔離」による品質維持(民間業者が有償対応)
・ 韓国型
「投資」による包摂(国が専用システムとサポートを用意)
・ 中国型
「技術」による遮断(AIと既存アプリ統合による省力化)
・ 台湾型
「分業」による調和(専門部署「訴訟輔導科」による緩衝)
・ 日本型(現状)
「放置」による現場消耗(「任意」として,現場の書記官と弁護士に負荷を分散)
(2) 日本は,シンガポールのように「業者に任せる」という割り切りもせず,韓国や中国のように「国が技術とカネで支える」という覚悟も決めず,台湾のように「専門部署」を作ることもありません。
ただ「任意だから」という言葉で責任を空中に分解させ,そのしわ寄せを現場の法律家たちに負わせているのです。

第7 総括:最高裁事務総局の「生存戦略」と法曹三者の未来

1 組織防衛のための冷徹な現状認識

以上の分析から導き出される最高裁事務総局の「本音」は,極めて合理的かつ冷徹な組織防衛の論理に基づいています。

「デジタル化のインフラ(ハード・ソフト)は裁判所が用意する。しかし,それを埋める『人的コスト』は裁判所のリソース(人件費)では絶対に賄えない。賄おうとすれば,現場が崩壊する。

だからこそ,本人訴訟におけるデジタル利用は,制度上『任意』とし,現場への流入をコントロールする。その上で,『より便利に』というインセンティブで誘導し,それでも発生するサポート業務のコストは,『司法の担い手』である隣接士業に,公益活動として負担・解決してほしい。」

これが,「関係機関との連携」を強調する最高裁事務総局の,偽らざる本音であり,限られた予算と人員の中でデジタル化という国策を完遂するための「生存戦略」であると考えられます。

2 我々実務家が取るべき「生存戦略」:情緒的連携からの脱却と工学的要求

(1) 精神論の排除と「契約と仕様」への回帰

最高裁の戦略を「責任転嫁」と道徳的に断罪しても、彼らが動くことはありません。彼らは財務省という「株主」に対するKPI(効率化)達成のために動いているからです。
我々弁護士もまた,情緒的な「連携」や「司法の担い手としての使命」という曖昧な言葉に酔うのはやめるべきです。
情報工学と法務の観点から言えば,現在のmintsの仕様と運用ルールは,「セキュリティホール(認証の脆弱性)」と「リーガルリスク(責任分界点の欠如)」を外部ユーザー(弁護士)に押し付ける欠陥設計です。
このバグを修正しない限り,本人サポートには関与できない――これが技術者かつ法律家としての結論です。

(2) 提示すべき4つの「非機能要件」と「契約条件」

我々は,ボランティアとしてではなく,システムのエンドユーザー兼ステークホルダーとして,以下の4点を「利用の必須条件(受入テスト基準)」として突きつける必要があります。

第一に,システムアーキテクチャレベルでの「認証と認可の分離」の実装です。
他人のID・パスワードを預かる,あるいは他人のログイン状態で操作するという運用は,情報セキュリティマネジメント(ISMS)の観点から完全にアウトです。
技術的に要求すべきは,「代理操作権限(Delegated Authority)」の実装です。弁護士自身のIDでログインし,システム上で紐付けられた本人(依頼者)の領域に対して,限定的な操作権限(アップロードのみ等)を行使できる仕様に改修させなければなりません。
これにより,「誰が操作したか」という監査ログ(Audit Log)が明確になり,否認防止(Non-repudiation)が担保されます。
これが実装されない限り,なりすましリスクのある現行システムでの支援は「セキュリティ事故の温床」として拒絶すべきです。

第二に,利用規約(ToS)による「免責の明文化」です。
「支援は事実行為」という曖昧な解釈論に逃げるのではなく,mints利用規約に「支援者(弁護士等)による操作補助に起因するシステム上の不具合,データ消失,画質劣化等について,支援者に故意または重過失がない限り免責される」という条項を追加させるべきです。
システム提供者である国がこの免責規定を設けないのであれば,弁護士会側で統一の「免責同意書テンプレート」を作成し,署名がない限り一切の操作支援を行わないという運用を徹底する必要があります。

第三に,リスクに見合った「技術料(Technical Fee)」の標準化です。
これは「相談料」ではありません。「データ変換・アップロード代行」という一種のITベンダー業務です。シンガポールのサービス・ビューローが有償であるように,リスクを伴う技術的作業には対価が必要です。
「無料相談のついで」ではなく,明確にプライシングされた技術サービスとして定義し直すことで,安易な依頼を抑制し,責任の重さを依頼者(国民)にも認識させる必要があります。

第四に、「システム不備」を理由とした「正当な業務拒否」の行使です。
海外事例(シンガポール、韓国等)と比較し,日本のシステムがいかに「ユーザーサポート」という必須モジュールを欠いた欠陥品であるかを,具体的なデータと共に主張し続ける必要があります。
サポート体制(ヘルプデスクや入力センター)という「ミドルウェア」が欠如している以上,ラストワンマイルの接続責任を弁護士が負う義務はありません。
「不完全なシステムには接続しない」という態度は,サボタージュではなく,司法インフラの安全性を守るための「セキュリティ・ポリシー」です。

我々弁護士が安易に無償サポートで穴埋めをすることは,国が負担すべき「IT運用コスト」を隠蔽(粉飾)することに他なりません。
それは結果として,日本の司法DXを「いつまでも自立できない未熟なシステム」のまま放置させることになります。
「バグだらけの仕様書にはサインしない」。技術者として,そして法律家として,この当たり前の態度を貫くことこそが,真の意味での「司法への貢献」なのです。