司法修習終了翌年の確定申告

1 年末調整及び確定申告
(1)   国税庁HPに「年末調整がよくわかるページ」が載っています。
(2) 弁護ハック!-若手弁護士によるライフハックブログ「弁護士一年目の確定申告(青色65万円控除)をサクッと終わらせる方法」が載っています。
(3) 給与所得者が中途退職して年末調整を受けていないときに行う還付申告の場合,給与所得の源泉徴収票の原本を確定申告書に添付する必要があります(タックスアンサーの「No.1910 中途退職で年末調整を受けていないとき」参照)。
(4) 社会保険料控除証明書,生命保険料控除証明書及び寄付金控除証明書は,確定申告書を提出する際に原本を提示した場合,税務署にはコピーを提出すれば足りるのであって,原本を提出する必要はありません(「申告書に添付・提示する書類」のほか,タックスアンサーの「No.1130 社会保険料控除」「No.1140 生命保険料控除」及び「No.1150 一定の寄付金を支払ったとき(寄付金控除)」参照)。
(5) 個人事業主メモHP「支払調書はいつ送られてくる? 送付時期・提出義務」には「報酬を受け取った側の個人事業主には、1月中旬〜下旬に会社から支払調書が送られてくるのが一般的ですが、発送が遅い取引先の場合には2月初旬頃に送付されることもあります。ちなみに、規定された報酬を支払った場合、会社は支払調書を税務署へ提出する必要はありますが、 報酬を受け取った側の個人事業主へ支払調書を送付する義務はありません。」と書いてあります。
(6) 二弁フロンティア2017年12月号「ふるさと納税」が載っています。

2 確定申告時の提出書類
(1) 修習給付金に関する確定申告をする際,以下の書類を一緒に提出した方がいいです。
① 個人事業の開業・廃業等届出書(いわゆる「開業届」です。)
・ 国税庁HPの「[手続名]個人事業の開業届出・廃業届出等手続」に書式が載っています。
・ メモラビ ブログ「出す?出さない?「開業届」を提出することの本当の意味とは。」が載っています。
② 預貯金口座振替依頼書兼納付書送付依頼書
・ 国税庁HPの「[手続名] 申告所得税及び復興特別所得税、消費税及び地方消費税(個人事業者)の振替納税手続による納付」に書式が載っています。
・ 口座振替による納税(振替納税)を利用しない場合,所得税の申告期限(通常は3月15日)までに税務署,金融機関又はコンビニにおいて現金で納付することとなります。
なお,コンビニで納付する場合,税務署に申告書を提出する際,コンビニ納付したい旨を伝え,専用の納付書を発行してもらう必要がありますし,納付税額が30万円以下である場合に限られます(会計ドットコムHP「所得税納付方法|Q.確定申告書提出後の税金の支払い方法は?」参照)。
(2)ア 青色申告をする予定がある場合,所得税の青色申告承認申請書も提出した方がいいです(国税庁HPの「[手続名]所得税の青色申告承認申請手続」参照)。
イ 個人事業主メモHP「青色申告とは」に,青色申告のメリット・デメリット等が書いてあります。
ウ 所得税の青色申告承認申請書は,原則として,青色申告書による申告をしようとする年の3月15日までに提出する必要があります。
そのため,例えば,平成31年中の所得税について青色申告をする場合,同年3月15日までに所得税の青色申告承認申請書を提出する必要があります。
(3) 都道府県に対し,個人事業の開始に関する届出書を提出した方がいいです(東京都主税局HPの「事業を始めたとき・廃止したとき」,大阪府HPの「個人の事業開始等の申告[開業、変更、廃止]」参照)。
ただし,この書類を提出しなくても弁護士業に基づく売上については,5%の個人事業税が課税されます。

3 特別徴収及び普通徴収の選択
(1) 確定申告書を作成する際,給与所得以外の所得に対する住民税の徴収方法として,「給与から差し引き」(特別徴収)及び「自分で納付」(普通徴収)のどちらかを選択する必要があります。
(2) 修習給付金に関する雑所得の金額を勤務先に知られたくない場合,普通徴収を選択する必要があります(住民税HP「申告しないといけない!? 会社に副収入がバレたらマズい……」参照)。
(3) 特別徴収の場合,12回分割払いであるのに対し,普通徴収の場合,4回分割払いです(BIZ KARTE「住民税<普通徴収と特別徴収の違いとは?>」参照)。
(4)ア 事後的に特別徴収から普通徴収に切り替えることは難しいです(生駒市HP「特別徴収から普通徴収への切替申請書兼理由書」参照)。
イ 地方税法321条の3第3項は,
前項本文の規定によつて給与所得者の給与所得以外の所得に係る所得割額を特別徴収の方法によつて徴収することとなつた後において、①当該給与所得者について給与所得以外の所得に係る所得割額の全部又は一部を特別徴収の方法によつて徴収することが適当でないと認められる特別の事情が生じたため②当該給与所得者から給与所得以外の所得に係る所得割額の全部又は一部を普通徴収の方法により徴収することとされたい旨の申出があつた場合でその事情がやむを得ないと認められるときは、市町村は、当該特別徴収の方法によつて徴収すべき給与所得以外の所得に係る所得割額でまだ特別徴収により徴収していない額の全部又は一部を普通徴収の方法により徴収するものとする。
と定めています(①及び②は私が付けたものです。)。
(5)ア 大阪府HPの「平成30年度から個人住民税の特別徴収義務者一斉指定を実施します!」には以下の記載があります。
平成30年度から、大阪府内全43市町村において、原則として法定要件に該当する事業主すべてを特別徴収義務者に指定、個人住民税の給与からの特別徴収(給与からの差し引き)を徹底します。
また、京都府、兵庫県及び和歌山県においても、平成30年度から、原則として法定要件に該当する事業主を特別徴収義務者に指定し、個人住民税の特別徴収を徹底します。
※特別徴収とは、事業主(給与支払者)が従業員(納税義務者)に代わり、毎月従業員に支払う給与から個人住民税を差し引き、納入する制度
イ 給与所得以外の所得に対する住民税について普通徴収を選択したとしても,給与所得に対する住民税については必ず特別徴収になります。
(6)ア 71期以降の司法修習生をイソ弁として採用した法律事務所としては,修習終了翌年の6月以降の給料の支払においてイソ弁から住民税の特別徴収をする必要がない場合,当該イソ弁は,①住民税について普通徴収を選択した,②修習給付金は非課税所得であることを前提に確定申告をした,③確定申告をしなかったという3パターンのいずれかを選んだことになります。
イ イソ弁が住民税について特別徴収を選択した場合,勤務先の法律事務所としては,住民税の金額から,当該イソ弁の確定申告の内容を推測できることとなります。

4 確定申告書を提出するタイミング
(1) NAVERまとめの「【確定申告】税務署が混まない時間・曜日はいつ? 」によれば,確定申告期間開始直後の木曜・金曜は混雑が少ないみたいです。
(2) 確定申告書を2月15日以前に提出しても,税務署に受理してもらうことはできます(所得税基本通達120-2)。

5 訂正申告
(1) 確定申告期間中であれば,訂正後の確定申告書を改めて提出するという訂正申告によって,当初の確定申告書の内容を訂正することができます。
その際,収受印のある当初の確定申告書の控えをコピーして添付したり,表題の余白に赤字で訂正申告と記載しておけばいいみたいです(freee HP「確定申告は修正可能!訂正申告と修正申告、更正の請求の違いとは」参照)。
(2) 所得税基本通達120-4は以下のとおりです。
120-4 法定申告期限内に同一人から法第120条に規定する申告書、法第122条に規定する申告書又は法第123条《確定損失申告》に規定する申告書のうち種類を異にするものが2以上又は種類を同じくするものが2以上提出された場合には、特段の申出(法定申告期限内における申出に限る。)がない限り、当該2以上の申告書のうち最後に提出された申告書をもって、それぞれの規定により提出された申告書とする。
(注) 上記の取扱いは、法定申告期限内においては、事務に支障のない限り、申告書の差替えを認める趣旨のものであるから、先に提出された申告書に還付金が記載されており、かつ、その還付金につき既に還付の処理が行われていたような場合には、この取扱いは適用できないことに留意する。

6 確定申告時における本人確認書類の要否
(1) 自分で確定申告をする場合,本人確認書類の提示又は写しの添付が必要となります(国税庁HP「番号制度に係る税務署への申請書等の提出に当たってのお願い」参照)。
(2) 税理士等の代理人が顧客のマイナンバー(個人番号)を記載した申告書等を書面で提出する際,税務署としては,税務代理権限詔書により代理権を確認し,税理士証票の提示又は写しの添付を受けることにより代理人の身元確認を行い,本人の番号確認書類の写し等により本人の番号確認を行います(国税庁HPの「Q1-6 税理士等の代理人が顧客のマイナンバー(個人番号)を記載した申告書等を提出する際の、税務署での本人確認はどのように行うのですか。(平成30年1月4日更新)」参照)。
つまり,顧客の本人確認書類の写しを確定申告書に添付する必要がありません。

7 開業費
(1)ア 弁護士登録時に支払う,登録免許税6万円,日弁連登録料1万円及び単位弁護士会の入会金については,所得税法2条1項20号(繰延資産の意義)・所得税法施行令7条(繰延資産の範囲)1項3号ホの「イからニまでに掲げる費用のほか、自己が便益を受けるために支出する費用」に該当するものとして,弁護士業の開業費になると思います(所得税基本通達2-29の4参照)。
イ 所得税基本通達2-29の4は以下のとおりです。
同業者団体等(社交団体を除く。)に対して支出した加入金(その構成員としての地位を他に譲渡することができることとなっている場合における加入金及び出資の性質を有する加入金を除く。)は、令第7条第1項第3号ホに掲げる費用に該当するものとする。
(2)ア 開業費については,開業日に一括で計上し,その内訳が分かる領収書等を保管しておけばいいです(色々ぶろぐ「個人事業主の開業費の仕訳方法(国税局に確認済み) 」参照)。
イ 弁護士業の開業日は弁護士登録をした日以後になると思われますところ,事業所得があるとは限らない勤務弁護士となった日と,事業所得を生ずべき弁護士業を開業した日は異なると思います。
そのため,修習終了直後の12月に弁護士登録をした場合であっても,即独又は軒弁でない限り,開業日は翌年1月以降になることが多いと思います。
ウ 開業日を翌年1月以降とした場合,開業費は翌年1月以降に計上することとなります。
エ 開業日は,個人事業の開業・廃業等届出書(いわゆる「開業届」です。)に記載する日付でありますところ,開業届については,国税庁HPの「[手続名]個人事業の開業届出・廃業届出等手続」に書式が載っています。
(3) 開業費について任意償却を選択した場合,好きなタイミングで自由に償却(=費用計上)することが可能です(色々ぶろぐ「開業費の償却方法(任意償却を活用して節税)」参照)。
(4) 法律書等の書籍代を開業費に含めることができるかどうかは不明です。

8 確定申告における修習給付金の取扱いに関する記事
① 修習給付金に関する司法研修所の公式見解を前提とした場合の,修習給付金に関する取扱い
・ 修習給付金として基本給付金及び住居給付金を支給されていた神戸修習の司法修習生について基礎控除しか適用されないと仮定した場合,所得税は7万7100円,住民税は16万2000円,国民健康保険料は24万4160円で,合計48万3260円になると思います。
② 修習給付金は非課税所得であると仮定した場合の取扱い
③ 修習給付金は必要経費を伴う雑所得であると仮定した場合の取扱い
④ 修習給付金の税務上の取扱いについて争う方法等

9 弁護士の事業所得に関する国税不服審判所の裁決例
① 顧問契約に基づき定期的に定額を受領する弁護士報酬について,給与所得ではなく事業所得の収入金額に該当するとした事例(昭和54年11月22日裁決
② 著書の出版に係る印税収入は弁護士業に係る事業所得の総収入金額に含まれるとした事例(平成15年3月11日裁決)
③ 弁護士が,弁護士会が定めた刑事弁護援助基金に関する規則に基づいて支払を受けた援助金は,事業所得に当たるとした事例(平成18年9月21日裁決)
④ 弁護士業の廃業に際し共同経営者から支払を受けた金員は、営業権の譲渡によるものではなく、清算金と認められるから事業所得に当たるとした事例(平成18年8月30日裁決)
⑤ 事務所の移転に伴い受領した金員の一部は、請求人の事業所得に係る必要経費を補填する金額であると認められるものの、その余の部分は、事業所得の総収入金額に算入すべき金額ではなく、また、継続性及び対価性を有しないものであることから、一時所得に区分するのが相当であるとした事例(平成23年7月21日裁決)
→ ②ないし⑤の裁決例は国税不服審判所HPの公表裁決事例要旨「所得の区分」に載っています。