仮釈放

Pocket

1 総論
(1) 仮釈放等とは,地方更生保護委員会の決定(更生保護法16条)によって,収容期間が満了する前に被収容者を一定の条件を付して仮に釈放することをいい,以下の4種類があります(社会内処遇規則9条参照)。
① 懲役又は禁錮に受刑者に対する仮釈放(刑法28条)
→ かつては「仮出獄」といわれていました。
② 拘留受刑者又は労役場留置者に対する仮出場(刑法30条)
③ 少年院収容者の仮退院(少年院法12条2項)
④ 婦人補導院収容者の仮退院(売春防止法25条1項)
(2) ①刑の時効期間の満了,及び②仮釈放の残刑期間の満了は,どちらも刑罰執行権を消滅させる点で共通しています。
(3) 仮釈放は懲役受刑者及び禁錮受刑者が対象であるのに対し,仮出場は拘留受刑者及び労役場留置者が対象です。
(4) 無期刑受刑者に対する仮釈放制度の改善を求める日弁連意見書(2010年12月17日付)16頁に書いてあるとおり,仮釈放を許さない処分は決定をもってなされるわけではない(更生保護法39条1項)ため,審査請求をすることはできません(更生保護法92条参照)。

(5) 仮釈放を許された者は,仮釈放の期間中,3号保護観察に付されます(更生保護法40条及び48条3号)。

2 仮釈放の手続
(1) 仮釈放の手続は以下のとおりであり,詳細については,平成20年6月1日施行の,犯罪をした者及び非行のある少年に対する社会内における処遇に関する規則(平成20年4月23日法務省令第28号)(略称は「社会内処遇規則」です。)で定められています。
① 法定期間経過の通告
   刑事施設の長又は少年院の長は,懲役又は禁錮の刑の執行のため収容している者について,(a)刑法28条所定の期間(有期の懲役刑又は禁固刑の場合は刑期の3分の1であり,無期刑の場合は10年),又は(b)少年法58条1項所定の期間(無期刑の場合は7年であり,有期刑の場合は3年であり,不定期刑の場合は刑の短期の3分の1)が経過したときは,その旨を地方更生保護委員会に通告しなければなりません(更生保護法33条)。
② 審理の開始
   地方更生保護委員会は,(a)刑事施設の長若しくは少年院の長からの申出又は(b)自らの判断に基づいて審理を開始します(更生保護法34条,35条)。
③ 仮釈放の審理
   地方更生保護委員会の委員が直接,受刑者である審理対象者と面接をするほか(更生保護法37条1項),必要に応じて被害者やその遺族,検察官等にも意見を聞くなどします(更生保護法37条及び38条)。
④ 仮釈放の決定
   地方更生保護委員会は,3人の委員をもって構成する合議体の決定(更生保護法23条1項1号)をもって,仮釈放を許す処分をします(更生保護法39条)。
(2)ア 仮釈放を許す処分は,懲役又は禁錮の刑の執行のため刑事施設又は少年院に収容されている者について,①悔悟の情及び改善更生の意欲があり,②再び犯罪をするおそれがなく,かつ,③保護観察に付することが改善更生のために相当であると認められるほか,④社会の感情がこれを是認すると認められるときになされます(社会内処遇規則28条)。
イ 刑事施設の長は,社会内処遇規則28条に定める基準に該当すると認める場合,地方更生保護委員会に対し,仮釈放を許すべき旨の申出(更生保護法34条1項)をするものとされています(社会内処遇規則12条1項)。
ウ 「犯罪予備軍のための刑務所マニュアル」ブログの「刑務所には当たり・ハズレがある?②」には,初犯の場合,刑期の70%で仮釈放をもらう人はまずいないのであって,刑期の75%から85%ぐらい勤めた時点で仮釈放をもらえると書いてあります。
(3) 地方更生保護委員会は,仮釈放を許すか否かに関する審理を行うに当たり,被害者等から,審理対象者の仮釈放に関する意見及び被害に関する心情(=意見等)を述べたい旨の申出があったときは,当該意見等を聴取するものとされています(意見等聴取制度)(更生保護法38条)。
(4) 法務省HPの「第1回更生保護の犯罪被害者等施策の在り方を考える検討会(令和元年5月16日)」「配布資料2 更生保護の被害者等施策の概要」に,①被害者等通知制度,②意見等聴取制度及び③心情等伝達制度に関する詳しい説明が書いてあります。

3 無期刑の仮釈放

(1) 無期刑とは,刑期が終身にわたるもの,すなわち,受刑者が死亡するまでその刑を科するというものです。
   つまり,仮釈放が許されなければ,死亡するまで刑務所等の刑事施設で刑の執行を受けるものであり,仮釈放が許されたとしても,一生保護観察に付されるものです。
   そのため,結局,無期刑を言い渡された者については,刑の執行の免除(恩赦の一種です。)を受けない限り,生涯にわたり国の監督下に置かれることになります。

(2) 法務省保護局HPの「無期刑受刑者の仮釈放の運用状況等について」に,直近10年分の,無期刑の執行や無期刑受刑者に係る仮釈放審理の状況が書いてあります。
(3) その余の詳細については,「恩赦の件数,無期刑仮釈放者及び復権」を参照してください。

4 再審請求中の仮釈放及び刑の執行停止
(1) 再審請求中の仮釈放
ア 再審請求中に仮釈放が認められた事例としては以下のものがあります。
① 昭和44年11月14日の仮釈放
・ 受刑者は,昭和27年1月21日発生の白鳥事件(警察官射殺事件)について懲役20年の判決を受けていました。
・ 白鳥事件に関する最高裁昭和50年5月20日決定は,「刑訴法四三五条六号にいう「無罪を言い渡すべき明らかな証拠」であるかどうかの判断に際しても、再審開始のためには確定判決における事実認定につき合理的な疑いを生ぜしめれば足りるという意味において、「疑わしいときは被告人の利益に」という刑事裁判における鉄則が適用される。」と判示したものの,再審は認めませんでした。
② 昭和52年6月17日の仮釈放
・ 受刑者は,昭和30年5月11日の晩から翌朝に発生した丸正事件(強盗殺人事件)について無期懲役の判決を受けていました。
③ 平成6年12月21日の仮釈放
・ 受刑者は,昭和38年5月1日の狭山事件(孝行1年生の少女を被害者とする強盗強姦殺人事件)について無期懲役判決を受けていました。
・ 弁護人が被害者親族3人が真犯人であるとして殺人罪で東京地検に告発したものの,正当な弁護活動を逸脱したということで,名誉毀損罪により禁錮6月執行猶予1年の有罪判決を言い渡されました。
イ 無期刑受刑者に対する仮釈放制度の改善を求める日弁連意見書(平成22年12月17日付)5頁及び6頁には,前述した三つのケースはいずれも強力な外部の支援運動が存在し,その結果勝ち取られた例外的なケースであり,かつ,近年のように仮釈放運用が消極化する以前の事例であって,現状では,無実を訴える無期受刑者の仮釈放は極めて困難なものになっていると書いてあります。
(2) 再審請求中の刑の執行停止
ア 昭和37年10月頃発生の江津事件(強盗殺人事件)の場合,無期懲役判決を受けた受刑者は,昭和62年2月3日,高齢と病気のため生命の危機にあるということで刑の執行停止の措置が取られ,病院に入院するために釈放されました。
イ この事例では,昭和53年5月,当時の北尻得五郎会長が後氏在監中の広島刑務所呉支所を,さらに同59年3月には当時の甲斐緯副会長が同じく広島刑務所を訪ね,また,それぞれ中国地方更生保護委員会をも訪問しました(日弁連HPの「江津事件・後房市氏釈放にあたって」(昭和62年2月3日付)参照)。

5 関係する法令及び訓令・通達
(1) 関係する法令
① 更生保護法
② 更生保護法施行令
③ 犯罪をした者及び非行のある少年に対する社会内における処遇に関する規則(略称は「社会内処遇規則」です。)
(2) 関係する訓令・通達
① 犯罪をした者及び非行のある少年に対する社会内における処遇に関する事務規程(平成20年4月23日付の法務大臣訓令)1/32/3及び3/3
② 犯罪をした者及び非行のある少年に対する社会内における処遇に関する事務の運用について(平成20年5月9日付の法務省矯正局長及び保護局長の依命通達)1/32/3及び3/3

6 関連記事
以下の記事も参照してください。
① 仮釈放に関する公式の許可基準
② 恩赦の件数,無期刑仮釈放者及び復権
③ 戦後の政令恩赦及び特別基準恩赦
④ 死刑囚及び無期刑の受刑者に対する恩赦による減刑