司法研修所弁護教官の任期,給料等


目次
1 総論
2 司法研修所弁護教官及び弁護教官室所付の謝金,及び日弁連の経済的支援
3 弁護教官候補者の推薦依頼に関する文書
4 司法研修所弁護教官の職務内容に関する説明文書は存在しないこと
5 その他最高裁判所に存在しない文書
6 司法修習生研修委託費
7 関連記事その他

1 総論
(1) 東京弁護士会が発行している「とうべんいんふぉ」2016年5月号の「司法研修所弁護教官候補者の公募と「所信を聞く会」開催のお知らせ」(リンク切れ)によれば,司法研修所弁護教官の任期,給料等は以下のとおりです。
① 司法研修所弁護教官の任期は慣例により3年間程度です。
②   司法研修所弁護教官に対する司法研修所からの謝金は,年間で概ね260万円から340万円の間となっています。
   ただし,これとは別に,東京弁護士会から月13万円の補助金が支払われています。
③ 司法研修所弁護教官の業務量は,弁護士としての年間執務量の半分以上を取られます。
(2) 民事弁護上席教官及び刑事弁護上席教官については通常,弁護教官3年目の弁護士が就任しています。


2 司法研修所弁護教官及び弁護教官室所付の謝金,及び日弁連の経済的支援
(1)ア 「弁護教官等の謝金について」を以下のとおり掲載しています。
(令和時代)
   令和2年度令和3年度令和4年度
(平成時代)
   平成29年度平成30年度平成31年度
イ 司法研修所弁護教官謝金の支給調書も参照してください。
(2) 日弁連は,司法研修所の弁護教官に対して月額6万円,司法研修所弁護教官室所付に対して月額4万円を支払っています(司法研修所弁護教官及び弁護教官室所付に対する経済的支援に関する規則(平成28年1月22日規則第173号))。
(3) 最高裁判所の令和4年度概算要求書(説明資料)644頁には,「弁護教官謝金」として以下の記載があります。
<要求要旨>
(ア) 司法修習のうち,中央(司法研修所)における修習は,導入修習及び集合修習をそれぞれクラスに分けて実施する。各クラスに民事裁判,刑事裁判,検察,民事弁護及び刑事弁護の5科目の教官を1人ずつ配置する。民事弁護及び刑事弁護を担当する弁護教官は,最高裁判所から司法研修所教官の事務を委嘱された弁護士であり,いずれも本業である弁護士の業務にも従事しているが,単に司法研修所において講義,起案講評等を行うのみならず,司法修習生に起案させた訴状,準備書面,弁論要旨等の法律文書の添削,講義・講評の事前の打合せ(合議),修習記録として使用する事件記録等の収集・編集,テキスト等の教材の作成等にも従事し,また,クラスの裁判教官・検察教官とともに,司法修習生の全人格的な指導に当たり,さらに,教官会議や各種委員会に出席して,司法研修所の運営にも関与している。このように,弁護教官の事務は,その内容も専門職の養成指導という高度の知的作業を含む多岐にわたるもので,これによる拘束時間も必然的に長時間に及ぶものであって,弁護教官は,本来の弁護士業務を相当程度犠牲にして弁護教官事務に従事しているのが実情である。
   なお,このような弁護教官の負担を軽減するため,教官を補助して下調べ的な事務を行う弁護所付を配置しているが,弁護所付も最高裁判所から教官の事務の補助を委嘱された弁護士であり,弁護教官と同様,本来の弁護士業務を相当程度犠牲にしている。
(イ) 令和4年度には,司法研修所において,2年次生1,523人及び1年次生1,492人に対する修習を行うことになる。
   そこで,同年度における弁護教官の講義・講評・起案添削等に対する謝金として,必要な予算措置を要求する。


3 弁護教官候補者の推薦依頼に関する文書
・ 弁護教官候補者の推薦依頼に関する文書を以下のとおり掲載しています。
令和3年2月令和4年2月令和5年2月


4 司法研修所弁護教官の職務内容に関する説明文書は存在しないこと
(1) 平成30年2月8日付の理由説明書には,「最高裁判所の考え方及びその理由」として以下の記載があります。
   新たに委嘱された司法研修所弁護教官に対しては,同教官の職務内容について必要に応じて他の弁護教官等から説明を行っており,司法研修所として説明文書を作成・交付する必要がないことから,本件開示申出内容に係る文書を作成又は取得していない。
   よって,原判断は相当である。
(2) 平成30年度(最情)答申第20号(平成30年7月20日答申)には以下の記載があります。
    最高裁判所事務総長の上記説明によれば,新たに委嘱された司法研修所弁護教官に対しては,同教官の職務内容について必要に応じて他の弁護教官等から説明を行っており,司法研修所として説明文書を作成・交付する必要がないとのことであり,本件開示申出文書の性質に照らせば,このような説明の内容が不合理とはいえない。そのほか,最高裁判所において,本件開示申出文書を保有していることをうかがわせる事情は認められない。
    したがって,最高裁判所において本件開示申出文書を保有していないと認められる。


5 その他最高裁判所に存在しない文書
(1) 平成29年3月23日付の司法行政文書不開示通知書によれば,司法研修所の弁護教官に対する謝金の決定方法が書いてある文書は存在しません。
(2) 平成29年11月10日付の司法行政文書不開示通知書によれば,日弁連から提出された,司法研修所弁護教官及び所付に対する謝金額を増額して欲しいという要望書は存在しません。
(3) 平成29年12月12日付の司法行政文書不開示通知書によれば,新任の司法研修所弁護教官に交付している,司法研修所弁護教官の職務内容に関する説明文書は存在しません。


6 司法修習生研修委託費
(1) 最高裁判所の令和4年度概算要求書(説明資料)654頁には,「司法修習生研修委託費」として以下の記載があります。
    司法修習生は,実務修習中,弁護士会での弁護修習を行うが,これは,法曹三者にとって必要な基礎的知識,実務能力をすべての司法修習生に修得させることを目的とする司法修習の一環として行われるものである。
    弁護修習は,司法研修所長が弁護士会にその実施を委託し(司法修習生に関する規則第7条),弁護士会が司法修習生の配属事務所の選定や修習計画の策定等を行っている。弁護修習の内容は,個別の弁護士事務所における修習と弁護士会における合同修習に分けられる。司法修習生が配属された事務所の指導弁護士は,修習の成果を上げるために特に配慮して事件を受任したり(専ら民事事件を扱っている弁護士が,刑事事件処理の実務を修習させるために国選弁護事件を受任するなど),適宜司法修習生に訴訟書類を起案させて添削指導したり,合同修習の指導も分担したりするなど本来の業務をある程度犠牲にして司法修習生の指導に当たっており,司法修習生のために,通信費,備品費,消耗品費等を負担している。また,弁護修習を委託された弁護士会は,講義,起案及び講評,見学等の合同修習の企画・運営に当たっており,合同修習のための教材費,通信費,消耗品費等を負担している。
    令和4年度においても,弁護修習における弁護士会への委託に必要となる経費を要求する。
(2) 最高裁判所が弁護士会に支払っている司法修習生研修委託費は消費税の課税対象です(大阪高裁平成24年3月16日判決参照)。
(3) 「司法修習生研修委託費の増額について」を以下のとおり掲載しています。
令和元年度令和2年度令和3年度令和4年度
令和5年度


7 関連記事その他
(1) 月刊大阪弁護士会2020年1月号の「元最高裁判所判事・元弁護士 鬼丸かおるさん」に以下の記載があります。
    教官時代は、家族や事務員よりも長い時間、教官たちと一緒に過ごしていました。民事弁護の教材は、司法研修所所付が全国行脚して適切な事案を探して持ち帰ってきたのを、教官全員で検討して作り上げています。講義の準備や起案講評について議論が続き、夜の11時頃まで教官たちと過ごす時間が大変長かった記憶です。
(2) 東弁リブラ2022年1月・2月号「元最高裁判所判事 木澤克之」には以下の記載があります。
    最高裁では,研修所教官経験者というのは歓迎されていたと思います。皆,フレンドリーに接してくれていました。しかも,5年間の間に,調査官の中に,教え子が3人もいた。調査官がもともと知っている人で,お互いに信頼関係があることは大変心強く,本当にありがたかったです。
(3) 二弁フロンティア2022年7月号「司法研修所教官 経験者座談会〜「司法修習のいま」と「弁護教官の仕事」〜」が載っています。
(4) 以下の記事も参照して下さい。
 司法研修所教官
・ 司法研修所弁護教官謝金の支給調書
・ 司法研修所弁護教官の業務は弁護士業務でないものの,破産管財人として行う業務は弁護士業務であること
・ 司法研修所の教官組別表,教官担当表及び教官名簿
 司法研修所の職員配置図,各施設の配置及び平成24年8月当時の門限
 司法研修所教官会議の議題及び議事録


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