目次
1 司法修習生に関する規則第3条の「秘密」の具体的内容が書いてある文書
2 国家公務員の守秘義務に関する最高裁判例
3 関連記事その他
1 司法修習生に関する規則第3条の「秘密」の具体的内容が書いてある文書
(1) 最高裁判所は,司法修習生に関する規則第3条の「秘密」の具体的内容が書いてある文書(最新版)は,「修習生活へのオリエンテーション」(平成30年11月)の「◇守秘義務」であると考えていますところ,その内容は以下のとおりです。
◇守秘義務
司法修習生は,修習に当たって知り得た秘密を漏らしてはいけません(司法修習生に関する規則3条) 。
司法修習生は,個人のプライバシーに深く関わる具体的な事件等を素材として,法律実務を学ぶことから,裁判官,検察官及び弁護士が守秘義務を負うのと同様に,当然に秘密を守らなければなりません。
特に,実務修習においては,実務修習地の裁判所,検察庁及び弁護士会でそれぞれ実際に具体的な事件を素材として修習しますから, 当該事件等に関する秘密の保持には十分注意する必要があります。そのため, 司法修習生ではない一般の人はもちろんのこと,たとえ他の司法修習生と話す場合(メーリングリスト, SNS等への投稿なども含む。)であっても, 自分の話そうとすることが守秘義務に反するものでないかを常に意識する必要があります。特に,一般の人に聞かれるような場所(例えば,エレベータや電車やバスの中など)で,事件関係のことを不用意に話すことがないように十分に注意しなければなりません。
また,修習について外部に表現(雑誌投稿やウェブサイト,ブログヘの掲載等)する場合は,具体的な事件等に関する秘密の保持を十全なものとすべきことはもとより,司法研修所教官や配属庁会の指導担当者が,実務の実際を修習するという教育上の配慮から,公にすることを前提としないで司法修習生に対して各種の指導をすることも多くあることも踏まえ,守秘義務に反するものでないかを十分に確認するとともに,前記の配慮を無にすることのないよう,表現には十分に注意を払ってください。
(2) 平成31年4月16日付の理由説明書の「(3) 最高裁判所の考え方及びその理由」には以下の記載があります。
ア 「司法修習生に関する規則第3条の「秘密」の具体的内容が書いてある文書(最新版) 」については, 「司法修習生に関する規則第3条に定められた守秘義務の前提となる「秘密」の具体的内容が記載された文書(最新版) 」と整理した。
イ 司法修習生に関する規則第3条は,裁判官,検察官及び弁護士が守秘義務を負うのと同様に,司法修習生にもこれを定めたものであるが,本件対象文書における本件開示部分以外に同条の「秘密」の具体的内容を記載した文書を保有する必要性はない。
ウ よって,本件対象文書を対象文書として特定し,それ以外に本件開示申出文書が存在しないものとした原判断は相当である。
NDAは大事だが、自社の秘密情報を守りたいなら、その情報を外部に出さないことが一番。そもそもNDAを締結してまでその情報を出す必要があるのか、いま一度、技術部門にはよく考えていただきたい。
— はれもの (@UnknownIPLawyer) July 2, 2022
2 国家公務員の守秘義務に関する最高裁判例
(1) 最高裁昭和52年12月19日決定は,以下のとおり判示しています。
国家公務員法一〇〇条一項の文言及び趣旨を考慮すると、同条項にいう「秘密」であるためには、国家機関が単にある事項につき形式的に秘扱の指定をしただけでは足りず、右「秘密」とは、非公知の事項であつて、実質的にもそれを秘密として保護するに価すると認められるものをいうと解すべきところ、原判決の認定事実によれば、本件「営業庶業等所得標準率表」及び「所得業種目別効率表」は、いずれも本件当時いまだ一般に了知されてはおらず、これを公表すると、青色申告を中心とする申告納税制度の健全な発展を阻害し、脱税を誘発するおそれがあるなど税務行政上弊害が生ずるので一般から秘匿されるべきものであるというのであつて、これらが同条項にいわゆる「秘密」にあたるとした原判決の判断は正当である。
(2) 外務省機密電文漏洩事件に関する最高裁昭和53年5月31日決定は,以下のとおり判示しています。
国家公務員法一〇九条一二号、一〇〇条一項にいう秘密とは、非公知の事実であつて、実質的にもそれを秘密として保護するに値すると認められるものをいい(最高裁昭和四八年(あ)第二七一六号同五二年一二月一九日第二小法廷決定)、その判定は司法判断に服するものである。
間接証拠しかない事件の場合、捜査機関は守秘義務そっちのけで情報をリークする。多分担当官ではなく偉い人が。
メディアはそれを垂れ流す。無自覚ではなく、自覚的に捜査官のリークに乗る。— 弁護士 中村憲昭 (@nakanori930) April 30, 2021
3 関連記事その他
(1)ア 前田恒彦 元検事によれば,捜査当局は捜査情報をマスコミにリークすることがあるみたいです。
① なぜ捜査当局は極秘の捜査情報をマスコミにリークするのか(1)
② なぜ捜査当局は極秘の捜査情報をマスコミにリークするのか(2)
③ なぜ捜査当局は極秘の捜査情報をマスコミにリークするのか(3)
イ ちなみに,ライブドア事件に関して,平成18年1月16日午後4時過ぎ,ライブドアに捜索に入ったとNHKテレビニュースで報道されたものの,ライブドアが入居していた六本木ヒルズに東京地検特捜部の捜査官が到着したのは同日午後6時半過ぎでした(Cnet.Japanの「ライブドアショックの舞台裏とその余震」(2006年1月26日付)参照)。
(2) 表現の自由を規制する法律の規定について限定解釈をすることが許されるのは,その解釈により,規制の対象となるものとそうでないものとが明確に区別され,かつ,合憲的に規制しうるもののみが規制の対象となることが明らかにされる場合でなければならず、また,一般国民の理解において,具体的場合に当該表現物が規制の対象となるかどうかの判断を可能ならしめるような基準をその規定から読みとることができるものでなければなりません(最高裁大法廷昭和59年12月12日判決。なお,先例として,最高裁大法廷昭和50年9月10日判決参照)。
(3) 以下の記事も参照して下さい。
・ 司法修習生の守秘義務違反が問題となった事例
・ 「品位を辱める行状」があったことを理由とする司法修習生の罷免事例及び再採用
・ 秘匿情報の管理に関する裁判所の文書
・ 司法修習生の罷免理由等は不開示情報であること
・ 司法修習生の逮捕及び実名報道
以下の事項を理由に司法修習生が戒告処分を受けた事例に関する文書の存否は不開示情報です。
・ 交通事故
・ セクシュアル・ハラスメント
・ 無許可の兼職・兼業
・ 入寮許可願への虚偽の記載 pic.twitter.com/bgEVfy61Ef— 弁護士 山中理司 (@yamanaka_osaka) May 15, 2022
R050217 東京地裁の不開示通知書(東京地裁が無断で法律雑誌社等に民事事件の裁判書を提供することを差し止めるために事件当事者が取ることができる方法が書いてある文書)を添付しています。 pic.twitter.com/HIYkjzcDkH
— 弁護士 山中理司 (@yamanaka_osaka) February 20, 2023