(AI作成)77期二回試験の業務委託契約書の審査結果報告書

AIで作成した第77期司法修習生考試事務業務委託に関する契約書(令和6年10月28日付)(受注者は株式会社全国試験運営センター)の審査結果報告書を掲載しています。

目次

第1 総論
第2 修正事項
1 仕様書第6(人員要件)
2 仕様書第7の2(リハーサルのやり直し)
3 仕様書第8(機材設置及び原状回復)
4 仕様書第10の1(再実施義務及び費用負担)
5 契約書第4条及び仕様書第10の5(再委託の禁止と例外)
6 仕様書第10の8(会場変更の費用負担)
7 仕様書第12(大阪会場実施分の運搬手順等)
第3 追加事項
1 口頭指示による追加業務の禁止及び費用負担の明確化
2 検査及び支払時期の明確化(支払遅延防止法の準拠)
3 ウィルス感染症対策費用及び責任分界
第4 修正事項及び追加事項のまとめ
第5 総合所見

第1 総論

本職は、試験会場の運営実務に精通した弁護士として、株式会社全国試験運営センター(以下「貴社」といいます。)の依頼に基づき、最高裁判所(以下「発注者」といいます。)との間で締結される「令和5年度(第77期)司法修習生考試事務の業務委託契約書」および「仕様書」(以下、これらを総称して「本件契約書等」といいます。)について審査を行いました。

本件は、法曹資格付与の最終関門である「司法修習生考試(通称:二回試験)」の運営業務であり、その社会的意義の重さは計り知れません。また、相手方が「最高裁判所」であるという点は、通常の民間取引とは異なる「官公庁契約」特有の厳格な規律(会計法、予算決算及び会計令等)が適用されることを意味します。

審査にあたっては、以下の基本方針を採用しました。

  1. 実務的実現可能性の重視: 官公庁契約、特に入札を経た契約(あるいは会計法規に準拠した標準約款)においては、契約条文そのものの修正は極めて困難であるのが通例です。したがって、条文修正が認められない場合を想定し、現場レベルでの「運用ルール(議事録等)」によるリスクヘッジ策を並行して検討しました。

  2. 最大リスクの回避: 仕様書に内在する「再試験実施義務」や「翌朝9時必着の答案輸送」などの、貴社の経営基盤を揺るがしかねない条項に焦点を当て、防衛策を構築しました。

  3. 合理的利益の保護: 発注者の優越的地位による一方的な負担押し付けを防ぐため、行政実務の理屈(官公庁契約精義等)を根拠とした対等な交渉材料を提供します。

以下、貴社の合理的利益を守るための具体的な審査結果を報告します。

第2 修正事項

1 仕様書第6(人員要件)

現在の条文

「試験監督者の少なくとも半数は、過去に『国家資格試験』又は『大学入学試験』の会場責任者、会場副責任者、監督、試験官等の実績(中略)が10回以上ある者を配置し、その余の試験監督者には、同実績が3回以上ある者を配置する。」

リスク・問題点

求められる経験値が「実績10回以上」と極めて高く、この要件を満たす人材を確保し続けることは容易ではない。特に、当日の急病等で欠員が出た場合、代わりの補充要員も同等の要件を満たしている必要があるため、人材調達不全による仕様書違反(契約不履行)のリスクが高い。

修正条項案

「(前略)実績が10回以上ある者を配置することを目途とし、確保が困難な場合は、発注者と協議の上、十分な研修を受けた者をもって代えることができる。」 修正条項の理由 人材確保難による契約不履行を避けるため、要件を努力義務化するか、代替措置を設ける必要がある。

相手方向けの修正要望文

「試験の公正性確保のため、監督員に高度な経験が求められる点は重々承知しております。しかしながら、『実績10回以上』という要件は極めて厳格であり、特に当日の急病等による欠員補充の際、物理的に要件を満たす要員の手配が間に合わないリスクがございます。 つきましては、不測の事態に備え、緊急時の代替要員に関しては、実績回数にかかわらず、事前に貴所と協議した内容の『特別研修』を受講した者であれば配置可能とするよう、運用ルール(打合せ記録簿等)での緩和措置をお願い申し上げます。」

2 仕様書第7の2(リハーサルのやり直し)

現在の条文

「リハーサルを実施した結果、試験監督者等の業務に対する理解度が低いことが判明した場合は、受注者は、同日中のリハーサルのやり直しや、試験監督者等の交替等をしなければならない。」

リスク・問題点

「理解度が低い」という基準が極めて主観的であり、発注者(監督職員)の恣意的な判断で、際限なくやり直しを命じられるリスクがあります。これは追加の人件費発生や、翌週の本番に向けたスタッフの疲弊、士気の低下を招きます。また、「同日中」のやり直しは、会場使用時間の制限やスタッフの労働時間管理(労基法上の問題)との兼ね合いで不可能な場合があります。

修正条項案

「リハーサルを実施した結果、事前に発注者と合意した『事務要領』記載の手順と比較して著しい乖離が見られる等、客観的に試験監督者等の業務に対する理解度が低いことが判明した場合は、(中略)受注者は、同日中のリハーサルのやり直し(ただし、労働基準法等を遵守し得る範囲内に限る)や、試験監督者等の交替等をしなければならない。」

修正条項の理由

判断基準を客観化し、かつ法令遵守の観点から無制限な拘束を防ぐ必要があります。

相手方向けの修正要望文

「リハーサルの質の確保については異論ございませんが、判断基準が曖昧ですと現場が混乱いたします。事前に提出する『事務要領』を基準とし、そこからの逸脱の程度で判断いただくよう明記をお願いします。また、スタッフの労働時間管理の観点から、『同日中のやり直し』には限界があることをあらかじめご承知おきください。」

3 仕様書第8(機材設置及び原状回復)

現在の条文

仕様書第8の2(4)(5)「プリンタ8台(中略)パソコンと1台ずつUSB接続して使用でき(中略)ノートパソコン及びプリンタ各4台(大阪会場で使用)」
仕様書第10の2「施設、付属設備、その他備品等を汚損、き損、紛失等した場合は、受注者が原状に回復し、その損害賠償義務を負う。」

リスク・問題点

PC・プリンタ等のIT機器を持込み、設置・接続確認まで行う義務が課されている。当日のドライバ不適合や動作不良等は運営停止に直結するが、その責任分界が不明確である。また、施設への損害賠償義務も広範に及ぶ。

修正条項案

「(前略)接続して使用でき(中略)るものを用意する。ただし、現地での接続設定及び動作確認において、発注者の用意する機器との相性問題等により不具合が生じた場合は、受注者はその責めを負わない。」 修正条項の理由 持込機材と既存設備との技術的な接続トラブルを、一方的に受注者の責任とされることを防ぐためである。

相手方向けの修正要望文

「持込み機材(プリンタ等)の設置についてですが、貴所ご用意のパソコンやネットワーク環境との相性問題(ドライバ不適合等)により、接続不具合が生じる可能性はゼロではありません。こうした技術的に回避困難な事象については、弊社の責任範囲外(契約不適合に該当しない)であることを確認させてください。 また、原状回復義務につきましても、通常の使用に伴う軽微な摩耗等は対象外とし、弊社の故意又は重大な過失による汚損等に限定するよう、責任範囲の明確化をお願いいたします。」

4 仕様書第10の1(再実施義務及び費用負担)

現在の条文

「受注者の故意又は過失によって考試の公正性が害されるなどの事情(問題等の漏えい、答案回収・整理上の不備などの発生)により、司法修習生の修習終了判定ができないときには、受注者は、損害賠償義務を負うほか、受注者の負担により、発注者の指定する日時に考試を再実施しなければならない。」

リスク・問題点

本条項は、本件契約における最大かつ致命的なリスク要因です。

第一に、「再実施」の費用は、会場費、人件費、旅費交通費、問題作成に伴う諸経費などを含め、契約金額(約4268万円)を遥かに超過する数億円規模に達する可能性があります。特に、再実施の場合には仕様書第10の3(試験会場の無償提供)が適用されないと明記されており、会場確保費用までもが自費負担となる恐れがあります。

第二に、「過失」の程度が限定されていません。軽微な過失(例:現場スタッフの些細な確認ミス)であっても、結果として修習終了判定ができなくなれば、莫大な責任を負わされる構造になっています。

第三に、再実施の日時が「発注者の指定する日時」とされており、貴社の都合(人員確保の可否等)が考慮されない恐れがあります。

修正条項案

「受注者の重大な過失によって考試の公正性が害されるなどの事情(中略)により、司法修習生の修習終了判定ができないときには、受注者は、損害賠償義務を負うほか、受注者の負担(ただし、本件契約金額を上限とする)により、発注者と協議の上決定した日時に考試を再実施しなければならない。」

修正条項の理由

民法上の原則や商慣習に照らしても、軽過失によって無限責任に近い負担を負うことは公平性を欠きます。特に「再実施」という現状回復措置は、金銭賠償以上の負担を強いるものであるため、その発動要件は「重大な過失」に限定されるべきです。また、リスク管理の観点から責任の上限設定は不可欠です。

相手方向けの修正要望文

「仕様書第10の1についてご相談です。再実施業務は、弊社の経営存続に関わる重大な責務となります。つきましては、責任の所在を明確にするため、『過失』を『重大な過失』に限定し、かつ費用負担の上限を設定いただきたく存じます。もし、会計法規上の制約等により契約文言の修正が困難な場合は、『どのようなケースが本条の過失に該当するか』について別途協議し、免責事由(不可抗力や第三者の行為等)を具体的に定めた確認書(打合せ記録簿)を作成させていただきたく存じます。」

5 契約書第4条及び仕様書第10の5(再委託の禁止と例外)

現在の条文

契約書第4条「受注者は、業務を第三者に委託し、又は請け負わせてはならない。ただし、書面による発注者の承諾を得た場合は、この限りでない。」

仕様書第10の5「(前略)ただし、以下の(1)及び(2)を除いた業務について、発注者が書面により承諾した場合は、この限りではない。」

リスク・問題点

本業務には「大阪会場から埼玉への答案搬送(仕様書第12)」が含まれていますが、貴社が自社保有の車両と運転手のみでこれを完遂することは現実的ではありません。運送業者、設営業者、廃棄業者等の利用は必須ですが、これらが形式的に「再委託禁止」に抵触し、契約解除事由とされるリスクがあります。特に、契約締結後に承諾を得るプロセスでは、万が一承諾が降りなかった場合に業務が停止します。

修正条項案

(仕様書第10の5に以下を追記)

「なお、仕様書第8に定める会場設営業務、第10の4に定める廃棄処分業務、及び第12に定める運搬業務については、専門業者への再委託をあらかじめ承諾するものとする。」

修正条項の理由

運送や設営などの専門性が高い付帯業務については、再委託が前提となるのが業界の常識です。個別の書面承諾手続きの事務負担を軽減し、かつ承認リスクを排除するために、契約段階での包括的承諾が必要です。

相手方向けの修正要望文

「運搬(大阪-埼玉間)、会場設営、廃棄物処理等の業務につきましては、専門性を有する外部協力会社を活用することが不可欠です。これらについては、契約締結と同時に再委託をご承諾いただくか、あるいは仕様書上『承諾済み』と明記していただきたく存じます。早急に予定している協力会社リストを提出いたしますので、ご確認をお願いいたします。」

6 仕様書第10の8(会場変更の費用負担)

現在の条文

「天災、感染症のまん延その他の不可抗力により、試験会場が変更される場合がある。この場合、変更後の試験会場のうち裁判所の施設(司法研修所を除く。)の会場については、第8の2の(1)のア、別紙第1の記9の(2)の配布物の仕分けを除き、受注者による実施等を免除する。」

リスク・問題点

会場が変更された場合、「実施等を免除する」とあるだけで、それに伴い貴社に生じた追加費用(例:当初会場のキャンセル料、移動に伴う輸送費の増加、スタッフの再配置コスト)の発注者負担について明記されていません。官公庁契約では「書いていないことは払わない」が原則となるため、持ち出しとなるリスクがあります。

修正条項案

「(前略)受注者による実施等を免除する。なお、会場変更に伴い受注者に生じた追加費用については、発注者と協議の上、別途変更契約を締結し、発注者がこれを負担する。」

修正条項の理由

発注者の都合や不可抗力による仕様変更(会場変更)に伴うコストは、当然に発注者が負担すべきものです。会計法規上も、仕様変更に伴う変更契約は認められています。

相手方向けの修正要望文

「万が一の会場変更の際、急な輸送ルート変更やスタッフの手配変更で追加コストが発生する可能性がございます。その際は、実費ベースでの変更契約に応じていただけることを、本条項または議事録等で確認させてください。」

7 仕様書第12(大阪会場実施分の運搬手順等)

現在の条文

「(安全措置として)耐火、防水及び形状の変わらない素材(ジュラルミン等)のボックス等を使用すること。(中略)運搬車両は、答案を運搬するためだけの専用車両とし、車外から運搬物が見えないようにし、ドア及び荷台ともに施錠可能なものとする。」

リスク・問題点

要求スペックが非常に具体的かつ厳格です。「ジュラルミンケース」等の耐火・防水容器を数百人分確保することや、「専用車両」の手配は高額なコストがかかります。最大の問題は、大阪会場での試験終了後、翌朝9時厳守で埼玉(司法研修所)へ搬入しなければならない点にあります。台風、交通事故渋滞など、物理的に回避不可能な事情で遅延した場合でも、直ちに契約不履行問われる構造になっており、免責規定が存在しません。

修正条項案

「(前略)ボックス等を使用すること。ただし、同等の安全性が確保できると発注者が認めた場合は、他の素材でも可とする。(中略)施錠可能なものとする。なお、交通事情や天候不順等、受注者の責めに帰すべからざる事由により到着が遅延した場合は、遅延損害金の対象としないほか、これを理由とする契約の解除は行わない。」

修正条項の理由

資材調達の柔軟性を確保し、不可抗力による遅延リスクをヘッジするためです。

相手方向けの修正要望文

「セキュリティ確保は最優先事項ですが、資材(ジュラルミンケース等)の調達状況によっては、同等の強度を持つ代替品の使用をご相談させてください。また、長距離輸送ですので、事故渋滞等の不可抗力による遅延については免責される旨を確認させてください。」

第3 追加事項

1 口頭指示による追加業務の禁止及び費用負担の明確化

リスク・問題点

現場では、監督職員から「これもやってほしい」と口頭で指示されることが多々あります。しかし、国の契約実務上、口頭指示に基づく業務には対価が支払われない(「ボランティア」とみなされる)原則があります(官公庁契約精義参照)。なし崩し的な業務拡大を防ぐ必要があります。

追加条項案

「仕様書に定めのない業務を行う必要が生じた場合、発注者は書面により指示を行うものとし、当該業務の実施により費用が発生する場合は、事前に変更契約を締結するものとする。緊急を要し、事前の変更契約が困難な場合は、事後速やかに精算変更を行う。なお、監督職員から現場にて口頭指示があった場合でも、それが仕様書の範囲を超える業務であるときは、事後に書面化し、相当な対価を支払うものとする。」

追加条項の理由

会計法規に基づき、適正な対価を確保するためです。

相手方向けの追加要望文

「現場での混乱を避けるため、仕様書外の追加業務が発生した際は、必ず書面(指示書)をいただき、費用負担についても協議させていただく原則を確認させてください。」

2 検査及び支払時期の明確化(支払遅延防止法の準拠)

リスク・問題点

契約書第6条、第7条には検査・支払の規定がありますが、国の担当者が多忙等を理由に検査を先延ばしにする可能性があります。「政府契約の支払遅延防止等に関する法律」に基づく貴社の権利を明確にし、キャッシュフローを安定させる必要があります。

追加条項案

(契約書第6条または仕様書に追記)

「発注者は、受注者から業務完了の通知を受けた日から10日以内に検査を完了しなければならない。検査に合格した後、適法な支払請求書を受理した日から30日以内に契約代金を支払うものとし、これを遅延した場合は、政府契約の支払遅延防止等に関する法律に基づく遅延利息を支払う。」

追加条項の理由

法律で定められた国の義務(検査10日以内、支払30日以内)を契約上も再確認し、履行を促すためです。

相手方向けの追加要望文

「決算処理の関係上、業務終了後の検査及びお支払いのスケジュールを厳守いただきたく存じます。法令に基づく10日以内の検査完了と30日以内のお支払いについて、改めてご確認をお願いいたします。」

3 ウィルス感染症対策費用及び責任分界

リスク・問題点

仕様書には「感染症のまん延」という文言がありますが、具体的対策(消毒液、マスク、検温スタッフの増員等)の費用負担が不明確です。これらを全て「管理費」として貴社負担にされるリスクがあります。

追加条項案

「感染症対策として、仕様書作成時点で想定されていない特別な措置(追加の消毒、検温要員の配置、防護具の購入等)が必要となった場合、その費用は発注者の負担とする。」

追加条項の理由

予測不能な感染症対策コストは、発注者が負担すべき公衆衛生上の経費であるためです。

相手方向けの追加要望文

「感染状況に応じた追加対策が必要になった場合、消耗品費や追加人件費をご負担いただけるよう、事前の合意をお願いいたします。」

第4 修正事項及び追加事項のまとめ

以下に、契約締結に向けた交渉・確認事項を優先度順に整理しました。

特に「優先度5」の項目は、貴社の存続に関わる重大リスクであり、契約書の文言修正が叶わない場合でも、必ず「打合せ記録簿」等の公文書で運用ルールを確定させ、かつ損害保険によるカバーを確認する必要があります。

番号項目内容優先度が高い理由相手方の受入可能性優先度
1【修正】仕様書第10の1 (再実施義務)再実施時の費用負担を「重大な過失」に限定し、上限額を設定する。または保険でカバーできるよう運用を明確化する。数千万円〜数億円規模の損失リスクがあり、会社の存続に関わるため。低 (条文修正は困難。運用協議で対応すべき)5
2【追加】口頭指示の禁止と費用負担仕様書外業務は「書面指示」を必須とし、追加費用を支払うことを明記する。現場での「タダ働き」を防ぎ、適正な利益を確保するため(会計法規上の原則)。中 (原則論なので正論として通りやすい)5
3【修正】契約書第4条 (再委託の承諾)運送、設営等の必須業務について、契約時に包括的な再委託承諾を得る。無許可再委託による契約解除リスクを回避するため。高 (実務上必須であるため理解されやすい)4
4【追加】検査・支払期限の明記検査10日以内、支払30日以内の法定ルールを遵守させる。資金繰りの安定化と、不当な検査引き延ばしを防止するため。高 (法律上の義務であるため拒否できない)4
5【修正】仕様書第12 (運搬の免責)交通事情等の不可抗力による遅延を免責とし、容器指定に柔軟性を持たせる。物理的に回避不可能な遅延による損害賠償を防ぐため。中 (「責めに帰すべき事由」の解釈として合意可能)3
6【修正】仕様書第7の2 (リハーサル)「理解度が低い」の基準を客観化し、労働法令の範囲内でのやり直しに限定する。担当官の主観による無限の業務命令(パワハラ的運用)を防ぐため。中 (運用マニュアルの承認等で対応可能)3
7【修正】仕様書第10の8 (会場変更)会場変更に伴う追加費用(キャンセル料、輸送費増)の発注者負担を明記する。不可抗力によるコスト増を貴社が被ることを防ぐため。中 (変更契約の対象として認められやすい)3
8【修正】契約書第8条 (遅延損害金)遅延損害金の上限設定や、免責事由の具体化を図る。履行遅滞時のペナルティを予測可能な範囲に留めるため。低 (政府標準約款のため変更は極めて困難)2
9【追加】感染症対策費想定外の感染症対策コストを発注者負担とする。利益圧迫要因を排除するため。中 (予算の範囲内で柔軟に対応される傾向あり)2
10【修正】仕様書第6 (人員要件)スタッフ経験要件の緩和、または要件適合者の確保スケジュールの見直し。予備人員(バックアップ)についての要件緩和協議。人材確保難(特に当日の欠員補充)による契約不履行リスクを下げるため。低 (入札条件の根幹に関わるため変更困難)2

第5 総合所見

戦略的判断:重要な修正交渉(主に運用面)が必要

本件契約書等は、最高裁判所という発注者の性格上、極めて厳格かつ一方的な条項が含まれており、特に**「再実施費用の全額負担義務(仕様書第10の1)」は、貴社にとって致命的な経営リスク**となり得ます。

しかしながら、相手方が国(最高裁)である以上、契約書の条文そのものを書き換えることは、会計法規や前例踏襲の壁に阻まれ、極めて困難であることが予想されます。真正面から条文修正を要求しても、「規定ですので」と一蹴される可能性が高いでしょう。

したがって、以下の戦略を推奨いたします。

  1. 「条文修正」よりも「運用ルールの文書化」に注力する:
    修正要望は出しつつも、それが通らないことを前提に、「再実施義務が生じる『過失』とは具体的に何か」「交通遮断等の不可抗力による遅延をどう扱うか」を協議し、その結果を「打合せ記録簿」や「質問回答書」という公的文書の形で残してください。これにより、契約書の実質的な解釈を貴社有利(あるいは公平)なものに固定化します。
  2. 損害保険のフル活用:
    再実施リスクについては、契約交渉での完全回避は不可能です。直ちに保険会社と相談し、「再試験費用」及び「原状回復費用」までカバーできる履行保証保険や賠償責任保険への加入を進めてください。保険料がコストアップになりますが、これは必要経費と割り切るべきです。
  3. 再委託申請の即時実行:
    運送(大阪-埼玉便)については、契約締結と同時に「再委託承認申請書」を提出し、即座に承諾印をもらってください。「後でいいや」は禁物です。
  4. 実地シミュレーションと予備人員の確保:
    大阪-埼玉間の輸送については、実際に指定車両・時間帯での走行テストを行い、余裕時分を検証してください。また、厳格な経験要件を満たすスタッフについては、欠勤を見越して1.2~1.5倍の人員プールを確保しておくことが必須です。

結論として、本契約はそのまま締結するにはリスクが高すぎますが、運用面での防衛策(文書化と保険)を講じることを条件に、受任することは可能と判断します。法曹養成の根幹を支える名誉ある業務ですが、あくまで「ビジネス」として、冷徹なリスク管理をお願いいたします。