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行政官国内研究員制度(司法修習コース)-仕組み,派遣実績及び現在の公表状況(AIリライト)

第1 この記事の対象

この記事は,人事院が各府省の職員を司法修習生として司法研修所に派遣していた行政官国内研究員制度(司法修習コース)について,制度の仕組み,派遣実績及び現在の公表状況を整理したものである。
制度の詳細は,平成26年5月30日改正後の「行政官国内研究員(司法修習コース)派遣要綱」に基づいており,法令及び人事院ウェブサイトの現況は令和8年9月8日現在で確認した。

平成26年改正後の派遣要綱では,研究員は司法修習生の考試を受けた後,考試の翌日に本人の願いによって司法修習生の身分を失い,司法修習を終えない仕組みとされていた。
これに対し,人事院は独自に司法修習コースの修了証書を交付することとされており,司法修習の修了と司法修習コースの修了は別の概念である。

現在の人事院の研修案内には,国内留学制度として博士課程及び修士課程だけが掲げられており,司法修習コースは掲げられていない。
もっとも,本記事で確認した一次資料からは,派遣要綱を廃止した決定又は制度を正式に廃止した日までは確認できなかったため,以下では確認できた事実と推測を区別する。

第2 制度の目的と位置付け

国家公務員法70条の5及び70条の6は,職員の研修に関する一般的な目的及び計画を定めている。
司法修習コースの具体的な要件と手続は,人事院事務総長決定である派遣要綱に定められていた。

派遣要綱1は,司法試験に合格した各省庁の行政官を司法研修所に派遣し,司法修習を通じて法律の理論及び実務を調査研究させることにより,公務遂行能力を向上させ,行政事務の効率的な運営に資することを目的としていた。
人事院の平成25年度年次報告書も,司法試験に合格した職員を司法研修所に派遣し,専門的な法律知識を習得させる制度として説明している。

この制度は,通常の司法修習と同じ場で学ぶ一方,修習終了後に公務へ戻ることを予定した人事院の派遣研修であった。
派遣要綱3は,将来も引き続き国家公務員として勤務する意思があることを派遣候補者の要件としていた。

第3 対象者,選考及び身分

1 派遣候補者の要件

派遣要綱3によれば,派遣候補者には,①司法試験に合格し,司法修習生採用選考へ申し込む資格があること,②派遣年度の4月1日現在で原則として2年以上の在職期間があること,③職務の級が行政職俸給表(一)の6級以下等であること,④勤務成績が優秀で心身が健全であること,⑤将来も国家公務員として勤務する意思があることが求められていた。
また,年齢その他を考慮して司法修習を受けることが適当と認められることも要件であった。

各府省は候補者を人事院へ推薦し,人事院は最高裁判所による司法修習生採用選考の結果を踏まえて派遣者を決定した。
候補者は,派遣決定を受けた場合には,人事院が指定する日を退職日とする辞職願を提出する旨の同意書を,あらかじめ所属府省を通じて人事院へ提出することとされていた。

2 人事院への転任と司法修習生の身分

派遣者は,人事院事務総局の所定の官職へ転任し,行政官国内研究員として派遣研究を命じられた。
平成26年5月14日の衆議院法務委員会で,最高裁判所事務総局人事局長の安浪亮介は,研究員が国家公務員として人事院へ転任し,最高裁判所の兼職許可を受けて司法修習生となり,人事院職員として給与を受ける旨を説明している。

したがって,研究員は,司法修習生として修習する一方,人事院職員としての身分と給与を維持する制度設計であった。
派遣要綱は,研究員が司法修習に専念することを定め,派遣研究中の職務従事を予定していなかった。

第4 修習内容,考試及び辞職願

1 司法修習への専念と報告

派遣要綱6によれば,研究員は司法修習生として修習に専念し,司法修習生の考試を受けなければならなかった。
また,研究員は,分野別実務修習等の各課程が終了する都度,人事院へ報告書を提出することとされていた。

人事院は,最高裁判所から研究員の成績等の通知を直接受けられることとされていた。
研究員は,修習中に得た知識と経験を,派遣研究の終了後に行政実務で活用することを期待されていた。

2 二つの提出期限

辞職願については,研究員本人から人事院への提出期限と,人事院から最高裁判所への提出期限を区別する必要がある。
平成26年改正後の派遣要綱6(5)は,研究員が人事院に対し,考試が行われる日の2か月前の日又は人事院が特に指定する日までに,考試の翌日を辞職日とする辞職願を提出することを定めていた。

人事院は,集めた辞職願を,考試が行われる日の1か月前の日までに最高裁判所へ提出することとされていた。
研究員が辞職願を提出しない場合,人事院は派遣研究を取り消し,最高裁判所に司法修習生の罷免を求める仕組みであった。

3 二つの「修了」

研究員は,考試を受けた後,考試の翌日に本人の願いによって司法修習生を辞職し,司法修習を終えないこととされていた。
一方,人事院は,司法修習コースを修了した研究員に対し,独自の「司法修習コース修了証書」を交付することとされていた。

このため,人事院の研修コースを修了したことと,裁判所法67条1項にいう司法修習生の修習を終えたことは,同じではない。
少なくとも平成26年改正後の派遣要綱を読む限り,考試に合格したことだけで通常の司法修習修了者になる制度ではなかった。

第5 弁護士資格との関係

裁判所法67条1項は,司法修習生が少なくとも1年間修習をした後,試験に合格したときに司法修習生の修習を終えるものとしている。
弁護士法4条は,司法修習生の修習を終えた者に弁護士となる資格があると定めている。

平成26年5月14日の衆議院法務委員会では,最高裁判所事務総局人事局長が,当初,研究員は考試前に司法修習生を退職すると答弁した後,答弁を訂正した。
訂正後の説明は,研究員も考試を受けるが,考試を終えた後に司法修習生を退職するため,司法修習を終えず,法曹資格を取得しないというものであった。

したがって,平成26年改正後の派遣要綱による修習だけでは,弁護士法4条の通常の経路による弁護士資格を取得しないことになる。
ただし,弁護士法5条には,一定の職務経験と法務大臣が指定する研修等を要件とする別の資格認定制度があるため,行政官が将来にわたって弁護士資格を取得できないという意味ではない。

第6 派遣実績

1 累計30人

人事院の平成25年度年次報告書は,昭和63年度に制度が発足してから平成25年度までの派遣者が累計30人であり,平成25年度の新規派遣者はなかったとしている。
現在の人事院公表資料である「行政官派遣研究員制度の年度別派遣状況」にも,司法修習コースの昭和63年度から平成30年度までの派遣者数30人が国内派遣者数に含まれるとの注記がある。

同表では,国内派遣者数と博士課程及び修士課程の人数が年度別に示されている。
本記事では,その注記に基づき,各年度の国内派遣者数から博士課程と修士課程の人数を差し引いた値を司法修習コースの派遣者数として算出した。

2 年度別の派遣者数

年度派遣者数
昭和63年度3人
平成元年度2人
平成2年度3人
平成3年度1人
平成4年度2人
平成5年度2人
平成6年度1人
平成7年度2人
平成9年度2人
平成10年度1人
平成12年度1人
平成16年度1人
平成17年度1人
平成18年度1人
平成19年度1人
平成20年度1人
平成21年度1人
平成22年度2人
平成23年度2人
合計30人

昭和63年度から平成30年度までのうち,表に掲げていない年度は算出値が0人である。
平成24年度以降の算出値は0人であり,人事院の表に記載された30人の合計とも一致する。

第7 現在の公表状況と確認できない事項

1 現在の国内留学制度

人事院の現在の派遣研修案内は,国内留学制度として博士課程コース及び修士課程コースを掲げているが,司法修習コースを掲げていない。
また,長期在外研究員制度及び国内研究員制度の運用についても,令和6年11月8日の最終改正後の本文では,国内研究員制度として博士課程及び修士課程を扱っている。

「行政官派遣研究員制度の年度別派遣状況」は,司法修習コースの対象期間を昭和63年度から平成30年度までと記載している。
これらの公表資料から,少なくとも司法修習コースが現在の募集対象として案内されておらず,近年の派遣実績もないことは確認できる。

もっとも,現在の案内に記載がないことだけから,制度が正式に廃止された日又は派遣要綱の法的な効力まで確定することはできない。
人事院が派遣要綱を廃止した決定は,本記事の作成時点では確認できなかった。

2 平成26年改正より前の取扱い

本記事で本文まで確認できた派遣要綱は,昭和63年2月9日制定,平成26年5月30日最終改正の版である。
各改正時点の旧版本文を確認できていないため,平成26年改正より前の全期間について,司法修習を終えない取扱いが同じであったとは断定できない。

法律事務所の公開インタビューには,行政官国内研究員制度で第49期司法修習を受け,司法修習を終了して弁護士資格を取得したとする経歴の記載がある。
これは参加者の経歴についての公表資料であるが,旧版の派遣要綱その他の一次資料を確認できていないため,平成26年改正後の要綱との違いが生じた理由は確認できない。

第8 関連記事

司法修習とはは,司法修習生の採用,修習内容,考試及び修習終了の一般的な仕組みを扱っている。
行政機関等への出向裁判官は,裁判官が行政機関等へ出向する反対方向の人事交流を扱っている。

第9 出典・参考資料

1 法令

国家公務員法70条の5及び70条の6
裁判所法66条及び67条
弁護士法4条及び5条

2 人事院及び国会の資料

①人事院事務総長決定「行政官国内研究員(司法修習コース)派遣要綱」(昭和63年2月9日制定,平成26年5月30日最終改正)
②人事院「平成25年度年次報告書・第3編第2部第3章第2節
③人事院「行政官派遣研究員制度に関する参考データ」及び「行政官派遣研究員制度の年度別派遣状況
④人事院「派遣研修
⑤人事院「長期在外研究員制度及び国内研究員制度の運用について
⑥衆議院「第186回国会法務委員会第16号(平成26年5月14日)

3 文献及び参加者の公表資料

①三井秀範「行政官国内研究員(司法修習コース)を終えて」人事院月報43巻7号26頁~29頁(平成2年7月)
②樋口真人「司法修習の現在・将来(第14回)行政官研究員として司法修習を受けて」自由と正義48巻4号162頁~165頁(平成9年4月)
③天満法律事務所「弁護士インタビュー 星野昌季

三井論文及び樋口論文は,書誌情報と掲載頁を確認したが,本文は確認していない。
このため,本記事は両文献の内容を制度説明の根拠として用いていない。