性犯罪を犯した裁判官の一覧


目次
1 性犯罪を犯した裁判官の一覧
2 性犯罪を犯したものの,起訴猶予処分となった裁判官
3 身体拘束中の裁判官であっても報酬を受領できること
4 裁判官が在任中に任命欠格事由に該当するに至った場合といえども、その身分を当然には失わないこと
5 関連記事その他

1 性犯罪を犯した裁判官の一覧
(1) 新しい順に並べると以下のとおりです。
⑥ 駅ホームの階段で女性のスカート内の盗撮をした59期の飯島暁法務総合研究所教官
・ 平成28年8月26日に盗撮し,その後に逮捕(東京都迷惑防止条例違反)

・ 平成28年9月15日に罰金50万円の有罪判決(東京都迷惑防止条例違反)
・ 同日に停職3ヶ月の懲戒処分を受けて辞職
・ 復権令(令和元年10月22日政令第131号)に基づき,令和元年10月22日に復権したのかもしれません。

⑤ 法務省の女子トイレ内で盗撮をした46期の近藤裕之法務省大臣官房財産訟務管理官
・ 平成26年3月14日に盗撮(逮捕されず。)

・ 平成26年5月1日に罰金50万円の有罪判決(東京都迷惑防止条例違反)
・ 同日に懲戒免職


④ 電車内で女性のスカート内の盗撮をした新63期の華井俊樹大阪地裁判事補
・ 平成24年8月29日に現行犯逮捕(大阪府迷惑防止条例違反)

・ 平成24年9月10日に罰金50万円の有罪判決(大阪府迷惑防止条例違反)
・ 平成25年4月10日に罷免判決
→ 平成24年11月16日に衆議院が解散され,同年12月16日に第46回衆議院議員総選挙があったため,弾劾裁判の日程が遅れました。

③ 高速バスの車内で痴漢行為をした41期の一木泰造福岡高裁宮崎支部判事
・ 平成21年2月8日に現行犯逮捕(準強制わいせつ罪)

・ 平成21年4月11日に任期終了退官
・ 平成21年7月7日に懲役2年・執行猶予5年の有罪判決(準強制わいせつ罪)

② ストーカー行為をした36期の下山芳晴甲府地家裁都留支部長
・ 平成20年5月21日に逮捕(ストーカー規制法違反)

・ 平成20年8月8日に懲役6月・執行猶予2年の有罪判決(ストーカー規制法違反)
・ 平成20年12月24日に罷免判決
・ 平成28年5月17日に資格回復の裁判(裁判官弾劾法38条1項1号)

① 児童買春をした38期の村木保裕東京高裁刑事部職務代行
・ 平成13年5月19日に緊急逮捕(児童買春・児童ポルノ禁止法違反)

・   平成13年8月27日に懲役2年・執行猶予5年の有罪判決(児童買春・児童ポルノ禁止法違反)
・   平成13年11月28日に罷免判決
(2) 裁判官弾劾裁判所HP「過去の事件と判例」に罷免訴追事件9件及び資格回復裁判請求事件7件が掲載されていますところ,平成時代の裁判官の弾劾裁判3件,及び検事在職中の懲戒免職1件は全部,性犯罪によるものでした


2 性犯罪を犯したものの,起訴猶予処分となった裁判官
 20期の田中正人裁判官は,神戸地裁所長をしていた平成13年8月30日の晩,阪急神戸線の梅田発三宮行き急行電車の車内で,2人がけ座席の右隣に座った同県西宮市の女性の腕や足に自分の腕や足をこすりつけた疑いにより,兵庫県迷惑防止条例違反の疑いで書類送検され,同年9月21日,神戸地検により起訴猶予処分となりました(人民日報 日本版HP「痴漢事件の前神戸地裁所長を起訴猶予「社会的制裁を受けた」」(平成13年9月21日付の記事))。
 その後,最高裁大法廷平成13年10月10日決定により戒告され,平成13年10月24日,裁判官訴追委員会が訴追しないことを決定し,同月26日に依願退官しました。

3 身体拘束中の裁判官であっても報酬を受領できること
・ 参議院議員前川清成君提出弾劾手続き中の裁判官に対する給与支払いに関する質問に対する答弁書(平成21年4月10日付)の本文は以下のとおりです。

一について
  憲法第八十条第二項においては、下級裁判所の裁判官の報酬は、在任中、これを減額することができない旨規定されており、下級裁判所の裁判官の報酬については、当該裁判官が逮捕又は勾留されたことを理由として減額することはできないと解される。
二から五までについて
  現行法上、「裁判官が逮捕、勾留された時点で、当該裁判官の職務を自動的に停止し、それ以降の給与、賞与の支払いも停止する」こと及び「裁判官弾劾裁判所による職務停止決定の後は、当該裁判官に対して給与、賞与の支払いも停止する」ことを定めた規定はない。また、現時点において、右の各点について、裁判官弾劾法(昭和二十二年法律第百三十七号)又は裁判官の報酬等に関する法律(昭和二十三年法律第七十五号)の改正を検討する予定はない。

4 裁判官が在任中に任命欠格事由に該当するに至った場合といえども、その身分を当然には失わないこと
・ 裁判官弾劾裁判所の平成20年12月24日判決は,「在任中任命欠格事由に該当するに至った裁判官の身分」について以下の判示をしています。
関係各証拠によれば、被訴追者は、当裁判所が前記第1の2で認定した事実とほぼ同一の事実につき、平成20年8月8日、甲府地方裁判所において、いわゆるストーカー規制法遠反の罪により、懲役6月、執行猶予2年の有罪判決を宣告され、同判決は同月12日に確定したことが明らかである。
 ところで、裁判所法第46条は、「禁錮以上の刑に処せられた者」は裁判官に任命することができない旨規定しており、被訴追者は、これに該当するに至っている。このように、裁判官が在任中に任命欠格事由に該当するに至った場合、その身分を当然に失うとする見解もある。
 しかし、日本国憲法第78条は、「裁判官は、裁判により、心身の故障のために職務を執ることができないと決定された場合を除いては、公の弾劾によらなければ罷免されない」旨規定し、司法権の独立を保障するため、その担い手である裁判官の身分を厚く保障している。そして、国家公務員法第76条には、国家公務員一般職が在職中に任命欠格事由に該当するに至ったときは当然失職する旨の規定があるが、同特別職である裁判官には同条の適用はなく、裁判所法等にも、これに相当する規定はない。また、裁判官弾劾法第12条は、刑事事件の判決が確定した後でも弾劾裁判を行い得る旨規定している。

 これらによれば、この点に関する当裁判所平成13年(訴)第1号罷免訴追事件同年11月28日判決が説示するとおり、裁判官が在任中に任命欠格事由に該当するに至った場合といえども、その身分を当然には失わないものと解するのが相当である。

5 関連記事その他
(1) 汚れた法衣-ドキュメント司法記者88頁には以下の記載があります。
 私は現役の記者時代に幾度か新聞が裁判所に頼まれて報道を取りやめ、汚職、非行を働いた”大魚”が辞職により法網を切って追求をのがれ、弾劾にかけられるのは”雑魚”ばかりなのを実際に体験した。そこでその度に、確証があっても活字にできない自分の非力に、歯ぎしりをする思いだった。
(2) security-joho.com「気のついた事件-2002年3月」に以下の記載があります。
2002/03/28  - 最高裁事務官、スカートの中をデジカメ盗撮。
最高裁総務局の主任事務官の男性が都迷惑防止条例違反の現行犯で逮捕された。 主任事務官は中野区のゲームセンターで女子中学生のスカートの中を ショルダーバッグに入れたデジタルカメラで撮影したところを見つかり取り押さえられた。
-読売新聞
(3)  おもしろニュース拾遺「仕事中にせっせと猥褻メール:熊本判事」(2005年11月21日付)に以下の記載があります。
    熊本地裁(大坪丘所長)は二十一日、同地・家裁人吉支部長の男性判事(42)が勤務中、出会い系サイトで知り合った女性にみだらな内容の携帯電話メールを送信したことなどを理由に辞表を提出していたことを明らかにした。判事は昨年十一月から先月まで勤務中、出会い系サイトで知り合った女性とメールを交換。みだらな内容の文章のほか、下着姿や法服姿の写真を送信した。同判事は平日のほぼ毎日、執務室で一日一~十回メールをやりとりしていた。
(4) 「インターネット削除請求・発信者情報開示請求の実務と書式」78頁及び79頁には,検索結果(起訴猶予・略式請求)の削除請求に関して以下の記載があります。
    最終的に起訴猶予・略式手続となった事件では,事件から15年以上経過していても,前掲最三小決(山中注:最高裁平成29年1月31日決定のこと。)以降,裁判所は検索結果の削除決定を発令しなくなりました。判断内容はほぼ最三小決と同じで,「今なお公共の利害に関する事項である」としている印象です。
(5) 以下の記事も参照してください。
・ 法務省出向中の裁判官に不祥事があった場合の取扱い
・ 昭和27年4月発覚の刑事裁判官の収賄事件(弾劾裁判は実施されず,在宅事件として執行猶予付きの判決が下り,元裁判官は執行猶予期間満了直後に弁護士登録をした。)
・ 報道されずに幕引きされた高松高裁長官(昭和42年4月28日依願退官,昭和46年9月5日勲二等旭日重光章)の,暴力金融業者からの金品受領
・ 新63期の華井俊樹裁判官に対する平成25年4月10日付の罷免判決
・ 42期の山崎秀尚岐阜地家裁判事に対する懲戒処分(戒告)


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