仮釈放は,拘禁刑の刑期が満了する前に,受刑者を保護観察の下で社会内処遇へ移行させる制度である。本記事では,法律上仮釈放が可能となる時期,地方更生保護委員会の審理,許可基準,被害者等の関与,仮釈放後の法律関係,令和7年の最新統計及び無期刑の運用を整理する。
第1 仮釈放の意味と対象
1 刑の執行形態を施設内処遇から社会内処遇へ移す制度
仮釈放は,拘禁刑に処せられた者について,地方更生保護委員会の決定により,刑期満了前に仮に釈放する制度である。仮釈放によって刑そのものが消滅するわけではなく,仮釈放の期間中は保護観察に付されるため,刑の執行形態が施設内処遇から社会内処遇へ移るものと理解すべきである。
拘留受刑者又は労役場留置者の「仮出場」及び少年院収容者の「仮退院」は,仮釈放とは根拠条文及び対象者が異なる制度である。本記事は,刑法28条の仮釈放を対象とする。
2 拘禁刑と旧懲役・旧禁錮
令和7年6月1日に拘禁刑が施行され,刑法28条及び更生保護法の用語も「懲役又は禁錮」から「拘禁刑」に改められた。もっとも,同日前の行為に対する刑の適用等には経過措置があるため,旧懲役・旧禁錮の受刑者も存在し,過去の統計及び裁判例では旧刑名が用いられている。
第2 仮釈放が法律上可能となる時期
1 成人の有期刑は刑期の3分の1,無期刑は10年
刑法28条は,改悛の状がある拘禁刑受刑者について,有期刑では刑期の3分の1,無期刑では10年を経過した後,行政官庁の処分により仮釈放をすることができると定めている。ここでいう行政官庁は地方更生保護委員会である。
これらは仮釈放の法律上の最短期間にすぎず,期間の経過によって審理開始又は仮釈放が保証されるわけではない。法律上の資格発生時期,法務省の審理運用及び実際の釈放時期は区別する必要がある(太田達也『仮釈放の理論―矯正・保護の連携と再犯防止』65頁~69頁)。
2 少年法58条の特則
少年法58条は,少年のとき拘禁刑の言渡しを受けた者について,①無期拘禁刑は7年,②少年法51条2項により言い渡された有期拘禁刑は刑期の3分の1,③少年法52条1項又は同条1項及び2項により言い渡された拘禁刑は短期の3分の1を経過した後に仮釈放をすることができると定めている。
ただし,犯行時18歳未満の者について死刑を無期拘禁刑に緩和した場合には7年の特則は適用されず,また,特定少年のとき刑の言渡しを受けた者には少年法58条及び59条が適用されない(少年法58条2項,67条5項)。したがって,「少年は一律に7年で仮釈放が可能である」と整理することはできない。
第3 審理の開始から決定まで
1 法定期間経過の通告と審理開始
刑事施設の長又は少年院の長は,刑法28条又は少年法58条1項の期間が経過したとき,地方更生保護委員会に通告しなければならない(更生保護法33条)。さらに,法務省令の基準に該当すると認めるときは仮釈放を許すべき旨を申し出なければならず,地方更生保護委員会は,その申出がなくても必要と認めるときは職権で審理を開始できる(同法34条,35条)。
仮釈放の許否は,地方更生保護委員会の3人の委員で構成する合議体が判断する。したがって,刑事施設の長による申出は重要な開始経路であるが,許可そのものを決定するものではない。
2 調査,面接及び生活環境の調整
地方更生保護委員会は,犯罪の内容,矯正処遇の経過,被害者等の状況,心身の状況,帰住予定地,引受人等の状況及び釈放後の生活計画等の情報を基礎として審理する。刑事施設の長は,これらの身上関係事項とその変動を通知しなければならない(社会内処遇規則7条)。
仮釈放の審理では,原則として地方更生保護委員会の委員が審理対象者と面接する。ただし,重い疾病若しくは傷害により面接が困難な場合又は法務省令所定の場合で面接の必要がないと認められるときは例外がある。また,必要に応じ,保護観察所に釈放後の住居その他の生活環境の調整を求めることができる(更生保護法37条)。
3 受刑者本人の申請権及び不許可に対する審査請求
更生保護法は,刑事施設の長の申出又は地方更生保護委員会の職権を審理開始の経路としており,受刑者本人による法定の仮釈放申請権又は仮釈放請求権を設けていない。受刑者が希望や事情を申告することと,法律上の申請権があることとは別である。
また,更生保護法39条は仮釈放を「許す処分」を地方更生保護委員会の決定で行うと定め,更生保護法92条の審査請求は地方更生保護委員会が決定をもってした処分を対象とする。仮釈放を許さない判断は同法39条の決定による処分ではないため,通常の制度上,これを対象とする審査請求はできない。
第4 仮釈放の許可基準
1 社会内処遇規則28条
社会内処遇規則28条本文は,①悔悟の情及び改善更生の意欲があること,②再び犯罪をするおそれがないこと,③保護観察に付することが改善更生のために相当であることを仮釈放の積極要件としている。その上で,同条ただし書は,社会の感情が仮釈放を是認すると認められないときは許可しないという構造を採っている。
したがって,「社会の感情が是認すること」を他の3要件と同列の積極要件として条文が規定しているわけではない。もっとも,許否の結論としては,本文の要件を満たし,かつ,ただし書に該当しないことが必要である。
2 個別事情の総合判断
悔悟の情及び改善更生の意欲は,面接時の発言だけで判断されるものではない。犯罪による被害についての認識,被害回復又は軽減のために取った行動,矯正処遇への取組み,施設内での生活状況及び釈放後の生活計画等の客観的事情も審理資料となる。
また,再犯のおそれ及び社会内処遇の相当性については,犯罪の性質・動機・態様,年齢・経歴・心身の状況,矯正処遇の経過と効果,帰住先・引受人・就労等の生活環境及び予定される保護観察の内容等が相互に関連する。特定の一事情だけから許可時期を予測したり,「模範囚であれば許可される」などと一般化したりすることはできない。
第5 被害者等の意見及び通知制度
地方更生保護委員会は,仮釈放審理に当たり,被害者等から申出があったときは,仮釈放,仮釈放中の保護観察及び生活環境の調整に関する意見並びに被害に関する心情を聴取する。ただし,事件の性質,審理の状況その他の事情から相当でないと認める場合には例外がある(更生保護法38条)。
聴取された意見等は重要な審理資料であるが,被害者等に許否を決定する権限又は拒否権を与える制度ではない。また,被害者等通知制度は,申出により仮釈放審理の開始,審理結果等を通知する制度であり,意見等聴取制度とは目的及び手続が異なる。
第6 仮釈放後の保護観察及び取消し
仮釈放を許された者は,仮釈放の期間中,保護観察に付される(更生保護法40条,48条3号)。保護観察では一般遵守事項を守らなければならず,個別に特別遵守事項が定められることもある(同法50条~52条)。
仮釈放中に更に罪を犯して罰金以上の刑に処せられたとき,仮釈放前の他罪について一定の刑の執行を受けるとき又は遵守事項に違反したとき等には,仮釈放を取り消すことができる。取り消された場合,釈放中の日数は刑期に算入されない(刑法29条)。
有期刑では,仮釈放が取り消されないまま残刑期間が満了すれば刑の執行が終わる。成人の無期刑には満了する刑期がないため,刑の執行の免除等がない限り保護観察が続くが,少年のとき無期拘禁刑の言渡しを受けた者には,仮釈放後10年を経過すると刑の執行を受け終わったものとする特則がある(少年法59条1項。ただし,特定少年には同条を適用しない。)。
第7 令和7年の仮釈放統計
1 審理開始人員,許可人員及び不許可側の割合
令和7年保護統計年報によれば,令和7年中の仮釈放審理開始人員は9694人,審理終結人員は9823人,許可人員は9037人である。開始人員と終結人員は年内に開始又は終結した件数であり,同一の母集団ではない。
| 審理の終結区分 | 人員 |
|---|---|
| 許可 | 9037人 |
| 許可しない・取下げなし | 392人 |
| 許可しない・取下げあり | 373人 |
| 移送 | 17人 |
| その他 | 4人 |
許可9037人と「許可しない・取下げなし」392人の合計を分母にすると,不許可側の割合は約4.2%である。ただし,これは審理結果の一部区分から計算した割合であり,出所者全体に占める仮釈放者の割合でも,個別事件の不許可確率でもない。
2 有期刑仮釈放許可人員の刑執行率
令和7年の有期刑仮釈放許可人員は9032人であり,刑執行率別の内訳は次のとおりである。
| 刑執行率 | 人員 | 構成比 |
|---|---|---|
| 70%未満 | 58人 | 約0.6% |
| 70%以上80%未満 | 1522人 | 約16.9% |
| 80%以上90%未満 | 4145人 | 約45.9% |
| 90%以上 | 3307人 | 約36.6% |
80%以上を執行してから仮釈放となった者が約82.5%を占める一方,70%未満も58人いる。したがって,統計分布を「刑期の何割で仮釈放される」という個別事件の予測式として用いることはできない。
3 無期刑の仮釈放許可人員
令和7年の無期刑仮釈放許可人員は5人であり,このうち新たな無期刑についての許可は4人,過去の仮釈放取消し後の刑についての許可は1人である。新たな無期刑について許可された4人はいずれも受刑在所期間20年超であった。
取消し後の刑について許可された1人の原表上の在所期間は8年以内であるが,原表注記によれば,取消し後に刑を執行した期間だけを数えたものである。これを無期刑受刑者が当初の収容から10年未満で仮釈放された例と解することはできない。
第8 無期刑受刑者の仮釈放の運用
1 法律上の10年と30年経過時の審理運用
無期刑は,仮釈放又は刑の執行の免除等がなければ死亡するまで刑事施設で執行される刑である。刑法28条の10年は仮釈放が法律上可能となる最短期間であり,10年経過時の審理開始又は釈放を意味しない。
法務省の無期刑受刑者の仮釈放の運用状況等についてによれば,刑の執行開始から30年が経過した無期刑受刑者については,原則として1年以内に仮釈放審理を開始する運用がある。この30年は運用上の審理開始時期であって,刑法28条の法定期間を30年に変更するものでも,30年で仮釈放を許可するものでもない。
2 法務省令和8年1月資料
法務省の令和8年1月資料によれば,令和6年末の無期刑受刑者は1650人であり,令和6年の新たな仮釈放者は1人,その受刑在所期間は38年1月で,同年中の死亡者は32人であった。
平成27年から令和6年までの10年間では,無期刑仮釈放者は取消し後の再度の仮釈放を含め延べ96人であり,そのうち新たな無期刑についての仮釈放者は72人,同期間の死亡者は285人であった。また,同資料が集計した仮釈放審理412件の結果は,許可79件,許可しない332件,その他1件である。これらは過去の運用実績であって,将来の個別判断を保証する数値ではない。
第9 仮釈放審理の適正手続に関する裁判例
東京地方裁判所令和7年3月24日判決(令和2年(ワ)第4600号・国家賠償請求事件)は,受刑者本人に仮釈放申請権又は仮釈放請求権はなく,仮釈放自体への期待も法律上保護に値しないとした。他方で,仮釈放審理において適正手続を受ける権利,すなわち適正手続への期待権は法律上保護に値すると判断した(判決書47頁~49頁)。
同判決は,刑務所長が,受刑者にがんの可能性が高い肝内腫瘤が見つかったという心身の状況の重大な変動を地方更生保護委員会に通知しなかったことを違法とし,この期待権侵害について慰謝料30万円及び弁護士費用3万円の損害を認めた。これは仮釈放を受ける権利を認めた判決ではなく,法令に従った適切な情報提供の下で審理を受ける利益を保護した判決である。なお,裁判所HP掲載資料からは,同判決の確定の有無を確認できない。
第10 関連記事
① 保護観察制度
② 常時恩赦等の件数及び無期刑受刑者の仮釈放(AIリライト)
③ マル特無期事件―最高検通達,仮釈放及び最新統計(AIリライト)
第11 出典・参考資料
1 法令
④ 犯罪をした者及び非行のある少年に対する社会内における処遇に関する規則(e-Gov法令検索)
2 法務省資料及び統計
⑤ 法務省「無期刑の執行状況及び無期刑受刑者に係る仮釈放の運用状況について」(令和8年1月)
3 裁判例
① 東京地方裁判所令和7年3月24日判決・令和2年(ワ)第4600号(裁判所HP)45頁~50頁
4 書籍
① 太田達也『仮釈放の理論―矯正・保護の連携と再犯防止』(慶應義塾大学出版会,2017年)65頁~69頁,86頁