行政機関等への出向裁判官

目次
1 最高裁判所作成の資料(出向裁判官及び人事交流)
2 役所HP等の記載
3 最高裁判所に存在しない文書
4 衆議院法務委員会の付帯決議
5 平成13年の中央省庁再編によって総務省が誕生した理由
6 消極的権限争い
7 関連記事その他

* 「判検交流に関する内閣答弁書の記載及び国会答弁」も参照してください。

1 最高裁判所作成の資料(出向裁判官及び人事交流)
(1)   最高裁判所が作成した,「行政機関等への出向裁判官数(機関別)」(平成28年まで)→「行政省庁等に勤務する者のうち,裁判官出身者の官職一覧表」(平成29年以降)を以下のとおり掲載しています。
・ 令和 6年12月1日時点のもの
・ 令和 5年12月1日時点のもの
・ 令和 4年12月1日時点のもの
・ 令和 3年12月1日時点のもの
・ 令和 2年12月1日時点のもの
・ 令和 元年12月1日時点のもの
・ 平成30年12月1日時点のもの
・ 平成29年12月1日時点のもの
・ 平成28年12月1日時点のもの
・ 平成27年12月1日時点のもの
・ 平成26年12月1日時点のもの
* 「行政省庁等に勤務する者のうち,裁判官出身者の官職一覧表(令和5年12月1日現在)」といったファイル名です。
(2) 裁判官と検察官の人事交流の数字を記載した資料を以下の通り掲載しています。
平成20年分から平成29年分平成23年度から令和2年度まで
平成25年度から令和4年度まで
平成26年度から令和5年度まで

平成27年度から令和6年度まで


2 役所HP等の記載
(1) 法務省幹部の氏名については,法務省HPの「法務省幹部一覧」に掲載されています。
(2) 金融庁幹部の氏名については,金融庁HPの「人事異動」に掲載されています。
(3) 平成15年6月9日開催の下級裁判所裁判官指名諮問委員会(第1回)には,平成15年4月15日現在の出向先別人数一覧表が載っています。
   これによれば,内閣が19人,総務省が2人,法務省が105人,外務省が10人,財務省が1人,厚生労働省が1人,農林水産省が1人,経済産業省が2人,国土交通省が3人,金融庁が2人,公正取引委員会が5人,公害等調整委員会が1人,国税不服審判所が1人,裁判官弾劾裁判所が4人,裁判官訴追委員会が1人,預金保険機構が1人,JICA派遣(ベトナム)が1人であり,合計160人です。
(4) 司法試験・法科大学院(ロースクール)情報HP「裁判官の国会職員への出向について」によれば,平成25年3月当時,衆議院法制局に2人,裁判官訴追委員会に1人,出向している裁判官がいます。
(5) 法務省設置法(平成11年7月16日法律第93号)付則3項(職員の特例)は,「当分の間、特に必要があるときは、法務省の職員(検察庁の職員を除く。)のうち、百三十三人は、検事をもってこれに充てることができる。」と定めています。
(6)ア 内閣官房への出向については,2012年1月30日発行の「特技懇」誌第264号「内閣官房副長官補室に出向して」が参考になります。
イ 「特技懇」誌は,特許庁技術懇話会が年数回発行する会報であり,昭和25年10月1日に第1号が発刊されました(2010年11月24日発行の「特技懇」誌第259号「「特技懇」誌,60年を振り返る」参照)。
(7) 令和元年7月5日開催の下級裁判所裁判官指名諮問委員会(第89回)議事要旨3頁には以下の記載がありますから,出向先から復帰するたびに再任審査を受けていると思います。
・  令和元年7月期及び8月期の出向からの復帰候補者について
 裁判官から出向している指名候補者3人について,候補者の略歴,出向先から得た候補者の執務状況等に基づき,裁判官に任命されるべき者として指名することの適否について審議され,審議の結果,いずれの者についても指名することが適当であると最高裁判所に答申することとされた。


3 最高裁判所に存在しない文書
(1) 平成29年9月26日付の司法行政文書不開示通知書によれば,以下の文書は存在しません。
① 最高裁判所と法務省民事局との間で実施された会合に関する文書(直近の分)
② 最高裁判所と法務省刑事局との間で実施された会合に関する文書(直近の分)
③ 最高裁判所と法務省訟務局との間で実施された会合に関する文書(直近の分)
(2) 平成29年10月23日付の最高裁判所事務総長の理由説明書によれば,平成29年8月3日時点で,最高裁判所と法務省民事局,法務省刑事局又は法務省訟務局との間の二者間で開かれる会議,協議会等は存在しません。


4 衆議院法務委員会の付帯決議
・ 平成29年3月31日の衆議院法務委員会の付帯決議は以下のとおりです。

裁判所職員定員法の一部を改正する法律案に対する附帯決議

    政府及び最高裁判所は、本法の施行に当たり、次の事項について格段の配慮をすべきである。
一 民事訴訟事件の内容の複雑困難化及び専門化について、その実情を把握し、必要な対応を行うとともに、訴訟手続の審理期間及び合議率の目標を達成するため、審理の運用手法、制度の改善等を検討し、その上で、目標達成に必要な範囲で裁判官の定員管理を行うこと。
二 裁判所職員定員法の改正を行う場合には、引き続き、判事補から判事に任命されることが見込まれる者の概数と判事の欠員見込みの概数を明らかにすること。
三 平成二十五年三月二十六日の当委員会の附帯決議等を踏まえ、最高裁判所において、引き続き、判事補の定員の充足に努めるとともに、判事補の定員の在り方について、その削減等も含め検討していくこと。
四 技能労務職員の定員削減に当たっては、業務の円滑、適切な運営に配慮しつつ、業務の外部委託等の代替措置の状況を踏まえて適切に行うこと。
五 複雑・多様化している令状事件については、引き続き、実態を把握し、適切な処理が図れるよう体制整備に努めること。
六 司法制度に対する信頼確保のため、訟務分野において国の指定代理人として活動する裁判官出身の検事の数の縮小に関する政府答弁を引き続き遵守すること。

5 平成13年の中央省庁再編によって総務省が誕生した理由
・ 平成27年度3年目フォローアップ研修「公務員を演じ終えて」と題する講演(平成27年10月15日実施)において,吉崎正弘 元総務審議官(郵政省出身)は以下の発言をしています(リンク先のPDF10頁)。
    なぜ省庁再編になったかというと、やはり「業務の近いところ同士が一緒になったほうがいいじゃないか」ということだろうと思います。厚生省と労働省、あるいは建設省と運輸省、そういう中で、ちょっと残ってしまった役所があって、それが自治省と総務庁と郵政省でした。郵政省の場合には、運輸省といっしょになる案もありました。それは、交通と通信とは割と近そうだからです。そもそも両省は、もとをたどれば逓信省という一つの役所だったから当然です。先祖返りになっておかしいからだめだという議論などを経てできたのが今の総務省です。そういう意味では、他の官庁よりは、仕事の三つのばらばら感は否定できないことは事実です。例えば、制度的なものを守るほうが総務庁と自治省であり、どちらかというと荒田なものを作り出していくのが郵政省。それから、縦割りが自治省であり郵政省であり、横断的、全省庁的というのは総務庁。それから、霞が関中央の色合いが強いのが総務庁と郵政省で、地方の勤務がとても多いのが自治省です。


6 消極的権限争い
(1) 財務省広報誌ファイナンス2014年4月号の「「消極的権限争い」と 政治家の役割」には以下の記載があります。
     公務員の世界の中で、「権限争い」と言えば、かつては、「何でもかんでも私の仕事」式の「積極的権限争い」を指すことが多かったが、近年は、「それは自分の仕事ではない」という「消極的権限争い」が主流になっているという話をよく聞く。実際、徹底した行政改革が行われる中、公務員が権限をとってきて仕事を増やしても、その仕事を担当する職員の定員増や、独立行政法人の新設はほぼ不可能で、日々の忙しさは増すばかりだ。それなのに、公務員が声高に「権限獲得」にこだわれば、世間から「官僚が、何か別の意図を持っている」という目で見られかねない。「消極的権限争い」が日常化するのもむべなるかなという気もするが、公務として必要な仕事は、やはり誰かが担わなければならない。
(2)ア 平成21年度初任行政研修「事務次官講話」「国家がなすべきことと民間とのコラボレーション-裁判員制度からの示唆-」と題する講演(平成21年5月26日実施)において,小津博司法務事務次官は以下の発言をしています(PDF18頁)。
     これ(山中注:縦割り行政の弊害)も非常に重要なことで、最も強烈に思ったのがいつかというのは自信がありませんが、毎日のように感じておりまして、それは狭い法務省の中で、国会答弁が入ったときに、民事局が受けるのか、刑事局が受けるのかというふうなところから毎日すさまじいものがあります。
イ 平成24年度初任行政研修「事務次官講話」「明日の行政を担う皆さんへ」と題する講演(平成24年5月15日実施)において,西川克行法務事務次官は以下の発言をしています(リンク先のPDF14頁)。
     他部局・他省庁との関係というものを書かせていただきました。よく言われることですが、省あって国なし、局あって省なし、課あって局なし、これぐらい日本の役所の世界というのは縦割りがきつくて、タコ壺に入っているのだということを戒めるということです。国全体の方針があって省同士で対立していると、省があっても局の中で対立をしている。省全体のことはあまり考えないというようなことが、それをどんどん細かくしていけば全くそういうこともあるのかなと思います。


7 関連記事その他
(1) 衆議院議員長妻昭君提出自民党国会対策委員会によるいわゆる事前審査制に関する再質問に対する答弁書(平成20年10月28日付)には以下の記載があります。
     国会議事堂本館内に所在する内閣総務官室では、参議院別館内に所在する各府省の国会連絡室への連絡を行う際に、国会連絡室用の館内放送により、各府省の国会連絡室の職員を参集させて、口頭で各種の連絡を行うことがある。その際、参議院別館内に国会連絡室を置いている最高裁判所事務総局や会計検査院も、それぞれ、国会における情報を得るための手段の一つとして、内閣総務官室から各府省に対する連絡がある際には、自らの判断により同席して傍聴することも多く、内閣総務官室においても、従来より慣例的にこれを認めてきたところである。
(2) 「言葉と経験」(筆者は56期の川尻恵理子弁護士)には,「法務省に出向中は、新規の法案立案を立て続けに担当したこともあり、人生で最も多忙な時期となりました。朝四時まで国会答弁を巡って外務省と喧嘩、朝五時にようやくソファーで仮眠に入ると、一時間後に厚労省からの電話で叩き起こされる、といった具合です。」と書いてあります(「日本女性法律家協会70周年のあゆみ~誕生から現在,そして未来へ~」(令和2年6月10日出版)225頁)。
(3)ア 経済産業省HPに「不安な個人、立ちすくむ国家~モデル無き時代をどう前向きに生き抜くか~」(平成29年5月の次官・若手プロジェクトの文書)が載っています。
イ 現役官僚おおくぼやまとの日記ブログに「国会答弁の作り方1 〜大人も子供も、議員さんも〜」(2018年3月31日付)が載っています。
ウ 政府の行政改革HP「各府省の若手職員等に対するヒアリングの結果(概要)について」(平成13年2月23日付の内閣官房行政改革推進事務局 公務員制度等改革推進室の文書)が載っています。
(4) 48期の小原一人裁判官が「裁判官になるには」(2009年5月1日付)に寄稿した「裁判官は新人でも独立 一年生でも大きな判決 東京地方裁判所判事補 小原一人さん」(同書12頁ないし27頁)には,訟務検事に関して以下の記載があります
     行政庁だけに覚悟はしていましたが、決裁システムの煩わしさにも戸惑いました。一通の書面を裁判所に提出するだけでも、上司の決裁を仰がなければなりません。改めて痛感したのは、裁判所の権限の大きさです。裁判官は一人でも、国の施策に影響するような判断を下すことができる。裁判所にいるとなかなか気づきませんが、訴訟の当事者になるとよくわかりました。
(5) 東北大学HPの「裁判官の学びと職務」(講演者は47期の井上泰士)には以下の記載があります。
法務省の場合、課長及びそれと同格の官房参事官になって初めて法務大臣に直接お目見えする資格があることになります(江戸時代の旗本みたいですね。参事官以下は御家人に当たります。)。
(6)ア 以下の資料を掲載しています。
・ 総務省行政文書取扱規則(平成23年4月1日総務省訓令第17号)
→ 総務省において決裁を要する文書の決裁事項及び決裁権者が書いてあります。
・ 令和元年度在外公館赴任前研修(第5部研修)参加者の推薦について(令和元年6月18日付の外務省大臣官房人事課長の文書)
・ 令和元年度在外公館赴任前研修(第5部研修)参加者の受け入れ決定について(令和元年8月15日付の外務省大臣官房人事課長の文書)
・ 令和2年度在外公館赴任前研修(第5部研修)参加者の推薦について(令和2年6月25日付の外務省大臣官房人事課長の文書)
・ 令和2年度在外公館赴任前研修(第5部研修)参加者の受け入れ決定について(令和2年8月21日付の外務省大臣官房人事課長の文書)
・ 国会関係用語集(国土交通省大臣官房総務課連絡調整係)
・ 参議院議員のしおり(令和4年版)
→ 参議院事務局情報公開審査会の答申(令和3年度答申第3号)に基づき,参議院議員のしおりは全部開示されるようになっています。
イ 以下の記事も参照してください。
・ 判検交流に関する内閣等の答弁
・ 行政官国内研究員制度(司法修習コース)
・ 裁判官の種類
→ 判事新任のタイミングについても説明しています。
・ 法務省の定員に関する訓令及び通達
・ 厚生労働省の内部組織に関する訓令及び細則
・ 閣議
・ 裁判所職員定員法の一部を改正する法律に関する国会答弁資料等
・ 裁判官の報酬等に関する法律の一部を改正する法律に関する国会答弁資料等