(AI作成)令和8年度概算要求に基づく,裁判手続のデジタル化の説明


本ブログ記事は,最高裁の令和8年度概算要求書(説明資料)に基づき,主としてAIで作成したものです。

目次
第1 デジタル化推進の全体像と目的
第2 各分野におけるデジタル化の取り組み
第3 デジタル化を支える基盤整備とセキュリティ
第4 その他のデジタル関連施策
第5 企業法務への影響について
第6 今後の展望

* 「最高裁判所の概算要求書(説明資料)」も参照してください。

第1 デジタル化推進の全体像と目的

裁判手続等のデジタル化は、単に紙媒体を電子媒体に置き換えるだけでなく、業務改革(BPR)を通じて、利用者の利便性向上と行政運営の効率化を図ることを目的としています。政府全体の「デジタル社会の実現に向けた重点計画」においても、オンライン化等が自己目的化しないよう、本来の目的であるサービス向上や効率化に立ち返ることの重要性が指摘されており、裁判所としてもこの方針に沿ってデジタル化を推進しております。

具体的には、民事訴訟手続を皮切りに、民事非訟、家事事件、刑事手続、少年手続など、幅広い分野で段階的にデジタル化を進めております。これには、ウェブ会議の活用拡大、訴訟記録の電子化、オンラインでの申立てや書類提出、手数料等の電子納付、そしてこれらの手続を支えるためのシステム開発やインフラ整備、セキュリティ対策強化などが含まれます。


第2 各分野におけるデジタル化の取り組み

民事訴訟手続のデジタル化

民事訴訟手続のデジタル化は、段階的に進められており、令和8年度予算要求においても重要な柱の一つとなっています。

  • フェーズ1・フェーズ2(ウェブ会議の活用):
    • 既に、改正前民事訴訟法下でのウェブ会議等ITツールを活用した争点整理(フェーズ1)や、改正民事訴訟法下でのウェブ会議を用いた口頭弁論期日等(フェーズ2)が運用開始されています。
    • これらの運用を支えるため、全国の裁判所に整備されたウェブ会議用機器について、耐用年数に応じた更新が必要となります。令和8年度は、平成31年度(令和元年度)に整備したフェーズ1運用に必要な機器の一部更新に係る経費を要求しています。
    • また、ウェブ会議を安定的に実施するための運用支援業務(ヘルプデスク、トラブル対応等)も継続して必要であり、関連経費を要求しています。
  • フェーズ3(記録電子化・オンライン提出等):
    • 令和7年度中には、当事者等によるオンライン申立て等の本格的な利用を可能とすべく、訴訟記録の電子化やオンライン提出の運用(フェーズ3)が全国の裁判所で開始される予定です(改正民事訴訟法は遅くとも令和8年5月までに全面施行)。
    • これに伴い、以下のシステム開発、環境整備、セキュリティ対策等を進めています。
      • e事件管理システム・e提出/e記録管理システム: 職員向けの事件管理機能と、国民向けのオンライン提出・記録電子化機能等を連携させ、民事訴訟手続全体のデジタル化を実現する基幹システムです。令和8年度も引き続き、これらのシステムの安定稼働のための運用保守経費等を要求しています。
      • 記録閲覧等用端末: 電子化された訴訟記録を、来庁者(当事者、代理人弁護士、一般の方等)が窓口や法廷で閲覧したり、非常勤職員(専門委員、司法委員)が利用したりするための端末です。令和7年度に整備された端末の運用保守経費を要求しています。
      • 電子署名ソフトウェア: PDF形式の電子化された訴訟記録の編集(分割、付箋付け、マスキング、画像データ変換等)や、裁判所書記官による記録事項証明等への官職証明書に基づく電子署名付与(法務省の登記・供託オンラインシステム対応)に必要なソフトウェアです。ライセンス利用料を要求しています。
      • AI-OCRシステム: 紙で提出された書面や郵便送達報告書等を効率的に電子化し、システムに登録するために活用するAI-OCRシステムの運用保守経費を要求しています。
      • 来庁者用インターネット接続環境: 来庁者が電子化された訴訟記録を閲覧等するために、裁判所職員が利用するネットワーク(J・NET)とは別に、安全なインターネット接続環境が必要です。令和6年度に全国約460拠点でLAN敷設を行い、令和7年度にWAN環境を構築・運用開始しており、令和8年度もこの来庁者用通信環境の運用経費を要求しています。
      • EDR(Endpoint Detection and Response): e提出・e記録管理システムの利用に伴い、クラウド上の訴訟記録へアクセスする端末のセキュリティを、閉域網外においても閉域網内と同水準に確保するための対策です。令和7年度に導入したEDR環境の維持運用保守経費を要求しています。

民事非訟・家事事件手続のデジタル化

民事訴訟手続に続き、民事執行、民事保全、倒産、家事事件手続等についてもデジタル化を進めます。「民事関係手続等における情報通信技術の活用等の推進を図るための関係法律の整備に関する法律」が成立し、これらの手続におけるウェブ会議の活用や事件記録の電子化が定められ、令和9年度中までの施行が見込まれています。

  • ウェブ会議の活用: 民事調停期日等でのウェブ会議活用が見込まれており、そのためのウェブ会議用アプリケーション利用料・運用サポート費を要求しています。これにより、遠隔地の当事者の負担軽減や、DV事案等における安全確保が期待されます。
  • システム開発: 民事執行、民事保全、倒産、家事事件手続等に対応する「e事件管理」「e提出・e記録管理」システムの開発を進めます。これにより、オンライン申立て、手数料電子納付、記録の電子管理、オンライン閲覧・複写、オンライン送達受領などが可能となり、手続の正確性向上と効率化を図ります。令和8年度もシステム開発経費及び開発工程の監理支援業務経費を要求しています(複数年度契約)。
  • 関連システム連携: 新たなシステムと既存システムとの連携改修も必要です。
    • 最高裁判所汎用受付等システム: 手数料等の電子納付を実現するため、財務省会計センターの歳入金電子納付システム(REPS)との連携基盤となっている本システムについて、民事非訟・家事事件手続システムとの連携改修及び電文処理能力向上のためのシステム更改経費を要求しています。
    • 保管金事務処理システム: 民事執行予納金や家事事件手続に関する郵便料金等の保管金電子受払を可能とするため、本システムについてもデジタル化に係るシステムとの連携改修経費を要求しています。
  • 来庁者用インターネット接続環境整備: 民事訴訟手続と同様に、来庁者が電子化された記録を閲覧等するための安全なインターネット接続環境が必要です。令和8年度は、全国の裁判所へのLAN敷設に必要な経費を要求しています。

刑事手続・少年手続のデジタル化

刑事手続分野においても、「情報通信技術の進展等に対応するための刑事訴訟法等の一部を改正する法律」(令和7年法律第39号)が成立し、令和8年度中に一部施行が予定されるなど、デジタル化が本格化します。少年手続についても、刑事手続に準じて記録電子化等の運用開始が見込まれています。

  • 記録の電子化: 令和8年度中に運用が開始される書類の電子データ化・発受のオンライン化に対応するため、以下の整備を行います。
    • 法廷等用周辺機器: 評議室、公判前整理手続室、勾留質問室、少年審判廷、観護措置室等において、電子記録を確認しながら手続を行うためのディスプレイ等の機器を整備します。
    • 記録閲覧等用端末: 訴訟関係人(弁護人等)が窓口や法廷で電子化された記録を閲覧するための端末を整備します。
    • USBメモリ(コピーガード付き): 訴訟関係人への閲覧謄写用データ受渡しのため、情報漏洩防止機能を持つUSBメモリを整備します。
  • 非対面・遠隔化: ウェブ会議等の活用による非対面・遠隔手続も導入が見込まれます。
  • システム開発: 刑事手続デジタル化に対応する新システムの設計・開発を継続します。このシステムは、令状請求・発付・執行の電子化、オンライン申立て、電子記録の発受・作成・管理機能などを備え、既存の事件管理システム(裁判事務処理システム(刑事事件)、裁判事務支援システム、最高裁判所事件管理システム)の後継ともなるものです。令和8年度も引き続き、複数年度契約に基づくシステム開発経費及び開発工程の監理支援業務経費を要求しています。
  • 関連システム連携:
    • 最高裁判所汎用受付等システム: 新刑事システムからの手数料電子納付を可能とするための連携改修経費を引き続き要求しています。
    • 裁判統計データ処理システム: 新事件管理システム(刑事)と連携し、統計情報以外のデータも含めた多角的な分析を可能とするための連携改修経費を要求しています。
    • 現行システムとのデータ連携移行: 新システムの事件管理機能運用開始までの間、新システム(記録発受・令状)と現行の裁判事務処理システム(刑事事件)を並行利用するため、両システム間のデータ連携移行費用を要求しています。
  • セキュリティ対策:
    • 外部ID等利用基盤: 弁護士等の外部ユーザーが安全にシステムを利用できるよう、マイクロソフト社のIDサービス(Entra ID)を用いた多要素認証等のための基盤設計開発等業務経費、サービス利用経費を要求しています。
    • 長期署名用ライセンス: 電子署名の有効期限切れに対応し、文書の真正性等を長期にわたり担保するためのライセンス利用料を要求しています。
  • 刑事関係機関連携ネットワーク: 裁判所、法務省、警察庁間で機密性の高い電子データを安全に送受信するための閉域網(ネットワーク)敷設経費を要求しています(複数年度契約)。

第3 デジタル化を支える基盤整備とセキュリティ

上記のような各分野のデジタル化を推進し、安定的に運用するためには、それを支える強固な情報通信基盤(インフラ)と万全なセキュリティ体制が不可欠です。

情報通信基盤(インフラ)整備

  • 次期共通基盤(クラウド化): 現在の最高裁判所データセンタ共通基盤は令和9年10月末に機器リース満了を迎えるため、データセンタを廃止し、クラウドを前提とした次期共通基盤への移行を進めます。令和8年度は、そのためのネットワーク機器、サーバ、ソフトウェア等のリース料、構築役務費用、クラウド利用料、回線利用料、及び適切なプロジェクト管理のための工程監理業務経費を要求しています(一部要望、複数年度契約含む)。
  • 次世代高度通信基盤: 裁判手続等のデジタル化に伴う通信量の大幅な増加(特に刑事、民事非訟、家事事件手続の開始を見据え)と、機微性の高い情報を取り扱うための高度なセキュリティ確保に対応するため、令和8年度までに裁判所の情報通信基盤全体の抜本的な再構築を行います。令和8年度も引き続き、次世代高度通信基盤の整備に係る経費(回線構築、回線機器調達、端末等調達)を要求しています(複数年度契約)。
  • 個別システム等の次期共通基盤等対応: 次期共通基盤及び次世代高度通信基盤への移行に伴い、既存の各個別システム(事件管理システム等)もアプリケーション改修や再構築等が必要となるため、そのための経費を要求しています(複数年度契約含む)。
  • J・NET(司法情報通信システム): 裁判所間の通信基盤であるJ・NETについても、機器更新(ファイルサーバ、DHCPサーバ、スイッチ等)、再リース、運用保守、ソフトウェアバージョンアップ等、安定運用のための経費を要求しています。無線LANの運用保守も継続します。
  • インターネット接続: セキュリティパッチ適用やウイルス定義ファイルの更新等に必要なインターネット通信費を要求しています。
  • ウェブセキュリティサービス: インターネット網への接続を経済的かつセキュアに行うためのウェブセキュリティサービス提供業務経費を要求しています。

セキュリティ対策

デジタル化の進展は、サイバー攻撃等のリスクも増大させます。裁判所が取り扱う情報の機密性を確保し、国民の信頼に応えるためには、情報セキュリティ対策の強化が最重要課題の一つです。

  • EDR(Endpoint Detection and Response): クラウドアクセス端末等のセキュリティ強化策として導入したEDRの運用保守を継続します。
  • セキュリティ監視: 外部からの不正通信等を監視するためのセキュリティ監視機器のリース料、保守・監視作業経費を要求しています。
  • 情報セキュリティ監査・調査: 対策の実効性を担保するため、最高裁や高裁による実地監査、及び下級審における運用実情調査のための経費を要求しています。
  • インシデント対応支援: セキュリティインシデント発生時に、外部専門家による迅速な支援を得られる体制構築のための経費を要求しています。
  • ウイルス対策: 職員端末等用のウイルス対策ソフトのライセンス経費を要求しています。
  • セキュリティ監査・標的型メール訓練: 定期的なセキュリティ監査や訓練実施のための経費を要求しています。
  • ネットワーク分離: 来庁者用ネットワークと職員用ネットワーク(J・NET)を分離するなど、アクセス制御によるセキュリティ確保を図っています。
  • 刑事関係機関連携ネットワーク: 機密性の高い情報を扱う刑事手続のために、専用の閉域網を構築します。

第4 その他のデジタル関連施策

  • 総合コミュニケーションツール(Microsoft 365等): 裁判所内の迅速な情報共有やコミュニケーション、業務改革を支える基盤として、Microsoft 365等のライセンス料及び運用保守経費を要求しています。
  • 裁判所ウェブサイト: 国民への情報発信手段であるとともに、今後はオンライン手続への入り口(ポータルサイト)としての役割も担うため、その機能維持・向上のための保守・運用経費を要求しています。アクセシビリティの維持向上にも努めます。
  • ウェブ会議システム: 各種手続(民事、刑事、家事、調停等)や司法行政目的(会議、研修等)で活用されるウェブ会議システムについて、ライセンス料、運用支援、モバイル回線等の経費を要求しています。
  • 各種業務用システム: 督促手続オンラインシステム、新民事執行事件処理システム、保管金事務処理システム、裁判員候補者名簿管理システム、量刑検索システム、資格審査システムなど、既存の各種システムの運用保守、機器リース、改修等の経費も要求に含まれています。

第5 企業法務への影響について

裁判手続等のデジタル化は、企業法務をご担当される先生方の実務にも、以下のような影響をもたらす可能性があります。

  • 訴状・準備書面等のオンライン提出: e提出システムの導入により、書面の提出がオンラインで可能となり、郵送や持参の手間・コストが削減され、提出期限管理も容易になることが期待されます。
  • 訴訟記録のオンライン閲覧: e記録管理システムを通じて、訴訟記録へのアクセスが場所や時間に縛られにくくなり、情報収集や事件管理の効率化が図られる可能性があります。
  • ウェブ会議の積極活用: 争点整理、口頭弁論、調停期日等でウェブ会議がより広く活用されることで、遠隔地からの参加が容易になり、移動時間やコストの削減につながります。特に、複数拠点を有する企業や、遠隔地の専門家(証人、鑑定人、専門委員等)が関与する事件でのメリットが大きいと考えられます。
  • 手数料等の電子納付: 各種手続システムと汎用受付システム等の連携により、申立て手数料や保管金等の電子納付が可能となり、利便性が向上します。
  • 電子署名の活用: 提出書面への電子署名や、裁判所が発する証明書等への電子署名の活用が進む可能性があります。
  • 情報セキュリティの重要性: デジタル化された手続においては、自社の情報管理体制や、システム利用時のセキュリティ対策(アクセス管理、マルウェア対策等)が一層重要になります。

第6 今後の展望

裁判手続等のデジタル化は、今後も継続的に進められていきます。民事訴訟手続フェーズ3の本格稼働、民事非訟・家事事件手続、刑事・少年手続のデジタル化の段階的な施行、そしてそれらを支える次期共通基盤(クラウド)や次世代高度通信基盤への移行など、大きな変革が予定されています。

裁判所としましては、これらの取り組みを着実に進め、国民の皆様や法曹関係者の皆様にとって、より利用しやすく、信頼される司法を実現できるよう努めてまいります。


本説明は、令和8年度の概算要求資料に基づいており、今後の予算編成や国会審議等により内容が変更される可能性があることをご承知おきください。

裁判手続等のデジタル化に関する最新情報につきましては、裁判所ウェブサイト等で随時お知らせしてまいります。

先生方におかれましては、引き続き、裁判手続等のデジタル化へのご理解とご協力を賜りますよう、お願い申し上げます。


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