即時抗告,執行抗告,再抗告,特別抗告及び許可抗告の提出期限


目次
1 民事訴訟法に基づく即時抗告の場合
2 破産法に基づく即時抗告の場合
3 家事事件手続法に基づく即時抗告の場合
4 民事執行法に基づく執行抗告の場合
5 再抗告の場合
6 特別抗告及び許可抗告の場合
7 再度の考案
8 手続の追完は制限されていること
9 破産手続において,公告がされる裁判と公告がされない裁判の例
10 破産手続開始決定及び免責許可決定に対する即時抗告期間
11 関連記事その他

1 民事訴訟法に基づく即時抗告の場合
(1) 民事訴訟法に基づく即時抗告は,裁判の告知を受けた日から1週間以内に行う必要があります(民事訴訟法332条)。
(2) 抗告理由書は抗告の提起後2週間以内に提出する必要があります(民事訴訟規則207条)。

2 破産法に基づく即時抗告の場合
(1)ア 破産法に基づく即時抗告は,裁判の公告がされるかどうかによって以下のとおり変わります。
① 免責許可決定のように裁判の公告がされる場合(破産法252条3項前段・10条3項本文参照),公告が効力を生じた日から起算して2週間以内に行う必要があります(破産法9条後段)。
② 免責不許可決定のように裁判の公告がされない場合(破産法252条4項参照),裁判の告知を受けた日から1週間以内に行う必要があります(破産法13条・民事訴訟法332条)。
イ 公告が効力を生じる日は,官報への掲載(破産法10条1項)があった日の翌日です(破産法10条2項)。
ウ 破産法により裁判の公告がされたときは、一切の関係人に対して当該裁判の告知があったものとみなされます(破産法10条4項)。
(2) 抗告理由書は抗告の提起後2週間以内に提出する必要があります(破産規則12条・民事訴訟規則207条)。

3 家事事件手続法に基づく即時抗告の場合

(1)ア 家事審判に対する即時抗告は,裁判の告知を受けた日から2週間以内に行う必要があります(家事事件手続法86条1項)。
イ 家事審判以外の裁判に対する即時抗告(例えば,謄写不許可処分に対する即時抗告(家事事件手続法47条8項))は,裁判の告知を受けた日から1週間以内に行う必要があります(家事事件手続法101条1項)。
ウ 各相続人への審判の告知の日が異なる場合における遺産の分割の審判に対する即時抗告期間は,相続人ごとに各自が審判の告知を受けた日から進行します(最高裁平成15年11月13日決定)。
(2) 家事審判に対する即時抗告の場合,抗告理由書は抗告の提起後2週間以内に提出する必要がありますし(家事事件手続規則55条),高裁が審理を終結する日を定めた場合,その日を過ぎてから資料を提出しても高裁の決定の判断資料としてもらうことはできません(家事事件手続法93条1項・71条)。

4 民事執行法に基づく執行抗告の場合

(1) 民事執行法に基づく執行抗告は,裁判の告知を受けた日から1週間以内に行う必要があります(民事執行法10条2項)。
(2) 執行抗告理由書は抗告の提起後1週間以内に提出する必要があります(民事執行法10条3項)。
(3) 原裁判の執行停止を得るためには,執行抗告に伴う執行停止の決定を得る必要があります(民事執行法10条6項)。

5 再抗告の場合

(1) 再抗告は,簡易裁判所の裁判について,抗告審として地方裁判所がした裁判に対し,さらに高等裁判所へ抗告する場合に限り許されます。
(2) 民事訴訟法330条に基づく再抗告の申立て期間については,再抗告の対象となる決定の内容が即時抗告又は通常抗告のいずれの抗告によるべき性質のものであるかにより,即時抗告期間内に申し立てなければならないか否かが定まります(最高裁平成16年9月17日決定)。
    そのため,①通常抗告に関する再抗告は,取消しの利益がある限り,②即時抗告に関する再抗告は,裁判の告知を受けた日の翌日から1週間以内に行う必要があります。(弁護士雨のち晴れブログ「民事訴訟・刑事訴訟・家事審判と不服申立-期間、宛先、提出先」参照)

6 特別抗告及び許可抗告の場合

(1)ア 特別抗告及び許可抗告は裁判の告知を受けた日から5日以内に行う必要があります(民事訴訟法336条及び337条)。
イ 平成30年12月19日発効の,京都弁護士会の懲戒処分(戒告)には「処分の理由の要旨」として以下の記載があります(自由と正義2019年4月号70頁)。
被懲戒者は、懲戒請求者から受任した子の監護者指定審判申立事件、上記申立事件に係る仮処分申立事件及び婚姻費用分担請求事件の各即時抗告申立事件について、2015年7月10日に高等裁判所においていずれも棄却決定を受け、同日に各決定書を受領したが、特別抗告及び許可抗告の申立期間が経過した同月24日頃まで上記申立期間を14日間と誤認していたため、懲戒請求者に対し申立期間を正確に説明することができなかった。
(2) 特別抗告の理由書は特別抗告提起通知書の送達を受けた日から14日以内に提出する必要があり(民事訴訟規則210条1項),許可抗告の理由書は抗告許可申立て通知書の送達を受けた日から14日以内に提出する必要があります(民事訴訟規則210条2項)。
(3) 特別抗告及び許可抗告には確定遮断効がないものの,抗告裁判所としての最高裁判所及び原裁判をした高等裁判所は,抗告について決定があるまでの間,執行停止の裁判をすることができます(民事訴訟法336条3項及び337条7条6項・334条2項)。

7 再度の考案

(1) 原裁判をした裁判所又は裁判長は,抗告を理由があると認める場合,その裁判を更正しなければなりません(民事訴訟法333条及び家事事件手続法90条)。
(2) 同時廃止事案における免責許可決定に対する即時抗告について,即時抗告後に明らかとなった事情を踏まえて再度の考案を行い,免責許可決定を取り消して免責不許可決定をした事例として,千葉地裁八日市場支部平成29年4月20日決定(判例秘書に掲載)があります。

8 手続の追完は制限されていること

・ 期間を遵守することができなかったことについて,当事者本人にその責に帰することができない事由があっても,同人に代って当該手続をする権限のある代理人に右の事由がない場合,懈怠した手続の追完をすることはできないと思います(旧特許法25条に関する最高裁昭和33年9月30日判決参照)。

9 破産手続において,公告がされる裁判と公告がされない裁判の例
(1)ア 即時抗告の対象となる,公告がされる裁判の例としては,(a)破産手続開始決定(破産法33条1項),(b)破産手続廃止決定(破産法216条4項,217条6項,破産法218条5項・217条6項)及び(c)免責許可決定(破産法252条3項・10条3項本文参照)があります。
イ 破産法252条3項は,免責許可決定の主文を記載した書面を破産債権者に送達しなければならないと定めています。
    しかし,実務上は,破産法10条3項に基づき,免責許可決定の主文の公告をもって,破産債権者に対する送達に代えられています。
(2) 即時抗告の対象となる,公告がされない裁判の例としては,(a)自由財産拡張の申立てを却下する決定(破産法34条6項),(b)居住地を離れる申立てを却下する決定(破産法37条2項),(c)郵便物等の管理に関する決定(破産法81条4項),(d)破産管財人の報酬決定(破産法87条2項),(e)破産財団に属する財産の引渡しに関する決定(破産法156条3項)及び(f)否認の申立てについての裁判(破産法171条4項)があります。

10 破産手続開始決定及び免責許可決定に対する即時抗告期間
(1) 破産手続開始決定の送達を受けた破産者の同決定に対する即時抗告期間は,破産法9条後段の趣旨,及び多数の利害関係人について集団的処理が要請される破産法上の手続においては不服申立期間も画一的に定まる方が望ましいこと等に照らし,上記決定の公告のあった日から起算して2週間です(最高裁平成13年3月23日決定(判例秘書に掲載)。なお,先例として,最高裁平成12年7月26日決定(判例秘書に掲載))。
(2) 免責許可決定が公告された場合における即時抗告期間は,破産法上公告が必要的とされている決定についての即時抗告期間と同様に,公告のあった日より起算して2週間であり,このことは,免責許可決定の送達を受けた破産債権者についても,異なるところはありません(最高裁平成12年7月26日決定(判例秘書に掲載))。
(3) 破産法13条・民事訴訟法331条本文・285条ただし書に基づき,破産手続開始決定又は免責許可決定の送達を受けた破産債権者は,これらの決定の公告前に即時抗告をすることができます(最高裁平成13年3月23日決定(判例秘書に掲載))。

11 関連記事その他

(1) 38期の小池一利裁判官は,判例タイムズ1274号(2008年10月1日付)に「民事抗告審の実務と考察」を寄稿しています。
(2)ア 大阪地裁HPの「民事訴訟等手続に必要な郵便切手一覧表」に載ってある予納郵便切手内訳基準表(令和5年10月1日~)【大阪地方裁判所本庁・堺支部・岸和田支部】には,訴状,控訴状,抗告状,上告状,特別抗告状及び労働審判手続における予納郵券の組み合わせが載っています。
イ 控訴理由書の提出期限である50日(民事訴訟規則182条)を経過した場合,控訴を却下されることはないのに対し,上告理由書の提出期限である50日(民事訴訟規則194条)を経過した場合,それだけで上告を却下されることがあります(弁護士雨のち晴れブログ「民事訴訟・刑事訴訟・家事審判と不服申立-期間、宛先、提出先」)。
(3)ア ①補助参加人の上告申立期間は,被参加人の上告申立期間に限られますし,②被参加人が上告申立をした場合,補助参加人が被参加人のために上告理由書を提出することのできる期間は,被参加人の上告理由書提出期間に限られます(最高裁昭和25年9月8日判決)。
イ 決定・命令の告知前になされた抗告の申立ては不適法であって,その却下前に抗告をした者に不利益な決定・命令が告知されても,瑕疵は治癒されません(最高裁昭和32年9月26日決定)。
(4) 上告理由書提出期間内に上告理由書を提出しなかった場合に原裁判所が決定をもって上告を却下するという取扱いは憲法32条に違反しません(最高裁昭和32年10月10日決定)。
(5)ア 訴訟法において特に定める抗告を除き,高等裁判所の裁判に対して抗告をすることはできません(裁判所法16条2号及び7条2号参照)から,民事訴訟法330条及び非訟事件手続法74条に基づく再抗告は,地方裁判所が抗告審としてした決定だけとなる(民事訴訟における再抗告に関する最高裁昭和42年3月29日決定(判例秘書掲載)参照)ものの,特別抗告及び許可抗告はできます(非訟事件の場合につき非訟事件手続法75条及び77条参照)。
イ 例えば,民訴費用法9条1項に基づく還付決定の場合,地裁又は簡裁の還付決定であれば即時抗告できる(民訴費用法9条9項・非訟事件手続法66条)のに対し,高裁の還付決定であれば特別抗告及び許可抗告だけができることとなります。
(6) 裁判所書記官による訴訟費用額確定処分に対する異議申立ては1週間以内にする必要があります(民事訴訟法71条4項)。
(7) 以下の記事も参照してください。
・ 最高裁判所に係属した許可抗告事件一覧表(平成25年分以降),及び許可抗告事件の実情
・ 最高裁判所裁判部作成の民事・刑事書記官実務必携
・ 最高裁の既済事件一覧表(民事)
・ 最高裁判所調査官
 最高裁判所判例解説
・ 文書提出命令に関する最高裁判例
 最高裁判所大法廷の判決及び決定の一覧


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